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外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第10回】「外国人の不法就労による事業主のリスクとその予防策」

筆者:永井 弘行

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外国人労働者に関する

労務管理疑問点

【第10回】

「外国人の不法就労による事業主のリスクとその予防策」

 

社会保険労務士・行政書士 永井 弘行

 

はじめに

このところニュースや新聞等で「外国人の不法就労」の報道が増えていると感じませんか?

2017年11月末には、「飲食店でアルバイト従業員として働くベトナム人が、入管法違反の疑いで逮捕された」という報道がありました。「外国人の不法就労」は、外国人を雇用する事業主にとっては他人事ではなく、気を付けておきたいリスクの1つといえるでしょう。

そこで今回は、外国人の不法就労となるケースを明らかにし、不法就労をさせた事業主への罰則や、不法就労を防ぐために事業主がすべきことを説明します。

 

1 外国人雇用に対する事業主の義務・責任

事業主の立場で重要なことは、雇用する外国人に「不法就労」をさせない、ということです。

外国人を雇用した際に「法律違反をするつもりはないのに、不法就労の状態になっていた」という事態にならないよう、日本人従業員を雇うときの法令(労働基準法、最低賃金法、その他の法令)は当然として、外国人に固有の入管法のルールや制限も守る必要があります。

また入管の手続きではありませんが、行政機関への届出として、外国人を雇うときはハローワーク(公共職業安定所、以下「職安」)に届け出ることが必要です(詳細は後述します)。

 

2 どんなケースが外国人の不法就労になるのか

次の(ア)(ウ)のケースは、すべて不法就労となります。

(ア) 不法滞在者が働くケース

日本への入国が認められていない密入国者や、在留期限の切れたオーバーステイ(不法残留)の外国人が働くような場合です。

日本に適法に在留できる在留資格を持っていない外国人は、そもそも日本に在留することができないので、当然、会社で就労することもできません。

(イ) 働く許可を受けていない外国人が働くケース

観光目的の「短期滞在」で来日した外国人が働いたり、留学生や「家族滞在」の外国人が、資格外活動の許可を得ずに働くような場合です。

「短期滞在」の在留資格は「就労不可」であるため、会社で就労することはできません。また「留学」や「家族滞在」の在留資格は原則、「就労不可」です。例外として、あらかじめ「資格外活動の許可」を得た場合に限り、原則週28時間以内の就労が可能になります。

(ウ) 就労を認められた範囲を超えて働くケース

これは例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が、物流倉庫の運搬・配送担当の労働者として働くような場合です。また、「留学」の在留資格を持つ外国人が、風俗営業に従事するような場合も同様です。

「技術・人文知識・国際業務」、「研究」、「教育」などの在留資格は、与えられた在留資格の範囲内でのみ就労が認められており、在留カードには「在留資格に基づく就労活動のみ可」と書かれています。つまり、就労活動が一定の範囲に限定されているため、その範囲を超えた就労を行うことはできません。

冒頭の「飲食店アルバイトの不法就労」のニュースでは「専門学校を除籍になった後も、アルバイトを続けていた」と報道されています。

留学生が資格外活動の許可を得てアルバイトができる期間は、「教育機関に在籍している間に行うものに限る」と定められています(入管法施行規則第19条第5項1号)。

退学や卒業で学校に在籍しなくなれば、「留学」の在留資格の期限が残っていても「元留学生」となり、留学生とは認められません。そうなれば、資格外活動の許可を得ていても、アルバイトをすることはできません。このようなケースは、本人が会社に申告しなければ会社側で気づかない場合がありますので、注意が必要です。

なお、この取り扱いは本連載の【第1回】「外国人留学生をアルバイトで雇用するときは?」では取り上げていませんでしたが、起こり得るケースですので、留意してください。

 

3 外国人雇用に関して国への届出が必要な事項

会社が外国人を雇用したときは、社員・アルバイトを問わず、ハローワーク(職安)への届出が必要です。

社員など雇用保険の被保険者の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に、外国人の国籍・地域、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無などを記入して届出を行い、雇用保険に加入しないアルバイト従業員の場合は、「雇入れ・離職に係る外国人雇用状況届出書」に、氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、資格外活動許可の有無、雇入れ年月日などを記入して届出します(書式のサンプルは本連載の【第6回】【第1回】を参照)。

これらは雇用対策法、入管法によって届出が求められており、ハローワーク(職安)に届出を行えば、原則、入国管理局への届出(中長期在留者の受入に関する届出)は不要です(入管法第19条の17)。

ちなみに、冒頭の「飲食店アルバイトの不法就労」のニュースでは、「会社は、国への必要な届出を行っていなかった」と報道されていますが、これは、アルバイト従業員の「外国人雇用状況届出書」のことではないかと推測されます。

 

4 不法就労をさせた事業主への罰則

(1) 入管法の罰則

外国人に不法就労をさせた事業主は、入管法の罰則に基づき処罰されます。
次ののどれかに該当する場合には「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科され、または、両方の処罰が行われることもあります(入管法第73条の2)。

 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者

 外国人に不法就労をさせるためにこれを自己の支配下においた者

 業として、外国人に不法就労活動をさせることをあっせんした者

(2) 雇用対策法の罰則

外国人を雇い入れた場合や、外国人が離職した場合に、厚生労働大臣(ハローワーク)への届出を行わなかったり、虚偽の届出を行った事業主は、雇用対策法の罰則に基づき「30万円以下の罰金」が科されます(雇用対策法第40条)。

 

5 不法就労を防ぐための確認事項

上記の(ア)(ウ)の不法就労のケースを防ぐために、事業主は、それぞれ次の確認をする必要があります。

(ア) 不法滞在者ではないか

雇用を開始するときに外国人の「在留カード」を見て、在留資格、在留期間(満了日)を確認します。もし「在留カードを持っていません」ということなら「(現在有効な)在留資格がない」可能性があります。

在留期間の満了日を過ぎている場合は、その在留カードは無効です。「有効期限の切れた運転免許証」と同じで、以前に許可された在留資格の期限が過ぎて、無効になっています。そのため、日本に適法に在留できる在留資格がない状態です。

(イ) 働くことのできない外国人(就労不可の外国人)ではないか

留学生などをアルバイトで雇うときには、特に確認しておきたい事項です。

「留学」や「家族滞在」の外国人の在留カードの在留資格欄には「就労制限の有無:就労不可」と書かれています。ここで、裏面の資格外活動許可欄に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と書かれていれば、アルバイトが可能です。もし書かれていなければ、入国管理局の許可を得るまで、アルバイトはできません。

なお、観光目的で来日中の外国人(在留カードを持たない「短期滞在」の外国人)は、日本で働くことはできません。

(ウ) 現在の在留資格で認められた範囲を超えた就労ではないか

「入国管理局が認めている範囲を超えて働く」ことがないようにするため、在留カードの在留資格を確認の上、その範囲を超えない業務に就いてもらう必要があります。

具体的には、次のようなケースを出さないようにしましょう。

・「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の外国人を、工場で単純労働的な業務に従事させる(「技術・人文・国際業務」の在留資格では、いわゆる単純労働に就くことは認められていません)。

・「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の外国人が、勤務先の休日にコンビニでレジ担当のアルバイトをする(これは資格外活動に当たります。「技術・人文・国際業務」に該当しない仕事に就くことは認められません)。

・資格外活動の許可を得ている留学生が、週28時間を超えて働く(法律の上限を超えたオーバーワークとなります)。

入管法や在留資格の知識がなければ、こうした状況のどこが問題で、何が違法なのかが分かりにくいかと思います。

そのため判断が難しいと感じたときは、入国管理局や入管インフォメーションセンター、入管業務を取り扱っている行政書士などに相談するのが賢明です。

 

6 もし外国人がオーバーステイ(不法残留)の状態になっていたら

もし外国人の在留カードに記載された在留期間(満了日)が過ぎていたり(不法残留)、在留カードを持っていない場合は、「不法滞在者」に該当するおそれがあります。

外国人が不法滞在であることがわかったときは、入国管理局は「すみやかに最寄の入国管理局に出頭させてください」としており、不法滞在者が自ら入国管理局に出向いて、出国命令制度に基づき、帰国することを勧めています。

もし、外国人が自ら出頭しない場合は、退去強制(国外退去)の事由に当たるため、入国管理局の行政手続により外国人の身柄が収容され、日本国外に強制的に退去させられることになります。

*  *  *

次回は「外国人の転職者を採用するときの手続き、確認事項」について説明する予定です。

(了)

「外国人労働者に関する労務管理の疑問点」は、毎月第1週に掲載されます。

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筆者紹介

  • 永井 弘行

    (ながい・ひろゆき)

    社会保険労務士・行政書士

    行政書士・社会保険労務士永井弘行事務所 所長

    愛媛県出身。平成元年大阪市立大学商学部卒業。住友化学株式会社に入社。主に工場の生産企画・経理、グループ企業の人事・総務に従事する。

    平成20年に兵庫県宝塚市で行政書士、社会保険労務士事務所を開業。

    製造業、サービス業での人事・総務の実務経験と社労士・行政書士の専門知識を活かして、留学生や外国人の採用・就労サポートに注力している。関西地区を中心に留学生、外国人、学校関係者、企業の人事担当者などからの相談に応じている。

    【著書】
    ・『改訂版 Q&A外国人・留学生支援「よろず相談」ハンドブック』(株式会社セルバ出版)
    ・『改訂版 外国人・留学生を雇い使う前に読む本』(株式会社セルバ出版)

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