《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成30年4月~6月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、平成30年12月17日、「平成30年4月から6月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加された裁決は表のとおり、全18件で、法人税法が6件、所得税法が4件、国税通則法が3件、消費税法及び国税徴収法が各2件、登録免許税法が1件となっている。18件の公表裁決のうち、国税不服審判所によって課税処分等の全部又は一部が取り消された裁決が11件、棄却又は却下された裁決が7件となっている。 【表:公表裁決事例平成30年4月~6月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された18件の裁決事例のうち、国税通則法、所得税法及び法人税法から、それぞれ1件について、その判断のポイントを中心に紹介したい。いつものお断りであるが、論点を整理するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。 1 更正すべき理由がない旨の通知処分取消請求事案(贈与税の更正の請求をできる者)・・・① 本件は、審査請求人が、債務者に対して有する金銭債権を保全するため、原処分庁に対し、当該債務者が行った贈与税の申告について更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正の請求をすることができるのは納税申告書を提出した者に限られるとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が当該通知処分の全部の取消しを求めた事案である。 請求人は、債務者を被告として、債務者が贈与により取得した土地について贈与契約の取消しを求める詐害行為取消権を争った裁判で勝訴が確定したことから、当該贈与に係る贈与税の還付請求権に対する差押えを行い、次いで、債務者に代位して、贈与税について更正の請求を行ったところ、原処分庁から、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたものである。 (1) 争点 本件の争点は、請求人は債権者代位権又は取立権に基づいて更正の請求をすることができるか否か、である。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、贈与税は申告納税方式により納付すべき税額が確定する国税であり、原則として納税者の申告により納付すべき税額が確定し、税務署長による処分は補助的な地位に置かれているところ、その趣旨は、課税要件に関する事実関係に最も通じているのは贈与税の納税者本人であり、贈与税の納税者は納税申告により具体的な租税債務を負担することとなるから、贈与税の納税者自身の判断と責任において申告させることが最も適切であるからにほかならないと判示した。 そのうえで、贈与税の更正の請求は、申告納税方式の一環として贈与税の納税者自らの請求によって申告により確定した贈与税額の是正を認めたものであり、通則法及び相続税法の規定上も、贈与税の更正の請求をすることができる者は贈与税の納税者に限られており、それ以外の者が更正の請求をすることができることを規定した法令は存在しない、として請求人の主張を退けた。 また、請求人が主張する債権者代位権による更正の請求の可否については、審判所は、民法第423条第1項ただし書は、債務者の一身に専属する権利は債権者代位の目的とならない旨規定しており、行使上の一身専属権(その権利の行使をするか否かが専ら債務者の意思のみに委ねられる権利)は代位権の目的から除外されており、更正の請求をする権利は、納税申告書を提出した者の行使上の一身専属権に当たることから、債権者代位の目的から除外されることとなり、請求人の主張には理由がないと判断した。 さらに、請求人による取立権を有する者は更正の請求をすることができるという主張に対しては、審判所は、民事執行法第155条第1項による取立権も、債務者の一身専属権には及ばないものと解されていることから、更正の請求をする権利が、納税申告書を提出した者の行使上の一身専属権に当たる以上、請求人の主張には理由がないと結論づけた。 2 源泉所得税等の納税告知処分取消請求事案(取締役が不正に取得した金員)・・・ ⑤ 本件は、原処分庁が、鮮魚、海産物の販売及び加工業を営む同族会社である審査請求人の取締役G(請求人の代表取締役Eの実弟)が、請求人から不正に取得した金員について、当該取締役に対する給与であると認定し、請求人に対し源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分並びに重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該金員について、当該取締役が請求人の意思に反して横領したものであって、当該取締役に対する給与ではないなどと主張して、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 本件の争点は、取締役Gが請求人から不正に取得した金員は、請求人が取締役Gに支給した給与等に該当するか否か、である。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、所得税法第28条第1項に規定する給与所得について、規定の趣旨から、給与所得を実質的に解し、雇用契約に限らず、これに類する委任契約などの原因に基づき提供した労務又は役務の対価として、あるいは労務又は役務を提供する地位に基づいて支給されるものを含むものと解されると法律解釈を述べた。 そのうえで、代表者等が法人経営の実権を掌握し法人を実質的に支配している事情がある場合に、代表者等が、自己の権限を濫用して、当該法人の事業活動を通じて得た利得は、給与支出の外形を有しない利得であっても、法人の資産から支出をし、その支出を利得、費消したと認められるときには、実質的に、代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与等であると解されるという判断を示した。 一方、取締役Gに関しては、審判所は、請求人の株式の25%を保有するにすぎず、代表権もない一方で、代表取締役Eは、請求人の株式の75%を保有し、代表権を有していることからすると、取締役Gは、法律上、単独で請求人の業務執行等を決定する地位にはなかったことが認められ、事実上もそのような地位にあったことを認めるに足りる証拠はないことから、取締役Gが請求人の業務において影響力を有していたとは認められず、経理業務の重要な部分を任せられていたとも認められないと判断した。 そして、取締役Gが、請求人の経営の実権を掌握し、請求人を実質的に支配していたとは認められない以上、取締役Gが、その地位及び権限に基づいて請求人から本件金員を得たものとは認められず、本件金員は、請求人が本件役員に支給した給与等に該当するとは認められないと結論づけた。 3 法人税等の更正処分等及び消費税等の更正処分等取消請求事案(従業員名義による取引)・・・⑨ 本件は、原処分庁が、鉄、非鉄スクラップ及び非鉄含有スクラップ(家電製品、機械、銅屑、銅管及び電線を含む)等の販売を営む同族会社である審査請求人においてインターネットオークション事業に係る売上が計上されていないなどとして法人税等及び消費税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該事業は従業員の個人事業であるから当該事業に係る収益は請求人に帰属しないなどとして、その一部の取消しを求めた事案である。 (1) 争点 本件の争点は、請求人の従業員が行ったインターネットオークションにおける商品の出品及び販売に係る業務による収益が請求人に帰属するか否か、である。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、事業収益の帰属者が誰であるかは、当該事業の遂行に際して行われる法律行為の名義だけでなく、①事業の経緯、②業務の遂行状況、③業務に係る費用の支払状況及び④請求人の認識などの事実関係を総合勘案して、当該事業の主体は誰であるかにより判断することとなるとして、4項目について事実認定を行った。 その結果、審判所は、①法律行為の名義については、落札者に対して出品者として表示されるのは個人名義であるが、請求人の従業員であること、②オークション業務の遂行状況については、請求人の従業員が請求人の事務所において本件業務の事務及び落札商品の発送を行っており、請求人の仕入商品を出品することによって収益が獲得されていたこと、③費用の支払状況については、落札商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上した商品であった上に、業務に従事する者の給与についても請求人から支払われていたこと、④請求人代表者には本件業務で収益を得ていたとの認識があったこと、更に大量の中古雑品等の出品を、古物商許可すら受けていない従業員が業務の合間に請求人と無関係に行うことができるものではなく、むしろ請求人によってのみ行うことのできる業務というべきであることと結論づけて、オークション業務は請求人の業務の一環として行われたものとみるのが相当であると判断した。 なお、裁決が「一部取消し」となっているのは、インターネットオークション業務に係る費用の一部が従業員名義のクレジットカードで決済され、従業員給与の一部が計上されていなかった期間について、原処分庁が損金算入を認めなかった点について、審判所がこれを認めて処分の一部を取り消したものであることを付言しておく。 (了)
《速報解説》 地方法人課税の見直しについて ~平成31年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 平成30年12月14日、与党(自由民主党及び公明党)より平成31年度税制改正大綱が公表され、同月21日に閣議決定された。 今回の税制改正の基本的考え方の1つの柱の中には、「地方創生を推進するとともに、都市と地方が支え合い、ともに持続可能な形で発展していくため、地方税の充実確保を図りつつ、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組む必要がある。このため、地方法人課税における税源の偏差を是正する新たな措置を講ずる。」との記述がある。 地方税収の税源偏差是正は過去の税制改正においても何度か取り組まれてきた課題であり、現行税制においては「地方法人税」(法人住民税から分離)及び「地方法人特別税」(法人事業税から分離)の2つの税目がこれに対応するものであるが、地方法人特別税は平成31年10月1日以後開始事業年度より廃止されることとされている中、今回あらたに恒久的な措置として「特別法人事業税(仮称)」が創設されることとなった。 そこで本稿では、平成31年度税制改正における地方法人課税の改正点について取り上げる。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。 2 改正の概要 法人事業税の一部を分離して特別法人事業税(仮称)及び特別法人事業譲与税(仮称)を創設する。この制度は恒久的な措置とされる予定である。 特別法人事業税(仮称)は国税とし、都道府県が法人事業税とあわせて賦課徴収を行うとともに、徴収税額は「交付税及び譲与税配付金特別会計」に直接払い込んだ上で、都道府県に対して「人口」を基準として譲与する仕組みとされる。 なお本稿では、特別法人事業譲与税(仮称)に対する説明は省略する(大綱P56を参照)。 3 法人事業税の税率の改正 平成31年10月1日以後開始事業年度より、法人事業税の標準税率が下表の通り改正される。 【資本金の額又は出資金の額が1億円超の普通法人の所得割の標準税率】 (※) 制限税率についても、現行の1.2倍から1.7倍に引き上げる措置が講じられる。 【資本金の額又は出資金の額が1億円以下の普通法人の所得割の標準税率】 【特別法人の所得割の標準税率】 【収入金額課税法人の収入割の標準税率】 4 特別法人事業税(仮称)の創設 特別法人事業税(仮称)は、法人事業税(所得割又は収入割)の納税義務者に対して課される国税である。 課税標準は法人事業税額(標準税率により計算された所得割額又は収入割額)であり、税率は下表の通りとなる。 5 法定実効税率に与える影響 特別法人事業税(仮称)は、現在の「地方法人特別税」の廃止とともに導入されるものであり、その機能は地方法人特別税と同様、地方法人課税の税収偏差是正にあることから、基本的には税負担の増加には結びつかない(都道府県相互の税収配分に過ぎないため)。 例えば外形標準課税適用法人について、平成28年度以降の法定実効税率の推移をまとめると下表の通りとなる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 特別法人事業税(仮称)は地方法人特別税と同様、標準税率によって計算された法人事業税(所得割額又は収入割額)を課税標準とする税であるから、法定実効税率の算定上は地方法人特別税と同様に扱えばよいこととなる。 上表から明らかなとおり、特別法人事業税(仮称)の導入によっても法定実効税率は原則として変動しないと考えられる。 (了)
《速報解説》 個人事業者の事業承継税制の創設及び小規模宅地等特例の見直し ~平成31年度税制改正大綱~ 太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 髙田 泰輔 1 はじめに 平成30年12月14日に公表され同月21日に閣議決定された平成31年度税制改正大綱には、個人事業者の事業承継に係る贈与税・相続税の納税猶予制度が盛り込まれている。 平成30年度税制改正で法人の事業承継税制が拡充されたが、引き続き、個人事業者についても、事業承継を促進するために10年間の時限措置という形で事業承継税制が創設された。 この税制は非上場株式等に係る納税猶予制度の特例に準じた制度となっている。 2 改正の概要 (1) 個人事業者の事業承継税制の創設 後継者である認定受贈者・認定相続人が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、贈与・相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その取得者が納付すべき贈与税・相続税のうち、特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税・相続税の納税を猶予することとされる。 本制度の適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された承継計画を平成31年4月1日から平成36年3月31日までの間に都道府県に提出する必要がある。また、承継後においては3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない。 (2) 認定受贈者・認定相続人 「認定受贈者」・「認定相続人」とは、承継計画に記載された後継者であって、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の規定による認定を受けた者をいう。 一方、認定受贈者にあっては、18歳(平成34年3月31日までの贈与については、20歳)以上である者に限る(以下同じ)とされている。 なお、認定受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外の者であっても、その贈与者がその年1月1日において60歳以上である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができる。 (3) 特定事業用資産 「特定事業用資産」とは、贈与者・被相続人の事業(アパート・駐車場等の不動産貸付事業等を除く。以下同じ)の用に供されていた資産で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されている次のものをいう。 (4) 小規模宅地等の特例との選択適用 相続税について本制度の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用を受けることができないこととなる。 (※) 小規模宅地等の特例についても見直しがされ、平成31年4月1日以後、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く)が除外されることとなった。 (5) 猶予税額の計算・納付 猶予税額の計算方法は、非上場株式等についての納税猶予制度の特例と同様となる。 なお、債務控除を使った制度の濫用を防止するため、被相続人に債務がある場合には特定事業用資産の価額から当該債務の額(住宅ローン、教育ローン等の明らかに事業用でない債務の額を除く)を控除した額を猶予税額の計算の基礎とする等の措置を講ずることとされる。 認定受贈者・認定相続人が特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には、猶予税額の全額を、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等をした部分に対応する猶予税額を利子税と併せて納付しなければならない。 (6) 猶予税額が全額免除される場合 次の場合には、猶予税額の全額が免除されることになる。 (7) 猶予税額の一部が免除される場合 次の場合には、非上場株式等についての納税猶予制度の特例に準じて、猶予税額の一部が免除されることになる。 「経営環境の変化を示す一定の要件」は、非上場株式等についての納税猶予制度の特例に準じた要件とされる。要件を満たす場合には、廃業等の時点の資産価額で猶予税額を再計算し、差額が免除されることになる。 (8) 贈与者が死亡した場合 贈与者の死亡時には、特定事業用資産(既に納付した猶予税額に対応する部分を除く)をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税の計算をする。その際、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予の適用を受けることができることとされる。 (9) その他留意事項 (了)
《速報解説》 配偶者居住権の評価方法等、相続法改正に係る税制上の措置 ~平成31年度税制改正大綱~ 税理士法人トゥモローズ 代表社員 税理士 角田 壮平 1 はじめに 「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が平成30年7月に公布され、相続に関する規律が見直されたことに伴い、新たに創設された配偶者居住権や特別寄与料に対する課税など、相続税等について所要の改正がされることとなった。 なお、平成31年税制改正大綱には、改正内容の適用時期が明らかにされていなかったが、民法等改正の施行日が、原則として2019年7月1日(配偶者居住権に関する規定は、2020年4月1日)となっているため、税制についても同日から適用されることが想定される。 2 配偶者居住権 (1) 配偶者居住権の定義 配偶者居住権とは、配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人の財産に属した建物につき、終身又は一定の期間、配偶者にその建物の使用及び収益を認める権利であり、賃借権類似の法定債権である。 高齢化社会が進む中で、残された配偶者が住み慣れた住居で継続して生活できるよう、また、遺産分割において残された配偶者のその後の生活資金を確保することができるよう配偶者居住権が創設された。 実際に適用される典型例としては、建物所有権は子に相続させ、配偶者が配偶者居住権を相続する場合であろう。被相続人亡き後の配偶者の居住の安定を図りつつ、配偶者居住権は所有権に比べ低く評価されることで、建物所有権を配偶者が取得する場合に比べ、金融資産を配偶者に多めに寄せることができることとなる。 なお、配偶者居住権の成立要件は、下記となる。 配偶者居住権の重要ポイントを箇所書きすると下記の通りである。 (2) 税制改正の内容 ① 配偶者居住権の評価 相続税における配偶者居住権及びその敷地を利用する権利を次のとおりとする。 建 物 イ 配偶者居住権 ロ 配偶者居住権が設定された建物(以下「居住建物」という)の所有権 土 地 ハ 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利 ニ 居住建物の敷地の所有権等 ② 物納 物納劣後財産の範囲に居住建物及びその敷地を加える。 ③ 登録免許税 配偶者居住権の設定登記に係る登録免許税は、居住建物の固定資産税評価額×2/1,000とする。 (3) 今後の留意点 ① 賃貸併用住宅 賃貸併用住宅について配偶者居住権を設定した場合の評価につき、残存耐用年数の算定は、住居専用住宅と同様でよいのか。 ② 小規模宅地等の特例 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利についても小規模宅地等の特例の適用が可能になると想定される。また、配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の所有権についても当該特例の適用は可能であろう。 ③ リフォーム 配偶者居住権が設定された建物につき、通常の維持修繕を超えるリフォームをした場合において、その負担者が配偶者、建物所有者、その他の者であるときは、贈与税等の課税関係が今まで以上に煩雑となるであろう。 ④ 減価償却費 配偶者居住権が設定された建物を所有者の承諾を得て配偶者が賃貸の用に供した場合の減価償却費の計算の基礎となる金額につき検討が必要となるであろう。 ⑤ 二次相続における評価 配偶者が死亡した場合には、配偶者居住権及び配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利は消滅することとなるが、配偶者の相続税計算上、配偶者居住権等を加味する必要はないのか。 ⑥ 配偶者居住権設定不動産の譲渡 配偶者居住権が設定されている建物やその敷地を譲渡した場合の譲渡所得税や建物所有者に対する贈与税税等の取扱いの検討が必要である。 3 特別寄与料 (1) 特別寄与料について ① 創設の経緯 相続法改正前までは、寄与分は相続人にのみ認められていた権利であったため、相続人以外の者が被相続人の療養看護等、財産の維持又は増加に貢献したとしても遺産の分配を受けることができなかった。このような相続人以外の者の被相続人に対する貢献を考慮し、相続における公平を図る観点から相続人以外の者にも一定の財産を請求できる権利を与えたのである。 ② 特別寄与料の請求者 相続法改正の法制審議会の議論では、特別寄与料の請求者の範囲について、昨今の家族関係の多様化(事実婚や同性愛等)の影響により、第三者まで請求者の範囲を広げるべき等の議論がなされたようだが、結果的には、被相続人の親族に落ち着いた。親族とは、いわゆる、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族である。なお、当該特別寄与料を請求できる親族から下記の者は除かれている。 ③ 特別寄与の範囲 相続人に対して認められている寄与分については、寄与行為の態様は無限定であるが、特別寄与については、寄与分よりも範囲は狭く、「療養看護その他の労務の提供」に限定されている。 ④ 特別寄与料の負担割合 特別寄与料は、相続人が負担することとなるが、その負担割合は、民法に定める法定相続分又は指定相続分とされている。 ⑤ 権利行使期限 特別寄与者が相続開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過したとき(時効期間)、又は相続開始の時から1年を経過したとき(除斥期間)である。遺産分割争いが長期化しないために上記のような短い期間が設定されたものと想定できる。 (2) 税制改正の内容 ① 特別寄与者 特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、当該特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税を課税する。 ② 特別寄与者の相続税の申告書の提出 上記①により相続税の申告義務が生じた者は、特別寄与料の額の確定を知った日から10月以内に相続税の申告書を提出しなければならない。 ③ 特別寄与料を支払う相続人 相続人の課税価格から支払うべき特別寄与料を控除する。 ④ 更正の請求の特則等 相続税法第32条第1項の事由に上記①の事由が追加されることにより、相続税の申告期限後に特別寄与料を支払うことになってもその確定後4ヶ月以内に更正の請求が可能となる。 (3) 今後の留意点 ① 特別寄与者の相続税申告 特別寄与者は原則として2割加算の対象となる。ただし、第1順位である子がいた被相続人つき、一親等の直系尊属が特別寄与者に該当した場合などは2割加算の対象外となるであろう。 また、特別寄与者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた場合には、その贈与財産は相続財産に加算される。 その他、特別寄与者と相続人との間で紛争がある場合などは被相続人の遺産の全体像を特別寄与者が知ることができずに特別寄与者の相続税申告において、適正な課税価格の把握が困難となるケースが想定されるだろう。 ② 特別寄与料を支払った相続人等の相続税申告 相続税申告前に特別寄与料を請求されたとしてもその請求は考慮せずに相続税申告を行うことになる。特別寄与料の額が確定した時点で更正の請求という手続きになるのは、相続法改正前の遺留分減殺請求がされた場合の取扱いと同様である。 4 遺留分制度の見直し (1) 遺留分制度の見直し内容 遺留分制度の主な見直しの論点は下記の2つである。 ① 遺留分減殺請求権の法的性質の見直し 相続法改正前の遺留分減殺請求権の法的性質は、物権的効果が生ずるものとして、遺留分減殺請求により、受遺者又は受贈者が取得した所有権は、その限度で遺留分権利者との共有となるというものであった。 相続法改正により、遺留分侵害額とワードも改められ、物権的効果から遺留分侵害額請求権という金銭債権となった。 ② 遺留分算定に係る贈与範囲の見直し 相続法改正前の遺留分算定にかかる贈与の範囲は、相続人以外に対する贈与は相続開始前の1年間に限られ、相続人に対する贈与は、その時期を問わずに遺留分算定の財産の価額に算入されるという取扱いであった。 相続法の改正により、相続人に対する贈与についてはその期間を相続開始前の10年間に限定された。 (2) 税制改正の内容 平成30年税制改正大綱においては、「遺留分制度の見直しに伴う所要の措置を講ずる。(所得税についても同様とする。)。」のみの記載にとどまり、具体的にどのような措置がされるのかは明示されてはいなかった。 相続税法の条文において、「遺留分」というワードは下記条文にしか出てこない。 上記第三号は平成15年相続税法改正により下記の通り文言が改められた経緯があり、相続法改正前から物権説ではなく債権説的な取扱いであったため、相続法改正後も大きく取り扱いが変わることは考えにくいであろう。 これに対し、賃貸不動産等に遺留分減殺請求がされた場合の所得税については、所得税法上、明確な取り扱いが規定されておらず、判断に迷う部分があったが、相続法の改正により対象財産の賃料等は遺留分権利者には帰属せずに受遺者又は受贈者に帰属することとなるであろう。 (了)
《速報解説》 金融庁より「記述情報の開示に関する原則」(公開草案)が公表される ~財務情報以外の開示情報について望ましい開示の考え方・取り組み等をとりまとめ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年12月21日、金融庁は、「記述情報の開示に関する原則(案)」(以下「原則(案)」という)を公表し、意見募集を行っている。「記述情報の開示に関する原則(案)のポイント」として要約したものも公表されている。 これは、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(平成30年6月28日)の提言を受けたものであり、財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、望ましい開示の考え方、開示の内容、開示に対する取り組み方をまとめたものである。 意見募集期間は平成31年2月1日までである。 なお、平成30年11月2日、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案を公表し、意見募集を行っていたところである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 原則(案)の概要 原則(案)は、記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とするものであり、その開示により、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができるとのことである。 記述情報の項目の中でも、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる項目である、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方などを整理している。 1 経営方針・経営戦略等 2 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 3 事業等のリスク 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A) 5 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本の流動性に係る情報 6 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 (了)
平成29年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「平成29年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
《速報解説》 イノベーション促進のための研究開発税制の改正 ~平成31年度税制改正大綱~ 弁護士 羽柴 研吾 1 はじめに 平成30年12月14日に公表され、同月21日に閣議決定された平成31年度税制改正大綱では、イノベーション促進のための研究開発税制の拡充・延長措置が明記された。 2 改正の背景 科学技術が急速に発展する現代において、民間企業等が国際的競争を勝ち抜くためには、科学技術イノベーションが求められる。そのためには、官民挙げた積極的な研究開発投資が必要となる。しかしながら、「各国の民間企業の研究開発投資の推移」によれば、日本・アメリカ・中国等各国いずれも増加傾向にあるものの、中国の研究開発費が、2008年から2016年までの間に、10兆円から35兆円に急増したのに対して、同期間の我が国の研究開発費は10兆円から3兆円微増した13兆円に留まっている。 このような中、日本国政府は、2016年1月に「第5期科学技術基本計画」を、2017年6月に「未来創始戦略2017」を閣議決定し、2020年までに官民合わせた研究開発投資の対GDP比を4%以上にすることを目標としている。 今回の改正は、このような背景を踏まえて、研究開発投資の「量」を更に増加させていくために、研究開発投資の増加インセンティブがより強く働くよう従来の研究開発税制を見直すとともに、研究開発投資の「質」の向上に向け、オープンイノベーションや研究開発型ベンチャーの成長を促す措置を講じるものである。以下、項目別に解説する。 3 控除上限の引上げ 恒久措置と上乗措置を整備しなおすとともに、控除上限が次の表のとおり引き上げられることになる。 (1) 現行の控除上限:最大で法人税額の40% (注1) 中小企業の場合、別途上乗せ措置がある。 (2) 改正案による控除上限:最大で法人税額の45%(ベンチャー企業:最大で法人税額の60%) (注1) 高水準型は廃止となる。 (注2) 中小企業の場合、別途上乗せ措置がある。 (注3) 「ベンチャー企業」とは、①設立10年以内の法人のうち、②当期において翌期繰越欠損金額を有するもの(大法人の子会社等を除く)をいう。 4 総額型の控除率の上乗せ (1) 総額型の控除率のインセンティブの強化 平成29年度税制改正によって、総額型の控除率は6%から14%(※10%~14%は上乗せ部分)までの範囲内で、試験研究費の増減割合に応じて算定されることになった。今回の改正では、更に試験研究費の増加インセンティブを与えるため、試験研究費を増加させた場合の控除率を引き上げ、減少させた場合の控除率を引き下げることになった。 (2) 総額型の控除率を上乗せする時限措置の延長 総額型の控除率(6%から10%)を上乗せ(10%から14%)する時限措置を2年間延長することになった。 (3) 総額型の控除率を上乗せする時限措置の新設 売上高試験研究費割合が10%を超える場合、控除率が最大で1.1倍上乗せされる2年間の時限措置が新設される(控除率上限は14%)。 5 オープンイノベーション型の支援対象の拡大と控除率の引上げ オープンイノベーション型について、①「研究開発型ベンチャー」と共同試験研究・委託試験研究を行う場合の控除率を引き上げ、②民間企業等への委託研究についても対象に含めることになった。 上記①の「研究開発型ベンチャー」とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者でその発行する株式の全部又は一部が同法の認定ベンチャーファンドの組合財産であるものその他これに準ずるものをいう。 (1) 共同試験研究の改正 (注) 大学等との共同試験研究にかかる費用について、研究開発のプロジェクトマネジメント業務等を担う者の人件費(URA:University Research Administrator)も研究開発税制の対象に含まれることとなった。 (2) 委託試験研究の改正 (注) 委託して行う試験研究が、①委託法人の基礎・応用研究であるか、②受託者の知的財産権等を利用して行われるものに要する費用が対象であり、単なる外注費は除かれる。 6 中小企業技術基盤強化税制の上乗せ措置の延長 中小企業技術基盤強化税制は総額型の一類型であり、試験研究費の12%に相当する額を法人税額から控除する制度である(上記3(2)のA-2)。当該税制についても、時限措置の延長と新設がなされる。 (1) 時限措置の延長 ① 控除上限の上乗せ延長措置 現行は、増減試験研究費割合が5%超の場合、総額型の控除上限25%に、法人税額の10%を控除上限に上乗せする措置が講じられている。 改正案では、増減試験研究費割合を5%超から8%超に見直した上で、控除上限の上乗せ措置を2年間延長することになった。 ② 控除率の上乗せ延長措置 上記3の(2)と同様に、総額型の控除率(12%)を上乗せ(12%から17%)する時限措置を2年間延長することになった。 (2) 時限措置の新設 上記3の(3)と同様に、売上高試験研究費割合が10%を超える場合、控除率が最大で1.1倍で上乗せする2年間の時限措置が新設される(控除率上限は17%)。 (了)
《速報解説》 国税庁、事業承継税制の特例措置に関する質疑応答事例を公表 ~特例贈与者等各要件の判定や猶予税額の計算方法等、全61問で詳解~ Profession Journal編集部 国税庁は平成30年12月19日付けで、平成30年度税制改正で創設された事業承継税制の特例措置(非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例措置)に関する質疑応答事例集を公表した。 この特例措置は10年間の時限措置で、認定経営革新等支援機関の指導を受けた特例承継計画について都道府県知事の確認を受ける等一定の要件の下、先代経営者等から贈与・相続により後継者が取得した非上場株式に係る贈与税・相続税の全額について納税が猶予されるというもの。既存の一般措置で適用のハードルとなっていた8割の雇用確保要件が実質撤廃され(ただし都道府県知事への確認書提出が必要)、承継後に後継者が自主廃業や売却した場合にも猶予税額の一定額が減免されるなど、一般措置に比べ大幅に適用しやすい制度となっている。 詳しくは本誌掲載の下記連載記事を参照されたい。 今回公表された質疑応答事例は全61問、95ページに及ぶもので、既存の一般措置と特例措置との違いといった制度の概要的なものだけでなく、一般措置と特例措置の適用関係に関する問答や、特例措置では複数の贈与者から複数の後継者への贈与の場合も適用が認められることから、その適用判定に関する問答、さらに事業の継続が困難な事由が生じた場合の納税猶予額の免除措置について、差額免除の具体的な計算例についても複数の問答が掲載されている。 また、一般措置についても複数の者からの贈与・相続について適用が認められるなど30年度改正で手当てが行われたことから、一般措置に係る改正事項についても経過措置の規定含め解説が行われている。 なお、事業承継税制については平成31年度税制改正大綱において、一般措置・特例措置ともに次の見直しを行うことが明記された。 (了)
《速報解説》 住宅借入金等特別控除の特例創設により控除期間を3年延長 ~平成31年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成30年12月21日に閣議決定された平成31年度税制改正大綱には、平成31年10月の消費税率引上げによる駆け込み需要とその反動減が生じないよう、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(以下、住宅借入金等特別控除という)の拡充措置が示された。 【1】 特例の創設 (1) 大綱の概要 消費税率引上げによる税負担の増加を緩和するため、住宅の取得等をして平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間に居住の用に供した場合について、住宅借入金等特別控除の特例が創設される。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) 現行の制度 適用年の1年目から10年目までの各年については、現行制度と同様の控除額である。 【2】 特例の具体的な内容 (1) 11年目から13年目の控除限度額 大綱で示された適用年の11年目から13年目の控除限度額は、次の①から③のとおりである。 ① 一般の住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅以外の住宅)の場合 ◆(ア)と(イ)のいずれか小さい額 ② 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合 ◆(ア)と(イ)のいずれか小さい額 ③ 東日本大震災の被災者等に係る特例の対象となる再建住宅の場合 ◆(ア)と(イ)のいずれか小さい額 (2) 適用上の注意点 (1)の算式の「住宅の取得等の対価の額又は費用の額」は、住宅の取得等に係る消費税率引上げの影響を緩和するという趣旨から、各場合において次のとおりとなる。 上表の②又は③に該当する場合、適用年の1年目から10年目までの各年の控除額は、補助金等や非課税の適用を受けた住宅取得等資金の額を控除して計算する(措法26⑤)。適用年によって取扱いが変わるので注意が必要である。 【3】 計算例 大綱で示された内容を前提として、平成31年10月以降に居住の用に供した住宅について住宅借入金等特別控除額を計算する。 上記計算例の場合、消費税等の税率が8%から10%に引き上げられると、消費税等の負担は240万円から300万円へ60万円増加する。大綱で示された住宅借入金等特別控除の特例を適用すると、11年目から13年目までの控除額として年20万円(3年合計で60万円)が加算され、税率引上げ分の影響が緩和される。 また上記税制上の措置に加え、消費税率引上げに伴う住宅取得対策として、「すまい給付金の拡充」や「次世代住宅ポイント制度の創設」などが予定されている。詳細は下記国土交通省ホームページを参照されたい。 【参考①】 (※) 国土交通省ホームページより 【参考②】 (※) 国土交通省ホームページより (了)
《速報解説》 中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置の創設及び中小企業向け設備投資減税措置の延長 ~平成31年度税制改正大綱~ 税理士 中尾 隼大 14日に公表され、21日に閣議決定された平成31年度税制改正大綱において、中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置の創設と中小企業向け設備投資減税措置の延長が明記された。 当該税制の内容は以下の通りである。 1 中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置の創設 近年、大規模自然災害が増加傾向にあることを背景とし、実効性が高い事前対策の促進の観点から、事業継続力強化計画(仮称)等に基づいて事業者が行った防災・減災設備への投資を対象に、特別償却(20%)が可能となる制度が創設された。この制度は中小企業等経営強化法の改正を前提とし、所得税についても同様の改正が行われる。 (1) 適用要件 適用を受けるためには、以下の要件を充足する必要がある。 (2) 適用を受けるためのスキーム 事業者が事前対策のための計画を策定し、経済産業大臣の認定を受ける必要がある。 (※) 経済産業省ホームページより (3) 特定事業継続力強化設備等とは 事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画(仮称)に記載された機械装置、器具備品及び建物付属設備のうち、以下の規模以上のものをいう。 (4) 適用期間 特定事業継続力強化設備等を取得等し、事業供用する期間は、改正中小企業等経営強化法の施行された日から平成33年(2021年)3月31日までとされる。 2 中小企業向け設備投資減税措置の延長等 また、既存の中小企業向け設備投資減税措置についても以下のとおり延長等されることとなった。 (1) 中小企業投資促進税制 引き続き中小企業の投資促進を促すため、平成32年度末(2021年3月31日)まで延長。 (2) 中小企業経営強化税制 特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化(※)の上、同じく平成32年度末(2021年3月31日)まで延長。 (※) 経済産業省による公表資料によると、働き方改革に資する設備も本税制措置の適用対象であることをQ&A集等を通じて明確化するとの記述があり、設備の例として建物附属設備(工場等の休憩室等に設置される冷暖房設備等)や器具備品(作業場等に設置されるテレワーク用PC等)が紹介されている。 (3) 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 「売上高又は営業利益が1年間で2%以上向上する」という要件が追加され、平成32年度末(2021年3月31日)まで延長。 なお、この要件は、投資計画につき認定経営革新等支援機関等の確認を受けることを要する。 (※) 経済産業省ホームページより (了)