件すべての結果を表示
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第33回】「特殊関係のある子会社に対する譲渡」-特殊関係者に対する譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第33回】 「特殊関係のある子会社に対する譲渡」 -特殊関係者に対する譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、従来から居住の用に供してきた家屋とその土地を、B社に売却しました。 B社の株主は、次の表のとおりであり、XはY社の株式の51%を所有しています。 他の適用要件が具備されている場合、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることはできません。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」には、譲渡した資産の譲受者が、特殊関係にある法人などに該当する場合の適用除外規定(【Q29】の解説を参照)が定められています(措法41の5⑦一、措令26の7③、法令4②・③)。 本事例の場合、Xを判定の基礎となる株主にした場合は、Y社は法人税法施行令第4条(同族関係者の範囲)第2項第1号に掲げる当該他の会社に該当するため、B社は同項第2号に掲げる当該他の会社に該当し、つまり、特殊関係者への譲渡に該当することから、特例の適用を受けることはできません(措法41の5⑦一、措令26の7③、法令4②・③)。 なお、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても、譲渡した資産の譲受者に係る同様の除外規定が定められています(措法41の5の2⑦一、措令26の7の2③、法令4②・③)。 (了)
#423(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/06/10
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第55回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第55回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   7 法人税法22条の2第6項 (1) 概要等 法人税法22条の2第6項は次のとおり定めている。 法人税法22条の2第1項~5項、22条2項の適用場面において、無償による資産の譲渡に係る収益の額には、「金銭以外の資産による利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡しその他これらに類する行為」としての資産の譲渡に係る収益の額が含まれることを明らかにしているのである。 「利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡し」という部分は、法人税法22条5項の資本等取引と関わりをもつ。同項によれば、資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引、法人が行う「利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡し」をいう。 法人税法22条2項は、益金の額に算入すべき収益の額について、「資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」とし、同条3項3号は、損金の額に算入すべき損失の額は「資本等取引以外の取引に係るもの」としている。 収益及び損失が資本等取引からも生じることを前提として、資本等取引に係る収益及び損失を益金及び損金の範囲から除外している。資本等取引により生じた収益及び損失は益金の額又は損金の額に算入されないというのであるから、課税所得計算上の重要な規定であることはいうまでもない(伊豫田敏雄「法人税法の改正(一)」『昭和40年版 改正税法のすべて』104頁(国税庁1965)参照)。 企業会計原則は、「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」(第一・三)と定めている。 法人税法が、資本等取引による収入・支出を損益の範囲から除外しているのは、上記定めに従って、損益取引と資本等取引を峻別し、法人の収益と損失は、損益取引のみから生じ、資本等取引からは生じない、という考え方をとっていることを意味しており、法人税法が原則的に企業会計準拠主義を採用していることと首尾一貫しているとする見解もある(金子宏「法人税における資本等取引と損益取引」同編『租税法の発展』337頁(有斐閣2010))。 利益又は剰余金の分配については、いわゆる資本取引の概念からはやや遠いものだが、損益取引としない、つまり配当は損金の額に算入しないということを明らかにする意味で、資本等取引に含めたものと説明されている(前掲・伊豫田104頁参照)。 法人税法22条5項のシンプルな規定振りについて、立案担当者の次のような解説からは、あえて具体的な規定を設けなかったことがうかがわれる(前掲・伊豫田104頁)。 法人税法22条5項のシンプルな規定振りを遠因としているのであろう、同項の「利益の分配」該当性については実質判断を行うべきであることが、明文の規定ではなく、次のような立案担当者の解説によって補足されている(武田昌輔「全文改正法人税法の解説(上)」産業経理25巻6号51頁)。 ここでは、法人税法22条5項の利益又は剰余金の分配には、株主等に対しその出資者たる地位に基づいて供与した一切の経済的利益を含むことを定めている法人税基本通達1-5-4も想起しておきたい(もちろん、「利益又は剰余金の分配」の対象を株主以外の者に対するものにまで拡げるような解釈論をとることは慎重でなければならない)。 このような状況下において、どのような類型の取引が法人税法22条5項の資本等取引に該当するのかという点について、しばしば議論を招くことになった。とりわけ、資本等取引の要素と損益取引の要素が混合ないし混在している取引(混合取引。次回の(2)参照)に関する議論においては、租税法律主義の下で、混合取引の1つの類型である現物配当について、その課税関係を法律に明記すべきであるという指摘もなされていた。 このように法人の取引の中には混合取引が存在することを指摘していた論者は、法人税法22条の2第6項により、第1項~5項及び22条2項の場合には、無償による資産の譲渡に係る収益の額は、金銭以外の資産による利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡しその他これらに類する行為としての資産の譲渡に係る収益の額を含むこととされたことを挙げた上で、「筆者がかねて提唱してきた混合取引の法理・・・が、この規定によって採用されたことになる」と整理されている(金子宏『租税法〔第23版〕』356頁(弘文堂2019)。   (了)
#423(掲載号)
#泉 絢也
2021/06/10
会計 収益認識 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

収益認識会計基準を学ぶ 【第6回】「履行義務の識別①」

収益認識会計基準を学ぶ 【第6回】 「履行義務の識別①」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 収益認識会計基準の5つのステップの2番目は、契約における履行義務を識別することである(収益認識会計基準17項(2))。 履行義務の識別は、要件が詳細に規定されており、また、実務上、判断に迷うことが多いので、慎重に対応する必要があると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 履行義務の定義 契約において顧客への移転を約束した財又はサービスが、所定の要件を満たす場合には別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区分して識別することになる(収益認識会計基準17項(2))。 1 定義 「履行義務」とは、顧客との契約において、次の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束をいう(収益認識会計基準7項)。 顧客との契約は、通常、企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスを明示している(収益認識会計基準127項)。 しかしながら、顧客との契約には、契約締結時に、企業が財又はサービスを移転するという顧客の合理的な期待が生じる場合において、取引慣行、公表した方針等により含意されている約束が含まれる可能性があり、顧客との契約において識別される履行義務は、当該契約において明示される財又はサービスに限らない可能性がある。このため、履行義務の識別の判断は、慎重に行う必要があると考えられる(収益認識会計基準127項)。 約束した財又はサービスが別個のものではない場合には、別個の財又はサービスの束を識別するまで、当該財又はサービスを他の約束した財又はサービスと結合することになる(収益認識適用指針7項)。 2 約束した財又はサービスの例示 収益認識会計基準は、約束した財又はサービスとして、次のものを例示している(収益認識会計基準129項)。 3 一連の別個の財又はサービスの例示 一連の別個の財又はサービスの例として、「清掃サービス契約」のように、同質のサービスが反復的に提供される契約等に適用できる場合があるとされている(収益認識会計基準128項)。 「一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)」(収益認識会計基準7項(2)、32項(2))の定めは、特性が実質的に同じ複数の別個の財又はサービスを提供する場合に、当該複数の別個の財又はサービスを「単一の履行義務として識別する」ものである(収益認識会計基準128項)。 当該規定は、当該別個の財又はサービスを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別することは、コストと比較して便益が小さいことから、設けられたものである(収益認識会計基準128項)。 例えば、1年間にわたって、あるビルの清掃サービスを行う契約をし、日々、同一の清掃作業(サービス)を提供する場合、日々の清掃作業(サービス)のそれぞれを履行義務として識別するのではなく、当該複数の別個の財又はサービス(同一の清掃作業(サービス))を「単一の履行義務として識別する」ということである。 4 契約管理活動 契約を履行するための活動は、当該活動により財又はサービスが顧客に移転する場合を除いて、履行義務ではない(収益認識適用指針4項)。 例えば、サービスを提供する企業が契約管理活動を行う場合には、当該活動によりサービスが顧客に移転しないため、当該活動は履行義務ではない(収益認識適用指針4項)。   Ⅲ 履行義務の識別の要件 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(収益認識会計基準7項、32項)。 収益認識会計基準32項から34項までをまとめると次のようになる。   (了)
#423(掲載号)
#阿部 光成
2021/06/10
労働基準関係 労務 労務・法務・経営

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第15回】「ハラスメントの目撃者等の協力が得られないまま加害者の処分を行う場合のリスク」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第15回】 「ハラスメントの目撃者等の協力が得られないまま加害者の処分を行う場合のリスク」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社の営業部の社員Aから「営業部の部長Bにパワハラされた」との申告を受けて、社員Aや部長B以外の営業部の部員に事情聴取を行った結果、営業部の社員C及びDから、社員A及び社員Cが上司である部長Bからパワハラを受けていた旨聴取することができました。 そこで、部長Bの事情聴取を行い、社員A、C及びDからの聴取結果について、部長Bの言い分を聴取しようと考えていますが、部長Bへの事情聴取においては、社員Aらが主張する部長Bのパワハラの言動等について具体的に明示したうえで部長Bの言い分を聴取することになるので、会社が誰からそれらの話を聞いたかが部長Bに知れてしまう可能性があります(例えば、「●月●日●時頃、営業部のデスクで残業中のAさんに対して灰皿を投げつけましたか」などと聞くと、社員Aか同日残業していた社員が会社に申告ないし供述したことが部長Bに知れてしまいます)。 そのため、社員A、C及びDからの聴取結果を部長Bの事情聴取において開示することについて、社員A、C及びDの同意を得ようとしましたが、社員A、C、Dはいずれも部長Bからの報復をおそれて開示を承諾してくれません。このような状況において、当社が部長Bの懲戒処分を行っても問題ないでしょうか。 【Answer】 社員A、C、Dの供述等により、部長Bのパワハラの事実を認定できるのであれば、部長Bに対して懲戒処分を行うことは可能です。もっとも、社員A、C、Dが聴取結果の開示に同意しない場合、部長Bに十分な弁明の機会が与えられなかったと評価されたり、訴訟で社員A、C、Dの供述の証明力が認められないなどにより、部長Bの懲戒処分が無効と判断されるおそれがあります。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 問題の所在 事情聴取における被害者や目撃者の発言について加害者や他の目撃者に事実確認等を行う場合には、当該供述者(被害者や目撃者)の氏名を伏せたとしても、開示された聴取結果の内容等によっては自ずと供述者が誰であるかが加害者や他の目撃者に知れる可能性がある。 したがって、当該供述者から聴取結果を開示することについて事前に同意を得るべきであり、同意を得ないで聴取結果を開示する場合、プライバシーの問題や供述者に対する二次被害や加害者による報復のおそれなどもあり、会社の責任にもなりうる(※1)ことは、拙稿第4回及び第5回で述べたとおりである(また、申告対象となるハラスメントが公益通報者保護法の対象となる場合は、同法や関連のガイドラインの違反にもなりうる)。 (※1) オリンパス事件(東京高判平成23年8月31日労判1035号42頁)においては、コンプライアンス室長が通報者の氏名等の特定情報及び通報内容を通報者の同意なく通報者の上司に開示したところ、当該上司が通報者による当該通報の事実を問題視して、通報者に対して、業務上の必要性とは無関係に、いわば制裁的に配転命令をした。裁判所は、当該配転命令は不法行為であるとして、当該上司と会社の責任を認めた。 しかし、加害者からの報復(人事評価等における不利益な取扱いや嫌がらせ)のおそれ等を理由として、被害者や目撃者が、氏名や聴取結果の開示を拒絶するケースは少なくない。被害者や目撃者の供述によりハラスメントの事実を確認できる場合には、会社はそれに基づいて加害者の懲戒処分等を行うことは可能ではあるが、聴取結果の開示について供述者の同意を得られないままに処分等を行う場合においては以下のリスクがある。   2 第1のリスク~弁明の機会の付与がなされていないと評価されるリスク まず、第1のリスクは、懲戒処分の実施に際して加害者に対して十分な弁明の機会を与えていないとして、懲戒処分が無効となるリスクである。 就業規則等に懲戒処分に際して非違行為者に弁明の機会を与える旨の定めがある場合には、弁明の機会を与えずになされた懲戒処分は無効となる可能性が高い。一方、そのような定めがない場合には、弁明の機会を与えずに行った懲戒処分が必ずしも無効となるわけではないが、弁明の機会を与えた方が、懲戒処分が有効となる可能性が高まるものと思われる(拙稿第6回参照)。 そこで、懲戒処分該当事由をどの程度具体的に説明すれば弁明の機会を与えたことになるのかについて、被害者や目撃者が聴取結果の開示について同意していないこととの関係で問題となる。 この点、以下の裁判例が参考になる。 (※2) 具体的には、「あなたは女性数人から『やらせろ』と言ったり、深夜自宅に押し掛けたり、胸の話をしたとして人事に訴えが起こされている」と告げたとのことである。 (※3) 具体的には、「2012年10月、本社において、●に対し、『独立する気ないの?この状態だったら考えたほうがいんじゃないの?』と聞いた」等と告げたとのことである(「●」は黒塗り)。 上記の裁判例に照らすと、懲戒処分該当行為の大体の時期、場面及び概略を加害者に告知することにより、弁明の機会を与えたと認められる可能性が高い。したがって、ハラスメント行為の大体の時期、場面及び概略を開示することについて、被害者や目撃者の同意を得られれば、第一のリスクを減少させることができる。   3 第2のリスク~証拠が不十分であると評価されるリスク 次に、第2のリスクは、匿名の被害者や目撃者の供述は懲戒処分の有効性を裏付けるに足りる証拠とは言えないとして、加害者に対する懲戒処分が無効とされるリスクである。 訴訟において、反対尋問を経ない供述証拠については、証拠能力(証拠となりうる資格)は否定されないものの、証明力(証明すべき事実の認定に役立つ程度)は低く評価されるのが一般である。供述者を明らかにできないということは、反対尋問を経ることができないということであるから、当該供述証拠は懲戒処分の有効性を裏付けるに足りる証拠とは言えないと評価されて、加害者に対する懲戒処分が無効であると判断される可能性がある。 例えば、セクハラ等を根拠になされたXの普通解雇の有効性が争われた事案において、会社がXのセクハラの証拠として提出した報告書(会社においてX及び複数の女性社員からXの言動について聞き取った結果を併せて作成したもの)の信用性が認められなかったものがある(みずほビジネスパートナー事件(東京地判令和2年9月16日労判1238号56頁))。 ➤この事案において、裁判所は同書面について、Xの非違行為の事実に関する伝聞証拠であり、反対尋問による信用性の精査ができないものであるから、その信用性については慎重に判断する必要があるところ、被害者とされる女性社員以外の発言者もマスキングによって特定されておらず、また、当時の客観的状況が明らかでないことからすれば、発言内容について客観的状況に照らして検証することもできず、直ちに採用することはできないとして、Xの主張及び供述に沿う限度で同書面の信用性を認めた。 上記の裁判例に照らすと、客観的な証拠がない場合、少なくとも重要な事実を裏付ける供述の供述者には証人として証言してもらわなければ、訴訟において懲戒処分の有効性を裏付けることができない可能性がある。よって、氏名や聴取結果の開示について被害者や重要な目撃者の同意を得られていない場合には、裁判を見据えて懲戒処分を行わないという選択肢もありうる(もっとも、筆者の経験上、懲戒処分時点では開示に同意しなかった者も、訴訟になったら腹をくくって協力してくれることが多いという印象がある)。   4 まとめ 聴取結果の開示について供述者の同意を得られないままに懲戒処分を行う場合においては、上記のとおりリスクがある。リスクを踏まえたうえで懲戒処分を行うという選択肢もあるが、無理せず、指導や配転等で対応するという選択肢も検討すべきである。 (了)
#423(掲載号)
#柳田 忍
2021/06/10
労務・法務・経営 法務

〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第18回】「顧客との顧問契約」-顧問料の回収と民法(債権法)改正に関連して-

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第18回】 「顧客との顧問契約」 -顧問料の回収と民法(債権法)改正に関連して-   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 枝廣 恭子   〔質 問〕 長年の顧問先との間で、これまで顧問契約書を結ばずに業務を行ってきました。しかし、最近、顧問料の支払いが遅れることが何度か続いています。今のところ督促すると支払ってくれるのですが、万が一、支払われないままになった場合、契約書がないと請求できないのでしょうか。 また、顧問契約書を締結している先との間でも、民法の改正に合わせて契約書の改訂をする必要はありますか。 〔回 答〕 ➤ 税理士と顧問先との間の契約は委任契約(準委任契約)ですから、口頭でも成立します。契約書を交わしていなくても報酬は発生し、請求できます。 ➤ 民法(債権法)の改正(令和2年4月1日施行)により、委任に関連する事項も一部改正されましたので、これまで使用している顧問契約書の内容を確認し、場合によっては改訂を検討することも考えられます。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 顧問契約に基づく顧問料の回収 (1) 顧問契約の法的性質 税理士(又は税理士法人)と顧客との間の契約は、税務代理といった法律行為を税理士に委託する内容である場合は委任契約、法律行為以外の業務を内容とする場合は準委任契約に該当する(民法643条、656条)。準委任契約に関する事項は、委任契約の条項を準用しているので、以下、委任契約であることを前提として説明する。 (2) 顧問契約に基づく顧問料の発生について 委任契約は、法律業務を委託し、これを受諾することによって成立する。口頭であっても契約は成立し、契約書が存在することは契約の成立要件ではない。契約書は、契約が成立したことを証明する役割を果たすものである。したがって、契約書以外の方法で、顧問契約が成立していることを証明できれば、契約書がなくても顧問料を請求することができる。 例えば、一般的には、請求書を発行して、その請求書に対して支払いがなされてきたとの事実があると思われるので、請求書と顧問料が振り込まれた銀行口座の履歴により、顧問契約が成立していること、及びそれに基づく報酬が発生することを証明することが考えられる。また、実際に業務を委託されて、業務を実施していることも、委任契約が存在することの証拠となる。さらに、確定申告等をして成果物を納付していれば、それ自体も証拠となる。 (3) 未払いの顧問料に対する対応 上記のように、顧問契約書がなくても、顧問料は発生し、請求することができる。ただし、契約書がない場合、想定している期日までに支払いがなかった場合は、早期に督促をすることが重要である。期限等を明確に記載したものがないため、支払いがないのに請求せずに放置していると、支払いを猶予してもらっていたとか、免除してもらっていた等の反論をされることも考えられるからである。 督促の方法として、顧問先に対していきなり内容証明郵便を送るようなことは難しいだろうが、顧問料が発生していてそれが未払いである事実を証拠として残せばいいので、メールで督促することでも足りる。 なお、改正前の民法では、職業別に短期消滅時効が規定されていたが、税理士の報酬はその規定外であったため、一般規定が適用され、時効は10年とされていた。 しかし、民法(債権法)の改正(令和2年4月1日施行)により、職業別短期消滅時効が廃止されて一般規定に一本化されるとともに、その一般規定も見直され、①債権者が権利を行使することができると知った時から5年間行使しないとき、②権利を行使することができる時から10年間行使しないときのいずれかに該当するとき、債権は時効により消滅すると定められた。 そして、税理士の顧問契約に基づく顧問料は、通常、債務の履行期、すなわち、支払期限が「権利を行使することができる時」に該当するので、支払期限から5年で消滅することになるため、これまでより時効期間が短くなることに注意が必要である。 なお、契約書がなく、明確に期限が定められていないときでも、過去の請求書等で月末を支払期限としていれば、同日が支払期限として時効の起算点と判断されると考えられる。   2 民法の改正による顧問契約書の改訂の必要性 (1) 委任契約に関する改正事項 委任契約(準委任契約)に関しては、以下の3点の改正がなされた。 ① 復受任者の選任等 復代理人を選任できるのは、「委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」に限られる旨の条項が制定された(民法644条の2第1項)。また、「復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う」という規定も加えられた(同条2項)。 ② 受任者の報酬 委任契約(準委任契約)が中途で終了した場合に、受任者に帰責事由がある場合であっても、履行の割合に応じて報酬を請求できることが明文化された(民法648条3項)。 なお、成果に対して報酬を支払う成果型報酬の方式で契約を締結した場合で、業務が中途で終了して成果が一部分であったとしても、割合的な報酬の支払いを請求できる旨も規定された(民法648条の2第2項)。 ③ 委任の解除 委任者が、受任者の利益をも目的とする委任契約を解除した場合に、受任者に生じた損害を賠償することが定められた(民法651条2項2号)。 (2) 顧問契約書の改訂の必要性 ① 復受任者の選任等に関する条項 復受任者の選任等に関する規定は、改正前の民法の解釈を明文化したものである。したがって、現在の契約書に復委任に関する規定があれば、その規定がそのまま適用されるし、仮に復委任に関する規定がない場合も、これまでと同様の運用をすれば足りるので、特に契約書の改訂は必要ないと考えられる。 ② 受任者の報酬に関する条項 民法648条3項は、委任契約(準委任契約)が受任者(税理士)の責めに帰すべき事由によって終了した場合であっても、割合的報酬を請求できることを新たに認めたものである。そこで、現在使用している顧問契約書に、履行不能又は契約終了時の報酬請求に関する規定があるか、ある場合はその内容を確認し、新法の規定内容と異なるようであれば、新法に合わせて契約書を改訂するか検討することとなる。 なお、何も規定がなかった場合は、改正後の条項に基づいて割合的に報酬を請求できるが、「割合に応じて」ということの解釈が問題になり得るので、報酬の定め方について可能な範囲で基準を定めて明確にしておくとよいと思われる。 また、中途で終了した契約についての割合的報酬が認められるとしても、受任者(税理士)に帰責事由がある以上は、別途、委任者に対して債務不履行に基づく損害賠償責任は負うことになる。 ③ 委任の解除に関する条項 委任契約に基づき受任者に対して支払われる報酬は、委任の事務処理に対する対価であるため、民法651条2項2号にいう「受任者の利益」にはあたらないと解され、専ら報酬を得ることによる委任契約は明文上除外されている。 したがって、特別な事情がない限り、改正によって加えられた本条項が税理士の顧問契約において適用されることは想定されず、同条項に関連して顧問契約書を改訂することは必要ないと思われる。 (了)
#423(掲載号)
#枝廣 恭子
2021/06/10
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 税務・会計 財務会計 速報解説一覧 開示関係

《速報解説》 会計士協会、「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討」を最終報告~近年の非財務情報開示の重要性の高まりを受け、会計士が果たすべき役割についても示す~

 《速報解説》 会計士協会、「企業情報開示に関する有用性と 信頼性の向上に向けた論点の検討」を最終報告 ~近年の非財務情報開示の重要性の高まりを受け、会計士が果たすべき役割についても示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年5月14日付けで(ホームページ掲載日は2021年6月4日)、日本公認会計士協会は、企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討-開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて-」を公表した。 近年、企業における非財務情報の開示の重要性が急速に高まっている。 本報告は、企業情報開示の有用性と信頼性の向上に向けた課題の抽出と対応の方向性、それらに対して公認会計士が果たすべき役割について検討を行ったものである。なお、2020年8月21日付けで、中間報告が公表されており、本報告は最終報告となる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 次の論点を取り上げている。 以下では主な内容について解説する。 1 開示書類の体系と情報構成 有価証券報告書について、企業の中長期的な方向性を表す年次報告書としての位置付けを確立することや、経営的視点に立って価値創造ストーリーを表す開示を促進する観点からより自由度の高い情報構成とすることなどの方向性が記載されている。 戦略等の将来志向情報に関する開示の充実が進む一方、戦略の進捗度や業績を表すKPI、ガバナンスの運用状況等の開示状況についてバラつきが大きいとの指摘もある。 投資家(利用者)のニーズを考えれば、業績及び経営計画等の進捗情報は、企業評価に当たって欠かせないものと考えられ、年次報告書において、KPI一覧を含む過去実績情報の充実を図る必要性が高まっているとしている。 2 報告フレームワーク・基準 グローバルにおいて非財務情報に関する統一基準開発に向けた議論が加速しており、我が国においても非財務情報開示に関するフレームワーク・基準等の構築に向けた検討を進めていくことが望まれるとしている。 3 企業情報開示とコーポレートガバナンスの連動 取締役会において年次報告における重要事項が議論され、その内容が年次報告書に反映されることが期待されるとしている。 また、取締役会による監督をコーポレートガバナンス・コード等において要請しつつ、企業情報開示の体制及びプロセスについての情報開示を推進することが考えられるとしている。 4 信頼性を高める監査・保証 監査人が、企業の持続的な価値創造についての理解を深め、開示が全体として企業価値を表すものとなっているかという視点を強化することが重要であるとしている。 また、投資家による情報の一体的利用を想定し、同一の年次報告書の中で財務諸表監査と非財務情報の保証が提供されることが望ましいとしている。 非財務情報の保証業務が広がりつつある状況にあるが、非財務情報に含まれる情報の中には、気候変動等の環境情報や人的資本に関する情報等、その作成や評価に当たって自然科学や人権等に関する高度に専門的な知見を求められるものもあるとのことである。 公認会計士は、従来、財務会計及び監査の専門家として位置付けられてきたが、企業財務全般についての専門性をこれまで以上に高めることは言うまでもなく、さらに、経営戦略、リスク管理、業績評価、コーポレートガバナンス及びサステナビリティといったテーマについての専門性を持つことで、企業経営に関連するテーマ全般についての総合力を高めていく必要があるとのことである。 (了)
#422(掲載号)
#阿部 光成
2021/06/08
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.422が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年6月3日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.422を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2021/06/03
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

monthly TAX views -No.101-「なぜ米国のコロナ給付は迅速なのか?」

monthly TAX views -No.101- 「なぜ米国のコロナ給付は迅速なのか?」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   米国バイデン大統領は、「米国雇用計画(American Jobs Plan)」及び「米国家族計画(American Families Plan)」という2つの施策を立て続けに発表した。 前者は8年間で総額2兆3,000億ドル(約250兆円)の歳出プランで、財源は15年間で約2.5兆ドル(約280兆円)の法人税増税だ。 今回取り上げるのは後者(米国家族計画)で、中間層への子育て世帯への支援(児童税額控除の拡充)や低所得の単身・子供なし世帯への支援(勤労税額控除の拡充)など10年間で1.8兆ドル(約200兆円)規模で、実質はコロナ禍の支援給付である。 財源は富裕層増税で、個人所得税の最高税率の引上げ(37%から39.6%へ)、世帯所得100万ドル(約1億1,000万円)超に対するキャピタルゲイン増税(20%から39.6%へ)、相続時の簿価引上げの廃止(キャピタルゲイン増税)など、10年間で1.5兆ドル(約170兆円)の増収を見込む。あわせて格差是正を目指す。 *  *  * 予算や法案の権限を持つ議会との調整はこれからなので、プラン通りにはいかない点も多く出てくると思われるが、注目すべきは対策の実施されるスピードの速さと、申請なしの給付(いわゆるプッシュ型給付)という点である。 児童税額控除と勤労税額控除はいわゆる「給付付き税額控除」で、勤労インセンティブの拡大や子育て支援のため税と社会保障を一体的に運営し、税務当局が所得に応じて給付する制度だ。給付が所得に連動して行われるので、公平感がある。本来は税を還付し、還付しきれない場合には給付を行う制度だが、コロナ対策ではこれをすべて給付(還付)とした。 この制度の実施のためには、国(税務当局)が税務申告を通じてすべての納税者の所得や銀行口座・住所(小切手送付)を番号で把握しているというインフラが整っていることが条件となる。 バイデン計画では、これから税務申告が行われる2021年分の所得の還付の前倒しとして、つまり2020年分の申告所得を前提として7月から12月にかけて納税者の口座に毎月300ドルが概算的に振り込まれる。しかも、本人の申告を待たず、いわゆるプッシュ型の給付だ。間違いも多少あるようだが、ともかくスピードを重視している。 詳細については、東京財団政策研究所HPに掲載の拙稿「税の交差点―米国バイデン大統領提案から考えるわが国税制の課題」を参照されたい。 *  *  * わが国でも本年5月12日にデジタル改革関連法案が国会で可決・成立し、番号(マイナンバー)がコロナ関連給付の支給事務にも活用できるようになった。また、給付金の受取りにあたって、本人が希望すれば預貯金口座を登録する制度が始まる。 さっそく住民税非課税の子育て世帯に、子ども1人につき5万円の給付金を新たに支給することが決定され、本人の申請を待たずに給付されるようだ。 「プッシュ型」の給付が、番号制度に基づいてようやく始まることは大きな第一歩だが、米国の制度と比べると、番号で把握した所得が社会保障に連動していない、預貯金口座への付番が進んでいないなど課題は山積している。ようやく登山口にたどり着いたという感じではないか。 (了)
#422(掲載号)
#森信 茂樹
2021/06/03
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

令和3年度税制改正における住宅借入金等特別控除の見直し

令和3年度税制改正における 住宅借入金等特別控除の見直し   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和3年度税制改正では、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(以下、「住宅借入金等特別控除」という)について2つの追加的措置が講じられた。 2つの措置は、いずれも控除期間を3年延長する特例(以下、「控除期間13年間の特例」という)に関するものである。以下、解説を行う。   【1】 控除期間13年間の特例:令和3年度税制改正前の制度の概要① 消費税率10%への引上げに伴う住宅投資反動減対策として、平成31年度税制改正において通常の控除期間10年間を3年間延長し13年間とする特例が設けられた(措法41⑬)。 この特例は、個人が、住宅の取得等(※1)で特別特定取得 (※2)に該当するものをし、取得等をした家屋を令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合に適用される。 (※1) 取得等:新築、建売・中古家屋の取得、増改築等。 (※2) 特別特定取得:対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等。 本制度の詳細については、拙稿「《速報解説》 住宅借入金等特別控除の特例創設により控除期間を3年延長~平成31年度税制改正大綱~」をご確認いただきたい。   【2】 コロナ税特法による措置:令和3年度税制改正前の制度の概要② 【1】の特例の居住開始期限(令和2年12月31日)はすでに過ぎているが、令和2年4月に制定された「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(以下、「コロナ税特法」という)の規定により、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている場合には、取得等にかかる契約が一定の期日(※3)までに締結されており、かつ家屋を令和3年12月31日までに居住の用に供したときは特例の適用を受けることができる(コロナ税特法6)。 (※3) 一定の期日:新築は令和2年9月30日、建売・中古家屋の取得、増改築等は令和2年11月30日。   【3】 令和3年度税制改正による追加措置 (1) 契約期限と居住開始期限の延長 令和3年度税制改正では、【2】の契約期限と居住開始期限がさらに1年延長された。 具体的には、住宅の取得等で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を令和4年12月31日までに居住の用に供した場合には、控除期間13年間の特例を適用することができる(コロナ税特法6の2①②)。 なお、今回の追加措置においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていることは要件とされていない。 〈特別特例取得〉 特別特例取得とは、次の2つの要件を満たす住宅の取得等をいう。 (2) 面積要件の緩和 住宅借入金等特別控除は、家屋の床面積が50㎡以上であることが適用の要件とされている(措法41①、措令26①)。 令和3年度税制改正では、この面積要件が緩和され、 (1)の措置の適用対象分に限り床面積40㎡以上50㎡未満の住宅も対象とされた(「特例特別特例取得」、コロナ税特法6の2④、コロナ税特令4の2②)。ただし、その年の合計所得金額が1,000万円(※4)を超える年については控除の適用を受けることができない(コロナ税特法6の2④)。 (※4) 床面積50㎡以上の住宅の場合は3,000万円。 なお、(1)及び(2)は、認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例及び東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等特別控除の控除額に係る特例についても同様の措置が講じられている。 〈参考〉 国土交通省HP「長寿命住宅(200年住宅)税制の創設(登録免許税・不動産取得税・固定資産税)」(一部抜粋) (了)
#422(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/06/03
#