谷口教授と学ぶ
国税通則法の構造と手続
【第41回】
「国税通則法122条(117条~121条、123条~125条)」
-国税債権と私債権(国に対する納税者の金銭債権)との相殺の禁止-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
国税通則法122条(国税に関する相殺)
(国税に関する相殺)
第122条 国税と国に対する債権で金銭の給付を目的とするものとは、法律の別段の規定によらなければ、相殺することができない。還付金等に係る債権と国に対する債務で金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
1 はじめに
今回は国税通則法第9章(雑則)の諸規定のうち同法122条(国税に関する相殺)を取り上げ検討することにする。この規定を今回の検討対象としたのは、本連載を始めるに当たって立てた方針に従い、「国税通則法制定の趣旨」を重視したからである(第1回2参照)。すなわち、国税通則法は「およそ租税法の基礎にあるべき基本的な法律関係、すなわち政府と納税者との間における権利・義務の態様や限界に関する制度上の仕組み」ないし「租税に関する基本的な法律構成」を明らかにすることが必要であるとの認識に基づき制定されたものであること(税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)1-2頁参照)からすると、国税に関する相殺すなわち国税債権と国に対する納税者の金銭債権との相殺は、「雑則」の中で定められているとはいえ、国税債権・債務の消滅の効果をもつ以上、「国税通則法制定の趣旨」の観点からみて重要な事項であり、本連載において取り上げ検討すべきであると考えるところである。
国税通則法122条は、国税に関する相殺を原則として禁止する旨を定めているが、その例外として定められた「法律の別段の規定」は現行法上はまだ存在しない(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和7年改訂・18版〕』(大蔵財務協会・2025年)1420頁参照)。ただ、同条後段は、納税者が有する還付金等に係る債権と国に対する金銭債務との相殺についても同様とする旨を規定しているところ、還付金等の充当(税通57条)は還付金等と納付すべき国税との相殺の性質を有する(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)220頁、拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【116】参照)。厳密にいえば、それは「国税との相殺を事実上認めているものとして、・・・・・・、『証券を以てする歳入納付に関する法律』の規定により証券をもってする納付を認めるという方法によっている。」(志場ほか共編・前掲書1420頁)と解説されている。
なお、民法では、相殺は「互いに同種の債権を有する当事者間において、相対立する債権債務を簡易な方法によつて決済し、もつて両者の債権関係を円滑かつ公平に処理することを目的とする合理的な制度」(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号587頁)と解されている(詳しくは山田誠一編『新注釈民法(10) 債権(3)』(有斐閣・2024年)508頁以下[深谷格執筆]参照)。
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