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給与計算の質問箱 【第38回】「社会保険の料率の変更」~令和5年度対応~

給与計算の質問箱 【第38回】 「社会保険の料率の変更」 ~令和5年度対応~   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 令和5年度において各種社会保険の料率の変更はあるでしょうか。 A 労災保険、厚生年金保険、子ども・子育て拠出金の料率の変更はない。雇用保険、健康保険、介護保険(第2号被保険者)の料率は変更がある。 * * 解 説 * * 1 料率の変更がないもの (1) 労災保険 労災保険料は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから給料計算には関係しない。 〔労災保険率表〕 (※) 厚生労働省ホームページより (2) 厚生年金保険 厚生年金保険の料率は、18.3%を折半して会社負担が9.15%、役員・従業員負担が9.15%である。役員・従業員は、標準報酬月額×9.15%=厚生年金保険料を給料から天引きされる。 例えば標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×9.15%=27,450円の厚生年金保険料を給料から天引きされる。 〔令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)〕 (※) 協会けんぽホームページより (3) 子ども・子育て拠出金 子ども・子育て拠出金は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから給料計算には関係しない。 子ども・子育て拠出金の料率は、0.36%である。子ども・子育て拠出金の額は、被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額×0.36%の総額である。 例えば厚生年金の標準報酬月額300,000円の役員1名だけが社会保険に加入している会社の場合、300,000円×0.36%=1,080円の子ども・子育て拠出金を年金事務所へ支払う。   2 料率の変更があるもの (1) 雇用保険 令和5年4月1日~令和6年3月31日までの一般の事業の雇用保険料率は、会社負担が0.95%(令和4年10月1日~令和5年3月31日は0.85%)、従業員負担が0.6%(令和4年10月1日~令和5年3月31日は0.5%)である。従業員は、給料の総支給額×0.6%=雇用保険料を給料から天引きされる。 例えば給料の総支給額300,000円の場合、300,000円×0.6%=1,800円の雇用保険料を給料から天引きされる。 〔令和5年度の雇用保険料率〕 (※) 厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」より (2) 健康保険 協会けんぽに加入の東京都の会社の令和5年2月分(3月納付分)までの健康保険の料率は、9.81%を折半して会社負担が4.905%、役員・従業員負担が4.905%だった。令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険の料率は、0.19%引上げの10.00%を折半して会社負担が5%、役員・従業員負担が5%になった。役員・従業員は、標準報酬月額×5%=健康保険料を給料から天引きされる。 例えば標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×5%=15,000円の健康保険料を給料から天引きされる。 (3) 介護保険(第2号被保険者) 第2号被保険者とは、40歳以上65歳未満の役員・従業員をいう。40歳未満及び65歳以上の役員・従業員の給料からは介護保険料を天引きしない。 協会けんぽに加入の東京都の会社の令和5年2月分(3月納付分)までの介護保険の料率は、1.64%を折半して会社負担が0.82%、役員・従業員負担が0.82%だった。令和5年3月分(4月納付分)からの介護保険の料率は、0.18%引上げの1.82%を折半して会社負担が0.91%、役員・従業員負担が0.91%になった。役員・従業員は、標準報酬月額×0.91%=介護保険料を給料から天引きされる。 例えば標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×0.91%=2,730円の介護保険料を給料から天引きされる。 (了)

#No. 507(掲載号)
#上前 剛
2023/02/16

〈税理士が知っておきたい〉相続土地国庫帰属法施行規則のポイント

〈税理士が知っておきたい〉 相続土地国庫帰属法施行規則のポイント   司法書士 丸山 洋一郎   ◆はじめに◆ 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下、「相続土地国庫帰属法」という)及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令の施行に必要な事項を定めるために、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則(以下、「規則」という)が、令和5年1月13日(金)に公布された。 そこで本稿では、本Web情報誌の中心的読者であり、かつ、相続実務に関わることが多いと思われる税理士、公認会計士、企業の実務担当者(以下、「税理士等」という)を主な対象に、規則が各自の実務にどのような影響を与えるのか、規則のポイントをできるだけ簡潔に、かつ、分かりやすく解説することを目的とする。 なお、本稿と合わせて下記拙稿を一読いただくとより理解が深まるため、ご参照いただきたい。   1 承認申請書の作成者 まず、今回の規則の公布に伴い知っておいてほしいポイントは、相続土地国庫帰属制度(以下、「国庫帰属制度」という)における承認申請書の作成者に関する事項である。 国庫帰属制度における承認申請手続は、原則として、申請者が任意に選んだ第三者に申請手続の全てを依頼する手続の代理は認められない。そのため、申請手続は申請者本人が行う必要がある。もっとも、申請手続に関する一切のことを申請者本人が行う必要はない。 そこで、申請者が申請書や添付書類(以下、「申請書等」という)を作成することが難しい場合には、申請書等の作成を代行してもらうことができる。その場合、業務として申請書等の作成の代行をすることができるのは、専門の資格者である弁護士、司法書士及び行政書士に限られる。 注目すべきは、申請書等の作成に関する専門家として行政書士が挙げられている点である。行政書士登録をしている税理士や公認会計士は、行政書士業務を通じて申請書等の作成の代行をすることができる。実際に自身が申請書等を作成するかどうかはさておき、行政書士登録をしていれば自身で作成できることは覚えておいた方がよいだろう(パブコメ回答No.3)。 また、任意に選んだ第三者ではなく、法定代理人ならば承認申請者等として申請手続を行うことができる(規則2条1項本文)。 この法定代理人には、成年後見人も当たると考えられている(パブコメ回答No.10)。成年後見人を業務とする税理士もいると思われるので、この点も押さえておくべきだろう。 このように、税理士等が行政書士登録をしていること又は成年後見人の資格を通じて、承認申請書の作成に関与することは十分に考えられる。そこで、承認申請書の提出先と承認申請書に添付すべき書面について必要な知識を以下で説明していく。   2 承認申請書の提出先と添付書類 (1) 承認申請書の提出先 承認申請書は、承認申請に係る土地の所在地を管轄する法務局に提出をする(規則1条)。 (2) 承認申請書の添付書類 承認申請書に添付すべき書面は、相続土地国庫帰属法3条1項により法務省令により定められるとされた。この定めを受けて規則2条3項及び3条各号により承認申請書に添付すべき書面が明らかになった。以下各号を具体的に検討していく。 *  *  * 以上のように、規則により添付書面が明らかになったが、まだ不明点も多い。 そこで、今後は通達や法務省ホームページ等で書面のひな形等、その具体的な内容がさらに明確になっていくはずである。そのため、今後の動向にはさらに注目していきたい。 最後に、本稿の記載以上に規則の詳細を知りたい場合は、下記の相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則案の概要及びパブリックコメントの結果をご参照いただきたい。 (了)   『新版 一問一答 税理士が知っておきたい登記手続き』 好評販売中 ↓お勧め連載記事↓

#No. 507(掲載号)
#丸山 洋一郎
2023/02/16

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第38回】「鑑定評価書(原価法)に登場する「付帯費用」の意味」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第38回】 「鑑定評価書(原価法)に登場する「付帯費用」の意味」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回、取引事例比較法に登場する「標準化補正」という鑑定評価に特有の概念について説明しました。鑑定評価書にはこれ以外にも専門的で、かつ、他士業の方々を悩ませる独特の用語も登場します。例えば、建物及びその敷地の価格を原価法(=土地価格、建物価格をそれぞれ求めて合算する手法です)によって求める際、その過程に織り込まれる「付帯費用」もその1つです。 「付帯費用」という言葉から受け取るイメージからして、土地建物を取得することによって生ずる不動産取得税のようなものを思い浮かべる方もおられることと思います。もちろん、「付帯費用」のなかにはこのような要素も含まれますが、原価法に織り込む「付帯費用」という概念はもう少し広い範囲のものとなります。しかし、ともすればこれが抽象的な概念であるため、鑑定評価の依頼者(他士業の方々を含めて)からは「分かりにくい」とか「計算根拠が不明確では?」といった声を聞くこともあります。 今回は原価法に登場する「付帯費用」の意味について解説し、これを織り込む必要性について考えてみます。   2 鑑定評価における「付帯費用」の概念の明確化 従来(すなわち、平成26年5月1日付で不動産鑑定評価基準(以下、基準といいます)の一部改正が行われるまで)の基準の規定にも、原価法による積算価格を求めるに当たり、発注者が通常負担すべき付帯費用を再調達原価に織り込む旨の規定そのものは存在していました。しかし、付帯費用として何を織り込むべきかについて、これ以上の記載はなく、実務においても再調達原価の中に付帯費用が含まれているという理解の基に「建物及びその敷地の価格」(=積算価格)を求めていた傾向にありました。 平成26年の基準改正においてはこの点が明確化され、再調達原価を求める際の付帯費用に関連する規定として、次の内容が織り込まれています(以下、下線は筆者)。 また、不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(以下、運用上の留意事項といいます)においても、次の規定が置かれています。 さらに、「不動産鑑定評価基準に関する実務指針-平成26年不動産鑑定評価基準改正部分について-」(令和3年11月一部改正)(公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会 鑑定評価基準委員会)では、付帯費用の取扱いにつき以下のとおり具体的な指針を示しています(一部を抜粋)。 ただし、ケースによっては、次のとおり付帯費用相当額の査定を省略できる場合もあることから、実務上、画一的な考え方をそのまま当てはめることが実情に即しないこともあります。 (※) 筆者注。ここに「減価修正」という言葉が登場してくるのは、付帯費用についても時の経過とともに再調達原価から価値の減少分を査定の上、評価に反映させる必要があることによります(後掲の評価例を参照ください)。   3 「付帯費用」を織り込んだ「建物及びその敷地」の評価例 以上の考え方に基づき、「付帯費用」を織り込んだ「建物及びその敷地」の評価例(ただし、計算結果の一部)を掲げておきます。 (1) 再調達原価 ① 土地 78,600,000円(更地価格) ② 建物 44,000,000円 ③ 付帯費用 建物が竣工し、建築業者から建物の引渡しを受け使用収益が可能な状態に至るまでの期間に対するコストとして、設計監理料、資金調達費用、発注者の開発リスク、土地の公租公課等の金額を一括して土地建物の再調達原価の15%と査定し(デベロッパーからの聴取等を参考)、これを付帯費用として織り込んだ。 (2) 減価修正 ① 土地 減価修正の必要は生じないものと判断した。 ② 建物 (ⅰ) 耐用年数に基づく方法 減価修正に当たっては、建物再調達原価を、躯体部分(40%)、仕上部分(30%)、設備部分(30%)に按分した上で、経済的耐用年数を躯体部分40年、仕上部分20年、設備部分15年と査定し、各部分ごとに経過年数に相応する減価率を査定の上、減価額を試算した。 その結果、減価額は以下のとおり36,080,000円となる。 減価額査定表 (※) 各構成部分の減価率を構成割合で加重平均した結果による。 (ⅱ) 観察減価法 観察減価法も併用したが、上記(ⅰ)以外に特段の減価要因は認められなかった。 (ⅲ) 建物減価額 上記(ⅰ)、(ⅱ)より、建物減価額を36,080,000円と査定した。 ③ 付帯費用 付帯費用の減価額は、付帯費用の再調達原価に建物の各構成部分の構成割合の加重平均による減価率(上記減価額査定表参照)を乗じて、以下のとおり15,088,000円と査定した。 ④ 土地建物一体減価の有無の検討 建物は敷地と適応し、環境とも適合しているため、一体減価は生じていないものと判断した。 ⑤ 減価修正額 上記(2)②及び③の結果を合計した金額を端数整理の上、減価修正額を51,200,000円と査定した。 (3) 積算価格 土地建物の再調達原価から減価修正額を控除して、建物及びその敷地の積算価格を以下のとおり89,800,000円と試算した。 なお、本件試算価格には消費税額を含まない。   4 まとめ 土地そのものは余程の地震等でもない限り、時の経過や使用に応じて減耗することはありませんが、土地にかかる付帯費用については減価修正の対象となります。この点が間違いやすいところです。なお、建物については本体だけでなく、その付帯費用についても減価修正の対象となります。 土地建物(付帯費用含む)を一体とした再調達原価から減価修正額(付帯費用を含む)を控除した結果が積算価格の基となります。 (了)

#No. 507(掲載号)
#黒沢 泰
2023/02/16

〈エピソードでわかる〉M&A最前線 【第10回】「経営難に陥った企業におけるM&A(後編)」-コロナ禍も重なり経営者は自力再生からスポンサー探索を決断-

〈エピソードでわかる〉 M&A最前線 【第10回】 (最終回) 「経営難に陥った企業におけるM&A(後編)」 -コロナ禍も重なり経営者は自力再生からスポンサー探索を決断-   株式会社日本M&Aセンター コーポレートアドバイザー統括部 ゼネラルマネージャー 経営支援室 副室長 公認会計士 長坂 晃義   前回の前編では、ある企業の株式譲渡を前提とした譲受企業となるお相手探しのスタートから、資金繰りの悪化に伴う方針転換として、抜本再生のためのスポンサー探しへと変更した経緯を紹介しました。 今回の後編では、スポンサー型私的整理の実務上の論点を、流れに沿って振り返ってみたいと思います。 【対象企業データ】 【譲受企業データ】 ※情報管理の観点から、実際の事例とは一部内容を変更しております。   1 スポンサーからの条件提示 新たに仕切り直しスポンサー探索を開始したところ、意向表明の提出が可能な会社が新たに出てきました。対象会社とは広い意味では同業ですが、より上流の事業を営む関西地方に本社のある会社です。トップ面談、工場見学と進み、いざ意向表明を提出いただけるところまできましたが、まだこれからが本番です。資金繰りも厳しくなってきている以上待ったなしの状態でした。 その後の大まかな流れは次のとおりとなります。 まず、意向表明に記載の条件をもとに代理人弁護士とその補助者である筆者含む会計士チームで再生計画案を作成し、その計画案について中小企業再生支援協議会(現中小企業活性化協議会)で検証が行われます。検証後、再生計画案が固まった段階でバンクミーティングを開き金融機関に内容を丁寧に説明し、担当者に理解を深めてもらい、そして、計画案への同意に向け本店内稟議を回してもらうことになります。その間に各金融機関からの質問対応も並行して行いますが、質問内容は実に多岐にわたります。 その後金融機関からの同意が取得できた段階で、対象会社の社長と譲受企業との間で最終契約を締結する流れとなります。なお、当初の意向表明の受領から最終契約の締結まで通常2~3ヶ月程度を要し、後述しますが、会社分割といった組織再編を行うため最終契約の締結から決済までは1.5~2ヶ月程度を要します。   2 第二会社方式の実行 通常の私的整理の場合、第二会社方式、すなわちgood部門を新会社に切り離すとともに、金融債務は旧会社に残す、下図のような会社分割を行うことになります。 《分社型新設分割+株式譲渡スキーム》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (注) 上記スキーム図は新設分割となっていますが、本件の場合は後述するよう吸収分割を行っています。 会社分割を行う場合、債権者保護手続きの一環で官報公告(公告期間として1ヶ月)が必要となります。公告に掲載されると外部に会社分割の事実が知られるため、最終契約締結後から会社分割手続きを進めることになります。それと同時に従業員への説明や許認可の引継ぎの可否など対応すべきことが目白押しとなります。 本件の場合の許認可は建設業許可でした。検討の結果、会社分割で新会社が建設業許可を承継するより、新規取得の方が審査期間を短くできることが判明し、資金繰りの観点からも建設業許可を新会社にて新規申請することにしました。その後新会社にて許認可が取得できた段階で会社分割を実行することにし、無事予定期間内に承継することができました。 一方、残った対象会社にはスポンサーからの譲渡対価が入り、それが金融機関への弁済原資となり、その後租税債権等を弁済したうえで特別清算することになります。   3 私的整理の場合の経営者責任は? 対象会社は特別清算を行うことで手続きが終了となりますが、個人保証を差し入れている経営者はどうなるのでしょうか。 経営者保証は、経営への規律付けや資金調達の円滑化に寄与しますが、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因となっているという指摘もあります。この課題の解決策として、全国銀行協会と日本商工会議所を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」による「経営者保証に関するガイドライン」があります。このガイドラインに基づき処理が行われる場合は以下のような取扱いとなり、自己破産することなく経営者が生活を再スタートすることも可能です。 保証履行後も保証人の手元に残る資産等は破産時の自由財産(99万円以下)に加えて「一定期間の生活費(雇用保険の考え方を参考に、年齢等に応じて約100万円~360万円)」を経営者に残すことを検討します。また、華美でない個人所有自宅について、条件が整えば経営者が自宅に住み続けられるよう検討も行われることになります。 また、本件の場合、別論点として、経営に全く関与してない社長夫人が形式的に一部の金融機関の連帯保証人となっていたため当該保証債務の解除や、一時的に資金繰りをつなげるために社員や社外に勤務している長男から借入した金額の弁済の取扱い等留意すべき点がありました。最終的には親族からの借入金は債権放棄していただくとともに、求償権も行使しないことを条件に金融機関より同意を取り付けることができました。   4 最後に 「ここ数年の中で一番穏やかにお正月を迎えられました。ありがとうございました。」と、本件が無事終了した直後のお正月明け、対象会社の元社長から営業担当者宛てに一本の電話がありました。 金融機関からの同意を取得し、会社分割によって従業員含めた事業が新会社へ移行したことで、無事スポンサーのもとに新会社が譲渡されたのです。 本件の場合、コロナ禍の影響もあり、業績が悪化するなかで幸か不幸か社長の決断を後押しすることになりました。しかしながら、コロナ融資によって一息ついたものの、過大債務を負ったまま本業回復を成し遂げられず、債務の返済への道筋がつけられない企業が多数存在するのも事実です。この状況下で事業を残し、雇用を維持するために私的整理の手法を使うことの有効性を、今一度考えていただければ幸いです。   ◆今回のまとめ◆ ① 連帯保証人の経営者に生活の再スタートを示す大切さ ② 金融機関に対する再生計画案の丁寧な説明の必要性 ③ 資金繰りに合わせ債権者・債務者それぞれが動くこと ④ 経営者が金融機関以外からお金を借りる功罪   (連載了)

#No. 507(掲載号)
#株式会社日本M&Aセンター
2023/02/16

《速報解説》 ASBJ、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表~税効果会計適用にあたりグローバル・ミニマム課税制度の影響の反映と開示求めず~

《速報解説》 ASBJ、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表 ~税効果会計適用にあたりグローバル・ミニマム課税制度の影響の反映と開示求めず~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年2月8日、企業会計基準委員会は、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第64号)を公表し、意見募集を行っている。 これは、令和5年度税制改正において、グローバル・ミニマム課税に対応する法人税が創設される予定であるが、グローバル・ミニマム課税制度を前提として税効果会計を適用することについては、実務上困難であるとの意見があることから、必要と考えられる特例的な取扱いを示すものである。 仮にグローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法が2023年3月31日までに成立した場合には、成立後、2023年3月31日までに実務対応報告を公表することを想定している。 意見募集期間は2023年3月3日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 範囲 「税効果会計に係る会計基準」が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表に適用する(2項)。 実務対応報告を適用する範囲については税効果会計基準が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表に適用することとし、グローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれるか否かについての判断を企業に求めない(7項)。 2 会計処理 企業会計基準委員会が実務対応報告の適用を終了するまでの間、改正法人税法の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期(連結)決算を含む)における税効果会計の適用にあたっては、「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする(3項)。 グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計については、「税効果会計に係る会計基準の適用指針」の定めにかかわらず、特例的な取扱いを一律に適用する(13項)。 「税効果会計に係る会計基準の適用指針」44項では、「繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法(以下、法人税等の納付税額の計算方法が規定されている我が国の法律を総称して『税法』という。)に規定されている方法に基づき第8項に定める将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算する。なお、決算日において国会で成立している税法とは、決算日以前に成立した税法を改正するための法律を反映した後の税法をいう。」としている。 3 国際会計基準審議会(IASB)の公開草案との比較 国際会計基準審議会(IASB)の公開草案「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の修正案)」(2023年1月公表)では、経済協力開発機構(OECD)が公表した第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債の会計処理に関して、国際会計基準(IAS)第12号「法人所得税」の要求事項からの一時的な例外を設け、一定の事項の開示を提案している。 しかしながら、実務対応報告は主として2023年3月期決算に向けた短期的な対応をその目的としていることから、開示については求めない(6項、15項)。   Ⅲ 適用時期等 実務対応報告は、公表日以後適用する予定である。 (了)

#阿部 光成
2023/02/10

プロフェッションジャーナル No.506が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年2月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.506を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/02/09

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第116回】「節税商品取引を巡る法律問題(その10)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第116回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その10)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   4 金融リテラシー教育との協調 前回は、近時の成人向け教育がリスキリングの波に飲み込まれてしまっているのではないかという懸念について述べた。リスキリングが攻めの教育・学習であるとすれば、租税リテラシー教育は守りの教育・学習であると思われるところ、本節では金融リテラシー教育との関係性に焦点を当ててみたい。 (1) 金融リテラシー OECD(経済協力開発機構:Organization for Economic Co-operation and Development)は、金融教育一般を次のように定義する。 また、金融庁金融研究センターに設置された金融経済教育研究所による「金融経済教育研究会報告書」では、金融教育の意義・目的を以下のように捉える。 このように、金融教育は、国民が経済活動を行う際に誤った意思決定を行わないようにするという視角から、その必要性が議論されてきている。 そのような点から、令和元年12月に金融庁が発表した「金融経済教育について」は、「国際的にみても、日本の金融リテラシーの水準は決して高いとは言えない状況」としており(※1)、「国民一人一人が安定的な資産形成を実現し、自立した生活を営む上では、金融リテラシーを高めることが重要である一方で、そのための機会が必ずしも十分とは言えない」ことから(※2)、金融経済教育の推進・拡充が必要と訴えていたところである。 (※1) 金融庁「金融経済教育について(2019年12月13日)」3頁〔令和5年1月31日訪問〕。 (※2) 金融庁・前掲(※1)、2頁。 かような議論を受けて、我が国では、令和4年4月から、金融教育が高等学校の家庭科において教科化されることとなった。このような金融リテラシー教育の充実が消費者教育的視座に立ったものであるところ、成人向け租税リテラシー教育においてもかような視座からの議論が成り立ち得るのではなかろうか。 (2) 金融リテラシー教育の充実 令和4年開始となる新学習指導要領の策定に向けた動きは、平成28年12月に示された中央教育審議会の答申から始まったといわれている。そこでは、「これからの社会で求められる力」として、次のように論じられている(※3)。 (※3) 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」参照。 ここでは、「生きる力」というメルクマールが注目されるところであった。また、高等学校の家庭科については、次のように答申されているのである(下線筆者)。 すなわち、「生きる力」としての「生涯の生活を設計するための意思決定」こそが金融教育を意味するということであろう。そして、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編(文部科学省)」(※4)では、家庭科の目標として次のように説明されている。 (※4) 「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編(文部科学省)」は、「平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申を踏まえ、 1.教育基本法、学校教育法などを踏まえ、これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を生かし、生徒が未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成することを目指す。その際、求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する『社会に開かれた教育課程』を重視すること。 2.知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成とのバランスを重視する平成21年改訂の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質を更に高め、確かな学力を育成すること。 3.道徳教育の充実や体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心や健やかな体を育成すること。 を基本的なねらいとして行った。〔下線筆者〕」とする。 また、「家計管理」については次のように示されたのである。 (3) 生きる力としての租税リテラシー教育 このように、金融教育は、「生きる力」の醸成という観点から導出されたものであることが判然とするところ、租税教育については、どのように導出されてきたのであろうか。結論から言えば、両者の議論は大きく異なる背景を有しているように見受けられる。 すなわち、これまでの租税教育は、民主主義教育ないし主権者教育の文脈として、税を通じて社会を知る教育という考え方が背景にあった。この視座自体は明確なものであり、「租税」の本質論にも接続する適切なものであるといえよう。 他方で、民主主義教育ないし主権者教育という観点とは別に、「生きる力」という文脈で租税教育を考える可能性についての示唆を、金融教育から得ることができるのではなかろうか。これまで必ずしも明確に議論されてこなかった視角として、消費者教育なり投資者教育という側面を租税リテラシー教育が含有しているという点に関心を寄せるべきであると思われる。 本稿のⅠないしⅢ(その1〜4)で概観したとおり、我が国においても節税商品過誤訴訟(タックスシェルター・マルプラクティス)が頻発している中にあって(※5)、一般の消費者ないし投資者が租税に関する一定のリテラシーを身に付けることが詐欺的な勧誘に対する予防となるという観察がそこには所在する。「節税」を謳い文句として多くの被害者を出した変額保険訴訟を例に上げたが、ここに、消費者ないし投資者のリスクヘッジとしての租税リテラシー教育を正面から議論するインプリケーションとして、金融リテラシー教育との協調を検討すべきではなかろうか。 (※5) 節税商品過誤訴訟については、酒井克彦「節税商品取引における税理士の役割―我が国における節税商品過誤訴訟と適正公平な課税の実現―」税大論叢47号536頁(2005)も参照。 (続く)

#No. 506(掲載号)
#酒井 克彦
2023/02/09

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第11回】「国税通則法17条(~22条)」-申告納税制度の体系的把握と実定的把握-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第11回】 「国税通則法17条(~22条)」 -申告納税制度の体系的把握と実定的把握-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法17条(期限内申告)   1 はじめに 前回は納税義務の確定の意義と方式について概説し、その方式については同4でとりわけ自動確定方式の性格を中心に検討したが、今回は、「国税の一般的確定方式」(廣瀬正『国税通則法要義』(新日本法規・1985年)33頁)とされる申告納税方式を取り上げ、納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)294頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)1204頁)とされる期限内申告を中心に、納税申告について「総論的に」検討することにする(なお、税通22条については第9回2参照)。 期限内申告を定める国税通則法17条については、期限後申告を定める同法18条及び修正申告を定める同法19条との対比において、次のような解説がされている(志場ほか共編・前掲書294-295頁。下線筆者。ほかに、大蔵省主税局税制第二課編『国税通則法とその解説』(大蔵財務協会・1962年)18頁、廣瀬・前掲書35頁、武田監修・前掲書1203頁も同旨)。 この解説は、国税通則法17条が同法18条及び19条とは「趣きを異にし、実質的内容をもった規定ではな[い]」と述べる点でミスリーディングのおそれがあるものの、「申告納税制度の体系的な把握を容易にする観点」を含んでいることを指摘する点では、重要な意味をもつと考えられる。 確かに、国税通則法17条が「期限内申告に関する事項(提出義務者及び提出すべき場合、提出期限、当該申告書の記載事項及び添付書類等)」を定める規定でないことは前記解説の説くとおりである。しかし、そのような事項を定める規定を「実質的な内容をもった規定」というのであれば、同法18条及び19条も同じく「実質的な内容をもった規定」ではないというべきである。 この点に関連して、国税通則法18条及び19条について、「期限内申告についての参照規定たる性格を有する法第17条とは、その性格[質]を異にするもの」(志場ほか共編・前掲書312頁[321頁]、武田監修・前掲書1251頁。同1283頁も同旨)と説かれることがあるが、それらの規定も、期限内申告を念頭に置きながらこれと異なる限りにおいて期限後申告及び修正申告についてそれぞれ独自の内容を定めるという意味では、「期限内申告についての参照規定たる性格」を有するということもできよう。 いずれにせよ、期限内申告と期限後申告及び修正申告との性格の差異ないし異質性を殊更に強調するのは、「申告納税制度の体系的な把握」を誤った方向に導くおそれがある。むしろ、「申告納税制度の体系的な把握を容易にする観点」からは、期限内申告を納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」として位置づける点を重視すべきであろう。この点については、次の2で引き続き検討することにする。   2 申告納税制度の体系的把握 では、なぜ期限内申告を納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」として位置づけるべきなのであろうか。それは、既にみたように、申告納税制度の体系的把握のためである。以下では、この点について敷衍しておくことにする。 申告納税制度の体系的把握は、繰返しになるが、期限内申告を納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」として位置づけることによって可能になり容易になるが、それは、「申告納税方式においては、まず、納税者が行う確定手続として納税申告がある。その基本は期限内申告であり、例外的に期限後申告及び修正申告がある。」(萩野豊『実務国税通則法』(大蔵財務協会・1994年)115頁)と理解することを意味している。 そのような理解(申告納税制度の体系的把握)は、次の解説(磯邊律男『研修国税通則法』(新都心文化センター・1984年)90頁。下線筆者)の説くように、申告納税制度の本旨・趣旨に基づくものである。 この解説は、期限内申告が申告納税制度の「基本」であり、期限後申告及び修正申告はその特例(「特に提出を認められている納税申告書」)であるという理解を示すものであるが、その理解は「申告納税制度の本旨」に基づくものである。ここでいう「申告納税制度の本旨」は、税制調査会『国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)』(昭和36年7月)48頁で「申告納税方式の基本的性格」に関して次のとおり述べられている考え方を意味するものと解される(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【121】参照)。 ここで述べられている考え方は「民主的な租税思想」ないし「民主的納税思想」(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)56頁、941頁)ということができようが、これを基礎に置いて「申告納税方式の基本的性格」ないし「申告納税方式の特色」(志場ほか共編・前掲書277頁)を捉えると、申告納税方式(税通16条1項1号)は、「申告納税制度の精神-納税義務の存否若しくは範囲について納税義務者に認められている第一次的判断権の尊重-」(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)244頁)を体現ないし具体化するものであると解される。 およそ民主主義国家においては民主主義の担い手として、自己の権利のみならず義務についても自律的かつ自主的な判断に基づき行使・負担する「国民」が想定される以上、租税の場面での「国民」すなわち納税者は、「民主的な租税思想」ないし「民主的納税思想」に基づく申告納税制度においては、「納税義務の存否若しくは範囲について納税義務者に認められている第一次的判断権」すなわち第一次的確定権を有し、かつ、これを各税法の規定に従って正しく行使する義務(第一次的確定義務)を負っていると考えるべきである。 ここで「第一次的確定義務」とは、①納税義務の存否又は範囲を各税法の規定に従って正しく確定する義務と②各税法が国税の納税申告について一般的に定める期限(法定申告期限。税通2条7号)までに正しく納税申告書(同条6号)を提出する義務という2つの義務が結合した義務、すなわち、各税法の規定に従って納税義務の存否又は範囲を法定申告期限内に正しく確定する義務をいうが、納税者がこの義務を履行することができるのは期限内申告によってのみである。期限後申告及び修正申告についても、上記①の義務は解除されていないが、当然のことながら、上記②の義務は観念されない。この意味で、期限内申告は義務的申告であるのに対して、期限後申告及び修正申告は(上記②の義務が観念されないという意味では)任意的申告であるということができよう(以上について前掲拙著【123】のほか、志場ほか共編・前掲書285-286頁、磯邊・前掲書90頁も参照)。 このように、第一次確定権及び第一次確定義務が全面的に実現されるのは、期限内申告によってだけであることから、期限内申告は納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」として位置づけられる。申告納税制度において期限内申告をこのように位置づけることによって申告納税制度の体系的把握が可能になり容易になるのである。 以上で述べてきた申告納税制度の体系的把握は、納税義務の確定の場面において第一次的確定権及び第一次的確定義務の内容・位置づけを明確にする点で、「基本的租税法律関係の明確化」という「租税基本法的要請」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])E16頁[須貝脩一・清永敬次執筆]。前回2参照)に応えるものであり、その意味で国税通則法の体系的構造(第1回3参照)に整合的に接合すると考えられる。   3 申告納税制度の実定的把握 ところで、申告納税制度の趣旨については、前記のような民主主義的な観点からの解説(税制調査会・前掲答申別冊からの引用にいう「民主主義国家における課税方式としてふさわしいもの」)と並んで、次のとおり(金子・前掲書941頁。下線筆者)、租税徴収の観点からも解説されることがある(前掲拙著【121】も参照)。 しかも、後者の観点の方を重視する次のような解説(中川=清永編・前掲書E152頁[新井隆一・波多野弘執筆]。下線筆者)もみられるところである。 この解説にみられる「課税権者のための租税の賦課徴収手続の便宜と経済という問題」は、第二次世界大戦後における申告納税制度の導入に関する次の発言(平田敬一郎ほか共編『昭和税制の回顧と展望 上巻』(大蔵財務協会・1979年)278-279頁[「昭和22年の大改正」に関する前尾繁三郎発言])にみられる、(前年実績賦課課税から変更した)「予算課税」のための税収の早期確保(「ことしの税金をことしとる」)の問題を意味しているものと解される。 このような租税徴収の観点からみても、期限内申告を納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」として位置づけることはできる。法定申告期限の遵守は税収の早期確保にとっても必要条件であるからである。 ただし、そのような位置づけは、納税義務の確定の場面において第一次的確定権及び第一次的確定義務の内容・位置づけを必ずしも明確にすることにはならないので、前記2の最後で述べたような国税通則法の体系的構造に整合的に接続する、申告納税制度の体系的把握を可能にし容易にするものとはいえないであろう。むしろ、国税通則法の実定的構造(第1回3、前回4参照)と同じく、「基本的租税法律関係の明確化」という「租税基本法的要請」(前記2参照)に応えるものではなく、租税徴収の観点から行われる位置づけであることから、「申告納税制度の実定的把握」と呼ぶのが適当であろう。   4 修正申告の効力 申告納税制度の実定的把握は、修正申告の効力を定める国税通則法20条において、その意味を具体的に認識することができる。同条は次のとおり規定している。 この規定は、修正申告(税通19条1項)のうち「既に確定した納付すべき税額を増加させるもの」(同項1号)の効力が増差税額についてのみ追加的に生ずることを定めているが、これは、納税申告・更正等の行為相互間の関係の捉え方について国税通則法制定前から存在した次の【㋐】の2つの考え方(税制調査会・前掲答申別冊62頁)の「折衷説」(中川=清永編・前掲書E296~298頁[新井・波多野執筆])ともいうべき、次の【㋑】の「基本的な考え方」(税制調査会・前掲答申別冊63頁)に基づくものである。 要するに、修正申告については、その申告行為は先行の納税申告と一体化して1つの納税申告となるものの、その効力は先行の納税申告の効力とは切り離して、増差税額についてのみ生ずるとされているのである。前回4で述べたように、一般に、納税義務の確定は「一応の確定」(清永・前掲書228頁)にとどまり、それが正しくされない場合は「重畳的確定」(磯邊・前掲書83頁、廣瀬・前掲書28頁、武田監修・前掲書1129頁)がされるが、修正申告の効力に関してだけは「重畳的確定」ではなく「追加的確定」というべきである。 このような修正申告の効力を「追加的確定効」と呼ぶことにすれば、国税通則法20条が修正申告に追加的確定効のみを認めたのは、先行する納税申告に基づく租税の納付・徴収の効力の安定を図るためである。つまり、修正申告の追加的確定効は、租税徴収の観点から定められたものであるが、そうであるが故に、申告納税制度の実定的把握は、修正申告の追加的確定効を定める国税通則法20条の規定において、その意味を具体的に認識することができるのである。 なお、前記【㋐】の(b)の考え方について若干付言しておくと、納税者が修正申告をする場合には、修正申告によって先行の納税申告に係る税額を増額するだけでなく、その税額の計算の基礎となった事実(課税要件事実)の内容を変更し課税標準の中身を入れ替える場合(例えば最判平成2年6月5日民集44巻4号612頁の事案のように、収入の計上漏れに伴う当該収入の計上と、錯誤に基づく概算経費選択の意思表示の撤回に伴うより高額の実額経費の計上がされる場合。金子・前掲書981頁、前掲拙著【147】も参照)もあることを考えれば、その(b)の考え方は、租税実体法・課税要件法の観点からみると妥当な考え方であり、その意味では修正申告の効力に関しては国税通則法の体系的構造(第1回3参照)に適合するものといえよう。 (了)

#No. 506(掲載号)
#谷口 勢津夫
2023/02/09

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第23回】「短期前払費用の取扱い」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第23回】 「短期前払費用の取扱い」   税理士 石川 幸恵   【Q】 当社(3月決算法人)は、所有する事務機器について毎年3月に翌事業年度(4月から翌年3月まで)の保守契約を締結し、同月中に1年分の保守料を支払っています。この1年分の保守料の取扱いですが、法人税の申告においては、支払った日の属する事業年度において損金の額に算入(法基通2-2-14)し、消費税においても支出した日の属する課税期間において課税仕入れを行ったものとして取り扱っています(消基通11-3-8)。 インボイス制度導入後もこの取扱いに変更はありませんか。 〔ポイント〕 (1) 短期前払費用の課税仕入れの時期の取扱いは、インボイス制度においても変更はありません。 (2) 短期前払費用の期間が令和5年10月1日をまたぐ場合、保守サービス事業者が令和5年10月1日より適格請求書発行事業者となるよう登録をしていないときは、令和5年9月までの保守料と10月以降の保守料で取扱いが変わる可能性も考えられます。 *  *  * 【A】 短期前払費用の課税仕入れの時期は、インボイス制度においても現行制度と同様、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱います(インボイスQ&A問96)。 保守サービス事業者が令和5年10月1日より適格請求書発行事業者となるよう登録をしていない場合の令和5年10月以後の保守料については、短期前払費用の趣旨である重要性の原則により全額を仕入税額控除の対象とするのか、仕入税額相当額の80%を控除する経過措置の対象となるのか明らかではありません。 この場合の考え方については、「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】」の「問7(短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除)」が参考になると考えられます。   (1) 短期前払費用の課税仕入れの時期 短期前払費用の取扱いについては、インボイス制度においても現行制度と同様、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱います。適格請求書の受領が翌課税期間になっても構いません(インボイスQ&A問96)。   (2) 短期前払費用の期間が令和5年10月1日をまたぐ場合の取扱い ① 保守サービス事業者が適格請求書発行事業者の登録をしている場合 保守サービス事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録をしている場合については、令和5年3月の属する課税期間の消費税申告において、前払費用の全額について仕入税額控除を行います。翌課税期間にその短期前払費用について改めて処理をする必要はありません。 ② 保守サービス事業者が適格請求書発行事業者の登録をしていない場合 保守サービス事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となるような登録をしていない場合については、「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】」の「問7(短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除)」を参考に、次のような取扱いが考えられます。 〈パターン1〉 〈パターン2〉 以上のように契約期間が令和5年10月1日をまたぐ場合には、仕入税額控除の額や課税仕入れの時期に影響があるかもしれません。契約締結前に、相手先に適格請求書発行事業者の登録の予定を確認しておくことをお勧めします。 (了)

#No. 506(掲載号)
#石川 幸恵
2023/02/09

〔令和5年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】「「オープンイノベーション促進税制の拡充と延長」 「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直し」「みなし配当の額の計算方法等の見直し」「寄附金の損金不算入制度の見直し」」

〔令和5年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】 「「オープンイノベーション促進税制の拡充と延長」 「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直し」「みなし配当の額の計算方法等の見直し」「寄附金の損金不算入制度の見直し」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和4年度税制改正における改正事項を中心として、令和5年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。 【第1回】は、「人材確保等促進税制の見直し(大企業)」及び「所得拡大促進税制の見直し(中小企業者等)」について解説した。 【第2回】は「オープンイノベーション促進税制の拡充と延長」、「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直し」、「みなし配当の額の計算方法等の見直し」及び「寄附金の損金不算入制度の見直し」について解説する。   1 オープンイノベーション促進税制の拡充と延長 「オープンイノベーション促進税制」とは、青色申告書を提出する法人が、一定のベンチャー企業に対して出資を行う場合に、その投資額の25%相当額の所得控除を認める制度である。ベンチャー企業に積極的に投資することを後押しする制度として、令和2年度税制改正において創設された。 ただし、株式取得の日から一定期間内に当該株式を売却等した場合は、その部分を益金に参入することになるので注意が必要である。 令和4年度税制改正において次のように見直された上で、令和6年3月31日まで2年間延長されている。 ① 対象法人 適用対象となる法人の要件について、次のように見直しが行われている。 (※) 当該法人が主体となるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による出資も対象。 ② 出資対象となるベンチャー企業 出資対象となるベンチャー企業の主な要件は次の通りであるが、一部に見直しが行われている。 ③ 特定株式 対象法人が取得する特定株式には、主に次のような要件を満たすことが求められる。この点について変更はない。 ④ 税制優遇措置 税制優遇措置の内容は次の通りであり、この点について変更はない。 特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定として経理した場合、特別勘定として経理した金額の合計額を損金に算入できる。ただし、その事業年度の所得の金額を上限とする。 また、1件当たりの取得価額の上限額は100億円であり、一事業年度の損金算入限度額は125億円とされている。 ⑤ 特別勘定の取崩し 特定株式の取得から 3年(令和4年度税制改正により、5年から3年に期間が短縮されている)を経過するまでに、特別勘定の取崩し事由に該当することとなった場合は、その事由に応じた金額を取り崩して益金に算入する。具体的には、次のような場合である。 この改正は、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に特定株式を取得した場合に適用されるため、令和5年3月期決算申告には適用されることになる。   2 大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直し 所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資に消極的である大企業については、研究開発税制等の税額控除が適用できない制度が設けられている。令和4年度税制改正により、一定の大企業を対象として適用要件が厳格化された。 この改正は令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和5年3月期決算申告には適用されることになる。 (※1) 税額控除と特別償却の選択適用が認められている場合は、特別償却の適用は可能。 (※2) 令和4年度税制改正により、「資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上で、前期が黒字の法人」については、下記の要件に厳格化された。 ➡当期の継続雇用者の給与等支給額 ≧ 前期の継続雇用者の給与等支給額 ×100.5% (令和6年3月期以降は101%)   3 みなし配当の額の計算方法等の見直し 令和3年3月11日の最高裁判決を受けて、令和4年度税制改正において、利益剰余金と資本剰余金の両方を原資として行われた剰余金の配当(混合配当)について、「株式又は出資に対応する部分の金額(減資資本金額)」の計算方法の見直しが行われた。 具体的には、「減資資本金額」について、実際に減少した資本剰余金の額を上限とするとされた。 この改正は令和4年4月1日以後に行われる払戻し等から適用されるので、令和5年3月期決算申告においては適用が開始されている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   4 寄附金の損金不算入制度の見直し 令和2年度税制改正により、寄附金の損金不算入制度における、損金算入限度額の算定基礎となる資本金等の額は、「資本金の額+資本準備金の額」とされた。 この改正は令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和5年3月期決算申告には適用されることになる。 (了)

#No. 506(掲載号)
#新名 貴則
2023/02/09
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