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《速報解説》 「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」の公表~「家なき子」の同居判断について~
《速報解説》 「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の 一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」の公表 ~「家なき子」の同居判断について~ 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 平成26年1月15日付で、国税庁から「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」が公表された(以下「情報」という)。 平成25年度税制改正で相続税の小規模宅地特例が改正され、それに関連して租税特別措置法通達も改正されているが、情報はその通達改正に関するあらましを示したものである。なお、通達改正のポイントについては下記拙稿をご覧いただきたい。 今回の情報については、租税特別措置法通達に示されているもの以上の追加的な情報は特に見当たらない。 ただし、二世帯住宅の小規模宅地特例について、3つの事例が設例として示されており、特に「家なき子」のケースにおける【事例3】は、通達改正の理解に役立つと考えられる。 そこで本稿では、情報のうち【事例3】について解説を行うこととする。 (事例3 区分所有建物の登記がされていない1棟の建物の敷地を措置法69条の4③二ロの親族が取得した場合) 〈問〉 被相続人甲は、自己の所有する宅地の上に一棟の建物を所有し、甲及び生計を別にする子乙の居住の用に供していた(建物は、区分所有建物である旨の登記がなく、甲単独で所有している。)。 相続人である子乙及び子丙は、当該宅地の2分の1の持分を各々相続により取得し、申告期限まで引き続き所有し、かつ、当該宅地を居住の用に供している。 なお、丙は、相続開始前3年以内に、丙又はその配偶者の所有する家屋に居住したことがない。 甲の所有していた宅地は、特定居住用宅地等に該当するか。 〈答〉 1 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定 被相続人甲の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地には、甲の居住の用供されていた部分(以下「A部分」という。)と、生計を別にする親族乙の居住の用に供されていた部分(以下「B部分」という。)がある。 当該一棟の建物は、区分所有建物である旨の登記がされていないことから、生計を別にしていた丙の居住の用に供されていた部分についても、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に含まれることとなる(措置法令40条の2④)。 したがって、敷地の全体が、措置法第69条の4第1項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなる。 2 特定居住用宅地等の判定 (1) 乙が相続により取得した部分 乙は、甲の居住の用に供されていた一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされ ていない建物)の措置法令第40条の2第10項第2号に規定する「当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分」に居住していた者であって、相続開始から申告期限まで被相続人等の居住の用に供されていた宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していることから、措置法第69条の4第3項第2号イの親族に該当する。 したがって、乙が取得したA部分(100㎡)及びB部分(100㎡)の持分の割合(2分の1)に応ずる部分(100㎡)は、特定居住用宅地等に該当する(措置法69条の4③二イ、措置法令40条の2⑨)。 (2) 丙が相続により取得した部分 措置法第69条の4第3項第2号ロに掲げる親族は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に限るとされている。 丙が取得したA部分(100㎡)の持分の割合(2分の1)に応ずる部分(50㎡)は、被相続人の居住の用に供されていた宅地である。 次に、B部分は、被相続人の生計を別にする親族の居住の用に供されていた宅地であるが、措置法令第40条の2第4項により被相続人等の居住の用に供されていた部分に含まれることから、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして取り扱うことができ、丙は、措置法第69条の4第3項第2号ロに掲げる被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に該当することとなる。 また、被相続人甲の居住の用に供されていた一棟の建物のうち、甲の居住の用に供されていた部分に甲と共に起居していた親族はいない。 以上のことから、丙は、措置法第69条の4第3項第2号ロに規定する他の要件を満たせば、同号ロに規定する親族に該当し、丙が取得したA部分(100㎡)及びB部分(100㎡)の持分の割合(2分の1)に応ずる部分(100㎡)は、特定居住用宅地等に該当することとなる(措置法69条の4③二ロ、措置法令40条の2⑨)。 上記のポイントは、改正前は、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)と「家なき子」のケース(租税特別措置法69条の4第3項ロ)、とで同居の定義は一致していたが、改正後では、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)と「家なき子」のケース(租税特別措置法69条の4第3項ロ)、とで同居の定義は一致しなくなった、という点にある。 改正前では、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)として小規模宅地特例が適用される場合には、「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)としては小規模宅地特例の適用はされない。 これは、「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)の適用要件の一つに、「相続開始の直前においてイに規定する家屋に居住していた親族で政令で定める者がいない場合に限る」ということがあるためである(要するに、同居する親族(法定相続人)がいないことが要件とされており、この同居の定義は、同居親族のケースと家なき子のケースで一致していた)。 ただし、改正後においては、同居親族のケース(租税特別措置法69条の4第3項イ)として小規模宅地特例が適用される場合でも、同時に「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)として、小規模宅地特例が適用される可能性がある。 これは、以下改正による影響である。 結果として、情報の【事例3】のように、二世帯住宅(区分所有家屋でないものに限る)で構造上区分されたものに関し、構造上区分されるそれぞれの部分に、被相続人・相続人が各々居住し、かつ別居している他の相続人(自己及び自己の配偶者の所有する家屋に、相続直前3年間居住したことがない者に限る)がいるケースで、同居していた相続人、別居していた相続人が当該宅地等を相続する場合には、(他の要件を満たしている前提で)いずれの相続人も(前者は同居親族として、後者は家なき子として)小規模宅地特例を適用できる結果となる。 なお、「家なき子」(租税特別措置法69条の4第3項ロ)として小規模宅地特例を適用できるケースは、筆者の経験上、非常に限定的であると感じている。 ただ、平成27年1月1日以降は、相続税の基礎控除が引き下げられ、相続財産が従前よりも少額である場合にも相続税の対象となるケースが増加することが予想され、かつ相続財産である不動産は自宅のみというケースも大幅に増加することが予想される。 このような傾向のなかでは、平成27年1月1日以降に他界するケースにおいては、「家なき子」として小規模宅地特例を適用できるケースが増加する可能性がある。 「家なき子」のケースは限定的であるからといって、正確に理解せずに相続税申告業務を進めると、トラブルになる可能性もあるため、情報の【事例3】を含め、しっかりと理解をしておく必要があると思われる。 (了)
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Profession Journal No.55 公開のお知らせ
2014年2月6日(木)AM10:30、Profession Journal No.55 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
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monthly TAX views -No.13-「法人税議論は課税ベース見直しの各論段階に」
monthly TAX views -No.13- 「法人税議論は課税ベース見直しの各論段階に」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 安倍総理は、1月22日のダボス会議で講演し、「さらなる法人税改革に着手する」と発言、メディアは「国際公約」とはやし立てている。経団連の榊原次期会長も、総理との会談で法人税率の引下げを要請した。早々に議論が始まりそうだ。 しかし、この問題は簡単には進まない。 法人実効税率引下げの議論については、昨年末の税制改正大綱で以下のような記述になった。 今年一年、この記述に沿って議論が進められるわけだが、問題は、財源確保の観点から、「ヨーロッパ諸国でも行われたように政策減税の大幅な見直しなどによる課税ベースの拡大」と「他税目での増収策による財源確保」という2つの事項が明記されたことだ。 ではこの2つは、具体的にどのようなことを指しているのであろうか。 * * * まず「ヨーロッパ諸国でも行われたように政策減税の大幅な見直し」である。 これを解くカギは、自民党税調で財務省が資料提出した、ドイツと英国の法人税改革が参考になる。 08年のドイツ税制改革は、償却制度の定額法への変更、支払利息の損金算入制限により減税財源を捻出している。08年、10年の英国の法人税率引下げも減価償却制度の見直しである。 そこで、わが国でも、減価償却の見直し(償却率を遅くすること)が問題になるだろう。 もう一つの参考としては、11年民主党菅政権時代の法人税改正が参考になる。 その際の課税ベース拡大策として、減価償却制度の縮小と並んで議論されたのは、欠損金の繰越控除制度の見直しである。具体的には、これまでの100%繰越しを80%に制限するとともに、期間を7年から9年に延長した。 もう一つ参考になるのが、昨年暮れ財務省が自民党税調に提出した「法人税の課税ベース」という資料である(下記)。 これを見ると、欠損金の繰越控除により2.3兆円の法人税収が脱漏していることが分かる。以下、受取配当益金不算入で1兆円、研究開発減税で3,000億円、中小事業特例で1,000億円程度の税収が脱漏していることも記されている。 このあたりが議論になりそうである。 法人税の課税ベース (注) 平成23年度会社標本調査などによる財務省試算。 * * * では次に、「他税目での増収策による財源確保」とは何であろうか。 わが国の法人実効税率を高止まりさせている主因が地方法人課税であることを考えると、法人住民税・均等割の拡大などの地方法人税の課税ベース拡大策が考えられる。外形標準課税の拡大も議論になろう。さらに、固定資産税の特別措置の廃止・縮小、個人住民税の課税最低限の引き上げ なども候補になりうるであろう。 * * * 以上のように、法人税率の引下げに向けて検討すべき論点は明確にされている。 あとは、関係者がそれをどう受け止め、どう解決していくのかという調整の話である。 結局最後は、政権に「課税ベースの拡大」という“苦い薬”を調整していくだけの意欲とキャパシティがあるかどうか、この点が問われることになる。 (了)
法人税
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平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第1回】「生産等設備投資促進税制・環境関連投資促進税制の要件確認」
平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第1回】 「生産等設備投資促進税制・環境関連投資促進税制の要件確認」 OAG税理士法人 税理士 中島 加誉子 もうすぐ始まる平成26年3月期決算・申告について、いち早くその留意点を本連載にて解説する。 今回の決算では、平成25年度税制改正の内容を受け、 などが留意点となろう。以下、項目ごとに解説していく。 【国内生産等設備投資促進税制】 平成25年4月1日から平成27年3月31日までに開始した事業年度においては、国内の生産等設備への投資に対し、特別償却または税額控除が適用されることとなる。 〈適用要件〉 〈特別償却限度額、税額控除額〉 【参考図】 (財務省「平成25年度税制改正」より) 【グリーン投資減税(環境関連投資促進税制)】 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除制度が、平成25年度税制改正により変更されているので留意が必要である。 【参考図】 (経済産業省「平成25年度税制改正について」) (了)
所得税
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損益通算廃止に伴うゴルフ会員権売却判断のポイント 【第2回】「損益通算による節税効果と売却判断の留意点」
損益通算廃止に伴う ゴルフ会員権売却判断のポイント 【第2回】 (最終回) 「損益通算による節税効果と売却判断の留意点」 税理士 内山 隆一 平成26年3月31日までにゴルフ会員権を譲渡し、譲渡損が発生した場合の取扱いは次のように整理することができる。 1 損益通算をした場合の効果(節税額) ゴルフ会員権の譲渡損による損益通算の順序は次のとおりである。 なお、ゴルフ会員権の譲渡損は、土地建物等の譲渡による所得や株式等の譲渡による所得とは損益通算できない。 ※1 一時所得については損益通算後に2分の1する。 ※2 経常所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得及び雑所得をいう。 《例1》 ・給与所得:500万円 ・一時所得:なし ・総合長期譲渡所得:△300万円(ゴルフ会員権) [損益通算] 500万円-300万円=200万円(損益通算によって課税所得が300万円減少する) 300万円×税率=節税額 ※所得税・・・超過累進税率、住民税・・・10% 《例2》 ・給与所得:500万円 ・一時所得:200万円 ・総合長期譲渡所得:△300万円(ゴルフ会員権) [損益通算] 200万円-300万円=△100万円 500万円-100万円=400万円(損益通算によって課税所得が200万円減少する(注)) (注) 損益通算がなかった場合・・・500万円+200万円×1/2=600万円 200万円×税率=節税額 ※所得税・・・超過累進税率、住民税・・・10% 上記の計算例から、ゴルフ会員権の譲渡損が発生した場合に一時所得があると、損益通算による節税効果が半減してしまうことがわかる。 これは、もともと2分の1課税の一時所得と通算する場合に、2分の1をする前の金額と通算しなければならないためである。 なお、損益通算しきれない譲渡損を繰り越して控除する場合には、一時所得の金額は2分の1をした後の金額から控除されるため、「控除額×税率」により節税額を算定することができる。 2 値上がりリスクについて 平成26年4月1日以後にゴルフ会員権を譲渡した場合には損益通算ができないが、必ずしも今すぐ焦って売却し、損だしをしなければならないということでもないようである。 最近の動向では、値上がりするゴルフ会員権も出てきており、今後の経済情勢によっては回復の見込みもあるかもしれない。 最もバブル期のような金額にまで回復することは考えにくいであろうから、比較的最近のところで購入したゴルフ会員権に限定して検討すれば足りると思われる。 3 売却判断の流れ(フローチャート) ここまで検討してきた内容をまとめると、以下のようになる。 判断の参考にしていただければ幸いである。 (連載了)
消費税・地方消費税
税務
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まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第3回】「リース取引の取扱いについて」
まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第3回】 「リース取引の取扱いについて」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 (監修) 税理士 吉田 知至(執筆) 第3回である今回は、消費税率引上げとリース取引の適用関係について、以下の具体的な事例を交えて解説することとする。 消費税の計算上、通常の賃貸借取引について、指定日(平成25年10月1日)の前日までに締結した契約に基づき、施行日(平成26年4月1日)前から施行日以後引き続き貸付けが行われている場合で、下記①及び②、又は、①及び③の要件を満たすときは、経過措置の対象となり、旧税率によることとされる。 また、平成20年4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は、税法上「売買取引」に該当するため、経過措置の対象とならず、賃貸借処理を行っている場合であっても引渡時の税率が適用される。 なお、平成20年3月31日以前に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は、税法上、基本的には「賃貸借取引」に該当するため、経過措置の対象となることがある。 したがって、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース取引の開始時期により取扱いが異なるため、注意が必要である。 【解 説】 (ケース①)リース契約が平成20年3月31日以前に締結された場合 平成26年3月及び4月以降の処理は次のようになる。 《平成26年3月》 《平成26年4月以降》 平成20年3月31日以前に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は「リース期間がリース資産の法定耐用年数に比べ相当の差異があるもの」として一定のものを除き、税法上「賃貸借取引」に該当するため経過措置についての検討を要する。このケースでは経過措置の対象となるため、旧税率により消費税を認識する。 (ケース②)リース契約が平成20年4月1日以後に締結され、平成26年4月1日前に貸付けが行われた場合(賃貸借処理) 平成26年3月及び4月以降の処理は次のようになる。 《平成26年3月》 《平成26年4月以降》 平成20年4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引は「売買取引」に該当し、引渡時の税率が適用されるため、施行日前にリース取引を開始した場合には、旧税率により消費税を認識する。 なお、同じ賃貸借処理であっても、オペレーティング・リース取引を行っている場合とは処理が異なるため注意されたい。 【解 説】 再リース料支払時の処理は次のようになる。 《再リース料の支払時》 施行日以後に締結する再リース契約に基づき支払われる再リース料については、原則として通常の賃貸借取引と同様、新税率(8%)により消費税を認識する。 なお、平成20年3月31日以前に締結されたリース契約について再リース料を支払う場合も同様である。 【解 説】 リース取引開始時及び割安購入選択権行使時の処理は次のようになる。 《リース取引開始時(平成21年10月1日)》 《割安購入選択権の行使時》 割安購入選択権が付されたファイナンス・リース取引は所有権移転ファイナンス・リース取引に該当し、税法上「売買取引」として引渡時に割安購入選択権を含めた金額の資産の譲渡等が行われたこととなる。したがって、割安購入選択権の行使に伴い支払う金額については、支払時には消費税を認識しないため、結果として新税率は適用されない。 なお、同様のケースであっても、割安購入選択権以外の購入選択権を行使した場合、新税率(8%)が適用されることに注意されたい。 【解 説】 資産に係るリース契約の残価保証額の定めに基づき賃貸人が賃借人から収受する金銭は、その収受すべき金額が確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に加算するものとされている(消費税法基本通達9-3-6の4)。 したがって、残価保証額の精算金に係る消費税はリース資産の引渡時には資産の譲渡等の対価に含まれず、賃貸人がリース資産を売却して精算金額が確定した時の税率が適用される。 (了)
所得税
税務
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租税争訟レポート 【第16回】弁護士の必要経費(上告受理申立て不受理決定)
租税争訟レポート【第16回】 弁護士の必要経費(上告受理申立て不受理決定) 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【事案の概要】 弁護士を開業している納税者(相手方、控訴人、第一審原告)の所得税並びに消費税及び地方消費税の確定申告について、仙台中税務署長は、納税者が仙台弁護士会会長及び日弁連副会長としての職務に関係して支出した費用(主に会務の前後に行われた懇親会、慰労会等の支出)は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできず、また、消費税法における課税仕入にも該当しないとして、所得税及び消費税等の更正処分を行った。 納税者は、異議申立及び不服審査を経て、東京地裁に提訴。第一審では、国(処分行政庁)の主張をほぼ全面的に支持して、納税者が敗訴したが、控訴審では、納税者側の訴えを認容する判決を下した。 具体的には、弁護士が弁護士会等の役員等としての活動に要した費用であっても、弁護士会等の役員等の業務の遂行上必要な支出であったということができるのであれば、その弁護士の事業所得の一般対応の必要経費に該当するとし、個別の支出内容を検討したうえで、懇親会等の費用は特定の集団の円滑な運営に資するものとして社会一般でも行われている行事であり、費用の額も過大であるとはいえないときは、社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であったとして、必要経費算入を認めたものである。 控訴審判決を受けて、国は、上告受理申立てを行い、平成24年12月21日、上告受理申立て理由書を最高裁判所に提出するが、最高裁判所第2小法廷は、平成26年1月17日、これを受理しないと決定し、控訴審判決が確定したものである。 本稿は、控訴審判決に対する国側の上告受理申立て理由を検討することにより、事業所得における必要経費について、論考を進めることを目的とする。 【争点】 原判決は、第1審が、「所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であること」とした部分をことごとく「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であること」と書き改めたうえで、国側の主張を、「事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず、「直接」という文言の意味も必ずしも明らかではない」として退けている。 これに対し、上告受理申立て理由書は、原判決における所得税法第37条の法令解釈の誤りを指摘している。 【上告受理申立て理由書の概要】 申立人である国が提出した上告受理申立て理由の骨子を要約する(下線は筆者による)。 【最高裁判所による不受理決定】 上記の申立て理由について、最高裁第2小法廷が下した判断は、民事訴訟法第318条(上告受理の申立て)第1項の規定により受理すべきものとは認められないとして、不受理決定を出した。 同条により受理することができる事件とは「原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」であることから、控訴審の判決は、最高裁の判例とは反しないものであり、かつ、法令の解釈にも誤りはないことを認めたものである。 【今後の実務に与える影響】 本決定により、控訴審判決が確定し、同判決が事実上の判例として、士業における必要経費のあり方を判断するため根拠となると思料する。 本連載の【第1回】でも述べたように、必要経費について「事業と直接関係する」ことを繰り返し申立人側は求めているが、控訴審判決でも引用されているとおり、サラリーマン税金訴訟として知られている大島訴訟の控訴審判決(大阪高裁昭和54年11月7日)では、必要経費を、「事業を営むため、すなわち収入を終局の目的として直接あるいは間接に支出を余儀なくされたもの」と判示しており、「業務と直接関係」することは要求していない。 控訴審判決は、この点を明確にしたうえで、必要経費該当性について、「社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であった」かどうかを判断基準とし、慰労会会費、役員への立候補費用などを必要経費に該当すると判断する一方、過大な負担をした場合や2次会費用、不可欠とまではいえない費用については個別に否認しており、本決定により、あらためてその妥当性が担保されたといえるのではないだろうか。 課税庁は、上告受理申立て理由書で自らが認めているように、本決定は、「本件の個別事案にとどまらず、弁護士会はもとより、医師会、司法書士会、弁理士会等の他の士業会の会務活動に付随する支出に係る課税実務全般にも多大の影響を与える」ことを十分に理解し、ちょうど確定申告時期でもあることから、早急に個別通達を発遣するなどして、課税実務の適正化に努めるべきであろう。 (了)
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提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第5回】「調書の記載漏れ・不提出・偽記載等による影響」
提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第5回】 「調書の記載漏れ・不提出・偽記載等による影響」 公認会計士・税理士 前原 啓二 Q 国外財産調書の記載の有無、不提出・偽記載等による影響を教えてください。 A (1) 過少申告加算税の軽減と加重 国外財産調書に納税者本人の国外財産を網羅的により正確に報告させる誘因となるよう、国外財産に関する所得等の申告漏れが発覚した場合に、所定の過少申告加算税又は無申告加算税の軽減(優遇措置)と加重(加罰措置)を行うこととなった。 この所定の過少申告加算税又は無申告加算税の軽減(優遇措置)と加重(加罰措置)を要約すると、次のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 過少申告加算税又は無申告加算税の特例(軽減(優遇措置)と加重(加罰措置))は、平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書に記載する国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税について適用される(平24改正法附則60)。 (2) 国外財産調書の不提出・偽記載等に対する罰則 国外財産調書の不提出、偽記載等に対しては、次のような罰則が規定されている。 (3) 国外財産調書の提出に関する調査に係る質問調査権 国税庁、国税局又は税務署の職員は、国外財産調書の提出に関する調査について、必要があるときは、国外財産調書を提出する義務のあるものに質問し、その者の国外財産に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又はその物件の提示若しくは提出を求めることができる(調書法7②)。また、提出された物件を留め置くことができる(調書法7③)。 この質問調査権は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと明記されている(調書法7⑤)。 国税庁、国税局又は税務署の職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者(調書法9三)や、国税庁、国税局又は税務署の職員からの物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件を提示し、若しくは提出した者(調書法9四)に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の規定が設けられた。 (了)
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居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第17問】「転勤のため家屋を娘夫婦に貸した場合」-居住用財産の範囲-
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第17問】 「転勤のため家屋を娘夫婦に貸した場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q 会社員Xは、5年前、転勤により大阪市内にある居住用家屋を離れ、妻と共に東京都内に移り、借家住まいをしています。 転勤は2~3年ということだったので、大阪に戻った後は再びその家屋に居住するつもりで、それまでの間は結婚したばかりの娘夫婦(生計は別)に無償で居住させていました。 ところが、会社の都合等により、大阪には戻れないこととなったので、本年4月、娘夫婦を立ち退かせた上、大阪の家屋を売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 Xは、大阪の家屋を、措法35①で規定されている法定期限内(その居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に譲渡していない。 また、娘夫婦はXと生計を別にしており、Xの扶養親族ではないことから、措通31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)にも該当せず、「特例」の適用を受けることはできないこととなる。 (了)
税務
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税務判例を読むための税法の学び方【28】 〔第5章〕法令用語(その14)
税務判例を読むための税法の学び方【28】 〔第5章〕法令用語 (その14) 税理士 長島 弘 10 期限や期日を示す表現 (① 「以前」と「前」、「以後」と「後」) 【前回参照】 ② 「期限」「期日」「期間」 「期日」というのは、ある法律効果の発生又は消滅が、一定の日にかかっている場合に使われることばであるのに対し、「期限」というのは、ある法律の効力の発生がいつからか、またその効力がいつまでもつのかというように、法律効果の発生又は消滅を一定の日時の到来にかからせる場合に使われる。 このように期限には、効力発生の「始期」の場合と「終期」の場合とがある。 また、期限には、法令で確定的にその日時が定められているものと、一定の該当事由をもって効力が発生する場合のように確定的には定められていないものがある(前者を「確定期限」といい、後者を「不確定期限」という)。 「期間」は、一定の時点から他の時点までの時間の長さをいう。期限との相違点は、期間には始期と終期のどちらもあるのに対し、期限についてはそのいずれしかないという点である。 では次に、この期間の計算についての税法上の決まりを見てみよう。 ③ 期間計算に関する国税通則法の定めと民法 税法においては、国税通則法第10条第1項及び第2項に「期間計算及び期限の特例」として、以下のように定められている。 もっともこの国税通則法の規定内容は、税法独自のものではない。 民法の第1編総則第6章には、以下のように規定されている。 民法第139条の規定は、即時を起算点とし時・分・秒の終了を満了点とする「自然的計算方法」を定めたものであるが、国税通則法第10条第1項は「日、月又は年をもって定める期間の計算は、次に定めるところによる。」と規定しているのであるから、税法においても「日、月又は年をもって定める期間の計算」でない場合には、理論的には、この自然的計算方法による場合もあり得る。 また、民法等による効力の発生により税法が適用される場合には、この「自然的計算方法」による法解釈が必要な場合もあるので、理解しておく必要がある。 国税通則法第10条第1項は「日、月又は年をもって定める期間の計算」を原則とするが、これは民法第140条に定める「暦法的計算法」であり(ただし民法の規定には「週」による定めが含まれている)、国税通則法第10条第1項第1号の初日不算入の原則及び期間が零時より始まる場合の初日算入の例外規定も、この民法140条に規定されている通りであり、同項第2号の「暦に従う」旨の規定は、この「暦法的計算法」をとることを明示したものである。 また、同項第3号柱書の、月又は年の始めから期間を起算しないときは応当日の前日に満了する旨の規定もまた、民法143条柱書にある通りである。そして同号但書の、最後の月にその応当日がないときはその月の末日に満了する旨の規定もまた、民法143条但書の通りである。 このように、税法における期間計算方法は、原則、民法と同じ計算方法によっている。 ④ 「・・・から・・・まで」 「AからBまで」は、起点Aと終点Bを指す法令用語で、起点も終点もともに、その基準時点を含む。もっとも「・・・から」とあっても「・・・から・・・まで」と対になっていない場合、例えば単に「・・・から1月後」などと規定されている場合における期間の計算は期間が午前零時から始まる場合を除き、上記初日不算入の原則により、初日は不算入とされる。ただし「Aから起算して」と規定されている場合は、Aが起算日となるのであるが、Aは初日算入となる。 なお、同じような意味で税法では、課税期間を明示するに当たり、「・・・自(より)・・・至(いたる)」を用いる例がある。法人税や消費税の確定申告書等では、この「自」「至」で課税期間の始点と終点を示している。 (了)
