《速報解説》 公認会計士協会、「倫理規則に関するQ&A-監査法人監査における監査人の独立性について-(実務ガイダンス)」を公表 ~監査法人の計算書類を対象とする監査業務における倫理規則適用上の留意点や具体的な適用方法を例示~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年2月16日付けで(ホームページ掲載日は2023年3月30日)、日本公認会計士協会は、「倫理規則実務ガイダンス第2号「倫理規則に関するQ&A-監査法人監査における監査人の独立性について-(実務ガイダンス)」」を公表した。これにより、2022年12月23日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対して特段の意見は寄せられなかったとのことである。 これは、2022年7月25日付けで倫理規則が改正されたことに伴い、監査法人の計算書類を対象とする監査業務における倫理規則の適用上の留意点などを示すものである。 現行の「職業倫理に関する解釈指針-監査法人監査における監査人の独立性について-」は廃止する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 監査法人監査における監査人の独立性 有限責任監査法人は、公認会計士法により、その作成する計算書類について、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付することが求められている。 有限責任監査法人の計算書類の監査証明業務を受嘱しようとする公認会計士又は監査法人は公認会計士法施行令23条並びに同法施行規則69条の2及び70条(以下「関係施行令等」という)の規定を遵守しなければならないことなどが記載されている。 2 監査人である監査法人と監査を受ける有限責任監査法人とが業務上の提携関係にある場合 一般的に業務上の提携関係にある場合には、倫理規則第520.3 A2項で挙げられている場合と同様に、監査事務所間に重要な金銭的利害が生じる可能性が高いと考えられるので、業務上の提携関係にある有限責任監査法人の監査業務の契約締結は避けるべきものと考えられる。 3 共同で監査業務を行っている有限責任監査法人の計算書類の監査業務契約を締結する場合 倫理規則第520.3 A2項の共同事業は事業体との間の事業であり、監査業務とは必ずしも合致しない点はあるが、共同監査によって生じる独立性に対する自己利益などの阻害要因を識別し、その阻害要因の水準を評価することになることなどが記載されている。 4 有限責任監査法人同士が相対で監査業務を提供し合う場合 有限責任監査法人同士が相対で監査業務を提供し合うことについて、倫理規則上具体的な規定はないが、自らが一方の有限責任監査法人の監査人の立場になると同時に、当該一方の有限責任監査法人から監査を受ける立場となり、擁護という阻害要因を生じさせる可能性があることなどが記載されている。 5 親族が監査業務の依頼人となる有限責任監査法人に就職している場合 次の場合について具体的に記載されている。 6 監査人である監査法人の社員のうちに監査業務の依頼人となる有限責任監査法人の社員であった者がいる場合 過去に有限責任監査法人に在籍した社員が就職している他の監査法人が、当該有限責任監査法人の監査人となる場合、関係施行令等では、監査法人の社員のうちに、本人又はその配偶者(配偶者の場合、本人が公認会計士法施行令23条2号イからへまでに掲げる者である場合に限る)が、過去1年以内に、監査関与先となる有限責任監査法人の社員であった場合を特別な利害関係と規定しているので、当該社員が「過去1年以内」に監査業務の依頼人となる有限責任監査法人の社員であった場合には、当該監査法人は当該有限責任監査法人の監査人となることができない。 7 監査人である監査法人の社員のうちに監査業務の依頼人となる有限責任監査法人の被監査事業体における監査役である者がいる場合 監査役を兼務している場合について、図解を用いて具体的に記載されている。 (了)
《速報解説》 国税庁、職場つみたてNISAの奨励金を賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当するとの見解を示す文書回答事例を公表 ~金融庁からの照会~ Profession Journal編集部 国税庁は3月31日に文書回答事例を公表、従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合の賃上げ促進税制(租税特別措置法第10条の5の4又は第42条の12の5)の取扱いについて、本制度の対象となる「給与等」に該当するとして差し支えないとの見解を示した(照会者は金融庁)。 「職場つみたてNISA」とは、職場を通じNISAを利用した資産形成ができるよう事業主等が利用者(従業員)を支援する福利厚生制度をいい、NISA取扱業者と契約を締結し拠出金を拠出するのは事業主等であり、利用者(従業員)は給与からNISAの積立金相当額が天引きされる仕組みとなっている。 (※) 国税庁ホームページより 職場つみたてNISAでは、事業主等が利用者である従業員に対し福利厚生の一環として「奨励金」を給付する場合があり、事業主等が、従業員の給与から天引きするNISAの積立金相当額と合わせてその奨励金を従業員のNISA口座に振り込む方法で給付する方式(給与天引き方式(上図))や、従業員の給与と奨励金を合算して従業員に支払い、従業員各自の預貯金口座等からNISAの積立金相当額にその奨励金を加えた金額が従業員のNISA口座へ振り替えられる方式(口座振替方式)がある。また、この奨励金について事業主等では、会計上、福利厚生費など給与等以外の科目で費用計上している場合があるという。 このような奨励金について照会者(金融庁)は、給与天引き方式又は口座振替方式のいずれの方式によるものであっても所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するところ、租税特別措置法第10条の5の4又は第42条の12の5に規定する給与等の支給額が増加した場合の所得税額又は法人税額の特別控除(いわゆる「賃上げ促進税制」)においては、「給与等」について会計上どのような科目で費用計上するかは特に限定されておらず、事業主等がこの奨励金を給与等以外の費用である「福利厚生費」として費用計上していたとしても、賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当すると考えるとの照会を行い、国税庁から「標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。」との回答が示されている。 冒頭述べた通り本事例は金融庁からの照会に対するものであり、金融庁が令和5年度税制改正の要望事項として取扱いの明確化を求めていたもの。税法の改正による手当てではないが、実質的に国税庁が金融庁の要望に応じたかたちといえよう。 (了)
《速報解説》 令和5年度税制改正に係る 「所得税法等の一部を改正する法律」が 3月31日付官報:特別号外第25号にて公布 ~施行日は原則4月1日~ Profession Journal編集部 令和5年度税制改正関連法が3月28日(火)の参議院本会議で可決・成立し、3月31日(金)の官報特別号外第25号にて「所得税法等の一部を改正する法律」が公布された(法律第3号)。施行日は原則令和4年4月1日(法附則第1条)。地方税関係の改正法である「地方税法等の一部を改正する法律」も官報同号にて公布されている(法律第1号)。 今年度改正では、わが国を取り巻く安全保障環境に対応した防衛費増加の財源確保としての法人税額及び所得税額に対する付加税の創設や、若年層の資産形成・資産移転を図るためのNISA拡充と恒久化、生前贈与制度の見直し、「1億円の壁」と言われる超富裕層への課税強化のほか、経済産業省主導による経済対策としての税制措置(エンジェル税制、オープンイノベーション促進税制、ストックオプション税制の見直し等)が盛り込まれ、円滑な制度移行のための税制上の措置としてインボイス制度及び改正電子帳簿等保存法への激変緩和措置がそれぞれ複数手当てされる改正が実現する。 * * * 以下では主な法律、政令、省令等の官報該当ページへのリンクを紹介する。 なお本誌では例年同様、主要な改正事項については毎週木曜日公開号において、専門家による解説記事を順次掲載するとともに、各府省庁・主な団体等より公表された令和5年度税制改正関連の情報については「令和5年度税制改正に関する《資料リンク集》」及び「新着情報」を随時更新していくので、そちらを併せて参照いただきたい。 また、税制改正大綱を受けた主な改正情報については、すでに本誌掲載済みの「令和5年度税制改正大綱」に関する《速報解説》 をご覧いただきたい。 官報:令和5年3月31日付(特別号外第25号)で公布された主な税制改正関連法令 法令のあらまし ◆所得税法等の一部を改正する法律 附則:施行期日・経過措置など 所得税法の一部改正(第1条関係) 所得税法施行令及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の施行に関する政令の一部を改正する政令 所得税法施行規則の一部を改正する省令 法人税法の一部改正(第2条関係) 法人税法施行令等の一部を改正する政令 法人税法施行規則等の一部を改正する省令 地方法人税法の一部改正(第3条関係) 地方法人税法施行規則の一部を改正する省令 相続税法の一部改正(第4条関係) 相続税法施行令の一部を改正する政令 相続税法施行規則の一部を改正する省令 登録免許税法の一部改正(第5条関係) 消費税法の一部改正(第6条関係) 消費税法施行令等の一部を改正する政令 消費税法施行規則等の一部を改正する省令 印紙税法の一部改正(第7条関係) 国税通則法の一部改正(第8条関係) 国税通則法施行令等の一部を改正する政令 国税通則法施行規則の一部を改正する省令 国税徴収法の一部改正(第9条関係) 租税特別措置法の一部改正(第10条関係) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・地価税関係 ・登録免許税関係 ・消費税関係 ・酒税関係 ・たばこ税関係 ・揮発油税・地方揮発油税関係 ・石油石炭税関係 ・航空燃料税関係 ・自動車重量税関係 ・国際観光旅客税関係 ・印紙税関係 ・利子税等関係 租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令(附則) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・地価税関係 ・登録免許税関係 ・消費税等関係 租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(附則) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・地価税関係 ・登録免許税関係 ・消費税等関係 ・延滞税関係 税理士法の一部改正(第11条関係) 税理士法施行令の一部を改正する政令 税理士法施行規則の一部を改正する省令 輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律の一部改正(第12条関係) 外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律の一部改正(第13条関係) 外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律施行令の一部を改正する政令 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の一部改正(第14条関係) 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令の一部を改正する政令 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律の一部改正(第15条関係) 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令の一部を改正する政令 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則の一部を改正する省令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部改正(第16条関係) 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令等の一部を改正する政令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則等の一部を改正する省令 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法の一部改正(第17条関係) 所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)の一部改正(第18条関係) 酒税法施行令の一部を改正する政令 たばこ税法施行令の一部を改正する政令 揮発油税法施行令の一部を改正する政令 石油ガス税法施行令の一部を改正する政令 石油石炭税法施行令の一部を改正する政令 復興特別所得税に関する政令の一部を改正する政令 復興特別所得税に関する省令の一部を改正する省令 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令 産業競争力強化法施行規則の一部を改正する命令 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律施行規則の一部を改正する省令 国税質問検査章規則の一部を改正する省令 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令の一部を改正する省令 経済産業省関係産業競争力強化法施行規則の一部を改正する省令 中小企業等経営強化法施行規則の一部を改正する省令 地方税法等の一部を改正する法律 ( 附 則 ) ・1条関係 ・2条関係 地方税法施行令等の一部を改正する政令(一三二) 地方税法施行規則等の一部を改正する省令(総務三六) 地方税法施行規則の一部を改正する省令(同三七) ▷その他の主な関係法令・告示 産業競争力強化法第二十一条の二十八第二項の規定に基づく生産性の向上又は需要の開拓に特に資するものとして主務大臣が定める基準の一部を改正する告示 産業競争力強化法第二十一条の二十八第一項の規定に基づく経済社会情勢の著しい変化に対応して行うものとして主務大臣が定める基準を廃止する告示 租税特別措置法施行規則に規定する総務大臣の行う市街地再開発事業用資産の買換え特例制度に係る証明に関する手続を定める件の一部を改正する件 所得税法第百八十九条第一項の規定に基づき、同項に規定する所得税法別表第二の甲欄に掲げる税額が算定された方法に準ずるものとして財務大臣が定める方法を定める件の一部を改正する件 消費税法施行令第十八条の二第二項第三号の規定に基づき、財務大臣の定める基準を定める件の一部を改正する件 消費税法別表第一第六号の規定に基づき、財務大臣の定める資産の譲渡等及び金額を定める件の一部を改正する件 消費税法施行令第五十条第三項、第五十四条第五項、第五十八条第三項、第五十八条の二第三項及び第七十一条第五項並びに消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成二十七年政令第百四十五号)附則第六条第二項並びに消費税法施行規則第五条第三項及び第十六条第三項の規定に基づき、これらの規定に規定する保存の方法を定める件の一部を改正する件 消費税法施行令第二条の四第二項の規定に基づき、財務大臣の定める基準を定める件 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第五条第一項の規定に基づき、同項に規定する財務大臣の定める取引に関する事項を定める件 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第二十九条第一項第一号の規定に基づき、同号に規定する所得税法別表第二から別表第四までに定める金額及び復興特別所得税の額の計算を勘案して財務大臣が定める表を定める件の一部を改正する件 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第二十九条第一項第二号の規定に基づき、同号に規定する所得税法第百八十九条第一項に規定する財務大臣が定める方法及び復興特別所得税の額の計算を勘案して財務大臣が定める方法を定める件の一部を改正する件 法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する寄附金を指定する件 事業再編の実施に関する指針の一部を改正する告示 事業適応の実施に関する指針の一部を改正する告示 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第二条第六項第五号ニに規定する国税庁長官が定めるところを定める件の一部を改正する件 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第二条第七項に規定する国税庁長官が定める書類を定める件の一部を改正する件 国税局長又は税務署長に取り扱わせる国税庁長官の権限に属する事務を定める件の一部を改正する件 租税特別措置法施行令第四十六条の八の二第五項に規定する国税庁長官が定める方法及び租税特別措置法施行規則第三十七条の四の二第四項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件 租税特別措置法施行令第四十六条の八の二第二項第一号ハの規定に基づき、国税庁長官が指定する方法を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条第一項第一号に規定する国税庁長官が定める措置を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条第四項、法人税法施行規則第三十六条の四第六項、地方法人税法施行規則第七条第六項及び消費税法施行規則第二十三条の四第五項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条の二第一項に規定する国税庁長官が定める申請等を定める件の一部を改正する件 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令第五条の二第一項に規定する国税庁長官の定める基準を定める件の一部を改正する件 国税通則法施行規則第十五条第一項に規定する国税庁長官が定める書類を定める件の一部を改正する件 消費税法施行令第十八条第七項に規定する国税庁長官が定める方法及び消費税法施行規則第六条の二第五項の規定に基づき国税庁長官が定めるファイル形式を定める件の一部を改正する件 租税特別措置法第十二条の二第一項及び第四十五条の二第一項の規定の適用を受ける機械及び装置並びに器具及び備品を指定する件の一部を改正する件 租税特別措置法施行令第三十九条の三十四の三第一項第六号に規定する事業の成長発展が見込まれるものとして経済産業大臣が定める要件 産業競争力の強化に著しく資するものとして経済産業大臣が定める基準の一部を改正する告示 中小企業等経営強化法施行規則第十一条第二項第三号ニに規定する投資に関する契約の契約書の記載事項を定める件の一部を改正する件 租税特別措置法施行令に規定する国土交通大臣の証明に関する手続を定める告示の一部を改正する件 租税特別措置法第十一条第一項及び第四十三条第一項の規定の適用を受ける船舶を指定する告示の一部を改正する告示 租税特別措置法第三十七条第一項の表第五号及び第六十五条の七第一項の表第五号の規定の適用を受ける船舶を指定する告示の一部を改正する告示 地方税法施行規則に規定する船舶を定める告示の一部を改正する告示 地方税法施行規則に規定する証明に関する手続きを定める告示の一部を改正する告示 地方税法施行規則附則第三条の二の二十一第一項の規定に基づき、平成三十年国土交通省告示第九百十三号の一部を改正する件 地方税法施行規則附則第七条第十五項及び同条第十六項第一号の規定に基づき、国土交通大臣が総務大臣と協議して定める工事及び国土交通大臣が総務大臣と協議して定める書類を定める告示 地方税法施行令附則第十二条第四十八項第一号イ及び地方税法施行規則附則第七条第十六項第二号の規定に基づき、国土交通大臣が総務大臣と協議して定める工事及び国土交通大臣が総務大臣と協議して定める書類を定める告示 地方税法施行令附則第十二条第四十八項第二号ロ及び地方税法施行規則附則第七条第十六項第四号ロの規定に基づき、国土交通大臣が総務大臣と協議して定める基準及び国土交通大臣が総務大臣と協議して定める書類を定める告示 地方税法施行令附則第十二条第四十八項第二号イ及び地方税法施行規則附則第七条第十六項第四号イの規定に基づき、国土交通大臣が総務大臣と協議して定める基準及び国土交通大臣が総務大臣と協議して定める書類を定める告示 (了)
《速報解説》 国交省、「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き~気候変動を踏まえた洪水による浸水リスク評価~」を公表 公認会計士 石王丸 周夫 Ⅰ はじめに 2023年3月29日付で、国土交通省は、「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き~気候変動を踏まえた洪水による浸水リスク評価~」(以下、手引きという)を公表した。 この手引きは、日本企業の気候関連情報開示におけるリスク評価をサポートするものとして作成されており、特に、洪水による浸水リスクの評価手順や考え方等をまとめたものとなっている。 Ⅱ 主な内容 1 手引きの背景と概要 気候関連情報の開示は各国で義務化等が進められているところだが、日本国内においては、プライム市場上場企業がTCFD等の国際的枠組みに基づいて開示を行うよう求められており、また、有価証券報告書提出企業においては、2023年3月期から、サステナビリティ情報の記載欄新設により、気候関連情報の記載が義務付けられているところである。 こうした中で、手引きでは、企業の気候関連リスクのうち物理的リスク(極端現象による被害の増大や気候パターンの変化による影響)、とりわけ洪水による浸水リスクに焦点を絞り、その評価方法を解説している。 手引きによる洪水リスク評価のフローは、次の3つの段階を踏むとしている。 2 現在の洪水リスクの把握(スクリーニング) 企業の拠点のうち財務上の影響が大きい拠点はどこか、おおむね何年に一度程度の確率で発生する規模の洪水を対象とするかの2点を決定し、拠点周辺における氾濫可能性のある河川の有無や標高等に基づいて、現在の洪水リスクを、国土地理院の浸水ナビ等を活用して把握する。 3 気候変動の影響による将来リスクの評価 洪水による被害のうち、店舗被害等、財務上の影響が大きい項目を特定し、採用する気候変動シナリオと分析時間軸を決定した上で、将来的なリスクを定性的または定量的に評価する。手引きでは、定量的(財務インパクト)評価の方法の解説に重点を置いている。 4 リスクの開示 将来の洪水リスクがもたらす財務上の影響が重要(マテリアル)であると判断した場合、洪水リスクを開示する。また、洪水リスクに対する適応策を実施している場合は、あわせて記載することを推奨している。 適応策としては、「①浸水による被害の回避・軽減を図る適応策」(土のうの準備等)と「②事業の継続・早期復旧を図る適応策」(災害対策本部の設置手順の決定等)に分けて解説している。 Ⅲ 着目すべき点 手引きが取り上げている洪水リスクは、気候が今後変動することを待つまでもなく、すでに毎年のように顕在化しているリスクである。 気候関連情報の開示を進めていく上で、真っ先に取り組むべき課題は何か、それを考える上で示唆に富む内容だといえる。 ◆BOOK◆ 『気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩』 好評販売中 「気象災害の多い日本で、気候変動リスクと会社経営を考えるとき、最初に読む一冊。」 (了)
2023年3月30日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.513を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
これからの国際税務 【第36回】 「OECDが主導する国際課税ルール改革の現状」 千葉商科大学大学院 客員教授 青山 慶二 1 はじめに 2月にインドで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議は、2つの柱から成る国際課税ルール改革の推進に向けてのコミットメントを確認するとともに、当面の具体的課題として、①第1の柱については、OECD/G20の下にある包摂的枠組(IF)が、残存課題の作業を終了させ、2023年前半までに多国間条約の署名ができるようにすべきこと、②第2の柱のグローバルミニマム税を中心とするGloBEルールについては、GloBE実施細則の公表(2022年12月及び2023年2月)を経た国内法化に向けた各国の取り組みを歓迎するとともに、課税条件ルール(STTR)について多国間協定を含む立法化作業を進めるべきこと、を付言した。なお、上記の手順の進捗に際しては、途上国向けの技術支援が不可欠であることも強調している。 そこで、以下においては、同会議に提出されたOECD事務総長報告とその後のOECD事務局によるWeb会議(2月27日開催)での説明ぶりを踏まえて、改革の現状と今後の見通しを検証する。 2 2つの柱の実施状況 (1) 2つの柱の税収効果の見直し 2021年10月のG20/OECD合意の際に見積もられた2つの柱による法人税の税収効果は、2023年1月のOECD見直しにより大きく上方修正されており、このことを踏まえ、特に改革からの受益度の高い途上国での執行の重要性が強調されている。 (表1)2つの柱改革の税収効果 (注) 2023年1月の見直しレポートによれば、上記の税収効果の引上げ改定は、2021年の対象多国籍企業の業績好調の影響としている。 途上国向けには、OECDは執行能力増強のための技術支援を他の国際機関や地域行政機関と提携して展開している。 なお、私見では、スムーズな2つの柱改革の実行のためには、途上国・市場国の協調が不可欠であり、税収効果の今回の見直しはそれへの誘因を高める効果がある一方で、利益Aの収入閾値の将来引下げ問題(中堅企業への適用拡大)への関心や適格国内ミニマム上乗せ税(QDMTT)への取組促進などにより、多国籍企業にとっては、予測可能性を不確実にする状況も覚悟しなければならないと思われる。 (2) グローバルミニマム税(GloBEルール)の国内法制化 同法制実施のため合意された法的枠組みは、OECD/IFによる2021年12月のモデルルール及び2022年3月の同ルール・コメンタリーに加えて、2つの実施ガイダンス(2022年12月のセーフハーバー・ガイダンス及び2023年2月の執行ガイダンス)の公表により、ほぼ完成された。これらを参照した国内法改正は、2023年2月現在、EUの27ヶ国、イギリス、スイス、日本、韓国、シンガポールなど計46ヶ国で進行中であると報告されている(※1)。 (※1) 我が国の税制改正案を公表した与党大綱は、2つの実施ガイダンスの発出前に公表されたため、グローバルミニマム税の法制化は、令和6年以後の改正で補完されることとなっている。 なお、公表済みの実施ガイダンスの概要は、以下のとおりである。 イ セーフハーバー・ガイダンス 公表文書名は「GloBEルールに係るセーフハーバー及びペナルティ免除」であり、その主要な内容は下表のとおりである。 (表2)セーフハーバーの概要 ロ 執行ガイダンス 執行ガイダンスは、GloBEルールの解釈の明確化と、当局による同ルールの執行方法如何を示した詳細なもの(約110頁)であり、そのカバーする領域は、以下のとおりである。なお、これらは、2022年3月に公表されたGloBEルール・コメンタリーと一体をなすものであるため、今後、一体化編集され今年中に公表される見込みである。 (表3)執行ガイダンスの構成 (注) 本ガイダンスは、当面の明確化が必要な項目を掲げたものとしており、今後、2024年からの実施に向けての修正・追加の余地ありとしている。 上記の通り、執行に向けた細則の基本合意内容は一通り公表されたものの、現在も市中協議中の技術的課題(GloBE情報申告に係る公開協議文書及びGloBEルールに係る税の安定化(紛争解決が主たる中身)に関する協議文書)を含めて、2024年からの執行に向けた検討は、継続している(※2)。 (※2) 上記2つの市中協議文書については、2023年3月16日にOECDで公開コンサルテーションが行われた。 与党税制改正大綱は、グローバルミニマム税について、今後の国際協議による追加ガイダンスに応じた来年度以降の税制改正を留保しているのは、上記のガイダンス進捗状況を踏まえたものと推測される。 (3) 今後の見通し 第1の柱については、昨年中に多国間条約の中身となる利益Aの詳細設計項目について、順次合意を積み重ねており、今年中ごろには、その内容が多国間協定となって公表され、各国の署名のために開放されることとなっている。 来年度の我が国税制改正では、GloBEルールの積残し部分と、条約署名が見込まれる利益Aについての国内執行のための法制化(条約批准を含めて)が、国際課税の重要項目となる見込みである。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第13回】 「エスコ事件 -移転価格税制における推定課税- (地判平23.12.1、高判平25.3.14)(その2)」 ~租税特別措置法66条の4第7項(現行6項)~ 税理士 吉村 優 5 考察 (1) 租特法66条の4第7項「推定課税」の適用の可否(主たる争点①) 当時の租特法66条の4第7項に規定する「その各事業年度における国外関連者取引に係る第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類」の範囲が不明確であると考える。 その後平成22年の税制改正において「財務省令で定めるもの」と明確化されたが、財務省令で定める書類とは「国外関連取引の内容を記載したもの」(租規22の10⑥一)及び「国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」(租規22の10⑥二)である。これに準じて考えると、Xが「国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」として提出したO及びP間の取引に関する書類が該当書類として適切か否かという問題になる。 前回の〈図解②:モーターKの取引の流れ〉からX及びO間の取引のうちPに転売するもののみ価格が異なることが分かる。よってこの取引に関する書類の提出をもって「独立企業間価格を算定するための書類」として適切であると判断することはできないと考える。 Xは、租特法66条の4第8項「・・・当該法人に対し、当該国外関連者が保存する帳簿書類又はその写しの提示又は提出を求めることができる。この場合において、当該法人は、当該提示又は提出を求められたときは、当該帳簿書類又はその写しの入手に努めなければならない。」の規定における努力義務を果たしていることをもって推定課税の要件から外れる旨を主張している。判示では「租特法66条の4第7項は第8項の努力義務の履行の有無を要件としない。」と述べている。たとえ第8項の努力義務を果たしていても、第7項に規定する書類等の提出等の要請に適切に対応していなければ推定課税の適用を免れないという解釈に矛盾はないと考える。 ただし、裁判所は租特法66条の4第7項の適用の可否を判断する独立企業間価格の算定に必要な書類として、Xの国外関連者であるBの財務書類を含める旨を判示している。国外関連者の財務書類の取得については困難を伴う場合が想定されること、第8項に国外関連者が保存する帳簿書類の入手について努力義務規定をおいているという条文構成から鑑みると、この判示については疑問を感じる。 (2) 租特法66条の4第7項所定の算定方法の要件を満たすか否か(主たる争点②) 裁判所は、「租特法66条の4第7項及び租特令39条の12第11項には、その文言上、同種事業類似法人を選定する場合に関連者取引を行っている法人を除外すべきことは規定されていない。・・・推定課税の適用が認められる場合における独立企業間価格と推定される金額の算定については、同項所定の算定方法に反しない限り、その要件を厳格に解する必要は必ずしもないというべきであり、同項の金額の算定にあたり、関連者取引を含んだ金額を基礎とすることが直ちに許されないものではないと解するべきである。」と判示している。 確かに、租税特別措置法施行令39条の12第6項及び7項には「非関連者」という文言が使用されている一方、11項には「非関連者」という文言は使用されていない。だからといって、推定課税の適用が認められる場合の独立企業間価格と推定される金額の算定について、本来の独立企業間価格算定の規定と異なるルールを認めるという解釈には賛同することはできない。 Xは「OECDガイドラインによれば、独立企業原則を適用し、関連者間の取引条件を独立企業間の取引条件に引き直す上での最も重要なステップは、比較可能性のある独立企業間の取引を選定することである。そして、この比較可能性とは、独立企業間(非関連者間)取引との比較可能性なのであるから、比較可能性が緩和されている場合であっても、比較の対象が独立企業間(非関連者間)取引であるという大前提を崩すことはできない。」と主張している。独立企業間価格の算定方法については、Xの主張の方に説得力があると考える。 同種事業類似法人の抽出方法について、課税庁は「上記cの17法人から、香港に所在する法人と取引を行う国内の製造メーカー11法人を抽出し、書面照会及び必要に応じて臨場による調査を行った。これら11法人の香港の取引先法人はいずれも当該国内の製造メーカーの子会社であったが、これは、結果的にそのような法人が抽出されたのであり、山形税務署長において意図的に子会社を選定しようとしたものではない。むしろ、国内法人の子会社でない法人の場合、必要な情報を入手する方法は容易には想定し難く、そのような法人を選定することは困難であった。また、山形税務署長は、Bの設立経緯は、原告が、仕入先であるDの工場の中国移転に伴い、香港に関連法人を設立して、それまで原告が行っていた購買業務を移転したのと同じ状況であると判断し、そのような状況からすれば、把握された香港の子会社の中にこそ、本件取引に係る事業と事業の同種性及び事業内容の類似性の要件を満たす法人が存在する蓋然性が高いと見込まれる事情も存在した。」と述べている。 ここからは、①中国で製造されたモーターを日本国内に輸入する場合、直接取引を行うケースより香港に設立した子会社を経由するというスキームが一般的なものであり、非関連者を経由する取引を見つけることができなかったのか、②非関連者を経由するケースも存在したが必要な情報取得のために敢えて選択しなかったのかは明確でない。非関連者を経由するケースが存在したのであれば、情報を取得する困難性はあったとしても同種事業類似法人の抽出についてはそちらを選択し、独立企業間価格算定の根拠とすべきであったと考える。 (3) 本判決の射程について 課税庁は、「利益分割法については、本件取引に係る所得を原告及びBのそれぞれ支出した費用額、使用した固定資産の価額その他当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて分割して本件取引に係る独立企業間価格を算定することになるところ、原告からBの財務情報が提示又は提出されなかったため、これを用いることができなかった。」と述べており、Bの財務諸表の提示又は提出がされていれば、利益分割法による独立企業間価格の算定が可能であったものと推察される。 XとBの株主構成及び訴訟開始後においてBの財務諸表が提出されているといった経緯を考えると、XがBの財務諸表を開示することは比較的容易なことであったように見受けられる。XがBの財務諸表の開示を頑なに拒むことにより、やむを得ず推定課税の適用に至った事例であることが想定され、本判決の射程は限定的なものであると考えられる。 なお、控訴審においては地裁判決を全面的に支持し、控訴は棄却されている。 (了)
令和5年以後の 国外居住親族に係る扶養控除等の適用ポイント 【第3回】 (最終回) 「支払額38万円以上の判定」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 実務において、外国人従業員より、国外に居住する両親や兄弟姉妹を控除対象扶養親族とする扶養控除等申告書の提出を受けることがある。両親や兄弟姉妹が30歳以上70歳未満である場合には、留学している又は障害者に該当するケースを除き、「扶養控除の適用を受ける人(外国人従業員)から、その年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けていること」が要件となる(所法2➀三十四の二ロ)。 令和4年以前は、支払について具体的な金額要件はなかったが、令和5年以後は、38万円以上の支払を受けていることが求められる。 そこで、本稿(最終回)では、支払額38万円の判定のしかたについて、「金融機関から送金する場合」と「親族がクレジットカードを利用する場合」に分けて解説を行う。 【1】 「38万円以上」の判定のしかた(金融機関から送金する場合) 金融機関から送金する場合の「38万円以上」の判定のしかたは、次のとおりである。 (1) 支払日 金融機関からの送金日に、生活費又は教育費の支払があったものとされる(所基通2-50(1)イ)。したがって、令和5年中に送金している場合には、令和5年に生活費又は教育費の支払があったものとして「38万円以上」の判定を行うこととなる。親族の口座に実際に入金された日で判定しないことに留意が必要である。 (2) 邦貨への換算方法 原則として、送金をした金融機関(※)の送金日における対顧客直物電信売買相場の仲値(TTM)により換算する。ただし、円預金口座から送金する場合など、円により外国通貨を購入し直ちに送金するときには、円預金口座から引き落とされた金額をその額とすることもできる(所基通2-50(1)ロ)。 (※) 送金する者の主たる取引金融機関のものなど、合理的な為替レートを継続的に使用している場合にはそれも認められる。 また、その年中の国外送金合計額について、その年最後の支払日のTTM又は最後の支払に実際に適用された為替レートにより一括して円換算した金額で判定することもできる(所基通2-50(注)1)。 (3) 各種手数料の取扱い 金融機関から送金をするときにかかる各種手数料については、「38万円以上」を判定するときの金額に含めることができる。 この取扱いは、送金するときに手数料を支払う場合でも、送金を受ける親族が送金額から手数料分を差し引かれる場合でも同じであるが、送金を明らかにする書類に各種手数料の額が記載されていることが要件となる(Q&A[Q7])。 【2】 「38万円以上」の判定のしかた(親族がクレジットカードを利用する場合) 親族がクレジットカードを利用する場合の「38万円以上」の判定のしかたは、次のとおりである。 (1) 支払日 親族がクレジットカードを利用した日に、生活費又は教育費の支払があったものとされる(所基通2-50(2)イ)。したがって、令和5年中にクレジットカードを利用している場合には、令和5年に生活費又は教育費の支払があったものとして「38万円以上」の判定を行うこととなる。クレジットカード利用額の口座引き落とし日で判定しないことに留意が必要である。 (2) 邦貨への換算方法 外国通貨で決済されたものの場合には、原則として、クレジットカード利用日のTTMにより円換算する。ただし、クレジットカードの利用について円預金口座からの引落しにより支払われる場合には、口座から引き落とされた金額とすることもできる(所基通2-50(2)ロ)。 また、その年中の利用合計額について、その年最後のクレジットカード利用日のTTM又は最後の利用に実際に適用された為替レートにより一括して円換算した金額で判定することもできる(所基通2-50(注)1)。 〈参考〉邦貨への換算方法のまとめ 国外居住親族に係る扶養控除等の実務上の取扱いについては、国税庁から「令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」が公表されているので参考にされたい。 (連載了)
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第14回】 「NFTに関する税務上の取扱いに係るFAQ詳解⑤」 千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也 問7 商品の購入の際に購入先が発行するトークンを取得した場合 FAQの解説では、トークンを無償で取得した場合の経済的価値は、法人からの贈与に当たることから、一時所得に該当するとされている。 一時所得の場合は、最大50万円の特別控除額があるため実際に納税が必要なケースは限られてくるし、これに加えて、長期譲渡所得の場合と同じように2分の1課税の適用があるため、税負担は軽いものとなろう(所法22②二、34)。 FAQの解説では、一時所得の総収入金額は「無償で取得したトークンの時価」となるが、「そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、そのトークンの時価を0円として差し支えありません。」としている。 商品の購入の際に購入先の法人から発行を受けるトークンには、通常、いくばくかの価値があることが想定されるが、入ってきたもの(トークン)の時価を算定することが困難な場合に、総収入金額を計上しないという取扱いを認めているのである。 この部分は、「トークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できない」こと以外の他の理由も含めて、トークンの「時価の算定が困難な場合」に該当するかどうかを判断する必要がある。 また、市場性のある暗号資産と間接的にでも交換できるのであれば、通常は、時価の算定が困難であるとはいえないと指摘されるかもしれない。 FAQではトークンの無償による取得を想定しているため、総収入金額から控除する「その収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額」(所法34②)については触れられていない。 なお、トークンを発行する法人側の処理については更なる考察が求められる。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第97回】 「「地方税統一QRコード付納付書」の領収証書に係る印紙税の取扱い」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 令和5年4月1日から地方税用QRコードを活用した、「地方税統一QRコード付納付書」での納付が開始されます。これにより、地方税統一QRコードを読み取ることによって、インターネットバンキング等、スマートフォン操作による電子納付、特定金融機関等の窓口に本件納付書を持参することによる納付が可能となる予定です。 それに伴い、一般社団法人全国地方銀行協会から国税庁に「地方税統一QRコード付納付書」の印紙税の取扱いについての文書照会がありました。その内容について教えてください。 法令の規定に基づき地方公共団体から地方税の収納の事務の委託を受けた者が、支払者から地方税の交付を受けたときに、受託者が支払者に対して交付する金銭の受取書は、「地方公共団体の公金の取扱いに関する文書」として、非課税文書に該当する旨定められている(印紙税法第5条第3号、印紙税法別表第3 非課税文書の表)が今回照会の「地方税統一QRコード付納付書」についても同様に非課税文書と取り扱うことができるかどうかの照会である。 〈前提条件〉 地方公共団体の公金の収納又は支払に当たっては、金融機関を指定して事務を取り扱わせなければならないこととされており、原則として、この指定金融機関等により取り扱われることとなっている。 また、地方税に係る地方公共団体の徴収金のうち、eLTAXを経由する方法により電子的に納付若しくは納入するものに係る収納の事務については、指定金融機関ではなく、地方税共同機構に行わせることとされているものの、この機構は地方税法において、地方公共団体が共同して運営する組織として位置づけられていて、特定徴収金の収納の事務の一部を特定金融機関等に委託することができるとされており、その場合は地方公共団体に通知することとされている。 このことにより、特定金融機関等は、地方税法の規定に基づき、特定徴収金の納付委託を受ける者として地方税法上「地方公共団体が共同して運営する組織」である機構から特定徴収金の収納の事務の一部の委託を受けていると認められ、特定金融機関等は「地方税法の規定に基づき地方公共団体から特定徴収金の収納の事務の委託を受けた者」であり、支払者から特定徴収金の交付を受けた時に、受託者(特定金融機関等)が支払者に対して交付する金銭の受取書であると認められることから、支払者に領収証書を交付する時点で、印紙税法第5条第3号に規定する非課税文書に該当するとの文書回答内容である。 (了)