谷口教授と学ぶ
国税通則法の構造と手続
【第18回】
「国税通則法38条(36条~40条)」
-繰上請求の意義と位置づけ-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
国税通則法38条(繰上請求)
(繰上請求)
第38条 税務署長は、次の各号のいずれかに該当する場合において、納付すべき税額の確定した国税(第3号に該当する場合においては、その納める義務が信託財産責任負担債務であるものを除く。)でその納期限までに完納されないと認められるものがあるときは、その納期限を繰り上げ、その納付を請求することができる。
一 納税者の財産につき強制換価手続が開始されたとき(仮登記担保契約に関する法律(昭和53年法律第78号)第2条第1項(所有権移転の効力の制限等)(同法第20条(土地等の所有権以外の権利を目的とする契約への準用)において準用する場合を含む。)の規定による通知がされたときを含む。)。
二 納税者が死亡した場合において、その相続人が限定承認をしたとき。
三 法人である納税者が解散したとき。
四 その納める義務が信託財産責任負担債務である国税に係る信託が終了したとき(信託法第163条第5号(信託の終了事由)に掲げる事由によつて終了したときを除く。)。
五 納税者が納税管理人を定めないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき。
六 納税者が偽りその他不正の行為により国税を免れ、若しくは免れようとし、若しくは国税の還付を受け、若しくは受けようとしたと認められるとき、又は納税者が国税の滞納処分の執行を免れ、若しくは免れようとしたと認められるとき。
2 前項の規定による請求は、税務署長が、納付すべき税額、その繰上げに係る期限及び納付場所を記載した繰上請求書(源泉徴収等による国税で納税の告知がされていないものについて同項の規定による請求をする場合には、当該請求をする旨を付記した納税告知書)を送達して行う。
3 第1項各号のいずれかに該当する場合において、次に掲げる国税(納付すべき税額が確定したものを除く。)でその確定後においては当該国税の徴収を確保することができないと認められるものがあるときは、税務署長は、その国税の法定申告期限(課税標準申告書の提出期限を含む。)前に、その確定すると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するため、あらかじめ、滞納処分を執行することを要すると認める金額を決定することができる。この場合においては、その税務署の当該職員は、その金額を限度として、直ちにその者の財産を差し押さえることができる。
一 納税義務の成立した国税(課税資産の譲渡等に係る消費税を除く。)
二 課税期間が経過した課税資産の譲渡等に係る消費税
三 納税義務の成立した消費税法第42条第1項、第4項又は第6項(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての中間申告)の規定による申告書に係る消費税
4 国税徴収法第159条第2項から第11項まで(保全差押え)の規定は、前項の決定があつた場合について準用する。この場合において、同条第5項中「6月」とあるのは、「10月」と読み替えるものとする。
1 国税通則法上の国税徴収規定
既に第1回の2で述べたように、国税通則法はその制定の経緯からして国税徴収法の延長線上で制定されたとみるべきものであり、両法は「実は[手続の]実体的には一本のやつを、便宜主義的に二本に分かれている」(研究会「国税通則法をめぐって」ジュリスト251号(1962年)10頁、14頁[志場喜徳郎発言])というようにみることができる。
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