理由付記の不備をめぐる事例研究
【第9回】
「固定資産評価損」
~固定資産評価損の計上が認められないと判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた固定資産評価損の否認に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成15年1月28日裁決(裁決事例集65号401頁。以下「本裁決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(固定資産評価損の否認額 〇〇〇円)
貴法人は、その固定資産として計上している本件土地に係る評価損の額〇〇〇円を、本件事業年度の法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入しています。
しかしながら、固定資産の評価損に関する法人税法の規定をみると、法人税法33条《資産の評価損の損金不算入等》は、その1項において、「内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」としつつ、その2項において、「内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。」と定めています。
また、これを受けて、法人税法施行令68条《資産の評価損の計上ができる事実》1項は、その柱書において、「法第33条第2項 (特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であって、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。」とし、その3号 において、固定資産の場合は、次に掲げる事実と規定しています。
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が1年以上にわたり遊休状態にあること。
ハ 当該資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと。
ニ 当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと。
ホ イからニまでに準ずる特別の事実
これらの各規定に照らして判断すると、X社の場合、本件土地については、施行令第68条第3号イからホまでのいずれにも該当しないので、法人税法33条1項の規定により、本件評価損を本件事業年度の損金の額に算入することはできません。
したがって、本件評価損の額〇〇〇円を、本件事業年度の所得金額に加算しました。
(注) 素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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