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《速報解説》 監査役協会、1月公表の上場会社編に続き非上場会社に向けた「監査役監査チェックリスト」を公表

《速報解説》 監査役協会、1月公表の上場会社編に続き 非上場会社に向けた「監査役監査チェックリスト」を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年5月16日、日本監査役協会中部支部 監査実務チェックリスト研究会は、「監査役監査チェックリスト①~③【非上場会社編】」を公表した。 これは、2017年9月28日の「改訂版 監査役監査チェックリスト①~③」と2019年1月11日の「監査役監査チェックリスト④【上場会社編】」との内容の整合性を取るために、その編成や内容の見直しなどを行ったものである。 監査役監査チェックリスト①から③は次のとおりである。 今回の公表により、「監査役監査チェックリスト」は①~④の4区分からなる集大成となったとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 本稿では、「監査役監査チェックリスト③ -機関設計が「取締役会+監査役会+会計監査人」の場合-」(以下「チェックリスト」という)について、主な内容を解説する。 チェックリストは、表紙を含めて113ページに及ぶものである。 1 監査役になったらすぐ確認すべきチェックリスト 次の事項について、前任の監査役から引継ぎがなされているかなどについて記載されている。 2 定時株主総会(終了後)のチェックリスト 株主総会終了後の監査役会において、次のような事項が議題とされているかなどについて記載されている。 3 重要書類等のチェックリスト 次のような重要書類等を閲覧しているかとの監査項目を記載し、取締役の職務の執行に、不正行為、法令・定款違反や著しく不当な事実等はないかなどのチェック内容が記載されている。 4 子会社調査のチェックリスト 子会社に対する経営方針、子会社の管理体制の状況について把握しているか、子会社管理部門等による子会社の指導・管理状況を確認しているかなどについて記載されている。 5 関連当事者との取引のチェックリスト 関連当事者の取引に関し、管理責任者、管理すべき内容等が規程類、マニュアル等で明確にされているか、関連当事者との取引について、取引の審査、決済の仕組みにおいて一般的でない取引をチェックする体制が構築・運用されているかなどについて記載されている。 6 会計監査人監査の相当性判断のチェックリスト 会計監査人の監査計画について、妥当性を確認しているか、会計監査人の監査実施状況を確認しているかなどについて記載されている。 (了)

#No. 318(掲載号)
#阿部 光成
2019/05/16

プロフェッションジャーナル No.318が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年5月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.318を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/05/16

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第76回】「日本標準産業分類から読み解く租税法解釈(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第76回】 「日本標準産業分類から読み解く租税法解釈(その1)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   はじめに 統計が租税法の解釈適用において重要な意味をもつことがあるという点については、既に、この連載においても解説したところである(「統計数値が租税法解釈に与える影響(その1〜3)」【第67回】~【第69回】)。 統計はしばしば産業を分類した上で分析がなされるが、そこで使われる産業の分類が「日本標準産業分類」(JSIC)である。 租税法においては、産業ごとに課税上の取扱いを異にすることがあり、この日本標準産業分類は、個別税法の解釈等の局面においてもたびたび顔を出す。そこで、今回は、日本標準産業分類が租税法の解釈に及ぼす影響について考えてみたい。   Ⅰ 国際標準産業分類と日本標準産業分類 1 国際標準産業分類 国際的にも産業分類が存在する。 すなわち、「全経済活動に関する国際標準産業分類」(ISIC:International Standard Industrial Classification of All Economic Activities)は、生産に係る経済活動に関する国際的な典拠分類である。その主要な目的は、かような経済活動に沿って統計を作成するために用いることのできる活動カテゴリー一式を提供することである。 この国際標準産業分類と日本標準産業分類はともに異なる歩みを見せてきたことから、両標準産業分類間の分類項目の概念や定義が必ずしも一致しないことや、対応関係が明確でない項目があることも事実である(孕石真浩「JSICとISICの比較について」統計研究彙報73号147頁(2016))。 2 日本標準産業分類 さて、日本標準産業分類は、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定された統計基準であり、全ての経済活動を産業別に分類するものである。そして、日本標準産業分類は、「事業所」を経済活動別に分類するためのものであると説明されている(総務省ホームページ「日本標準産業分類の変遷と第13回改定の概要」)。 分類は、大分類(アルファベット)、中分類(数字2桁)、小分類(数字3桁)、 細分類(数字4桁)の4つのレベルに分かれている。そしてその構成は、大分類20、中分類99、小分類530、細分類1,460となっている。 ここでは、日本標準産業分類の大分類総説や大分類体系の概要に従い、事業内容が大分類のどこに分類されるかを確認し、その次のステップとして、モノの生産を行っている場合は、①何を作っているか、②どのような生産技術で作っているかによって分類項目が分かれている。サービスの提供の場合には、①誰に対して、②どのようなサービスを提供しているのかによって分類項目が分かれている。 ところで、日本標準産業分類一般原則は、「産業」を次のように定義する。 そして、分類の基準については、以下のように説明されている。 なお、分類項目の設定に当たっては、事業所の数、従業者の数、生産額、販売額等も考慮したとする。 ちなみに、「事業所」とは、経済活動の場所的単位であって原則として次の要件を備えているものをいう(一般原則第2項)。 すなわち、事業所とは、一般に工場、製作所、事務所、営業所、商店、飲食店、旅館、娯楽場、学校、病院、役所、駅、鉱業所、農家等と呼ばれるものである。 一般原則第2項によれば、一構内における経済活動が、単一の経営主体によるものであれば、原則として一事業所とし、一構内であっても経営主体が異なれば経営主体ごとに別の区画としてそれぞれを一事業所とすることとされている。なお、一区画であるかどうかが明らかでない場合は、売上台帳、賃金台帳等経営諸帳簿が同一である範囲を一区画とし、一事業所とするとしている(同項)。 この日本標準産業分類が租税法において如何なる意味をもっているかについて、以下、検討してみたい。   Ⅱ 消費税の簡易課税における事業区分と日本標準産業分類 消費税法上の簡易課税制度では、事業区分が設けられており、かかる区分ごとにその課税上の取扱い(仕入れ税額控除率)を異にしている。すなわち、消費税法37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》を受けた消費税法施行令57条は、次のように規定する。 ここで問題となるのは、各号の示す各種事業の事業区分である。この点について、同条5項は次のように定義を規定している。 このように、消費税法によれば、例えば、卸売業は第一種事業であり、小売業は第二種事業などと整理されているものの、ここに示された各種事業の定義そのものは同法には示されていない。 そのことから、事業者の行う事業活動が、製造業に該当するのか、あるいはサービス業に該当するのかといった問題が惹起されることがしばしばある。 そこで、国税庁はそのホームページに質疑応答事例を掲載している。例えば、「日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-E製造業)」では次のような判定の目安を紹介している(国税庁ホームページ「日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-E製造業)」)。 ここでは、サンプルとして大分類だけ紹介することとする。 大分類【E-製造業】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 もっとも、これは、国税庁が消費税法ないし消費税法施行令の解釈の参考となることを企図して、情報として示している判定に過ぎず、これらの法令について、日本標準産業分類に基づいた解釈を行うべきか否か、あるいはその判断の方法については、議論のあるところである。 この点、国税庁も「業種の判定について日本標準産業分類からみた事業区分の目安に過ぎません。」と注書きしているとおり、消費税法ないし消費税法施行令にいうところの各種事業の区分が、必ずしも日本標準産業分類のそれによって一律に分類されるわけではないことに注意が必要であろう。 (続く)

#No. 318(掲載号)
#酒井 克彦
2019/05/16

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第11回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法上の目的論的事実認定の過形成③-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第11回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法上の目的論的事実認定の過形成③-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前回はⅣの最後で、ヤフー事件・最判平成28年2月29日民集70巻2号242頁は法人税法132条の2(組織再編成に係る行為計算の否認規定)の不当性要件について制度濫用基準を定立し同基準を、同法132条1項(同族会社の行為計算の否認規定)の不当性要件について判例が確立してきた経済的合理性基準に「接合」すること(法人税法132条1項と同法132条の2における不当性要件の統一的解釈)を前提にして、国(税務官庁)と納税者に対して対等な攻撃防御の機会を保障する事実判断の構造を明確に示した、との理解を述べた。 これを受けて、今回は、IBM事件・東京高判平成27年3月25日訟月61巻11号1995頁を素材にして、同判決が法人税法132条1項の解釈適用において前記のような事実判断の構造を保障するものであるかどうかを検討することにする。その検討は、拙稿「租税回避否認規定に係る要件事実論」伊藤滋夫=岩﨑政明編『租税訴訟における要件事実論の展開』(青林書院・2016年)276頁、287頁以下をベースにして、行うことにする。 IBM事件では、関係会社間の自己株式取得に伴うみなし配当(益金不算入)に対応する譲渡損(による繰越欠損金)の連結納税への持込みによる連結法人税額の減少に対する法人税法132条1項の適用の可否が争われたが、訴訟段階では、不当性要件という規範的要件の評価根拠事実の内容及び位置づけが中心的な争点であった。 なお、本論に入る前に、規範的要件について要件事実論の観点から簡単に述べておこう。規範的要件とは、「規範的評価の成立が所定の法律効果の発生要件となっている」法律要件をいい、それは「法文上、その発生要件を前記[=過失、重過失、正当理由、背信性、信義誠実、権利の濫用、公序良俗違反など]のような一般的・抽象的概念を用いて表現する」ものである(以上の引用は司法研修所編『増補 民事訴訟における要件事実(第1巻)』(法曹会・1986年)30頁)。規範的要件の要件事実(主要事実)については、当該規範的評価それ自体を主要事実とみて、その評価の成立を根拠づける具体的事実(評価根拠事実)を間接事実とみる見解(間接事実説)がかつては有力であったが、最近では、「規範的評価自体は、具体的事実が当該規範的要件に当てはまるという法的判断であり、主要事実ではない」ことから、評価根拠事実を主要事実とみる見解(主要事実説)が有力となっている、といわれている(司法研修所編・前掲書31頁)。   Ⅱ IBM事件における不当性要件の評価根拠事実の内容及び位置づけ 1 東京地裁の判断 東京地判平成26年5月9日判タ1415号186頁は、不当性要件について経済的合理性基準(最判昭和53年4月21日訟月24巻8号1694頁参照)を定立し、その評価根拠事実について国(被告)の下記の主張(下線筆者)に従って検討した上で、①ないし③のいずれの評価根拠事実も認定することができないとして納税者(原告)の請求を認容した。 2 国(控訴人)の主張 この判断を受けて、国(控訴人)は控訴審において主張を変更し、次のとおり主張した(下線筆者)。 国のこの主張は、前記②の評価根拠事実について「特段の事情」により「経済的合理性の欠如」の推認が覆される余地を認めていることからすると、この評価根拠事実を間接事実として、経済的合理性の欠如を主要事実として、それぞれ位置づけているもの、したがって、評価根拠事実に関する間接事実説の立場に立つものと解される。 なお、国の主張をこのように評価根拠事実に関する間接事実説の立場に立つものと理解すると、「経済的合理性の欠如」は不当性要件に係る規範的評価を意味することになる(規範的評価概念)。しかし、経済的合理性は、そもそも、税法の基礎にある私人の経済生活において形成される、税法外在的な概念であり、したがって、それ自体としては抽象度の高い概念ではあるとしても、私人の実際の経済生活においては多種多様な経済活動の場面に応じて、その具体的内容を確定することができる事実概念である(企業組織再編成という活動の場面における経済的合理性については前回Ⅲ参照)。この点において、後で述べる私見は国の主張とは異なることをここで予め確認しておく。 3 納税者(被控訴人)の主張 これに対して、納税者(被控訴人)は次のとおり主張した(下線・太字筆者)。 納税者のこの主張は、「経済的合理性の欠如」が、不当性要件について前掲昭和53年最判が解釈によって導き出した要件事実であり、かつ、評価根拠事実であるという理解に基づく主張であり、したがって、評価根拠事実に関する主要事実説に基づく主張であると解される(1つ目の下線部参照)。この主張では、前記①②③の事実は、「経済的合理性の欠如」を推認させる間接事実として位置づけられていると解される。というのも、「取引における取引価格その他の経済条件」(2つ目の下線部)には前記の②の事実だけでなく①や③の事実も含まれる(他にもあり得る)と解されるからである。 4 東京高裁の判断 両当事者の以上の主張に対して、東京高判平成27年3月25日判時2267号24頁は、原審の参照した前掲昭和53年最判に加え最判昭和59年10月25日集民143号75頁をも参照した上で、次のとおり判示した(結論は原審と同じ。下線筆者)。 この判断では、前記②の評価根拠事実(「独立当事者間の通常の取引と異なっていること」)については、前掲昭和53年最判及び昭和59年最判が不当性要件につき解釈によって導き出した「経済的合理性の欠如」という要件事実がこれを「含む」(1つ目の下線部)こととされ、したがって、両者が同列に位置づけられていることからして、東京高裁は評価根拠事実に関する主要事実説の立場に立つものと解される。このような理解は、東京高裁が前記①及び③の事実を法人税法132条1項の解釈によって導き出し得るかどうか検討し、これを否定する判断すなわち前記①及び③の事実を要件事実から明示的に除外する旨の判断を示していることからも(消極的な意味においてではあるが)裏付けられるであろう。   Ⅲ IBM事件東京高判における不当性要件に係る事実判断の構造 控訴審における当事者の主張及び裁判所の判断を、評価根拠事実の内容と位置づけに関して整理すると、下記の表のようになる。なお、下記の表の中の①は「租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないこと」、②は「独立当事者間の通常の取引と異なっていること」、③は「租税回避の意図があったこと」である(前記Ⅱ1参照)。 以上の整理を基にして東京高裁の判断について検討を加えると、東京高裁は、評価根拠事実の内容に関しては国の主張の妥当性を認めたが、ただ、国の主張が間接事実説に基づく主張であったために、「[間接事実説の立場に立って、攻撃防御の]対象となった事実以外にも自由心証の場を拡張することは過度に裁判官の権限を認めることになり、相当でない」(難波孝一「規範的要件・評価的要件」伊藤滋夫=難波孝一編『民事要件事実講座(1)総論Ⅰ』(青林書院・2005年)197頁、214-215頁)というような考慮に基づき、主要事実説の立場から②を、評価根拠事実としての経済的合理性の欠如を「より具体化するもの」(前記引用判示の4つ目の下線部分)として、主要事実に「格上げ」したものと解される。 このような理解によれば、確かに、主張立証責任の対象が②に限定され、「自由心証の場」の拡張は回避できるであろうが、しかし、②の主要事実への「格上げ」は別の問題を惹起することになる。それは、その「格上げ」が実体法(ここでは、補充的課税要件規定である同族会社の行為計算否認規定。拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)【69】【71】参照)に「投影」され、その結果、不当性要件の要件事実を、(a)①②③等を間接事実とする推認による総合判断を許容する「経済的合理性の欠如」という要件事実から、(b)②の主張立証による判断しか許容しない要件事実へと、「変質・変容」させてしまう、という問題である。 この問題も要件事実論の法創造機能(第8回Ⅲ)によって惹起される問題であるが、不当性要件に関する前記の(a)から(b)への要件事実の「変質・変容」の場面では、要件事実論の法創造機能は、納税者が許されないと主張する、課税庁の立証負担の不当な軽減・緩和に帰結する。 このような帰結を支えるのは、東京高裁が納税者の主張を否定するために説示した、「被控訴人主張のような解釈を採用すれば、税務署長が法人税法132条1項所定の権限を行使することは事実上困難になる」(前記引用判示の3つ目の下線部分)という考慮である。この考慮は、更に本を正せば、「同族会社と非同族会社の税負担の公平を図るために設けられた同項[=法税132条1項]の趣旨」(前記引用判示イの第3段落第2文。同アも参照)に基づくものである。 東京高裁は、このように、同族会社の行為計算否認規定(法税132条1項)について、判例上確立された趣旨の理解を「起点」にして、税務署長による否認権行使の事実上の困難を軽減・緩和しようとする考慮を「経由」して、国側の立証負担の軽減・緩和を内包する、不当性要件に関する事実判断の構造に到達した。この「終点」は、前回Ⅳでみたヤフー事件最判が示した事実判断の構造から懸け離れた「地点」にある。   Ⅳ おわりに 最高裁は、前回取り上げたヤフー事件において、国(税務官庁)と納税者に対して対等な攻撃防御の機会を保障する事実判断の構造を明確に示すことによって、不当性要件の目的論的解釈の過形成に対して「歯止め」をかけたのに対して、東京高裁はIBM事件でそのような事実判断の構造ではなく、国(税務官庁)の立証負担を軽減・緩和する国側に有利な事実判断の構造を示したが、その判断は、結果的に、不当性要件の射程を「従来学説上一般に考えられていたよりも大きく拡張するもの」(太田洋編著『M&A・企業組織再編のスキームと税務〔第4版〕』(大蔵財務協会・2019年)906頁)となったといえよう。 このような結果は不当性要件の目的論的解釈の過形成を意味するが、その原因は前記の事実判断の構造にあり、更に本を正せば、要件事実論の法創造機能にあるとみてよかろう。その意味では、私法上の法律構成による否認論について論じた(第8回Ⅳ参照)のと同じく、税法上の目的論的事実認定の過形成の結果とみるべきであろう。 (了)

#No. 318(掲載号)
#谷口 勢津夫
2019/05/16

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第5回】「毎年同額の金額を贈与する際の注意点」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第5回】 「毎年同額の金額を贈与する際の注意点」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕   相談内容 私は不動産賃貸業を営んでいます。将来は子供に私の事業と資産を引き継いでいくつもりですが、まだ子供は大学生なので、事業に関与させることはできません。そこで、まずは相続対策として、毎年1,000万円ずつ子供に贈与していこうと考えています。 ところが、このような贈与を行った場合、何年後かに、「もともと決まっていた贈与(1,000万円×贈与年数)を1,000万円ずつ分割して支給しただけだ」と税務署から指摘され、多額の贈与税が課税されるリスクがある、と知人から聞きました。 そのようなリスクはあるのでしょうか。 ■ □ ■ □  解 説  □ ■ □ ■ [1] 贈与税率 毎年の贈与による財産の移転は、長期的には大きな効果を得ることができるので、事業承継・相続対策において有効な手段の1つとされています。 税制面でいうと、直系尊属からの贈与で、受贈者(贈与を受ける者)が贈与の年の1月1日で20歳以上(令和4年(2022年)4月1日以後は18歳以上)の場合には、以下のように税率も優遇されています(特例贈与、措法70の2の5)。 〈贈与税の速算表〉   [2] 贈与時の注意点 贈与において一般的に考えられる税務上のリスクは、以下の2点です。 そもそも税法には「贈与」という行為が明文化されていないので、その定義は民法から借用することになります。民法549条には と規定されています。つまり、実際の贈与の際、民法の規定通りに双方が合意していれば、上記①②のような税務上のリスクとなることはありません。 ただし、事業承継・相続対策においては、贈与する側が税理士等の専門家と相談するなど様々なケースを想定したうえで「贈与」という選択を行いますが、贈与を受ける側の意思(相手方の受諾)というものが軽視される傾向があるため、ここに税務上のリスクが生ずることになります。 したがって、ご相談の場合、贈与の都度、「お互いが合意した」という証拠を対外的に説明できる状態で残しておけば、後々、税務上の問題となることはありませんので、実務上は以下の点を注意すればよいでしょう。 類似する事例が国税庁のHPに掲載されていますので、参考にしてください。 なお、実際の贈与の際には、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)

#No. 318(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2019/05/16

金融・投資商品の税務Q&A 【Q45】「非上場の外国籍会社型投資法人が公募発行する投資証券の課税関係」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q45】 「非上場の外国籍会社型投資法人が公募発行する投資証券の課税関係」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 「上場株式等」vs「一般株式等」 日本の税務上、株式等が「上場株式等」に該当するか「一般株式等」に該当するかで、株主に対する課税上の取扱いが異なります。 「上場株式等」とは、租税特別措置法第37条の11に列挙されているものをいいます。株式等(株式・出資、投資信託を含む)に関しては、主に以下のものが上場株式等として取り扱われます。 ①は、日本の金融商品取引所に上場されている株式等又は海外の金融商品取引所において売買されている株式等となります。 ②は、投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」)第2条第3項に規定する投資信託(いわゆる日本の投資信託)及び投信法第2条第24項に規定する外国投資信託のうち、公募発行のものをいいます。 ③の「特定投資法人」とは、その規約に投信法第2条第16項に規定する投資主の請求により投資口の払戻しをする旨が定められており、かつ、その設立の際の投資口の募集が公募により行われた投資法人をいいます。すなわち、日本の投信法に基づき設立された投資法人の投資口のうちオープンエンド型のものをいいます。   2 本件へのあてはめ 本件の外国籍の投資法人の投資証券(株式)は、国内外の金融商品取引所において上場されていないことから、上記①には該当しません。また、本件の投資法人は法人格のある投資法人であり、投信法第2条第24項に規定する外国投資信託には該当しません。したがって、公募発行されているものの、②には該当しません。さらに、国外で設立された外国籍の投資法人であり、③の特定投資法人には該当しません。 したがって、本件の投資法人の投資口は、「上場株式等」としては取り扱われず、「一般株式等」として取り扱われることになります。 本件の配当は、居住者たる個人が国外の証券会社経由で、国外で直接受け取るということですので、水際源泉の適用はなく、日本の源泉税は課されません。 一般株式等の配当所得については、原則として申告が必要であり、総合課税の対象となります。上場株式等の配当所得等に係る申告分離課税の適用はありません。 外国籍の投資法人株式の配当については、外国法人から受けるものであるため、配当控除の適用はありません。 また、一般株式等の配当所得に該当するため、株式等(一般、上場とも)の譲渡所得等との損益通算はできません。   (了)

#No. 318(掲載号)
#箱田 晶子
2019/05/16

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第3回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第3回】   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   3 法人税基本通達等の改正 (1) 国税庁による通達改正の背景等の説明 国税庁は、平成30年度税制改正及び収益認識会計基準の公表に対応するために、2018年5月30日付けで法人税基本通達等の一部を改正している。法人税基本通達等の改正の背景等について、要旨次のとおり説明している。 (2) 通達の整備方針 次のような観点から法人税基本通達等の整備が実施された(国税庁「平成30年5月30日付課法2-8ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明」参照。) また、別の資料では、通達の整備方針について次のように要約されている(国税庁「『収益認識に関する会計基準』への対応について~法人税関係~」16頁)。 これらの説明からは、収益認識会計基準に対して準拠又は許容する姿勢と、逆に準拠又は許容しない姿勢を垣間見ることができる。後者の姿勢は、公正な所得計算を確保するために最終的な手綱を税法ないし国税庁の側で確実に握ろうとする、国税庁なりの慎重さの現れかもしれない。 実務的には、中小企業は従前の取扱いによることも可能とすることが明言されていることが重要である。もっとも、これはあくまで行政機関である国税庁における通達の整備方針にすぎないのであって、かかる方針が法令と整合するかという点は別途検討を要する。 (3) 通達の内容 整備された通達の規定内容自体は次回以降、随時取り上げる。ここでは、最も基本的な4つの通達の要旨のみを確認しておく(国税庁「収益等の計上に関する改正通達(法人税基本通達第2章第1節部分)の構成及び新旧対応表」参照)。 〇収益の計上の単位の通則(法基通2-1-1) 資産の販売等に係る収益の額は、原則として個々の契約ごとに計上するのであるが、次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次に定めるところにより区分した単位ごとにその収益の額を計上することができる。 〇資産の引渡しの時の価額等の通則(法基通2-1-1の10) 販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とは、原則として資産の販売等につき第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額をいう。 〇棚卸資産の引渡しの日の判定(法通達2-1-2) 棚卸資産の販売に係る収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、その引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。この場合において、当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。 〇履行義務が一時点で充足されるものに係る収益の帰属の時期(法通達2-1-21の3) 役務の提供のうち履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの以外のものについては、その引渡し等の日が法人税法22条の2第1項に規定する役務の提供の日に該当し、その収益の額は、引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入される。   4 国税庁による「収益認識基準による場合の取扱いの例」の公表等 国税庁は、収益認識会計基準に沿って会計処理を行った場合に、会計・法人税・消費税のいずれかの処理が異なることとなる典型的なものの例を集めた「収益認識基準による場合の取扱いの例」を公表し、要旨次のとおり、注意喚起している(国税庁「収益認識基準による場合の取扱いの例」参照)。   5 第Ⅱ部のまとめ 法人税法22条の2を俯瞰すると、①収益の計上時期に係る定めと②収益の計上額に係る定めという2つの柱で構成されていることがわかる。 具体的には、①について、目的物引渡日又は役務提供日に、資産の販売等に係る収益を計上することを原則化した(法法22の2①)。②について、資産の販売等に係る収益の計上額は、販売・譲渡をした資産の引渡時の価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額であることを明定した(法法22の2④)。 法人税法22条の2の規律したところを、第Ⅰ部(連載【第1回】)で掲載した収益認識会計基準における収益認識のための5つのステップの見取図の図表に落とし込んでみると、次のようになる。 かように、収益に関する平成30年度税制改正は、収益認識会計基準におけるステップ3及びステップ5に対応するものと理解できよう。 さて、本連載第Ⅰ部では、収益認識会計基準の内容について、現段階で理解しておきたいことを次のように要約した。 収益の計上時期及び収益の計上額に関して定める法人税法22条の2は上記②及び③に対応するものであることがわかる。消去法的にいえば、①に対応する法令の改正はなされていない。ただし、上記のとおり、法人税基本通達2-1-1 に「収益の計上の単位の通則」に関する定めが新設されており、①については通達で手当てがなされている。 (了)

#No. 318(掲載号)
#泉 絢也
2019/05/16

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第47回】「まからずや事件」~最判昭和42年9月19日(民集21巻7号1828頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第47回】 「まからずや事件」 ~最判昭和42年9月19日(民集21巻7号1828頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 318(掲載号)
#菊田 雅裕
2019/05/16

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第86回】社会福祉法人明照会「第三者調査委員会調査報告書(2019年3月29日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第86回】 社会福祉法人明照会 「第三者調査委員会調査報告書(2019年3月29日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【第三者調査委員会の概要】   【社会福祉法人明照会の概要】 社会福祉法人明照会(以下「明照会」と略称する)は、1992(平成4)年2月設立。介護保険事業、公益事業、委託事業を兵庫県伊丹市、宝塚市及び尼崎市内で営む。現在は、兵庫県により選任された役員(一時理事)のもとで運営されている。法人本部所在地は兵庫県伊丹市。 明照会を設立したのは宗教法人明照山円徳寺(以下「円徳寺」と略称する)第15世住職河原俊亨氏(報告書上の表記は「B」又は「元理事長」。以下「元理事長」という)であったが、現在は、元理事長の子である河原顕誓氏(報告書上の表記は「D」。以下「D」という)が円徳寺第16世住職に就任している。本件発覚時の明照会理事長河原至誓氏(報告書上の表記は「前理事長」又は「A」。以下「前理事長」という)も、元理事長の子である。 明照会と円徳寺の人的関係の詳細は、以下の関係者家系図を参照いただきたい(明照会での肩書は本件発覚時のもの)。 《社会福祉法人明照会/宗教法人明照山円徳寺 関係者家系図》   【調査報告書の概要】 1 第三者調査委員会設置の経緯 (1) 兵庫県による指導調査(平成28年2月) 平成28年2月の兵庫県による明照会の指導監査で、平成27年3月期の決算において下記のような点を指摘され、改善指導された。 (2) 経営指導強化事業の現地調査(平成29年3月) 前記の指導調査での指摘事項を踏まえ、平成29年3月「経営指導強化事業」の現地調査が行われ、下記事項が指摘された。 明照会はこれに対して速やかな対応を実施することができず、その実施責任者である前理事長の責任の追及についても理事会は軽い処分で済ませようとした。 (3) 兵庫県による特別調査(平成29年12月) これを受けて、兵庫県が平成29年12月に特別監査を実施した結果、明照会運営が著しく適正を欠き、緊急に是正又は改善を要すると認められたので、社会福祉法第56条第4項の規定に基づき、平成30年4月に勧告を行った。 勧告の内容は、前理事長は関係者等との取引等による不適切な業務委託契約、及び関係者との取引等で鑑定評価額をはるかに超える不当に高額な不動産賃貸借契約等により明照会に損害を与え、かつ明照会の社会的信用を著しく毀損したので、その責任は重大であることから、評議員会及び理事会において厳しく責任を追及するとともに、これらの事項を改善できる役員体制への抜本的見直しを勧告した。なお、明照会が受けた損害については、理事会が約89百万円と認定した。 《理事会が認定した損害額》 (4) 兵庫県による一時役員の選任と第三者調査委員会の設置 監査結果に関し、明照会の理事6名・監事2名は平成30年7月5日までに責任を取って全員辞任した。しかし翌月7日までに前理事長を含む5名の理事が辞任を撤回した。8月20日の理事会で、5名の撤回者のうち前理事長親族1名・その他1名を留任することを条件に前理事長他2名は辞任し、新任の理事4名を含む理事6名の選任を承認した。 兵庫県は、これら一連の動きを受け、親族の留任や明照会側の「妨害行為が顕著になった」ことを理由に平成30年8月29日、社会福祉法第45条の6の規定に基づく職権で一時役員を選任し、通知した。 一時役員会は諸課題の改善を実施するため、特定の役員、当該役員の親族その関係者(以下「特定理事等」という)に対する特別の利益供与に係る実態の把握、原因の究明、明照会ないし関係行政庁の損害額の把握と回復措置並びに責任の明確化を行い、今後取り組むべきガバナンスの課題や方策を検討し、再発防止に資することを目的として、平成30年10月23日に第三者調査委員会(以下「当委員会」という)を設置した。 2 第三者調査委員会による調査の概要 第三者調査委員会は、調査目的である「特定理事等への特別の利益供与に係る実態の把握」に関して、社会福祉法第27条における関係者として4人の理事等を特定するとともに、3社の関連会社を挙げている。 そのうえで、委員会は、利益供与として判断した支出を次の5つの類型に分けて、それぞれ、明照会の支出が高額過ぎるため、特別の利益供与に当たると指摘した。 (1) 関係者等を貸主とし、明照会が借主となっている不動産賃貸借契約に係る賃借料 委員会は、関係者等を貸主とし、明照会が借主となっている不動産賃貸借契約に係る賃貸料について、不動産鑑定士による不動産鑑定報告書に基づく賃貸料との比較分析を行った結果、5件の不動産賃貸借契約について、不相当に高額であり、特別の利益供与に該当する金額として約94百万円を認定した。 同時に、委員会は、前理事長について、「定款違反、善管注意義務違反により締結した前記各賃貸借契約に基づき明照会に発生した損害について、債務不履行に基づく損害賠償の責任を負う」という見解を示している。 (2) 関係者等とのコンサルタント契約等に基づく報酬等 委員会は、元理事長との間で締結した委託契約、C(元理事)に対する名誉報酬、茲恭舎との間で締結したコンサルタント契約などに基づく支払いについて、契約の履行状況が確認できないなどを理由に、約37百万円を特別の利益供与として認定した。 そのうえで、委員会は、前理事長について、日常業務とはいえない各コンサルタント契約等を理事会の承認を経ずに専決し、契約の締結あるいは報酬の支払いを行ったこと、各契約に関して相手方当事者の履行の確認を行ったとは認められないことなど、定款違反、善管注意義務違反が認められることから、明照会における損害額につき、賠償する責任があると判断をした。 (3) 関係者等の業務委託契約、物品購入契約等 委員会は、明照会と恵芭又はアド・サービスの間で締結された業務委託契約、物品購入契約等について、委託料が委員会による算定額より多額であること、車両のリースや物品購入に際して、恵芭又はアド・サービスが介入することによって、メーカー等から直接購入するよりも高額な支出が行われている点を問題視して、約43百万円を特別の利益供与等と認定した。 (4) 公用車の私的利用 兵庫県による指導監査において、明照会が、恵芭とリース契約している公用車のうち、前理事長がほぼ日常的に占有している公用車にかかる費用については、明照会経費から支出することは不適切であるとの指摘を受けたため、明照会は調査の結果、前理事長使用公用車(BMW)のリース料金のうち、土曜・日曜の2日相当分を私的利用として1,749,685円を前理事長に対する特別の利益供与に当たると判断し、これを請求して、平成30年3月22日に回収している。 委員会はこの判断を是認して、法的責任問題等については、割愛している。 (5) その他の問題 第三者調査委員会は、上記以外の問題点として、社会福祉法人親和福祉会の事業承継、子育て支援ハウスの建設及び尼崎中央デイサービスの運営に関しては、不合理な経営判断が行われてきたこと、独自の退職共済基金の運営にあたり、元理事長、前理事長の独断で主に株式で運用を行ったこと、平成27年3月期の決算において債務が確定している給食委託費8,897千円他合計で18,932千円の未払費用を債務に計上しないまま決算書を作成したこと(粉飾決算)を挙げている。 3 原因分析 第三者調査員会は、原因分析として、以下の6項目を挙げている。 委員会の原因分析のうち、いくつか特徴的な項目を見ておきたい。 「理事会の形骸化」の項目で取り上げたのは、創業家親族が代表取締役を務めていた恵芭との取引である。委員会は、形骸化の一例として、「恵芭は、実質的に、利益相反取引の危険性を含んでいる。にもかかわらず、理事会は、恵芭との取引の結果、費用が安く済んだという前理事長の説明に納得し、制限どころか詳細を確認することもしていない」と指摘している。 また、委員会は、「監事監査の形骸化」として、「借入過多により経営破綻が危惧されることになっても、不正経理等で県から特別監査が入っても、監事が何らかの動きを見せている様子は、理事会議事録、あるいは、監事にとって報告義務のある評議員会議事録を見る限り、見受けられない」として、「監事が充分にその職責を果たしていなかったと言っても過言ではない」と結論づけている。 さらに、「評議員会の怠慢」として、委員会は、「理事の選任・解任は評議員会の責務であることから、理事長に対する退任勧告が出されたときに評議員会が動くべきであったにも関わらず理事会からの報告を待ち続けるというのは、評議員会としてその職務をどのように考えているのか疑問が残るところである」と指摘している。 そのうえで、委員会は、「本来であれば、コンプライアンス違反に対して、評議員会、理事会、監事と何重にも監視の目があるが、それぞれが職務についての理解が不十分であるために組織としての自浄作用を持ち得ていなかった」ことが問題であると締め括っている。 4 再発防止策のための提言 第三者調査委員会が提言した再発防止策は次のとおりである。 委員会は、「創業家の関与を排除すること」と同時に、「役員等に対して社会福祉法人制度についての理解を深めることができるような研修を受講する機会を法人として確保することが必要」であるとしたうえで、その研修の中で、創業家は、「出資」をしたのではなく、「寄付」を行ったのであり、社会福祉法人の財産は、創業家のものではないことをはっきりと認識させるべきであると強調している。 また、「不正を指摘できる環境」の整備においては、「顧問弁護士等の外部の第三者を通報先とする公益通報制度」を構築して、「声を寄せた職員が不利益を被らないようにすること、その声にきちんとレスポンスをとること」の重要性を指摘している。   【調査報告書の特徴】 兵庫県内の社会福祉法人における創業家の不正では、本連載【第52回】で姫路の夢工房の事案を取り上げたところであるが、ほかにも、三田市にある「三翠会」でも、創業家が法人資金約2億7,000万円を流出させた問題につき、法人が創業家を訴えた損害賠償請求事件が和解によって決着したことが、神戸新聞によって報道されている。 本事案で見られたような創業家による社会福祉法人の私物化は、おそらく兵庫県以外の各地で見られる事象であろうかと考えるが、兵庫県健康福祉部が、社会福祉法人改革に熱心に取り組み、積極的に情報公開を行っていることが、こうした不正が公になる機会につながっているのではないかと思料する次第である。 1 兵庫県による社会福祉法人に対する指導 兵庫県健康福祉部が公開している「兵庫県が所管する社会福祉法人に関する指導指針」を読むと、明照会の役員及び評議員の選任については、同指針中の「資格等チェックリスト」に記載された「他の評議員又は各役員の配偶者又は3親等以内の親族でないこと」に抵触していることがわかる。 また、同指針では、社会福祉法人は、社会福祉法第44条(役員の資格等)に規定する資格等に合致することを確認する書類の提出を受ける等の方法により、その妥当性を確認することが「指摘事項」と定められているが、明照会において、こうした指針がどこまで遵守されていたのか、残念ながら、報告書には記載がない。 なお、社会福祉法第44条については、以下のとおりである。 2 創業家(元理事長・前理事長)の動機は何か 第三者調査委員会は、調査方法として、創業家の役員ら(報告書上の表記でA、B、C及びD)に対するヒアリングを行ったことを挙げているが、創業家が、明照会との間で締結していた不動産賃貸借契約に係る賃貸料が、不動産鑑定評価より高額であり、結果的に委員会から不当な経済的利益の供与とみなされたことについて、明照会から高額な賃貸料を受領することにした創業家側の動機については、報告書には記載がない。 これは、明照会が恵芭やアド・サービスとの間で、不相当に高額な業務委託契約を締結し、購買取引に介入させ、あるいは実態のないコンサルティング契約を締結して、こうした関連会社に経済的利益を供与した理由についても、こうした取引を推進した前理事長の動機については何も説明されていない。 3 なぜ、理事会、幹事及び評議員会は、創業家による不正を防止できなかったのか 第三者調査委員会は、創業家以外の理事、監事、評議員についても、善管注意義務違反が認められることから、明照会に対する損害賠償責任を負うとの見解を示すとともに、理事会及び監事監査の形骸化、評議員会の怠慢を原因分析として挙げている。 その判断に異を挟むつもりはないものの、ここでも、なぜ、理事会や監事監査が形骸化し、評議員会が機能しなかったのかという、根本的な原因の分析まで踏み込まれていない。創業家支配下の理事、監事及び評議員が、創業家の意向をくむ人選であったことが原因であったのか、理事、監事又は評議員としての適格性を欠いていたのか、こうした分析なしに、「形骸化」「機能不全」という指摘を行うだけでは、再発防止策の提言についても、表層的なものにならざるを得ないと考える。 4 兵庫県が選任した一時役員について 明照会のホームページでは、平成31年3月18日現在の役員名簿が公開されている。そこでは一時理事6名と一時監事2名の氏名のみが記載されており、彼らがどうして選任されたのか、彼らが社会福祉法第44条第4項及び第5項に規定するどのような資格を有しているかは判然としない。 明照会が真に信頼回復を企図しているのであれば、情報公開についても、より積極的な姿勢を示すべきであり、一時理事及び一時監事についても、その選任理由を発信することが、利用者をはじめとする利害関係者の信頼回復につながるのではないだろうか。 5 特別の利益の意義 第三者調査委員会は、調査の目的である「特定理事等への特別の利益供与に係る実態の把握」における「特別の利益」について、法人税基本通達1-1-8を基準としていることを明言しているため、通達の規定を引用しておきたい。 本件で、第三者調査委員会が指摘した「特定の利益」は、同通達の(4)、(5)又は(6)に該当していると判断した模様である。 (了)

#No. 318(掲載号)
#米澤 勝
2019/05/16

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第25回】「事業環境の分析(その3)」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編-   【第25回】 「事業環境の分析(その3)」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   ←(前回) | (次回)→   ▷事例の紹介 前回、前々回では、主に事業環境の分析におけるフレームワークの解説を行った。本稿では近年人気業種である外食産業のうち、「居酒屋業界」を例にとり、PEST分析の手法を一部だけ概説する。 重要なことは、PEST分析というフレームワークを通して、対象会社を取り巻く事業環境を把握し、どのように事業戦略を策定し実行しているかを、さらに深堀りして調査することである。事業環境が変化した場合に、対象会社の業績にどのようなインパクトを与えることになるかを、デューデリジェンスを通じて把握するのである。   (A) 政治的環境の変化(Politics) ➤ 主な調査手続 法令や規制、税制などは国や地方自治体レベルの決定事項であり、対象会社の力の及ぶところではないが、対象会社の活動に多大な影響を与えるという特徴を持っている。そのため、対象会社に関連する法令や規制、税制の改正などの動向を注視し、それが施行された場合は、どのような影響があるかを把握し、追加コストの発生や事業戦略の変更が必要であるかなどを事前にシミュレーションしておく必要がある。 下記は、居酒屋業界に影響を与える可能性がある、政治的環境の変化の主な項目である。 ① 消費マインドの変化による影響 ◆消費者態度指数(消費マインド、左軸)及び日経平均株価(右軸、円) (出典:内閣府「消費動向調査」より筆者作成) 居酒屋業界は、外食産業であるため、マクロ的には人口の推移(成人)や消費マインドの推移に影響を受けることになるため、まずは両者の統計を分析する必要がある。消費マインドの推移を例にとると、2020年東京オリンピック開催に伴い公共投資増加等で消費者のマインドの高まりが期待されており、消費者態度指数は上昇傾向にある。 なお、消費者態度指数は、内閣府が毎月の消費動向調査の中で公表している消費者マインドを指数化した経済指標である。通常、本指数は、50が「良い」「悪い」の1つの目安とされ、また前月と比べて数値が「良くなったのか」「悪くなったのか」も判断の材料となる。 ② 改正「健康増進法」による影響 多くの人が使う施設で喫煙を規制する改正「健康増進法」が2018年7月に成立している。同法は、すべての人に罰則付きで禁煙場所での喫煙を禁じ、これまで努力義務だった受動喫煙防止を義務化し、東京オリンピック開催前の2020年4月に全面施行する。 富士経済の調査レポートによると、2016年10月に厚生労働省が公表した「受動喫煙防止対策の強化について(たたき台)」で示された喫煙規制や罰則が実際に施行された場合、外食市場に与える影響を外食店へのアンケート調査をもとに算出し、「居酒屋、バー・スナック」市場においては、▲6,554億円の影響(市場規模の減少)があると試算している。 ③ 「酒税法」改正による影響 今後、酒税の「税率」や「品目」の改正が予定されている。 税率に関しては、発泡性酒類、醸造酒類及び混成酒類など酒税の基本税率が改正され、その他の発泡性酒類の特別税率が改正されるほか、発泡酒、清酒及び果実酒の品目ごとの特別税率については、経過措置として段階的に税率が変更された後、経過措置期間後は特別税率ではなく発泡性酒類又は醸造酒類の基本税率が適用されることになる。また、租税特別措置法においては、発泡性を有しない低アルコール分の蒸留酒類等に係る酒税の税率の特例についても改正され、2026年10月から変更される。 品目に関しては、2018年4月より、ビールの定義が改正され、ビールの麦芽比率の下限が100分の50まで引き下げられるとともに、使用する麦芽の重量の100分の5の範囲内で使用できる副原料として、果実及び香味料が追加される。また、果実酒の範囲に「果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させたもの」が追加される。2023年10月より、発泡酒の範囲に「ホップ又は一定の苦味料を原料の一部とした酒類」及び「香味、色沢その他の性状がビールに類似するもので苦味価及び色度の値が一定以上のもの」で発泡性を有するものが加えられる。2026年10月より、その他の発泡性酒類の範囲が「アルコール分が11度未満」(改正前は10度未満)に改正される。 2017年5月に改正された酒税法では、原価割れでビール等を販売した小売店には「社名の公表」や「酒類の販売免許取消し」等の極めて厳しい処分が科されることになっているため、税率が下げられるにも関わらず、値上げという状況になっている。そのため、対象会社におけるアルコール類の価格設定の戦略の方向性を確認しておく必要がある。 例えば、アサヒビールは、2018年3月の出荷分から、業務用を中心としたビール系飲料の値上げを実施している。値上げは、すべての商品で実施した2008年以来10年ぶりで「大びん価格で10%前後上がる見通し」だと報じられている。また、居酒屋チェーン『鳥貴族』は、2017年10月からドリンク全品が280円から298円に18円値上げ、『日高屋』を展開するハイデイ日高も2017年9月から生ビールを20円値上げ、ペッパーフードサービスが経営する『いきなり!ステーキ』も日高屋同様にビールを20円値上げすると報じられている。 ④ 「働き方改革関連法」の施行による影響 2019年4月1日から、働き方改革関連法が順次施行される。居酒屋業界に特に関わる項目としては、「残業時間の上限規制」「年5日の有給休暇取得」「勤務時間インターバル制度の普及」などが挙げられ、勤務時間や有給休暇取得の管理、人員確保、作業効率の向上などに努め、従業員にとって働きやすい環境を作ることが求められるため、対象会社の状況を把握しておく必要がある。 ⑤ 消費税増税による影響 2019年10月に消費税及び地方消費税が合わせて10%に上がる予定である。過去の消費税増税と同様、増税直前の駆け込み需要と増税直後の一時的な需要の落ち込みが想定される。   (B) 経済的環境の変化(Economy) ➤ 主な調査内容 近年の訪日外国人観光客増加に伴う影響により、居酒屋の利用客にも外国人が増加している。中長期的には、人口の減少が始まるなか、いかにして外国人観光客を取り込むことができるかも、売上拡大の戦略の一部となるであろう。 一方で、居酒屋業界は、原材料費や労務費の増加に直面しており、また、格安居酒屋チェーンの台頭により競争は益々激しくなるであろう。そのため、対象会社の過去の経営成績や買収後の事業計画がこのような状況を適切に反映しているかを、見極める必要がある。 下記は、居酒屋業界に影響を与える可能性がある、経済的環境の変化の主な項目である。 ① 訪日外国人の増加 訪日外国人による飲食費総額は、2015年で6,420億円であり、外食市場規模の約2.5%に留まっているものの、飲食費総額、シェアともに拡大基調にて推移している。みずほ銀行「外食企業の持続可能な成長戦略とは(2016年8月12日)」の調査によると、訪日外国人の政府目標を達成した場合には、訪日外国人による飲食費総額は2020年に約1.3兆円(外食市場規模の5.0%)、2030年に2.0兆円(同 7.6%)に達することを予測している。 ◆全国訪日外国人飲食支出額(億円)及び外食市場に占める割合 (※) 2020年以降はみずほ銀行が推計 (出典:みずほ銀行「外食企業の持続可能な成長戦略とは(2016年8月12日)」を参考に筆者作成) このような状況は、メニューの外国語化や外国人労働者を雇用して、訪日外国人をいかにして取り込むかという戦略が必要となることを意味している。おいしい料理や丁寧なサービスを提供する日本の居酒屋は、多くの訪日外国人に好評である。 (つづく)

#No. 318(掲載号)
#松澤 公貴
2019/05/16
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