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《速報解説》 法務省、GM課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱いを受け、「会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表

《速報解説》 法務省、GM課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱いを受け、「会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024(令和6)年12月6日、法務省は、「会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表し、意見募集を行っている。 これは、「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)を受けたものなどである。 意見募集期間は2025年1月17日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容   Ⅲ 施行期日等 公布の日から施行する予定である。 改正後の会社計算規則の規定は、2024(令和6)年4月1日以後開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用し、同日前に開始する事業年度に係るものについては、なお従前の例によるものとする予定である。 (了)

#阿部 光成
2024/12/09

《速報解説》 金融庁から「記述情報の開示の好事例集2024」の第2弾が公表される~気候変動関連等の好事例のポイント等を新たに記載~

《速報解説》 金融庁から「記述情報の開示の好事例集2024」の第2弾が公表される ~気候変動関連等の好事例のポイント等を新たに記載~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024(令和6)年12月5日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」を公表した。 これは、2024年11月8日の「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」に続くものであり、サステナビリティに関する考え方及び取組の開示②(気候変動関連等)について議論したものである。 今後、第3回勉強会以降のテーマを追加して、公表、更新することを予定しているとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み 次のことを追加している。   Ⅲ 有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の全般的な開示のポイント 参考になる主な開示例等を追加している。   Ⅳ 気候変動関連等の開示例 主な開示のポイントとして、サステナビリティ情報と財務情報とのつながりがある開示、シナリオ分析においては、一般的なシナリオだけでなく、自社の置かれている経営環境等を踏まえた独自のシナリオを反映した分析を行うことが有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(図表や画像を用いて、読み手に対して端的で明快な情報開示を意識したことなど)。 「気候変動」の好事例のポイントとして次のことが記載されている。 「自然資本(水リスク、生物多様性等)」の好事例のポイントとして次のことが記載されている。 (了)

#阿部 光成
2024/12/09

《速報解説》 国税庁、概要・源泉所得税関係の定額減税Q&Aを改訂し外国人技能実習生の源泉徴収票の記載事項を追加

 《速報解説》 国税庁、概要・源泉所得税関係の定額減税Q&Aを改訂し 外国人技能実習生の源泉徴収票の記載事項を追加   Profession Journal 編集部   令和6年分の年末調整は年調減税への対応が必要となる中、国税庁は12月5日付で「令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係)」を改訂、外国人技能実習生の源泉徴収票の記載方法について内容の見直しを行った(既報の通り前回の改訂は9月)。 今回の改訂で見直されたのは「Q10-3 外国人技能実習生の源泉徴収票の記載方法」のみ(新問の追加なし)。定額減税の対象となる外国人技能実習生(居住者であり、扶養控除等申告書を提出している)で、租税条約に基づき源泉所得税及び復興特別所得税の免除を受ける人の場合、改訂前は「給与所得の源泉徴収票」の「(摘要)」欄に定額減税に関する事項を記載するとの内容であったが、改訂後は租税条約に基づいて課税の免除を受ける給与について免除対象額及び該当条項「日〇租税条約〇〇条該当」についても記載(書面作成の場合は赤書き)する必要があるとした。 改訂前後のQ10-3は以下の通り(下線が変更箇所)。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2024/12/06

プロフェッションジャーナル No.597が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年12月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.597を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/12/05

monthly TAX views -No.142-「SNS情報のファクトチェックをどうするか」

monthly TAX views -No.142- 「SNS情報のファクトチェックをどうするか」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   自らの見解をタイムリーにかつ無料で発信することが可能になり、SNSの時代が到来している。先般の東京都知事選挙や衆議院選挙、さらには兵庫県知事選挙ではSNSの影響力の大きさを改めて認識させられた。 一方で、SNSには大きな問題が指摘されている。 発信側の問題として、投稿した動画等の閲覧数に応じて広告収入が得られるので、発信の内容が耳目を集めるべく極端や過激になりがちである。憎悪などの私情が加わったり、閲覧数が集まるのでトンデモ陰謀論などが拡散されてSNSに溢れることになる。これを「アテンションエコノミー」というようだ。 ユーザー側も、自分と似た意見や関心をもつユーザー同士がつながり、自分と似た情報だけが集まってくる「フィルターバブル」が生じ、意見が増幅、強化され「エコーチェンバー現象」が生じる。その結果、同じ思考や主義を持つ者同士がつながり、見解が極端化・先鋭化することで世論が二極化し、社会の分断化につながっていく。 このように、発信側とユーザー側双方に大きな問題を抱えているにも関わらず、言論の自由に守られて、影響力を拡大していくSNSネット社会であるが、筆者が最大の問題と考えるのは、それが国の政策に大きな影響を及ぼすことである。 *  *  * 最近の出来事をたどると、岸田首相(当時)につけられた「増税メガネ」というレッテル貼りが挙げられる。 このレッテルは、骨太方針に書かれた「退職金税制の見直し」や消費税インボイスの導入(2023年10月)、政府税制調査会の中期答申などにより2023年頃から広がったものだが、消費税インボイスはすでに法律で決められたものが施行される話であり、中期答申は総理の諮問機関の見識を示したもので、いずれも岸田首相が主導したものではなく、「増税メガネ」という呼称(?)は適切ではない。 岸田首相は、2023年10月の経済対策で定額減税の実施を唐突に表明したが、これは「増税メガネ」というネットでのレッテルを気にしたものと言われている。事務方に十分な検討の時間が与えられていなかったことで、給付と減税をつなぐやり方の混乱は今も続いている。 このように、実際の政策運営に大きな影響を与えているSNSでの議論だが、誤った事実に基づくキャッチーな情報や都合の良い言説が十分な検証もなく拡散し、現実の政策決定に影響を与えることは大きな問題だ。 現状で筆者が問題だと考えるSNSでの言説は、例えば次のようなものである。 まず、「減税すれば経済が活性化して税収がそれ以上に増える」という言説だ。前名古屋市長の河村たかし氏が、「名古屋では減税したが増収になった」と発言しているが、データなどの検証に裏付けられた話ではない。「減税すれば増収になる」という理論は、米国レーガン政権の1期目の税制改革で実践されたが、すぐさま財政赤字が拡大し修正された。後に米国政府によって、「フリーランチ理論」とも「ブードゥー(呪術)・エコノミクス」とも揶揄されることとなった。 次に、「財務省はこの30年緊縮財政をしてきた」という言説がある。しかし、1990年度の一般会計歳出は69.3兆円、2022年度は110.3兆円で6割近く伸びている。この間の公債発行残高は、1990年度の166兆円から2022年度の1,029兆円と6倍以上になっている。予算に占める公債の比率(公債依存度)も、1990年度は9.2%であったのが、2022年度には35.9%と、これも4倍弱の伸びとなっている(※1)。これらから分かる通り、財務省がこの間緊縮財政を行ってきたというのは全くの誤解(しかも意図的な)である。 (※1) 財務省「日本の財政関係資料(令和4年10月)」参照 もう1つ、わが国の債務残高(GDP比)は2.5倍と主要先進国と比べてずば抜けて高いという点について、ある財務省OBが「日本は多くの資産を持っており、借金は少ない」と述べる動画が出回っているが、これは間違いである。政府が保有する金融資産を差し引いた純債務残高で比較すると、わが国の債務GDP比率は157%と主要先進国で最も高く、米国(98%)や英国(94%)の1.5倍を超える水準にある(※2)。 (※2) 財務省「我が国の財政事情」参照 *  *  * 財務省のSNSには、財務省への批判が多く寄せられているという。政治が混迷し、意思決定が流動化している今日、最終責任を負うところとして財務省が標的とされているのだろう。 一方で、このような誤った言説を防ぐには、ファクトチェックを行う客観的な組織や機関が必要だ。調べると、認定NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が2017年6月に発足しており、ファクトチェックをしていることが分かった。 しかし、前述した「減税すれば増収になる」というような言説のチェックは、専門家でなければできない。そこで、欧米にある独立財政機関の設置を検討してはどうだろうか。さらには冷静な熟議のできるプラットフォームも必要だ。最近では批判されることの多い大手メディアだが、その役割を果たすべきではないか。 もちろん最終的には、我々受け手のメディア・リテラシーを高めることが必要で、それは個人個人が考えるしかない。 (了)

#No. 597(掲載号)
#森信 茂樹
2024/12/05

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例69】「土地営業権原価に係る償却費の損金該当性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例69】 「土地営業権原価に係る償却費の損金該当性」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、関東地方のある政令指定都市に本社を構え不動産の売買及び不動産経営コンサルティング業を営む株式会社X(資本金8億円で3月決算法人)において、経理部長を務めております。 わが社は長らく首都圏郊外の住宅用地の造成及び販売に携わってきましたが、ここ20年程度にわたる働き盛りのサラリーマン層における郊外から都心回帰の動きにより、東京駅から電車で1時間半以上かかるような、わが社の扱っている類の戸建て住宅地の需要は冷え込むようになってきました。そのため、ここ10年くらいは東京23区内やその周辺の、東京駅まで1時間以内に立地する駅周辺の土地を購入し、その上に単身ないし夫婦子なし世帯向けの賃貸マンションを建設して、資産運用に意欲的な富裕層に購入してもらうビジネスに注力することで、わが社もなんとか息を吹き返してやっていけているところです。 さて、そのような中、わが社も先日来国税局の税務調査を受けていますが、そこで1点問題となっている事項があります。それは、他社が開発したゴルフ練習場用地につき、わが社が買収しその建設を引き継いで完成させた物件がありますが、調査官は、その買収の際に計上した営業権は専らゴルフ練習場の建物及び構築物という有形固定資産により構成されており、調査事業年度において当該練習場は未だ稼働していないことから、その減価償却費は損金算入できないと主張しております。私の考えでは、当社が計上した営業権はゴルフ練習場買収に伴い発生した超過収益力に基づく「のれん」であり、ゴルフ練習場は稼働していないもののその運営を行っている事業部は業務を開始しているため、減価償却が可能と考えております。この場合、法人税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。 【A】 法人税法上の「営業権」とは、判例上、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係であると解されており、他企業から買収したものについては、その内容や構成要素を個別に吟味する必要があります。すなわち、個々の資産に分解して評価すべきものなのか、それとも各資産が有機的に結合し超過収益力を生み出すような事実関係に昇華しているとみなせるものなのか、といった点が判断要素となるものと考えられます。本件について営業権と称するものの内容が、仮に、専らゴルフ練習場の建物及び構築物といった個別の減価償却資産により構成されており、それ自体に超過収益力を見出すことができないのであれば、それが法人税法上の「営業権」と解される余地はないものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 無形資産の減価償却費 企業の有する固定資産のうち、使用又は時間の経過によって価値の減少するものを減価償却資産という。そのような減価償却資産は、企業において長期にわたり収益を生み出す源泉であることから、費用収益対応の原則から、その取得費につき使用又は時間の経過によって価値の減少する度合いに応じて徐々に費用化すべきといえる(※1)。このような企業会計の考え方に則って、法人税法上も、資産の取得価額を一時の費用とするのではなく、徐々に費用化する手続きが減価償却である。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)389頁参照。 上記固定資産の中には、建物や機械装置のような有形の減価償却資産と、鉱業権、水利権、無体財産権、営業権(のれん、法令13八ヨ)といった無形の減価償却資産とがある(※2)。無形の減価償却資産に係る償却方法については、鉱業権を除く無形減価償却資産(営業権を含む)は定額法が、鉱業権については定額法及び生産高比例法が認められている。 (※2) 金子前掲(※1)書389頁。   (2) 営業権の取り扱い 法人税法上営業権とは、判例において、企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係である、と解されている(最高裁昭和51年7月13日判決・訟月22巻7号1954頁)。 営業権の中心をなすのは企業の超過収益力であり、一般に「のれん」と称されるものである。法人税法上、当該「のれん」は企業が任意に計上できるものではなく、有償で譲り受けもしくは吸収分割あるいは合併によって取得した場合、又は会社更生手続きにおける評定による場合にのみ計上し、減価償却できるものと解されている(※3)。 (※3) 金子前掲(※1)書394頁参照。   (3) 土地営業権原価に係る償却費の損金該当性が争われた事例 それでは本件と同様に、土地営業権原価に係る償却費の損金該当性が争われた事例(東京地裁平成30年1月25日判決・税資268号-12(順号13117)、TAINSコード:Z268-13117)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、不動産の売買等を目的とする株式会社である原告が、平成21年10月期から平成24年10月期までの各事業年度に係る法人税の申告において、平成20年10月期の貸借対照表上「土地営業権原価」という勘定科目で固定資産に計上されていた金額には減価償却資産である無形固定資産(営業権)が含まれることを前提に、これに係る償却費を当該事業年度の損金の額にそれぞれ算入したところ、神田税務署長から、上記「土地営業権原価」は原告が過去に取得した土地を平成12年10月期に譲渡したことにより生じた譲渡損失に相当する金額の残額であって、本件各事業年度において減価償却し得るものではないから、本件各償却額は本件各事業年度における損金の額に算入すべき金額とは認められないとして、本件各事業年度に係る法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたため、被告を相手に、本件各更正処分等の取消しを求める事案である。 原告は、①ゴルフ練習場施設の建設用地とする目的で取得した上記土地につき、平成12年10月期に譲渡したものの、いまだこれを買主に引き渡していないから、譲渡損失は発生していない、②原告において上記土地につき開発許可を得るために必要な公共施設の管理者の同意を得るなどしたことから、上記「土地営業権原価」には減価償却資産である営業権が含まれているなどと主張して、本件各更正処分等の適法性を争っている。 ② 事案の争点 本件における争点は、各更正処分等の適法性であり、具体的には「土地営業権原価」に係る各償却額を各事業年度における損金の額に算入することの可否である。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴されたが(東京高裁平成30年7月18日判決・税資268号-65(順号13170)、TAINSコード:Z268-13170)、棄却され確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本裁判例は、減価償却費計上の基礎となる「営業権」の有無と、減価償却資産の取得のタイミングが問題となった。 まず「営業権」についてであるが、最高裁昭和51年7月13日判決のいう「他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係である」かどうかが判断基準となるであろう。他企業から買収したものについては、その内容を吟味する必要があるが、個々の資産に分解して評価すべきものなのか、それとも資産が有機的に結合し超過収益力を生み出すような事実関係に昇華しているとみなせるものなのか、といった点が判断要素となるであろう。本裁判例についてみれば、「土地営業権原価」の内訳は土地の取得価額及びゴルフ練習場施設の建設費であり、営業権のような無形の財産的価値を有する事実関係とは言い難く、単にそれぞれを個別の資産として評価し、土地については非減価償却資産、ゴルフ練習場施設の建設費は減価償却資産として取り扱うべきものと考えられる。実務上、営業権の有無とその判断基準を理解する際に参考になる裁判例であるといえよう。 次に、ゴルフ練習場施設の建設費についてであるが、これは減価償却資産であるので、問題となるのはその取得のタイミングである。すなわち、企業が減価償却資産の償却費を各事業年度の損金の額に算入するためには、その事業年度の終了より前にそれを取得していることが必要となる(※4)。裁判所が認定したとおり、「本件のゴルフ練習場施設は本件各事業年度の末日までに完成しておらず、原告は減価償却資産である同施設をいまだ取得していない」ことから、当該施設に係る減価償却費を本件各事業年度において計上することはできないこととなる。減価償却費の計上のためには、減価償却資産を取得し、かつそれを事業の用に供していることが必要となる。これも実務で重要なポイントとなる事項であるため、改めて確認しておきたいところである。 (※4) 金子前掲(※1)書389頁。   (4) 本件へのあてはめ 法人税法上の「営業権」とは、判例上、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係であると解されており、他企業から買収したものについては、その内容や構成要素を個別に吟味する必要がある。すなわち、個々の資産に分解して評価すべきものなのか、それとも各資産が有機的に結合し超過収益力を生み出すような事実関係に昇華しているとみなせるものなのか、といった点が判断要素となるものと考えられる。本件について営業権と称するものの内容が、仮に、専らゴルフ練習場の建物及び構築物といった個別の減価償却資産により構成されており、それ自体に超過収益力を見出すことができないのであれば、それが法人税法上の「営業権」と解される余地はないものと考えられる。 (了)

#No. 597(掲載号)
#安部 和彦
2024/12/05

租税争訟レポート 【第76回】「処分取消請求事件~国税不服審判所の裁決取消しを求める訴えの利益の有無(大阪地方裁判所令和4年6月30日判決)」

租税争訟レポート 【第76回】 「処分取消請求事件 ~国税不服審判所の裁決取消しを求める訴えの利益の有無 (大阪地方裁判所令和4年6月30日判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【判決の概要】   【事案の概要】 本件は、個人事業を営む原告が、平成27年分から平成29年分まで(本件各年分)の所得税及び復興特別所得税(所得税等)に係る更正処分等を不服として、令和3年6月10日付けで審査請求をしたところ、国税不服審判所長から、同年8月24日付けで、本件審査請求をいずれも却下する旨の裁決(大裁(所)令3第6号。以下「本件裁決」という)を受けたため、被告を相手に、本件裁決の取消しを求める事案である。   【訴訟提起に至る経緯】 1 平成30年12月18日審査請求に至る経緯 平成30年12月18日審査請求に至る経緯は、以下のとおりである。 2 令和元年7月11日審査請求に至る経緯 令和元年7月11日審査請求に至る経緯は、以下のとおりである。 3 令和元年12月6日付け裁決(前件裁決) 国税不服審判所長は、前件審査請求①に係る審理手続に、前件審査請求②に係る審理手続を併合したうえで、令和元年12月6日付けで、平成28年分の所得税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求める部分を不服申立ての利益を欠く不適法なものとして却下し、その他の審査請求についてはいずれも棄却する旨の裁決をした。 4 令和3年8月24日付け裁決(本件裁決) 国税不服審判所長は、令和3年8月24日、以下の理由により、本件審査請求をいずれも却下する旨の裁決をした。 5 本件訴えの提起(顕著な事実) 原告は、令和3年11月4日、本件訴えを提起した。   【争点と当事者の主張】 1 本件裁決の取消しを求める訴えの利益の有無〔争点1〕 (1) 被告の主張 被告は、原告による本件裁決に係る審査請求が、審査請求に対して裁決(前件裁決)がされた処分と同一の処分に対して、再度、審査請求がされていることから不適法となること、さらに、原告が本件各原処分のあったことを知った日から審査請求をした令和3年6月10日まで、少なくとも約1年11ヶ月が経過しているから、本件各原処分に対する審査請求は、国税通則法77条1項本文が規定する不服申立期間の経過後にされたものとなることから不適法であると主張した。 そのうえで、被告は、審査請求は、原処分が違法又は不当であるとしてその取消しを求めるものであるから、当該審査請求に対する裁決の取消しを求める訴えの目的も、究極的には原処分の取消しを求めることにあると解されることから、審査請求が不適法であって補正することができないものである場合には、当該審査請求に対する裁決を取り消したとしても、裁決行政庁としては、改めて当該審査請求を不適法として却下するほかなく、裁決によって原処分が取り消される余地はないため、裁決の名宛人である原告には、当該裁決の取消しを求めることにつき法律上の利益を有しないと解すべきであるから、本件裁決の取消しを求める原告の訴えは、訴えの利益を欠くものとして不適法であると主張した。 (2) 原告の主張 原告は、上記の被告の主張に対して、いずれも争うとした。 2 本件裁決の適法性〔争点2〕 (1) 被告の主張 被告は、原告による審査請求をいずれも却下する旨の裁決であるところ、〔争点1〕に対する被告の主張のとおり、本件各原処分に対する審査請求は、いずれも不適法であるから、審査請求をいずれも却下した本件裁決は適法であると主張した。 そのうえで、原告による、経費等を認めなかったことが違法である旨の主張については、これは本件各原処分及び本件各賦課決定処分の違法事由であって、本件裁決の違法事由をいうものではないから、失当であるとした。 (2) 原告の主張 原告は、右京税務署長は、右京税務署職員のミスを庇い、原告に対する意趣返しの趣旨で経費等を認めないまま税額を算出したものであり、本件裁決は、右京税務署長が算出した税額を身内擁護的に維持したものであるから、本件裁決は取り消されるべきものであると主張した。   【大阪地方裁判所の判断】 大阪地方裁判所は、結論としては、原告の請求は理由がないからこれを棄却するという判決を言い渡した。争点ごとの、裁判所の判断は次のとおりである。 1 本件裁決の取消しを求める訴えの利益の有無〔争点1〕 裁判所は、被告による、本件審査請求は不適法であって補正することができないものであるから、本件裁決の取消しを求める訴えの利益はないという主張に対して、本件審査請求が不適法であるかどうかは、本件裁決の適法性という正に本案の問題であり、その審理判断の結果、本件審査請求が適法であるとして本件裁決が判決により取り消された場合には、本件裁決がされていない状態に復することにより、審査請求人である原告は、裁決行政庁である国税不服審判所長による審査を改めて受けることが可能となるのであるから、原告は、本件裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するというべきであるという判断を示したうえで、被告の主張は、訴訟物そのものである本件裁決の適法性という本案の問題を、本案前の訴訟要件の問題と混同するもの(本案の判断の結果をもって本案前の判断を行うもの)であって、採用することができないと判示した。 さらに裁判所は、審査請求は、法令に基づく申請の一種であるから、審査請求を却下する裁決は、法令に基づく申請が不適法であることを理由とする却下処分とその性質を共通にするところ、法令に基づく申請が不適法であるとして却下処分がされ、その却下処分の取消訴訟が提起された場合につき、本案審理の結果、当該申請が不適法である、つまり、当該却下処分が適法であるとの判断に至ったとしても、その訴えの利益が否定されて訴えが却下されることはなく、当該却下処分の取消請求が棄却されるにとどまるのであって、その性質を共通にする却下裁決の場合につき、これと別異に解すべき合理的な根拠は見いだし難いというべきであるから、本件審査請求がいずれも不適法であったとしても、それは本件裁決の適法性という本案の問題であって、これにより本件裁決の取消しを求める訴えの利益は否定されないというべきであると付言を行い、重ねて被告の主張を採用することができないと述べた。 2 本件裁決の適法性〔争点2〕 裁判所は続いて、〔争点2〕について、次のように判示した。 (1) 本件裁決のうち本件各原処分に対する審査請求を却下した部分の適法性について 裁判所は、原告による審査請求について、事実認定をもとに、次のように判示した。 すなわち、原告は、平成30年12月18日に本件各賦課決定処分を不服として前件審査請求①を行い、令和元年7月11日に本件各更正処分等を不服として前件審査請求②を行ったものであるから、遅くとも、同日までには、本件各原処分があったことを知ったものと認められるところ、本件審査請求は、令和3年6月10日付けでされたものであるから、令和元年7月11日の翌日から起算しても約1年11ヶ月を経過しており、不服申立期間(処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内、かつ、処分があった日の翌日から起算して1年以内)を経過した後にされたものであることが明らかであり、さらに、不服申立期間の徒過につき正当な理由が認められる余地はないことから、本件各原処分に対する審査請求は、国税通則法77条1項及び3項の不服申立期間経過後にされたものであって不適法であり、本件裁決のうち本件各原処分に対する審査請求を却下した部分は、適法である。 さらに、裁判所は、本件審査請求を、前件裁決を不服とする再審査請求と理解した場合であっても、国税通則法その他国税に関する法律において、税務署長がした処分につき再審査請求をすることができる旨の定めはないから、本件審査請求は、いずれにしても不適法であると付け加えた。 (2) 本件裁決のうち前件裁決に対する審査請求を却下した部分の適法性について 次いで、裁判所は、国税不服審判所が前件裁決に対する審査請求を却下した部分については、国税通則法76条1項1号において、同法75条の規定による不服申立てに係る処分については、同条の規定は適用しない旨を定めており、同条の規定による不服申立てに係る処分については、審査請求をすることができないため、前件裁決は、原告による前件審査請求①及び②に係る裁決であるから、この規定に基づきこれを審査請求の対象とすることはできないとして、前件裁決に対する審査請求は、審査請求の対象とすることができない処分に関する審査請求であるから不適法であるという判断を示した。 (3) 原告の主張について 裁判所は、原告による、右京税務署長が職員のミスを庇い、原告の経費等を認めずに税額を算出した違法があるという主張について、原告の主張は、本件各原処分に係る違法事由をいうものと解され、本件裁決に係る違法事由をいうものではないから、主張自体失当であるとして斥けたうえで、さらに、本件訴えが本件各原処分の取消しを求める趣旨であったとしても、本件訴えは本件各原処分の出訴期間経過後に提起されたものであるから、不適法な訴えとして却下されることになるし、本件各原処分の無効確認を求めるものであったとしても、これを無効とするような重大かつ明白な違法があるとは認められないという判断を示した。 (4) 結論 裁判所は、上記(1)及び(2)で示した判断に基づき、本件審査請求はいずれも不適法であるから、本件審査請求をいずれも不適法として却下した本件裁決に誤りはなく、本件裁決は適法であることから、原告の請求は理由がないからこれを棄却する判決を言い渡した。   【判決の特徴】 税務署長による原処分の取消しを求めるという、通常の税務訴訟とは異なり、本件では、原告は、国税不服審判所の裁決取消しを求める訴訟を提起した。被告である国は、審査請求が不適法であって補正することができないものである場合には、当該審査請求に対する裁決を取り消したとしても、裁決行政庁としては、改めて当該審査請求を不適法として却下するほかなく、裁決によって原処分が取り消される余地はないから、当該裁決の取消しを求める訴えの利益はないという主張を行い、原告の請求を棄却するよう求めたが、大阪地方裁判所は、この主張を斥けている。 本件では、審査請求そのものが不適法であり、〔争点2〕に対する原告の主張も、裁決の取消しを求める請求内容とは相容れないものであったことから、裁判所は棄却という結論を導き出しているが、原告による審査請求自体が適法になされたものであった場合には、裁決を取り消す判決が出た場合であっても、原告としては、改めて原処分の取消しを求める訴訟を提起する必要があるのではないかと考えられる(原処分主義。行政事件訴訟法10条2項)。   (了)

#No. 597(掲載号)
#米澤 勝
2024/12/05

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第47回】「再販売価格基準法と無形資産の差異調整」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第47回】 「再販売価格基準法と無形資産の差異調整」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 独立企業間価格の算定方法の1つである再販売価格基準法が適切に用いられているかどうかの判断枠組みはどのようなものでしょうか。 〔A〕 再販売価格基準法の適用が争われた判決では、再販売業者の通常の利益率の算定に影響を及ぼす差異がある場合には必要な調整をすることができれば比較可能性を有するといえ、再調整ができなければ比較対象性を欠くので、当該比較対象取引に基づいて独立企業間価格を算定することはできないという考え方が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 再販売価格基準法 (1) 制度の概要 再販売価格基準法は、いわゆる基本三法の1つであり、比較対象取引の価格をそのまま独立企業間価格とはせず、一定期間にわたる類似取引における通常の利益率(具体的には売上総利益率に必要な差異調整を加えた割合)から独立企業間価格を算定するものであり、再販売取引に係る通常の利益率が、当該取引に係る棚卸資産等の種類そのものよりも、むしろ再販売者(売手)の果たす機能(及び負担するリスク)と密接に関係することに着目し、主として再販売者(売手)の果たす機能の類似性に基づいて独立企業間価格の算定をするものである。 (2) 差異の調整 検証対象取引に係る棚卸資産の買手(国外関連者)がした再販売取引と非関連者である再販売者(売手)の果たす機能その他において差異がある場合においても、その差異により生ずる売上総利益率の差につき適切な調整(差異調整)を行うことができるときには、必要な差異調整を加えた後の割合(※1)をもって通常の利益率とすることができるが、上記のような差異調整を行うことができない場合には、当該比較対象取引の売上総利益率に基づいて独立企業間価格を算定することはできないことになる。 (※1) 租税特別措置法関係通達66の4(3)-3では比較対象性の判断における5つの考慮要素が列挙されている(本連載【第46回】参照)。なお、下記で取り上げる裁判例の当時有効であった旧租税特別措置法関係通達66の4(2)-3では、12の要素が列挙されており、新通達ではそれらが5つに集約されている。 特に、再販売価格基準法が第三者間取引における再販売者の利益率を基礎として独立企業間価格を算定する方法であることからすると、比較対象取引の棚卸資産については、厳密に同種のものでなくても、性状、構造、機能等において類似するものであれば足りる一方、利益率に影響を及ぼし得る取引段階、再販売者が果たす機能(アフターサービス、包装、配達等を同じように行っているか)、再販売者が使用した商標等の価格への影響、取引市場という要素の識別及びその差異の調整の可否が重要となる。 以下では、再販売価格基準法の適用に際し比較対象取引の差異調整可能性が争われたワールドファミリー事件について検討する。   2 過去の裁判例 《東京地裁平成29年4月11日判決》(※2) (※2) TAINSコード:Z267-13005 (1) 事案の概要 本件は、内国法人である原告Xが行う幼児向け英語教材の輸入取引(以下「本件国外関連取引」という)について、処分行政庁Yから、同取引に係る対価として支払った額は租税特別措置法66条の4第2項1号ロに規定する再販売価格基準法で算定した独立企業間価格を超えているものとされ、本件各更正処分等を受けたことから、Xがその取消しを求める事案である。幼児向け英語教材(※3)の輸入元である外国法人A社とXは、いずれも外国法人B社の100%子会社であり、A社はその所在地国の税制により法人税が免除されている。A社は租税特別措置法66条の4第1項に規定する国外関連者、教材の輸入取引は国外関連取引に該当する。 (※3) 米国ディズニー社が著作権を有するキャラクター、映画の画像及び楽曲を使用して開発・製造された幼児向け英語教材(Disney’s World of English、以下「DWE」という)をいう。 Xは主に、輸入した教材を訪問販売の方法により再販売する事業(以下「DWE取引」という)を行っていたが、DWE取引の結果、A社が高い営業利益を上げている一方、Xには営業損失が生じていた。またXはディズニー・キャラクター等の使用に係るロイヤリティをC社(※4)に対して支払っており、同ロイヤリティはXの販管費に計上されていた。なお、XはDWE取引以外の事業を行っていたが、紙面の都合上その内容は省略する。 (※4) C社の資本関係は判決文からは不明である。 Yは、本件比較対象取引の選定に当たり、最初に母集団として訪問販売業者1,117社を抽出し、三次にわたる絞り込みを行い、最終的には、比較対象として子供向け教材を訪問販売する業者三社(甲社、乙社及び丙社)を選定した(以下「本件選定方法」という)。その上で、①使用する無形資産における差異、②売上金額に対する販売経費の割合(以下「販売経費率」という)における差異、③決済条件における差異の調整を行った。 (2) 争点 本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定及び国外移転所得の額の算定の適否(他の争点は省略)。 (3) 裁判所の判断 東京地裁は、本件選定方法について、「使用する無形資産の内容を比較対象法人の選定要素又は除外要素としなかったことをもって、直ちに、本件選定方法によって適切な比較対象取引を選定することができないとか、本件選定方法によって選定された本件各比較対象取引がDWE取引との関係で比較対象性を欠くということはできないというべきである。」としてYによる本件選定方法を容認した上で、再販売業者の通常の利益率の算定に影響を及ぼすことが客観的に明らかな差異がある場合にはそれにより生ずる売上総利益率の差について必要な調整をすることができるかが検討の対象となるとし、①機能における差異、②無形固定資産における差異、及び③市場の状況における差異の3点について論証している。 その結果、以下のとおり、本件国外関連取引が独立企業間価格でされたものとみなすことはできず、所得金額に加算すべき国外関連者への所得移転金額を認めることはできないと判示し、国側全面敗訴の結論(確定)となった。 ① 売手又は買手の果たす機能における差異の有無並びに差異調整の可否及び適否 ② 売手又は買手の使用する無形資産における差異の有無並びに差異調整の可否及び適否 ③ 市場の状況における差異の有無並びに再調査の可否及び適否   3 検討 本件の外形を観察するに、X及びA社はB社を完全親会社とする兄弟会社であり、A社がタックス・ヘイブンに所在する「国際事業会社」として法人税が免除されている(※5)こと、また、本件DWE取引において営業利益で比較すると、A社が高い営業利益を上げている一方、Xには営業損失が生じていたことを考慮すれば、Xの所得がA社に移転していたとする蓋然性は高いと思われる。特に、XからはC社に対しディズニー・キャラクターの使用に係るロイヤリティが支払われており、販管費に計上されているため、その分営業損益を押し下げているものと思われる。判決文からはC社の資本関係が不明なため明らかではないが、仮にC社もB社グループに所属しているとすれば、かかるロイヤリティは事実上二重払いとなっている可能性もある。 (※5) 地裁判決において認定されている。 このような状況にもかかわらず、東京地裁は、Yによる更正処分を認めなかった。判決では、比較対象取引の選定については適切に行われているとしながらも、比較対象取引との間で通常の利益率の算定に影響を及ぼすことが客観的に明らかであるところ、差異の調整が行われていないか、または不適切と判断したのである。特に上記ロイヤリティにつき、Yは、本件比較対象取引に係る(加重平均した)売上総利益率に、同ロイヤリティ比率(C社に支払うロイヤリティのDWEの売上金額に対する割合)を加算して差異調整したが、裁判所は、「比較可能性に関して論理的にあるいは実証的に多くの矛盾をはらんだ取引であっても、何らかの財務比率の数字さえ調整すれば、そもそも比較可能性に関して不十分であったものが、十分になるという見解が誤りであることが指摘されていることも考慮すると、DWE取引と本件各比較対象取引で使用するキャラクター(無形資産)の知名度や顧客に対する訴求力の差異によって生じる売上総利益率の差が、ロイヤリティ割合の差と販売経費率の差によって把握、調整することができるとは認め難い。」という厳しい見方を示してこれを否定したのである。 以上から、本判決は、ディズニー・キャラクターのような唯一無二の無形資産が使用されている取引について移転価格税制を適用する(※6)ことがいかに困難かということを示している(※7)。 (※6) 中野亘「〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例【第11回】「ワールドファミリー事件-移転価格税制における機能分析の考え方-(地判平29.4.11)(その2)」Profession Journal(2023/3/2)は、「現在のベストメソッドルールの下では重要な無形資産(特定無形資産)を含む場合として租税特別措置法66条の4第8項が検討され、(残余)利益分割法の適用が第一選択になる可能性が高い事例と考えられる。」と述べている。 (※7) 錦織康高「租税判例速報」ジュリスト1516号(2018年)11頁は、「本判決は、使用されるキャラクターの知名度等に大きな差異がある場合には、いかなる場合にも比較対象取引になり得ないとまでは結論していないが、そうした場合における売上総利益率に与える影響の度合いを理論的又は実証的に導き出すことは現実的とは考え難い。(中略)本判決は、事例判決ではあるものの、ユニークなキャラクターやその他の無形資産が使用されている取引において移転価格税制を適用することが容易でないことを端的に示しているものといえよう。」と述べている。 (了)

#No. 597(掲載号)
#霞 晴久
2024/12/05

決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第9回】「配当金総額に含まれる役員報酬BIP信託への配当額」

◆◇◆◇◆ 決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第9回】 「配当金総額に含まれる役員報酬BIP信託への配当額」   公認会計士 石王丸 周夫   今回は、「配当の状況」の誤記載を取り上げます。 【第6回】で、「配当の状況」はなぜか誤りが発生しやすいと述べました。【第6回】では、配当金総額の集計の考え方について、基本的な部分を確認しました。配当金総額は、その会計年度に基準日が属する配当を集計するということがポイントでした。 今回は、これとは違う理由による誤記載です。ただし、誤記載の箇所は全く同じです。配当金総額の金額です。 今回の誤記載は、役員報酬BIP信託という制度を導入している企業で起こる可能性があります。役員報酬BIP信託とはどのようなものかということも含めて、訂正事例から学んでいきましょう。   訂正事例の概要 まず、おさらいの意味で、決算短信の1ページ目に当たるサマリー情報に記載される「配当の状況」の欄を確認しておきましょう。「決算短信〔日本基準〕(連結)」の場合は、次のような表形式で示されます。 (出所) 日本取引所グループホームページ「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」「決算短信(サマリー情報)の参考様式/通期第1号参考様式【日本基準】(連結)」 このうち、配当金総額の金額で以下のような訂正が起きています。 訂正前の配当金総額は2,289と記載されていましたが、訂正後は2,314に修正されました。数字の並び順を間違えた等、単純な数字の入力ミスではなさそうです。 〈訂正事例をもとにした誤記載のイメージ〉 (※) 決算期は架空の年度とし、配当金総額以外の列は記載を省略しています。   計算チェックではわからない 上掲の誤記載のイメージでは省略しましたが、「配当の状況」には、年間配当金の内訳欄に四半期ごとの1株当たり配当金の金額が記載されています。事例の企業では年1回の期末配当のみだったようで、配当金総額は期末配当の総額が記載されているとわかります。 決算短信のサマリー情報の2ページ目には、この企業の発行済株式数が注記されています。その注記により、期末発行済株式数(自己株式含む)と期末自己株式数の情報が入手できるため、次の算式により配当金総額を計算することができます。自己株式には配当は支払われませんので、その数を控除するところがポイントです。 この算式により計算チェックを行えば、誤記載が判明するのではないかと思われたのですが、事例の企業について、早速、この計算をしてみたところ、なんと訂正前の数字「2,289」になってしまいました。 決算短信が開示される時点では、株主総会招集通知や有価証券報告書がまだ開示されていないため、配当に関する詳しい情報は入手できません。外部者にとっては、決算短信のみで「2,289」が間違っていることに気づくことは、少々難しそうです。   役員報酬BIP信託への配当金 この事例の企業の有価証券報告書が開示されたのち、その注記を参照しながら、配当金総額の誤記載の理由を探ってみました。訂正前の配当金総額「2,289」と訂正後の「2,314」の差額25とは何かという点に注意しながら見ていきます。 そうすると、「配当に関する事項」に、「配当金の総額には、「役員報酬BIP信託口」が所有する当社株式に対する配当金25百万円が含まれて」いることがわかりました。差額はこれだと見て間違いないでしょう。 役員報酬BIP信託というのは、役員に対するインセンティブ・プランであり、BIPは「Board Incentive Plan」の略です。企業が設定した当該信託にて、その企業の株式を取得して、業績等に連動した役員報酬として役員に株式を交付するという仕組みです。 役員報酬BIP信託が保有しているその企業の株式は、会計上、その企業の貸借対照表の自己株式に計上されます。ただし、それは会計上の話だけであって、会社法上は自己株式とはされず、配当が支払われます。この点が間違いやすいところです。 配当金総額を計算する場合、上記の算式のとおり、期末発行済株式数から自己株式数を控除しますが、役員報酬BIP信託の保有する自己株式については配当が支払われるため、この分は控除しなくてよいのです。つまり、上記の算式で計算すると、役員報酬BIP信託の保有株式に対して支払われた配当金の額だけ少なくなります。 事例の企業の場合も、おそらくそうして求めた配当金総額を記載してしまったのではないでしょうか。   開示前のチェックポイント 今回取り上げた誤記載の例ですが、筆者が把握している限り、同時期に同じ事例がもう1つありました。つまり、役員報酬BIP信託を導入している場合、ここで間違いが起きやすいというわけです。役員報酬BIP信託を導入している企業では、そのことを覚えておいて、開示前に再確認するというのが確実です。 (了)

#No. 597(掲載号)
#石王丸 周夫
2024/12/05

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第55回】「中小M&Aガイドライン(第3版)の活用」~第三者に支払う手数料~

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第55回】 「中小M&Aガイドライン(第3版)の活用」 ~第三者に支払う手数料~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒中小M&Aガイドラインを参考にして売り手を見る際の手がかりを得る。 売り手企業 ⇒中小M&Aガイドラインを参考にして買い手を見る際の手がかりを得る。 支援機関(第三者) ⇒中小M&Aガイドラインを買い手・売り手に対する助言に活かす。 その他の対象者 ⇒中小M&Aガイドラインを参考にして買い手・売り手の見方を知る。   【第54回】に続き、「中小M&Aガイドライン(第3版)」(以下、「本ガイドライン」といいます)から、買い手・売り手の見方・見られ方に関する内容に絞って解説します。   ◎ 第三者に支払う手数料の取扱い M&Aにかかる手数料は、「中小M&Aガイドライン改訂(第3版)に関する概要資料」等で掲げられる7つの事項の1つ(【第54回】参照)であり、第3版で追記されました。 M&Aの手数料は、買い手又は売り手、あるいは買い手及び売り手からM&Aの仲介機関やFA(フィナンシャル・アドバイザー)といった第三者に支払われるものですので、M&A当事者の利益に影響を及ぼします。しかも、支払う手数料に納得感があればよいですが、そうでないのに第三者に手数料を支払わなければならないとすれば、買い手・売り手は第三者に対して不満を抱えたままM&Aをすることになります。 手数料は業務内容にマッチしたものであることが望ましいですが、買い手・売り手はほぼM&Aの未経験者であるのに対して、第三者はM&Aを本業にしています。両者の知識、ノウハウ、情報量、経験値の差は明らかであり、手数料は圧倒的に第三者に有利な状況のもとで決まる可能性が高いと思われます。 そのため、第3版の改訂に伴い、本ガイドラインにおいて、第三者から依頼者である買い手や売り手に対して、M&Aに関して提供する業務の範囲、業務内容、手数料に関する事項など、契約に係る重要な事項を書面に記載し、その書面の交付と説明を求める内容が追加されたのは前進だと思います。 本ガイドラインでは、(1)手数料に関する事項、(2)相手方の手数料に関する事項、(3)提供される業務に関する事項の3つが整理されています。 (1) 手数料に関する事項 買い手や売り手に対して、報酬額のみならず、その報酬額を決める基準を確認する重要性が説明されています。その際、「M&A支援機関登録制度」のホームページでは、当制度に登録した第三者の手数料算定基準が公表されていますので、手数料の比較や参照に活用することが期待されています。 M&A支援機関登録制度のホームページにある「登録支援機関データベース」には、登録各社の手数料体系が掲載されています。 表示の例として、本稿では国際的な会計事務所の1つであるグラントソントン(Grant Thornton)グループの「太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社」を示します。 (出典) M&A支援機関登録制度ホームページ「登録支援機関データベース」(最終アクセス2024年11月17日) 本稿に関係する内容はFAと仲介の手数料体系ですので、この画面からさらに各手数料体系への画面へと進みます。同社の場合、FA・仲介ともに譲渡側と譲受側それぞれの手数料体系を示していますが、各社の対応状況や体制に応じてこれらの表示がされていないこともあり、未対応の場合は各詳細を選択できないようになっています。 なお、この画面の右上にある「第2版対応」は、本稿執筆時点において「第3版対応」となっている機関もあります。執筆時点では第3版改訂から間もないですが、いずれ最新版に対応できているかどうかも第三者選びのポイントになるかもしれません。 (出典) M&A支援機関登録制度ホームページ「登録支援機関データベース」(最終アクセス2024年11月17日) 例として、FAで譲渡側、つまり売り手側の手数料体系を示したページを示しました。同社の場合は、このほかに、FAの譲受側(買い手側)、仲介の売り手・買い手側の手数料体系も示されていますが、本稿ではこれらの説明は割愛します。 M&Aの手数料算定に実務上よく使われる「レーマン方式」によってM&Aの規模感に応じた手数料体系が示されるとともに、最低手数料水準、項目ごとの手数料の有無などが明記されています。同社の場合は成功報酬に含まれる月額報酬とタイムチャージが記載されています。 成功報酬は、表示されたページの記載のように、「主にクロージング時等の案件完了時に発生する手数料である」と示されています。なお、クロージングとは、M&Aの最終決済の時を表し、言い換えれば、ここではM&Aを終える時、M&Aの終盤との認識で構いません。 この点、譲渡側である売り手からすれば、依頼段階での支払手数料が分かっていないと不安を抱く原因になりますので、第三者側は本件の手数料がいくらで、いつ頃支払わなければならず、定額なのか変動するのか、成功報酬の定義は明確か、といった初動段階で不安を払拭する材料を十分に提供する必要性があり、義務を果たしてから業務に臨む必要があると思います。 このホームページでは、同社を含め各社の手数料体系が示されていますが、比較可能な明瞭性は担保される一方で、買い手・売り手にとって分かりやすい形で具体的な手数料体系まで示されているとは思いません。ですから、同社に限らずM&Aの実務にあたって相談段階に至らないと詳細が分からない点については、今後このホームページの利便性が高まり解消されることを期待したいです。 また、肝心のM&Aに係る知識や経験の差を埋めることはこのようなホームページがあっても難しいため、手数料体系が示されているからといって、買い手や売り手がこのホームページ情報を見て理解ができるとは限らない点にも注意が必要です。 自らが関わっている業界の専門用語に精通しているのは当たり前です。しかし、全く経験のない相手がその専門用語を知らないのも当然です。その差を埋める努力、労力は知見のある側の義務だと思いますので、買い手や売り手からすれば、手数料体系を丁寧に説明してくれる第三者かどうかを手数料体系以上に気にしておいた方がよいと思います。 (2) 相手方の手数料に関する事項 (出典) 経済産業省「中小M&Aガイドライン(第3版)」 M&Aにかかる手数料が支払われる資金の流れを見ると、買い手・売り手から外部にキャッシュアウトするのが手数料です。そのため、手数料の資金の動きを勘案すると、各社の利益に直結し、M&Aの譲渡価額にも影響します。手数料を意識するのはM&Aの各当事者にとって非常に重要であり、誰かの取り分を優先した時点で、ほかの誰かが損をする構造を簡単に作り出せてしまいます。買い手・売り手としては、自己利益を優先するような第三者ではないかどうかの見極めがとても大事です。本ガイドラインでは、これを第三者の「中立・公平性」と表現しています。 本ガイドラインでは悪例として、買い手が第三者に多く手数料を払い、その代わりに第三者が売り手に譲渡価額を安くするよう誘導して、買い手の手数料負担分を売り手の譲渡価額の低下である程度相殺しつつ、第三者の取り分が多くなるようなM&Aが行われる可能性が示されています。この場合、買い手はどうしても対象の売り手を手に入れたいから多くの手数料を払ってもM&Aを実現させたい、第三者は多額の手数料を払ってくれる買い手なら大歓迎という構図が想定されます。その結果として、本来であれば、売り手の譲渡価額に反映され、買い手から売り手にわたるはずのキャッシュが、買い手から第三者に流れることで、売り手が損をする結果になることを意味します。そのため、誠実な手数料説明が本ガイドラインで求められています。 しかしながら、ガイドラインで示されていても、結局、売り手からすればいくらの手数料が妥当か分かりづらく、どうしても売りたい状況であれば言われたまま契約する可能性は残りますし、売り手のM&Aの知見が少ないことには変わりません。本ガイドラインがあっても、ガイドラインを各プレイヤーが順守の上、M&Aに臨むかどうかの行動面を拘束できない以上、実務での心配は依然として尽きません。 本ガイドラインでは触れていませんが、普段から売り手と付き合いのある他の第三者、例えば顧問を務める士業事務所や金融機関などが売り手とのコミュニケーションを通じて、中立な立場から手数料の妥当性に関するアドバイスを行うことも有用ではないかと筆者は思います。 (3) 提供される業務に関する事項 本ガイドラインでは、「必要となる仲介・FA業務」「マッチングの難易度」「提供される業務の質」を手数料に関して確認する案が示されています。 ① 必要となる仲介・FA業務 本ガイドラインでは、M&Aのプロセスである「バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)」「マッチング」「基本合意の交渉・締結」「デュー・ディリジェンス(DD)」「最終契約の交渉・締結」「クロージング」「クロージング後」「その他業務(プロセス共通の業務含む。)」ごとの主な業務例を表に整理しています。この表に従い、プロセスごとにどのような業務が提供されるか明らかにすることが重要とされています。詳しくは本ガイドラインでご確認ください。 買い手・売り手はM&Aの未経験者であることがほとんどです。第三者がこれらの各プロセスに紐づく業務を具体的に、文書を活用しながら説明することはもちろんですが、通り一遍の説明では十分ではありません。買い手・売り手からすれば、この支援で十分か、過不足はないかはきっと分かりませんし、専門用語のオンパレードの説明では説明を受ける側の理解度は低いままであるに違いありません。 そのため、買い手・売り手が納得するまで十分な説明を尽くす第三者であるかどうかが最も重要だと思われます。すべてのプロセスごとにどのような業務が想定され、その中で第三者が行う業務はこれであり、なぜしない業務があるのか、行う業務で十分と言える理由は何か、不必要な業務を行おうとしていないか、余計な手数料負担を求めようとしていないか、といった点から組むべき望ましいパートナーかどうかを見極めたいものです。 ② マッチングの難易度 業種、財務状況、販路、技術、M&Aのスキームなど、マッチングの難易度はケースによって全く異なりますので、個々のケースの状況を細かく確認することが重要であるとされています。マッチングの難易度を考慮することは、買い手も売り手も自社の属する産業や事業がどの程度の難易度に当てはまるかを知ることに繋がりますので、M&Aしやすい企業か、M&Aに向けてどのような体制構築が必要かを検討する機会に活かす意味で、難易度という切り口、視点を普段の経営において意識するのは有益だと思います。 ③ 提供される業務の質 適切な候補先を紹介できる「ネットワーク」や、円滑なM&Aに繋がる知見をはじめとする「組織体制」が第三者の提供する業務の質に大きく関係します。例えば、これまでの第三者の成約実績、担当者のスキルや経験といった点からの確認を勧めています。 ただし、ネットワークが十分でなくても成長している第三者や、大規模でも担当者レベルだと頼りない第三者の可能性がありますので、ネットワークや組織体制だけが提供業務の質を決めるとは思えません。形式的に当てはめ可能な事項に加えて、買い手や売り手自らこの第三者と組んで問題ないかを、第三者のネットワークや組織体制にばかり頼らずに見極めていただくとよいでしょう。 これらに加えて、本ガイドラインでは、第三者から説明を受けても不安が残る場合に、「士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等からセカンド・オピニオンを聴取しておくことも有効」であり、「手数料や業務内容を理解した上で、手数料が提供される業務に見合っていないと感じ、納得ができない場合には、(中略)他の仲介者・FAへの依頼も視野に入れて検討」することも考えられると示されています。 前述のように、ほとんどすべての買い手・売り手は1度目のM&Aですから、自社内では検証可能な比較対象がありません。可能であれば、自社の持つ別のネットワークを通じて、買い手・売り手に寄り添った知見からのアドバイスを受けられる環境を普段から作っておくのをお勧めします。 (了)

#No. 597(掲載号)
#荻窪 輝明
2024/12/05
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