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《速報解説》 平成25年税制改正大綱における「金融・証券税制」改正のあらまし①―日本版ISAの創設―

《速報解説》 平成25年税制改正大綱における 「金融・証券税制」改正のあらまし① ―日本版ISAの創設―   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   1 はじめに 平成25年度税制改正大綱における金融・証券税制に係る改正の目玉は「日本版ISA」及び「金融所得課税の一体化」である。 その目的について、大綱(与党大綱)では以下のように述べている。 本稿では、その日本版ISAについて解説する。 ISAという呼称は、英国のISAs(Individual Savings Accounts)を参考にしたことによる。 正式には、「少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置」という。ISA専用の個人口座の中で保有する上場株式や投信信託の配当・譲渡益を非課税とするもので、「証券マル優」とも呼ばれる。 制度自体は麻生内閣の時にすでに法制化され、平成26年1月から施行されることとなっていたものである。しかし、金融庁から、使いにくい点があるとして内容の改正要望が出ていた。 今回の改正では、内容を変更したうえで、予定どおり平成26年1月1日から施行されることになる。   2 改正の内容 改正前は、平成26年から毎年100万円まで3年間に行われる上限300万円までの投資について、10年間は非課税運用ができるが、10年経過後は課税となるという時限措置となっていた。 それが改正後は、毎年100万円まで5年間に行われる上限500万円までの非課税投資について、5年経過した各年分の非課税投資枠は6年目の非課税枠として使えることとなった。 たとえば、2014年に100万円の非課税投資を行った場合、5年経過後の2019年には2014年分の非課税枠は消えるが、100万円の投資資産は、新たに生じた2019年分の100万円の非課税枠に移すことにより、制度終了が予定される平成35年末まで、非課税投資を続けることができる。 手続面でも改善がなされた。 改正前は毎年新たなISA口座を作る必要があったが、改正により、同じ口座であれば引き続き使えることとなり、投資家にとって使いやすいものになる。 対象商品の範囲についても、改正前は株式関連商品だけであったが、債券や公社債も対象となっている。 株式投資はリスクが大きく、老後のための生活資金を預けるのは怖いと考える向きは多いであろうが、債券・公社債のような比較的価格変動リスクが小さい金融商品が対象になったことで、ISAに魅力を感じる層の裾野が大きく広がったといえるだろう。 現行の少額貯蓄に対する非課税優遇制度には、障害者向けにはマル優・特別マル優があり、勤労者で勤務している会社が加入していれば財形住宅・年金貯蓄制度が使える。 しかし、加入資格者は限られている。 ISAにはそうした加入者の資格制限がなく、国民の約8割が潜在的な対象者となるといわれている。 日本ではリーマンショック以来の株価の値下がりで痛い目に遭った記憶を引きずっているため投資に対するアレルギーがあるのか、制度に対する関心が低いように思われるが、英国では国民の5割が加入している非常にポピュラーな制度である。 口座開設は今年(平成25年)の10月からであるが、それに向けて、すでに金融機関による新規顧客開拓のための活動が始まっているようである。 ISA口座を利用する側としては、制度の内容をよく理解したうえで、個々の許容できるリスクの度合いをしっかり検討したうえで、顧客のために最適な投資ポートフォリオを構築することが必要であろう。 フィナンシャルアドバイザーや税理士など、親身になって相談にのってくれる中立の専門家のアドバイスを求めることも検討に値するだろう。 〈日本版ISA制度の拡充〉 (注) 例えば、2014年に100万円投資すると、5年経過後は100万円を上限に2019年の非課税投資枠に移すことができる。   (了)
#6(掲載号)
#小林 正彦
2013/02/15
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《速報解説》 「合理的な再生計画」に基づく経営者の私財提供に係る譲渡所得の非課税措置─平成25年度税制改正大綱─

《速報解説》 「合理的な再生計画」に基づく 経営者の私財提供に係る 譲渡所得の非課税 ─平成25年度税制改正大綱─   OAG税理士法人 税理士 奈良 雅一   1月29日に閣議決定された平成25年度税制改正大綱では、「「合理的な再生計画」に基づく経営者の私財提供に係る譲渡所得の非課税措置」について明記されている。 これは、中小企業者に該当する内国法人の取締役等である個人で、その内国法人の保証人であるものが、その個人が所有しているものを、その内国法人に係る合理的な再生計画(※)に基づき、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間にその内国法人に贈与した場合には、次の要件を満たしているときに限り、みなし譲渡益課税を適用しないこととする措置である。 これまでの措置では、経営者が保証債務の履行として金融機関に対して直接行う私財提供については譲渡益が非課税であったが、経営者が金融機関だけでなく、再生企業である内国法人に対して私財を提供した場合にも範囲が拡大されるものである。 例えば、経営者個人が所有している土地建物を、その個人が経営する内国法人が事務所・事業所等として賃借している場合において、これまでは保証債務の履行として、その土地建物を金融機関に提供した結果、その後競売等により処分され、当該土地建物を取得した第三者に対する賃借料の支払いが発生したり、使用収益するために内国法人自身が購入しなければならないケースも想定された。 しかし今後は当該措置を活用して内国法人に贈与を行えば、経営者個人にみなし譲渡益課税が行われることなくその内国法人に所有権が移転することができるため、その内国法人自身が当該土地建物を事務所・事業所等として引き続き使用収益することが可能となり、自主的な再生に資すると考えられる。 なお、当該措置の対象となる私財は現にその内国法人の事業の用に供されている資産に限られ、有価証券は除かれることとなるため、注意が必要である。 (※) 「合理的な再生計画」とは、「一般に公表された債務処理を行うための手続きについての準則に則り作成された計画」をいい、私的整理に関するガイドライン、RCCが定める準則、中小企業再生支援協議会が定める準則等が想定されている。   (了)
#6(掲載号)
#奈良 雅一
2013/02/15
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《速報解説》 事業承継税制(非上場株式等の納税猶予)の拡充について─平成25年度税制改正大綱─

《速報解説》 事業承継税制(非上場株式等の納税猶予)の 改正について ─平成25年度税制改正大綱─   OAG税理士法人 資産税部 部長 税理士 奥田 周年   後継者が相続(遺贈含む)や贈与で非上場株式等を取得した場合は、その後継者の納付すべき相続税や贈与税の納税について、一定額(注)が猶予される(措法70の7、70の7の2)。 (注) 原則として、相続の場合は発行株式総数の3分の2に対応する相続税の80%、贈与の場合は発行株式総数の3分の2に対応する贈与税の全額が限度となる。   ただし、この制度を適用するための要件が厳しく、利用者数も少ないことから、以前より改正要望があったところ、平成25年度税制改正大綱において、要件の見直し等が明記されたことから、より使いやすい税制になることが期待されている。 なお、この改正の適用時期は、平成27年1月1日以後の相続及び贈与からとなる。 主な改正ポイントを現行制度と比較すると、下記のとおりである。 (了)
#6(掲載号)
#奥田 周年
2013/02/15
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《速報解説》 住宅税制(住宅ローン控除等)の拡充・延長について─平成25年度税制改正大綱─

《速報解説》 住宅税制(住宅ローン控除等)の 拡充・延長について ─平成25年度税制改正大綱─   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成25年度税制改正大綱には、住宅に係る各種の所得税額の特別控除について、適用期限の延長が示されている。 また、消費税等の税率改定に伴う住宅取得コストや工事費用の負担増への対応、特例の適用要件の合理化を目的とした新たな措置が講じられている。 その概要は次の通りである。   【1】 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除) 適用期間を4年延長した上、平成26年4月1日から平成29年12月31日までの期間については、消費税等の税率引上げによる税負担の増加を緩和するため、対象となる借入限度額が拡充されている。 また、中古住宅の取得を対象とする特例について、その適用対象に既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定の中古住宅が追加されている。 (1) 住宅借入金等を有する場合(控除期間10年) ① 一般の住宅 ② 認定住宅*の場合 *認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。   (2) 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合(控除期間5年) *特定の増改築等をした家屋を平成26年4月1日以後に居住の用に供する場合には、特定の増改築等に係る費用の額(交付された補助金等の額控除後)が50万円(現行30万円)を超えることが要件となる。   (3) 東日本大震災の被災者等が再建住宅借入金等を有する場合(控除期間10年) *再建住宅を居住の用に供した日に基づいて適用する。   【2】 特別税額控除(借入金がない場合も適用あり) 適用期間を平成29年12月31日まで延長した上、そのうち平成26年4月1日から平成29年12月31日までの期間については、消費税等の税率引上げによる税負担の増加を緩和するため、対象となる限度額が拡充されている。 また、適用対象となる工事に該当することを証する書面の証明者の範囲に住宅瑕疵担保責任保険法人が追加されている。 (1) 認定長期優良住宅の新築等をした場合 (2) 既存住宅に特定の改修工事をした場合 ① 省エネ改修工事の場合 ② バリアフリー改修工事の場合 *前年以前3年内にバリアフリー改修工事を行い、本制度の適用を受けている場合には再適用できない。 *同一年中に省エネ改修及びバリアフリー改修の両方の工事をして居住の用に供した場合の各税額控除額の合計額に対する限度額(20万円、太陽光発電装置を設置する場合は30万円)は廃止する。   *①②については、共に平成26年4月1日以後、対象となる特定の改修工事に係る工事費要件は、標準的な費用の額が50万円を超える場合となる。   (3) 既存住宅の耐震改修をした場合   【3】 住民税における取扱い 平成26年分以後の所得税において、住宅借入金等特別税額控除の適用がある者(平成26年から平成29年までに入居した者に限る)のうち、当該年分の住宅借入金等特別税額控除額から当該年分の所得税額を控除した残額がある場合については、翌年度分の個人住民税において、当該残額に相当する額を次の範囲内で減額する。   【4】 固定資産税・都市計画税の見直し 耐震改修等を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、次の見直しが示されている。   【5】 改正の効果 平成25年12月31日で期限切れとなる各種の住宅税制について、その適用期限を延長することにより、住宅を取得する者又は一定の工事を行う者の負担の軽減が図られる。 また、住宅の取得や工事に係る費用は一般に高額であることから、消費税等の税率引上げの前後では駆け込み需要とその後の反動が予想される。 そのため、税負担の増加による影響を平準化又は緩和するための措置として、税率が引き上げられた場合には、税額控除額が多くなるように設定されている。 例えば、本体価格3,000万円の住宅(一般の住宅)を3,000万円の借入金で取得した場合、消費税等の税率が5%から8%にアップすると、税負担は150万円→240万円へ90万円増加する。 一方で、住宅借入金等特別控除額は、年20万円→年30万円と1年当たり10万円増えるため、控除期間(最大10年)にわたって税率引上げ分の影響を緩和することができる。 (了)
#6(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/02/15
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《速報解説》 所得税の最高税率引上げについて─平成25年度税制改正大綱─

《速報解説》 所得税の最高税率引上げについて ─平成25年度税制改正大綱─   税理士 内山 隆一   平成25年1月29日、平成25年度税制改正の大綱が閣議決定された。 「成長と富の創出の好循環」の実現に向け、民間投資の喚起、雇用・所得の拡大、中小企業対策・農林水産業対策等のための税制上の措置を講じ、また、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を図るため、消費税増税を踏まえた税の一体改革の実現に向け所得税、相続税及び贈与税について必要な措置を講ずることとされている。 個人所得課税においては、現行の税率構造に加えて、平成27年分以後の所得税について新たに課税所得金額が4,000万円を超える部分に45%の税率(現行:1,800万円を超える部分40%)を設けることとされており、これにより約590億円の税収の増加が見込まれる。 〔図表1〕 平成27年以後の税額速算表 〔図表2〕 改正前、改正後税額比較 我が国では、急速な高齢化が進む一方で、少子化が加速し社会保障に係る財源不足の解消をはじめとする財政の健全化が重要な政策課題となっている。 これらの財源を所得税や法人税に求めることになれば、税の公平性を充分に確保できないばかりか、景気の影響に多分に左右されることとなりかねない懸念があることから、比較的景気に左右されない税収基盤を持つことが需要となり、消費税増税に踏み切ることとなったものと考えられる。 消費税増税は、国民全体について広く均等に実施されるものであることから、ある種においては公平であるが、富裕層に比べ低所得者層に重い負担を強いることになるため、一定の富裕層について所得税の増税を行うことにより税負担の公平感を担保する狙いがあったものと思われる。 先進国における所得税及び地方税を合わせた最高税率は、概ね40%から50%に集中しており、今回の改正により、我が国の最高税率が、これまでの50%(所得税40%+住民税10%)から55%(所得税45%+住民税10%)に引き上げられることは、2.1%の復興特別所得税も考慮すると、重税感は否めないところである。 そのため、今回の増税策が国民全体としての消費の低迷、海外への人材流出や海外からの人材確保の障壁となることも少なからず懸念され、今回の増税策が経済活性化の妨げにならないようさらに慎重な議論が必要となると考えられる。 (了)
#6(掲載号)
#内山 隆一
2013/02/15
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「平成25年度税制改正」はこう読む 【第3回】

「平成25年度税制改正」はこう読む 【第3回】   一般社団法人 日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久   4 緊急経済対策の課題 平成24年度補正予算ならびに緊急経済対策は民主党政権下でも検討が開始されていたが、政権交代により加速化・大規模化され、安倍内閣は1月11日、事業規模20兆円超にのぼる「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定した。 この対策による実質GDP押上げ効果は概ね2%程度、雇用創出効果は60万人程度と見込まれており、25年度税制改正では、その一翼を担うべき税制改正が「成長による富の創出に向けた税制措置」として掲げられている。 (1) 民間投資促進 経済対策として民間設備投資を刺激する税制措置は過去にも幾たびか採られてきたが、今回の目玉とされている「生産等設備投資促進税制」は、今までの政策税制の常識の範囲を超えるものとなった。 具体的には、生産等設備の国内総投資額が減価償却費を超え、かつ、前年度比10%超の増加である場合に、業種・機器限定をせずに国内で取得する機械・装置(工場建屋等は含まれない)について30%の特別償却又は3%の税額控除を認めるものであり、減収額も1,050億円(平年度)を見込んでいる。 平成10年以降、国内の設備投資額は毎年の減価償却費以下の水準に落ち込み生産設備の老朽化が懸念される中で、国内でのものづくりを維持するために、2年間の時限措置ではあるが精いっぱいの優遇措置である。 また、研究開発税制の拡充についても、総額型の税額控除限度額が、法人税額の20%から30%に戻された。平成23年度税制改正において法人税率引下げのための課税ベース拡大策の一環として、税額控除限度額が法人税額の30%から20%に縮減されたが、復興特別法人税が課されたために、わが国経済の先導役となるような重要なメーカーの中で、法人税率引下げ前より増税となる企業が続出し、経団連でもその復元を平成25年度税制改正の最重要課題として取り組んできた。 復興特別法人税が終了するまでの2年間の措置であるが、わが国の研究開発基盤を維持するためにも重要な改正である。 このほか、環境関連投資促進税制も、ほぼ経済産業省要望通りの形で実現している。 (2) 雇用・労働分配対策、人材育成 緊急経済対策で、民間設備投資とならんで重要視されていたのが、雇用・労働分配拡大であり、今回のもう1つの目玉とされるのが「所得拡大促進税制」の創設である。 3年間の時限措置として、基準年度(平成24年度)と比較して、給与等支給額(賞与等を含む)を5%以上増加させ、前事業年度を下回らず、かつ、平均給与等支給額が前事業年度を下回らない場合に、基準年度からの増加額の10%の税額控除(控除限度額は法人税額の10%、中小企業等は20%)ができる。増加人件費税額控除ともいうべき異例の制度である。減収額も1,050億円(平年度)を見込んでいる。 また、雇用促進税制も、雇用者増加1人当たりの税額控除を20万円から40万円に引き上げ、前者との選択適用とされる。 税制措置のみで雇用を増加させたり、労働分配率を高めることには限界があるが、緊急経済対策さらにはアベノミックスと言われる新内閣の経済政策全体が奏功して、日本経済が拡大局面に入ることになれば、雇用拡大や賃金引上げに向けて一定の効果を持つことになるものと期待したい。 なお、与党大綱では、併せて人材育成策と銘打ち、子・孫への教育資金として1,500万円までの贈与を非課税とする制度が創設されるが、経済対策というよりは相続税増税の影響緩和策であろう。 (3) 中小企業・農林水産業対策 従来のいずれの経済対策でも中小企業が重視されてきたが、今回も、前述の生産等設備投資促進税制の適用対象とならない、商業・サービス業・農林水産業を営む資本金3,000万円以下の中小企業が経営改善として店舗改修等を行う場合に、設備投資額の30%特別償却・7%税額控除ができる制度を創設する。 また、中小法人の交際費課税の損金算入特例が、上限額600万円までの交際費支出額の90%から、上限額800万円までの交際費支出額の全額に拡大される。   5 その他の改正項目 平成25年度税制改正のその他の項目として重要であるのは、事業承継税制の見直し、金融証券税制、納税環境整備とされる利子税の見直しである。 (1) 事業承継税制の見直し 事業承継税制は平成21年度税制改正で創設されたが、要件が厳しすぎるため平成23年度末までの活用実績は507件にとどまり、日本商工会議はじめ中小企業団体から見直しが求められていた。 また、税制抜本改革法(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律)でも「その活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について検討を行い」(税制抜本改革法7条4号イ)、相続税の見直しとあわせての改正が規定されていた。 今回の見直しでは、最大の障害とされてきた雇用確保要件の緩和、先代経営者の役員退任要件の緩和、事前確認制度の廃止のほか、利子税の負担軽減、後継者を親族以外にも拡大するなど、合理的な要望事項はほぼ認められている。これは、相続税増税の影響緩和とともに、消費税率引上げに対する中小企業の抵抗を和らげる意図もあろう。 (2) 金融証券税制 金融証券税制は、平成25年末の上場株式の譲渡益・配当に係る軽減税率の廃止と合わせて、損益通算の範囲拡大及び少額上場株式等に係る譲渡益・配当非課税制度(日本版ISA制度)の導入が決められていた。 しかし、後者については自民党政権時代の平成21年度税制改正では1人100万円×5年間とされていた非課税枠が、政権交代後の平成22年度税制改正で1人100万円×3年間に縮減されたため、自民党内では元に戻すことは当然とされていたが、結局、1人100万円×10年間と大幅に拡大された。ただし、非課税期間は最長10年間から5年間に短縮されている。 国民の資産形成支援、成長資金の拡大を目的とする措置として、与党税制改正大綱では、緊急経済対策税制と並んで示されているが、上場株式の譲渡益・配当に係る軽減税率廃止による株式市場への悪影響を緩和し、さらには為替安定化と並ぶ経済回復の重要課題である株式市場活性化のために採られものと理解したい。 (3) 納税環境整備 低金利の常態化の中で、延滞税の本則14.6%、利子税及び還付加算金の7.3%は平成11年度改正以来見直しがなれていなかったが、ようやく今回の改正で、利子部分については国内銀行の貸出約定平均金利(前々年10月から前年9月までの間の平均)プラス1%の水準に引き下げられることとなった。 なお、延滞税の本則14.6%は、利子分と早期納付を促すための部分が各7.3%であるとの理論構成により、現状では7.3%プラス利子部分2%=9.3%となる。 (4) その他の改正 このほか、震災復興支援税制について既存の措置の拡充がなされる。 また法人税では、連結納税制度における投資簿価修正の規定の整備、債務免除益があった場合における所得計算について民事再生等を会社更生の場合に合わせる、企業組織再編成税制における特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度の制限対象の見直し等の、重要な改正がなされる。 いずれも重要であるが極めて技術的な改正であるため、機会を改めて詳述することとしたい。 (連載了)
#6(掲載号)
#阿部 泰久
2013/02/14
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税理士が知っておきたい e‐Tax(電子申告)最新の常識 【第1回】「利用状況と概要」

税理士が知っておきたい e‐Tax(電子申告)最新の常識 【第1回】 「利用状況と概要」   (株)よつばコンサルティング 税理士 石渡 晃子 税理士 青木 岳人   e-Tax(イータックス:国税電子申告・納税システム)とは、国税庁が提供する国税に関する申告や納税、各種申請や届出をインターネット上で行えるシステムをいい、平成16年6月1日より運用されている。 電子政府構想の一環として開発に500億円、ランニングコストに年90億円を投下して運営されているシステムである。 またeLTAX(地方税ポータルシステム)とは、一般社団法人地方税電子化協議会に入会している地方公共団体が共同で開発・運用する、地方税に関する申告や納税、各種申請や届出をインターネット上で行えるシステムをいう。平成17年1月より順次システム拡大がなされている。 下記1の【利用状況】からもわかるように、現在、e-Taxの利用状況は急速に伸びている。 このような状況下で、もはや税理士にとってe-Taxは「知らない」「できない」では済まされないものとなりつつある。 毎年確定申告時期に行われる無料税務相談会においても、すでに全件e-Tax対応に移行しつつある。国税庁のe-Taxキャンペーンの一環として、顧問先から税理士へ“電子申告の依頼書”なるものを渡すよう、会社に働きかける動きもある。 また、確定申告を電子申告によらなかったことで還付されるまでの期間が長くなってしまい、申告報酬の減額を要求されたというエピソードもあるようだ。 これは笑い話のような話ではあるが、e-Taxの認知度が一般的になりつつあるという証左であるともいえよう。 そこで、本連載の第1回となる今回は、まずは税理士にとって必須な知識となりつつあるe-Taxが、具体的に何をすることができるシステムであるのかを明らかにする。 次に第2回では、実際の導入フローを確認し、e-Tax導入の意思決定に直接関連するメリット・デメリットを説明する。 最終回である第3回では、実務上の失敗談やQ&Aを取り上げていくこととする。   ■1 【e-Taxの利用状況】   国税庁プレスリリース「平成23年度におけるe-Taxの利用状況について」   (オンライン利用拡大行動計画の重点 15 手続)より引用・抜粋 上表のように、e-Taxの利用状況は急激に増加しており、税理士が行う申告のなかで大多数を占めるであろう法人税のe-Taxによる申告件数に至っては、23年度は19年度の約3.3倍まで増加している。 e-Tax利用率が増加している主要な要因としては、 ① 平成19年分以後の所得税電子申告において、医療費の領収書・給与所得の源泉徴収票等については、添付を省略してその記載内容の送信のみに簡略化されたこと ② 平成19年1月より税理士による電子署名のみで代理送信が可能となったこと が挙げられる。 また、平成20年1月より電子申告等開始届出のオンライン送信が可能となったため、利用者識別番号が即時発行されるようになった。さらに、法人の申告には地方税申告も欠かせないものであるが、地方税においてはeLTAXにて電子申告・電子納税等を行うことができる地方公共団体が拡大していることもe-Taxの普及に大きく影響しているであろう。 また、個人の確定申告に限られるが、電子証明書等特別控除の創設により、平成19年分から平成22年分は最高5,000円(平成23年分は最高4,000円、平成24年分は最高3,000円でいずれか1回適用)の税額控除を受けられることも普及の一端を担っているといえよう。 なお、本税額控除については、与党公表の平成25年度税制改正大綱にて、平成24年分をもって廃止する旨が記載されている。 このように、年々利便性が高められることで利用状況は急激に増加しており、今後もさらに増加することが予測される。 電子申告が当たり前となる時代も近いのかもしれない。   ■2 【e-Taxで行える申告・届出関連及び納税】 e-Taxを行うツールとしては、 ① 国税庁の提供するe-Taxソフト ② 市販の申告ソフト の2つがある。 本稿では、①のe-Taxソフトにて行うことができるものを前提としている。 市販の申告ソフトについては、申告はできるが届出関連は非対応、あるいは申告に加え届出関連は一部のみ対応、修正申告は非対応など、メーカーや製品による差異があるため、実際の導入にあたっては利用可能サービスの確認をされたい。 1 申告 所得税、法人税(復興特別法人税含む)、贈与税、消費税及び地方消費税、酒税、印紙税の申告 ※ただし、死亡した者の所得税の準確定申告、相続税は非対応 2 届出関連 全税目の主な申請・届出、納税証明書の交付請求、法定調書の作成などが可能である。 主要な内容は下記のとおりである。 (1) 所得税関連 個人事業の開廃業等届出、青色申告承認申請、減価償却資産の償却方法の届出、給与支払事務所等の開設等届出、源泉所得税の納期の特例の承認に関する届出、納税地の異動に関する届出、更正の請求、予定納税額の減額申請など (2) 法人税関連 設立届出、青色申告承認申請、申告期限の延長申請、異動届出書、欠損金の繰戻しによる還付請求、更正の請求、事前確定給与に関する届出など (3) 消費税関連 新設法人に該当する旨の届出、課税事業者選択(不適用)届出、簡易課税選択(不適用)届出、課税期間特例選択・変更届出、課税売上割合に準ずる割合の適用(不適用)届出、更正の請求など (4) 相続税・贈与税関連 相続税・贈与税ともに更正の請求、納税管理人(解任)届出の3つのみ (5) 法定調書関連 給与所得の源泉徴収票等の法定調書及び合計表、配当・剰余金の分配及び基金利息の支払調書及び合計表など (6) その他 酒税関連や間接諸税関連の申請・届出、納税証明書の交付請求など 3 納税 電子納税とは、金融機関窓口まで出向かずオンラインにて納税をすることができるシステムであり、大きく分類すると「ダイレクト納付」「インターネットバンキング等による納付」の2つがある。 以下、それぞれの特色と必要手続を確認する。 (1) ダイレクト納付による納税の場合 主な特色等は以下のとおりである。 ダイレクト納付の場合、e-Taxにて電子申告(又は納付情報データ送信)を行うと、メッセージボックスに受信通知が格納される。そのメッセージの「即時納付」又は「期限を指定して納付」から選択し、ワンクリック操作で納税まで行うことができる。 なお、ダイレクト納付を利用したい場合は、事前に1ヶ月程度の余裕をもって税務署への書面による届出(「ダイレクト納付利用届出書」)が必要である。 利用可能金融機関については国税庁ホームページにて確認でき、登録必要日数の目安も記載されているので、あわせて確認をするとよい。 (2) インターネットバンキング等による納税の場合 主な特色等は以下のとおりである。 ダイレクト納付とは違い、e-Taxによる電子申告とは連動していないため、別途納付情報データの送信が必要である。 また、納税者自身がインターネットバンキング口座より納税手続を行う必要がある。 なお、税務署への事前届出は必要ないため、即時利用することが可能である。 インターネットバンキング等による納税には、「登録方式」と「入力方式」があり、両者の違いは、まず、e-Taxソフトや市販ソフトにより納付情報データを作成・送信するか否かである。 納付情報データの作成・送信とは、税目や納税額などのデータを登録・送信することであり、送信後は即時にメッセージボックスへ電子納税に必要な情報が届くので、それをもとにインターネットバンキング等にて手続きを行う。入力方式の場合は、納付情報データの作成・送信をせずに納税を行うため、必要な情報を自身で調べて振込操作時に入力する必要がある。 次に、電子納税可能な税目の違いである。 登録方式の場合は、全税目に加え附帯税についても電子納税が可能であるが、入力方式の場合は申告所得税、法人税及び消費税の3つのみしか電子納税できない。 さらに、納税地の異動があった場合は、税務署側の異動等処理が完了するまで入力方式による電子納税は利用できないため、従来通り納付書による納税を行うこととなる。 登録方式のデータ登録・送信にはさほど手間がかからず、全科目に加え附帯税までも納税可能であるため、こちらの方法をおすすめしたい。 4 eLTAXによる申告・届出関連及び納税 地方税については、それぞれの都道府県・市町村によって、その対応状況はまちまちである。対応状況については、eLTAXサイトにてサービス状況が提供されているため、確認されたい。 (了)
#6(掲載号)
#青木 岳人
2013/02/14
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第2回】「貸倒引当金制度の縮減と寄附金の損金算入限度額の見直し」

平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第2回】 「貸倒引当金制度の縮減と 寄附金の損金算入限度額の見直し」   アクタス税理士法人 税理士 藤田 益浩   〈貸倒引当金制度の改正の概要〉 平成23年12月改正において、貸倒引当金制度の改正が行われた。 この改正により、貸倒引当金制度の適用対象となる法人は、①中小法人等、②銀行・保険会社等、③リース会社、信販会社等に限定され、適用対象法人以外の法人については、貸倒引当金制度が廃止されることとなった。 つまり、資本金が1億円を超える一般の事業法人は、貸倒引当金制度が廃止されるのである。 この貸倒引当金制度の改正に当たっては、経過措置が設けられている。 その経過措置の内容は、貸倒引当金の繰入限度額を段階的に1/4ずつ縮減させていくというものである。 経過措置が適用される期間は、平成24年度(平成24年4月1日以後に最初に開始する事業年度)から平成26年度(平成26年4月1日以後に最初に開始する事業年度)までの3事業年度となる。 平成24年度は4分の3、平成25年度は4分の2、平成26年度は4分の1となり、平成27年度で廃止となる。 なお、この貸倒引当金制度の改正は、個別評価貸倒引当金と一括評価貸倒引当金のいずれにも適用される。 間もなく決算を迎える3月決算法人においては、平成25年3月期が経過措置事業年度の最初の事業年度となる。 【3月決算法人の繰入限度額の経過措置】 《イメージ図》 繰入限度額の経過措置 (国税庁「平成23年度法人税関係法令の改正の概要」より)   〈貸倒引当金制度の適用対象となる限定法人〉 今回の改正で貸倒引当金制度の適用対象となる法人は、次の3区分のいずれかに該当する法人に限定されることになる。 なお、③の法人については、法人の種類ごとに設定対象となる金銭債権が限定されているので、特に注意が必要である。 【③に区分される法人と設定対象となる金銭債権】 (国税庁「平成23年度法人税関係法令の改正の概要」より)   〈平成25年3月期の申告におけるポイント〉 経過措置中の事業年度では、新法と経過措置の選択適用が認められている。 平成25年3月期の申告においては、新法と経過措置のいずれか有利な制度を選択適用することができる。 個別評価金銭債権については、金銭債権ごとに選択することができ、一括評価金銭債権については、事業年度ごとに選択することができる。 中小法人等は、改正後においても貸倒引当金制度の対象となることに変わりはなく、今までの申告と同じになる。 一方、中小法人等以外の法人については、貸倒引当金制度の対象外となるので、限度額が残る経過措置を適用した方が有利であると考えられる。 ただし、上記③の法人については、一定の金銭債権について繰入れが認められるため、経過措置の適用を受けるか、新法の適用を受けるか、といった有利不利が発生するものと考えられる。   〈寄附金の損金算入限度額の見直しの概要〉 寄附金については、一般の寄附金の損金算入限度額が縮減され、一方、特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額が拡充されることになった。 適用は、平成24年4月1日以後に開始する事業年度となり、3月決算法人は平成25年3月期から適用される。 (1) 一般の寄附金の損金算入限度額の縮減 法人が支出する一般の寄附金の損金算入限度額は、次のように縮減された。 ① 資本等のある法人 ② 資本等のない法人 (2) 特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額の拡充 法人が支出する特定公益増進法人、認定特定非営利活動法人及び仮認定特定非営利活動法人に対する寄附金に係る特別損金算入限度額は、次のように拡充された。 ① 資本等のある法人 ② 資本等のない法人 《イメージ図》 改正前、改正後の寄附金の損金算入限度額 (国税庁「平成23年度法人税関係法令の改正の概要」より) ― 記 入 例 ― ※法人税申告書 別表14(2)より抜粋 (了)
#6(掲載号)
#藤田 益浩
2013/02/14
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第2回】

平成26年1月から施行される 「国外財産調書制度」の実務と留意点 【第2回】   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 (第1章 制度の概要) 1-3 制度創設の背景 本制度創設の背景としては、 が挙げられるであろう。 財務省の資料では、以下のように説明している。  (財務省ホームページ「平成24年度税制改正の解説(一 国外財産調書制度の創設)」) (1) 個人の国外財産に係る申告漏れの増加 政府税制調査会資料では、個人所得税や相続税・贈与税の税務調査において、国外財産に係る所得税や相続税・贈与税の申告漏れが把握されるケースが増加していることが背景あるとしている。 平成23年11月8日の税制調査会提出資料によると、平成21年度の所得税調査で国外財産に係る申告漏れがあったものの1件あたり申告漏れ所得金額は3,390万円、同じく相続税調査では1憶661万円と、3年前に比べ、それぞれ1.8倍から2.3倍に増加している。 また、同資料の中で以下のような事例が紹介されている。 (2) 国外財産に関する情報収集の困難性 イ 従来の報告制度:所得2,000万円超の財産債務明細書 所得税については、従来から財産債務明細書(所法232①)という制度があった。 これは、合計所得金額が2,000万円超の者について「財産及び債務の明細書」の提出を求めるものであるが、財産の所在地は国内・国外を問わない、所得税確定申告書の添付書類である、財産の合計価額は関係ない、資産だけでなく債務の状況も報告する、提出しないことに対する罰則はない、といった点で、国外財産調書とは大きく異なるものである。 罰則がなかったことから、実効性に不十分な点があったようだ。 こうした状況において、適正な課税及び徴収に資するため、より実効性のある国外財産の報告制度が必要とされる状況になっていた※1。 ※1 国外財産調書の提出義務がある場合でも、財産債務明細書の提出要件に該当する場合には引き続き提出を求められる。ただし、両方を提出する場合、国外財産調書に記載した事項を財産債務明細書に重複して記載する必要はなく、「国外財産調書に記載」と書けばよいとされている。   ロ 国境を越えた質問検査権の行使の困難さ 所得税や相続税の適正な申告納税を確保するためには、納税者の保有する資産や異動に係る重要な情報を税務当局が適時に容易に入手できることが必要である。 この点、国税当局は、国内に所在する資産や国内で行われる取引については、課税情報を入手することが比較的容易にできる。しかし、国外に所在する財産や、国外で行われた取引については、情報の範囲の広さ、情報量、正確性等の面で入手可能性が大幅に低下する。 上記(1)の税制調査会資料で紹介された課税漏れ事案のうち所得税の事案では、B社が内国法人であれば原則として配当金支払時に源泉徴収が行われるとともに、配当金の支払調書がB社から税務署に提出され、税務当局においてAの所得税の申告書の配当所得の内訳と支払調書を突き合わせれば、申告漏れになっていることは容易に把握される。 ハ 租税条約上の情報交換の限界 上記の例において、B社が外国法人であっても、その所在地国が日本と租税条約を締結している国であり、その国が非居住者への配当の支払いについて条約相手国に自動的に情報を提供する仕組みを採用していれば、我が国の税務当局が当該配当金受取りに関する情報を把握することは可能である。 しかし、租税条約相手国でない場合にはそうした情報が提供されることはなく、条約相手国であってもすべての配当金支払いに関する情報が自動的に提供されるというものでもない(【参考】参照)。 租税条約上の情報交換には、 の3つの類型がある。 しかし、どの程度の情報を提供するかは、統一的な決まりがあるわけではない。 そもそも我が国からの情報提供によって相手国において課税が行われた結果が、必ずしも我が国の税収の増加に直接つながるものではないのであり、情報交換制度はあくまでも相互互恵の観点に立った行政執行上の協力という意味を持つものである。 相手国が情報を提供してくれることを期待して、こちらからも相手国にとってメリットのある情報を提供しようというものである。 相手国の情報交換に対するスタンスによって、情報提供の範囲等は様々であり、情報の範囲、時期、内容等について詳細な決まりがあるわけではない。将来はどうなるかわからないが、少なくとも現状においては、日本の居住者の保有する国外財産に関する情報が自動的に国税当局に入ってくるといった状況にはない。 (了)
#6(掲載号)
#小林 正彦
2013/02/14
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

法人の破産をめぐる税務 【その3】破産会社の債権者の税務(貸倒引当金及び貸倒損失)

法人の破産をめぐる税務 【その3】 ―破産会社の債権者の税務 (貸倒引当金及び貸倒損失)―   ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典   はじめに 前回までは破産会社特有の税務処理について解説した。 今回から2回にわたり、破産した会社(以下「破産会社」という)を取り巻く利害関係者(破産会社の債権者、役員、株主)の破産特有の税務処理について述べていく予定である。 まず、本稿では、破産会社の債権者に関する税務処理(法人税の取扱いに限り、組織再編及び連結納税制度に関連する事項を除く)を中心に解説する。   1 債務者が破産手続開始の申立てを受けた場合の個別評価による貸倒引当金の繰入れ (1) 概要 法人(破産会社の債権者)が、事業年度終了時に有する金銭債権(個別評価金銭債権)に係る債務者について破産手続開始の申立てがあった場合には、貸倒れ等の損失の見込額として各事業年度において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち(2)の繰入限度額に達するまでの金額を、各事業年度の所得の金額の計算上、損金算入することになる(法法52①、法令96①三ハ)。 なお、損金算入された引当金は、いわゆる洗替え処理により翌事業年度に益金算入される(法法52⑩)。 ただし、税務上の貸倒引当金の計上は、平成24年度税制改正により以下の法人(いわゆる中小法人や金融機関等)に限定されることとなった(法法52①一~三)。 また、破産手続開始の申立ての前に、法人税法施行令96条1項1号及び2号に基づき、既に回収不能見込額として引当て計上している場合(例えば、①金銭債権に係る債務者の会社更生法による更生計画認可の決定により弁済が猶予された一定の金銭債権の額に対して、又は、②金銭債権に係る債務者の債務超過状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないことなどにより、既に個別評価による貸倒引当金を計上している場合)には、この制度を適用できない点に留意が必要である(法令96①三カッコ書)。 (2) 繰入限度額 繰入限度額は、破産会社に対する金銭債権×50%に相当する金額により計算される(法令96①三)。 この場合、繰入れ対象となる金銭債権の額からは、破産会社からの債務で金銭債権と相殺可能な実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関や保証機関による保証債務の履行等により回収の見込みがある部分の金額は除かれる。 また、平成24年度税制改正により、上記(1)⑤のリース会社等一定の法人が有する金銭債権に関しては、繰入れ対象となる金銭債権が限定されている(法令96①三、法法52⑨一)。 (3) 書類の保存 引当金の繰入れは、法人(破産会社の債権者)において破産手続開始の申立ての事実を証する書類や、担保権の実行等により回収の見込みがある場合にその金額を明らかにするための書類を保存する必要がある(法規25の4)。 破産の申立てがあった場合には、裁判所は債権者に破産手続開始の申立てがあった旨の通知は行わず、通常は申立人において、破産手続開始の申立てについての「受理票」が裁判所から交付され、その写しを債権者に送付することが行われるようである。 したがって、破産手続開始の申立ての事実を証する書類に関しては、破産手続開始申立書を受け付けた際に、この「受理票」を申立ての事実を証する書類として保存することが考えられる。 もし、書類が保存されていない場合には、税務当局に破産手続開始の申立ての事実が生じていないとみなされ、引当金の計上が認められない可能性があるため、疎明資料の準備を適切に行う必要がある(法令96②)。 ただし、その書類の保存がなかったことについてやむを得ない事情があると税務当局から認められた場合には、この限りでない(法令96③)。 (4) 手続規定 引当金の繰入れは、確定申告書に引当金繰入れの損金算入に関する明細の記載がある場合に限り適用される(法法52③)。 ただし、その明細の記載のない確定申告書の提出があった場合において、やむを得ない事情があると税務当局から認められた場合には、この限りでない(法法52④)。   2 法人が破産した場合の貸倒損失に係る税務処理 破産会社は、破産手続終結や破産手続廃止の決定などにより、法人格が消滅することになる。 税務上は、この時点で破産会社に対する金銭債権の全額が回収できないことが明らかとなり、法基通9-6-2に基づき、その全額が回収できないことが明らかとなった事業年度において貸倒損失として損金経理することにより損金算入が可能と考えられる(法基通9-6-2)。 参考までに、個別評価による貸倒引当金と貸倒損失の計上のタイミングを図で示すと、以下のようになると考えられる。 (了)
#6(掲載号)
#甲田 義典
2013/02/14

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