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〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第97話】「パートナーシップと配偶者控除」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第97話】 「パートナーシップと配偶者控除」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   浅田調査官は、パソコンの画面を見ながらため息をつく。 画面は、東京都渋谷区のウェブサイトで「渋谷区パートナーシップ証明」となっている。 「・・・法律上の婚姻とは異なるもの・・・となっているパートナーシップ制度は、巷でそんなに求められているのだろうか・・・」 浅田調査官は、更にインターネットで検索すると、導入自治体は539(全体で1,788)、導入自治体の人口合計を日本の総人口で割ると、92.9%(2024年1月1日現在)になる。そして、この制度のない都道府県はゼロである。 「・・・ということは・・・多くの日本人は、このパートナーシップ制度の証明書を得ることができるということなのか・・・」 浅田調査官は、再び渋谷区のウェブサイトに戻り、「パートナーシップ証明書を申請できる人」の画面を見る。 画面は、次のようになっている。 そこに、中尾統括官がやってくる。 「・・・何を・・・熱心に・・・画面を見ているの?」 中尾統括官は、パソコンの画面を覗く。 「・・・」 しばらくして、中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「・・・君は・・・パートナーシップに興味があるの?」 浅田調査官は、驚いたように顔を上げる。 「・・・いえ、これだけパートナーシップ制度が日本の各自治体で普及しているものですから・・・この議論は、国会でもっと行うべきだと思うのです・・・すなわち、条例ではなく、法律でこの制度を認めなければ、あまり実効性がない・・・」 中尾統括官は、腕を組んで浅田調査官の説明を聞いている。 「・・・しかし、この問題はなかなか結論が出ないだろう・・・今、国会でも議論している『選択的夫婦別氏制度』でさえも、簡単に決まらない・・・個人のアイデンティティーを維持したいとか、結婚による姓の変更手続きの負担やキャリアへの影響を避けたい、などの問題を解決するためには、それを希望する者に対して、氏の選択を認めても良いと思っているが・・・国会では、なかなかまとまらない・・・」 中尾統括官は、渋い顔をする。 「・・・ところで、所得税法83条や83条の2で規定している『配偶者』は、法律上の婚姻関係を前提としており、もちろん、パートナーシップでは駄目なのですが・・・将来的に、自治体で導入しているパートナーシップ制度のパートナーシップも、税法上の配偶者になるということはないのでしょうか?」 浅田調査官は、真面目な顔で訊ねる。 「・・・そりゃ、将来、ひょっとすると、パートナーシップ制度が税法でも認められるかもしれない・・・しかし、今、社会の多くの人が、そのような制度の導入を希望しているかどうか・・・僕には、分からない・・・」 中尾統括官は、思案顔になる。 「・・・所得税は、内縁関係では、配偶者として認められない(最高裁平成9年9月9日判決)ということになっていますが、他の法律では、内縁関係でも認めています・・・」 そう言うと、浅田調査官は、厚生年金法3条2項を開く。 更に、浅田調査官は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律の5条1項1号を紹介する。 「なるほど・・・これらの法律は、事実婚を配偶者として認めているが・・・」 中尾統括官は、大きく頷く。 「・・・しかし、これは僕が勝手に推測することなのだが・・・」 そう言いながら、中尾統括官は罫紙の上に図を描く。 「・・・すなわち、税金は、国民から徴収するもので、一方、年金とか被害者等給付金は、国民に支給するもので、お金の流れが、全く逆である・・・その意味では、税金は、できるだけ争いの余地がないように規定しているのだと思う・・・例えば、配偶者居住権(民法1028①)の配偶者も法律婚の配偶者となっており、その理由は、紛争の複雑化・長期化を防止するため事実婚は認めないということになっている・・・」 中尾統括官は、図を見ながら説明をする。 (つづく)

#No. 638(掲載号)
#八ッ尾 順一
2025/10/02

《速報解説》 令和7年度税制改正に係る「租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令」が9月30日付官報:本紙第1558号にて公布

 《速報解説》 令和7年度税制改正に係る「租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令」が9月30日付官報:本紙第1558号にて公布   辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健   本稿では、令和7年9月30日付で公布された租税特別措置法施行規則の一部改正について解説する。 令和7年度税制改正により、持続的な食料システムの確立に向けた税制上の所要の措置として食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律の改正を前提に、一定の計画の認定を受けた場合に、所得税及び法人税において、①中小企業経営強化税制及び②カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の適用を受けることができることとなった。 今回の改正により、上記①又は②の特例の適用を受ける場合、確定申告で必要となる添付書類が明らかとなった。具体的には、次の通りである。 (了)

#安積 健
2025/10/01

《速報解説》 会計士協会等が「中小企業の会計に関する指針」の修正を公表~修正を受け「会計参与の行動指針」も改正~

《速報解説》 会計士協会等が「中小企業の会計に関する指針」の修正を公表 ~修正を受け「会計参与の行動指針」も改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和7年(2025年)9月19日付けで(ホームページ掲載日は2025年9月29日)、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会は、修正「中小企業の会計に関する指針」を公表した。 これは、項番号の修正や関係法令の更新等に伴う所要の変更のみを行うものである。 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)の考え方を中小会計指針に取り入れるかどうかは、収益認識会計基準の上場企業等への適用状況及び中小企業における収益認識の実態も踏まえ、検討することを考えているとのことである。 また、修正「中小企業の会計に関する指針」を受けて、日本公認会計士協会と日本税理士会連合会は、2025年9月19日付けで(ホームページ掲載日は2025年9月29日)、「会計参与の行動指針」を改正している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 中小会計指針の主な修正内容は次のとおりである。 「会計参与の行動指針」では、グローバル・ミニマム課税制度の適用対象ではない会社を前提としている旨の注書きが記載されている。 (了)

#阿部 光成
2025/09/30

《速報解説》 国税庁、e-Tax「ID・パスワード方式」の新規発行停止を公表~令和7年10月1日よりマイナンバーカード方式への一本化を推進~

《速報解説》 国税庁、e-Tax「ID・パスワード方式」の新規発行停止を公表 ~令和7年10月1日よりマイナンバーカード方式への一本化を推進~   Profession Journal編集部   国税庁は9月25日、「ID・パスワードの新規発行停止について」を公表し、令和7年10月1日より「ID・パスワード方式」で使用するID・パスワードの新規発行を停止することを明らかにした。   1 背景と経緯 現在、国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxにより税務申告を行う方法には、次の2つがある。 ID・パスワード方式は、マイナンバーカード普及までの暫定的な措置として運用されてきたが、マイナンバーカードの保有率が約8割に達し、マイナンバーカード方式の利用が拡大している状況にある。   2 政府方針の明確化 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和7年6月13日閣議決定)では、マイナンバーカードを前提としたe-Taxの推進を掲げており、「ID・パスワードによる申告」の廃止を含めた在り方を2025年度中に検討し結論を得ることとされている。   3 新規発行停止の詳細 (1) 実施時期 令和7年10月1日より実施。 (2) 対象 今後新たにe-Taxで申告する場合の「ID・パスワード方式」で使用するID・パスワードの新規発行が対象。 (3) 今後の対応   4 実務への影響と課題 (1) 税理士事務所への深刻な影響 多くの税理士事務所では、顧客の確定申告書作成において「ID・パスワード方式」を活用してきた。今回の措置により、新規顧客については「マイナンバーカード方式」での対応が必要となるが、税理士が顧客に代わってe-Tax利用者識別番号を取得する場合の取扱いが不明確であり、今後の国税庁からのアナウンス含め関係する最新情報に注視したい。 従来、税理士は顧客の委任を受けて税務署でID・パスワードの発行手続きを代理で行うことが可能であったが、マイナンバーカード認証が必要となった場合、物理的にカードの所持者である本人でなければ認証ができないため、代理取得が困難になるのではといった声もある。 (2) 相続税申告への重大な影響懸念 特に相続税申告においては、相続人が高齢者である場合が多く、マイナンバーカードの取得や電子申告への対応が困難なケースが少なくない。税理士が代理でe-Tax利用者識別番号を取得できない場合、相続税の電子申告率が大幅に低下することが懸念されている。 (3) 納税者への影響 既存の「ID・パスワード方式」利用者は当面継続利用が可能であるため、直ちに全面的な影響が生じるわけではないが、これまでマイナンバーカードを保有していない新規のe-Tax利用者は、事実上マイナンバーカードの取得が必要となるため注意しなければならない。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/09/26

プロフェッションジャーナル No.637が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年9月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.637を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/09/25

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第52回】「事業所得と給与所得との区分に関する「判断の一応の基準」の意味」-弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第52回】 「事業所得と給与所得との区分に関する「判断の一応の基準」の意味」 -弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回は、弁護士の顧問料の給与所得該当性が争われたいわゆる弁護士顧問料事件に関する最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁(以下「本判決」という)において示された、事業所得と給与所得の区分に関する「判断の一応の基準」の意味について検討する。 なお、本判決は、民集35巻3号672頁の「判示事項」でも、「いわゆる減額再更正処分の取消を求める訴の利益の有無」が取り上げられ、これに関する判断を示した判決としても(むしろ当時はそのような判決として)注目を集めたが(この問題については園部逸夫「判解」最判解民事篇(昭和56年度)275頁ほか多くの判例評釈がある)、この問題は第39回(特にⅡ2)で検討した。 また、事業所得と給与所得との区分が争われるのは、「所得を得るために必要な支出」という意味での必要経費(理論的意味における必要経費)の控除が実額控除とされるか(事業所得)又は概算控除とされるか(給与所得)という取扱いの違いによるものであるが(理論的意味における必要経費、実額控除、概算控除については拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【312】、【262】、【267】参照)、その争いの実質的な原因は、多くの場合、大嶋訴訟(第2回参照)に典型的にみられたように当該事案における給与所得に係る必要経費の概算控除(給与所得控除)の額が必要経費の実額控除の額を下回る点にあったところ、本件では、確定申告における顧問料収入に係る必要経費については概算控除の方が上回っていたものと思われる(本件における確定申告、更正及び再更正に係る給与所得及び事業所得の収入金額、所得金額等の内訳については原審・東京高判昭和51年10月18日民集35巻3号686頁、687頁以下参照)。   Ⅱ 本判決のいう「判断の一応の基準」とその後の裁判例によるその理解 本判決は事業所得と給与所得との区分について、一般論として、次のとおり判示した(下線筆者)。 本判決は、事業所得と給与所得との区分に係る「判断の一応の基準」として事業所得の意義及び給与所得の意義を判示しているが、この判示については、「本件判決における事業所得及び給与所得の一般的な定義付けは、従来の裁判例におけるものと基本的に異なるところはないと考えられ、抽象的一般的な概念規定としては本件判決に述べられているようなことになると思われる。」(清永敬次「判批」民商法雑誌85巻6号(1982年)1023頁、1035頁)との評価がされている。 前記の判示は、最近でも、事業所得の意義又は給与所得の意義に関して参照されており(事業所得に関して東京地判令和7年3月4日[未公刊・LEX/DB25618239]、東京地判令和6年3月13日[未公刊・LEX/DB25612707]、名古屋地判令和5年6月22日税資273号順号13859、東京地判令和4年8月31日税資272号順号13749等、給与所得に関して東京地判令和5年3月8日税資273号順号13826、東京高判令和4年9月28日税資272号順号13759、東京地判令和4年8月26日税資272号順号13748、名古屋地判令和4年6月30日税資272号13730等参照)、「多くの裁判例でこの昭和56年判決[=本判決]に依って判断が下されてきた」(長島弘「給与所得該当性を巡る判断基準―最高裁昭和56年4月24日判決の判例法としての位置づけ―」立正法学論集48巻2号(2015年)103頁、128頁)という状況は続いているといえよう。 ただ、「この昭和56年判決が『一応の基準』でしかなくレイシオ・デシデンダイではないという裁判例」として派遣家庭教師等報酬事件・東京地判平成25年4月26日税資263号順号12210及び同事件控訴審・東京高判平成25年10月23日税資263号順号12319(以下では前者を「別件東京地判」、後者を「別件東京高判」といい、両者を「別件裁判例」という)を挙げる見解(長島・前掲論文128頁)がある。ここでレイシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)とは、「ある判決において、その判決の結論に達するため不可欠な基礎となった原理。判決の真の理由。」(高橋和之ほか編集代表『法律学小辞典〔第6版〕』(有斐閣・2025年)1406頁)をいう。 別件裁判例は次のとおり判示している(下線筆者)。 以下では、これらの判決で示された本判決の前記の判示内容に関する理解を検討することによって、本判決のいう「判断の一応の基準」の意味を明らかにすることにしたい。   Ⅲ 「労務の提供等の独立性」基準と「労務の提供等の非独立性」基準 別件裁判例は、本判決が給与所得の意義に関して示した「労務の提供等が使用者の指揮命令を受けこれに服してされるものであること(労務の提供等の従属性)」(別件東京地判。以下「『労務の提供等の従属性』基準」という)を「当該労務の提供等の対価が給与所得に該当するための必要要件」(別件東京地判。以下同じ)とは認めなかった。このことは、「従属性が認められる場合の労務提供の対価については給与所得該当性を肯定し得るとしても」(別件東京高判)、「労務の提供等の従属性」が給与所得の要件事実とはいえないことを意味する。したがって、「労務の提供等の従属性」基準は、「判断の一応の基準」にすぎないというべきものである。 そうすると、「労務の提供等の従属性」基準では給与所得該当性の判断ができない場合があることになるが、そのような場合として、別件裁判例は国会議員の歳費や法人の役員報酬・役員賞与などを挙げている。 では、別件裁判例はどのようなことを「給与所得に該当するための必要要件」として判示したのであろうか。この点について、別件東京地判は、「労務の提供等から生ずる所得」のうち「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」すなわち事業所得を「給与所得の範ちゅうから外[す]」ことにより、「労務の提供等が自己の計算と危険によらないものであること〔労務の提供等の非独立性〕」を「給与所得該当性の判断要素」として位置付ける旨の判断を示している。 この判断は、事業所得と給与所得とを間隙なく(境界を接する形で)区分することを前提にして示されたものであり、したがって、「労務の提供等が自己の計算と危険によらないものであること〔労務の提供等の非独立性〕」を「給与所得該当性の判断要素」として位置付ける一方で、(その前提として明示してはいないが)労務の提供等が自己の計算と危険によるものであること(労務の提供等の独立性)を事業所得該当性の判断要素として位置付けるものであると解される。しかも、ここで「判断要素」という言葉は「必要要件」と同じ意味で用いられていると解される。 このように理解すると、「労務の提供等の独立性」基準と「労務の提供等の非独立性」基準とは、事業所得と給与所得との区分に係る「判断の一応の基準」ではなく「判断の完全な基準」であるといえよう(前者は事業所得該当性の判断基準として、後者は給与所得該当性の判断基準として使い分けられることになろうが)。換言すれば、事業所得と給与所得との区分の場面では、「労務の提供等の独立性」が事業所得の要件事実、「労務の提供等の非独立性」が給与所得の要件事実となるといってもよかろう(前掲拙著【261】【263】参照)。 もっとも、本判決では給与所得該当性の判断について「労務の提供等の非独立性」基準は少なくとも明示的には判示されておらず、「労務の提供等の従属性」基準が「判断の一応の基準」として判示されているだけである。これでは、前述したような国会議員の歳費や法人の役員報酬・役員賞与などの場合について、事業所得該当性の判断に係る「労務の提供等の非独立性」基準との間に「間隙」が生ずることになるが、本判決はその「間隙」についてどのように対応しているのであろうか。 この点について注目されるのが、本判決の前記引用判決文の末尾の判示すなわち「給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」という判示である。この判示は「なお」に続くものであることから、一見すると傍論のように思われるかもしれないが、そうではなく、「労務の提供等の非独立性」という給与所得の要件事実を推認させる間接事実として、「とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものである」というような事情を重視する判断枠組みを示したものと解される(前掲拙著【263】参照。別件東京地判の前記判示も参照)。 なお、以上では「従属性」や「非独立性」という言葉を使用してきたが、これらの言葉の意味については、次の見解(佐藤英明『スタンダード所得税法〔第4版〕』(弘文堂・2024年)160頁)が述べるとおり、「一般の国語辞典的な意味とは異なる意味合いで使われていると考える」必要がある(筆者はこのことを考慮して前掲拙著【261】【263】ではこれらの言葉を用いず、「自己の計算と危険において独立して」提供した労務か否かという表現を用いることにしている)。   Ⅳ おわりに 最後に、本判決が示した「判断の一応の基準」に関する以上の検討の結果をまとめると、以下のようになろう。 確かに、本判決のいう「判断の一応の基準」が給与所得該当性の判断に係る「労務の提供等の従属性」基準を意味するとすれば、それは、文字どおり「判断の一応の基準」にすぎず、これに関する判示は前記の見解(長島・前掲論文128頁)の説くとおりレイシオ・デシデンダイではないということになろう。 しかし、本判決のいう「判断の一応の基準」は、そうではなく、「労務の提供等の独立性」基準と「労務の提供等の非独立性」基準で組成される「判断の完全な基準」であると解すべきである。本判決は、明示的には給与所得該当性の判断に係る「労務の提供等の従属性」基準を判示するにとどまっているが、この基準を、「労務の提供等の非独立性」という給与所得の要件事実を推認させる間接事実として「とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものである」というような事情を重視する判断枠組みによって補完し、もって「労務の提供等の独立性」基準と組み合わせて「判断の完全な基準」に仕立て上げたものと考えられる。 (了)

#No. 637(掲載号)
#谷口 勢津夫
2025/09/25

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例150(法人税)】 「親会社が「被支配会社でない法人」であるため「留保金課税」の適用がないにもかかわらず、これを適用して申告してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例150(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆特定同族会社の特別税率(法67) 内国法人である特定同族会社の各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には、その特定同族会社に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、通常の法人税の額に、その超える部分の留保金額に一定の割合を乗じて計算した金額の合計額を加算した金額とする。 ◆特定同族会社 特定同族会社とは、被支配会社で、被支配会社であることについての判定の基礎となった株主等のうちに被支配会社でない法人がある場合には、その法人をその判定の基礎となる株主等から除外して判定するものとした場合においても被支配会社となるものをいう。 ◆被支配会社 被支配会社とは、会社の株主等(自己株式等を除く)の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(自己株式等を除く)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合におけるその会社をいう。 ◆特別税率を適用されない特定同族会社の範囲(法基通16-1-1) 特定同族会社の特別税率に規定する「被支配会社でない法人」には、被支配会社でない法人を被支配会社であるかどうかの判定の基礎となる株主等に選定したことによって被支配会社となる場合のその被支配会社(以下「被支配会社でない法人の子会社」という)、その被支配会社でない法人の子会社を被支配会社であるかどうかの判定の基礎となる株主等に選定したために被支配会社となる場合のその被支配会社(以下「被支配会社でない法人の孫会社」という)、その被支配会社でない法人の孫会社を被支配会社であるかどうかの判定の基礎となる株主等に選定したために被支配会社となる場合のその被支配会社等、被支配会社でない法人の直接又は間接の被支配会社も含まれる。 ◆特定同族会社とならない法人 清算中のもの及び資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるものは除かれる。ただし、資本金の額又は出資金の額が1億円以下であっても次に該当するものは特定同族会社となる。       (了)

#No. 637(掲載号)
#齋藤 和助
2025/09/25

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第6回】

国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正 -防衛特別法人税等の企業への影響- 【第6回】   公認会計士・税理士 荒井 優美子   17 防衛特別法人税の中間申告 法人税中間申告書を提出すべき法人は、原則として法人税中間申告書に係る課税事業年度開始の日以後6月を経過した日(6月経過日)から2月以内に、防衛特別法人税の中間申告書を提出する義務を有する(防衛財確法21①、防衛特別法人税に関する省令(以下「防衛特法省令」)2)。法人税中間申告書の提出義務がない法人(公益法人等、協同組合等、人格のない社団等、清算中の法人(通算子法人を除く))や、法人税中間申告書の提出義務がない事業年度(【図表9】参照)については、防衛特別法人税の中間申告書についても提出義務はない(防衛財確法21①)。 【図表9】防衛特別法人税の中間申告が不要とされる事業年度 中間申告書を提出すべき法人が適格合併に係る合併法人である場合(新設合併の場合、吸収合併の場合)は、防衛特別法人税の中間申告納付額の計算において調整が行われる(防衛財確法21②、③)。 法人税の中間申告書を仮決算により提出する場合には、防衛特別法人税の中間申告についても仮決算により提出することとなる(防衛財確法22①)。 防衛特別法人税中間申告書を提出すべき法人が、提出期限までに提出しなかった場合には、法人税及び地方法人税の場合と同様に、その提出期限に防衛特別法人税中間申告書の提出があったものとみなされる(防衛財確法24)。   18 防衛特別法人税の確定申告 法人は、各課税事業年度終了の日の翌日から2月以内に、防衛特別法人税の確定申告書を提出する義務を有する(防衛財確法25①、防衛特法省令4①)。法人税の申告期限が延長されている場合には、防衛特別法人税の申告期限も法人税の申告期限まで延長される(防衛財確法25④)。 清算中の内国法人の残余財産が確定した場合には、法人税及び地方法人税と同様に、その課税事業年度終了の日(残余財産の確定の日)の翌日から1月以内に申告書を提出する義務がある(防衛財確法25②)。ただし、その翌日から1月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日までに、申告書を提出しなければならない(防衛財確法25②)。 恒久的施設を有する外国法人が納税管理人の届出をしないで恒久的施設を有しないこととなる場合、又は恒久的施設を有しない外国法人が国内における人的役務の提供事業を廃止する場合は、法人税及び地方法人税と同様に、その課税事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日の前日とその有しないこととなる日又はその廃止の日とのうちいずれか早い日までに申告書を提出しなければならない(防衛財確法25③)。   19 防衛特別法人税の申告書 防衛特別法人税の申告書の書式は、2026年4月1日以後開始事業年度から、2026年4月1日以後終了事業年度分の、法人税、地方法人税、防衛特別法人税が統合された書式として作成されており、国税庁のウェブサイトで公表されている(※)。 (※) 国税庁ホームページ「防衛特別法人税の申告書様式」 【図表10】防衛特別法人税の申告書の書式   20 電子申告 防衛特別法人税の申告書(中間申告書、確定申告書、修正申告書)及び添付書類については、法人税及び地方法人税の場合と同様に、内国法人である特定法人に該当する場合は電子申告が義務付けられている(防衛財確法27①、②)。人格のない社団等及び法人課税信託に係る受託法人は、特定法人に該当しない(防衛財確法7①、防衛特法令2②)。 (注) 資本金の額又は出資金の額が1億円超である公益法人等及び協同組合等を含む 電子申告の対象とされるのは、①防衛特別法人税中間申告書、②防衛特別法人税確定申告書、③防衛特別法人税中間申告書及び防衛特別法人税確定申告書に係る修正申告書、④申告書の添付書類とされ、法人税及び地方法人税の場合と同様の方法により送信することとされる(申告書はe-Taxによる電子申告、添付書類はe-Taxによる電子申告又は光ディスク、磁気ディスクによる送信)(防衛特法省令5)。 内国法人が一定の事由により特定法人に該当することとなった場合には、当該事由が生じた日から1月以内(新設法人等の場合には、設立等の日から2月以内)に事前届出を行う必要がある(防衛特法省令5②)。 特定法人が、電子通信回線の故障、災害その他の理由により電子申告が困難である場合において、書面による法人税申告の承認を受けたとき(法法75の5①)は、防衛特別法人税についても、その申告を書面により行うことができることとされている(防衛財確法28)。   21 納付 中間申告による納付期限は、中間申告書の提出期限、確定申告による納付期限は、確定申告書の提出期限とされており(防衛財確法29、30)、法人税及び地方法人税の場合と同様である。なお、防衛特別法人税の申告期限が、法人税及び地方法人税の申告期限の延長に伴い延長されている場合の利子税の割合は法人税及び地方法人税の利子税と同率である(防衛財確法25④、⑤)。   (続く)

#No. 637(掲載号)
#荒井 優美子
2025/09/25

学会(学術団体)の税務Q&A 【第21回】「委員に対して日当(謝金)・旅費を支払う場合の税務上の留意点」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第21回】 「委員に対して日当(謝金)・旅費を支払う場合の税務上の留意点」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 学会は、テーマごとに各種委員会を設置しているケースが多く、委員に対して日当(謝金)や旅費を支払っているケースが多い。   1 日当(謝金) (1) 日当(謝金)の内容 委員の日当(謝金)は、基本的には、委員会出席という時間的拘束(労力)に対して支払っているものと考えられる。他方で、委員会活動の中には原稿執筆や試験の作問・採点を行うような場合があり、その対価として日当(謝金)を支払うようなケースもある。そして後者の場合は、委員会出席という時間的拘束(労力)に対する対価というよりも、委員としての専門知識等に対する対価としての性格であると考えられる。 (2) 所得税 時間的拘束(労力)に対して支払っている日当(謝金)は、給与所得として扱うものと考える。他方で、専門知識等に対して支払っている日当(謝金)に関しては、報酬として扱うものと考える。そして、報酬に関しては、所得税法204条に掲げられている報酬か否かによって、源泉の要否を判断することになる。たとえば、原稿執筆や書籍監修に関する対価の場合、原則として10.21%で源泉徴収することになるが、試験の作問や採点に関する対価の場合、所得税法204条に掲げる報酬には該当しないため、源泉は不要となる。 〈日当(謝金)の内容と源泉所得税の取扱い〉 上記の通り、本来であれば、日当(謝金)は、その内容によって源泉の取扱いが異なるものであるが、実務上は、内容に関係なく一律10.21%で源泉しているような例も多く見受けられる。 (3) 消費税 給与所得に関しては不課税取引となるが、報酬に関しては課税取引となる。そのため、報酬に関しては、インボイスの有無、少額特例や経過措置の有無によって仕入税額控除の扱いが変わってくることになる。 〈日当(謝金)の内容と消費税の取扱い〉   2 旅費 委員が委員会に出席するための旅費は、通常必要と認められる旅費であれば、所得税上、非課税となる(所基通9-3)。また、委員会の出席旅費は、通常必要と認められる旅費であれば、通勤手当特例・出張旅費特例の対象になると考えられるため、インボイスがなくても仕入税額控除が可能である。   (了)

#No. 637(掲載号)
#岡部 正義
2025/09/25

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第80回】「非居住者期間の所得を合算課税することの可否が問題となった事例(地判平28.5.13、高判平29.5.25、最判平30.4.12)(その2)」

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第80回】 「非居住者期間の所得を合算課税することの可否が問題となった事例 (地判平28.5.13、高判平29.5.25、最判平30.4.12)(その2)」   税理士 柿本 雅一     6 検討 外国子会社合算税制に関するこれまでの判例は適用除外要件の充足に係るものが多く、特に正常な海外投資活動を阻害しないこととの関係で管理支配基準と業種判定をどう判断するかが問題になってきた。また、その多くは納税者が日本法人であるケースであり、納税者を個人とするケースは実務的にも少ない。ましてや居住者ステータスが課税年度の途中で変更するという事象は個人の場合でしか起こらないという特殊性が加わる(※1)。 (※1) 内国法人に対しても外国子会社合算税制が適用されるが、内国法人の定義を国内に本店又は主たる事務所を有する法人とし、原則として法人登記で判断するため事業年度の途中で法人ステータスが内国法人と外国法人で入れ替わることは生じない。 本件では納税者ステータスの変更が外国子会社合算税制の適用においてどのように影響を与えるかが制度創設時の資料(※2)では明確ではないため争いとなっている点において先例としての価値はある。本件における条文解釈上の論点を改めて整理すると、税法分野における法令解釈は原則として文理解釈によることに争いはなく、納税者と課税当局との主張の違いは、目的論的解釈が認められる例外的な場合と言えるかどうか、つまり、文理解釈によっては法規定の内容を明らかにすることが困難な場合に該当するかどうかである。 (※2) 税制調査会では、「我が国経済の国際化に伴い、いわゆるタックス・ヘイブンに子会社等を設立し、これを利用して税負担の不当な軽減を図る事例が見受けられる。このような事例は、税負担の公平の見地から問題のあるところであり、・・・我が国においても以下のような考え方に基づき、昭和53年度において所要の立法措置を講ずることが適当である」(昭和53年度の税制改正に関する答申)と述べられており、また、昭和53年改正税法のすべてでは、「このようにして、租税特別措置法の中に新たに2節が設けられ、第4節の2(居住者の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例)と第7節の3(内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例)の中でそれぞれ居住者と内国法人が軽課税国所在の子会社等を利用して租税回避を行う場合に対処するための措置が導入されたわけです」と説明されているが、居住者が特定外国子会社等を設立した場合のみを想定しているのかどうかは不明である。 (1) 文理解釈の観点から 長島教授は以下のように述べ、文理解釈の観点から外国子会社合算税制の適用の前提として日本に課税権がある場合が想定されており、一定の限定を付すことが妥当だと主張されている(※3)。 (※3) 長島弘「非居住者の時に稼得した所得と外国子会社合算税制における合算の範囲」税務事例Vol.48 No. 11(2016)40頁。 他方、西中弁護士は以下のように文理解釈は必ずしも万能ではないとしながらも本件では趣旨解釈からしても居住者の範囲に限定を付さないという結論は妥当だと主張している(※4)。 (※4) 西中間浩「タックス・ヘイブン対策税制(特定外国子会社等合算税制)においては、日本の居住者であるときにタックス・ヘイブンに会社を設立したことまでは要件としていないことを理由に、デンマーク王国での会社設立時には日本の居住者でなかった者に対してこれを適用した事例」税経通信(2017年5月号)171頁。 また、青山教授も限定的に解釈する必要はないと述べられている(※5)。 (※5) 青山慶二「居住者に適用される外国子会社合算税制」TKC税研情報2018 Vol.27 No.1(2018)46頁。 と納税者の主張は根拠がないとしている。 (2) 居住者の判定時期について 税務当局は外国子会社合算税制の適用対象となる居住者の判定を特定時点で行うことにより生じる有利不利については問題にならないと考えている(※6)。 (※6) 秋元秀仁「外国子会社の株主たる個人(居住者)が非居住者であった年度において設立した当該外国子会社(特定外国子会社等)にかかる子会社合算税制適用の可否」国際税務 Vol.37 No.11(2017)81頁。 しかしながら、扶養者控除は税負担を軽減するための規定であり年末判定をすることが納税者有利になるものであるのに対して、外国子会社合算税制は税負担を増加させるための規定であり特定時点で判定をすることが納税者不利になるものであるため、両者を同一根拠として捉えるのは妥当ではないと考えられる。 加えて、年の途中で納税者ステータスが変わるパターンとして、居住者から非居住者と非居住者から居住者の2つが考えられるが、居住者から非居住者になる場合は日本を出国するまでに確定申告する必要があり、出国時の現況により判断することになるから居住者期間に稼得された所得が課税対象になる。また、非居住者から居住者になる場合は非居住者期間に稼得された所得が課税対象になる点を鑑みると、課税されずに得をするという状況は発生しないと考えられるため、税制の中立性が根拠になるとは考えられない。 (3) 法律構成上の問題 外国子会社合算税制の特徴は、外国子会社に対する課税ではなく居住者である株主に対する課税である点、合算課税の対象が特定外国子会社等の課税対象留保所得である点(いわゆるエンティティアプローチ)、そして原則としてみなし課税であり例外的に適用除外要件を充足した場合に限り課税されないという点にある。 まず、株主課税である点については、「特定外国子会社等に該当する外国子会社(外国関係会社)に課税対象(留保)金額があり、当該特定外国子会社等が適用除外要件を満たさない場合(経済合理性を有さない場合)において、課税が生ずるものであるが、その真なる法律構成は、外国子会社等(特定外国子会社等)の所得に対する課税ではなく、その外国子会社に係る我が国の株主の所得の額が過小に現れている部分についての当該株主に対する課税である。このように本税制による課税は外国子会社に対する課税ではなく、我が国株主に対する課税であるから控訴人Xが主張するようなA社(特定外国子会社等)が譲渡した株式(B社株式)のキャピタル・ゲインに対する課税ではない」(※7)と説明されていることに集約できる。 (※7) 秋元・前掲文献 次に、株主課税の法律構成であることと、子会社といったエンティティに対する支配力に着目してその子会社の留保所得を合算する方式(エンティティアプローチ)を採用していることは不可分な関係にあると考えられる(※8)。 (※8) 占部裕典「政策税制の展開と限界」慈学社(2018)214頁、241頁-242頁。 そして、エンティティアプローチによるみなし課税をする場合に適用除外要件を充足するかどうかが重要になるが、この適用除外要件は業種により判定基準が異なるものの、業種区分が必ずしも正常な海外投資活動を阻害しないことと整合的であるかどうか疑問が生じる。エンティティアプローチにより経済的合理性を無視した課税がなされてはいけないことについて占部教授は次のように述べている。 また、中里教授は一定の政策目的実現のために採用された規定に対してその射程範囲を目的論的解釈により限定することは妥当なことであり、政策税制の背後にある政策目的の実現と無関係な場合に対してまで当該課税規定を適用することは許されないと考え、外国子会社合算税制についても国際的な租税回避の防止という政策目的をふみこえて、外国子会社合算税制を納税者に対する懲罰的なものとして適用してはならないし、また、国際的な租税回避が存在しないような場合にまで外国子会社合算税制を適用するべきではないと述べている(※9)。 (※9) 中里実「政策税制の政策目的に沿った限定解釈」税研JTRI2巻2号(2006)77頁-78頁。 (4) 結論 外国子会社合算税制の制度趣旨は、我が国経済の国際化に伴い、居住者が軽課税国に外国子会社等を設立して経済活動を行い、当該外国子会社法人の所得を留保することによって、我が国における租税の負担を回避しようとする事態に対処して税負担の実質的な公平を図ることにある。 条文を簡素にして見てみると、「次に掲げる居住者に係る外国関係会社のうち、・・・政令で定める外国関係会社に該当するものが、・・・各事業年度において、その未処分所得の金額から留保したもの・・・に関する調整を加えた金額を有する場合には、・・・政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額は、その者の雑所得に係る収入金額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する」となるが、問題は、租税回避を防止するための制度であるにも関わらず、条文規定は、原則として軽課税国に設立された特定外国子会社等が特定の留保所得を有しているだけでその株主である居住者の雑所得とみなされる規定になっている点であり、例外として適用除外要件を充足した場合に限り課税されないという構成になっていることにある。 この点、租税回避防止規定である法人税法132条(※10)の同族会社の行為計算否認を見ると、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、・・・計算することができる」規定となっており、その適用場面を法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合に限定した上で改めて法人税の計算ができるとしている。 (※10) 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。 外国子会社合算税制の特徴は租税回避防止を目的としているが他の納税主体である特定外国子会社の所得を株主の所得に合算するという課税方式であるため税負担の増加だけをもたらすものである。このような合算課税という特徴からは、公平性の見地からその適用においては税負担の不当な減少をもたらす行為のみが対象となるべきであり、オーバーインクルージョンによる税負担の増加はあってはならないものである(※11)。 (※11) 朝長氏は過去の外国子会社合算税制の変遷を踏まえて、「現在の外国子会社合算税制は、昭和53年の同制度の創設時を起点として見ると、当初の租税回避防止措置という性格が薄れて、その趣旨・目的が何かということが次第に不鮮明になりつつある。・・・このような状況は、質問者が懸念するとおり、租税回避でないものに対してまでも外国子会社合算税制の適用が拡大されるおそれがあるということを意味している」と指摘している。朝長英樹「外国子会社合算税制の変遷」T&A master No.463(2012)20頁。 この点、裁判所は、課税要件を明確化して課税執行面における安定性を確保しつつ、税負担の実質的公平を図るために適用除外要件を設けていると述べている(※12)。しかし、適用除外要件は主としてどのような事業活動を行っているかという点に重きを置いている。特定の事業活動を行っていれば経済合理性があり、逆に、特定の事業活動を行っていなければ経済合理性がない結果になるのかの根拠を示していない。つまり、その事業活動がどのような租税回避行為と繋がるのかが直接的に示されないまま租税回避とならない事業活動の判定がなされているという問題を有している。 (※12) 本判決においても適用除外要件の趣旨を「この規定は、特定外国子会社等であっても、独立企業としての実体を備え、かつ、その所在する国又は地域において事業活動をすることにつき十分な経済合理性を有する場合にまで外国子会社合算税制による課税をすることになると、居住者の海外投資を不当に阻害するおそれがあることから、そのような事態を避けることを目的とするものであり、このため、同規定は、課税要件を明確化して課税執行面における安定性を確保しつつ、税負担の実質的公平を図るとの観点から、特定外国子会社のうち、株式(出資を含む。)の保有等を主たる事業とするもの以外のものであることなど、経済合理性を有すると認められるための具体的な要件を法定した上、これらの要件が全て満たされる場合には同条1項の規定を適用しないこととしたものと解される。」と判示し、適用除外要件を充足すれば経済合理性を有すると認められるとしているが、租税回避による税負担の不当な減少がこのような事業活動の有無のみで判断されることが妥当かどうかは示されていない。 このように外国子会社合算税制がどのような租税回避行為を防止しようとしているのかが明白になっていない以上はみなし規定におけるオーバーインクルージョンを避けるためにもその適用範囲については制度趣旨を踏まえた解釈をする必要性は極めて高いと考えられる(※13)。 (※13) オーバーインクルージョンに関しては、平成29年度税制改正において一部の業種において解消されているが抜本的な解消には至っていない。例えば、財務省主税局においてタックス・ヘイブン対策税制の改正に携わった経験のある品川氏は、これらの改正は、現在の企業(しかしながら、一部の特定業種)の事業実態を考慮したものとされているが、本質的には、現行の適用除外基準の文言ではこれらの企業の経済合理性のある事業活動まで否定してしまうことが想定されるため(いわゆるオーバーインクルージョン)、そもそもの制度趣旨に鑑み、そうした事態が生じないよう適用関係を明確にしたものと捉えることができよう。しかしながら、これまで適用除外基準の解釈、適用を巡って多くの問題点が指摘されてきている状況下、オーバーインクルージョンを防止するためには、一部の小手先的な改正ではなく、各適用除外基準の本質的な概念、文言を、制度趣旨に的確に反映した適正課税に対応できるよう修正すべきであろう。例えば実体の伴う事業である来料加工貿易についても適用除外基準をクリアできないことがオーバーインクルージョンという評価をしているのであれば、その本質的な問題は、現行適用除外基準の概念若しくは文言が適切でないと捉えることができよう」と指摘している。品川克己「外国子会社合算税制の総合的見直し②」T&A master No.681(2017)15頁。   7 おわりに これまでの外国子会社合算税制を巡る争いの多くは適用除外要件を充足するかどうかであった。また、納税者も内国法人がほとんどであり個人である場合は極めて少なかった。本件では、個人が納税者である場合に生じる納税者ステータスの変更が外国子会社合算税制の適用においてどのように影響を与えるかについて、初めて裁判所の判断が示された点において先例としての価値はある。 裁判所は、法的安定性の要請を尊重し、原則として文理解釈を行い、文理解釈では規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合に初めて規定の趣旨を踏まえた目的論解釈によるべきと判示している。 しかし、外国子会社合算税制の条文は居住者が軽課税国に子会社を有するだけでみなし課税が発動されることを原則としており、その適用範囲は極めて広い。また、適用除外要件も特定の事業活動を行っているかどうかにより判断されるため租税回避行為との関係性が不明確である。 本判決が示すように課税要件を広く定義している条文構成を前提にして文理解釈を行うならば、租税回避目的がない事業活動も外国子会社合算税制の対象になるというオーバーインクルージョン問題を解決できない。他方、制度趣旨を踏まえた目的論的解釈を行うとしても租税回避行為の類型がある程度示されないと常に裁判で判断されることになり法的安定性に欠けることになる。オーバーインクルージョン問題を解決するためには、特定の株式を有する居住者という画一的な課税要件を改め、税負担の不当な減少をもたらす場合を課税要件とし、税務当局が租税回避行為に該当することの立証責任を負う方向に変更する必要があると考えられる。 (了)

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