検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10624 件 / 341 ~ 350 件目を表示

税理士事務所の労務管理Q&A 【第25回】「年次有給休暇取得日の通勤手当・皆勤手当の取扱い」

税理士事務所の労務管理Q&A 【第25回】 「年次有給休暇取得日の通勤手当・皆勤手当の取扱い」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   年次有給休暇取得日における賃金の支払いは労働基準法で規定されていますが、通勤手当や皆勤手当の支払いの要否が問題になることがあります。 そこで今回は、年次有給休暇取得日の賃金について解説します。 * * 解 説 * * 1 年次有給休暇取得日の賃金の計算方法 労働者が年次有給休暇(以下「年休」という)を取得した際の賃金については、以下の3つから選択して支払うことになります(労働基準法39条9項)。ただし、事案ごとにその都度計算方法を変更することはできません。 年次有給休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされています。そのため、年次有給休暇に係る賃金の計算方法も、どの方法を選択するかについて、あらかじめ就業規則等に定めておく必要があります。 (1) 通常の賃金を支払う 〈就業規則の規定例〉 「通常の賃金」とは、労働者が通常どおり勤務していれば支払うことになる賃金のことをいいます。 (注1) 時間給制のパートタイム労働者等については、日によって所定労働時間が変わる労働者がいるケースでは、年休付与日の所定労働時間に応じて賃金を支払います。 (注2) 通常の賃金を支払う方法を選択する場合、通常の出勤をしたものとして扱えば十分であり、その都度上記の計算を行う必要はありません(行政解釈 昭和27年9月20日基発675号)。 (2) 平均賃金を支払う 〈就業規則の規定例〉 「平均賃金」とは、労働基準法で定められた休業手当や解雇予告手当等の金額を算定するための賃金額をいい、「3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の総暦日数」で求めます。賃金締切日がある場合は、直前賃金締切日から起算します。 また、日給、時間給等の場合は「3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の「労働日数」×60%相当額」が最低保障されます。 (3) 健康保険法で規定する標準報酬月額の30分の1に相当する額を支払う 〈就業規則の規定例〉 この場合、使用者は、過半数労働組合又は過半数を代表する者と書面による協定の締結が必要になり、この協定を締結した場合は、これにより賃金を支払わなければなりません。 事業所が社会保険未加入の場合には、標準報酬が適用できないため、実務上は他の2つの方法(上記(1)又は(2))が選択されることが一般的です。   2 通勤手当の支払の要否 (1) 「通常の賃金」(上記1(1))を支払っている場合 ① 通勤手当が実費補償的な性格のものである(出勤日のみ実費を支払う)場合 就業規則等で、「通勤手当は、実際に出勤した日についてのみ支給する。」旨を明記しておけば、年休取得日に通勤手当を支給しなくとも問題ありません。 ② 出勤日にかかわらず通勤手当を定額で支払っている場合 実費補償的性格のものとは言い難いため、年休取得日において、通勤手当の日割分を控除することは違法とまでは言えませんが、好ましくありません。通勤手当を支給する方が年休制度の趣旨に沿うことにもなるため、通勤手当はできるだけ控除しない方が妥当です。 ただし、労働者が退職するときに、退職日まで1ヶ月すべて年休を取得して、一切出勤しないケースがありますが、その場合は、通勤に要する費用はゼロですので、その月の通勤手当を不支給にしても問題ありません。 (2) 「平均賃金」(上記1(2))又は「健康保険法で規定する標準報酬月額の30分の1に相当する額」(上記1(3))を支払っている場合 それぞれの算定額に通勤手当が含まれていますので、別途通勤手当を支払う必要はありません。   3 皆勤手当の支払いの要否 皆勤手当を支給している事業所では、年休を取得した労働者に対して、皆勤手当の支給は必要です。 労働基準法附則第136条では、「年休を取得した労働者に対する、賃金の減額その他不利益な取扱い」を禁止しています(努力義務)。 年休取得を理由とした皆勤手当のカットも「不利益な取扱い」にあたり、年休取得の妨げになってしまうことから、禁止されていると解するのが妥当です。 したがって、皆勤手当を支給している事業所で、「年休を取得した場合には皆勤手当を支給しない」という取扱いにしている場合には、トラブルになる可能性もあるため、注意が必要です。 (了)

#No. 616(掲載号)
#佐竹 康男
2025/04/24

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例104】Japan Eyewear Holdings株式会社「監査等委員である取締役の辞任及び仮監査等委員選任の申し立てについて」(2025.3.10)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例104】 Japan Eyewear Holdings株式会社 「監査等委員である取締役の辞任及び 仮監査等委員選任の申し立てについて」 (2025.3.10)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、Japan Eyewear Holdings株式会社(以下「Japan Eyewear」という)が2025年3月10日に開示した「監査等委員である取締役の辞任及び仮監査等委員選任の申し立てについて」である。 監査等委員である取締役が「一身上の都合」により辞任して、監査等委員1名の欠員が生じるため、仮監査等委員選任の申し立てを裁判所に行うことにした、という内容である。   2 プライム市場への市場区分変更申請の取下げ スタンダード市場に上場しているJapan Eyewearは、東京証券取引所に対してプライム市場への市場区分変更を申請し(2024年11月28日開示「東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に関するお知らせ」)、2025年2月10日にその市場区分変更が承認されていた(同日開示「東京証券取引所プライム市場への上場市場区分変更承認に関するお知らせ」)。 しかし、その4日後に、その市場区分変更申請を取り下げている(2025年2月14日開示「株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げに関するお知らせ」)。 「内部管理体制に関連して確認すべき事項が発見された」ため、取り下げたとされているが、その「内部管理体制に関連して確認すべき事項」が何かは、明らかにされていなかった。   3 役員によるインサイダー取引 Japan Eyewearは、市場区分変更申請を取り下げた日から3日経った2025年2月17日、「(開示事項の経過)株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げに関連した内部管理体制に関する確認事項のお知らせ」を開示した。 その「1.中止理由」の記載は次のとおりである。 つまり「内部管理体制に関連して確認すべき事項」とは、同社の役員によるインサイダー取引の疑いだったのである。   4 役員は監査等委員である取締役 Japan Eyewearは、役員によるインサイダー取引の疑いについて外部の弁護士による調査を実施し(2025年2月21日開示「当社役員による当社株式の売買に関する件について」)、今回の開示と同じ2025年3月10日、その調査結果を開示している(「(開示事項の経過)当社役員による当社株式の売買に関する件について」)。 その「1.調査の結果」の記載は次のとおりである(一部省略)。 驚くべき点は、インサイダー取引を行った役員は、監査等委員である取締役であった、というものである。 同開示の「2.再発防止策」には、「本調査結果において、本役員が本株式取得を行うに至った原因は、インサイダー取引規制や当社社内規程についての本役員の理解不足に尽きるとの指摘がなされ」たという記載がある。 なぜ同社はそのような人物を取締役に、しかも監査等委員に選んだのだろうか。筆者の周囲にも、法律や会計をまったく知らないのに、上場会社の監査等委員に就任している方がいるが、就任している方も選んだ会社も、そのリスクを認識していないようである。   5 辞任勧告すべきでは 「(開示事項の経過)当社役員による当社株式の売買に関する件について」の「3.今後の対応等」には「本日、本役員から辞任の申出があり、これを受理いたしました」とある。インサイダー取引を行った監査等委員である取締役は、今回取り上げた開示において「一身上の都合」により辞任したとされる、監査等委員である取締役だったのである。 「(開示事項の経過)株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げに関連した内部管理体制に関する確認事項のお知らせ」の「2.今後の対応等」には、次のような記載がある(下線は筆者による)。 Japan Eyewearは、インサイダー取引を行った監査等委員である取締役が「一身上の都合」により辞任するのを認めるべきではなく、同氏に対して辞任勧告を行ったうえで「インサイダー取引を行ったことの責任をとって」辞任してもらうようにすべきだったのではないだろうか。それとも、そうした人物を監査等委員である取締役に選んでしまった自社の責任を感じているのだろうか。   6 性別掲載の意図に対する疑問 Japan Eyewearは、今回の開示の3日後の2025年3月13日、4月に開催される定時株主総会に付議する取締役候補者を開示している(「取締役候補者の選任及び執行役員の体制に関するお知らせ」)。 新任の監査等委員2名は弁護士と公認会計士であるため、今回の人選は問題ないかと思われるが、記載の仕方において気になる点がある。取締役候補者の性別まで記載されているのである。 役員候補者の性別まで記載する開示は珍しく、その開示を見た方の多くは違和感を覚えるのではないだろうか。これまで同社の取締役には女性がいなかったが、取締役候補者の中には女性が1名だけいる。同社は、新たに女性が取締役になることをアピールする意図でもあるのだろうか。 (了)

#No. 616(掲載号)
#鈴木 広樹
2025/04/24

《速報解説》 国税庁、「インボイスQ&A」を約1年ぶりに改訂~R7改正のリース税制の整備に伴い一部記載を見直し~

《速報解説》 国税庁、「インボイスQ&A」を約1年ぶりに改訂 ~R7改正のリース税制の整備に伴い一部記載を見直し~   Profession Journal編集部   令和7年4月21日付けで国税庁は、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(いわゆる「インボイスQ&A」)を約1年ぶりに改訂した。 今回追加された問答(全10問)は下記のとおり。 ただし、上記の10問はかねてより国税庁ホームページに公表されていたインボイスに関する資料である「多く寄せられるご質問(令和6年7月26日更新)」及び「インボイスの取扱いに関するご質問(令和7年2月25日更新)」に掲載された各問答を取り込んだものであり、新たに公表されたものではない。 また、追加問とは別に一部改訂された問答は全8問あり、注記や一部記載の見直しを行っているほか、海上運送法等の一部を改正する法律の施行に伴う記載の変更(問42)、令和6年度税制改正に係る記載の明確化(問106、問113)や令和7年度税制改正で行われたリース税制の整備に伴う記載の見直し(問40)などが行われている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2025/04/22

《速報解説》 JICPA、「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正案を公表~倫理規則改正に伴い記載及び関係様式を変更~

《速報解説》 JICPA、「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正案を公表 ~倫理規則改正に伴い記載及び関係様式を変更~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年4月21日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、倫理規則改正に伴う記載の変更などである。 意見募集期間は2025年5月21日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 次のとおりである(大きく変更している様式)。 (了)

#阿部 光成
2025/04/21

《速報解説》 会計士協会が「事後判明事実への対応に関する周知文書」を公表~要求事項等に従った事後判明事実への対応例を5つに区分して説明~

《速報解説》 会計士協会が「事後判明事実への対応に関する周知文書」を公表 ~要求事項等に従った事後判明事実への対応例を5つに区分して説明~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年4月17日、日本公認会計士協会は、「事後判明事実への対応に関する周知文書」(監査基準報告書560周知文書第1号)を公表した。 これは、事後判明事実への対応について、日本公認会計士協会の会員の理解に資するために公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 事後判明事実に関しては、「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する周知文書」(監査基準報告書705周知文書第2号)が公表されている。 しかしながら、「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する周知文書」では、進行年度につき意見不表明とした後において、十分かつ適切な監査証拠が入手できず、過年度の有価証券報告書等を訂正すべき内容が確定できない場合については取り扱っていなかった。 「事後判明事実への対応に関する周知文書」は、事後判明事実に関連する監査基準報告書560「後発事象」の要求事項を概説し、次のように、当該要求事項等に従った事後判明事実への対応例を5つに区分して説明している。 (了)

#阿部 光成
2025/04/17

プロフェッションジャーナル No.615が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年4月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.615を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/04/17

日本の企業税制 【第138回】「ガソリンの暫定税率をめぐる三党協議の行方」

日本の企業税制 【第138回】 「ガソリンの暫定税率をめぐる三党協議の行方」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部副本部長 魚住 康博   〇経緯 国会における「所得税法等の一部を改正する法律案」の審議が終盤に差し掛かった令和7年3月27日、自由民主党、公明党、日本維新の会による「ガソリンの暫定税率」に関する三党協議が開始された。 元々、令和7年度税制改正の議論が行われていた昨年12月、自由民主党、公明党、国民民主党の間で三党税調協議が進められ、12月11日には自公国幹事長同士による合意文書が作成されていた。そこでは、「いわゆる『ガソリンの暫定税率』は、廃止する」と明記されるとともに、「具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める」ことで合意に至っている。 ここでは、いわゆる「103万円の壁」の問題については令和8年から引き上げる旨が明記された一方で、「ガソリンの暫定税率」の廃止時期については記載されず、与党の令和7年度税制改正大綱では合意文書の引用に続いて、「自由民主党・公明党としては、引き続き、真摯に協議を行っていく」と記載された上で、自動車関係諸税の見直しについては、車体課税・燃料課税を含む総合的な観点から検討し、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげていく旨とともに、車体課税については令和8年度税制改正において結論を得ることとされていた。 【自由民主党・公明党・国民民主党の幹事長合意文書(2024年12月11日署名)】   〇自公国三党税調協議の再開 このように、「103万円の壁」と「ガソリンの暫定税率」の両論点ともに幹事長合意以上の具体策までは自公国の三党税調で年内合意に至らず、年明けに議論が持ち越されていた。令和7年2月4日には、第217回国会の閣法第1号議案として、与党税制改正大綱を踏まえた「所得税法等の一部を改正する法律案」が衆議院に提出され、税制改正法案と予算の年度内成立を目指す与党は野党の協力を得るために、2月18日から自公国の三党税調協議を再開した。 協議において、国民民主党としては、ガソリンの値段が上がることで手取りを減らし、生活を圧迫する要因になっている状況にあることから、「ガソリン税の暫定税率」について、時期を明示して、できるだけ早く暫定税率を廃止することを主張していた。一方で与党としては、仮に暫定税率を廃止した場合に、国と地方を合わせて約1.5兆円とも言われる財源の手当ても考慮する必要があることから、令和8年度税制改正の自動車関係諸税全体の見直しの議論の中で、あわせて「ガソリンの暫定税率」廃止に向けての課題や解決策を明確にしていくスタンスを維持していた。 その後、2月26日までの短期間で都合5回にわたる自公国三党税調協議が行われたものの、結果的には合意に至らず、今後も協議が継続されることとなった。   〇国会審議 他方、自公国の三党税調協議の中では、壁となる「103万円」を「160万円」に引き上げる修正案を公明党が提示し、これを自由民主党が了承することで3月4日に与党修正案が衆議院に提出された。その後、参議院での審議も経て、3月31日に与党修正案が国会で成立している。 なお、「ガソリンの暫定税率」について国会審議では、「揮発油税及び地方揮発油税の『当分の間税率』は廃止に向けた検討を速やかに行うとともに、その廃止に当たっては、流通への影響や関係事業者の事務負担等に配慮するとともに、国及び地方公共団体の財政に悪影響を及ぼすことがないよう、安定的な財源を確保するなど必要な措置を講ずるものとすること」との附帯決議が行われている。 【揮発油税等の税率と税収】   〇自公維三党協議 その背景として、与党修正案については、自民党と公明党だけでなく、日本維新の会が賛成したことにより、国会での成立に至った。予算を含めて年度内成立を目指した与党としては、国民民主党とは別に日本維新の会との交渉を重ねていた中、教育無償化や社会保険・社会保障改革に加えて、「ガソリンの暫定税率」についても自公維の協議体を設置し、3月27日から三党での協議を正式に開始している。 第1回の自公維三党協議には、自民党から森山裕幹事長、小野寺五典政調会長、宮沢洋一税調会長、後藤茂之税調小委員長、上野賢一郎議員が、公明党から西田実仁幹事長、岡本三成政調会長、赤羽一嘉税調会長、竹内譲税調副会長、杉久武税調事務局長が、日本維新の会から岩谷良平幹事長、青柳仁士政調会長、斎藤アレックス議員、萩原佳議員がそれぞれ参加した。日本維新の会では、責任ある野党として真摯に協議をするためとした上で、今夏を目途にした暫定税率の廃止を主張している。 4月11日には第2回の自公維三党協議が開催され、実務者による建設的な議論を行う主旨で、自民党から後藤税調小委員長と上野議員が、公明党から竹内税調副会長と杉税調事務局長が、日本維新の会から青柳政調会長と萩原議員がそれぞれ参加した。 協議後の与党による説明では、会合ではまず、「ガソリンの暫定税率」が制定された経緯や現状の問題のほか、ガソリンの価格高騰対策について、政府から説明が行われている。その上で三党による議論を行い、地方財政との関係、地球温暖化対策との関係、社会インフラ整備の財源確保の問題のほか、流通に与える影響に関して、手持ち品還付の問題と交付金の問題が検討すべき課題として整理された。 次回以降、これら5つの点について、政府から深く掘り下げた資料が提出される予定である。また、日本維新の会からは、課題についての党としての考え方、あるいは早期に暫定税率を引き下げていくことの可能性について提言が行われる予定である。ただし、当初、4月14日の週にも第3回協議が開催されるとされていたが、先延ばしになりそうな見込みである。 今夏に実施される参議院議員選挙を睨んで、今後も与野党の議論が活発化することが予想される一方で、米国による関税の問題に起因する市場の混乱への対処も含めて補正予算の必要性も指摘されており、今後の自公維三党協議の行方から目が離せない。 (了)

#No. 615(掲載号)
#魚住 康博
2025/04/17

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第71回】「法人名義の車両に係る使用料と経済的利益の供与」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第71回】 「法人名義の車両に係る使用料と経済的利益の供与」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 社用車の利用と経済的利益の供与 法人が所有する車両を法人の経営者やその家族がプライベートで使用していたことが、税務調査の場で調査官に指摘されたという話は、しばしば見聞するところである。 税務上の取扱いにおいては、法人が購入等した車両を当該役員らに無償で貸与していたという形となるため、役員に対する経済的利益の供与の有無を検討する必要がある(※1)。この点、実務上はこのような指摘がなされないよう、車両をプライベートで使用するのであれば適正な使用料を収受すべき、又は定期同額給与となるようにすべきである(法令69①二)と助言する場面となり、通常は所得税法施行令84条の2も念頭に置くべきである。 (※1) 役員に対する経済的利益の供与について【第9回】参照。 このような内容について示された裁決例があるので、以下にその概要を紹介する。   (2) 法人所有の車両を代表者の妻が使用していたことが経済的利益の供与とされた事例 このように示された例として、国税不服審判所平成24年11月1日裁決がある(※2)。 (※2) 裁決事例集89集208頁、TAINS:J89-3-12。 本件裁決例で認定された主な事実は、以下の通りである。 上記の点が決め手となり、「本件車両は代表の妻が専属的に利用していたと認められるところ、それは、代表が実質的経営者としての権限を利用して請求人が所有する本件車両を代表の妻に使用させていたと認めるのが相当である。そして、代表は、請求人に対し、本件車両関連費用に相当する金員の支払をしていないのであるから、本件車両は、請求人から代表に対して無償で貸与されていたと認められる」として、本件車両関連費用については役員給与に当たると示されている。そして、あん分取得価額、自動車保険料及び支払利息の額はいずれも継続的に供与される経済的な利益であるため定期同額給与とされたのに対し、自動車税等の額は継続的に供与される経済的な利益ではないため、その全額が損金の額に算入されないとされた。 なお、隠ぺい仮装行為性については否定されている。   (3) 本件裁決例の意義 (2)で確認した内容に加え、本件裁決例で注目すべきは、車両について、役員に対して継続的に供与される経済的利益の算定についてまで言及したことである。 示された具体的な内容は、以下の通りである。 これらをまとめると、 こそが、経済的利益の供与とされる額であると示している。 このような経済的利益の供与に関しては、税務上の定期同額給与となるという整理を行うことが、最も合理的であると考えられる。 法人が有する車両を役員が使用する場合には、このような整理ができるよう、継続性が認められるかどうか及び経済的利益の算定について注意したい。   (了)

#No. 615(掲載号)
#中尾 隼大
2025/04/17

相続税の実務問答 【第106回】「贈与税の期限後申告における配偶者控除及び住宅取得等資金贈与の特例の適用可否」

相続税の実務問答 【第106回】 「贈与税の期限後申告における配偶者控除及び住宅取得等資金贈与の特例の適用可否」   税理士 梶野 研二   [答] あなたは、贈与税の期限後申告において住宅取得等資金贈与の特例を適用することはできませんが、お母様については、期限後申告により配偶者控除の特例を適用することはできます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 住宅取得等資金贈与の特例 令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額(省エネ等住宅の場合には1,000万円、それ以外の住宅の場合には500万円)までの金額について、贈与税が非課税となります(措法70の2①②六)。 この特例を適用することができる者は、次の要件のすべてを満たす者です(措法70の2①②一)。 また、対象となる住宅用の家屋は、次に掲げる要件を満たすもので、日本国内にあるものに限られます(措法70の2②二・三・四、措令40の4の2②③④⑤⑥)。 この非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります(措法70の2⑭、措規23の5の2⑩)。 なお、この期間内に贈与税の申告書が提出されなかった場合に、救済をする宥恕規定は設けられていません。   2 配偶者控除の特例 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の申告をすることにより、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円のほかに、最高2,000万円まで控除(配偶者控除)することができます(相法21の6①)。 この特例の適用を受けるための要件は、次のとおりです。 この特例の適用を受けるためには、次に掲げる書類を添付して、贈与税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含みます)を提出するか、又は更正の請求書を提出する必要があります(相法21の6②、相規9)。 (※) 金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合、課税当局では、その居住用不動産の評価明細書を提出していただきたいと周知しています。 なお、上に掲げる書類の添付がない申告書又は更正の請求書の提出があった場合においても、その添付がなかったことについて「やむを得ない事情」があると税務署長が認めるときは、これらの書類が提出された場合に限って、配偶者控除の特例を適用することができることとされています(相法21の6③)。   3 申告期限の延長 災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができることとされています(通法11)。 この「やむを得ない理由」として、申告等をすることができなかったことに直接因果関係を有する事実で、例えば申告をする者の重傷病など自己の責めに帰さないやむを得ない事実が該当するとされています(通則法基本通達第11条関係1)。   4 ご質問の場合 お母様は、必要書類を添付した期限後申告書を提出することにより贈与税の配偶者控除の特例を適用することができます。 一方、あなたは、期限後申告において、住宅取得等資金贈与の特例を適用することはできません。 自主的に贈与税の期限後申告を行った場合には、算出された贈与税(本税)に加えて、原則としてその5%の無申告加算税が賦課され、また、本税の納付までの期間に対する延滞税を納める必要があります。 なお、一定のやむを得ない理由により期限内申告をすることができなかった場合には、申告書の提出期限を延長する制度がありますが、あなたの場合、申告の手続きを任せていたお父様が入院されたとしても、申告義務のあるあなた自身が税理士に依頼するなどして期限内申告をすることができたと認められますので、お父様の入院は、申告書の提出期限を延長することができる「やむを得ない理由」には当たらないと考えられます。 (了)

#No. 615(掲載号)
#梶野 研二
2025/04/17

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第69回】「「技術上の役務に対する料金」の該当性が問題となった事例(審裁令5.8.15)(その1)」~日印租税条約12条4項~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第69回】 「「技術上の役務に対する料金」の該当性が問題となった事例 (審裁令5.8.15)(その1)」 ~日印租税条約12条4項~   井上 眞一     1 はじめに わが国とインド共和国(以下「インド」という)の租税条約は、1960年に最初の「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とインドとの間の協定」(※1)が締結された。これは帰属主義を導入した最初の条約である。その後、1989年に「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本政府とインド政府との間の条約」(以下「日印租税条約」という)が締結された。 (※1) 「技術上の役務に対する料金」は1960年租税条約10条(k)に「企業に対して支払われる技術上の役務に対する料金は、その料金が支払われる役務が行われた締結国内の源泉から生ずる所得として取り扱う。」と既に記載されている。   2 本件の概要 本件は、わが国法人の審査請求人(以下「X社」という)が、インド所在企業のJ社、K社及びL社の各社に支払った金員について、原処分庁が、当該各支払金は、日印租税条約12条4項に規定する「技術上の役務に対する料金」にあたり、国内源泉所得に該当するとして、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ったことに対し、X社が、当該支払金の一部は「技術上の役務に対する料金」に該当しないなどとして、処分の一部取消しを求めた事案である。 (1) X社の主張とJ社、K社及びL社との関係 X社は、エレクトロニクス製品、電気製品、情報関連機器の企画、開発、輸出入、販売、設置、工事及び保守管理並びにアプリケーション・ソフトウエアの企画、開発等を目的とする会社である。 ① J社との関係 J社はリミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(以下「LLP」という)の企業形態であり、X社がJ社の出資持分の99.9%を保有している。主な業務はソフトウエア及びハードウエア製品の開発を行っている。X社の主張は次のとおりである。 ② K社との関係 K社はX社との間に資本関係を持たない。X社とK社の間で、平成31年(2019年)1月4日から契約の効力が生じる「〇〇〇〇Agreement」(以下「本件K社契約書」という) を作成し、「〇〇〇〇Platform」(以下「本件プラットフォーム」という)に関する契約(以下「本件K社契約」という)を締結している。X社は、本件K社契約に基づき金員を支払っている(以下、K社に支払った各金員を「本件K社支払金」という)。X社の主張は、次のとおりである。 ③ L社との関係 L社もX社との資本関係はなく、令和元年(2019年)7月11日「MASTER SERVICES AGREEMNT」(以下「本件L社契約書」という)を作成し、X社がL社に対して、ウェブサイト及びモバイルアプリの設計及び開発に関するサービスを依頼する旨の契約(以下「本件L社契約」という)を締結していた。L社に関する主張は次のとおりである。 〈日本企業とインド企業の業務委託形態〉 (ⅰ) 委託を受けたインド企業が、わが国国内に同社社員・雇用者又は契約した別会社の社員・雇用者を派遣して開発 (ⅱ) 委託を受けた外国企業が、その外国国内で同社社員・雇用者又は契約した別会社の社員・雇用者を派遣し、開発する場合 (2) 原処分庁の主張 原処分庁の主張は次のとおりである。 ① J社との関係 ② K社との関係 X社がK社に依頼した本件プラットフォームの開発はコンピュータ・プログラムに関して専門的な知識を有する技術者によって提供された役務である。日印租税条約12条4項に規定する「技術的性質の役務」であり、当該役務の対価である本件K社支払金は、「技術上の役務に対する料金」に該当する。 ③ L社との関係 X社のL社への依頼は、ウェブサイトの制作やモバイルアプリの開発の一部である。これらの役務はコンピュータ・プログラムに関して専門的な知識を有する技術者によって提供された役務で、当該役務の対価である本件各L社支払金は、「技術上の役務に対する料金」に該当する。 (3) 国税不服審判所(以下「審判所」という)の判断 ① J社との関係 X社とJ社との間には業務に関する契約はないが、X社とJ社の開発担当者は開発フローを共有し、両社開発担当者間で、工程ごとに細分化された業務の一部が割り振られ、協働でソフトウエアの開発作業を行っている。X社へのJ社請求書の適用項目が「ソフトウエア開発、製品開発に関するサービスの料金」と記載されている。その請求書明細には、各J社への支払金は、J社の各月に発生した給与、賃料、旅費交通費等の合計額に〇%の利益を加えた金額で算出している。 これらの事実から、X社とJ社は、X社の指揮管理で、協働でソフトウエア開発を行っている。X社とJ社との間でソフトウエア開発業務に係る役務提供に関する合意があり、ソフトウエア開発を事業目的とするJ社は、当該合意に基づきソフトウエア開発を行っている。 したがって、当該ソフトウエア開発に係る役務は、日印租税条約12条4項に規定する「技術的性質の役務」に該当する。J社は、インドLLP法上、別個の法的主体であるため、X社のインド支店とは認められないので、X社とJ社を一体としてみなすことはできない。両社間の契約書がないとしても、J社はソフトウエア開発に係る役務提供の合意が存在し、J社はこの合意に基づいてソフトウエア開発を行っている。X社とJ社は別個の法的主体であるため、J社社員はX社の雇用する者に該当しない。毎月のJ社支払額計算方法は、当該ソフトウエア開発業務に係る役務の算定方法であり、ソフトウエア開発業務に係る役務の対価として支払ったものと認められ、業務を委託した対価ではない。 ② K社との関係 X社とK社との間の契約書内容は、第1条:X社は、K社が独自に開発したソフトウエアを基にカスタマイズされたプラットフォームを開発するにあたり支援をK社に依頼した。第3条:本件プラットフォームは、X社及びK社を含む第三者がX社のために既に開発した(又は開発中及び開発予定の)ソフトウエア・コンポーネントとアルゴリズムで構成されている。本件プラットフォームは、X社又はその子会社、関連会社が所有し運営するものである。第4条a:本件契約書の付属書A及びBは、本件プラットフォームにおける「定義済み機能」の開発/カスタマイズについて、両当事者が相互に合意した包括的な作業範囲を記述している。当該付属書に定義されているものを超える追加/増分の作業範囲については、K社による実現可能性調査が必要となり、作業範囲に基づいて当事者が相互に合意する追加の費用と時間で実行されることに同意する。第8条5:K社は最終支払までにすべての「定義済み機能」を完成させる。第10条8:K社は本件プラットフォームが記載された機能仕様に適合することを表明し、保証する。業務範囲が完了し、かつ第8条による支払いを受けた時点で、K社は、本件プラットフォームに関するすべてのソフトウエアとソースコードを「現状のまま」譲渡し、K社は、当該ソフトに関する明示又は暗示の保証(商品責任又は特定目的への適合性を含むがこれに限らない)を一切行わない。また、契約書の付属書の内容において、付属書Aにはこれまでに開発された本件プラットフォーム及び平成30年(2018年)8月以降の新規開発要請、付属書Bには本件プラットフォームの基本機能が記載されている。X社とK社契約第1条、第3条、第4条aにより、付属書A及び付属書Bは、X社とK社との間で、本件プラットフォーム開発におけるK社の業務範囲を定めたものである。 さらに、第8条5でK社は、最終支払までに全ての「定義済み機能」を完成させることとされており、第10条8のとおり、当該支払を受けた時点で本件プラットフォームに関するすべてのソフトウエア等をX社に引き渡すこととされている。 上記により、本件プラットフォームの開発に関してK社が行った業務に係る役務は、日印租税条約12条4項に規定する「技術的性質の役務」に該当し、その対価として支払った本件各K社支払金は、「技術上の役務に対する料金」に該当する。また、X社は、当該支出はソフトウエアの譲渡対価であると主張する。しかしながら、本件K社契約は、X社がK社に対して、本件プラットフォームの開発支援を依頼し、K社が本件プラットフォームの開発に関して、定義された範囲の業務を全て完了させるものであって、本件プラットフォームに関するすべてのソフトウエア等をX社に引き渡す旨の条項があったとしても、当該業務に係る役務の対価である本件K社支払金は、ソフトウエア譲渡対価ではないことから、X社の主張には理由がないとされた。 ③ L社との関係 X社は、契約書前文第3条(※2)で、L社に対してウェブサイト及びモバイルアプリの設計・開発に関するサービスの提供を依頼している。依頼した具体的な内容は、①L社付属書「要求事項」(※3)から、L社がX社の要求を満たすようにインターフェースをデザインし、開発することを求められたものと認められる。また、②L社付属書「成果物」(※4)のとおり、これらは、いずれもウェブサイト又はモバイルアプリの作成過程で作成されるものであり、ウェブサイト又はモバイルアプリに関する技術及び知識がなければ作成しえないものと認められる。X社は、アプリケーション及びウェブサイト等の設計・開発サービス等をその専門的知識を使った役務をL社に依頼し、L社は合意し、当該役務を行った。したがって、その対価としての支払いは、日印租税条約12条4項に規定する「技術的性質の役務」に該当し、その対価として支払った本件各K社支払金は、「技術上の役務に対する料金」に該当する。 (※2) 前文第3条:X社は本件L社契約に基づき締結された付属書1に記載されている、ウェブサイトとモバイルアプリの設計及び開発に関するサービスの提供を受けるためにL社に打診した。 (※3) L社付属書「要求事項」:L社は、「ウェブサイトUX/UIデザイン及びフロントエンド開発」及び「モバイルアプリUX/UIデザイン」につき、X社と協働している。L社は、それが使いやすく、専門的、魅力的、かつ、X社のブランドビジョンに合致したものになるように、インターフェースをデザインし、開発する。 (※4) L社付属書「成果物」:タスクフロー、ワイヤーフレーム(ウェブ、モバイル)、UI画面(ウェブ、モバイル等)及びフロントエンド開発・HTML等である。 次に、請求人X社によれば、①L社に依頼した業務のうち、ウェブサイトの制作についてはX社の求める成果物の納品がなかったので、その対価を支払っていない。②当該支払金はウェブサイト等のデザインの対価であり、デザインはコンピュータ・プログラムとは無関係と主張する。しかしながら、裁決によれば、日印租税条約12条4項は、その範囲をプログラミング・サービスの提供に限定していないとX社の主張を否定した。 この結果、「本件各支払金は、いずれも日印租税条約第12条第4項に規定する『技術上の役務に対する料金』に該当する。」と審判所は結論した。 ((その2)へつづく)

#No. 615(掲載号)
#井上 眞一
2025/04/17
#