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《速報解説》 ASBJ, EFRAG, OICが「のれんはなお償却しなくてよいか」(ディスカッション・ペーパー)を公表~のれんの償却を再導入することが適切であろうとの見解~
《速報解説》 ASBJ, EFRAG, OICが 「のれんはなお償却しなくてよいか」(ディスカッション・ペーパー)を公表 ~のれんの償却を再導入することが適切であろうとの見解~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 7月22日に、企業会計基準委員会(ASBJ)、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)及びイタリアの基準設定主体(OIC)から「のれんはなお償却しなくてよいか―のれんの会計処理及び開示」(以下「ディスカッション・ペーパー」という)が公表された。 後述するように、本ディスカッション・ペーパーにおいて、リサーチ・グループは、のれんの償却を再導入することが適切であろうという結論を下している。 ディスカッション・ペーパーは、以下の著者(「リサーチ・グループ」と総称)が、企業結合で取得したのれんの会計処理の要求事項に関する議論を促すために作成したものである。 ディスカッション・ペーパーは、「関係者への質問」として、5項目を記載し、コメント募集を行っている。 コメント募集は平成26年9月20日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 ディスカッション・ペーパーの目的は、IASBが基準設定に関する取組みを正式に検討する前に、のれんに関する会計処理及び開示の要求事項について識別された重要な主題に関しての議論を促し進展させることにある。 1 のれんに関する問題点の識別 IASBがIFRS第3号「企業結合」及び他の関連基準を改訂した際に、従前の「償却及び減損アプローチ」を「減損のみアプローチ」で置き換えてから10年が経過し、取得したのれんに関する会計処理及び開示をめぐる議論はますます活発になっているとのことである。 リサーチ・グループは、減損のみアプローチがもたらす情報の有用性及び減損のみアプローチを適用する際の情報の作成と監査に係る課題に関する見解を求めるため、アンケート調査を実施した。 アンケート調査の結果、次のことが識別された。 2 リサーチ・グループによる検討 のれんに関する前述の問題点を解決するために、次の3つの異なるアプローチを検討している。 リサーチ・グループは、のれんの償却を再導入することが適切であろうという結論を下している。 これは、のれんの償却は、企業結合で取得した経済的資源の一定期間にわたる消費を合理的に反映するものであり、適切なレベルの検証可能性と信頼性を達成する方法により適用できるからであると述べている。 また、開示要求の領域においてより一層の改善を検討すべきであることも述べている。 (了)
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Profession Journal No.79が公開されました!~今週のお薦め記事~
2014年7月24日(木)AM10:30、Profession Journal No.79 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
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山本守之の法人税“一刀両断” 【第1回】「法人税法第34条の罪作り」
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第1回】 「法人税法第34条の罪作り」 税理士 山本 守之 〔事例の内容〕 納税者はこれを不服として審査請求した。「退職給与は法人税基本通達9-2-32に従って損金算入した」という主張である。 これに対して原処分庁は次のように主張した。 結局、国税不服審判所では、 として国側主張に軍配を挙げた。 〔検 討〕 (損金算入時期) 退職給与の損金算入時期は次のように2つの時期(法基通9-2-28)がある。 商事法の考え方からすれば、役員退職金は株主総会の専決事項である以上は、①の処理が原則となり、②はあくまで特例である。 しかし、①のみとすると事実上退職給与を支給しても損金の額に算入しないと次のような不都合が生ずる。 このように、支給額に所得税や相続税を課しながら株主総会の決議がないという理由で法人税の損金の額に算入しないのは説明に苦しむので、損金算入時期について2つの選択肢を置いたのである。 ところで、退職後いつまでに株主総会の決議をしなければならないか問題となるが、課税庁の解説書では次のように書かれている。 (『法人税実例集成』東京国税局調査審理課、同課長監修308頁、税務研究会刊) この回答は、次のような相続税法第3条第1項第2号の規定を援用したものであるが、絶対的基準ではなく、一応の目安としたものに過ぎない。 むしろ、支給決議の遅延が「利益操作の具とされていないか」「課税上弊害がないか」とともに、決議遅延が税負担を有利に導くこと以外に合理的理由がないのか否かといった観点から検討するべき事柄なのであろう。 (分掌変更の場合の支給遅延) 法人税基本通達9-2-32では、次のような取扱いを置いている。 しかし、この通達には2つの問題点がある。 1つは、通達でこのような課税要件を定めてよいのかという問題点である。 通達は分掌変更に際して、「実質的に退職したと同様の事情にあること」について、例えば常勤役員が非常勤役員になったこと、取締役が監査役になったこと、その分掌変更後における報酬がおおむね50%以上減少したこと等を例示している。 通達はあくまで例示で、退職と同様の事情にあったか否かはその分掌変更後における職務の内容、役員としての地位の激変等の事実により実質的に判定するべきなのである。 しかし、一般の税実務では、通達に書かれている例示があたかも課税要件のように受け取られている。 その意味からすれば、このような「例示」は通達に書くものではなく、退職という事実の判定は納税者の法解釈に委ねるべきであったかもしれない。 実は、平成18年2月10日の京都地裁判決(平成18年10月25日大阪高裁同旨)では、法人税基本通達9-2-32に定めた事実に該当するとしても、「退職の事実」はあくまでも実質的に判断すべきだとしている。 この意味では、通達に書かれた事実に盲目的に従っている税実務に対して警鐘を鳴らした判決であるといえる。 残念なのは、課税庁がこの判決(大阪高裁平成18年10月25日)によって通達を廃止しないで、次のような情報を出しただけでお茶をにごしていることである。 もうひとつの問題は、この通達(法基通9-2-32)を適用して退職金を支給する場合は、一般の場合のようにほぼ3年間の猶予があるわけではないというのが課税庁の見解である。 本件における国税不服審判所の裁決では、退職によらない役員退職給与の損金算入を例外的に認める本件通達は、恣意的な損金算入などの弊害を防止する必要性に鑑み、原則として、法人が実際に支払ったものに限り適用されるべきであって、当該分掌変更等の時に当該支給がされなかったことが真に合理的な理由によるものである場合に限り、例外的に適用されるというべきであるとして法基通9-2-32は適用されないから、退職給与でない。としたのである。 そこで、退職給与の支給遅延は次の場合に認めることになっている。 事例では、②を適用したので、退職時に支給したものだけを退職給与とし、翌期支給分や未払分は「退職給与とは認めない」としたのである。 注意したいのは、「法基通9-2-32の適用は認めない」としたのは「退職給与とは認めない」としたのであって「損金不算入」としたのではないということである。 つまり、本事例の基となった平成24年3月27日裁決では、次のように判断している。 課税要件法定主義からすれば、損金不算入の規定は必ず法律に定めなければならず、法基通9-2-32の適用を認めないとするのは、あくまで「退職給与とはしない」とするだけである。 ところで、役員給与の損金不算入を規定した法人税法第34条は、その第1項に次のように規定している(アンダーライン筆者)。 つまり、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」以外は損金不算入とする規定の適用は、①退職給与②新株予約権によるもの③使用人兼務役員の使用人分給与は除かれるのである。 逆にいえば、法基通9-2-32の適用が否認されれば、原則規定(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与以外は損金不算入)が適用されるのである。 もちろん、法人が退職給与と認定して支給した給与は、その支給実態からみて「定期同額給与」になるわけではないので、損金不算入となってしまうのである。 これはペテンのような法解釈論理である。 〔本稿のまとめ〕 法人税法第34条で損金不算入としているのは、次の3つの場合だけである。 したがって、課税庁及び国税不服審判所の裁決(平成24年3月27日)では、次期支払い及び未払いは法人税基本通達9-2-32を適用できないとしており、退職給与として取り扱われないとしただけで、損金不算入の決め手となったのは、法人税法第34条第1項である。 次期に支払った125,000,000円は退職給与とされていないし、法人税法第34条第1項第1号から第3号(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与)に該当しないから損金不算入となるというのである。未払分も同じである。 しかし、定期同額給与等は、もともと退職給与等を想定したものでなく、通常の給与を前提として定められているから、退職給与として否認されたものがこれに該当するわけはないのである。 これでは、法人税法第34条の役員給与の原則損金不算入の規定はとんだ所で罪を作ったことになる。 (了)
法人税
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法人税改革の行方 【第1回】「政府税制調査会での論点」
法人税改革の行方 【第1回】 「政府税制調査会での論点」 慶應義塾大学経済学部教授 土居 丈朗 第2次安倍晋三内閣は、6月24日に、「経済財政運営と改革の基本方針2014~デフレから好循環拡大へ~」を閣議決定した。いわゆる「骨太の方針」である。 「骨太の方針」には、法人税率引下げが盛り込まれた。その中で、 と明記された。 これとほぼ並行して、政府税制調査会でも、6月27日に、「法人税の改革について」を取りまとめた。政府税制調査会では、法人課税ディスカッショングループを設けて、3月12日から議論を進めてきた。筆者もその一委員として議論に参加した。 本連載では、今年上半期の法人税改革の議論について整理するとともに、今年末の取りまとめに向けての課題を明らかにしたい。 * * * 今年上半期の議論の基本線は、法人実効税率は引き下げたいが、それに伴う税収減を何ら補いなく引き下げては、わが国の財政収支改善に逆行するから、税率を引き下げたことに伴う税収減は予め代替財源を用意してから行う、というものだった。政府税制調査会の「法人税の改革について」にも と明記されている。 法人税制の中だけで考えたとき、単純にいえば、縦軸に「税率」、横軸に「課税ベース」の大きさを目盛りに取ったイメージでいうと、長方形の面積が法人税収となる。 目下、税率が高くて課税ベースが狭いという状態であり、これから税率を下げると、縦軸方向に高さが縮まって長方形の面積が縦方向に短くなる。そのまま短くしたまま課税ベースを見直さないと、単純に税率を下げた分だけ減収となる。 そこで、課税ベースを見直せば、横軸方向の課税ベースが少し広がり、縦長だった長方形の面積がより横長になる形で、税率引下げに伴う税収減が補える。 ただ、法人税の中だけで、税率を引き下げた分の代替財源を探すとなると、法人税に負担を課し続けるという構造は何ら変わらないことになる。これでは、法人実効税率を引き下げても、国際的に、日本政府が日本国内で活動する企業行動の足かせをなくそうとしているようには見られないだろう。最終的には、法人税がネットで減税となりかつ財政健全化にも支障をきたさないようにするには、所得税など他税目で代替財源を確保することも強く意識せざるを得ないだろう。 とはいえ、今年上半期の議論は、どれを代替財源としていくら捻出できるかという定量的な話はなく、ひとまず法人税の課税ベースで見直す余地のあるところはどこかに焦点を絞って議論が進められた(もちろん、政府税制調査会では、社会保障財源となる消費税を除く所得税などの他税目についても視野を広げて議論はしており、「法人税の改革について」にもその旨が盛り込まれている)。 本連載は、次回以降、今年上半期の議論を振り返り、法人税での課税ベースの見直しに関わるところを中心に、詳説したい。主な論点は、 である。 (了)
相続税・贈与税
税務
税務・会計
解説
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《編集部レポート》 「中央出版事件」が決着~最高裁、納税者の上告棄却・上告不受理を決定し、納税者の敗訴が確定~
《編集部レポート》 「中央出版事件」が決着 ~最高裁、納税者の上告棄却・上告不受理を決定し、納税者の敗訴が確定~ Profession Journal 編集部 アメリカ合衆国の国籍のみを有する原告が、その祖父から米国ニュージャージー州法に準拠して原告を受益者とする信託を設定されたとして、税務署長から、相続税法(平成19年法律第6号による改正前のもの)4条1項に基づき、贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を受けたため、その取消しを求めた、いわゆる「中央出版事件」は上告・上告受理申立が行われていたが、最高裁は去る7月15日に上告棄却及び上告不受理の決定を行ったことがわかった(平成25年(行ヒ)第272号,平成25年(行ツ)第267号)。 これにより、納税者の逆転敗訴となった名古屋高裁の控訴審判決が確定することとなる。 本事件の争点は、下記の2点。 第一審の名古屋地裁平成23年3月24日判決(平成20年(行ウ)第114号)では納税者の訴えを支持し納税者勝訴の判決が出されたが、第二審の名古屋高裁は、平成25年4月3日、それぞれの争点について下記の判断を行い贈与税決定処分を違法とした一審判決を取り消す判決を行った(平成23年(行コ)第36号)。 いわゆる「武富士事件」と共に大型の贈与に起因し、上記の争点の行方が注目された本事件は、納税者の敗訴で決着することとなった。 同様の贈与スキームについては、本事件の決着をみる前に、早々に平成25年度税制改正において とする旨の改正が行われたため(相法1の3、1の4)、もはや効果が得られないことから実務上の影響はないものの、最高裁の判断が注目されていた。 (了)
法人税
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例16(法人税)】 「雇用促進税制の適用を満たしていたにもかかわらず、事前アドバイスを怠ったため、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用が受けられなくなった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例16(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 平成26年3月期の法人税につき、依頼者が、雇用促進税制の適用を満たしていたにもかかわらず、税理士が事前アドバイスを怠ったため、期限までにハローワークに雇用促進計画書を提出していなかった。 このため、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用が受けられなくなってしまい、過大納付となった法人税額等400万円につき賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 平成X2年4月1日・・・関与開始。 平成25年3月31日・・・平成25年3月期に、都内に新規店舗3店を開店。来期も新規店舗の出店計画を聞いていたが、雇用促進税制の説明は行わず。 平成25年5月30日・・・ ハローワークへの雇用促進計画書の提出期限(提出せず)。 平成26年3月31日・・・平成26年3月期に、都内に新規店舗3店を開店。 平成26年5月30日・・・雇用促進税制の適用を満たしていたが、上記計画書を提出していなかったため、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」を適用できずに申告。 平成26年6月19日・・・依頼者より内容証明郵便にて損害賠償請求を受ける。 《基礎知識》 ◆雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除(措法42の12①) 青色申告法人が、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、当期末の雇用者の数が前期末の雇用者の数に比して5人以上(中小企業者は2人以上)及び10%以上増加させるなど、一定の要件を満たした場合には、雇用者数の増加1人当たり40万円(平成25年3月31日までに開始した事業年度においては20万円)の税額控除が受けられる(法人税額の10%(中小企業者等については20%)相当額が限度)。 ただし、適用年度とその前事業年度に事業主都合による離職者がいないことが条件となる。 ◆雇用促進計画書(措規20の7) 上記特別控除の適用を受ける場合には、法人の所在地を管轄する都道府県労働局又は公共職業安定所(ハローワーク)の確認が必要となる。そのためには、適用年度開始後2ヶ月以内にハローワークに雇用促進計画を提出しなければならない。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 依頼者は飲食店をチェーン展開しており、近年、新規店舗を次々に出店していた。税理士は雇用者数の増加は満たすものの、事業主都合による離職者はいるだろうとの勝手な思い込みから、雇用促進税制の説明をせず、ハローワークへの雇用促進計画書の提出も指導しなかった。しかし、平成26年3月期においては、適用要件を満たしており、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」を受けることができた。 税理士は、依頼者から内容証明郵便を受け取り、はじめてその事実に気づいている。事前に雇用促進税制の説明を行い、期限までに雇用促進計画書を提出していれば税額控除の適用は受けられたことから、税理士に責任がある。 《予防策》 [ポイント①] 主な税制改正事項については事前に説明を行う 主な税制改正項目は事前に説明を行う。特に本事例のような納税者にとって有利な新設税制で、事前に届出書等の提出が要件となっているものに関しては、事前に一通り説明を行った上で、依頼者が適切な判断を行えるようにすべきである。 [ポイント②] 文章等による証拠を残す 十分な説明を行った場合でも、依頼者から説明を受けていないとして、損害賠償請求される場合もある。そこで、将来紛争になった場合に、必要な説明を行ったことを証明できるように、メール、FAX等文章による証拠を残しておくことが重要である。 (了)
法人税
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組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第6回】「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑥」
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第6回】 「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑥」 公認会計士 佐藤 信祐 前回解説したように、従来から言われていた「取引が経済的取引として不合理・不自然である場合」だけでなく、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」も法人税法132条の2に規定する包括的租税回避防止規定の適用対象になると判示されている。 さらに、平成24年度に公表された斉木論文においても、既にその趣旨の内容が公表されているため、本稿においては、斉木論文を紹介したい。 (ⅳ) 斉木論文の概要 前回紹介したように、平成24年当時税務大学校研究部教授であった斉木秀憲氏の論文(以下、「斉木論文」という)によりまとめられた「組織再編成に係る行為計算否認規定の適用について」においては、課税要件、事実的要件、評価的要件に分けて解説されているが、本事件において争われた不当性要件については、評価的要件に詳しく解説されている。 斉木論文においては、同族会社等の行為計算の否認と異なり、純経済人そのものもその適用の対象として含むことを前提としていることから、包括的租税回避防止規定の適用においてはそれを適用することはできないとしている。 そのため、本規定における「不当」の評価としては、(イ)組織再編税制の基本的な考え方からの乖離、(ロ)組織再編成の濫用、(ハ)個別防止規定の3つに類型化されている。 その具体例として、以下のものを挙げているという点で興味深い内容となっている。 このうち、(イ)組織再編税制の基本的な考え方からの乖離については、税制適格要件の逸脱に当たるかどうかを中心的に述べているため、本事件を当てはめてみると、(ハ)個別防止規定の逸脱の類型が該当することになる。 本事件で原告が主張しているように「名ばかり役員」についてのみ包括的租税回避防止規定が適用されるという点については、 としている。さらに、包括的租税回避防止規定が適用されるべき場面として、 としているが、「共同で事業を営むための指標にならない場合」についての具体的な内容については述べられていない。この点については、本事件における判決文についても、【争点2】についての判断において触れられているため、いずれ本連載において明らかにしていきたい。 このように、斉木論文においては、経済合理性の有無により判断するという従来からの判例・学説と異なり、(イ)組織再編税制の基本的な考え方からの乖離、(ロ)組織再編成の濫用、(ハ)個別防止規定の3つに類型化したという意味で興味深い内容となっている。 (ⅴ) 私見 しかしながら、斉木論文で例示されている租税回避の内容は、多くの場合において、経済合理性の有無で判断することが可能であるため、通常の場面であれば、あまり意味のある内容でない。これに対し、前述のように、特定役員としての実態がある場合であっても、「共同で事業を営むための指標とならない場合」となってしまうと、かなり曖昧なものとなる可能性がある。 例えば、本事件において送り込まれた取締役副社長に実態がないのであれば、事実認定又は包括的租税回避防止規定により否認を受ける可能性があるというのは、おそらくは多くの税務専門家において同意できる部分であり、そこまでであれば、特に問題にならない。さらに、送り込まれた取締役副社長に実態があったとしても、単に事業目的を主張するために作られたものであって、税目的に比べてあまりに軽微なものであれば、包括的租税回避防止規定により否認を受ける可能性があるというのであれば、多少の争いはあったとしても、おそらくは想定できる意見であり、さほど気にする必要のないものである。 これに対し、「共同で事業を営むための指標とならない場合」となると、課税当局の恣意性により歪められる可能性は十分に考えられ、租税法律主義に真っ向から対立する内容となる。 しかしながら、本判決において、「取引が経済的取引として不合理・不自然である場合」だけでなく、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」について包括的租税回避防止規定の適用対象とした意義は十分に存在すると考えられ、後者の類型として、斉木論文で掲げた3類型を当てはめるというのは、基本的には成り立つ考え方であると思われる。 従来における実務においても、経済合理性の判断は制度趣旨を踏まえて検討する必要があり(※3)、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」について、包括的租税回避防止規定の適用対象とするという点については、さほど違和感のある内容ではない。法人税の負担を不当に減少させるか否かという点について、特定役員1名の実態のみで判断するのではなく、組織再編成の全体像を見ながら判断すべきとも考えられるため、制度趣旨を考えながら判定していくということでさほど問題はないと考えられる。 (※3) 佐藤信祐(2009)『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』中央経済社36-37頁 これに対し、前述のように、どのような場合が「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかである」かどうかについては、租税法律主義とのバランスからかなり慎重な対応が必要となると考えられ、斉木論文の内容ではややその範囲を広く捉えすぎているのではなかろうか。租税法の適用については、何の意図もなくても、結果的に法人税が多額に増えたり、減ったりすることは十分に存在し、何の意図もなくても、結果的に、法人税が多額に減少したということについて、組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反するという理由で包括的租税回避防止規定が適用されるのであれば、租税法律主義からするとかなり問題のある内容となる。 【争点2】においては、事前に取締役副社長を送り込む行為について、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかである」というのが裁判所の判断となっている。学術的にはともかくとして、実務的には、【争点2】こそが本事件における中核となるため、次回以降は【争点2】の内容につき、判決文の順番に沿って、解説を行っていく予定である。 (了)
法人税
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〈条文解説〉地方法人税の実務 【第4回】「税額の計算(第12条~第14条)」
〈条文解説〉 地方法人税の実務 【第4回】 「税額の計算(第12条~第14条)」 税理士 小谷 羊太 税理士 伊村 政代 今回も前回に引き続き、「第三章 税額の計算」について詳解する。 Ⅰ 税率(第10条) ※再掲 Ⅱ 地方法人税額に関する留意点 上記算式において、税率を乗じた後の金額『地方法人税の額』について、次の金額がある場合には、それぞれの金額を控除することとなっている。 1 外国税額の控除(第12条) 地方法人税額から控除する金額については、一定の限度額基準が設けられている。 「一定の限度額」とは、課税標準法人税額につき地方税法の規定を適用して計算した地方法人税の額に、その課税事業年度に係る次の割合を乗じて計算した金額となっている。 この地方税法による外国税額控除の限度額計算は、法人税法による外国税額控除の控除限度額計算と類似している。 【法人税の控除限度額】 ※は、法人税申告書別表1(1)[4欄]の金額 【地方法人税の控除限度額】 ※は、この規定適用前の地方法人税額(=課税標準法人税額×4.4%) 【所得金額と国外所得金額の関係】 所得金額(分母)、国外所得の金額(上記①)は、それぞれ下図に示したアミカケ部分の金額を合計した金額となる。 2 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の控除(第13条) 仮装経理により払いすぎた地方法人税がある場合には、更正の請求に伴う是正後、その過払いをした税金が直ちに還付されるのではなく、各課税期間における地方法人税額から控除することで調整するようになっている。この取扱いは、法人税法に定めるものと同様の趣旨に基づくものである。 3 控除する順序について(第14条) 上記1、2の規定の適用を受ける場合には、まず「外国税額控除」、その後「仮装経理に基づく控除」の順に、地方法人税額から控除する。 (了)
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こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第6回】「所得税及び復興特別所得税の予定納税」
こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第6回】 「所得税及び復興特別所得税の予定納税」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 私は飲食店を経営する個人事業主です。平成25年の所得は事業所得のみで所得税及び復興特別所得税の申告納税額は30万円でした。 平成26年6月中旬に税務署から「予定納税額の通知書」が送付されてきました。この通知書によると、予定納税額10万円を7月31日までに納付しなければなりません。 所得税及び復興特別所得税の予定納税についてご教示ください。 所得税及び復興特別所得税の「予定納税」とは、予定納税基準額が15万円以上の場合に、予定納税基準額の3分の1をそれぞれ7月と11月に納付する制度のことをいう。 1 予定納税基準額 予定納税基準額は、以下の通りである。 本問のケースでは、事業所得のみなので上記①に該当する。したがって、予定納税基準額は、平成25年の所得税及び復興特別所得税の申告納税額と同額の30万円である。 2 予定納税の対象者 予定納税の対象者は、予定納税基準額が15万円以上の者である。 本問のケースでは、予定納税基準額30万円≧15万円なので、予定納税の対象者である。 3 予定納税額 予定納税基準額の3分の1である。ただし、特別農業所得者は、予定納税基準額の2分の1である。 「特別農業所得者」とは、その年において農業所得の金額が総所得金額の10分の7を超え、かつ、その年の9月1日以後に生ずる農業所得の金額がその年中の農業所得の金額の10分の7を超える農家のうち、特別農業所得者として税務署長から承認を受けた農家をいう。 また、予定納税額は、税務署が送付する「予定納税額の通知書」により対象者に通知される。 本問のケースでは、予定納税額は、予定納税基準額30万円×1/3=10万円である。 4 予定納税額の納付期間 予定納税額の納付期間は、7月1日~7月31日(第1期)、11月1日~11月30日(第2期)の2回である。ただし、特別農業所得者の予定納税額の納付期間は、11月1日~11月30日の1回のみである。 本問のケースでは、7月1日~7月31日(第1期)に10万円、11月1日~11月30日(第2期)に10万円、合計20万円の予定納税額を納付することになる。 5 予定納税額の納付方法 予定納税額の納付方法は、次の通りである。 金融機関の窓口 税務署の窓口 コンビニ(1期当たりの予定納税額が30万円以下、かつ、バーコード付納付書を使用) 振替納税(第1期の振替日:平成26年7月31日、第2期の振替日:平成26年12月1日) 電子納税 (了)
税務
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税務判例を読むための税法の学び方【40】 〔第5章〕法令用語(その26)
税務判例を読むための税法の学び方【40】 〔第5章〕法令用語 (その26) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 14 不確定概念と宥恕規定 ④ 基本的な宥恕規定「『正当な理由』、『やむを得ない理由』と『やむを得ない事情』」 第37回では、宥恕規定の例をいくつか示したが、今回は、この宥恕規定の基本的な表現である「正当な理由」、「やむを得ない理由」と「やむを得ない事情」について、それぞれ見ていこう。 (1) 「正当な理由」 「正当な理由」の「正当」とは何であろうか。 「正当」は、正しいこと、道理にかなっていることで、「適法」が法令にかなっていることを表す概念なのに対し、「正当」は、一般的な正しさや、正当性を指すものといえる。 前々回「不当」は、通常形式的には法令に違反しないが、その内容が実質的にみて妥当ではないことを表すときに使われると書いた。すなわち、通常は、違法ではないが正当ではない「不当」という領域が存在することになる(前回「「不当」ではあるが「違法」ではない領域がある」と書いたのはこの意味である)のであるから、これを裏返せば、単に違法ではないのみならず、正当性が問われることになる。 したがって「正当な理由」といった場合には、単に違法ではない、すなわち合法である以上の、正当な理由が問われることになると考えるのが本来であるが、規定上、単に違法性があるかどうかの判断の問題とされる用例もあり、個々の条文の立法趣旨に照らして、その意味・内容を判断していかなければならない。 前々回に紹介した国税通則法第65条第4項の「正当な理由」については、DHCの国税通則法コンメンタールによれば、「申告した税額に不足が生じたことが、通常の状態において納税者が知り得ることができなかった場合や納税者の責めに任じられない外的事情(たとえば災害等)による場合が考えられ、法の不知は正当な理由とはならない」としている。 なお、同条のこの「正当な理由」については、昭和51年5月24日東京高裁判決(税務訴訟資料88号841頁)において以下にように判示している。 これによれば「正当な理由」に当たる場合とは、「真にやむをえない理由によるものであり、・・・過少申告加算税を賦課することが不当もしくは酷になる場合」であるとして、正当な理由として象徴できるのは、個別的・主観的なものではなく、客観的なものであることを要求しており、「正当」を厳格なものとして扱っている。 一方刑法では、以下のように規定している。 この刑法におけるこれらの使用例は、一応は違法な状態とされるものを適法化するだけの正当性を指すものである。したがって正当性が認められなければ違法となるのであり、よって「正当=合法」ということになるという点では、上記した違法ではないが正当ではない領域を認めるものではない。 しかし、元々が違法なものを、正当な理由があればこれを違法とはしないというものであるから、厳格な正当性が問われている点は上記国税通則法の例と変わらない。 したがって文言からは、上記の国税通則法が「「正当な理由」があると認められるものがある場合には」と加算税を課さないという宥恕規定としての使用例と異なり、正当な理由がない場合には刑罰が科されるものとして別の使用例のようにも見えるが、この刑法の使用例も、上記したように、元々が違法なものを、正当な理由があればこれを違法とはしないという条文であるから、「正当な理由」の存在を要件としてこの法令が適用される者が税を課されない、刑罰を科されないという点では、実は同じ使用例である。そしていずれも、厳格性を求められている点もまた同じである。 しかし私法においては、上記のような公法における「正当な理由」とは、若干異なる。 民法110条では、以下のように規定されている。 この条文は、代理人が本人より授権された権限外の行為をなした場合に、第三者(取引の相手方)に対してその代理人がなした行為を本人に帰属させることにより、第三者を保護しようとするものである。 ただしそれは、第三者が代理人にその行為についての代理権があると信じ、かつ、普通人ならばその事情の下でそう信じるのが当然だと判断される場合という意味で、「第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」としている。 したがってこれは、善意・無過失と同じ意味となる。 (続く)