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《速報解説》 研究開発税制の延長・拡充~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 研究開発税制の延長・拡充 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   1 はじめに 消費税率の引上げに伴い、経済対策と成長力強化のための総合的な対策として、日本再興戦略に盛り込まれている「民間投資を活性化させる税制措置等」を例年12月にまとめる平成26年度税制改正大綱から切り離して、前倒しで決定することになった。   2 改正の趣旨 日本再興戦略の日本産業再興プランにおける「科学技術イノベーションの推進」には、重点的に推進する施策の一つに「官・民の研究開発投資の強化」がある。 この施策には、「民間研究開発投資を今後3年以内に対GDP 比で世界第1位に復活することを目指し、研究開発税制の活用促進など企業の研究開発投資環境を整備する」と掲げられており、これを受けて「民間投資活性化等のための税制改正大綱」において、研究開発税制の改正が挙げられたのである。 なお、平成25年度税制改正事項を含む研究開発税制の留意点については、本誌既掲載の拙稿「〔理解を深める〕研究開発税制のポイント」(全4回)をご参照いただきたい。   3 改正の内容 平成25年度の税制改正において大幅な拡充が行われたが、研究開発投資を一層加速させるため、「試験研究費が増加した場合等の税額控除制度」における「増加型」について、増加率に応じて控除率を引き上げる措置に改められた。 また、「試験研究費が増加した場合等の税額控除制度」の適用期限を平成29年3月31日までに開始する事業年度に延長された。 青色申告書を提出する法人の増加試験研究費の額が比較試験研究費の額の5%を超え、かつ、試験研究費の額が基準試験研究費の額を超える場合には、増加試験研究費の額に30%(増加割合が30%未満の場合には、増加割合)を乗じて計算した金額の税額控除ができることとされた。 ① 増加型 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) 増加試験研究費の額とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を控除した残額をいう。 (※2) 増加割合とは、増加試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合という。   ② 高水準型 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   上記の内容を図で示すと、下記のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)
#38(掲載号)
#吉澤 大輔
2013/10/10
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《速報解説》 生産性向上設備投資促進税制の創設~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 生産性向上設備投資促進税制の創設 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行 1 生産性向上設備投資促進税制の概要 ① 創設の背景 消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要や反動減リスクに対応するとともに、民間投資を活性化し、経済の持続的な成長につなげるため「民間投資活性化等のための税制改正」(平成25年10月1日与党税制改正大綱)により生産性向上設備投資促進税制が創設された。 創設された背景には、企業の設備投資の水準が長期にわたり減価償却費やキャッシュフローの範囲内に留まったことにより設備が老朽化・劣化し、生産性が伸び悩んだことがある。こうした状況に対応するため、生産性の高い先端的な設備への投資や、生産ラインやオペレーションの改善のための設備への投資を対象に、特別償却(即時償却)又は税額控除できる制度を創設したものである。 ② 制度の概要 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法(仮称)施行の日から平成29年3月31日までに生産等設備を構成する先端設備(後述2①)及び生産ラインやオペレーションの改善に資する設備で一定の規模(後述2②)以上のものの取得等をして、国内にあるその法人の事業の用に供した場合には、特別償却又は税額控除の選択適用ができる。ただし、税額控除における控除額は、当期の法人税額の20%を上限とする。 特別償却の割合、税額控除の割合は以下の通りである。 (注) 平成26年4月1日前に終了する事業年度において産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に対象資産の取得をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において特別償却又は税額控除ができる。   2 対象設備の具体的内容 対象となる先端設備及び生産ラインやオペレーションの改善に資する設備とは以下のものをいう。 ① 先端設備 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (注1) 中小企業者等に限る。 (注2) 販売開始年度が取得等をする年度及びその前年度であるモデルを含む。 (注3) 機械装置のうち中小企業者等が取得等をするソフトウェア組込型機械装置については10年以内に販売が開始されたもので最新モデル及び最新モデルの1つ前のモデルを最新モデルであるための要件とする。   ② 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備とは、機械装置、工具、器具備品、建物、建物付属設備、構築物及びソフトウェアで、上記の取得価額が一定金額以上ある要件を満たすもののうち投資計画における投資利益率が15%以上(中小企業者等にあっては、5%以上)であることについて経済産業局の確認を受けたものをいう。   3 中小企業投資促進税制の拡充 中小企業投資促進税制の適用期限を平成29年3月31日まで3年間延長し、生産性向上設備投資促進税制の対象設備等に該当するものについては、即時償却又は7%(資本金3,000万円以下の特定中小企業者等であれば10%)の税額控除ができる。 (了)
#38(掲載号)
#石田 寿行
2013/10/08
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《速報解説》 民間企業等によるベンチャー投資等の促進措置(新事業開拓事業者投資損失準備金の損金算入及び登録免許税の軽減措置)~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 民間企業等によるベンチャー投資等の促進措置 (新事業開拓事業者投資損失準備金の損金算入及び登録免許税の軽減措置) ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   弁護士 木村 浩之   1  はじめに 昨年(平成24年)12月の安倍政権の発足後、日本経済の再生に向けて、円高・デフレから脱却し、強い経済を取り戻すために必要な経済対策や成長戦略の策定をすることを目的として、官邸主導の下、内閣に日本経済再生本部が設置された。 そして、この日本経済再生本部で議論された内容を踏まえて、平成25年6月14日には、「日本再興戦略」(新たな成長戦略)が閣議決定されている。 今般、日本経済再生本部では、この新たな成長戦略の実現に向けて、臨時国会における産業競争力強化法案の提出などを予定しているところであるが、成長戦略の一つの柱として、産業の新陳代謝を促すことを目標とする日本産業再興プランが策定されている。 この日本産業再興プランには、民間投資の活性化、ベンチャー投資の促進、事業再編の促進などが具体的な政策目標として掲げられており、その一環として、企業によるベンチャー投資等を促進するための税制の創設が提言され、それが今回の「民間投資活性化等のための税制改正大綱」に盛り込まれた形になっている。 以下、新たに創設される予定のベンチャー投資等の促進税制について解説する。   2 ベンチャー投資促進税制(投資損失準備金の損金算入) ベンチャー企業が大きく成長するためには、設立から調査研究を経て、事業としての拡大を図る時期(事業拡張期)において、専門的なノウハウを有するベンチャーファンドからの資金調達等が重要であるとされている。そして、ベンチャーファンドを活性化するためには、ファンドに投資する企業(法人投資家)が必要不可欠である。 そこで、今回の税制改正では、この投資を促進するために、ベンチャーファンドに資金を供給する法人に対して、税制面での優遇措置が講じられることになる。 具体的には、投資先が新規性を有する事業を行う中小企業であり、事業拡張期にあることといった一定の要件を満たすベンチャーファンド(投資事業有限責任組合)を通じてベンチャー企業に出資して株式等を取得した法人は、その投資の失敗による損失に備えて、株式等の帳簿価額の80%までを損失準備金(仮称:新事業開拓事業者投資損失準備金)として損金算入することが認められることになる(適用は平成26年4月1日以後終了事業年度)。   3 創業促進のための登録免許税の緩和 日本では(特に地方において)企業の開廃業率が低迷しており、それによって地域経済が停滞していることが指摘されている。これを打開するためには、地域に密着した企業の創設を促進することで、地域経済の活性化を図ることが重要であるといえる。 そこで、今回の税制改正では、創業手続に係るコストを低減することで創業を促進するために、会社設立時の登録免許税を緩和する措置が講じられることになる。 具体的には、国の認定を受けた市区町村において、その支援を受けて株式会社の設立をする場合は、その設立登記に係る登録免許税の税率が通常の2分の1である1,000分の3.5(最低税額75,000円)に軽減されることになる(適用は産業競争力活性化法(仮称)の施行日より平成28年3月31まで)。 (了)
#38(掲載号)
#木村 浩之
2013/10/04
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monthly TAX views -No.9-「デジタル財の消費税課税の検討を急げ」

monthly TAX views -No.9- 「デジタル財の消費税課税の検討を急げ」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   消費税率の引上げが決まると、平成26年度税制改正を決める党税調の議論が始まる。それに合わせて、政府税制調査会も議論を始める。 この場での主要議題は、番号制度(マイナンバー)と国際課税だ。国際課税分野での課題といえば、総合主義・帰属主義の問題とBEPSの問題にわが国がどう対応していくかという点だが、忘れてならないのは、デジタル財の国境を越えた取引への消費税をどう課税するのかという問題である。 実はこれについては、昨年の秋口に、筆者も加わって、財務省で研究会が開催され、その成果をまとめてある。OECDのパブコメ部分を加えた上で公表ということなので、未だ公表されていないが、筆者の個人的見解は以下のとおりである。 *  *  * まず現状の認識である。わが国消費税法では、デジタル財のようなサービスの取引については、サービスの供給地で課税することとされている(消費税法4条3項2号等)。そこで、日本の消費者が海外の事業者から音楽の配信など直接デジタル財を購入する場合には、事業者は海外にいるので課税されない(不課税)。 この結果、電子書籍の配信事業を例にとると、アマゾンや楽天koboなど外国の事業者を通じてサービスを購入する場合と、ソニーなど国内事業者を通じて購入する場合との間に課税の公平性の問題が生じていることになる。 これは、公平性を損なうだけでなく、税収にも不測の影響を及ぼすことになる。最終的には、国家間の税収配分という問題にも発展していきかねないので、消費税率の引き上がるこの機会をとらえて対策を講じる必要がある、これが今日の状況である。 *  *  * この問題の対応に当たって参考になるのは、EUの課税制度である。EUは、OECDの検討を経て、2003年7月より、e-VATと称する新たな消費税(付加価値税)制度を導入し、国境を越えるデジタル財の取引に課税することに成功した。 具体的には、デジタル財の課税地について、サービス提供地から消費者がサービスを受ける場所に変更することによって、EU各国が課税地となり、外国の事業者の納税義務が発生することとなった。 次に、BtoB取引の場合には、輸入事業者自身が申告をするリバースチャージ方式を導入した。輸入事業者は、消費税申告時に納税と同時に仕入税額控除になるので、これまで以上に税負担が増えるわけではない。 BtoCについては、外国の事業者をEU域内1ヶ国に登録させ、そこに納税させる方式(登録制)をとった。外国の事業者がEUの1ヶ国(例えばルクセンブルク)に登録する義務を課し、彼らがサービスを提供する国(例えばドイツ、フランス、英国・・・)の消費税を、代金に上乗せして徴収させることとした。 徴収した税額は、登録した国(ルクセンブルク)に納付され、納付を受けた国は、そのVATを、取引額に応じて消費国(ドイツ、フランス、英国・・・)ごとに配分するのである。 これらの税務執行は、おおむね適切に運営されているようだ。 すでにわが国では、先に述べたような内外の配信サービス業者のイコールフッティングの問題を生じさせており、事業者間取引(BtoB取引)についてはリバースチャージ方式、対消費者取引(BtoC取引)についてはわが国の消費者にサービスを提供する事業者を登録させる登録制を軸として議論を進める必要がある。 もっとも、わが国ではリバースチャージ方式は初めての経験であり、うまく導入できるかという問題がある。そこで、BtoBについても登録制で対応すべきだという考え方もある。 一方で登録制については、日本の消費者を相手に直接デジタル財の取引をする外国の事業者をどう把握し、登録させるか、登録しない事業者はどうするのか、徴収漏れがあった場合にはどうするのか、といった執行面での問題がある。完全な制度は望むべくもないが、何とか知恵を出して乗り越えていく必要がある。 この問題は、事業者間の不公平、課税の公平性という問題だけでなく、わが国の課税権の確保という観点から、しっかり議論を行っていくことが求められる。 (了)
#38(掲載号)
#森信 茂樹
2013/10/03
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法人・個人の所得課税における実質負担率の比較検証 【第2回】「実質負担率の比較と有利不利の境界線」

法人・個人の所得課税における 実質負担率の比較検証 【第2回】 「実質負担率の比較と有利不利の境界線」   (株)よつばコンサルティング 税理士 石渡 晃子 税理士 青木 岳人   はじめに 第1回では、法人の所得に対する課税制度と個人の所得に対する課税制度を整理した。そのうえで、どちらの形態をとるのが有利なのか、これは実質負担率を計算しなければ、比較できないことも述べた。 税理士業務を行うなかでしばしば遭遇するのが、法人の所得に対する税と個人の所得に対する税、いずれが有利なのか、という問題である。 いわゆる「法人成り」を行うにあたって有利となるラインはどこか、という問題もそのひとつである。これは個々人の家族体系や事業規模形態にも左右されるため、一概にラインを示すことは難しいが、「所得1,000万円」を超えるか超えないかがひとつの目安とされることが多い。 では、その1,000万円という数字は、何を根拠に導き出した金額であろうか。 そこで本連載の第2回では、実際に課税所得が①500万円の場合、②1,000万円の場合、③2,500万円の場合、④5,000万円の場合、⑤1億円の場合、について実質負担率を計算し、比較と検討を行うこととする。   1 実質負担率の計算 前回は「課税所得が1,000万円」の場合について、簡単に実質負担率の計算を行った。今回は、もう少し細かい設定で計算してみよう。 前提として、①個人の所得はすべて事業所得(物品販売業)かつ青色申告を行うものとし、②法人の規模は資本金2,000万円、従業員数は50人とし、③個人と法人、いずれの場合も東京都23区内に納税地を置き、④事業税については1年目と仮定して翌年の費用効果は考慮外とする。また、⑤個人の所得に対する税額の計算においては、課税所得から青色申告特別控除65万円のみを控除し、各種所得控除については考慮外とする。   同様に、いくつかの課税所得パターンによる実質負担率を下記に示す。 現況税制下での実質負担率 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【実質負担率のシミュレーション】 個人の所得の場合 法人の所得の場合 【実質負担率の推移】   2 実質負担率の比較と検討 個人であろうと法人であろうと、営む事業の内容は何ら変わらない。しかし、「個人」と「法人」、課税所得の入る箱が変わるだけで、つまり、税の種類が異なるだけで、上記のように実質負担率にはこれほどの差が生じる。 課税所得が500万円の場合、個人の実質負担率のほうが8.12%低く、課税所得1,000万円でもまだ個人の実質負担率のほうが1.57%低い。 一般的に言われる「1,000万円」のラインで実質負担率を比較してみると、個人の実質負担率の方が低い。 ただし、仮に法人で得た1,000万円の利益すべてを個人へ給与として分配した場合、個人に対する税においては給与所得控除の控除があるため23%の税率までの適用となり、事業所得として得た場合より一段階下のブラケットまでの税率で済む。また、給与所得であるため事業税が課されない。実質負担率のみを比較すれば個人の形態をとるほうが若干有利なものの、1,000万円が有利なラインとされる所以であろう。 さて、話を実質負担率の比較に戻そう。 課税所得2,000万円のラインで、個人と法人の有利不利が完全に入れ替わり、課税所得2,500万円では5.17%、課税所得5,000万円では8.22%、課税所得1億円では10.32%もの開きが出てくる。単に法人形態をとるだけで、である。 これは、所得税は超過累進税率により最高40%まで所得税が課されるのに対し、法人税は比例税率により25.5%で頭打ちになることが大きな理由である。 所得税の場合、課税所得500万円の場合を1とすると、課税所得が1億円となると、所得ベースは20倍であるにもかかわらず、税額は83.5倍にもなる。課税所得1,000万円で3.5倍(2倍※カッコ内倍数は課税所得の倍率を示す。以下同様)、2,000万円で11.2倍(4倍)、2,500万円で15.7倍(5倍)、5,000万円で38.3倍(10倍)と、超過累進税率を採用するがゆえ、課税所得の伸び以上に税額が大きく伸びる。 一方、法人税の場合、課税所得500万円の場合を1とすると、課税所得が1億円となると、所得ベースは20倍であるのに対し、税額は32.9倍となる。課税所得1,000万円で2.3倍(2倍)、2,000万円で5.7倍(4倍)、2,500万円で7.4倍(5倍)、5,000万円で15.9倍(10倍)であり、比例税率を採用するため、課税所得の伸びと税額の伸びは比例関係に近くなる。800万円以下の所得については15%の軽減税率が適用されるため、完全な比例関係にはならないが、所得税と比較すれば、かなり比例関係に近いものとなる。 他の税目もみてみよう。 事業税(法人の場合は暫定措置のため地方法人特別税もあわせて考える)をみると、法人の所得に対する課税のほうが倍ほど大きい。 しかし住民税については、個人住民税は10%の比例税率だが、法人住民税(法人税割額)は課税標準を法人税額とするため、その税率は約2.6%(*1)~約5.3%(*2)であり、均等割額を除いて比較すれば、個人の所得に対する課税のほうが倍ほど大きい。 (*1) 法人税15%(軽減税率)×都民税17.3% (*2) 法人税25.5%×都民税20.7%(超過税率)   個々の税のみを比較すれば、個人のほうが有利、法人のほうが有利、と分かれるが、全体としてみれば、課税所得2,000万円のラインで法人で課税所得を得るほうが実質負担率は低くなる。 このように、事業を行い経済的利益を獲得しその経済的利益を課税所得として税が課される、という実態そのものは同じであっても、それを個人として獲得するのか、法人として獲得するのか、により税額が異なり、実質負担率は大きく変わることとなる。 その仕組みの是非はさておき、これをうまく利用して節税へつなげたいのは言うまでもない。 今回のシミュレーションの場合、課税所得500万円では、実質負担率は8%程度個人が有利であり、その税額には40万円ほどの乖離がある。これが課税所得1億円ともなると、実質負担率は10%程度法人が有利となり、その税額には1,000万円以上もの乖離があるのである。 最後に、平成28年1月1日時点における上記同様のシミュレーションを行ってみよう。 平成28年1月1日時点税制下(予定)での実質負担率 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【実質負担率のシミュレーション】 個人の所得の場合 法人の所得の場合 【実質負担率の推移】   平成28年1月1日現在では、現況の税制とは①所得税の最高税率は45%(所得4,000万円超のブラケット追加)となる点、②復興特別法人税課税の適用期間は終了となる点が異なる。 つまり、個人の所得に対する課税は強化され、法人の所得に対する課税は下がる傾向にある。 この場合、まず、個人と法人の有利不利が入れ替わるラインが変化する。 また、課税所得が大きくなるに従い、その負担率の乖離も現況より大きくなる。1億円の課税所得の場合、現況では10%程度の差であるが、平成28年1月1日にはその差が約16%にまで大きくなる。 このように、個人で所得を得るか法人で所得を得るかの有利不利は、その時代によって変化するのである。 *  *  * 以上第2回では、同じ“事業を行い獲得した所得”であっても、個人・法人、どちらの形態で獲得したのかにより、税金の実質負担率が異なることについて比較と検討を行った。 では、個人に対する所得について、同じ課税所得であれば必ず同じ実質負担率となるのであろうか。 また、超過累進税率をとる以上、課税所得が大きくなればなるほど、実質負担率は最高税率に限りなく近づくのであろうか。 両者とも、答えは否である。 本連載の最終回となる第3回では、所得税に焦点をあて、一部分離課税を採用するが故の超過累進税率の矛盾点について考察する。 (了)  
#38(掲載号)
#青木 岳人
2013/10/03
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第6回】「相続財産を確定し評価することの意義」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第6回】 「相続財産を確定し 評価することの意義」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   〔相続税の課税対象は民法上の相続財産とは異なる〕 法律上、相続人になるは誰なのか(相続人の範囲)、その確定手続については、本連載の第3回から第5回にかけて説明してきた。 今回からは、相続の対象となる財産(*1)にどのようなものがあり、その評価をどうするか、という点について説明を行う。 まず、相続の対象となる財産であるが、基本的には、他界した人の所有するすべての財産が対象となる(民法896条)。 なお、死亡保険金、死亡退職金は、法律上は基本的には相続の対象とならないため、遺産分割協議の対象にはならない。また、生前に贈与した財産は、他界した人の財産ではなくなっているため、これも相続の対象とはならない。 ただし、相続税の計算上は、法律上の相続財産だけではなく、死亡保険金・死亡退職金(相続税法3条)、暦年課税制度を適用した相続前3年以内贈与(相続税法19条)(*2)、相続時精算課税制度を適用した贈与(相続税法21条の15)は、相続税の対象となる。   〔申告実務における財産評価の重要性〕 相続の対象となる財産が「確定」できたら、次に、その「評価」を行う必要がある。 相続財産の評価を行う目的は、遺産分割協議(どの相続人がどの財産を相続するかという話合い)を行う上で、どの財産がいくらの価値があるかわからないと意思決定ができないためである。 また、相続税の計算を行う上で、対象となる財産の評価がわからないと、相続税申告が必要か否か、また必要な場合、相続税がいくらになるのか、計算ができない。 このように相続対象となる財産について、「遺産分割協議」、「相続税申告」という2つの観点から評価を行う必要がある。 なお、遺産分割協議における財産評価は、通常、取引価額を意味し、相続税申告においては財産評価基本通達における評価を通常意味するため、評価額が異なる可能性がある。 具体的には、土地の相続税評価は、多くの場合、路線価を基礎にして評価を行う。一方、遺産分割協議における土地評価は、取引価額であるため、通常、路線価を基礎にして評価した金額よりも大きくなる(*3)。 実務上、家庭裁判所で争いになっているような場合でなければ、相続税評価額を遺産分割協議における評価額とみなして進める場合や、相続税評価額について一定の調整を行い(土地については相続税評価額を80%除することにより公示価格ベースに引き直すなど)、調整後評価額をもって遺産分割協議における評価額として協議を行う場合が多いと思われる。   〔相続税申告の有無を把握しスケジュールを立てる〕 相続税申告が必要か否かでスケジュールが異なるため(*4)、相続税申告業務の依頼を受けた初期の段階で、相続税の対象となる財産の範囲と評価がおおよそ把握できたら、相続税の基礎控除と比較することで、相続税申告の必要の有無、及び相続税の概算額について、依頼者に伝えた方がよいであろう。 ただし、その後に相続税の対象となる財産が発見されたり、評価が異なる結果となった場合には、相続税申告の必要の有無、相続税の概算額について、異なる結果となる可能性があるため、慎重に対応することが必要である。 (了)
#38(掲載号)
#根岸 二良
2013/10/03
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第10回】「法人税申告書[別表15]記載のポイント」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第10回】 (最終回) 「法人税申告書[別表15]記載のポイント」   公認会計士・税理士 新名 貴則   1 交際費課税の改正と別表15の様式変更 平成25年度改正により、交際費課税(平成25年度末まで)は次のとおりに改正された。 【改正後の中小企業の特例のイメージ】   これに伴い、法人税申告書別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」の様式も変更されている。 平成25年4月1日以後終了事業年度分の別表15の様式は、次のとおりである。 【法人税申告書別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。 新しい別表15では、上記の改正に対応するため、下記のように(2)と(3)の文言が変更されている。   2 別表15のケーススタディ 次の事例に基づいて、別表15の記載上の留意点を解説する。 ◆ケースⅠ◆ 資本金5億円の場合 資本金が1億円を超えているため、交際費等は全額が損金不算入となる。これは平成25年度税制改正の前後で変更はない。また、別表15の記載の仕方も変更はない。 この場合、交際費等の10,000,000円に対して定額控除限度額はゼロであり、10,000,000円全額が損金不算入となる。 (別表15の記載例)   ◆ケースⅡ◆ 資本金1億円の場合 (資本金5億円以上の大法人の完全子会社ではない) 資本金が1億円以下であるため、一定の控除額が認められる。ただし、上記で述べたとおり平成25年度税制改正により控除額が改正されており、その適用のタイミングによって次のとおり控除額に違いが生じるため、注意が必要である。 ① 平成25年3月31日以前に開始した事業年度の場合 この場合は交際費課税に係る改正の適用前であるため、定額控除限度額は600万円となる。 また、交際費等の支出額と定額控除限度額のうち少額の方に90/100を乗じた金額が、損金算入限度額となる。 (別表15の記載例) ② 平成25年4月1日以後に開始した事業年度の場合 この場合は交際費課税に係る改正の適用後であるため、定額控除限度額は800万円となる。 また、交際費等の支出額と定額控除限度額のうち少額の方の全額が、損金算入限度額となる。 (別表15の記載例)   (連載了)
#38(掲載号)
#新名 貴則
2013/10/03
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第17話】「源泉徴収に係る所得税の調査(その3)」

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第17話】  「源泉徴収に係る所得税の調査(その3)」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   (前回の続き) 「ということは・・・」 山口調査官は、少し考えながら、言葉を続けた。 「・・・もし、支給者である徴収義務者が受給者に対して源泉所得税を徴収しなかった場合でも、受給者は、本来支払うべき源泉所得税を、確定申告から控除をすることができるんですね」 山口調査官は、田村上席の顔を見て、確認する。 「そのとおりだよ」 田村上席は大きく頷く。 「しかし・・・そうすると、もし、支給者から源泉所得税を徴収できなくなったら、永久に、その税金は国庫に入らないということですか」 山口調査官は、またペンをとって、図を描いた。 山口調査官は、図を見ながら説明する。 「この図で説明すると、本来、国に源泉所得税が100入るところ、50しか入っていない・・・という状態で、支給者が・・・例えば、倒産した場合、支給者である徴収義務者から源泉所得税50を徴収できなくなります。・・・でも、この場合、税務署は受給者に対して、源泉所得税100の控除を拒否できないということなんですね」 田村上席も図を見ながら、頷く。 「そうだな・・・確かに、受給者の確定申告で、控除する源泉所得税を100から50にすれば、簡単に解決しそうな感じであるが・・・しかし、源泉所得税制度では、そのようになっていない・・・」 田村上席は、最高裁(平成4.2.18判決)の判例の一部を読み上げる。 「・・・しかし、支給者が源泉所得税を徴収・納付していないのに、受給者が確定申告において、その徴収・納付されていない源泉所得税を控除できるというのは、何となく不合理に思えるのですが・・・」 山口調査官は、不満そうに言う。 「そうだな・・・結局、このケースにおいては、源泉所得税の50は、国庫に入ってこないから、国の損失だな」 田村上席が付け加える。 「受給者である本来の納税義務者が目の前にいながら、その受給者から受給者の本来の所得税を徴収できないのですからね。こんなおかしいことはないと思いませんか・・・国と受給者との間には「所得税」という債権債務関係が発生しているにもかかわらず、源泉徴収制度がそれを邪魔している・・・」 山口調査官は、悔しそうな表情をする。 「・・・それに・・・」 山口調査官は、机の引き出しからファィルを取り出す。 「これ、国税庁のホームページからプリントした「最近10年間の動き(平成11年7月~21年6月)」ですけど・・・」 山口調査官は、言葉を続ける。 「ここで、所得税の源泉徴収制度について・・・このように説明しています」 山口調査官は、その文章を読み上げる。 山口調査官は、読み上げた文章を田村上席に見せる。 「・・・源泉徴収制度が・・・ここでいう前取制度というものであれば・・・その税額が十分でなければ・・・確定申告で是正させるという考え方もありうると思うのですが・・・」 「確かに、山口君の考え方もあると思う・・・しかし、何度も繰り返すが、最高裁が述べているように、国税通則法や所得税法からは、国と受給者の間で、源泉所得税の是正(精算)をすることはできないようになっていると解せられる・・・つまり、源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がないんだ・・・それぞれ別個の債権債務ということになる・・・」 田村上席は自分にも言い聞かせるように話をする。 「そうですか」 山口調査官は、小さく頷く。 「ただ、山口君が指摘するケースというのは、かなり多くあるのかもしれないな。その意味で、国はかなりの損失を被っているのかもしれない・・・」 田村上席は「国税庁統計年報書」を取り出して、源泉徴収税額の累年比較の欄の金額を見ながら、説明する。 「・・・平成21年分の源泉徴収税額は・・・12兆5,926億円で・・・そのうち8兆6,269億円が給与所得分だね・・・」 「けっこう大きい金額ですね」 山口調査官が感心する。 「いや、ピーク時には、源泉徴収税額は20兆円を超えている・・・えっと、平成3年から5年だから・・・ちょうどバブル時期の終わり頃かな・・・」 田村上席がコメントする。 「・・・源泉徴収税額が12兆円であっても、源泉徴収の漏れが、仮に、その1%だとしたら、それだけで1,200億円の源泉徴収洩れが発生する・・・」 山口調査官は少し大袈裟そうに言う。 「1,200億円か・・・確か、平成25年度の税制改正で創設された「国内設備投資を促進するための税制措置」によって、1,050億円の税収が減少すると言われているが、それに匹敵する源泉徴収洩れになるということか・・・」 「その金額って、大きいですよね・・・やっぱり、何らかの立法が必要なんでは・・・」 山口調査官は、小さくつぶやいた。 (了)
#38(掲載号)
#八ッ尾 順一
2013/10/03
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載38〕 民事再生法において資産評定がある場合とない場合

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載38〕 民事再生法において資産評定がある場合とない場合   税理士 長岡 栄二   Q 民事再生法による再生手続開始の決定を受け、財産評定の作成に着手しています。 民事再生等では、資産評定がある場合とない場合で、欠損金等の取扱いに違いがあるといわれていますが、どのような違いがあるのでしょうか。 A 民事再生法による認可決定を受けて債務免除益が計上される場合には、いわゆる期限切れ欠損金と青色欠損金から構成される設立当初からの欠損金を損金算入することができるが、「資産評定」がある場合とない場合では、期限切れ欠損金から優先して控除するのか、青色欠損金から優先して控除するのかの違いがある。 解 説 1 民事再生法の概要と関連税制 民事再生法は、経済的に窮境にある債務者について、債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、債務者と債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、その債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的としている(民事再生法1)。 民事再生手続の認可決定までの標準的な流れは、次のとおりである。   再生計画の認可決定によって計上される多額の債務免除益には、それに見合う損金や青色欠損金がないと、税負担が生じるおそれがある。通常、民事再生を申し立てる法人は、業績等が悪化している場合がほとんどで、多額の含み損や欠損金を有している場合が少なくない。しかし、青色欠損金の繰越期間は、最長9年間(平成20年3月31日以前終了年度の繰越期間は最長7年間)である。 法人税法では、再建計画への影響を考慮して、民事再生法等の適用を受ける一定の場合には、いわゆる期限切れ欠損金を含めた設立当初からの欠損金を控除して課税所得を圧縮できるようになっている。 また、再生手続開始の決定を受けた場合には、法人税法上、「再生手続開始の決定があった場合の損金経理方式」と「再生計画認可の決定があった場合の別表添付方式」という2つの評価損の損金算入制度が用意されている。 以下では、民事再生手続における債務者について、評価損益と設立当初からの欠損金の規定を中心に解説する。   2 民事再生法における財産評定と法人税法における資産評定などの相違点 民事再生法における財産評定(民事再生法124①)は、再生手続開始決定日の処分価値により行われるが、清算価値以上を再生債権者に付与する必要があるための手続であり、財産評定によって資産の帳簿価額を付け替える必要はない。 この点は、別表添付のみを要件とし、帳簿価額の付替えを要しない法人税法における「別表添付方式」による「資産評定」と同様であるが、財産評定による価額を新たな帳簿価額として付け替える会社更生法や、法人税法における帳簿価額を付け替えて減額する「損金経理方式」とは異なる。 なお、ここでは民事再生法における「財産評定」と、法人税法における「別表添付方式」による「資産評定」は、異なる手続として用いる。 ちなみに、法人税法における評価損益の時価は、使用収益する際に通常付される(正常)時価による(法基通4-1-3、9-1-3)。また、時価の算定時期は、「損金経理方式」による評価替えが再生手続開始決定日の期末時価、「別表添付方式」による「資産評定」が再生手続認可決定時の時価による。 民事再生法における財産評定の時価と、法人税法における評価損益の時価は、その意義及び時点においても異なるため注意が必要である。 さらに、ここでは詳細には触れないが、民事再生法における財産評定が全ての資産に対して行われるのに対し、法人税法における評価損益の対象資産は限定的である点も、あわせて注意したい。   3 再生手続開始の決定があった場合の資産の評価損【損金経理方式】 再生手続開始の決定により財産評定を行い(法基通9-1-3の3)、資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額した評価損の金額は、評価換え年度の損金の額に算入される(法法33②、法令68①)。この規定は損金経理を要件とすることから、一般に「損金経理方式」と呼ばれる。 4 再生計画認可の決定があった場合の資産の評価損益【別表添付方式】 (1) 概要 再生計画認可の決定時の価額により「資産評定」を行っているときは、資産の評価損益の額は、認可決定時の事業年度の益金の額又は損金の額に算入される(法法25③、法法33④)。この規定は別表の添付が要件とされることから、一般に「別表添付方式」と呼ばれる。 別表添付方式による評価損益の計上は、後述する「5 設立当初からの欠損金」の「(3) 評価損益の計上が行われる場合」に該当し、民事再生における期限切れ欠損金を優先的に控除するための要件の1つとなる。 (2) 留意点   5 設立当初からの欠損金 (1) 概要 欠損金は、平成23年12月税制改正によって、青色欠損金を除外せずに設立当初からの欠損金として整理され、期限切れ欠損金と青色欠損金から構成されるものと改正された。 あわせて、設立当初からの欠損金の控除額(損金算入額)のうち青色欠損金に相当する部分は、翌期に控除対象とならないように切り捨てられることとなった。 (2) 設立当初からの欠損金を利用できる一定の場合 次の①②③のいずれかの事由に該当する場合には、対象利益額①②③の合計の範囲で、設立当初からの欠損金が控除できる(法法59②、法令117一)。 ③の事由に該当するか否か、つまり、「別表添付方式」による評価損益の計上が行われるか否かによって、以下(3)と(4)のように、期限切れ欠損金の優先性に違いが生じる。 (3) 評価損益の計上が行われる場合 再生手続認可の決定による債務免除益等が計上される際に、上記(2)③の事由に該当する場合、つまり別表添付方式により資産の評価損益の計上が行われる場合の設立当初からの欠損金は、上記(2)債務免除益等①②③の合計額の範囲内で、期限切れ欠損金を青色欠損金に優先して控除(所得金額を限度)できる。 (4) 評価損益の計上が行われない場合 再生手続認可の決定による債務免除益等が計上されても、上記(2)③に該当しない場合、つまり、別表添付方式による評価損益の計上が行われない場合の設立当初からの欠損金は、青色欠損金の部分から先に利用されたものとされる。期限切れ欠損金の部分は、上記(2)債務免除益等①②の合計額の範囲で控除(青色欠損金控除後の所得金額を限度)できる。 評価損益の計上が行われない場合は、債務免除益等に対し青色欠損金を優先して控除するが、中小法人等以外の法人については、青色欠損金の控除額が制限された金額であっても設立当初からの欠損金で控除が可能であった。そのため、債務免除益等を超える部分の所得についても結果的に控除が認められており、課税上弊害が生じていた。 平成25年度税制改正によって、債務免除益等を超える部分の所得が生じている場合の設立当初からの欠損金の控除額は、青色欠損金の控除後の所得金額から「債務免除益等を超える部分の所得金額の20%相当額」を控除した金額を限度とすることに改正された(法法59②)。 なお、青色欠損金の所得制限がない中小法人等については、この改正による変更はない(法法57⑪、59②)。 (了)
#38(掲載号)
#長岡 栄二
2013/10/03
会計 固定資産 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第20回】減損会計①「減損会計の目的」─損失の早期計上

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第20回】 減損会計① 「減損会計の目的」 ─損失の早期計上   仰星監査法人 公認会計士 菅野 進   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ×3年3月31日(決算日) (*1) 固定資産400÷耐用年数4年=減価償却費100 ×4年3月31日(決算日) (*2) 固定資産の帳簿価額300-回収可能価額100=減損損失200 〈会計処理の解説〉 企業は事業用固定資産を事業に用いて利益を得ることを期待しているため、その固定資産自体の市場価格が変動しても、企業にとっての価値が変動するわけではありません。また、事業用の固定資産を使って利益を得るには、通常、ある程度の時間が必要となります。 そのため、事業用の固定資産は金融商品のように毎期末に時価評価を行うことはせずに、貸借対照表では取得原価から減価償却費等を控除した帳簿価額で評価され、損益計算書では減価償却費が計上されます(図1)。 図1 しかし、上記のように減価償却による費用配分等を通じて貸借対照表価額を評価する事業用の固定資産であっても、将来の収益性(当該事業から得ることのできる将来のキャッシュ・フロー)が低下し、当該固定資産への投資額の回収が見込めなくなった場合に、回収可能性を反映させ固定資産の帳簿価額を減額させる必要があります。 そのような場合にその事業から得ることができる将来のキャッシュ・フロー(回収可能価額といい、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い方となります。詳しい説明は減損会計③で行います)と現在の事業用固定資産の帳簿価額を比較して、当該固定資産の過大な帳簿価額の部分を早めに減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理を「減損会計」といいます(図2)。 図2 すなわち、事業用固定資産を400百万円で購入したものの、B外食事業がふるわないため、翌期以降使い続けていたとしても100百万円しか回収できない見込みとなってしまった場合に、期末帳簿価額300百万円と回収見込額100百万円の差額200百万円を将来の損失とせずに、当期に損失を認識しようというのが減損会計です。 では具体的に、どのように減損損失を認識するのでしょうか。 次回の減損会計②では「減損会計のステップ ~減損損失の測定までの流れ」について解説します。 (了)
#38(掲載号)
#菅野 進
2013/10/03
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