検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10254 件 / 1281 ~ 1290 件目を表示

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例124(所得税)】 「代替資産の取得価額が見積額を超えたため、4ヶ月以内に更正の請求をしなければならないところこれを失念したため、見積超過額部分につき「収用等の圧縮記帳の特例」の適用ができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例124(所得税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措法33①) (1) 概要 個人の有する一定の資産を収用等により譲渡し、収用等のあった日の属する年の12月31日までにその補償金等で代替資産(原則として収用された資産と同種、同区分の資産をいう)を取得したときは、その選択により、その補償金等の額が代替資産の取得価額以下であるときは、資産の譲渡はなかったものとし、その補償金等の額が代替資産の取得価額を超えるときは、その超える部分に相当する部分の譲渡があったものとして譲渡所得の金額の計算をすることができる。 (2) 代替資産の取得期間(措法33③) 収用等の圧縮記帳の特例は、収用等のあった日の属する年の翌年1月1日から収用等のあった日以後2年を経過した日までの期間内に代替資産の取得をする見込みであるときについて準用する。 (3) 申告要件(措法33⑥⑦) 収用等の圧縮記帳の特例の適用を受けようとする場合には、収用等のあった年の確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法33」と記載するとともに、一定の書類を添付して申告しなければならない。 なお、代替資産の取得予定日が収用等のあった年の翌年以後の場合には、「買換(代替)資産の明細書」に買換(取得)予定の資産の明細(取得価額の見積額、取得予定年月日等)を記載して提出しなければならない。 (4) 収用等に伴い代替資産を取得した場合の更正の請求(措法33の5④) 収用等のあった年の翌年以後に代替資産を取得する見込みで、「収用等の圧縮記帳の特例」の適用を受けた後、収用等に伴う補償金等で取得した代替資産の取得価額が、取得価額の見積額を超えるときは、当該代替資産の取得をした日から4ヶ月以内に、納税地の所轄税務署長に対し、その収用等のあった日の属する年分の所得税についての更正の請求をすることができる。       (了)

#No. 529(掲載号)
#齋藤 和助
2023/07/27

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第21回】「今治造船移転価格事件(地判平16.4.14、高判平18.10.13、最判平19.4.10)(その2)」~租税特別措置法66条の4第1項、2項~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第21回】 「今治造船移転価格事件 (地判平16.4.14、高判平18.10.13、最判平19.4.10)(その2)」 ~租税特別措置法66条の4第1項、2項~   税理士 水野 正夫   3 検討 (1) 本件各取引にCUP法を用いることの適否 本判決は、本件国外関連取引が個別性の強いものであったとしても、国際的な船舶請負建造取引には取引相場が存在しており、一定の価格水準なるものを観念することができることから、本件国外関連取引に係る船価を他の取引と比較することによって独立企業間価格を算定することが一般的に不合理であるということはできないとした。 控訴人は、CUP法を否定する根拠として、船舶請負建造取引が個別性の強い取引であることを主張しているが、そのことのみによって直ちにCUP法の適用を否定すべきことにならないのは本判決の判示するところであろう。また、本判決のいうとおり、①国際的な船舶の価格については、取引相場が存在しており、それを参考として価格交渉が行われていること、及び、②本件比較対象取引が「内部」取引価格比準法を採用しており、現実に控訴人が同種の船舶を販売する比較対象取引が選定できること、を鑑みるとCUP法を否定できるまでの主張の根拠が弱かったように思われる。 CUP法が適用できるかどうかについては、その比較可能性の要件である「同種の棚卸資産」及び「同様の状況の下で」の要件に該当するかどうかが論点となる。 本判決は、「同種の棚卸資産」及び「同様の状況の下で」の意義について「同種の棚卸資産」と認められるためには、「資産の性状・構造・機能等の面で、物理的・化学的な相当程度の類似性が必要となり、」また、「同様の状況の下で」された取引と認められるためには、「取引の段階、数量、時期、引渡条件、支払条件、取引市場等について類似性が必要」となるものと解されるとしている。 控訴人は、非関連者船と国外関連者船とでは、各建造原価、販売費及び一般管理費を含む総原価が相違していることが明らかであり「同種の棚卸資産」とはいえない取引を比較対象取引としており、違法であると主張したところ、本判決は「同種の棚卸資産」か否かの判断において、総原価の多寡など各取引相手方ごとに変動する要素を考慮することは予定されていないとして、控訴人の主張を排斥している。 また、この論点は「同種の棚卸資産」に該当するかどうかについて議論されているが、控訴人の主張する総原価が明らかに相違している事象は、「同種の棚卸資産」に該当するかどうかではなく、非関連者船と関連者船において「同様の状況の下で」行われておらず、差異を調整しなければ、比較可能性が担保できないということが論点だったのではないかと思われる。 また、本件では論点になっていないが、非関連者に対しては販売機能のコストがかかっているが、関連者に対しては、販売活動のコストがなく、差異が存在し調整すべきという主張もあり得たのではなかろうか。仮に検証対象取引と比較対象取引との間には販売機能に明らかに差異が認められる事実があれば、実務的には差異調整が行われていることが多いところ(※3)、厳密な比較可能性を求められるCUP法においては差異調整が認められた可能性もあったのではないかと思われる。 (※3) 販売活動に係る差異の調整を実施している事案として、日本圧着端子事件(大阪高判平成22年1月27日(判例集未搭載)、TAINSコード:Z260-11370)がある。 (2) 差異の調整の要否 本判決は、「調整対象となる差異」には、「対価の額の差」を生じさせ得る全てが含まれると解すべきではなく、「対価の額に影響を及ぼすことが客観的に明らかであるものに限られるものというべき」(下線筆者)であると述べ、調整が必要となる事情を限定的に捉えているように思われる。 しかしながら、価格というのは様々な事情を勘案して第三者間で決定されるものであり、事情ごとに対価の額が分解され、客観的な値段が付されているものではない。このような実務に鑑みると、「対価の額に影響を及ぼすことが客観的に明らかであるものに限られるものというべき」とする要件はいささか厳格過ぎ、非関連者取引と関連者取引との差異があるにもかかわらず、全く調整が行われないまま課税処分が行われるような事態も懸念される(※4)。 (※4) 太田=北村前掲(※1)書90頁は、「本判決の上記判示からは必ずしも明らかではないが、仮に、上記判示が、上記の場合に、納税者に対して、納税者が主張する事情(差異)が比較対象取引の『対価の額に影響を及ぼす』ものであることに加えて、『具体的な対価の影響額』についてまで主張立証する責任を負わせる趣旨であるとすれば、行き過ぎであろう」と述べる。 特に本件で採用されているCUP法においては、厳格な比較可能性が要求されるため、可能な限り非関連者取引と関連者取引の差異の調整を施すことによって、比較可能性の精度を高める努力が必要とされるのではなかろうか。 筆者は、納税者の売り手としての機能に差異が明確にあり、定量的に把握できるものについては、その合理性を判定した上で、客観的に価格へ影響を及ぼしていることが明らかでなくとも、調整する努力をすべきと考える。 本件にあてはめると、控訴人が主張する債権回収の確実性を確保するための信用調査や担保の設定等の監視費などについては、明らかに本件国外関連取引と比較対象取引とで差異が生じており、定量的に把握することも可能であると思われることから、比較可能性を高めるために調整を施すことも合理的な差異の調整として認められてしかるべきと思われる。 一方、取引数量に起因する差異については、本判決が判示するとおり、建造請負契約はいずれも1隻ごとの建造契約であり、取引数量に差異があるとはいえず、また、非関連者に対してボリュームディスカウントを行った事実がない限りにおいては、定量的に把握することもできないと思われる。 (3) 独立企業間価格の「幅」について 控訴人は、幅の主張にあたり、控訴人が過去23年間において非関連者に売却した船舶の船主別の契約金額と市況指標との間での回帰分析を行い、その相関が確認された場合には残差を観察することで、幅を主張した。本判決は、この分析は、CUP法の「同種の棚卸資産」「同様の状況の下」という要件を無視しており、解釈論として失当であるとし、独立企業間価格にばらつきが存在することを統計学的に示すためには、「①同種同様という要件を満たす、②最も比較可能性の高い、③同等の比較可能性を有する比較対象取引の分布状況(ばらつき)を明らかにする必要がある」とし、上記分析は差異の調整を行わず、同種同様の要件を満たさず、独立企業間価格の分布状況を示すものとはいえない、としている。 控訴人は、独立企業間価格の幅として議論するのであれば、契約日が近い同種の複数の非関連者船の調整された価格幅などを示し、実際の取引価額がその幅に入っていると主張するための詳細な分析が必要だったように思われる。   4 おわりに 移転価格税制の理論的支柱となる独立企業原則は、いわゆる経済的合理性を税法に取り込み、課税要件化したものとして捉えることができる。すなわち、移転価格税制における独立企業原則は、競争市場を前提として成立する考え方であり、競争市場における通常の取引条件との比較において関連企業の価格を調整するものとして経済的合理性を要件化し、所得移転の防止という目的を達成するものとして捉えるのである(※5)。 (※5) 水野正夫「国外関連者に対する寄附金と相互協議」税法学581号153頁(2019年)参照。 したがって、独立企業原則は、あくまでも独立企業間での競争市場における経済的合理性であり、企業グループとしての租税を軽減し税引後利益を最大化するというような経済的合理性ではないことはいうまでもない。 本件においては、控訴人の「事業戦略」の差異調整の根拠として、不況時には、市場価格よりも高めの取引価格を設定して、国外から国内に所得を移転し、好況時には、市場価格よりも低めの取引価格を設定して、国内から国外に所得を移転し、グループ全体として、最大限の利益を確保することを目指していたという事実が原審判決において認定されている。 判決文からは閲覧制限がかかっており、必ずしも明らかではないが、本判決の判示事項では、「空き船台で国外関連者船を建造することにより船台の完全操業を実現するという控訴人会社独自の事業戦略に基づくものであるから、それによる差異を調整すべきであるとの控訴人会社の主張」に対し、判決は「控訴人会社の事業戦略の目的は、関連者を含めたグループ全体の利益を最大化するための、グループ全体の利害調整であり、しかも、これは関連者との間の特殊な関係を基礎としなければ成立しないものというべきであって、独立企業間では実現困難であり、移転価格税制の目的を考えると、控訴人会社の事業戦略は、国外関連者との関係を利用して通常の対価とは異なる船価を設定し、国外関連者との間で所得移転を繰り返すものであり、それはまさしく移転価格税制が問題にしている『所得の国外移転』にほかならないから、事業戦略に基因する差異の調整は要しない」、として企業グループとして租税を軽減し、税引後利益を最大化するような経済的合理性を否定し、控訴人の主張を排斥している。私見ではこの点が裁判所の判断に大きく影響し、控訴人の主張する事業戦略の差異の調整のみならず他の差異調整も認められなかったようにも思われる。 したがって、筆者はこの事案を事例判決として捉えることにしたい。差異の調整は事案によって様々である。移転価格税制が、私的自治ないし契約自由の原則と抵触することになりやすい(※6)ことを鑑みれば、移転価格税制の執行においては、真の独立企業間価格にできる限り近付けるような差異の調整について、課税当局は納税者の主張に真摯に耳を傾け対話を尽くすことによって、両当事者の理解を深め、独立企業間価格の適正性を確保することが求められるであろう。 (※6) 金子宏「移転価格税制の法理論的検討-わが国の制度を素材として-」同『所得課税の法と政策〈所得課税の基礎理論/下巻〉』所収(有斐閣・1996年)364-365頁[初出、1993年]参照。 (了)

#No. 529(掲載号)
#水野 正夫
2023/07/27

リース会計基準(案)を学ぶ 【第2回】「リースの定義」

リース会計基準(案)を学ぶ 【第2回】 「リースの定義」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、リースの定義について解説する。 定義については、次のように規定されている(リース会計基準(案)BC18項)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ リースの定義 リース会計基準(案)では、「リース」を次のように定義している(リース会計基準(案)5項)。 「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)は、「リース取引」に係る会計処理を定めており、「リース取引」を次のように定義している(企業会計基準第13号1項、4項)。 このように、「リース取引」から「リース」の用語に改正され、会計基準の名称も、「リース取引に関する会計基準」から「リースに関する会計基準(案)」へ改正することが提案されている。 リース会計基準(案)等の開発に際して、次の契約についても審議されたが、いずれの契約においてもサービスの要素を区分した後に、リースの定義を満たす部分が含まれる場合があるとし、当該部分についてリースの会計処理を行うことについて記載されている(リース会計基準(案)BC26項)。 これらについては、今後、本連載で解説する予定である「リースの識別」(リース会計基準(案)23項~28項等)の理解が重要になる。   Ⅲ 契約 前述のとおり、「リース」は、契約又は契約の一部分と定義されている。 このため、「契約」の定義も規定されており、「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいい、契約には、書面、口頭、取引慣行等が含まれるとされている(リース会計基準(案)4項)。 契約は、通常、契約書という書面の形式で締結され、取引の内容については、当事者間において明確にされていると考えられる。 リース会計基準(案)では、契約がリースを含むか否かの判断を行う(リースの識別の判断)ことになり、契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断するとされている(リース会計基準(案)23項~25項)。 また、複数の契約は、区分して会計処理を行うか単一の契約として会計処理を行うかにより結果が異なる場合があるとし、それぞれのリースにおける収益及び費用の金額及び時期を適切に計上するため、複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理することが必要となる場合があると規定されていることにも、注意が必要である(リース会計基準(案)BC20項)。 このため、リース会計基準(案)の適用に際しては、契約に関する法令の知識も必要になると考えられる。   Ⅳ 原資産、使用権資産など 「リース」の定義では、原資産を使用する権利と規定されていることから、原資産などの定義に注意が必要である。「リース」のほかに、例えば、次の用語が定義されている(リース会計基準(案)4項~22項)。 リース会計基準(案)で用いられている用語については、現行の実務においてなじみのないものがあるので、リース会計基準(案)の適用に際しては、定義に注意する必要があると考えられる。   Ⅴ 借地権、セール・アンド・リースバック取引、サブリース取引など 定義については、リース適用指針(案)に規定されているものもある。 例えば、次の定義である(リース適用指針(案)4項、89項)。 このため、現行の「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)等に規定されていなかった項目についても、リース会計基準(案)等の適用対象となる項目として規定されるものがあることに注意する必要があると考えられる。   (了)

#No. 529(掲載号)
#阿部 光成
2023/07/27

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第144回】株式会社レイ「第三者調査委員会調査報告書(公表版)(2023年6月9日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第144回】 株式会社レイ 「第三者調査委員会調査報告書(公表版)(2023年6月9日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【株式会社レイ第三者調査委員会の概要】   【株式会社レイの概要】 株式会社レイ(以下「レイ」と略称する)は、1981年6月に株式会社スタジオ・レイとして設立。1991年10月、現商号に変更。広告・映像関連の企画制作を主たる事業とする。売上高12,450百万円、経常利益1,401百万円、資本金471百万円。従業員数399人(2023年2月期連結実績)。2017年12月、株式会社テレビ朝日との間で資本業務提携契約を締結し、同社が発行済株式の20%を保有する筆頭株主となる。本店所在地は東京都港区。東京証券取引所スタンダード市場上場。会計監査人は城南監査法人。   【第三者調査委員会による調査報告書の概要】 1 第三者調査委員会の設置経緯 レイの経営幹部は、2022年12月から所轄の税務署により税務調査を受けていたところ、2023年3月27日に、従業員A(以下「A氏」という)から、レイの事業と競合する案件を、自己が設立した合同会社において受注するとともに、当該案件に係る外注先への支払いについて、A氏が担当する受注案件に関する外注先への業務の発注であるかのように装い、外注先への発注業務に係る支払いの名目で、当該支払いをレイに負担させた旨の申告を受けた。この申告に基づいて、レイが、顧問弁護士等を含むチームにより調査を行ったところ、2023年4月6日に、A氏より、他の案件においても、外注先に指示して仕入金額を水増ししてレイに請求させ、当該外注先より自己の自営会社等へ金員を送金させることにより、会社資金の詐取を行っていたとの供述が得られた(本件事案)。 レイは、短期間の調査でA氏から追加の供述があり、疑義の生じる金額が広がったことから、財務諸表に対する信頼性の回復のためには独立した第三者から構成される第三者調査委員会による専門的な調査が必要であると判断し、 2023年4月14日の取締役会において、レイと利害関係を有しない外部の専門家から構成される第三者調査委員会(当委員会)を設置することを決定した。 2 第三者調査委員会による調査の概要 (1) 第三者調査委員会が認定した不適切な取引 第三者調査委員会は、調査の結果、レイにおいて、次の3類型の不適切な取引が判明したとしている。 ① 仮装取引による会社資金の詐取 レイの従業員であるA氏及びC氏は、遅くとも2020年3月から2023年3月までの間において、外注先への業務の発注を仮装又は発注額を水増しして、レイから外注先に対して金員を支払わせたうえで、外注先において、支払額の一部を手数料として受領した後、残額をA氏及びC氏の指示に基づき、両者の自営会社等へ支払わせることによりレイの資金を詐取していた。 詐取した金額は、A氏が218,679千円、C氏が1,925千円であった。 ② 不適切なキックバック A氏は、2022年1月から2023年3月までの間において、レイに大型案件を紹介したj社に対して紹介料を支払うにあたり、j社に指示して、レイに対する請求額を水増しさせ、j社からA氏の自営会社及びb社に支払いを行わせることにより、j社から不適切なキックバックを受領していた。 A氏がキックバックにより得た金額は43,433千円であった。 ③ 背任行為による会社資金の詐取 A氏は、従業員の地位に基づく任務に背き、①レイの事業と競合する大型案件を自営会社において受注するとともに、②当該案件に係る外注先への支払いを、自らが担当する受注案件に関する外注先への業務の発注であると装って、発注業務に係る支払いの名目でレイに負担させていた。本来は、自営会社において負担すべき外注先への支払いをレイに負担させたことにより、A氏は不当な利益を得ていた。 A氏が詐取した金額は160,719千円であった。 (2) 第三者調査委員会による件外調査 第三者調査委員会は、本件事案のほか、件外調査を行い、次の不適切な取引が判明したとしている。 ① 原価付替え 第三者調査委員会は、レイにおいて、C氏をはじめとするコミュニケーションデザイン部の一部の従業員による原価付替えが行われていた事実を確認している。 ② 売上高の前倒し計上 第三者調査委員会は、1件の売上高前倒し案件を認識したが、これは、売上高の前倒し計上を意図して行われた「不正」としての虚偽表示ではなく、「誤謬」による虚偽表示であったと結論づけている。 当該売上案件は、2021年12月度に売上計上すべきであったところ、担当者が経理部に相談した結果、前受金計上ではなく、 2021年9月度において売上計上をするよう指示され、結果として売上高の前倒し計上となったものであり、誤った結果となった原因は、担当者らから相談を受けた経理部門において、代理店都合による変則的な状況(別の案件名目で売上代金を前受する)に関して、事実関係等を正確に認識せず、さらには、表面的な状況に関して、特に会計監査人である監査法人に事前に相談することもなく、誤った状況の解釈に基づき、担当者に指示したことが原因であったと認識し、このような特殊な経緯のある1件を除き、レイにおいては、売上高の前倒し計上が行われていた事実は認められなかったとのことである。 3 原因及び問題点(報告書47ページ以下) 第三者調査委員会は、原因及び問題点を、以下のように分析している。 (1) 不正のトライアングル分析 ① 動機 第三者調査委員会は、A氏が、動機について、行政関連案件等では多数の部下の飲食代等を自己で負担していたところ、これを一部補填するために仮装取引による会社資金の詐取を始めたと供述していると紹介したうえで、不正行為の始期が行政関連案件より前であること、A氏が自営会社等を使って不動産投資やインターナショナルスクールの経営等を行っており資金ニーズがあったことに鑑みれば、個人的な利得をも目的として、不正行為を行ったものと認定した。 また、C氏の動機については、利益率に余裕のある案件が完了する際に、知人が会社を経営していたことを奇貨として、以前から知っていた方法による会社資金の詐取を思い立ち、業務の実態がないにもかかわらず外注費名目の発注を行ったところ、思いのほか簡単にできてしまったという供述を紹介している。 ② 機会 第三者調査委員会は、「機会」についは、次の(2)及び(3)で説明している。 ③ 正当化 第三者調査委員会は、A氏について、行政関連案件の引継ぎ以降、業務が多忙を極めるようになり、その後担当した警備案件により、社内での売上実績は1番になるほどであったが、さほど年収が上がることはなく、また、部下の飲食代を持つ機会が増加するなどお金もかかるようになったことから、自らのレイに対する貢献の見返りとして不正行為は正当化されると考えていたものと認定した。 また、C氏については、忙しい中特に給料も上がらず、賞与も業績が反映されるとはいえその反映は限定的であることから、自らが担当する案件において利益率に余裕がある案件があれば、そこから利益の一部を個人的に得たとしても問題はないと考えていたとの供述を紹介している。 (2) 外注費を装った仮装取引による会社資金の詐取等に係る原因及び問題点 第三者調査委員会は、A氏らによる会社資金の詐取に係る原因及び問題点を以下の4項目に分けて分析している。 第三者調査委員会による分析を概説すると、レイにおいては、案件の管理担当者が1名であったところ、仮装取引による会社資金の詐取が大規模に行われた案件は警備に係るものであり、警備業を遂行するために必要な国家資格を持っているA氏のみが対応することとなり、同じ部署の上司・同僚らによる牽制機能が何ら効かない状況となっていたところに、行政関連及び警備案件については、レイが行っていたイベント等の企画・制作等とは原価構成が大きく異なって、かつ、利益率が高いか又は利益の絶対額が大きかったため、架空の外注費等を入れても目標の達成が可能であったことに加えて、レイにおける外注管理が不十分であったことが大きな原因であったという認識を示した。 さらに、第三者調査委員会は、A氏及びC氏が、外注費を装った仮装取引による会社資金の詐取等を行い得た1つの理由として、それぞれが自営会社を有していたことを挙げて、A氏及びC氏は、就業規則及び行動規範に関する誤った解釈のもと、就業規則等を遵守することなく、レイと競合する事業を営む自営会社を有した結果、外注費を装った仮装取引による会社資金の詐取を行い得たものであると認定した。 (3) 原価付替えの原因及び問題点 第三者調査委員会は、原価付替えに関するC氏の認識について、以下の供述を挙げている。 また、C氏の認識については、以下の問題点等を指摘している。 その背景として、適切な原価管理に関する規範意識の鈍麻があり、研修等を通じた従業員に対する規定の周知徹底が不足していることや、業務の遂行過程を通じた適切な指導教育が実効的に行われていないことが原因であると認定した。 (4) 売上高の前倒し計上の原因及び問題点 第三者調査委員会は、売上高の前倒し計上は、本来は2021年12月度に売上計上すべき売上案件について、担当者が経理部に相談した結果、前受金計上ではなく、2021年9月度において売上計上をするよう指示され、売上高の前倒し計上となったものであり、その原因は、主として、担当者らから相談を受けた経理部門において、代理店都合による変則的な取扱いに関して、事実関係等を正確に認識せず、さらには、特に会計監査人である監査法人に事前に相談することもなく、誤った状況の解釈に基づき、担当者に指示したことが原因であったと認定している。 4 再発防止策(報告書54ページ以下) 第三者調査委員会が提示した再発防止策は次のとおりである。 第三者調査委員会は、レイにおいて、案件の担当者が1人であったことを不正の発生原因の1つとして捉え、牽制機能の発揮による案件の実施をより有効かつ効率的に行い、担当者が病気等になった場合の案件の継続性を担保し、かつ、事業のより良い継続性の観点からも、案件の担当者の複数制の導入を検討することを提言している。そのうえで、すべての案件を一律に複数にするのではなく、受注金額が一定の金額を超える場合、新しい業務分野の案件で、担当者を複数制にする方法などの検討も勧めている。 また、本件事案の特徴である自営会社を使った不正に関して、第三者調査委員会は、「副業に関しての社内の取扱いの周知・徹底」として、レイでは、就業規則及び行動規範で副業の取扱いを定めており、許可なくレイと競合する業務活動を行うこと、また事前にレイの許可を受けることなく、レイの行う取引と競合する活動を自ら行い、あるいは競合会社の経営者になる等、レイと競合する業務活動を行うことが禁止されているにもかかわらず、A氏及びC氏は、自営会社を有したとしても自営会社から給料をもらわなければ、レイにおいて禁止されている副業には当たらないという独自の解釈を持っていたことがわかったことから、就業規則及び行動規範の周知徹底を図り、特に、副業の可否に関しては、従業員に対し正しい知識を保有させることが極めて重要であると結んでいる。   【調査報告書の特徴】 第三者調査委員会が、「背任行為による会社資金の詐取」とした、従業員A氏が自ら所有する会社(第三者調査委員会は「自営会社」と呼称している)を利用して、勤務する会社レイと競合する取引を行ったうえ、その取引に係る外注費等をレイから支払わせるという不正は、本連載で初めて取り上げる不正類型である。A氏が不正に詐取した金額は4億2,000万円を超え、これは、レイの2022年2月期連結決算(修正後)における当期純利益を上回っている。なぜ、これほど巨額の金員の詐取が、A氏本人が自白するまで発覚しなかったのか。さらに分析を進めたい。 1 財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備と再発防止策 レイは、2023年6月30日付で、「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」をリリースし、本件事案の原因を次のようにまとめている。 そして、この不備が、財務報告に重要な影響を及ぼすことから、開示すべき重要な不備に該当すると判断したうえで、不備を是正するために、第三者調査委員会の指摘・提言を踏まえ、以下の再発防止策を講じることを公表した。 第三者調査委員会が提言した再発防止策との比較では、「不正加担に対する拒否要請及び通報窓口の設置」と「内部監査機能の強化」という項目が追加されているものの、「不正加担に対する拒否要請」という文言の意味するところが詳らかではないため、具体的にどういった働きかけをするのかは不明であり、かつ、第三者調査委員会が検討を提言している「案件担当者の複数制」については、まったく触れられていない。 2 特別損失の計上 レイは、前項のリリース公表と同日に、「特別損失の計上に関するお知らせ」をリリースして、第三者調査委員会の調査結果に基づき、2022年2月期と2023年2月期に貸倒引当金を繰り入れることにより、特別損失を計上したことを公表した。 同リリースでは、レイは調査報告書の内容を踏まえ、監査法人と協議した結果、過大に計上された売上原価を取り消すとともに、当該売上原価に係る支払いが実施された期において当該従業員等に対する債権を計上するものの、着服された資金の大部分は、遊興費・流動性がなく時価の不透明な投資・レイに無断で行われた副業の事業資金として支出されており、回収可能性に懸念が生じることから、その全額について特別損失(貸倒引当金繰入額)を計上することとしたと説明されている。 なお、レイは、本件事案発覚後、A氏らから71百万円を回収していることから、2023年2月期に関しては、回収した金額を相殺した残額である179百万円が貸倒引当金として計上されている。 (了)

#No. 529(掲載号)
#米澤 勝
2023/07/27

開示担当者のためのベーシック注記事項Q&A 【第13回】「会計方針に関する注記②」-その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項-

開示担当者のための ベーシック注記事項Q&A 【第13回】 「会計方針に関する注記②」 -その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項-   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   Question 当社は会計監査人設置会社で個別注記表を作成しています。有価証券報告書の提出義務はなく、連結計算書類は作成していません。個別注記表における重要な会計方針に係る事項に関する注記のうち、その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項について、どのような内容を記載する必要があるか教えてください。 Answer 「その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項」には、会計方針のうち、下記①から④以外の重要なものを記載する必要があります。 ① 資産の評価基準及び評価方法 ② 固定資産の減価償却の方法 ③ 引当金の計上基準 ④ 収益及び費用の計上基準 ● ● ● 解説 ● ● ● 1 経団連のひな型による解説 経団連が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2022年11月1日)によれば、次のような注記が考えられます。 【個別注記表】   2 注記事項の解説 (1) 重要な会計方針に係る事項に関する注記の全体像 個別注記表で記載すべき重要な会計方針に係る事項に関する注記事項は次のとおりです(会社計算規則第101条第1項)。なお、重要性が乏しいものは記載しないことも認められます。 (2) 注記事項の解説 「その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項」には、会計方針のうち、下記①から④以外の重要なものを記載する必要があります。 また、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第4-3項に規定する「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」 に採用した会計処理の原則及び手続について、当該採用した会計処理の原則及び手続が計算書類を理解するために重要であると考えられる場合には、「その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項」に概要を注記する必要があります。 それでは、具体的にどのようなものが注記されるのか、実際に見ていきましょう。 [キヤノン電子株式会社 2022年12月期 個別注記表] ※キヤノン電子株式会社「第84期 定時株主総会招集ご通知に関してのインターネット開示情報」8頁より抜粋。 [株式会社TOKAIホールディングス 2023年3月期 個別注記表] ※株式会社TOKAIホールディングス「第12回定時株主総会の招集に際しての電子提供措置事項」19~20頁より抜粋。 *  *  * 次回の第14回は、「貸借対照表に関する注記」をテーマに解説します。   (了)

#No. 529(掲載号)
#竹本 泰明
2023/07/27

〈一問一答〉副業・兼業に関する担当者のギモン 【第2回】「副業・兼業を禁止または制限できる場合」

〈一問一答〉 副業・兼業に関する担当者のギモン 【第2回】 「副業・兼業を禁止または制限できる場合」   弁護士法人東町法律事務所 弁護士 木下 雅之   ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 裁判例の傾向 労働時間以外の時間をどのように利用するかは本来労働者の自由であることから、副業・兼業は原則として労働者の自由である。したがって、仮に副業・兼業について会社の許可を要するとする「許可制」を採用している場合であっても、許可するか否かを会社が恣意的に判断することが許されるわけではなく、副業・兼業を禁止または制限すべき合理的な理由が認められる場合に限って不許可とすることができる旨の限定解釈がなされることが多い。 では、具体的にいかなる場合に、会社は労働者の副業・兼業を禁止または制限し得るのか。 この点について、マンナ運輸事件判決(京都地裁平成24年7月13日判決・労判1058号21頁)は、「労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である」としたうえ、「兼業を許可するか否かは、上記の兼業を制限する趣旨に従って判断すべきものであって、使用者の恣意的な判断を許すものでないほか、兼業によっても使用者の経営秩序に影響がなく、労働者の使用者に対する労務提供に格別支障がないような場合には、当然兼業を許可すべき義務を負うものというべきである」旨判示している(下線部筆者)。 その他の裁判例を見ても概ね同様の判示をしており、裁判例の傾向としては、一般的な規範として、①企業秩序への影響が認められる場合、または、②労務提供上の支障が認められる場合に、会社は労働者の副業・兼業を禁止または制限し得ると判断している。そのうえで、個別具体的な事案に応じて、本業側の事情(本業の職種および内容、役職、本業に従事する日数・時間・時間帯など)や副業側の事情(副業の職種および内容、役職、副業の目的、副業に従事する日数・時間・時間帯など)などの具体的な判断要素を考慮しながら、柔軟に解釈適用しているものといえる。   2 副業・兼業ガイドラインの内容 厚生労働省が公表する副業・兼業ガイドラインは、上記のような裁判例のほか、労働契約上、会社および労働者が負っている多様な付随義務(安全配慮義務・秘密保持義務・競業避止義務・誠実義務)を根拠に、会社が労働者の副業・兼業を禁止または制限し得る例外的な場合として、以下の4つの事由を挙げている(副業・兼業ガイドライン6~8頁)。 また、この点は、副業・兼業ガイドラインの補足資料と位置付けられる「「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A」(以下「副業・兼業Q&A」という)においても触れられており、上記①~④のような事情がなければ、労働者の希望に応じて、原則副業・兼業を認める方向で検討することが望ましいと指摘されている(副業・兼業Q&A・Q1-20)。   3 実務上の対応 実務上、就業規則等の服務規律において、単に「許可なく、他の企業の役員もしくは従業員となること」を禁止し、不許可事由を明記しない例も多く見られる。 しかしながら、上記1で述べたとおり、仮に不許可事由を明記していなかったとしても、会社の恣意的な判断が許されるわけではなく、裁判実務上は限定解釈がなされることが多い。したがって、不許可事由を明記しないことが会社の裁量の範囲を広げることにつながるわけではない。他方、不許可事由が明らかでないことにより、副業・兼業を希望する労働者が、会社に許可されないことをおそれて、無許可のまま副業・兼業に従事するリスクも考えられるところである。 以上を踏まえると、労働者の副業・兼業について、会社がこれを禁止または制限し得る場面(事由)は、就業規則等において具体的に明記しておくことが望ましい。 この点、副業・兼業ガイドラインが掲げる上記2の4つの事由は、これまでの裁判例の傾向にも合致する内容となっており、具体的な不許可事由の設定にあたっては、これらの事由をベースとして、自社の具体的な事情に合わせた不許可事由を検討することが考えられる。 もっとも、これまでの裁判例の傾向に照らすと、「労務提供上の支障がある場合」に該当するか否かの具体的な判断等は、厳格になされていることに留意が必要である。したがって、例えば、「労務提供上の支障がある場合」の一場面として、「過度な長時間労働」に該当する場合を不許可事由として設定するときは、その具体的な基準についても別途定めておくことが望ましい。 (了)

#No. 529(掲載号)
#木下 雅之
2023/07/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例85】ニデック株式会社「外部調査委員会の調査報告書受領のお知らせ」(2023.6.16)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例85】 ニデック株式会社 「外部調査委員会の調査報告書受領のお知らせ」 (2023.6.16)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げるのは、ニデック株式会社(以下「ニデック」という)が2023年6月16日に開示した「外部調査委員会の調査報告書受領のお知らせ」である。なお、同社の旧商号は「日本電産株式会社」であり、2023年4月1日に現在の商号に変更している(2022年4月21日に「商号変更に関するお知らせ」を開示)。 同社は、2023年6月2日に「分配可能額を超えた前期の中間配当金、並びに前期の当社株式取得について」を開示し、題名どおりに分配可能額を超えた配当と自己株式取得(以下「過大配当」という)を実施したとしていた。その開示では、「事実関係の調査、発生原因の究明、関係者等の責任の検討及び再発防止策の提言を行うこと」を目的として外部調査委員会を設置するとされており、今回の開示はその調査報告書を受領したという内容である。   2 知識不足と無責任 「外部調査委員会の調査報告書受領のお知らせ」では、最初に「調査報告書の概要」が記載されている。その中の過大配当の原因についての記載は次のとおりである(この記載だけでも、ニデックの内部統制と企業統治の水準の低さが伝わるかと思われるが、調査報告書の「原因分析」の記載を読むと、より生々しく伝わるはずなので、調査報告書の本文をぜひ確認していただきたい)。 原因は想定どおりである。過大配当の事例は、本連載の【事例30】と【事例51】でも取り上げたが、それらと同様に会社の皆の「知識不足」と「無責任」が原因である。 なお、調査報告書では取締役に善管注意義務違反は認められないとされているが、同社の内部統制と企業統治がプライム市場上場企業の水準と言えないことは明らかである。少なくとも1名は、分配可能額に意識が及ぶ者を取締役に据えた方がいいだろう。   3 監査法人への責任転嫁 「分配可能額を超えた前期の中間配当金、並びに前期の当社株式取得について」の主文の前半の記載は次のとおりである(下線は筆者による)。 「見落としにより」をあえて強調して、過大配当は監査法人のせいだと言いたいようである。これについて、調査報告書の「原因分析」の最後に次のような記載がある。 会計監査の対象は財務諸表の適正表示である。監査法人に責任転嫁するのはお門違いだろう。   4 返還しないのか? 「分配可能額を超えた前期の中間配当金、並びに前期の当社株式取得について」には次のような記載がある。 調査報告書によると、2022年10月24日開催の取締役会で決議した1株当たり35円の配当(合計約201億円)はすべて分配可能額規制違反だったとのことである。ニデックの第50期有価証券報告書によると、同社の創業者かつ代表取締役会長の永守重信氏(以下「永守氏」という)が保有する同社株式は49,473千株、永守氏の妻が代表を務めるエスエヌ興産合同会社が保有する同社株式は20,245千株である(両者合わせて同社株式を12.11%保有)。したがって、永守氏は約17億円の配当を、エスエヌ興産合同会社の分も合わせると約24億円の配当を分配可能額規制に違反して受け取ったことになる。 永守氏は返還しないのだろうか。開示にそれに関する記載はない。【事例51】で取り上げた株式会社リソー教育とだぶってみえてくる。   5 法令を順守した事業活動? ニデックは2022年10月24日に「東洋経済新報社への民事訴訟提起および告訴状提出に関するお知らせ」を、2023年1月24日に「ダイヤモンド社への民事訴訟提起および告訴状提出に関するお知らせ」を開示している。いずれの開示も、最後に次の1文が記載されている。 同社は、これらの開示をしたとき、実際には会社法や会社計算規則といった法令を守っていなかった。この記載は誤りだったことになるので、本来ならば訂正すべきである。 同社は、2023年6月28日、再び東洋経済新報社を訴えることにして、「東洋経済新報社、元従業員他への民事訴訟提起等に関するお知らせ」を開示している。さすがにその開示の最後に上の1文は記載されていない。最後に記載された文章は次のとおりである。 自分には甘く、他者には厳しい会社のようである。 (了)

#No. 529(掲載号)
#鈴木 広樹
2023/07/27

プラス思考の経済効果 【第17回】「藤井聡太七冠が八冠を獲得した時の経済効果~第1部~」

プラス思考の経済効果 【第17回】 「藤井聡太七冠が八冠を獲得した時の経済効果~第1部~」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 はじめに 2023年6月1日、これまで将棋界の六冠を獲得していた藤井聡太棋士は渡辺明名人から名人位を獲得しました。これで史上初のタイトル全八冠制覇が視野に入ってきました。これまでの藤井七冠のタイトル獲得の流れは次のとおりです。 〈資料1:藤井七冠が獲得したタイトル〉 これまで七冠を獲得したのは羽生善治棋士だけです。羽生九段は25歳4ヶ月で七冠を獲得しましたが、もし藤井七冠が残る1つのタイトル「王座」を獲得すると前人未踏のタイトル全八冠を制覇することになります。 今回は、藤井七冠が全タイトル八冠を獲得した時の経済効果を計算します。ただし、藤井七冠は残る1つの「王座」を獲得するまで現在の七冠を維持し、さらに「王座」を獲得して八冠を1年前後は維持するという前提で、八冠を獲得してからの約1年間の経済効果を計算します。 今回の計算にはいろいろな資料が必要となりましたので、第1部と第2部の2回に分けて説明をすることにします。   2 藤井七冠の経済効果の計算の基になる直接効果 経済効果は、専門的には直接的消費である「直接効果」と間接的消費の「一次波及効果」と「二次波及効果」の合計で表されます。藤井七冠の経済効果の計算の基になる直接効果の算出には、藤井七冠のファンの人たちの消費はもちろんのこと、藤井七冠のタイトル獲得料、対局料、コマーシャルのスポンサー収入なども対象になります。藤井七冠の収入は1部が自分の生活費に、残りは金融機関に預金されるでしょう。預金は金融機関により投資に使われ、経済効果の直接効果となるのです。 藤井七冠の直接効果は次の7項目とします。   3 直接効果の各項目別金額 (1) 藤井七冠の基本給、タイトル獲得料・防衛料、対局料などの収入 ① 藤井七冠の基本給 棋士の基本給は毎月日本将棋連盟から支払われる給与のことですが、ランキング、実力によって金額が異なります。本稿では、クラスごとの基本給を以下のように推定します。 〈資料2:棋士の基本給(推定額)〉 これ以外にも夏と冬の2回のボーナスがそれぞれ基本給の2ヶ月分支払われます。藤井七冠は名人なので100~200万円を毎月得ていることになります。本稿では、基本給を毎月約120万円、ボーナス2回分を約480万円とし、年間の収入を合計約1,920万円と推定します。 ② タイトル獲得料・防衛料、対局料など 八大タイトルの獲得料・防衛料、対局料などの推定額は以下のとおりです。これらの金額は公表されていないものが多い上に毎年のように金額が変更されるので、いくつかの資料から筆者が推定した金額です。 〈資料3:タイトル獲得料・防衛料、対局料など〉 したがって、藤井七冠が八冠を獲得した時の基本給、タイトル獲得料・防衛料、対局料などの合計は約1億5,990万円となります。 (2) コマーシャルのスポンサー収入 現在藤井七冠は2つの企業とコマーシャルのスポンサー契約を結んでいますが、このスポンサー収入は約1億円と言われています。そして八冠を獲得すると、スポンサー契約がかなり増えると考えられます。そこで八冠を獲得するとコマーシャルのスポンサー収入は約2億円になると推定します。 (3) 一般棋戦の賞金、将棋教室、イベント参加料、指導対局料などの収入 先述した八大タイトル以外に企業や団体などが主催する棋戦があります。例えば、有名な一般棋戦として朝日杯(優勝賞金750万円)、JT杯(優勝賞金500万円)、銀河戦(優勝賞金約500万円)、NHK杯(優勝賞金約500万円)などがあります。2022年度には藤井七冠はこれらの4つの一般棋戦すべてで優勝しています。また、棋士によっては、いろいろな将棋イベントなどに参加したり、将棋の指導対局をしたりして収入を得ることがあります。藤井七冠が八冠を獲得すると人気は非常に盛り上がり、各イベントや地域の会合などから引っ張りだこになると思われますので、これらの収入は約5,000万円になると推定します。 (4) 本、ゲームアプリ、グッズ販売などの売上額 藤井七冠が携わった本、将棋ゲーム、及び藤井七冠の名前の載ったグッズなどは非常に人気を集めると想定されます。プロ野球を例にとると、現在エンゼルス所属で元日本ハムの大谷翔平選手や、日本でのプロ野球の人気選手のグッズ販売は1シーズンで2~5億円でしたので、藤井七冠のケースは約3億円と仮定します。 (5) 将棋会館に行く藤井ファン、将棋ファンの消費額 現在、日本将棋連盟が所有する将棋会館としては、東京都の将棋会館、大阪市の関西将棋会館、名古屋市の名古屋将棋対局場、札幌市の北海道将棋会館があります。そして、藤井七冠が対局する時には対局場近くのレストラン、食堂で「勝負めし」や、休憩時に食べる「おやつ」が爆発的に売れています。藤井七冠が八冠全部を獲得した時にはより多くのファンが対局や将棋イベントの時に各将棋会館に詰めかけるでしょう。 関西将棋会館から得た資料によると、新型コロナ前のファンの訪問数は年平均4万5,000人でした。これには、日本将棋連盟の主催する公式の対局戦をはじめ企業や団体が主催する対局戦、将棋会館が主催する将棋道場、将棋セミナー、子供将棋スクールなどに参加、観戦する人々がすべて含まれています。そして、藤井七冠が全八冠を獲得すると関西将棋会館のファンの訪問数は年平均で2割程度増加し、2023年度には約5万4,000人のファンが会館を訪れると期待しています。これはコロナ前の過去平均4万5,000人より約9,000人の増加となります。この関西将棋会館の数値を参考にして他の将棋会館、将棋対局場の年間のファンの訪問者増加人数を推定します。計算には会館の近隣都道府県の人口を用いることにします。次の表のとおり計算の結果、各将棋会館、将棋対局場の年間の訪問者増加人数は合計約3万6,000人となりました。 〈資料4:各将棋会館、将棋対局場の年間の訪問者増加人数〉 出所:総務省統計局「人口推計(2022 年(令和4年)10 月1日現在)」(計算方法は〈参考資料〉参照)。 次に、この増加した各将棋会館、将棋対局場の年間の訪問者が消費する金額を推計します。これらの金額には会館の前述のすべてのイベントの規定の料金、飲食費、おやつ代、お土産代、交通費などが含まれます。国土交通省観光庁の2023年4月28日発表の「旅行・観光消費動向調査 2022年年間値(確報)」によると、日帰り旅行の1人当たり消費額は1万8,540円であったので、将棋会館に行く増加した藤井七冠ファン、将棋ファンの年間の消費額は約6億6,744万円となりました。 藤井七冠が八冠を獲得した時の経済効果については、次回第2部で引き続き解説します。 〈参考資料〉 (了)

#No. 529(掲載号)
#宮本 勝浩
2023/07/27

《速報解説》 公認会計士・監査審査会、令和5事務年度版の「監査事務所検査結果事例集」を公表~「財務諸表監査における不正」等に係る指摘事例や留意点などの記載を拡充~

《速報解説》 公認会計士・監査審査会、令和5事務年度版の 「監査事務所検査結果事例集」を公表 ~「財務諸表監査における不正」等に係る指摘事例や留意点などの記載を拡充~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年7月14日、公認会計士・監査審査会は「監査事務所検査結果事例集(令和5事務年度版)」を公表した。 今回の事例集の特徴は次のとおりである。 「令和5年版 モニタリングレポート」及び「令和5事務年度 監査事務所等モニタリング基本計画」の公表、「監査事務所等モニタリング基本方針」の改正も公表されており、監査法人の状況などについて、会計専門家ではない一般の利用者にもわかりやすく説明がなされている。 事例集は、公認会計士・監査審査会が行う監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたものであり、基本的に、監査事務所に関する内容である。 本稿では、事例集に記載された事項のうち、一般事業会社における会計処理等においても参考になると考えられるものを紹介する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取締役、監査役等、投資者等による活用を期待 事例集では、上場会社等の取締役・監査役等や投資者等に対する監査に関する参考情報の提示という観点から、最近の不正会計事案や会計監査人と監査役等との連携に関するものも含め、公認会計士・監査審査会で確認された指摘事例をできるだけ分かりやすく記載し、また、監査事務所の改善取組などにおいて評価できる取組例も取り入れているので、会計監査人の適切な評価のために、是非参考にしていただきたいとのことである。   Ⅲ 個別業務における「問題となった事例」 事例集は、次のような事例について述べている。 (了)

#阿部 光成
2023/07/26

《速報解説》 マンションの評価方法を定めた個別通達(居住用の区分所有財産の評価について(案))がパブコメに付される~意見募集は8月21日まで~

《速報解説》 マンションの評価方法を定めた個別通達(居住用の区分所有財産の評価について(案))がパブコメに付される ~意見募集は8月21日まで~   Profession Journal編集部   いわゆるマンションの財産評価をめぐっては、既報のとおり先月開催の有識者会議において見直しの方向性が示されていたが、国税庁は7月21日付けで評価通達のパブリックコメントを開始した(意見募集の締切は8月21日(月))。 なお見直しにあたっては、土地等の評価方法を規定している財産評価基本通達の改正ではなく、「居住用の区分所有財産の評価について」という名称の個別通達が新設される。 評価方法は有識者会議資料で示された方針と同様、一室の区分所有権等に係る敷地利用権及び区分所有権の価額は、自用地としての価額に一定の補正率を乗じて計算するというもの。新設される通達の構成は、「1 用語の意義」で各用語を定義した後、「2」では一室の区分所有権等に係る敷地利用権の評価方法、「3」では一室の区分所有権等に係る区分所有権の評価方法が、それぞれ下記の通り示されている。 上記「評価乖離率」については「1 用語の意義」の(11)において、「築年数」「総階数指数」「専有部分の所在階」「敷地持分狭小度」をもとにした算式が示されている。 なお、新設通達は「令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用する」とされており、この通達による居住用の区分所有財産の評価については、納税者が簡易に計算するためのツールが用意される予定とのことだ。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2023/07/21
#