財産債務調書の実務における留意点
【第1回】
「財産債務調書提出制度の概要」
デロイト トーマツ税理士法人 ディレクター
税理士 飯塚 信吾
これまで、個人が保有する財産等に関する申告制度としては、所得税法に「財産及び債務の明細書」の提出制度が規定されていたが、この明細書は申告書の添付書類として規定されており、支払調書などとは異なり、未提出などに対する罰則がなかったことなどから、必ずしも適正に提出・活用されていないのではないかと言われていた。
そこで、平成27年度の税制改正において、この制度が見直され、新たに「財産債務調書」の提出制度として、国外財産調書などと併せて「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(以下「国外送金等調書法」)に規定された。
財産債務調書は、従来の財産及び債務の明細書と比較して、提出義務者の要件に保有する財産の額の要件が加わりその範囲が狭められるとともに、財産債務調書の提出を促す観点から、国外財産調書と同様に調書を提出した場合における過少申告加算税等の減額措置及び不提出の場合における加重措置が規定されている。
また、この制度では平成27年7月1日から施行されている国外転出時課税制度の対象となる可能性がある財産について申告を行う必要があり、国外転出時課税制度の適正な執行を担保することを意図したものとなっている。
「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」(以下「取扱通達」)もこれに併せ改正が行われ、詳細な取扱いが明らかにされているので、以下のとおり財産債務調書の実務における具体的な留意点について解説する。
1 提出義務者
財産債務調書を提出しなければならない者は、所得税の確定申告書の提出義務のある者で、次のいずれの要件も満たす者である。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。