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《速報解説》 会計士協会、財務諸表等作成者にも資する「会社法計算書類等・有価証券報告書に関する表示のチェックリスト」の改正を公表

《速報解説》 会計士協会、財務諸表等作成者にも資する「会社法計算書類等・有価証券報告書に関する表示のチェックリスト」の改正を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年4月18日、日本公認会計士協会は次のものを公表した。 これは、会社法監査における計算書類(連結計算書類)及びその附属明細書の表示、金融商品取引法監査における財務諸表(連結財務諸表)の表示の確認を実施する際に、参考となるチェックリストである。 いずれの研究報告も監査事務所における利用を想定しているが、計算書類等及び財務諸表(連結財務諸表)の作成者も利用可能である。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「会社法計算書類等に関する表示のチェックリスト」は次の構成となっている。 「有価証券報告書に関する表示のチェックリスト」は次の構成となっている。 (了)

#阿部 光成
2024/04/18

プロフェッションジャーナル No.565が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年4月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.565を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/04/18

日本の企業税制 【第126回】「賃上げ促進税制の強化」

日本の企業税制 【第126回】 「賃上げ促進税制の強化」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   令和6年度税制改正に係る「所得税等の一部を改正する法律案」が3月28日、参議院本会議で可決成立し、3月30日に官報特別号外第28号にて公布された。 令和6年度税制改正では、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を上回る持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税・個人住民税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等が盛り込まれている。 連合(日本労働組合総連合会)が4月4日に発表した2024年春闘の中間回答集計(第3回)によると、基本給を底上げするベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率(2,620組合の加重平均)は5.24%(月額1万6,037円)となり、昨年同時期比4,923円増・1.54ポイント増で、過去の最終集計に比べ33年ぶりの高水準を維持した。このうち、組合員300人未満の中小組合(1,600組合)の加重平均においても1万2,097円・4.69%(昨年同時期比3,543円増・1.27ポイント増)となった。 今回の税制改正が、令和7年以降の構造的な賃上げの後押しとなることが期待される。   〇賃上げ促進税制の強化 従来の制度では、大企業については、賃上げ率が3%(控除率15%)、4%(同25%)の2段階の設定であったところ、新たに賃上げ率5%と7%のカテゴリーが追加されるとともに従来の賃上げ率の区分の控除率が見直され、賃上げ率3%(控除率10%)、4%(同15%)、5%(同20%)、7%(同25%)の4段階となった。併せて、プラチナくるみん認定又はプラチナえるぼし認定を取得した企業には上乗せ措置(控除率5%)が新設され、従来の教育訓練費に係る上乗せ措置(同5%)と合計で控除率10%の上乗せとなる。 従来、資本金1億円以下の中小企業と1億円超の大企業の2区分であったところ、新たに中堅企業(「特定法人」:常時使用従業員2,000人以下)のカテゴリーが設けられ、これまでの大企業が、中堅企業と中堅企業以外の大企業の2つのカテゴリーに分けられた。 中堅企業に対しては、賃上げ率3%(控除率10%)、4%(同25%)の2段階の措置が講じられるとともに、大企業と同様に、教育訓練費に係る上乗せ措置(控除率5%)とプラチナくるみん認定又はえるぼし認定(3段階目以上)に係る上乗せ措置(同5%)も講じられた。 賃上げ促進税制では、従来の大法人(資本金1億円超)の中でも特に大規模な企業(事業年度終了時において資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上)を対象に、マルチステークホルダー方針の公表が要件とされていた。令和6年度税制改正では、中堅企業のカテゴリーの創設に伴い、マルチステークホルダー方針の公表が要件となる企業の範囲が拡大され、事業年度終了時における常時使用従業員2,000人超の企業が追加された。 なお、マルチステークホルダー方針として掲げるべき事項については、経済産業大臣等の告示により定められているが、今回の与党の税制改正大綱においては、「インボイス制度の実施に伴い、消費税の免税事業者との適切な関係の構築の方針」についても盛り込むことが指摘されており、この告示の改正も見込まれるところである。 中小企業(資本金1億円以下)には、くるみん認定又はえるぼし認定(2段階目以上)に係る上乗せ措置(控除率5%)と、欠損法人が6割を占めることを背景に、控除限度超過額の5年繰越控除が設けられた。   〇労務費の適切な転嫁 中小企業も含めた賃上げが進む中、この傾向が構造的なものとなるには、労務費の適切な取引価格への転嫁が円滑になされることが不可欠となる。昨年11月29日に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(以下「労務費の指針」)が政府から公表されており、公正取引委員会は、3月15日、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据置き等が確認された10社について、独占禁止法43条の規定に基づき事業者名を公表した。 また、4月1日には、上記の「労務費の指針」を踏まえ、下請法上の買いたたきの解釈・考え方が更に明確になるよう、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正案を公表した。 具体的には、下請法上禁止されている買いたたきとは「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」とされており、この「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額」に該当するものとして、「主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた下請代金の額」を明示し、労務費等のコスト上昇局面では取引価格の据置きも買いたたきに該当することが明確化されている。 一方、中小企業庁も、上記の「労務費の指針」を踏まえ、3月25日、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」を改正・施行した。改正された振興基準では、親事業者と下請事業者の双方に対し、同指針の内容を踏まえて価格協議を行うよう求めるとともに、原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、コスト増加分を取引価格に全額転嫁することを目指すことなどが追加された。 これに併せて、同日、経済産業省では、「パートナーシップ構築宣言」のひな形の改正を公表した。具体的には、「価格決定方法」に関して、「下請事業者と少なくとも年に1回以上の協議を行う」旨記載を修正するとともに、①「労務費の指針」に掲げられた行動を適切にとった上で取引対価を決定すること、②原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合に適切なコスト増加分の全額転嫁を目指すこと、が追加された。   〇マルチステークホルダー方針に係る様式の改定 上記のように、一定の規模以上の企業が賃上げ促進税制の適用を受けるには、適用事業年度終了の日の翌日から45日を経過する日までに、マルチステークホルダー方針を作成し自社HPに公表した上で、その公表した旨を経済産業大臣に届け出なければならない。 つまり、本年の場合、3月決算の会社は、5月15日までにHP上での公表と経済産業省への届出を済ませなければならない。届出に不備がない場合、届出は受理され、届出の受理後、経済産業省から発出(本年3月28日からGビズフォームによるオンライン送付開始)される受理通知書の写しを確定申告書に添付することとされている。 マルチステークホルダー方針、届出書、受理通知書については、それぞれ様式第一、様式第二、様式第三が定められており、本年3月28日に様式の改定が行われたところである。特に、マルチステークホルダー方針の記載内容に係る様式第一では、「賃金の引上げ」「教育訓練等」に関する具体的な内容の記載が必須であることについて明確化が図られている。 また、従来から、パートナーシップ構築宣言のURLの記載が必須とされているところ、上記のように本年3月25日付けでパートナーシップ構築宣言のひな形が改正されているが、旧ひな形、新ひな形ともに有効である。 今回の様式の改定は、令和5年度に係る申告にも適用されるが、マルチステークホルダー方針(様式第一)を本年5月31日までに公表する場合には、旧様式の使用も可能とされている。一方、経済産業大臣への届出書(様式第二)については新様式の使用が求められている点に注意が必要である。 (了)

#No. 565(掲載号)
#小畑 良晴
2024/04/18

相続税の実務問答 【第94回】「相続税の申告期限前に土地建物が被災した場合」

相続税の実務問答 【第94回】 「相続税の申告期限前に土地建物が被災した場合」   税理士 梶野 研二   [答] 特定土地等に該当するU町の土地については、令和6年分の路線価又は評価倍率に、今後公表されると見込まれる「調整率」を乗じたものを令和5年分の路線価又は評価倍率として評価することができます。 また、液状化現象による土地の被害及び液状化現象に伴い建物が傾いた被害については、災害減免法第6条の要件を満たせば、原状回復費用の見積額(保険金、損害賠償金等により補填された金額を除きます)の100分の80に相当する金額をもって被害を受けた部分の価額とし、この金額を上記により評価した額から控除した残額を、相続により取得した土地の価額及び建物の価額として相続税の課税価格の計算をすることができます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 特定非常災害に係る特例措置 (1) 評価の原則 相続や遺贈により取得した財産の価額は、相続開始時の時価によることとされています(相法22)。相続や遺贈により取得した財産が、その後に滅失若しくは毀損し、あるいは経済環境の変化により価額が下落したとしても、相続開始時の時価により相続税の課税価格の計算をすることに変わりはありません。 (2) 特定非常災害により特定土地等又は特定株式等の価額が下落した場合の特例 特定非常災害の発生日の前に相続又は遺贈によって財産を取得した場合で、相続税法第27条第1項に定める相続税の申告書の提出期限が当該特定非常災害の発生日以後であるときには、災害発生日に所有していた特定土地等又は特定株式等の価額について、上記の原則に関わらず特定非常災害の発生直後の価額により相続税の課税価格の計算をすることができる特例措置(以下「特定非常災害に係る特例措置」といいます)が設けられています(措法69の6①)。 特定土地等の「特定非常災害の発生直後の価額」とは、当該特定土地等(当該特定土地等の上にある不動産を含みます)の状況が特定非常災害の発生直後も引き続き相続や遺贈により取得した時の現況にあったものとみなして、特定非常災害の発生直後における当該特定土地等の価額として評価した額に相当する金額とされています(措令40の2の3③一)。つまり、特定土地等について、課税時期から特定非常災害の発生直後までの間に区画形質の変更や権利関係の異動等があった場合でも、これらの事由は考慮しません(措通69の6・69の7共-2)。 特定土地等の特定非常災害発生日後の価額については、国税局長(沖縄国税事務所長を含みます)が不動産鑑定士等の意見を基として特定地域内の一定の地域ごとに特定土地等の特定非常災害の発生直後の価額を算出するための率(以下「調整率」といいます)を別途定めている場合には、特定非常災害発生日の属する年分の財産評価基本通達14《路線価》に定める路線価及び同21-2《倍率方式による評価》に定める評価倍率に調整率を乗じたものを課税時期の属する年分の路線価及び評価倍率として評価することができるものとされます(措通69の6・69の7共-2なお書き)。 令和6年能登半島地震に係る特定土地等についても、これまでの特定非常災害のケースと同様に、「調整率」が定められるものと思われます。 (注) 特定非常災害、特定地域、特定土地等及び特定株式等の意義については、「【第93回】 相続財産の中に特定非常災害の区域内の土地がある場合の相続税の申告期限」を参照してください。   2 災害減免法の規定 特定非常災害により地割れ、崩落、液状化現象等が生じたことによって、土地そのものの形状が変わったことによる被害、換言すれば、物理的な損失が生じ、その結果、当該土地の価額が下落することとなった場合には、当該被害に起因する価額の下落については、上記(2)の特定非常災害に係る特例措置は適用されません。 しかしながら、一定の要件に該当するときには、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(以下「災害減免法」といいます)第6条《相続税又は贈与税の計算》の規定により、被害を受けた土地等の価額の計算上、被害を受けた部分の価額を控除することができる相続税の減免措置の対象となります。なお、建物などの土地等及び一定の株式等以外の財産については特定非常災害に係る特例措置の対象とはされていませんが、災害減免法第6条は、災害により被害を受けた建物などの財産についても適用されます。 災害減免法第6条に定める「一定の要件に該当するとき」とは、次のいずれかに該当する場合をいいます(災害減免法施行令12①)。 なお、「被害を受けた部分の価額」については、物理的な損失に係る原状回復費用の見積額(保険金、損害賠償金等により補填された金額を除きます)の100分の80に相当する金額とすることができます(「平成30年1月15日資産評価企画官情報第1号「特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例(措置法69の6)並びに特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例(措置法69の7)に規定する特定土地等及び特定株式等の評価に関する質疑応答事例集」の送付について(情報)」Q2)。 (注) 上記の災害減免法の規定による救済措置は、特定非常災害に係る特定地域以外の地域に所在する土地等や建物等についても適用することができます。なお、物理的な損失が生じた特定土地等について、災害減免法第6条と特定非常災害に係る特例措置の両方が適用される場合があります。この場合には、特定非常災害に係る特例措置を適用して特定非常災害発生日の属する年分の路線価及び評価倍率に「調整率」を乗じたものを基に計算した当該特定土地等の価額から、災害減免法第6条に定める「被害を受けた部分の価額」を控除した額が、その特定土地等に係る相続税及び贈与税の課税価格に算入すべき価額となります。   3 ご質問の場合 お父様が亡くなられたことによる相続税の申告書の相続税法第27条の規定による申告期限は、令和6年6月10日でしたが、令和6年能登半島地震は、その申告期限前である令和6年1月1日に発生し、あなたがお父様から相続した土地や建物に被害が生じたとのことです。 石川県は、特定非常災害である令和6年能登半島地震の特定地域に該当します。したがって、あなたが相続により取得したU町のご実家の土地は特定土地等に該当しますので、今後、公表されると見込まれる「調整率」を令和6年分の路線価又は評価倍率に乗じたものをお父様の相続開始日の属する令和5年分の路線価及び評価倍率として評価することができます。ただし、特定地域内に所在する土地のすべてについて、調整率が1未満とされるわけではないことにご留意ください。 また、液状化現象が生じたことによる土地の被害及び液状化現象に伴い建物が傾いた被害については、災害減免法第6条の要件を満たせば、原状回復費用の見積額(保険金、損害賠償金等により補填された金額を除きます)の100分の80に相当する金額をもって被害を受けた部分の価額とし、この金額を控除した金額を相続により取得した土地の価額及び建物の価額として相続税の課税価格の計算をすることができます。災害減免法第6条の要件を満たすかどうかについては、「災害減免法第6条の規定による相続税・贈与税の財産の価額の計算明細書」に所定の記載をすることにより判定することができます。 なお、相続税の申告書は、相続税法の規定上は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に提出しなければなりませんが、前回説明しましたように、租税特別措置法第69条の6第1項及び国税通則法第11条の規定により提出期限が延長されています。 (了)

#No. 565(掲載号)
#梶野 研二
2024/04/18

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第60回】「株主総会決議の不存在と役員報酬の返還に係る源泉徴収税額の取扱い」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第60回】 「株主総会決議の不存在と役員報酬の返還に係る源泉徴収税額の取扱い」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 過大徴収された源泉徴収税額について、源泉徴収義務者である法人が国に請求できると示された事例 このように示された事例として、国税不服審判所令和5年4月12日裁決があるため(※1)、以下にその概要を紹介する。 (※1) 裁決事例集131集36頁、TAINS:J131-1-02。 本件は、当該法人の株主が、役員報酬額を増額した株主総会決議不存在確認の訴え等を裁判所に提起したことに端を発する。当該株主総会決議不存在確認請求訴訟では、株主総会決議がいずれも存在しなかったという事実を相互に確認する旨の和解が成立した。 これを受け、当該法人は納税者に対し、当該和解内容を基に、納税者が受領した役員報酬額について、不当利得返還請求訴訟を提起した。結果、その請求が認められ、納税者は本件役員給与の返還を命ずる判決を言い渡され、その後確定したという背景となっている。 納税者は本件について、「役員給与が減額された一方で源泉徴収税額が減額されていないことにより過大となってい」たことから、「過大となった源泉徴収税額について、当該法人に対しその返還を求めたが、当該法人はこれに応じ」なかったことに加え、課税庁に対して「『源泉徴収票不交付の届出書』を提出するとともに当該法人に対する行政指導を求めたが是正には至らなかった」とした。 そして、「源泉徴収義務者が源泉徴収税額の精算をしない場合は、給与の受給者が源泉徴収義務者に対して支払った源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、所得税法第120条第1項第5号の『源泉徴収された又はされるべき所得税の額』は、実際に源泉徴収された所得税等の額と解するのが相当であ」り、納税者が「提出した本件各当初申告書に記載した課税標準等又は税額等の計算は、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときに該当する」等と主張した。 これに対し裁判所は納税者の主張を退けているが、最高裁平成4年2月18日判決を引用し(※2)、当該法人が当該誤納金の還付の主体となる旨を示し、かつ納税者は当該法人に対し、誤って徴収された金額の支払を直接に請求することになるとしている。 (※2) 民集46巻2号77頁、TAINS:Z188-6849。   (2) 株主総会決議不存在確認の訴えに関連する税務上の問題 本件は、【第8回】にて紹介した、源泉徴収税額に過誤納があった場合の救済手段の内容について、国税不服審判所が示したものだといえる。なお、本件が示された後、当該法人が国税通則法56条による過誤納還付請求を行ったかどうかは不明であるが、仮に請求を行った場合、例外的な過納原因に該当し(※3)、還付を受けることが可能であると考えられる。 (※3) 志場喜徳郎他編『国税通則法精解 第十六版』(大蔵財務協会、2019)635頁。 さらに、納税者の主張より、法人が返還に応じていないのが事実であれば、法人を主体とした還付を受けることができたかどうかはさておき、代表取締役であった個人と当該法人とで民事上の問題に移行することとなるだろう。この場合においては、当該法人は、納税者から役員報酬の返還を受けた際、源泉徴収税額部分を精算する形を取るべきだったのだろうと思われる。 また、本件では、納税者自身が更正の請求ができるか否かが争点であったため、法人税の所得計算上、当該役員給与の損金算入ができるかどうかについて言及されていない。この点、【第8回】でも触れたように、当該役員給与の損金算入の是非についても疑問は生じるところである。この点、興味深い事例として、東京地裁平成29年3月10日判決がある(※4)。 (※4) 税務訴訟資料267号順号12994、TAINS:Z267-12994。この事例は控訴されているが、高裁は地裁判断を支持している。 この事例は、法人の役員選任について、別件訴訟にて株主総会決議不存在確認請求及び株主の地位確認請求がなされつつ、役員が職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分を受けていたところ、裁判所は、当該別件訴訟について株主総会決議不存在確認請求を認める一方、株主の地位確認請求は棄却する判断を示したことから、別途改めて株主総会決議等を開催し、1人株主が代表取締役に就任したというものであり、当該代表取締役に対する役員給与の損金算入の可否が争点となっている。 裁判所は、別件訴訟が確定するまでは役員らの職務の執行は停止されていたものであることに注目し、その期間は取締役としての業務に従事することはできなかったために、債務として成立していない等として、法人税法22条3項を根拠に役員給与の損金算入を否定している。 この事例からは、取締役としての職務に従事することが法的に不可能な場合、債務確定主義を理由とした役員給与の損金算入性が否定され得ることが分かる。(1)で取り上げた本件事例は、役員報酬の増額に関して株主総会決議不存在確認訴訟がなされたが、仮に役員の選任について同様の訴訟がなされていた場合においては、役員給与の損金算入性が揺らぐことになる可能性は否定できないと思われる。   (了)

#No. 565(掲載号)
#中尾 隼大
2024/04/18

基礎から身につく組織再編税制 【第63回】「株式移転の概要」

基礎から身につく組織再編税制 【第63回】 「株式移転の概要」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   前回までは「株式交換」について解説してきましたが、今回からは組織再編税制における「株式移転」について解説していきます。まずは「株式移転」に関する基本的な考え方を解説します。   1 株式移転の概要 株式移転とは、会社がその発行済株式の全部を新設する会社に取得させることをいいます(会社法2三十二)。 (※1) 「株式移転完全親法人」とは、株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得したその株式移転により設立された法人をいいます(法法2十二の六の六)。 (※2) 「株式移転完全子法人」とは、株式移転によりその株主の有する株式をその株式移転により設立された法人に取得させたその株式を発行した法人をいいます(法法2十二の六の五)。   2 株式移転の課税関係 株式移転に係る課税関係を非適格・適格ごとに表にまとめると、次のようになります。 なお、今回は株式移転の課税関係のイメージを持っていただくことを目的としているため、現時点で下記の表をすべて理解する必要はありません。 株式移転完全親法人、株式移転完全子法人、株式移転完全子法人の株主の課税上の取扱いの詳細については、次回以降で説明したいと思います。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 【株式移転完全親法人の処理イメージ】 ① 非適格株式移転 ② 適格株式移転 ◆株式移転の概要のポイント◆ 株式移転があった場合には、原則として株式移転完全子法人の資産について時価評価が必要となります。 株式移転があった場合には、原則として株式移転完全親法人は、株式移転完全子法人の株式を時価で取得したものとして取り扱います。 特例として適格株式移転の場合には、株式移転完全子法人への時価評価課税はなく、株式移転完全親法人の株式移転完全子法人株式の取得価額は、株式移転完全子法人の株主の簿価を引き継ぎます。 株式移転があった場合には、株式移転完全子法人の株主にみなし配当は生じず、金銭等の交付の有無により譲渡損益を認識します。   (了)

#No. 565(掲載号)
#川瀬 裕太
2024/04/18

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第43回】「ヤオハン・ファイナンス事件(地判平7.11.9、高判平8.6.19、最判平9.9.12)(その1)」~租税特別措置法66条の6第3項~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第43回】 「ヤオハン・ファイナンス事件 (地判平7.11.9、高判平8.6.19、最判平9.9.12) (その1)」 ~租税特別措置法66条の6第3項~   税理士 松田 祐弥     1 事件の概要 X社は、平成元年3月末現在、いわゆる軽課税国等の指定を受けていた香港に所在するHXF社の発行株式のすべてを直接保有していた。HXF社は、租税特別措置法(以下「措置法」という) 66条の6(当時)に規定するX社に係る特定外国子会社等に該当する。 また、X社は、当時香港に所在するHX社の発行済株式数の33.4%をHXF社を通じて間接保有していた。さらにHX社の発行済株式数の33.3%を内国法人であるXJ社(X社の100%親会社)が保有しており、HX社はX社に係る特定外国子会社等に該当する。なお、HX社は株式の保有を主たる事業とし、デパート業を営むHXD社(独立企業の実態あり)の発行済株式数の100%を所有している。 〈資本関係図〉 X社は、平成元年5月21日から同2年5月20日までの事業年度(以下「本件係争年度」という)分法人税について、所得金額を4,947万円余として確定申告した。これに対し、Y税務署長は措置法66条の6の規定により、特定外国子会社等の課税対象留保金額3億2,744万円余(HXF社分1億7,099万円余、HX社分1億5,640万円余)を所得金額に加算する更正処分等(以下「本件課税処分」という)をした。X社は、HX社の主たる事業はグループ企業に対する金融貸付業であるから本件課税処分は違法であるとして、審査請求を経て本訴を提起した。 本訴においてはHXF社及びHX社の主たる事業がいずれも「株式の保有」であるから措置法66条の6第1項に規定する内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金不算入(以下「タックス・ヘイブン課税」という)の適用除外を定める同条3項の非持分会社基準に該当しないとしてなされた本件課税処分の適否が争われた(なお、HX社については、主たる事業が株式の保有であることに当事者間に争いはない)。   2 タックス・ヘイブン対策税制 わが国のタックス・ヘイブン対策税制は、昭和53年度税制改正によって創設された(※1)。タックス・ヘイブン対策税制の創設前は、タックス・ヘイブンを利用する租税回避に対して、法人税法11条の実質所得者課税の規定により、それを適用しうる範囲において規制してきたが、この規定の適用に当たっての実質帰属の具体的な判定基準が明示されていないため、執行面での安定性に必ずしも問題なしとしない面があった。このため、租税法律主義を堅持しつつ課税の執行の安定性を確保するという観点からも、租税回避対策のための明文規定の整備が強く要請されていた(※2)。 (※1) 創設の背景として、昭和50年6月の「多国籍企業等国際経済に関する件」と題する衆議院外務委員会決議における「企業が諸制度の不備に乗じ納税回避を図るが如き事態の出現をあらかじめ防止するため、納税を怠ったり、租税回避地に逃避したりする企業に対する有効な規制措置を検討すること」という勧告、及び同年9月のOECD「租税回避および脱税に関する理事会勧告」の存在がある。 (※2) 『昭和53年版 改正税法のすべて』大蔵財務協会(1978年)157頁 ◆法人税法11条(実質所得者課税の原則 ) タックス・ヘイブン対策税制の基本的な考え方が示された昭和53年度の税制改正に関する答申は、まず、同税制創設の必要性について次のように述べている。 上記答申は、創設するタックス・ヘイブン対策税制の概要について、次のとおり説明している。 (ロ)について、創設されたタックス・ヘイブン対策税制の下で、当初の軽課税国として、香港を含む27の国又は地域が、昭和53年3月31日付大蔵省告示38号により示された(ブラックリスト方式)(※3)。 (※3) 租税回避に利用される税制上の措置を講ずる国や地域が続出し、諸外国の税制改正の動向を適時適切に把握し対応することが非常に困難となったことから、平成4年度税制改正により、ブラックリスト方式は廃止された。同改正の結果、外国関係会社が「特定外国子会社等」に該当するか否かの判定は、個々の法人ごとに、各事業年度の所得に対して課される租税の額がその所得金額のトリガー税率(当初25%)以下であるか否かを基準に行うこととなった。 また、(ニ)は、タックス・ヘイブン対策税制の適用除外が認められるための基準(適用除外基準)の概要であるが、立法担当者によれば、この適用除外を設けた背景にある基本的な考え方は次のとおりである(※4)。 (※4) 高橋元監修『タックス・ヘイブン対策税制の解説』清文社(1979年)129頁 具体的な適用除外基準は以下のとおりであり(※5)、全てを満たす場合はタックス・ヘイブン対策税制の対象外となる。つまり、経済的実態として、特定外国子会社等が所在地国において自身の管理下で中身のある事業を行っている場合には、当該特定外国子会社等の所得全体を合算課税の対象としない。 (※5) 措置法66条の6第3項 〈タックス・ヘイブン対策税制の適用フローチャート〉   3 争点 本件は、HXF社及びHX社の1989年3月期における主たる事業が、措置法66条の6第3項のタックス・ヘイブン課税の適用除外の対象とならない「株式の保有」に該当するか否かについて争われた。   4 当事者の主張 (1) Xの主張 (2) Yの主張 ((その2)へ続く)

#No. 565(掲載号)
#松田 祐弥
2024/04/18

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第1回】「“脱炭素”の流れ・・・中小企業にも関係があるの?」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第1回】 「“脱炭素”の流れ・・・中小企業にも関係があるの?」   公認会計士 石王丸 香菜子   ● ● ● はじめに ● ● ● 「脱炭素」「カーボンニュートラル」「GX」「気候変動」・・・昨今、こうしたキーワードを日常的に見かけるようになりました。書店に寄れば関連書籍がズラリと並び、ウェブでこれらのキーワードを検索すれば途方もない数のサイトが候補に挙がります。 書籍やウェブサイトに目を通したものの、専門用語やアルファベットの渦に飲み込まれて、途中で挫折・・・、という経験がある方もいるかもしれませんね。 “脱炭素”に向けた動きは世界規模で加速しています。 大規模なグローバル企業は脱炭素経営を本格化させており、気候変動に関連した情報開示にも積極的です。一方、中小規模の企業、なかでも経理部のような間接部門では、日々の業務で脱炭素を強く意識することは少ないでしょう。しかし、さまざまな理由から、経理部でも脱炭素重視の時流と無関係ではいられない状況になりつつあります。 本連載は、経理部の方を主な対象に、脱炭素に関連する知識などを基礎から無理なく身に付けていただくことを目指します。 それでは、さっそくPNパッケージ社の経理部をのぞいてみましょう。 *  *  * 〔PNパッケージ社の登場人物〕 ・・・翌日・・・ *  *  * 「――世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする――」 2015年にパリで開かれたCOP21(※1)において合意された世界共通目標です。このために、「できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる」ことが示されています。2021年のCOP26では、パリ協定で「努力」目標とされた1.5℃が、事実上の共通目標に格上げされています。 (※1) COP:国連気候変動枠組条約締約国会議。第21回会議をCOP21と表記する。 脱炭素の実現に向けて年限付きのカーボンニュートラルの実現を表明している国・地域の数は、150以上(※2)。日本も、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること、すなわち、カーボンニュートラルを宣言し、それを推進するためのさまざまな施策を打ち出しています。 (※2) 2022年10月時点。 *  *  * *  *  * 脱炭素という目標に向かって、社会のしくみは大きく変わりつつあります。 たとえば、国内のCO2(二酸化炭素)排出量の15%程度(※3)を占める運輸部門の脱炭素化は課題の1つです。運輸部門のCO2排出量はその多くが自動車由来であり、政府は「2035年にはすべての新車を電動車にする」という目標を掲げています。自動車産業は、大転換期の真っただ中にあります。 (※3) 経済産業省資源エネルギー庁「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)」第1部第3章第2節 さまざまな規制が強化される一方、脱炭素を後押しするための支援策や優遇措置が次々に打ち出されています。こうした政策の恩恵を享受できれば、企業にとっては追い風です。 *  *  * *  *  * 1990年代後半から2010年頃までに生まれたいわゆる「Z世代」は、特に環境への関心が高い世代です。気候変動対策の必要性を訴える活動を続けて有名となったグレタ・トゥーンベリさんも、Z世代の1人ですね。 こうした若い世代が消費者層の中核に移行するにつれ、消費者ニーズの変化が一層顕著になっていくことは想像に難くありません。企業は、直接的あるいは間接的に、消費者のニーズに合わせて事業を展開する必要に迫られています。 *  *  * *  *  * グローバルに活動を行う大企業を中心に、脱炭素経営への取組みが急速に広まっています。たとえば、花王(株)は、事業活動に伴い排出されるCO2を2040年までにゼロにし、さらに2050年までのカーボンネガティブ(※4)をめざしており、2021年には国内のロジスティクス拠点などで使用電力100%再生エネルギー化を実現しています(※5)。 (※4) カーボンネガティブ:CO2排出量<CO2吸収量の状態。CO2排出量=CO2吸収量を意味するカーボンニュートラルよりさらに望ましい。 (※5) 花王株式会社「2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現に向けた活動を加速」 大企業が積極的に脱炭素経営に取り組む背景の1つには、機関投資家からの要請があります。 各種の保険会社や年金基金などの機関投資家は、長期的な時間軸で企業への投資を行っています。すなわち、投資先である企業に対し、短期的な利益の追求よりも、中長期的な企業価値の向上を求めているのです。 巨額の資金を分散投資するため、個々の投資先の利益だけでなく、気候変動が経済や金融市場全体に及ぼす影響にもフォーカスしています。化石燃料産業などからの投資撤退(ダイベストメント)の動きがあるのも、こうした理由によります。 【企業経営への影響】 *  *  * *  *  * 大企業は、多くの中小企業とサプライチェーンでつながっています。こうした大企業がCO2排出量を減らすには、自社内で削減するだけでなく、サプライチェーン全体での排出量を減らす必要があるのです。 【サプライチェーン全体で排出量を把握・削減】 そこで、サプライヤーに対して排出量のデータ把握や削減の取組みを求める大企業が増えています。たとえば、本田技研工業(株)は、サプライヤー各社と協働してCO2排出総量削減に向けた取組みを進めており、サプライヤーのCO2排出量低減に関わるデータを一元的に管理するシステムを運用しています(※6)。 (※6) 本田技研工業株式会社「Honda Sustainability Report 2022」P149 *  *  * *  *  * 大企業では、サステナビリティ関連の部署やチームを設け、脱炭素に向けた対応や情報開示についてもこうした部署などが専念する体制が増えています。 一方、中小規模の企業では、専門の部署や担当者を設けるのは難しいことが多いと考えられます。従来は存在しなかった業務なので担当部署が明確ではありませんが、社内の情報を横断的に収集しやすいこと、取引先との窓口として機能しやすいことなどを踏まえれば、経理部がその業務の一端を担う可能性が高いでしょう。脱炭素に向けた取組みを後押しするための補助金や税制上の優遇措置などを利用したい場合も、経理部にバトンが回ってくるはずです。 *  *  * *  *  * Q “脱炭素”の流れ・・・中小企業にも関係があるの? A 脱炭素の流れは企業を取り巻く環境そのものを変えています。中小企業も、脱炭素の視点を織り込んだ経営判断や脱炭素に向けた取組みが求められる局面が増えています。 (了)

#No. 565(掲載号)
#石王丸 香菜子
2024/04/18

〔まとめて確認〕会計情報の四半期速報解説 【2024年4月】期末決算(2024年3月31日)

〔まとめて確認〕 会計情報の四半期速報解説 【2024年4月】 期末決算(2024年3月31日)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 3月決算会社を想定し、期末決算(2024年3月31日)に関連する速報解説のポイントについて、改めて紹介する。基本的に2024年1月1日から3月31日までに公開した速報解説を対象としている。 公開草案及び適用時期が将来のものは、基本的に記載の対象外としている。 期末決算でも、すでに公表した四半期決算に関連する速報解説に引き続き注意する必要がある。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 会計関係 企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会は、次のものを公表している。 ① 改正実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(内容:グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いを定めるもの) ② 実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等(内容:グローバル・ミニマム課税について、法人税及び地方法人税の会計処理及び開示の取扱いを示すもの。補足文書がある。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用) ③ 改正企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」及び改正企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(内容:いわゆるパーシャルスピンオフの会計処理を取り扱うもの) ④ 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正(内容:③に関連していわゆるパーシャルスピンオフの会計処理を取り扱うもの)   Ⅲ 金融商品取引法関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2023」の公表(サステナビリティに関する考え方及び取組の開示)(内容:有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の開示に関する好事例を紹介するもの) ② 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第14号)(内容:「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(実務対応報告第45号)等を受けたもの) ③ 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第16号)(内容:有価証券届出書における個人情報の記載の見直しを行うもの) ④ 「記述情報の開示の好事例集2023」の更新(内容:「コーポレート・ガバナンスの概要」等の項目の追加など)   Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 品質管理基準報告書第1号実務ガイダンス第4号「監査事務所における品質管理に関するツール (実務ガイダンス)」の改正の公表について(内容:品質管理システムの評価に当たっての具体的な手順や文書等について検討したもの) ② 監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」に伴う監査基準報告書等の改正の公表について(内容:監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023年1月12日改正)に伴って、監査基準報告書580「経営者確認書」などを改正するもの。原則として、2024年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する)   Ⅴ 過年度に公表されている会計基準等 過年度に公表されている会計基準等のうち、2023年4月1日以後に適用されるもの(早期適用を含む)として、次の会計基準等がある。 ① 「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(2022年8月26日、実務対応報告第43号)(内容:「金融商品取引業等に関する内閣府令」における電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示すもの。2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。ただし、実務対応報告の公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる) ② 「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(2023年11月17日、実務対応報告第45号)(内容:改正された「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)上の電子決済手段の発行及び保有等に係る会計上の取扱いを示すもの。公表日(2023年11月17日)以後適用する) ③ 「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正」(2023年11月17日、企業会計基準第32号)(内容:上記②に関連し、連結キャッシュ・フロー計算書等における資金の範囲を改正するもの。公表日(2023年11月17日)以後適用する) ④ 会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」の改正について(上記②に関連し、連結キャッシュ・フロー計算書等における資金の範囲を改正するもの。公表日(2023年11月17日)以後適用する) ⑤ 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(2022年10月28日、改正企業会計基準第27号)等(内容:税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)及びグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果についての取扱いを示すもの。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) (了)

#No. 565(掲載号)
#阿部 光成
2024/04/18

給与計算の質問箱 【第52回】「社会保険の料率の変更」~令和6年度対応~

給与計算の質問箱 【第52回】 「社会保険の料率の変更」 ~令和6年度対応~   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 令和6年度において各種社会保険の料率の変更はあるでしょうか。 A 雇用保険、厚生年金保険、子ども・子育て拠出金の料率の変更はない。労災保険、健康保険、介護保険(第2号被保険者)の料率は変更がある。 * * 解 説 * * 1 料率の変更がないもの (1) 雇用保険 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの一般の事業の雇用保険料率は、会社負担が0.95%、従業員負担が0.6%である。従業員は、給料の総支給額×0.6%=雇用保険料を給料から天引きされる。 例えば、給料の総支給額300,000円の場合、300,000円×0.6%=1,800円の雇用保険料が給料から天引きされる。 〔令和6年度の雇用保険料率〕 (※) 厚生労働省ホームページより (2) 厚生年金保険 厚生年金保険の料率は、18.3%を折半して会社負担が9.15%、役員・従業員負担が9.15%である。役員・従業員は、標準報酬月額×9.15%=厚生年金保険料を給料から天引きされる。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×9.15%=27,450円の厚生年金保険料が給料から天引きされる。 〔令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)〕 (※) 協会けんぽホームページより (3) 子ども・子育て拠出金 子ども・子育て拠出金は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから給料計算には関係しない。 子ども・子育て拠出金の料率は、0.36%である。子ども・子育て拠出金の額は、被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額×0.36%の総額である。 例えば、厚生年金の標準報酬月額300,000円の役員1名だけが社会保険に加入している会社の場合、300,000円×0.36%=1,080円の子ども・子育て拠出金を年金事務所へ支払う。   2 料率の変更があるもの (1) 労災保険 労災保険料は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから給料計算には関係しない。 〔労災保険率表〕 (※) 厚生労働省ホームページより (2) 健康保険 協会けんぽに加入の東京の会社の令和6年2月分(3月納付分)までの健康保険の料率は、10.00%を折半して会社負担が5%、役員・従業員負担が5%だった。令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険の料率は、0.02%引下げの9.98%を折半して会社負担が4.99%、役員・従業員負担が4.99%になった。役員・従業員は、標準報酬月額×4.99%=健康保険料を給料から天引きされる。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×4.99%=14,970円の健康保険料が給料から天引きされる。 (3) 介護保険(第2号被保険者) 第2号被保険者とは、40歳以上65歳未満の役員・従業員をいう。40歳未満及び65歳以上の役員・従業員の給料からは介護保険料を天引きしない。 協会けんぽに加入の東京の会社の令和6年2月分(3月納付分)までの介護保険の料率は、1.82%を折半して会社負担が0.91%、役員・従業員負担が0.91%だった。令和6年3月分(4月納付分)からの介護保険の料率は、0.22%引下げの1.6%を折半して会社負担が0.8%、役員・従業員負担が0.8%になった。役員・従業員は、標準報酬月額×0.8%=介護保険料を給料から天引きされる。 例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×0.8%=2,400円の介護保険料が給料から天引きされる。 (了)

#No. 565(掲載号)
#上前 剛
2024/04/18
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