公開日: 2015/10/08 (掲載号:No.139)
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商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用・申告のポイント 【第1回】「平成27年度税制改正後の制度概要」

筆者: 石田 寿行

商業・サービス業・農林水産業活性化税制

適用・申告のポイント

【第1回】

「平成27年度税制改正後の制度概要」

 

税理士法人オランジェ 代表社員
税理士 石田 寿行

 

平成25年度税制改正において創設された中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額の特別控除(以下「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」(租税特別措置法42条の12の3(法人税)、10条の5の3(所得税)))については、平成27年度税制改正において所要の見直しを行った上で、適用期限が2年延長されている。

本連載では、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用及び申告実務のポイントについて解説していく。なお以下の内容は、平成27年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする経営改善設備に係る内容を前提としている。

 

1 税制の概要

商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、中小企業者等が、認定経営革新等支援機関や認定経営革新等支援機関に準ずる法人(※)(以下「認定支援機関等」という)からアドバイスを受け、そのアドバイスの中で経営の改善に資する資産であるとして指導及び助言を受けた器具及び備品又は建物附属設備を取得、製作又は建設(以下「取得等」という)して、指定事業の用に供した場合に、認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しを納税申告書に添付することで、30%の特別償却又は7%の税額控除が受けられるものである。

(※) 商工会議所、商工会、商店街振興組合連合会などをいう。

 

2 適用対象者

適用対象者は、青色申告書を提出する中小企業者等(ただし、認定支援機関等に該当する中小企業者等を除く)であり、具体的には次の個人又は法人である。

 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人

 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人

(※) ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人、及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除く。

 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員が1,000人以下の法人

 中小企業者に準ずる法人
中小企業等協同組合(認定支援機関等に該当する場合は除く)、出資組合である商工組合、商店街振興組合。なお、企業組合は中小企業者である法人として適用される。

(※) 平成27年度税制改正において、農業協同組合、漁業協同組合及び森林組合は除外されている。

 

3 適用対象期間

平成25年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に、適用対象となる設備の取得等をして指定事業の用に供することが必要となる。

 

4 対象設備

対象設備は、認定支援機関等から経営の改善に資する資産として、「経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」に記載された設備である。

ここで「設備」とは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令・別表第一の「建物附属設備」で、一の取得価額が60万円以上のもの、器具備品で一台又は一基の取得価額が30万円以上のもののうち、経営の改善に資するために取得する以下の設備である。

器具及び備品として規定されている

(1) 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品

(2) 事務機器及び通信機器

(3) 時計、試験機器及び測定機器

(4) 光学機器及び写真製作機器

(5) 看板及び広告器具

(6) 理容又は美容機器

(7) 娯楽又はスポーツ器具

建物附属設備として規定されている

(1) 電気設備

(2) 給排水又は衛生設備及びガス設備

(3) 冷房、暖房、通風又はボイラー設備

(4) エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備

(5) アーケード又は日よけ設備

(6) 店用簡易装備

(7) 可動間仕切り

 

5 指定事業

指定事業は、次に掲げる事業である。

卸売業、小売業、情報通信業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、損害保険代理業、不動産業、物品賃貸業、専門サービス業、広告業、技術サービス業、宿泊業、飲食店業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、社会保険・社会福祉・介護事業、サービス業(教育・学習支援業、映画業、協同組合、他に分類されないサービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業・労働者派遣業、その他の事業サービス業))、農業、林業、漁業、水産養殖業

なお、風俗営業に該当するものは

① 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業で生活衛生同業組合の組合員が営むもの

② 宿泊業のうち旅館業、ホテル業で風俗営業の許可を受けているもの

以外は指定事業から除かれる。

 

6 特別償却と税額控除

(1) 特別償却

特別償却の場合、償却限度額は、普通償却限度額に取得価額の30%の特別償却限度額を加えた金額となる。

(2) 税額控除

税額控除限度額は、取得価額の7%相当額となる。ただし、その税額控除限度額がその事業年度の税額の20%を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となる(税額の20%を超えているため、税額控除限度額の全部を控除できなかった場合には、1年間の繰越しが認められる)。

なお、税額控除は、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人以外の法人、個人が適用対象となる。

 

7 その他の留意事項

 一の資産について、特別償却と税額控除の重複適用はできない。

 税務上のリース取引のうち、所有権移転外リースの場合には、特別償却は選択できない。

 特別償却の場合には、認定支援機関等からアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しとは別に、申告書に償却限度額の計算に関する明細書の添付が必要となる。
また、税額控除の場合には、アドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しとは別に、控除を受ける金額を申告書に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書の添付をすることが必要となる。

(了)

「商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用・申告のポイント」は、隔週で掲載されます。

商業・サービス業・農林水産業活性化税制

適用・申告のポイント

【第1回】

「平成27年度税制改正後の制度概要」

 

税理士法人オランジェ 代表社員
税理士 石田 寿行

 

平成25年度税制改正において創設された中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額の特別控除(以下「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」(租税特別措置法42条の12の3(法人税)、10条の5の3(所得税)))については、平成27年度税制改正において所要の見直しを行った上で、適用期限が2年延長されている。

本連載では、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用及び申告実務のポイントについて解説していく。なお以下の内容は、平成27年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする経営改善設備に係る内容を前提としている。

 

1 税制の概要

商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、中小企業者等が、認定経営革新等支援機関や認定経営革新等支援機関に準ずる法人(※)(以下「認定支援機関等」という)からアドバイスを受け、そのアドバイスの中で経営の改善に資する資産であるとして指導及び助言を受けた器具及び備品又は建物附属設備を取得、製作又は建設(以下「取得等」という)して、指定事業の用に供した場合に、認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しを納税申告書に添付することで、30%の特別償却又は7%の税額控除が受けられるものである。

(※) 商工会議所、商工会、商店街振興組合連合会などをいう。

 

2 適用対象者

適用対象者は、青色申告書を提出する中小企業者等(ただし、認定支援機関等に該当する中小企業者等を除く)であり、具体的には次の個人又は法人である。

 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人

 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人

(※) ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人、及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除く。

 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員が1,000人以下の法人

 中小企業者に準ずる法人
中小企業等協同組合(認定支援機関等に該当する場合は除く)、出資組合である商工組合、商店街振興組合。なお、企業組合は中小企業者である法人として適用される。

(※) 平成27年度税制改正において、農業協同組合、漁業協同組合及び森林組合は除外されている。

 

3 適用対象期間

平成25年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に、適用対象となる設備の取得等をして指定事業の用に供することが必要となる。

 

4 対象設備

対象設備は、認定支援機関等から経営の改善に資する資産として、「経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」に記載された設備である。

ここで「設備」とは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令・別表第一の「建物附属設備」で、一の取得価額が60万円以上のもの、器具備品で一台又は一基の取得価額が30万円以上のもののうち、経営の改善に資するために取得する以下の設備である。

器具及び備品として規定されている

(1) 家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品

(2) 事務機器及び通信機器

(3) 時計、試験機器及び測定機器

(4) 光学機器及び写真製作機器

(5) 看板及び広告器具

(6) 理容又は美容機器

(7) 娯楽又はスポーツ器具

建物附属設備として規定されている

(1) 電気設備

(2) 給排水又は衛生設備及びガス設備

(3) 冷房、暖房、通風又はボイラー設備

(4) エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備

(5) アーケード又は日よけ設備

(6) 店用簡易装備

(7) 可動間仕切り

 

5 指定事業

指定事業は、次に掲げる事業である。

卸売業、小売業、情報通信業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、損害保険代理業、不動産業、物品賃貸業、専門サービス業、広告業、技術サービス業、宿泊業、飲食店業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、社会保険・社会福祉・介護事業、サービス業(教育・学習支援業、映画業、協同組合、他に分類されないサービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業・労働者派遣業、その他の事業サービス業))、農業、林業、漁業、水産養殖業

なお、風俗営業に該当するものは

① 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業で生活衛生同業組合の組合員が営むもの

② 宿泊業のうち旅館業、ホテル業で風俗営業の許可を受けているもの

以外は指定事業から除かれる。

 

6 特別償却と税額控除

(1) 特別償却

特別償却の場合、償却限度額は、普通償却限度額に取得価額の30%の特別償却限度額を加えた金額となる。

(2) 税額控除

税額控除限度額は、取得価額の7%相当額となる。ただし、その税額控除限度額がその事業年度の税額の20%を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となる(税額の20%を超えているため、税額控除限度額の全部を控除できなかった場合には、1年間の繰越しが認められる)。

なお、税額控除は、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人以外の法人、個人が適用対象となる。

 

7 その他の留意事項

 一の資産について、特別償却と税額控除の重複適用はできない。

 税務上のリース取引のうち、所有権移転外リースの場合には、特別償却は選択できない。

 特別償却の場合には、認定支援機関等からアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しとは別に、申告書に償却限度額の計算に関する明細書の添付が必要となる。
また、税額控除の場合には、アドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しとは別に、控除を受ける金額を申告書に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書の添付をすることが必要となる。

(了)

「商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用・申告のポイント」は、隔週で掲載されます。

連載目次

筆者紹介

石田 寿行

(いしだ・としゆき)

税理士
税理士法人オランジェ 代表社員

2000年(平成12年)大手証券会社に入社し、個人、法人の資産運用を担当。
その後会計事務所を経て、2006年(平成18年)大手監査法人系コンサルティング会社に入社。
上場企業の会計税務から中小企業の原価計算制度構築、再生業務等に従事。

2012年(平成24年)税理士法人オランジェを設立。
大手監査法人系コンサルティング会社のノウハウを中小企業の経営援支業務に活用し、提案型の会計、税務コンサルティングを行っている。

【著書】
・『親子会社の税務詳解』(共著/清文社)
・『ゼロからはじめる会社経営 知っておきたいこと100』(共著/あさ出版)

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