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プロフェッションジャーナル No.307が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年2月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.307を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/02/21

日本の企業税制 【第64回】「電子経済課税に関する動向」

日本の企業税制 【第64回】 「電子経済課税に関する動向」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   経済のデジタル化に対応した国際的な法人課税のあり方に関する検討が急ピッチで進んでいる。本年6月にはG20財務大臣会合が福岡で開催されるが、そこでは2020年に予定される国際的合意に基づく長期的解決策の取りまとめに向け、一定の方向性を見出し、ゴールに向けた作業計画を策定することとされている。   〇昨年3月公表の「中間報告書」 これまでの議論のベースとなってきたのは、2018年3月にブエノスアイレスで開催されたG20財務大臣会合においてOECDから提出された「経済の電子化に伴う課税上の課題に関する中間報告書」である。 この中間報告書のポイントは次の3点であった。 第1に、デジタル経済の特徴として、①国境を越え物理的拠点を伴わないビジネス、②知的財産など無形資産への大きな依存、③データ及びユーザー参加の重要性、を提示した。 第2に、今後、デジタル化に伴う課税上の課題に対応すべく、グローバルな長期的解決策を取りまとめること、そして、必要に応じ、2つの国際課税原則を見直していくことで合意した。2つの国際課税原則とは、①ネクサス原則(各国の非居住者である企業に対する課税権の決定ルール:「PEなければ課税なし」)と②利益配分原則(課税対象所得の算定及び配分ルール:「独立企業原則」)である。 第3に、グローバルな長期的解決策が合意に至るまで、暫定的措置で対応することを志向する国があることを踏まえ、暫定的措置の導入にあたっての6つの「考慮すべき事項」を提示した。   〇2月公表の「コンサルテーションペーパー」で示された2つの柱 本年2月13日、OECDは、現在検討中の長期的解決策に係る提案について説明した「経済の電子化に伴う課税上の課題に関するコンサルテーションペーパー」を公表した。 今回のコンサルテーションペーパーで示された長期的解決策は、次の2つの柱から構成されている。 【第一の柱】 ネクサス原則及び利益配分原則について、次のいずれか(相互に排他的ではない)の概念を踏まえて見直すことが提示された。 ①の場合、ネクサスを見直す観点から、ユーザーの積極的な参加が考えられる「高度に電子化されたビジネス(Highly Digitalized Businesses:HDB)」においては、ユーザーの所在地国に課税権を配分しようとするものである。 なお、ユーザーの積極的な参加が考えられる「高度に電子化されたビジネス(HDB)」として、ソーシャルメディア・プラットフォーム、検索エンジン、オンライン・マーケットプレイスが挙げられている。これは、イギリスが2020年からの導入を目指しているデジタル・サービス・タックス(Digital Services Tax:DST)の課税対象と重なっている。 ②の場合、利益配分を見直す観点から、個々の企業ではなく市場国に帰属するマーケティング上の無形資産(MIs)に応じて残余利益を配分しようというものである。ブランドや商標、顧客データなどのマーケティング上の無形資産(MIs)はそれぞれの市場国と一体の関係にあると見られることに着目して移転価格を算定するもので、HDBに限らず、伝統的な消費者向けビジネスも含めて、対象を広くとっている点が特徴である。 ③の場合、ネクサスを見直す観点から、非居住者であっても、市場国から定期的に収入を得、かつ一定の要件(例えば、現地通貨又は現地の支払方法での請求や回収、現地語でのホームページの維持、等)を満たす場合に、市場国での課税権を認めるというものである。 【第二の柱】 第一の柱と相互補完的な関係にあるものとして、無税・低税率国への利益移転を防止する措置として、①所得合算ルール(income inclusion rule)及び、②税源浸食的支払いの損金不算入(tax on base eroding payments)が提示された。 これらは、すでに米国でトランプ税制改革の一環として導入された、CFCの課税所得のうちCFCが保有する有形償却資産額の10%を超える額を合算対象とするGILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)、国外関連者への特定支払額に対する追加課税(ミニマムタックス)であるBEAT(Base Erosion and Anti-Abuse Tax)と類似するように見える。 (了)

#No. 307(掲載号)
#小畑 良晴
2019/02/21

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第7回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成①-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第7回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成①-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回から何回かにわたって、前回と同じ主題(「租税法律主義と実質主義との相克」)の下で、税法の解釈適用の「過形成」について、裁判例を素材にして検討していくことを、前回の最後(Ⅳ)で予告しておいたが、今回は、税法の目的論的解釈の「過形成」として、課税減免制度濫用の法理(【47】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)を取り上げることにする。 課税減免制度濫用の法理については、既に第2回のⅢ2で簡単に前触れしたところであるが、外国税額控除規定(法税69条)を利用した租税回避事案(外国税額控除余裕枠利用事件のうちりそな銀行事件)において同規定の適用を否認した最判平成17年12月19日民集59巻10号2964頁を検討していく中で、同判決の基礎にある考え方をそのように呼ぶようになったのである(拙著『租税回避論』(清文社・2014年)第2章第1節[初出・2007年]も参照)。この判決は次のとおり判示している(下線筆者。最判平成18年2月23日訟月53巻8号2461頁も参照)。 この判決を検討した頃から、税法の目的論的解釈の「過形成」に関する筆者の研究が(当初は「過形成」という言葉は用いていなかったものの)本格化したのであるが、以下では、その前段階の研究も含めて「過形成」研究を簡単に振り返りながら、課税減免制度濫用の法理の論理構造及び本質的性格を明らかにすることにしよう。   Ⅱ 課税減免規定の限定解釈 筆者が外国税額控除余裕枠利用事件を検討する契機となったのは、租税法学会第32回総会(2003年10月19日・岡山大学)で「司法過程における租税回避否認の判断構造-外国税額控除余裕枠利用事件を主たる素材として-」と題する報告(租税法研究32号(2004年)53頁[前掲『租税回避論』第1章第2節所収])をすることになったことである。この報告では、同事件のうち特に三井住友銀行事件・大阪高判平成14年6月14日訟月49巻6号1843頁を検討した。 この判決は、外国税額控除規定について「その趣旨・目的に合致しない場合を除外するとの解釈」をとる余地を認めた。そのような解釈は課税減免規定の限定解釈(【46】)と呼ばれるが、これは、課税減免規定に係る適用除外規定の欠缺(いわゆる隠れた欠缺)を補充する「解釈」であり、厳密にいえば、狭義の法解釈(可能な語義の枠内での法解釈)とは区別されるべき一種の法創造である。もっとも、当該課税減免規定の趣旨・目的が、文言による表現に匹敵するほどの明確性をもって、一般に認識可能である、というような厳格な要件を充たす場合には、その趣旨・目的に照らして当該課税減免規定の限定解釈を行うことは、一般論としては、租税法律主義の下でも許容されよう。 これを外国税額控除規定についてみると、同規定の趣旨・目的が国際的二重課税の排除であることは、文言による表現に匹敵するほど明確であると考えられるので、同規定における外国法人税の「納付」という要件から、その趣旨・目的に合致しない場合(例えば国際的二重課税の発生のみを目的とする取引に基因する外国法人税の「納付」。今回取り上げる事件における外国法人税の「納付」も見方によってはこれに該当する)を除外するとの解釈をとることは、租税法律主義の下でも許容されよう。そのような解釈は、狭義の法解釈の限界を超える一種の法創造であるとはいえ、それでもなお依然として要件の文言を「解釈」しようとする方法論的立場を堅持しているのである(「解釈的」方法による法創造)。   Ⅲ 課税減免制度濫用の法理 これに対して、前掲りそな銀行事件・最判は、先に引用した判示から明らかなように、外国法人税の「納付」という要件についてその文言の解釈には(少なくとも判決文上は)全く言及していない。 この点については、確かに、次の見解(金子宏『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)140-141頁)にみられるように、同最判を課税減免規定の限定解釈の「例」としてその射程内に位置づける理解も示されてはいる。 しかし、繰り返しになるが、同最判は、端的に、「本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは,外国税額控除制度を濫用するものであり,さらには,税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。」(下線筆者)と判示するのみである。もっとも、この判示部分のうち「外国税額控除制度を濫用するもの」は、外国税額控除制度の趣旨・目的に反する同制度の利用を意味するが、このことから直ちに、「本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすること」が「許されない」と判断しているわけではない点については、更に立ち入った検討が必要である。 同最判は、上記の判断において「税負担の公平を著しく害するもの」という判示を介在させている。租税負担の公平は、租税理論・政策上も租税憲法(租税平等主義)上も租税法律の内容を構成し規定する基本的要素であり(含み公平観。【21】・第2回Ⅱ参照)、これを(著しく)害するものは、租税法律の観点から(著しく)不当と評価されるべきものである(【69】も参照)。「租税負担の公平=租税正義」(ドイツ語ではいずれもSteuergerechtigkeit)という「等式」が成り立つ所以である。つまり、同最判は、「外国税額控除制度を濫用するもの」に対して不当という税法的評価を加え、「外国税額控除制度を濫用するもの」をその不当性に基づき「許されない」と判断したものと解される。 要するに、外国税額控除制度という課税減免制度の趣旨・目的を探知すれば、当該制度の利用が当該制度の濫用(趣旨・目的に反する利用)に該当するかどうかを認識することはできるが、しかし、濫用の認識から直ちに、当該制度の濫用を「許されない」とする価値判断を導き出すことはできず、濫用の認識に不当という税法的評価が付加されて初めて、「許されない」とする価値判断が成立するのである。 同最判による外国税額控除否認の判断構造は、以上のようなものであると解されるが、そうすると、それは、課税減免規定の限定解釈による外国税額控除否認の判断構造とは明らかに異なるので、筆者としては、同最判の基礎にある考え方を課税減免制度濫用の法理と呼んで、課税減免規定の限定解釈とは一線を画することにしたのである。すなわち、課税減免制度濫用の法理は、課税減免規定の限定解釈とは異なり、当該規定をその趣旨・目的に照らして限定的に解釈することによって当該規定に係る適用除外規定を創造する考え方ではなく、課税減免制度の趣旨・目的それ自体を「規範」として用い、当該制度の濫用(趣旨・目的に反する利用)を認識し、その認識に不当という税法的評価を付加することによって、当該制度の濫用を否認するための「法規範」を創造する考え方であると考えるところである。 前述のとおり、「租税負担の公平=租税正義」という「等式」が成り立ち、しかも課税減免制度の濫用が、当該制度の趣旨・目的に従って当該制度の適用を受ける者及び受けない者との間で「不公平」を発生させる以上、税法の解釈適用者(税務官庁や裁判官)の「気持ち」が、課税減免制度の濫用を「(正義に反するという意味で)不当」とみて、その濫用を否認するための「法規範」を創造しようとする方向に動くのも、理解できないわけではない(【67】も参照)。 さらには、次の見解(平野嘉秋「外国税額控除余裕枠の利用の可否(大阪地裁平成13年5月18日判決)」税務弘報50巻4号(2002年)60頁、71-72頁)が指摘するような国家財政に対する悪影響、一般の納税者の納税道義の低下のおそれ等も、税法の解釈適用者の前記のような「気持ち」の動きを後押ししたのかもしれない(杉原則彦「判解」最高裁判所判例解説民事篇平成17年度(下)990頁、997頁も参照)。 課税減免制度濫用の法理の下で行われる法創造は、「解釈的」方法による法創造ではなく、「租税法規の趣旨・目的の法規範化」による法創造ともいうべきものである(【47】)。これを認める考え方を筆者は「租税法規の趣旨・目的の法規範化論」と呼んでいるが、課税減免制度濫用の法理はその(代表的な)1つである(拙稿「租税回避と税法の解釈適用方法論-税法の目的論的解釈の『過形成』を中心に-」岡村忠生編著『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(ミネルヴァ書房・2015年)1頁、13頁以下参照)。   Ⅳ おわりに 最後に、租税法規の趣旨・目的の法規範化論、とりわけ課税減免制度濫用の法理について、租税法律主義及び実質主義との関係を述べておこう。 租税法規の趣旨・目的の法規範化論は、租税法規の要件の解釈によって法規範を定立しこれを事案に適用するのではなく、租税法規の趣旨・目的それ自体を法規範として事案に適用し、その趣旨・目的に反する納税者の行為を租税法規の適用上否認する考え方である。とりわけ課税減免制度濫用の法理は、課税減免制度の濫用(趣旨・目的に反する利用)に租税負担の公平の観点から不当という税法的評価を付加し、もって課税減免制度の趣旨・目的からいわば「不文の濫用規制要件」ともいうべき法規範を創造し、これを事案に適用して課税減免制度の適用を否認する考え方である。 課税減免制度にそのような「不文の濫用規制要件」が内在することを認めこれを適用して課税減免制度の濫用を否認することを容認することは、課税に租税法律上の明文の根拠を要求する租税法律主義にとって「自己否定」ともいうべきものである。換言すれば、租税法律主義の下では、「租税負担の公平=租税正義」という「等式」は、租税法律上の明文の規定の存在を前提にして、その規定の枠内においてのみ、成立すべきものなのである(含み公平観。【21】・第2回Ⅱ参照)。要するに、租税法律主義の下では、課税減免制度の濫用を否認するためには、平成13年度税制改正によって新たに定められた濫用規制要件(法税69条1項括弧書・同令141条4項[現行142条の2第5項])のような明文の否認規定が不可欠である。 他方、前記のような「不文の濫用規制要件」を創造するために租税負担の公平の観点から課税減免制度の濫用に対して不当という税法的評価を加えるという思考過程は、経済的実質主義への「先祖返り」(前回Ⅲ2参照)の道に通じるものである。その道程の「分岐点」にあるのが、税法の目的論的解釈である。 税法の目的論的解釈と実質主義との関係について、実質主義を定める規定の創設が税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月。公益社団法人日本租税研究協会ウェブサイト「税制調査会答申集」)4頁で答申されたにもかかわらず国税通則法の制定に当たっては結局のところ見送られたことを受けて、以下のような見解が示されるようになった(①植松守雄「税法上の実質主義について」税経通信23巻10号(1968年)129頁、130頁、②広瀬時江『判例を中心とする税金問題の研究』(財経詳報社・1971年)63頁、③下村芳夫「租税法律主義をめぐる諸問題-税法の解釈と適用を中心として」税務大学校論叢6号(1972年)1頁、28頁)。 しかし、次の見解(前記②66頁)が正当にも指摘するように、先に述べた「分岐点」にある税法の目的論的解釈を誤って「過形成」してしまうと、租税法律主義の下では許容されない解釈方法をその「分岐点」において選ぶことになり、経済的実質主義への「先祖返り」の道を進むことになるのである。 この見解は、目的論的解釈の「過形成」に関する研究の必要性(前回Ⅳ参照)を指摘するものとして、現代においてもなお傾聴すべき価値を失っていない、いやむしろ課税減免制度濫用の法理など最近の判例の考え方をみるとその価値を増している、とさえ考えるところである。 (了)

#No. 307(掲載号)
#谷口 勢津夫
2019/02/21

〔平成31年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】「「法人税率の段階的引下げ」「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」「租税特別措置法の適用期限の延長」」

〔平成31年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「法人税率の段階的引下げ」 「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」 「租税特別措置法の適用期限の延長」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   平成30年度税制改正における改正事項を中心として、平成31年3月期の法人税申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第2回】は「情報連携投資等の促進税制(IoT税制)」及び「法人税における収益の認識等の基準」について解説した。 【第3回】は、「法人税率の段階的引下げ」、「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」及び「租税特別措置法の適用期限の延長」について、平成31年3月期決算申告において留意すべき点を解説する。   1 法人税率の段階的引下げ 平成28年度税制改正により、法人税率の段階的な引下げが行われている。平成28年4月1日以後に開始する事業年度においては23.4%が適用されていたが、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては、23.2%が適用される。したがって、平成31年3月期の決算申告においては、法人税率の変更が必要となる。平成28年度税制改正による段階的引下げとしては、今回が最後の引下げになる。 また、平成31年3月31日までに開始する事業年度については、中小法人等に対する軽減税率(本来は19%)が、特別措置により15%に引き下げられている。したがって、平成31年3月期決算においては、中小法人等の軽減税率としては前年度と同じ15%が適用される。 【法人税率】 (※) 資本金又は出資金1億円以下の法人のこと(資本金又は出資金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)。 なお、平成31年度税制改正により、中小法人等に対する軽減税率の適用期間が2年間(平成33年3月31日までに開始する事業年度まで)延長される予定である。   2 欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長 ① 繰越控除限度額の見直し 平成27年度税制改正及び平成28年度税制改正により、中小法人等を除き、欠損金の繰越控除限度額は、繰越控除前所得の50%相当額まで、段階的に引き下げられることになった。平成30年3月期決算申告においては、控除前所得の55%が控除限度であったが、平成31年3月期決算申告においては、控除前所得の50%まで引き下げられるので、注意が必要である。 ただし、中小法人等については、引き続き繰越控除前所得の100%相当額を繰越控除限度額とし、引下げは行われていない。 また、欠損金の繰越期間は9年であったが、平成31年3月期以降の発生分については、繰越期間が10年に延びる。 (※1) 資本金又は出資金1億円以下の法人(資本金又は出資金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)。 (※2) 平成31年3月期において発生した欠損金の繰越期間は10年だが、平成30年3月期以前に発生した欠損金の繰越期間は9年のままである。 ② 繰戻し還付の不適用の延長(中小企業者等以外の法人) 欠損金の繰戻し還付とは、青色申告法人において欠損金が生じた際に、これを過去の事業年度に繰り戻して、法人税の還付を受けられる制度のことである。 (※) 分母の金額を限度とする。 現在、中小企業者等以外の法人については、この制度が適用できないこととされている。さらに、不適用の期間が平成30年度税制改正によって2年間延長されたため、平成32年3月31日までに終了する事業年度においては適用することができない。   3 租税特別措置法の適用期限の延長 平成30年度税制改正において、いくつかの租税特別措置の適用期限が延長されている。ここでは、その中でも主なものについて解説する。 ① 交際費等 税務上の交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が得意先、仕入先等に対する接待、供応、慰安、贈答等のために支出する費用のことである。 平成26年度税制改正により、税務上の交際費等の課税関係は次表の通りとなった。これが平成28年度税制改正及び平成30年度税制改正を経て、平成32年3月31日までに開始する事業年度まで延長されている。したがって、平成31年3月期決算申告においても、交際費等の課税関係は平成30年3月期と変わらない。 【交際費等の課税関係】 (※1) 1人当たり5,000円以下の接待飲食費(社内接待費は除く)は、そもそも「交際費等」から除かれ、損金算入される。 (※2) 資本金又は出資金1億円以下の法人(資本金又は出資金5億円以上の大法人の100%子会社等は除く)。 ② 少額減価償却資産 取得価額10万円以上の減価償却資産であっても、30万円未満であれば、青色申告書を提出する中小企業者等においては、少額減価償却資産として取得時に全額損金算入できる特例が設けられている。ただし、次の点に注意が必要である。 また、取得価額30万円未満の減価償却資産が対象であるため、有形固定資産だけでなく、ソフトウェアや特許権等の無形固定資産も対象となる。新品の資産だけでなく、中古資産も同様である。 この特例は、平成30年3月31日までの取得等が対象とされていたが、平成30年度税制改正により、2年間(平成32年3月31日までの取得等)延長されている。したがって、平成31年3月期決算申告においては、中小企業者等は引き続きこの特例を適用できる。 (了)

#No. 307(掲載号)
#新名 貴則
2019/02/21

基礎から身につく組織再編税制 【第1回】「組織再編税制の考え方」

基礎から身につく組織再編税制 【第1回】 「組織再編税制の考え方」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   ◇◆◇連載開始に当たって◇◆◇ いわゆる「組織再編税制」は、平時の法人税務において頻出するものではなく、以前は基本的に一部の専門家のみが必要とする知識でしたが、企業のグローバル化を後押しする法整備によってM&A市場が活況を呈し、また事業承継問題を解決する一策としてその有効性がうたわれるようになってからは、中小企業を巻き込んだ組織再編も既に珍しいものではなくなりました。 このような状況下において、税理士だけでなく企業の財務・法務担当者など幅広い方々が組織再編税制を理解する重要性は非常に高まっているといえます。 そこで本連載では、初めて組織再編税制を学ぶ方々を対象に、その基礎となる知識をしっかりと身につけていただくことを念頭に、できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。   1 基本的な考え方 法人が組織再編成によりその保有する資産を他の法人に移転した場合には、譲渡(売却)をした場合と同様に、移転資産に対する譲渡損益を計上するのが法人税法上の原則です。 ただし、組織再編成により資産を移転する場合にも、移転前後で経済実態に実質的な変更がないと考えられるようなときは、新たな課税関係を生じさせず、従前の状態を継続させることが適当と考えられます。 したがって、組織再編成により移転する資産に対する支配が組織再編成後も継続していると認められるものについては、特例として、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。   2 組織再編税制の対象 組織再編税制の対象となる「組織再編」は、次のものをいいます。   3 税務上の取扱い 組織再編成においては、資産を移転する法人は、原則(非適格組織再編成)は移転資産の譲渡損益を計上することとされ、特例(適格組織再編成)で移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。 資産を取得する法人については、原則(非適格組織再編成)は移転資産を「時価」で取得することとなり、特例(適格組織再編成)では移転資産を「簿価」で引き継ぐこととされています。 一方、株主側の取扱いは、非適格組織再編成に該当する場合にはみなし配当が生じることとされ、対価として株式のみが交付されている場合には旧株式の譲渡損益の計上を繰り延べ、株式以外の資産の交付を受ける場合には旧株式の譲渡損益を計上することとされています。 (※) 金銭等の交付がなければ株式譲渡損益なし   4 適格組織再編成 「適格組織再編成」とは、以下の組織再編成をいいます。 ① 企業グループ内の組織再編成 企業グループ内組織再編成は、さらに、100%関係のグループ内で行われるもの(完全支配関係がある場合の組織再編成)と50%超関係のグループ内で行われるもの(支配関係がある場合の組織再編成)に分かれます。 支配関係がある場合の組織再編成については、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別する観点から、資産の移転が独立した事業単位の移転であること、組織再編成後も移転した事業が継続されることが要件として必要です。 ② 共同事業を営むための組織再編成 共同事業を営むための組織再編成に該当するかどうかについては、①の要件に加え、組織再編成により1つの法人組織で行うこととした事業が相互に関連性を有するものであること、それぞれの事業の規模が著しく異ならないことなどにより判定するものとされています。 ③ スピンオフ(独立して事業を行う場合の組織再編成) 平成29年度税制改正により創設されたもので、支配株主のない法人の実質的な支配者はその法人そのものであり、その法人自身の分割であるスピンオフについては、単にその法人が2つに分かれるような分割であれば、移転資産に対する支配は継続していることから適格組織再編成として取り扱われることになりました。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 適格要件を満たすものについては、移転資産等に対する支配が継続しているとされ、譲渡損益が繰り延べられますが、適格要件の詳細については次回以降で説明することとします。   5 繰越欠損金と資産に係る含み損の制限 適格合併が行われた場合には、資産移転法人の未処理欠損金を引き継ぐこととされています。ただし、欠損金の利用のみを目的として適格合併が行われることが想定されるため、一定の引継制限が課されています。 適格組織再編成で資産移転法人の帳簿価額で資産の引継ぎをすると、含み損益が資産取得法人に移転するため、含み益資産を譲渡することで含み益を実現させ、資産取得法人の欠損金を使用することができます。したがって、資産移転法人の含み益と資産取得法人の欠損金を相殺させる租税回避を防止するため、資産取得法人の欠損金についても一定の使用制限が課されています。 適格組織再編成により移転する資産は、資産移転法人の帳簿価額で引き継ぐこととされていますが、その資産の含み損の利用を目的とする租税回避を防止する観点から、一定の適格組織再編成を行った法人が移転を受けた資産を譲渡することで含み損を実現した場合には、その損失を損金の額に算入しないという規定が設けられています。   6 租税回避防止規定 組織再編成の形態や方法は複雑かつ多様であり、資産の売買取引を組織再編成による資産の移転とするなど、租税回避の手段として濫用されるおそれがあります。 その防止を目的として、組織再編成に係る包括的な租税回避防止規定が設けられており、組織再編成における資産移転法人(※)又は資産取得法人(※)に係る法人税の負担を不当に減少される結果となると認められるときは、その行為又は計算が否認されることとされています(法法132の2)。 (※) 株主についても所得税、相続税に同様の規定が設けられています。 ◆組織再編成における税務上のポイント◆ 適格組織再編成に該当するかどうかの検討 繰越欠損金の引継制限、使用制限に該当するかどうかの検討 資産の含み損の使用制限に該当するかどうかの検討 組織再編成を利用した租税回避行為に該当すると指摘されるリスクの検討   (了)

#No. 307(掲載号)
#川瀬 裕太
2019/02/21

相続税の実務問答 【第32回】「相続人間で相続分の譲渡が行われている場合の相続税の申告」

相続税の実務問答 【第32回】 「相続人間で相続分の譲渡が行われている場合の相続税の申告」   税理士 梶野 研二   [答] 相続税の申告期限までに遺産分割が調わない場合には、法定相続分の割合で相続財産を取得したものとして、相続税の課税価格を計算して相続税の申告をすることとなります。 この場合、相続人間で相続分の譲渡が行われていた場合には、相続分の譲渡が行われた後の相続分の割合により相続税の課税価格の計算をすることとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続分の譲渡 民法に相続分の譲渡について直接規定した条文はありません。しかし、「共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる」との民法第905条第1項の規定は、共同相続人の1人が、相続開始から遺産分割までの間に、その相続分を譲渡できることを前提としていることから、民法は、遺産分割前の共同相続人の相続分を他の共同相続人又は第三者に譲渡することを認めていると解されます。 他の共同相続人に対して相続分の譲渡がされた場合には、当該譲渡の当事者である共同相続人の相続分が変わるにすぎません。これに対して、共同相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合には、当該第三者が、相続人と同じ地位に立ち、相続財産の管理・遺産分割の手続きにも加わることとなります(新基本法コンメンタール「相続」103頁(木村敦子)・2016年日本評論社)。   2 相続分の譲渡があった場合の相続税法第55条の適用 相続税法第55条は、遺産の全部又は一部が未分割の場合には、未分割財産については、各共同相続人が民法(904条の2を除きます)の規定による相続分に従って未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する旨を定めています。 相続税の申告期限までに遺産分割が行われず、共同相続人間で相続分の譲渡が行われた場合に、各共同相続人が民法(904条の2を除きます)の規定による相続分に従って未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する場合の具体的な計算方法について、①相続分の譲渡が行われた場合であってもそれにかかわらず本来の相続分により計算すべきか、又は②相続分の譲渡が行われた後の相続分により計算すべきか、判断に迷うところです。 この点について、最高裁判所第三小法廷平成5年5月28日判決は、相続税法第55条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれるとした原審判決(平成元年8月30日東京高裁判決)を正当として是認することができるとしました。 この判決により、相続税の申告書を提出する際に、共同相続人間で遺産分割が行われておらず、かつ、共同相続人間で相続分の譲渡が行われていた場合には、相続分の譲渡が行われた後の相続分により、相続税の課税価格の計算を行うことが明らかになりました。 〇昭和62年10月26日東京地裁判決(下線筆者)   3 ご質問の場合 相続税の申告書の提出期限である平成31年3月25日までに、あなた方姉妹4人による遺産分割協議が調わない場合には、相続税法第55条の規定に基づきそれぞれの相続分の割合でお父様の遺産を取得したものとして、相続税の申告を行います。 あなた方姉妹の相続分は、本来、4分の1ずつですが、あなたが妹さん(四女)の相続分(4分の1)を無償で譲り受けた場合には、あなたの相続税法第55条に定める相続分は2分の1(本来の4分の1に妹さんの相続分を加算した割合)となり、妹さん(四女)の相続分はないこととなります。 したがって、あなたが2分の1、二女の方と三女の方が各4分の1の割合でお父様の遺産を取得したものとして、相続税の申告を行うこととなります。   (了)

#No. 307(掲載号)
#梶野 研二
2019/02/21

企業の[電子申告]実務Q&A 【第15回】「電子申告の利用可能手続と利用可能時間」

企業の[電子申告]実務Q&A 【第15回】 「電子申告の利用可能手続と利用可能時間」   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● 前回まで、大法人の電子申告の義務化の概要や、今後予定されている電子申告の利便性を向上させるための各種施策について触れてきましたが、今回からは、あらためて電子申告の概要について確認していきたいと思います。   1 電子申告の利用可能手続 (1) e‐Taxで利用できる手続 e‐Tax(国税電子申告・納税システム)で利用できる手続は、国税に関する申告、納税及び申請・届出等の各手続で、具体的には次の手続に利用できます。 (2) eLTAXで利用できる手続 eLTAX(地方税ポータルシステム)で利用できる手続は、地方税に関する申告、納税及び申請・届出等の各手続で、具体的には次の手続に利用できます。 (※ 実際に利用できる手続は地方公共団体ごとに異なります。) なお、電子申告の利用対象者は、各税法等に基づき、申告、納税、申請・届出等の手続を行う必要のある個人納税者及び法人納税者のうち、インターネットを利用できる環境を有し、かつ、電子署名用の電子証明書を保有している方です(納税手続等のみを利用する場合には、電子証明書は不要です)。 また、税理士及び税理士法人等(以下、「税理士等」といいます)の税理士業務を行う方も電子申告を利用することができます。税理士等が納税者の申告等データを作成し送信する場合には、納税者の電子署名を省略し、税理士等の電子署名の付与及び電子証明書の添付のみで送信することができます。 【電子申告で利用可能な手続】 (※1) 復興特別所得税を含み、死亡した方の準確定申告を除きます。 (※2) 相続税申告については、2019年10月以降、一部手続について利用開始予定です。 (※3) 連結法人税・連結地方法人税、復興特別法人税を含みます。 (※4) 個人及び法人ともに手続可能ですが、個人消費税については死亡した方の準確定申告を除きます。 (※5) 2018年12月現在、電子納税に対応している地方自治体は、全国約1,800自治体のうち東京都を含む22ヶ所のみですが、2019年10月より「地方税共通納税システム」が導入される予定で、今後利用可能自治体が大幅に拡大される予定です。   2 電子申告の利用可能時間 (1) e‐Taxの利用可能時間 e‐Taxが利用可能な時間帯は、「確定申告期間中の24時間受付」、「法人税申告書の提出件数が多い5月、8月及び11月の最終土日受付」など、サービス開始以降、順次拡大が図られてきました。 さらに、2019年1月以降は、これまで確定申告期間中のみに実施されていた「24時間受付」が平日(月曜日~金曜日)すべてに拡大され、土日についても毎月の最終土日の受付(8時30分~24時)へと拡大されました。 (2) eLTAXの利用可能時間 eLTAXが利用可能な時間帯についても、「平日夜間の受付時間の拡大」や「特定月の最終土日の受付」など、e‐Taxに対応する形で順次利用可能時間の拡大が図られています。 なお、2019年1月現在の「電子申告の利用可能時間」は以下のとおりです。 (※1) 祝日等の翌稼働日は、8時30分から利用可能となります。 (※2) メンテナンス時間は、毎週月曜日0時~8時30分です。 (了)

#No. 307(掲載号)
#坂本 真一郎
2019/02/21

企業結合会計を学ぶ 【第11回】「のれん及び負ののれんの会計処理」

企業結合会計を学ぶ 【第11回】 「のれん及び負ののれんの会計処理」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、のれん及び負ののれんの会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ のれんの会計処理 1 基本的な会計処理 取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額はのれんとして企業結合会計基準32項に従って会計処理し、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして企業結合会計基準33項に従って会計処理する(企業結合会計基準31項、98項)。 のれんの基本的な会計処理等は次のとおりである(企業結合会計基準32項、47項)。 2 のれんの会計処理に関する留意点 のれんの会計処理に関する留意点は次のとおりである(結合分離適用指針76項、380項~382項)。 3 在外子会社株式の取得等により生じたのれんの会計処理 在外子会社株式の取得等により生じたのれんは、在外子会社等の財務諸表項目が外国通貨で表示されている場合には、当該外国通貨で把握し、決算日の為替相場により換算する(結合分離適用指針77-2項)。 当該外国通貨で把握されたのれんの当期償却額については、当該在外子会社等の他の費用と同様に換算する(「外貨建取引等会計処理基準」三、結合分離適用指針382-2項)。   Ⅲ のれんの減損処理 のれんは「固定資産の減損に係る会計基準」の適用対象資産となる(「固定資産の減損に係る会計基準」一、二8)。 企業結合会計基準は、例えば、株式の交換による企業結合のプロセスにおいて、買収対価(発行株式金額)の過大評価や過払いが生じている可能性がある場合に、のれん等が過大に計上される状況が考えられるとし、特に、次の場合には、企業結合年度においても減損の兆候が存在すると判定されるときもあるとしているので、注意が必要である(企業結合会計基準109項、結合分離適用指針77項)。   Ⅳ 負ののれんの会計処理 1 基本的な会計処理 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の会計処理等を行う。ただし、負ののれんが生じると見込まれたときにおける取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該下回る額を当期の利益として処理することができる(企業結合会計基準33項、48項)。 企業結合会計基準111項は、上記の負ののれんの会計処理について、負ののれんが生じると見込まれる場合には、まず、取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(企業結合会計基準30項の負債を含む)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直すこととしたとしている。 そして、次に、この見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る場合には、当該不足額を発生した事業年度の利益として処理することとしたと説明している。 2 負ののれんの会計処理に関する留意点 負ののれんの会計処理に関する留意点は次のとおりである(結合分離適用指針78項)。   Ⅴ のれんの会計処理に関する公認会計士・監査審査会の指摘 公認会計士・監査審査会の「監査事務所検査結果事例集」(平成30年7月31日)では、のれんに関して、次のように問題となった事例を記載しているので、のれんの会計処理等について注意する。 (了)

#No. 307(掲載号)
#阿部 光成
2019/02/21

企業経営とメンタルアカウンティング~管理会計で紐解く“ココロの会計”~ 【第11回】「「よくある話」は本当によくあるのか」

企業経営と メンタルアカウンティング ~管理会計で紐解く“ココロの会計”~ 【第11回】 「「よくある話」は本当によくあるのか」   公認会計士 石王丸 香菜子   ・・・(20分後)・・・ *資料* PN社の当期財務データの要約は以下の通りである。 (※) 内訳:前期末棚卸資産13,500+仕入高209,000-当期末棚卸資産12,500 *  *  * 1 「よくある話」は、実際にはそれほど起こらない どこかで飛行機事故があって、大々的に報道されると、しばらくは飛行機に乗りたくないと思いませんか? 飛行機は毎日世界中を網の目のように飛んでおり、実際に事故が起こる確率は極めて低いのですが、大きなニュースとして連日取り上げられると、事故が起こる確率が高いような気がするものです。 一般に、ある印象的な事がらが、大々的に報道されたり、自分の身近なところで起こったりすると、その後、同様の事がらについて、発生する可能性を高く見積もったり、優先して判断してしまう傾向が生じます。記憶から取り出しやすい事がらを、優先して判断してしまうこのような傾向は、「」と呼ばれます(「ヒューリスティック」とは、意思決定や判断に際し、答えを見つけるために簡便的に経験則や推論を使うことを指します)。 カズノ君は、『勘定合って銭足らず』(利益が計上されているのに、資金が足りないこと)や『黒字倒産』がPN社にも起こるのではないかと心配していますが、これも、こうした事がらが報道などで何度も取り上げられ、記憶から取り出しやすい情報であるために、これらに重きを置いて判断した結果と言えそうです。大半の順調な企業については取り上げられることがないので、連想しにくいのですね(もちろん、『勘定合って銭足らず』や『黒字倒産』が起こることもあるのですが、近年の日本での倒産件数は減少傾向にあり、バブル期並みの水準です)。 第2事業部長によれば、経理部長は綿密に資金繰り表を作成して資金管理しているので、実際には資金ショートを起こすことはなさそうです。しかも、経理部長は、通常の資金繰り管理だけでなく、「PN社の成長のためにCCCの短縮化を図る」ことを目標としているようですね。 では、CCCとはどんな指標なのでしょうか。   2 現金支払から現金回収までのタイムラグを短くする とは、企業が商品や原材料などの仕入代金を支払ってから、商品や製品などの売上代金を回収するまでの期間を指します。 下図を例に、商品仕入から販売代金回収までの流れを考えてみましょう。 この場合、買掛金を支払った25日目(③)から、売掛金を回収するまでの50日目(④)までの期間である25日間(上図の)は、現金を支払ったものの、現金を回収できていない状態と言えます。この期間が、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。 CCCは言わば支払から回収までのタイムラグなので、これが短いほど資金に余裕があると言えます。つまり、CCCは短いほうが望ましいのです。 現実には、仕入や販売、現金の支払や回収のタイミングは、取引ごとに異なり、こうした取引が大量に積み重なっていますので、CCCは財務数値から計算することになります。 なお、独特な言い回しですが、図の青い矢印の各期間を「回転期間」と呼びます。例えば、仕入債務(買掛金)を計上してからこれを回収するまでの期間(C)は、「仕入債務回転期間」です。 資料から、PN社のCCCを計算してみましょう。 ※上記は計算例ですので、必ずこの方法でなければならないというわけではありません。例えば、残高について複数時点の平均値を使用すれば、より正確な値を求めることができます。 近年、このCCCの短縮化を重視する企業が増えています。CCCを短縮化できれば、資金が短い期間で手元に戻ってくることになるので、その資金を別の投資機会や研究開発などに早く利用し、企業が成長することができるからです。経理部長が、通常の単なる資金繰り管理だけでなく、CCCの短縮化を目標としているのも、こうした理由からでしょう。 なお、CCCは業種や業態によりかなりばらつきがありますが、通常はプラスです(回収よりも支払が先行している状態です)。しかし、アマゾンやアップルなどはCCCがマイナスであることで知られています。つまり、驚くべきことに、支払よりも先に資金を回収している(!)のですね。 ◆◇◆今回のキーワード◆◇◆ ▷ 記憶から取り出しやすい事がらについて、確率を高く見積もったり、優先して判断したりする傾向のこと。 ▷ 仕入代金支払から販売代金回収までのタイムラグのこと。短いほうが望ましい。 (了)

#No. 307(掲載号)
#石王丸 香菜子
2019/02/21

組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q14】「会社分割により労働契約はどうなるか」

組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q14】 会社分割により労働契約はどうなるか   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   【A】 分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがある労働契約は承継される。ただし、異議申出をすることにより、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがなくても承継会社へ労働契約が承継されたり、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがあっても承継会社へ労働契約が承継されない場合がある。 (※) 本稿では、会社分割により事業を分割する会社を「分割会社」、それを承継する会社(新設分割の場合の新設会社も含む)を「承継会社」という。    分割契約又は分割計画 会社分割をする際、分割会社と承継会社において、吸収分割の場合は分割契約を締結し、新設分割の場合は分割計画を作成するが、そこには会社法に基づく一定の事項を定める必要がある(会社法758条、763条等)。 【(例)吸収分割の場合に分割契約において定める必要がある事項】 上記②の「承継会社が分割により分割会社から承継する権利義務に関する事項」には、承継会社が分割会社から承継する「労働契約」に関する事項が含まれる。このため、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがある労働契約は、原則として分割会社から承継会社へ承継されることとなる。    労働契約の承継の例外 分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがある労働契約は、原則として分割会社から承継会社へ承継されるが、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがなくても分割会社から承継会社へ労働契約が承継される場合がある。また、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがあっても承継会社に労働契約が承継されない場合がある。 会社分割をする際に労働契約が承継されるか否かは、次の点から判断され、それぞれ次の通りとなる。 上記をまとめると下表の通りとなる。 (了)

#No. 307(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2019/02/21
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