理由付記の不備をめぐる事例研究
【第29回】
「宅地造成費用の否認」
~宅地造成工事費用の支出の損金算入が認められないと判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「架空の宅地造成費用の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁昭和55年7月17日判決(行集31巻7号1504頁。以下「本判決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(経費中損金不算入額 980万円)
〇年〇月〇日に〇〇市〇〇地区の宅地造成費用として〇〇区〇〇の有限会社K建設に支払った980万円は下記の理由により損金となりません。
記
1 造成現場を実地に確認した結果、造成の事実がないこと。
2 有限会社K建設において代表者ほか関係者に対し造成の真否を確認した結果、造成工事を請負った事実がないこと。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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