(4) 新制度の適用関係
~移行スケジュールと経過措置のイメージ~
[改正の方向性]
第4回専門家会合では、新制度の適用関係について以下のような方向性が示された。
① 改正法公布から1~2年程度の準備期間を設けること
② 現行制度と新制度の承認申請期間が重なること
③ 連結納税採用企業は、新制度適用開始までに単体納税に戻ることを選択できること
例えば、最短だと、新制度適用まで、次のようなスケジュールが一案となろう。
- 2020.3.31:改正法公布
- 2020.4.1~2022.3.31:経過期間
- 2022.4.1~:新制度の適用開始
[実務上のポイント]
上記で示された新制度の適用関係のイメージについて、筆者が本稿執筆時点で考える実務上のポイントは次のとおりである。
〈1〉
新制度への準備期間は、2年、3年が妥当ではないか。
新制度への準備期間に何年が必要か、という点については、既に連結納税を採用している企業、システム会社、課税庁、それぞれに必要な準備期間を考慮して決定する必要があるが、2年か3年が妥当であろう。
まず、企業側は、連結納税を継続するかどうかを旧制度と新制度を比較して検討する期間と、新制度による決算・申告のトライアルやシステム研修等の準備期間が必要であるし、システム会社は新しい連結納税システムの開発期間、運用期間が必要になり、課税庁は、法律・通達やQ&Aの公表などの準備期間が必要になる。
いずれにせよ、準備期間を何年にするかは今後、慎重に議論されることになるだろう。
〈2〉
新制度で税負担が増加する連結グループは連結納税を継続するか、単体納税に復帰するかの検討(シミュレーションを含む)が必要になる。
現行制度では、いったん連結納税を採用すると単体納税に戻れないのが原則であり、新制度でもその点は変わらないだろう。
ただし、新制度になると税負担が増加する連結グループが生じることになるため、新制度の準備期間に限って、単体納税に戻る選択肢(チャンス)を与えることは当然のことと思われる。この点、連結納税採用企業が単体納税に戻ることができるのは、今後、唯一のチャンスかもしれない。
そのため、すべての連結グループが、連結納税を継続すべきか、単体納税に復帰すべきかを検討することが必要になる。
〈3〉
単体納税に戻ったグループが、再び連結納税を開始するために、一定の制限期間が設定されるか。
単体納税に戻ったグループが、再び連結納税を開始するのに一定の制限期間が設定されるかどうかは、連結納税を継続すべきか、単体納税に復帰すべきかを検討する上で考慮すべき点の1つであろう。
〈4〉
連結納税の採用を予定している企業は、旧制度で開始するか、新制度で開始するかを検討する必要がある。
連結納税の採用を予定している企業は、連結納税開始時の取扱いが現行制度と新制度で異なることから、最初に、新旧いずれの制度を採用した方が有利かを検討する必要がある。
〈5〉
連結納税の加入を予定している企業は、旧制度で加入するか、新制度で加入するかを検討する必要がある。
連結納税の加入を予定している企業は、連結納税加入時の取扱いが現行制度と新制度で異なることから、最初に、新旧いずれの制度で加入した方が有利かを検討する必要がある。
〈6〉
準備期間中に旧制度を採用し、単体納税に戻ることも可能かどうか検討する必要がある。
仮に、準備期間中に旧制度を採用し、単体納税に戻ることも可能になる場合、準備期間中に現行制度を採用し、親法人や子法人の繰越欠損金の解消を実現した上で、準備期間中に再び単体納税に戻る企業グループも出てくる可能性があろう。