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《速報解説》 会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案、意見募集開始へ~株主が提案できる議案数に上限を設定、社外取締役の設置義務化は2案併記に~

《速報解説》 会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案、 意見募集開始へ ~株主が提案できる議案数に上限を設定、社外取締役の設置義務化は2案併記に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年2月28日、法務省は、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(目次を含めて23ページ)を公表し、意見募集を行っている。 中間試案については、その理解に資するために「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案の補足説明」(表紙を含めて76ページ)も公表されている。 これは、平成26年6月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号)における改正法附則25条において、 と規定されていることを踏まえ、法制審議会への諮問を受けたものである。 意見募集期間は、平成30年4月13日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 中間試案に記載された主な項目は次のとおりである。 以下では主なものについて解説する。 1 株主総会資料の電子提供制度 インターネットを利用する方法による株主総会資料の提供によって、印刷や郵送のための費用削減や、株主に対する早期に充実した内容の株主総会資料の提供が期待されている。 そこで、株式会社は、株主総会参考書類、議決権行使書面、会社法437条の計算書類及び事業報告並びに同法444条6項の連結計算書類の交付又は提供に代えて、それらに記載し、又は記録すべき事項に係る情報を電磁的方法により株主が提供を受けることができる状態に置く措置を採る旨を定款で定めることができるものとする。 上記の定款の定めがある株式会社の株主は、当該株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができるものとする。 2 株主が提案できる議案の数 昭和56年の商法改正により導入された株主提案権の制度は、制度上株主が自らの意思を株主総会に訴えることができる権利を保障することにより、株主の疎外感を払拭し、経営者と株主との間又は株主相互間のコミュニケーションを良くして、開かれた株式会社を実現しようとするものである。 しかしながら、近年、1人の株主により膨大な数の議案が提案されたり、株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたりするなど、株主提案権が濫用的に行使される事例が見られる。 そこで、株主が提案できる議案の数について、次の案が提案されている。 3 議案の内容による提案の制限 会社法304条及び305条の規定は、次のいずれかに該当する場合には、適用しないものとする。 4 取締役の報酬等 取締役の報酬等が取締役に対して職務を適切に執行するインセンティブを付与するための手段として機能するように取締役の報酬等に関する規律を見直すものとし、取締役の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めているときは、会社法361条1項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該方針の内容の概要及び当該議案が当該方針に沿うものであると取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)が判断した理由を説明しなければならないものとする。 5 金銭でない取締役の報酬等 会社法361条1項3号を改正し、取締役の報酬等のうち金銭でないものについての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めるものとする。 6 株式報酬等 上記5のような見直しをするものとする場合において、次のような見直しをするものとする。 7 社外取締役の活用等 株式会社(指名委員会等設置会社を除く)と取締役との利益が相反する状況にある場合その他取締役が株式会社の業務を執行することにより株主の共同の利益を損なうおそれがある場合には、当該株式会社は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができるものとする。ただし、業務執行取締役の指揮命令の下に執行する業務については、この限りでないものとする。 当該委託を受けた行為をしたことは、会社法2条15号イの「当該株式会社の業務を執行した」に当たらないものとする。 8 監査役設置会社の取締役会による重要な業務執行の決定の委任 9 社外取締役を置くことの義務付け 上場会社等は、社外取締役を置かなければならないものとするかどうかについては、法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会において意見が分かれたことから、A案(社外取締役を置かなければならない)とB案(現行法の規律を見直さない)が提案されている。 (了)

#No. 258(掲載号)
#阿部 光成
2018/03/02

プロフェッションジャーナル No.258が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年3月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.258を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/03/01

monthly TAX views -No.62-「欧州で白熱するポストBEPSの議論」

monthly TAX views -No.62- 「欧州で白熱するポストBEPSの議論」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   2月24日付の日経新聞は、一面トップで、「G20『アマゾン課税』協議へ  国またぐネット売買 EU案軸、売上高を対象」という見出しの報道をしている。 今回はもう少し詳しく、この動きを解説してみたい。 *  *  * デジタル経済のもとで国際課税ルールが適切に対応できていないという問題意識から、2012年にG20の指揮下でOECD・BEPS(税源侵食及び利益移転)プロジェクトが始まり、2015年秋に最終報告書が出された。 アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)やグーグル(Google)に代表される米国IT企業が、自国(源泉国)でビジネスを行い利益を上げながら、税負担は低税率国・タックスヘイブンに回避させる、「価値創造地と納税地のかい離」という問題への対応である。 行動計画1の「電子経済の課税上の課題への対処」に関しては、法人税などの直接税についてPE概念に代わる複数のオプションが議論されたが、抜本的な見直しへの合意は得られず、当面、国際課税原則の精緻化により対応することとなった。 その上で、今後とも議論を続け、2018年に「電子経済に関する中間報告」、2020年に最終報告書を作成、G20に提出することとなった。 では、夏前にも出るとされる中間報告書はどのような内容になるのだろうか。これを占うのが、EUの動きである。 *  *  * EUはBEPSの議論を加速させるべく、自ら議論を開始した。背景には、英国が、BEPSの結論の前に利益迂回税(diverted profits tax)を導入し、独自の対応をしたことなどから、各国バラバラの対応では、税の公平性を歪めたり、企業への二重課税を生じさせるという懸念がある。そこでEUは、早急な合意を目指して議論を急いでいる。グローバルな合意を得るためには、まずEUとして共通ポジションの確立を目指し、中間報告書に影響を与えようということである。 EUの議論を、2017年10月のECOFIN(財務大臣会合)のプレスリリースから読み取ると、以下のようになっている。 議論ではまず、課題への対応を「短期的解決策(quick fix)」と「根本的解決策(Comprehensive approach)」の2つに区分している。その上で、短期的解決としては、online advertisement tax、withholding tax(源泉税)、 equalization levy(平衡税)などを検討の候補に挙げている。 具体的には、VATに付加税をかける方法や、売上(sales)に対して課税するという考え方で、詳しい内容は今後の検討となっている。 一方、根本的解決としては、PE概念を見直し、物理的施設がなくても、Significant Digital Presenceがあれば、PEとみなして法人課税の根拠とすることを検討している。 PEに帰属する所得計算の見直しを同時に行わなければ課税に結びつかないということで、そのためには、多国籍企業から得られる税収を、一定の方式によって各国に配分するフォーミュラーアプローチも選択肢に入っている。これは、共通統合法人課税ベース(CCCTB)の議論とも連動する。 物理的拠点を要しない電子経済の下では、これまでのPE概念に代わり、何らかの課税根拠が必要となる。それは「集積された顧客の個人データ(ビッグデータ)」で、Significant Digital Presenceと表現されている。 その上で、所得課税から消費課税へ、あるいは売上税へ、というシフトも必要となる。 *  *  * デジタル経済の下で、価値を生み出すのは特許権や商標権、ビジネスモデルなどの無形資産で、それの根源はビッグデータである。これを税制としてどう認識しどう扱うのか、このような全く新たな課題が、ポストBEPSとして議論されている。 (了)

#No. 258(掲載号)
#森信 茂樹
2018/03/01

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第27回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第27回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第2章》 平成13年度税制改正) 4 阿部泰久氏のコメント (1) 概要 既に述べたように、組織再編税制は、財務省主税局が単独で作ったものではなく、個別の条文については、経済界からの要請を受けたものも少なくない。そのため、当時の経済団体連合会経済本部税制グループ長であった阿部泰久氏が述べられていた内容は、財務省主税局が公式に公表したものではないものの、実務家からすると、貴重な情報源のひとつであったことは疑いがない。 そのうち、最も重要な情報源であると思われるのが、山本守之税理士との対談である「企業組織再編税制の考え方と実務検討」税務弘報49巻6号22-44頁(平成13年)及び、阿部泰久氏が行った講演である「改正の経緯と残された課題」江頭憲治郎ほか編『企業組織と租税法(別冊商事法務252号)』79-92頁(平成14年)である。 このうち、後者の「改正の経緯と残された課題(講演)」は、すでに本連載で触れた内容も多いため、本稿では、企業組織再編税制の考え方と実務検討(山本守之税理士との対談)(以下、「本対談」という)について解説を行うこととする。 (2) 企業組織再編税制の考え方と実務検討(山本守之税理士との対談) ① 金銭等不交付要件 【第4回】で解説したように、本対談では、1円でも金銭等を交付した場合には、交付した部分だけでなく、全体が非適格になった理由につき、実務上のニーズがなかったことから、一種の割り切りとして簡素な税制にしたことが明らかにされている。 しかし、平成29年度税制改正により、合併法人又は株式交換完全親法人が、被合併法人又は株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を保有している場合の特例が定められた。これは、平成19年度から解禁された合併等対価の柔軟化に遅ればせながらも対応したということであろう。 ② 50%超100%未満グループ内の組織再編 【第4回】で解説したように、当初、財務省は、100%グループ内の組織再編のみを主張していたが、それでは狭すぎるということで、50%超100%未満グループ内の組織再編にまで適格組織再編の対象を広げたということが明らかにされている。 ③ 主要資産等引継要件 本対談では、山本守之氏が、売掛金、買掛金、棚卸資産を主要な資産及び負債に含めるかどうかという点につき、①流動性の高いものは、組織再編の契約時点では残高を把握することも困難であり、また時価も不明確である、②代わりに金銭のような他の資産を加算ないしは減算することによって実質的な移転の効果を得ることができる、③移転対象に含めないことにより、適格外しに利用されることがある、という理由から、主要な資産及び負債に含めるべきではないとする財務省からの見解を説明され、阿部泰久氏が、当時の分割法制が事業の移転に限定していたことから、常に流動しているものにつき、これを厳格に分けることは、商法上も念頭に置いていなかったことも追加的な理由として挙げられている。 このように、主要な資産及び負債に、流動資産及び負債のほとんどが含まれないことから、一般的には、固定資産が主要な資産及び負債の中心的なものになると思われる。 ④ 従業者引継要件 本対談では、労働承継法との比較により、租税法の方が80%というアローワンスの高い考え方を採用していることが述べられている。このことから、従業者引継要件の判定上、分割法人から分割承継法人に引き継ぐべき従業者の判定において、労働承継法の考え方を参考にすることができることが分かる。 ⑤ 事業関連性要件 本対談では、事業関連性の範囲として、産業分類表などにこだわる必要はなく、「何らかのシナジー効果が出ればよい」という考え方になっていることが明らかにされている。しかし、平成19年度税制改正により、事業関連性要件の考え方につき、法人税法施行規則に明記されたことから、現在では、条文上も明記されているということが言える。 ⑥ 事業規模要件及び特定役員引継要件 本対談では、事業規模要件及び特定役員引継要件が、実務のニーズに応じてかなり広く認める内容であったことが明らかにされている。まず、事業規模要件が1対5となったのは、当初は1対2という考え方もあったのだが、せめて1対5まで認めないと組織再編が進まないという実態があったこと、事業規模要件でも救えないものに対し、特定役員引継要件が認められたことが明らかにされている。 さらに、(ⅰ)事業規模の比較は事業単位で行えばよい、(ⅱ)特定役員は通常の任期を全うすればよい、(ⅲ)常務取締役以上になった理由は、役員給与の規定における使用人兼務役員とされない役員とは何かという定義を参考にしたということが明らかにされている。このうち、阿部泰久氏は、「総合電機メーカーが家電専業メーカーと共同事業を行うときに、総合電機メーカーの規模と家電メーカーの規模を1対5で見るのではなくて、総合電機メーカーの中の対応する家電事業分野の規模と、その家電専業メーカーの規模を見ればいいということになります」と解説されている点に注目したい。 私見ではあるが、総合電機メーカーの中における家電事業分野とそれ以外の分野におけるシナジーは高く、このような細かな分解はすべきでないように思える。これが認められるとすれば、どのような切り分けも可能となってしまうからである。阿部泰久氏の意見に依拠するとすれば、事業再編計画において、家電メーカーのみのシナジーを期待したということが明らかな場合に限られると思われる。 ⑦ みなし共同事業要件 本対談の内容よりも、経済団体連合会経済本部税制グループ『新しい企業組織再編税制』53-54頁(税務研究会出版局、平成13年)に記載されている内容の方が分かりやすいため、以下、その内容を抜粋する。 このように、みなし共同事業要件は、グループ内の組織再編であっても、実質的に共同事業を営むための組織再編の要件を満たすものについて、繰越欠損金の引継ぎを認める趣旨で設けられた規定であることが分かる。 しかし、その制度趣旨に反し、みなし共同事業要件には、従業者引継要件及び事業継続要件が定められていないという致命的な問題がある。前回、解説したように、100%グループ内の組織再編を行った場合における税制適格要件には、従業者引継要件及び事業継続要件が要求されていないことから、みなし共同事業要件において、これらの要件を要求すべきだったように思われる。 さらに、事業規模要件及び特定役員引継要件が緩すぎるという問題も挙げられる。実務のニーズに対応するためとはいえ、本来であれば、これらの要件を満たすべきではないものについても、事業目的が十分に認められ、経済合理性も十分に説明できる行為を行った結果、偶然に事業規模要件又は特定役員引継要件を満たしてしまったものも少なくなく、そのようなものについて、「移転資産に対する支配の継続という制度趣旨に反する」という理由で、包括的租税回避防止規定を発動することは、租税法律主義に反するということが言える。 そのような懸念は、ヤフー事件最高裁判決に対する調査官解説により払拭されたため、今後の実務で問題になることはないが、平成13年当時の時代背景と異なる部分も少なくないため、もう一度、税制適格要件及びみなし共同事業要件の内容を見直すべきであると思われる。 *   *   * 今回までで、平成13年当時の議論について述べることができたと思う。これに対し、平成13年当時に公表された課税当局及び実務家の見解は、財務省主税局及び阿部泰久氏の見解を追認するものが多く、ほとんど参考にならなかった。これは、組織再編税制に関連する法人税基本通達の制定が平成14年2月15日まで遅れるなど、課税当局及び実務家が手探りで新しい税制に対応しようとした時代であったためであると考えられる。 しかし、【第9回】で述べたように、肝心の法人税基本通達に書かれている内容は、公表される前から、解釈上、明らかな内容ばかりであったことから、平成13年及び平成14年だけでなく、それ以降に公表された課税当局及び実務家の見解を見てみる必要があるということも言える。 その後の組織再編税制の改正は、平成18年度、平成22年度及び平成29年度がひとつの区切りであると言える。そのため、次回では、平成14年から平成17年までの改正内容について解説し、次々回以降では、平成13年から平成17年までの課税当局及び実務家の見解及び法人税基本通達の内容について触れることとしたい。 (了)

#No. 258(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/03/01

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第4回】「執行役員の法律上の定義と役割」

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第4回】 「執行役員の法律上の定義と役割」   税理士 大塚 進一     1 執行役員の法律上の定義 執行役員そのものを規定している法令は存在しない。しかし、執行役員が各法令に定義される役員に該当すれば役員とみなされるため、法令上の役員の定義、特に税法上の取扱いを見ていく。さらに各法令には、いわゆる執行役員とは異なるものの、似た名称が見受けられるので、それらについても言及する。 (1) 執行役員制度と役員の定義 会社運営は通常、取締役会が経営の意思決定及び業務執行に関する監督を行い、代表取締役が各部署に指示を与え業務執行する。執行役員は代表取締役の指揮監督のもと、その指示に従い業務を執行する。 執行役員は会社法で規定されている機関ではないため、執行役員の選任は一般的に株主総会ではなく取締役会となり、登記の必要もない。つまり、執行役員は役員と称されるが役員ではなく、一般的には「最上位の使用人」と解される。 執行役員制度は会社法に規定されていないので、会社によって任意に制度設計がなされている。執行役員と会社との契約も使用人兼務役員と同様、雇用契約と委任契約の場合があるが、いずれの場合も役員には該当しない。 ここで役員とは、会社法では、取締役、監査役、会計参与を指し、会社法施行規則ではこれらに加え、執行役、理事、監事その他これらに準ずる者も含まれる。法人税法上は取締役、監査役、会計参与、執行役、理事、監事に加え、清算人、みなし役員が含まれる。 (2) みなし役員と執行役員 執行役員は、原則的には使用人であるが、「みなし役員」の要件を満たす場合は、法人税法上の役員となる。そのため「みなし役員」についての要件を確認しておきたい。 「みなし役員」とは「経営に従事している使用人以外の者」「一定の要件を満たす同族会社の使用人」のことであり、ここで「一定の要件」とは、使用人兼務役員になれない者の判定(【第1回】1(1)の⑤)における「役員」を「使用人」と読み替え、かつ、法人の経営に従事している者である。ここで「使用人」とは、職制上使用人としての地位のみを有する者に限られる。 以上をまとめると、みなし役員、法人税法上の役員か使用人かの判定は〈図4-1〉のようになる。 〈図4-1〉 「法人税法上の役員」及び「みなし役員」の判定 (3) 法令上にみる「執行役員」と類似する名称 「執行役員」と似た名称として、会社法には「執行役」、法人税法には役員に対する業績連動給与に示される「業務執行役員」が見受けられるが、これらは一般的に用いられるいわゆる執行役員とは異なる。 いわゆる執行役員は、これら法令上で規定されているものとは異なり、法令上の根拠はない。しいて法令上に規定を見つけるなら、会社法第362条第4項第3号、取締役会が取締役に委任することができない選任及び解任の対象とされる「重要な使用人」にあたると解される。   2 執行役員が会社運営上、必要とされる理由 会社の規模や事業内容によって、会社の意思決定部分と業務執行部分がそれぞれ大きく、役員と使用人を兼務することができない場合もある。少数の取締役が使用人を兼務する場合、通常の会社業務の比重が大きくなると、意思決定に参加できない場合も多く、兼務が難しくなる。そのため、役員の数を増やすと、迅速な意思決定ができない。 そこで、取締役は会社の意思決定に専念し、業務執行に関することは使用人としての「執行役員」に担当させることにより、取締役会や会社全体の運営を迅速に行うことができる。すなわち効率的な会社運営のため、取締役会での決定事項に従い業務の執行に専任する執行役員が必要とされる。 執行役員は、「会社の意思決定をしない役員」、つまり基本的に役員の仕事をしないが「役員」と名が付く「使用人」と理解すればよいが、逆に「会社の意思決定に携わる使用人」は役員と扱われるのか、を考えると、税法上の留意点が浮かび上がる。 次回以降では執行役員に関する税務上に留意点について、基礎的な事項からこれらの留意点までを考察することとしたい。 (了)

#No. 258(掲載号)
#大塚 進一
2018/03/01

~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第18回】「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」

~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第18回】 「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」   税理士 佐藤 善恵     (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 資本金5,000万円の同族会社であるX社は、その経理部長(甲)の外注費の水増し計上等によって金員が詐取されていた(本件詐取行為)。そのため、X社の平成12年10月1日から平成13年9月30日までの事業年度及び平成14年10月1日から平成15年9月30日までの事業年度(これらの2事業年度を併せて「本件各事業年度」)に架空外注費も含めた金額が外注費として計上されていた。 原処分庁は、税務調査において本件詐取行為を把握し、架空外注費の損金算入を否認する内容の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った(平成16年10月19日付)(なお、処分理由は、損害賠償請求権を損害発生時に益金計上すべきというものではない点に留意が必要である)。 X社の主張は、架空外注費計上による損害額は本件詐取行為のあった各事業年度の損金に算入される一方で、甲に対する損害賠償請求権は、同事業年度の益金には算入されないというものである。   〔双方の主張(要旨)〕 ▷原処分庁 詐取された損失額は損金算入されるが、同時に、X社は甲に対する損失額と同額の損害賠償請求権を取得してその額を益金に算入することになる。 不法行為時に資産が外部に流出し、それと同時に甲に直ちに履行を請求し得る損害賠償請求権が取得されるから、そのとき(不法行為時)に、損害賠償請求権の権利確定があったということができる。 ▷X社 収益(損害賠償請求権)は、確実性、客観性、経済的利益に加え、担税力があること、その利益に現実的な処分可能性があることなどが計上の要件である。 本件では、加害行為の発生により直ちに処分可能性のある経済的利益を客観的かつ確実に取得したとはいえないから、被害額を損金計上した事業年度の益金に算入することは相当ではなく、回収された場合のその時点の益金である。 (※) X社は、甲は債務超過状態であったから、X社は損害発生と同一事業年度における損害回復は事実上不可能であった旨も主張したが、ここでは省略する。   〔東京高裁の判断(要旨)〕 損害賠償請求権の益金計上時期について、(認定された事実によれば)、X社の取締役らは本件詐取行為を認識していなかったものであるが、経理担当取締役が預金口座からの払戻し及び外注先への振込依頼について決済する際に甲が持参した正規の振込依頼書をチェックしさえすればそれが容易に発覚するものであった。また、決算期等において、請求書と外注費として支払った金額とを照合すれば、容易に発覚したものである。 こういった点を考えると、通常人を基準とすると、本件各事業年度当時において、本件損害賠償請求権につき、その存在、内容等を把握できず、権利行使を期待できないような客観的状況にあったということは到底できないというべきである。 そうすると、本件損害賠償請求権の額を本件各事業年度において益金に計上すべきことになる。   〔判断の分水嶺〕 本判決が示す判断基準は、「通常人を基準にしても、本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるとすれば、当該事業年度の益金の額に計上しない取扱いが許されるということになる。」というものである。 「通常人を基準」という概念的な言葉を用いているが、実質的には、X社において通常は行われるべきチェックが行われていなかったという事実関係を重視して結論を下したのである。   〔本判決が示唆するもの〕 X社のもう1つの主張にも関係するが、本件裁判所は、次のような考え方も示している。 なお、課税庁の判決情報によれば、調査担当者向けに、次のようなポイントが記載されている。 (了)

#No. 258(掲載号)
#佐藤 善恵
2018/03/01

平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋     Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理   平成30年1月12日に実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(以下、「有償新株予約権取扱い」という)」がASBJより公表された。 近年、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引が見られる。当該取引は、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準(以下、「ストック・オプション基準」という)の公表時には想定されていなかった。 そのため、当該取引が、ストック・オプション基準の適用範囲に含まれるのか、企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(以下、「複合金融商品適用指針」という)」の適用範囲に含まれるのかが必ずしも明確ではなかったことから、ASBJで審議が行われた(有償新株予約権取扱い12)。 審議の結果、従業員等に対して有償新株予約権取扱いの対象となる権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権はストック・オプション基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとされた。 ただし、権利確定条件付き有償新株予約権が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価(ストック・オプション基準第2項(4))として用いられていないことを立証できる場合、当該取引についての会計処理は、複合金融商品適用指針に従う(有償新株予約権取扱い4)。 有償新株予約権取扱いでは、以下の事項が定められている。   1 範囲 有償新株予約権取扱いは、「概ね」以下の内容で発行される権利確定条件付き有償新株予約権を対象としている(有償新株予約権取扱い2、17)。 有償新株予約権取扱いでは、上記の権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引を対象としているが、取引の内容が上記①から⑨に記載された内容と大きく異ならない取引について有償新株予約権取扱いの対象となるかどうかを、実態に応じて適切に判断できるようにするため、「「概ね」以下の内容で発行される」という表現が用いられている(有償新株予約権取扱い15) 。 有償新株予約権取扱いは、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引についての取扱いが必ずしも明確ではないとの要請から開発したものであるため、現在行われている典型的な取引を対象としており、有償新株予約権取扱いの対象範囲を上記に定める取引以外の取引に広げないこととしている(有償新株予約権取扱い16)。 なお、有償新株予約権取扱いで取り扱っていない取引については、内容に応じて、有償新株予約権取扱いを参考にすべきかどうかを判断することが考えられる(有償新株予約権取扱い16)。 例えば、企業がその子会社の従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は有償新株予約権取扱いの適用対象となっていない(有償新株予約権取扱い16)。そのため、内容に応じて有償新株予約権取扱いを参考にすべきかどうかを判断することが考えられる。   2 会計処理 権利確定条件付き有償新株予約権は、その付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込むという特徴を除けば、引受先が従業員等に限定される点や権利確定条件が付されている点をはじめ、ストック・オプション基準を設定した当初に主に想定していたストック・オプション取引(付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込まない取引)と類似していることを踏まえ、ストック・オプション基準第4項から第7項に準拠した会計処理を定めた上で、以下の事項を追加している(有償新株予約権取扱い29)。 上記①から③の他にも、勤務条件は付されていないが業績条件は付されている場合、業績の達成又は達成しないことが確定する日を権利確定日とする、という項目が追加されている(有償新株予約権取扱い7(3))。 A社は、X1年10月10日に、従業員20名に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与することを決議し、同年11月1日に従業員20名から金銭が払い込まれ、当該従業員に権利確定条件付き有償新株予約権を付与した。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【X1年11月1日(新株予約権の計上)】 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員からの新株予約権の払込金額3,200,000円を、純資産の部に新株予約権として計上する。 【X2年3月期】 付与日における権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を費用計上額として算定する。X2年3月期における費用計上額は、公正な評価額のうち、付与日から権利確定日までの対象勤務期間(29ヶ月)を基礎とする方法に基づき、X2年3月期に発生したと認められる額として算定する。 付与日以降失効数の見積りに変化がないため、費用として計上する額はない。 (※1) 株式報酬費用0円=(公正な評価単価100円/個×32,000個-新株予約権の払込金額3,200,000円)×(5ヶ月÷29ヶ月) 【X3年3月期】 付与日以降失効数の見積りに変化がないため、費用として計上する額はない。 (※2) 株式報酬費用0円=(公正な評価単価100円/個×32,000個-新株予約権の払込金額3,200,000円)×(17ヶ月÷29ヶ月)-X2年3月期までの費用計上額0円 【X4年3月期】 業績条件を満たす可能性が高くなったことにより、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じたため、これに伴い権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。これにより、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づき、X4年3月期(見直しを行った期)までに費用として計上すべき額(全額)を算定する。 (※3) 株式報酬費用76,800,000円={(公正な評価単価100円/個×権利確定すると見込まれる数量800,000個)-新株予約権の払込金額3,200,000円}-X3年3月期までの費用計上額0円 【X5年3月期(権利行使期間開始)】 権利行使されていないため、仕訳はない。 【X6年3月期(権利確定条件付き有償新株予約権の行使)】 権利確定条件付き有償新株予約権の行使を受け、A社は新株を発行する。 (※4) 払込金額480,000,000円=600円/個×40,000個/名×20名 (※5) 権利行使された本新株予約権の金額80,000,000円=100円/個×40,000個/名×20名   3 注記 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する注記は、ストック・オプション基準第16項及び企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」第24項から第35項に従って行う(有償新株予約権取扱い9)。   4 適用時期等(有償新株予約権取扱い10、36) 有償新株予約権取扱いの適用初年度において、原則処理を行い、これまでの会計処理と異なることとなる場合及び容認処理を適用し従来採用していた会計処理を継続する場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(有償新株予約権取扱い10(4))。したがって、会計方針の変更の注記も必要である。 Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正   平成29年3月29日に実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「在外子会社取扱い」という)」がASBJより公表された。 また、同日に実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「持分法取扱い」という)」が改正された。   1 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い (1) 対象範囲 改正前在外子会社取扱いでは、国内子会社が国際財務報告基準(IFRS)を適用することは想定されていなかった。 しかし、在外子会社取扱いが在外子会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して、金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社を在外子会社取扱いの対象範囲に含める(在外子会社取扱い 平成29年改正)。 同様に、ASBJが公表した「修正国際基準」を国内子会社が適用する場合に関しても、在外子会社取扱いの対象範囲に含める(在外子会社取扱い 平成29年改正)。 したがって、対象範囲のみが変更となっただけで、会計処理自体に変更はない。 なお、国内子会社を在外子会社取扱いの対象範囲に含めたことから、在外子会社取扱いの表題が、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」から「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に変更されている(在外子会社取扱い 平成29年改正)。 (2) 適用時期 在外子会社取扱いは、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、在外子会社取扱いの公表日以後、適用することができる(在外子会社取扱い 適用時期等(5))。 なお、在外子会社取扱いの適用初年度の前から国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱い(以下、参照)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(在外子会社取扱い 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。 〇「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱いとは・・・ 在外子会社の財務諸表が、国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む)には、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができる。 ただし、以下の①から④の項目については、当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社等の会計処理を修正しなければならない。なお、以下の①から④以外の項目についても、明らかに合理的でないと認められる場合には、連結決算手続上で修正を行う必要があることに留意する。 【①:のれんの償却】 在外子会社等において、のれんを償却していない場合には、連結決算手続上、その計上後20年以内の効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、当該金額を当期の費用とするよう修正する。 ただし、減損処理が行われたことにより、減損処理後の帳簿価額が規則的な償却を行った場合における金額を下回っている場合、連結決算手続上、修正は不要であるが、それ以降、減損処理後の帳簿価額に基づき規則的な償却を行い、修正する必要がある。 【②:退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理】 在外子会社等において、退職給付会計における数理計算上の差異(再測定)をその他の包括利益で認識し、その後費用処理を行わない場合には、連結決算手続上、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理する方法(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む)により、当期の損益とするよう修正する。 【③:研究開発費の支出時費用処理】 在外子会社等において、「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費に該当する支出を資産に計上している場合には、連結決算手続上、当該金額を支出時の費用とするよう修正する。 【④:投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価】 在外子会社等において、投資不動産を時価評価している場合又は固定資産を再評価している場合には、連結決算手続上、取得原価を基礎として、正規の減価償却によって算定された減価償却費(減損処理を行う必要がある場合には、当該減損損失を含む)を計上するよう修正する。   2 持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い (1) 対象範囲 改正前持分法取扱いでは、国内関連会社が国際財務報告基準を適用することは想定されていなかった。 しかし、持分法取扱いが在外関連会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、持分法取扱いでは、国内関連会社が指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合、当面の間、在外子会社取扱いに準じることができる(持分法取扱い 平成29年改正)。 同様に、「修正国際基準」を国内関連会社が適用する場合に関しても、当面の間、在外子会社取扱いに準じることができる(持分法取扱い 平成29年改正)。 したがって、対象範囲のみが変更となっただけで、会計処理自体に変更はない。 (2) 適用時期 持分法取扱いは、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、持分法取扱いの公表日以後、適用することができる(持分法取扱い 適用時期等(4)、在外子会社取扱い 適用時期等(5))。 なお、持分法取扱いの適用初年度の前から国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱い(以下、参照)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(持分法取扱い 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。 〇「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱いとは・・・ 投資会社及び持分法適用関連会社が採用する会計方針の統一にあたっては、原則的な取扱い(会計方針を統一する)によるほか、当面の間、監査・保証実務委員会実務指針第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する監査上の取扱い」に定める会計処理の統一に関する取扱い(必ずしも統一を必要としない会計処理として、資産の評価方法及び固定資産の減価償却の方法が挙げられている)に準じて行うことができる。 また、在外関連会社の財務諸表が国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む)については、当面の間、在外子会社取扱いに準じて行うことができる。   Ⅴ 仮想通貨の会計処理   平成29年12月6日に実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)(以下、「仮想通貨取扱案」という)」がASBJより公表された。 仮想通貨取扱案は、平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されたことを受け、仮想通貨の会計処理及び開示に関する当面の取扱いとして、必要最小限の項目について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的とするものである(仮想通貨取扱案1、2)。 仮想通貨取扱案では、仮想通貨交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用が契機であったこと、及び適用範囲を明確にすることから、適用範囲を資金決済法上の仮想通貨としている(仮想通貨取扱案3、25)。具体的には、以下を参照されたい。 【資金決済法における仮想通貨の範囲】 (広義の)仮想通貨 (※) 例えば、次のものは資金決済法における仮想通貨には含まれない。 ・前払式支払手段発行者が発行するプリペイドカード ・ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)におけるポイント  ただし、仮想通貨の該当性等については、その利用形態等に応じ、最終的には個別具体的に判断する。 仮想通貨取扱案では、以下の事項が定められている。   1 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理では、以下の論点がある。 (1) 期末における仮想通貨の評価に関する会計処理 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、期末において保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ)について、以下のように評価する(仮想通貨取扱案5~7)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ここで、活発な市場が存在する場合(以下、(2)参照)とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいう(仮想通貨取扱案8)。 (2) 活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有している活発な市場が存在する仮想通貨の期末評価において、市場価格として仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所で取引の対象とされている仮想通貨の取引価格を用いるときは、保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格(取引価格がない場合には、仮想通貨取引所の気配値又は仮想通貨販売所が提示する価格)を用いる。なお、期末評価に用いる市場価格には、取得又は売却に要する付随費用は含めない(仮想通貨取扱案9)。 仮想通貨交換業者において、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所が自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所である場合、当該仮想通貨交換業者は、自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格等(取引価格、仮想通貨取引所の気配値及び仮想通貨販売所が提示する価格をいう。以下同じ)が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができる(仮想通貨取扱案10)。 (3) 仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨について、活発な市場の判断の変更があった場合、以下のように取り扱う(仮想通貨取扱案11、12)。 (4) 仮想通貨の売却損益の認識時点 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識する(仮想通貨取扱案13) 。   2 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨は下のように会計処理を行う(仮想通貨取扱案14、15)。   3 開示 (1) 表示 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示する(仮想通貨取扱案16) 。 (2) 注記 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨、及び仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨について、以下の事項を注記する(仮想通貨取扱案17)。 ただし、以下の場合は注記を省略することができる。   4 適用時期 平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する(仮想通貨取扱案18、63)。 公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することもできる(仮想通貨取扱案18、63)。 (了)

#No. 258(掲載号)
#西田 友洋
2018/03/01

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第26回】「自己株式数の注記はここで間違う」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第26回】 「自己株式数の注記はここで間違う」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例26-1】 本表と注書きが整合していない。 【事例26-1】は、個別注記表に記載されている「株主資本等変動計算書に関する注記」のうち、「自己株式の種類及び株数」に関する記載です。この中に、明らかにミスであるとわかるところが1ヶ所あります。 どこだかわかりますか?   2 すぐわかるミスだが・・・ さっそく、答えを見てみましょう。本来の正しい姿はこうです。 上の正解では、正しい姿に修正したところを赤丸で囲ってあります。本表の下に注書きされている文中の株数の記載が間違っていたようです。 当事業年度に増加した自己株式の数は、本表では120株となっていますが、注書きの文章では150株となっていました。本表の方で計算チェックをやってみると、期首株式数に期中増加株式数を足したものが期末株式数に一致することがわかるので、増加株式数「120株」というのは間違いないとわかります。 したがって、注書きの「150株」が間違いであると判明するわけです。   3 直して終わりではいけない このミスが起きてしまった原因は、「データのリサイクル」です。 今期の計算書類作成作業において、前期の「自己株式の種類及び株数」の注記データをコピーして、それを再利用(リサイクル)して当期の当該注記を作成したことが、ミスにつながりました。本シリーズでおなじみの「リサイクル・ミス」です。 リサイクルした前期のデータは以下のようなものでした。 《前年度の注記内容》 注書きの部分に注目してください。この文章は【事例26-1】の注書きの文章と一言一句同じです。つまり、この前期データを使って、本表の株式数の数字のみを当期の数字に置き換えたのが、【事例26-1】だったというわけです。 本来は、その作業に加えて、本表の下の注書きの文中にある「150株」を「120株」に書き換えなければなりませんでした。それをうっかり忘れてしまったのです。 たいしたミスではありませんね。仮に、このようなミスを犯してしまっても、たいていの人たちは気づいたら直して、それで終わりです。 しかし、それ故、同じミスが繰り返し発生するのです。 では、そうならないためにはどうしたらよいでしょうか。 【事例26-1】のミスについて言うならば、ミスが起きた「場所」にも注目する必要があります。   4 同じ場所で似たようなミスが! この注記では、同じ場所で違うミスも起きています。以下の事例です。 【事例26-2】 本来記載すべき増加理由の説明書きがない。 【事例26-2】のミスが起きた場所は、【事例26-1】のミスが起きた場所と同じです。本表の下に注書きする自己株式数の変動事由の部分です。【事例26-1】ではその内容にミスがありましたが、今度は記載自体が抜けてしまっています。 会社計算規則上は、事業年度末日における自己株式数の記載だけが求められているので、変動事由の記載がないからといって、必ずしも問題ではありません。 しかしながら、会計基準(株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針)では、前期及び当期の期末の自己株式数に加えて、当期の自己株式数の増減と変動事由の概要を記載することが求められています。 その趣旨を踏まえると、【事例26-2】は「増加理由の記載漏れ」ということになります。 このミスもリサイクル・ミスです。リサイクルされたデータは以下の前期データです。 《前年度の注記内容》 前年度は自己株式数の増減が全くない年度でした。したがって、本表の下に特に注書きはありません。このデータをコピーして、数字のみを当年度の数字に置き換えたのが【事例26-2】です。 作成者は、数字を更新したところで、完成したと早合点してしまったわけです。   5 うっかりミスの発生傾向を踏まえる 【事例26-1】も【事例26-2】も、ミスが起きた場所は同じでした。どちらも注記本表の下の注書き部分です。 なぜ、ここでミスが起きたのでしょうか。 それは、この部分に注意が十分に行き届かなかったからです。 このように本表と注書きからなるものを作成する場合、普通はまず本表を作成し、その次に注書きに取りかかります。そうすると、本表の作成作業で注意力を消耗し、注意力が少し落ちた状態で注書きの作成作業に取りかかることになります。 注意力というのは、無限に蓄えられているわけではありません。スマホの充電池と同じで、限度があります。では、限度のある注意力を人間がどう使うのかというと、大事なことから順にそれを配分して使うのです。 まず、メインとなる作業に十分な注意力を配分し、残りの注意力を付随的な作業に振り向けます。今回の例でいうと、本表の作成作業は十分に注意して行い、注書きの作成作業は、注意力が落ちた状態で遂行するというわけです。 注書きの方でミスが起こりやすいのはそのためです。 うっかりミスの発生にこうした傾向があることを踏まえると、会社法計算書類の作成作業の中で付随的な部分はどこなのかを意識し、その部分でミスをしないように気を付けていくということも大事です。 〈今回のまとめ〉 本表の下に注書きがある注記事項では、注書き部分にミスがないか確認しましょう。 (了)

#No. 258(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/03/01

税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説 【第2回】「繰延税金資産の回収可能性の判断手順」

税効果会計における 「繰延税金資産の回収可能性」の 基礎解説 【第2回】 「繰延税金資産の回収可能性の判断手順」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   1 はじめに 前回は、企業の状況に応じて繰延税金資産の回収可能性(将来の税額負担を軽減する効果の有無)について検討しなければならないが、実務上その判断には将来の様々な不確定要素を考慮する必要があるため、繰延税金資産の回収可能性が論点になりやすいことを説明した。 繰延税金資産の回収可能性は、企業会計基準委員会より「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)」(以下、「回収可能性適用指針」という)が公表されているため、これを指針として判断することになる。 そこで今回は、この回収可能性適用指針をもとに、繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について説明する。   2 繰延税金資産の回収可能性の判断 繰延税金資産の回収可能性は、次の(1)から(3)のいずれかを満たしているかどうかによって、将来の税額負担を軽減する効果があるかどうかを判断する。 (1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得が発生する可能性が高いと見込まれるかどうか まずは「一時差異等加減算前課税所得」について説明しよう(【図1】参照)。 【図1】 一時差異等加減算前課税所得の算定 【図1】のように、課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除いたものが「一時差異等加減算前課税所得」である。 なぜ、課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除くかというと、計算された課税所得1,070は、X1年末に存在している一時差異450(=350+100)が認容により減算された後の金額であるため、これ(1,070)とX1年末の一時差異の解消見込額(認容見込額)450を比較してしまうと、450を二重に控除してしまうことになる。そのため、課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除くこととなる(【図2】参照)。 【図2】 課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除く理由 【図2】では、X2年の一時差異等加減算前課税所得が1,520発生すると見込まれている。もし、将来減算一時差異の解消がなければ1,520に対して丸々課税されることになるが、X1年末に存在した賞与引当金繰入限度超過額350と未払事業税100の合計450が認容されることで、1,520ではなく1,070(=1,520-450)だけの課税で済むことになる。 そのため、450に係る税額だけ減税効果があるといえることから、X1年に存在する将来減算一時差異である賞与引当金繰入限度超過額350と未払事業税100に係る繰延税金資産は、回収可能性があると判断することになる。 (2) タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が発生する可能性が高いと見込まれるか タックス・プランニングとは、将来の法人税等の発生額を見込む(計画する)ことである。 原則として、将来減算一時差異の解消見込年度に、含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等のタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれる場合、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する(例:X3年に将来減算一時差異が400解消される見込みであり、同年に含み益が500ある土地を売却することがほぼ確実で、一時差異等加減算前課税所得が500生じる可能性が高い場合、当該将来減算一時差異400に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する)。 なお、タックス・プランニングに基づく繰延税金資産の回収可能性の判断に関しては、本連載の【第5回】以降で詳しく説明する。 (3) 将来加算一時差異が解消されると見込まれるか 原則として、将来減算一時差異の解消見込年度に、将来加算一時差異が解消されると見込まれる場合、将来加算一時差異の解消見込額と相殺される額を限度として、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する。 これは、特定の将来事業年度において、将来減算一時差異(税額負担を軽減する効果)を上回る将来加算一時差異(税額負担を増加する効果)が解消すれば、相殺によって税額負担を軽減する効果が見込まれるためである。   3 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順 上記2(1)に従って繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の具体的な手順は、概ね次のとおりである。なお、税務上の繰越欠損金の検討やタックス・プランニング等は、簡略化のため省略して説明する。 下記の【図3】のように、将来減算一時差異や将来加算一時差異が税務上でどのように認容されていくか、つまり、どのように解消されていくかを検討することを「スケジューリング」という。スケジューリングにより将来の税額負担を軽減する効果の有無を判定して、繰延税金資産の回収可能性を判断していく。 【図3】 繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の具体的な手順 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【図3】では、将来の5年間について一時差異の解消スケジュールを見積もっているが、例えば、これが無期限にスケジュールを見積ることができればどうだろう。すべての会社が期末時点に存在する将来減算一時差異に繰延税金資産を計上することができるだろう(いつかは解消されるものであるため)。 ただし、これでは将来の5年間で課税所得が発生すると見込まれる会社も、課税所得の発生が到底見込まれない会社も、同じだけ繰延税金資産を計上できることになり、将来の税額負担の軽減効果を正しく示しているとはいえない結果になる。 では、将来の何年間にわたって一時差異の解消スケジュールを見積ればよいのだろうか。 ここで実務上の指針となるのが、会社の分類に応じた取扱いである。 回収可能性適用指針では、過去の納税状況や将来の業績予測等をもとに要件を設けて会社を分類し、分類結果に応じて繰延税金資産の回収可能性の判断指針を示している。 次回からは、どのように会社を分類し、それぞれの分類ごとに、どのように繰延税金資産の回収可能性を判断するのかを説明する。 (了)

#No. 258(掲載号)
#竹本 泰明
2018/03/01

連結会計を学ぶ 【第13回】「連結会社相互間の取引高の相殺消去」

連結会計を学ぶ 【第13回】 「連結会社相互間の取引高の相殺消去」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 連結損益計算書の作成に際しては、連結会社相互間の取引高の相殺消去及び未実現損益の消去等の処理を行って作成する(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)34項)。 今回は、連結会社相互間の取引高の相殺消去について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取引高の相殺消去 親会社と子会社で取引が行われる場合(連結会社相互間の取引高)、それは企業集団としては内部取引であることから、連結損益計算書の作成に際して、相殺消去する必要がある(連結会計基準35項)。 なお、会社相互間取引が連結会社以外の企業を通じて行われている場合であっても、その取引が実質的に連結会社間の取引であることが明確であるときは、この取引を連結会社間の取引とみなして処理するので、注意が必要である(連結会計基準(注12))。 連結会計基準は、連結会社相互間における商品の売買その他の取引に係る項目として規定しているが、例えば、次のような取引が考えられる。 作成のイメージは、おおむね次の図表のとおりである。 【図表:連結損益計算書の作成プロセスのイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   Ⅲ 連結精算表の作成 ① 親会社と子会社の個別損益計算書における商品取引 子会社(100%の持分比率)は親会社に商品を売上げ(20,000)、親会社は当該仕入れ分を企業集団の外部にすでに販売している。このため、期末に、棚卸資産として残っているものはない。 連結財務諸表の作成に際して、親会社の個別損益計算書と子会社の個別損益計算書を単純に合算すると、「売上高20,000」と「売上原価20,000」が二重計上となってしまうので、相殺消去する。 ② 親会社と子会社の個別損益計算書における利息の支払取引 子会社は、親会社から資金を借り入れ、利息を支払っている(300)。 親会社は、子会社に対する貸付金により、利息を受け取っている(300)。 連結財務諸表の作成に際して、親会社の個別損益計算書と子会社の個別損益計算書を単純に合算すると、「受取利息300」と「支払利息300」が二重計上となってしまうので、相殺消去する。 連結損益計算書に関係する連結修正仕訳を示す趣旨から、貸付金と借入金の相殺消去については省略することとする(貸倒引当金の調整も同様に省略)。 ③ 連結精算表 連結精算表は次のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 258(掲載号)
#阿部 光成
2018/03/01
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