公開日: 2024/07/11 (掲載号:No.577)
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第28回】「国税通則法74条の2(~74条の6)・74条の7(~74条の8)」-狭義の質問検査と広義の質問検査-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第28回】

「国税通則法74条の2(~74条の6)・74条の7(~74条の8)」

-狭義の質問検査と広義の質問検査-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)

(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)

第74条の2 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査(第131条第1項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物(消費税法第2条第1項第11号(定義)に規定する課税貨物をいう。第4号イにおいて同じ。)若しくは輸出物品(同法第8条第1項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)に規定する物品をいう。第4号イにおいて同じ。)又はこれらの帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。

一 所得税に関する調査 次に掲げる者

イ 所得税法の規定による所得税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者又は同法第123条第1項(確定損失申告)、第125条第3項(年の中途で死亡した場合の確定申告)若しくは第127条第3項(年の中途で出国をする場合の確定申告)(これらの規定を同法第166条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)の規定による申告書を提出した者

ロ 所得税法第225条第1項(支払調書及び支払通知書)に規定する調書、同法第226条第1項から第3項まで(源泉徴収票)に規定する源泉徴収票又は同法第227条から第228条の3の2まで(信託の計算書等)に規定する計算書若しくは調書を提出する義務がある者

ハ イに掲げる者に金銭若しくは物品の給付をする義務があつたと認められる者若しくは当該義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭若しくは物品の給付を受ける権利があつたと認められる者若しくは当該権利があると認められる者

二 法人税又は地方法人税に関する調査 次に掲げる者

イ 法人(法人税法第2条第29号の2(定義)に規定する法人課税信託の引受けを行う個人を含む。第4項において同じ。)

ロ イに掲げる者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者

三 消費税に関する調査(次号に掲げるものを除く。) 次に掲げる者

イ 消費税法の規定による消費税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者又は同法第46条第1項(還付を受けるための申告)の規定による申告書を提出した者

ロ 消費税法第57条の5第1号若しくは第2号(適格請求書類似書類等の交付の禁止)に掲げる書類を他の者に交付したと認められる者又は同条第3号に掲げる電磁的記録を他の者に提供したと認められる者

ハ イに掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等(消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等をいう。以下この条において同じ。)をする義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者

四 消費税に関する調査(税関の当該職員が行うものに限る。) 次に掲げる者

イ 課税貨物を保税地域から引き取る者又は輸出物品を消費税法第8条第1項に規定する方法により購入したと認められる者

ロ イに掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等をする義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者

2 分割があつた場合の前項第2号の規定の適用については、分割法人(法人税法第2条第12号の2に規定する分割法人をいう。次条第3項において同じ。)は前項第2号ロに規定する物品の譲渡をする義務があると認められる者に、分割承継法人(同法第2条第12号の3に規定する分割承継法人をいう。次条第3項において同じ。)は前項第2号ロに規定する物品の譲渡を受ける権利があると認められる者に、それぞれ含まれるものとする。

3 分割があつた場合の第1項第3号又は第4号の規定の適用については、消費税法第2条第1項第6号に規定する分割法人は第1項第3号ハ又は第4号ロに規定する資産の譲渡等をする義務があると認められる者と、同条第1項第6号の2に規定する分割承継法人は第1項第3号ハ又は第4号ロに規定する資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者と、それぞれみなす。

4 第1項に規定する国税庁等の当該職員のうち、国税局又は税務署の当該職員は、法人税又は地方法人税に関する調査にあつては法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(通算法人の各事業年度の所得に対する法人税又は当該法人税に係る地方法人税に関する調査に係る他の通算法人に対する同項の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求にあつては当該通算法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に本店、支店、工場、営業所その他これらに準ずるものを有する法人に対する法人税又は地方法人税に関する調査にあつては当該国税局又は税務署の当該職員を、それぞれ含む。)に、消費税に関する調査にあつては消費税法第2条第1項第4号に規定する事業者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有する第1項第3号イに掲げる者に対する消費税に関する調査にあつては、当該国税局又は税務署の当該職員を含む。)に、それぞれ限るものとする。

5 法人税等(法人税、地方法人税又は消費税をいう。以下この項において同じ。)についての調査通知(第65条第6項(過少申告加算税)に規定する調査通知をいう。以下この項において同じ。)があつた後にその納税地に異動があつた場合において、その異動前の納税地(以下この項において「旧納税地」という。)を所轄する国税局長又は税務署長が必要があると認めるときは、旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員は、その異動後の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員に代わり、当該法人税等に関する調査(当該調査通知に係るものに限る。)に係る第1項第2号又は第3号に定める者に対し、同項の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求をすることができる。この場合において、前項の規定の適用については、同項中「あつては法人の納税地」とあるのは「あつては法人の旧納税地(次項に規定する旧納税地をいう。以下この項において同じ。)」と、「同項」とあるのは「第1項」と、「通算法人の納税地」とあるのは「通算法人の旧納税地」と、「、納税地」とあるのは「、旧納税地」と、「事業者の納税地」とあるのは「事業者の旧納税地」と、「(納税地」とあるのは「(旧納税地」とする。

国税通則法74条の7(提出物件の留置き)

(提出物件の留置き)

第74条の7 国税庁等又は税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。

 

1 はじめに

国税通則法は第7章の2において、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)における「特定の税目に特有なものは別として、可能な限り、この制度に関する規定を整備統一して国税通則法に規定することとすべきである」という考え方(同「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)82頁)を、約50年後の平成23年度[11月]税制改正によってようやく実現した。この点については、次の解説がされている(財務省「平成24年度 税制改正の解説231頁)。

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国税通則法構造手続

【第28回】

「国税通則法74条の2(~74条の6)・74条の7(~74条の8)」

-狭義の質問検査と広義の質問検査-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)

(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)

第74条の2 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査(第131条第1項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物(消費税法第2条第1項第11号(定義)に規定する課税貨物をいう。第4号イにおいて同じ。)若しくは輸出物品(同法第8条第1項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)に規定する物品をいう。第4号イにおいて同じ。)又はこれらの帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。

一 所得税に関する調査 次に掲げる者

イ 所得税法の規定による所得税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者又は同法第123条第1項(確定損失申告)、第125条第3項(年の中途で死亡した場合の確定申告)若しくは第127条第3項(年の中途で出国をする場合の確定申告)(これらの規定を同法第166条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)の規定による申告書を提出した者

ロ 所得税法第225条第1項(支払調書及び支払通知書)に規定する調書、同法第226条第1項から第3項まで(源泉徴収票)に規定する源泉徴収票又は同法第227条から第228条の3の2まで(信託の計算書等)に規定する計算書若しくは調書を提出する義務がある者

ハ イに掲げる者に金銭若しくは物品の給付をする義務があつたと認められる者若しくは当該義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭若しくは物品の給付を受ける権利があつたと認められる者若しくは当該権利があると認められる者

二 法人税又は地方法人税に関する調査 次に掲げる者

イ 法人(法人税法第2条第29号の2(定義)に規定する法人課税信託の引受けを行う個人を含む。第4項において同じ。)

ロ イに掲げる者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者

三 消費税に関する調査(次号に掲げるものを除く。) 次に掲げる者

イ 消費税法の規定による消費税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者又は同法第46条第1項(還付を受けるための申告)の規定による申告書を提出した者

ロ 消費税法第57条の5第1号若しくは第2号(適格請求書類似書類等の交付の禁止)に掲げる書類を他の者に交付したと認められる者又は同条第3号に掲げる電磁的記録を他の者に提供したと認められる者

ハ イに掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等(消費税法第2条第1項第8号に規定する資産の譲渡等をいう。以下この条において同じ。)をする義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者

四 消費税に関する調査(税関の当該職員が行うものに限る。) 次に掲げる者

イ 課税貨物を保税地域から引き取る者又は輸出物品を消費税法第8条第1項に規定する方法により購入したと認められる者

ロ イに掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等をする義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者

2 分割があつた場合の前項第2号の規定の適用については、分割法人(法人税法第2条第12号の2に規定する分割法人をいう。次条第3項において同じ。)は前項第2号ロに規定する物品の譲渡をする義務があると認められる者に、分割承継法人(同法第2条第12号の3に規定する分割承継法人をいう。次条第3項において同じ。)は前項第2号ロに規定する物品の譲渡を受ける権利があると認められる者に、それぞれ含まれるものとする。

3 分割があつた場合の第1項第3号又は第4号の規定の適用については、消費税法第2条第1項第6号に規定する分割法人は第1項第3号ハ又は第4号ロに規定する資産の譲渡等をする義務があると認められる者と、同条第1項第6号の2に規定する分割承継法人は第1項第3号ハ又は第4号ロに規定する資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者と、それぞれみなす。

4 第1項に規定する国税庁等の当該職員のうち、国税局又は税務署の当該職員は、法人税又は地方法人税に関する調査にあつては法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(通算法人の各事業年度の所得に対する法人税又は当該法人税に係る地方法人税に関する調査に係る他の通算法人に対する同項の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求にあつては当該通算法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に本店、支店、工場、営業所その他これらに準ずるものを有する法人に対する法人税又は地方法人税に関する調査にあつては当該国税局又は税務署の当該職員を、それぞれ含む。)に、消費税に関する調査にあつては消費税法第2条第1項第4号に規定する事業者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有する第1項第3号イに掲げる者に対する消費税に関する調査にあつては、当該国税局又は税務署の当該職員を含む。)に、それぞれ限るものとする。

5 法人税等(法人税、地方法人税又は消費税をいう。以下この項において同じ。)についての調査通知(第65条第6項(過少申告加算税)に規定する調査通知をいう。以下この項において同じ。)があつた後にその納税地に異動があつた場合において、その異動前の納税地(以下この項において「旧納税地」という。)を所轄する国税局長又は税務署長が必要があると認めるときは、旧納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員は、その異動後の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員に代わり、当該法人税等に関する調査(当該調査通知に係るものに限る。)に係る第1項第2号又は第3号に定める者に対し、同項の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求をすることができる。この場合において、前項の規定の適用については、同項中「あつては法人の納税地」とあるのは「あつては法人の旧納税地(次項に規定する旧納税地をいう。以下この項において同じ。)」と、「同項」とあるのは「第1項」と、「通算法人の納税地」とあるのは「通算法人の旧納税地」と、「、納税地」とあるのは「、旧納税地」と、「事業者の納税地」とあるのは「事業者の旧納税地」と、「(納税地」とあるのは「(旧納税地」とする。

国税通則法74条の7(提出物件の留置き)

(提出物件の留置き)

第74条の7 国税庁等又は税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。

 

1 はじめに

国税通則法は第7章の2において、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)における「特定の税目に特有なものは別として、可能な限り、この制度に関する規定を整備統一して国税通則法に規定することとすべきである」という考え方(同「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)82頁)を、約50年後の平成23年度[11月]税制改正によってようやく実現した。この点については、次の解説がされている(財務省「平成24年度 税制改正の解説231頁)。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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