《速報解説》 FASF、一体的開示をより行いやすくするための 「有価証券報告書の開示に関する事項」を公表 ~有価証券報告書と事業報告等の記載共通化に向けた留意点・記載事例を示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年3月30日、財務会計基準機構(FASF)は、「有価証券報告書の開示に関する事項- 『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組-」を公表した。 これは、平成29年12⽉28⽇に⾦融庁・法務省が公表した「⼀体的開⽰をより⾏いやすくするための環境整備に向けた対応について」を受けたものであり、有価証券報告書と事業報告等の記載の共通化を図るうえでの留意点や記載事例をまとめたものである。 また、金融庁及び法務省の連名により「『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組について」が公表されており、上記の「有価証券報告書の開示に関する事項」に掲げられた「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」の内容は、関係法令の解釈上、問題ないものと考えられ、企業において、有価証券報告書と事業報告等の記載内容の共通化を行う際には、本取組が参考になるものと考えられる旨が示されている。 金融庁では、有価証券報告書と事業報告等の記載内容の共通化や両書類の一体化を希望する企業へのサポートのため、企業からの共通化等に係る相談を受け付ける窓口が設置されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 共通化の内容 「有価証券報告書の開示に関する事項」では、有価証券報告書と事業報告等の記載内容の共通化に関する事項について、「作成にあたってのポイント」と「記載事例」が記載されている。また、「Ⅲ.(参考資料)有価証券報告書及び事業報告等の記載項目の対応表」も記載されている。 このため、有価証券報告書と事業報告等の記載内容の共通化を行おうとする企業にとって役に立つものと考えられる。 共通化の内容は次のとおりである(「施規」は会社法施行規則の略であり、「計規」は会社計算規則の略である)。 本稿では、「作成にあたってのポイント」について解説する(「記載事例」についてはFASFの公表資料をご覧いただきたい)。 1 「主要な経営指標等の推移」/「直前三事業年度の財産及び損益の状況」 (開示府令第三号様式記載上の注意(5)/施規120条1項6号) 2 「事業の内容」/「主要な事業内容」 (開示府令第三号様式記載上の注意(7)/施規120条1項1号) 3 「関係会社の状況」/「重要な親会社及び子会社の状況」について (開示府令第三号様式記載上の注意(8)/施規120条1項7号) 4 「従業員の状況」/「使用人の状況」 (開示府令第三号様式記載上の注意(9)/施規120条1項2号) 5 「経営上の重要な契約等」/「事業の譲渡」等 (開示府令第三号様式記載上の注意(14)/施規120条1項5号ハからへまで) 6 「主要な設備の状況」/「主要な営業所及び工場」の状況 (開示府令第三号様式記載上の注意(18)/施規120条1項2号) 7 「ストックオプション制度の内容」/「新株予約権等に関する事項」 (開示府令第三号様式記載上の注意(19)/施規123条1号) 8 「大株主の状況」/上位十名の株主に関する事項 (開示府令第三号様式記載上の注意(25)/施規122条1項1号及び2項) 9 「役員の状況」/会社役員の「地位及び担当」並びに「重要な兼職の状況」 (開示府令第三号様式記載上の注意(36)/施規121条2号及び8号) 10 「社外役員等と提出会社との利害関係」/社外役員の重要な兼職に関する事項 (開示府令第三号様式記載上の注意(37)及び開示ガイドライン5-19-2/施規124条1項1号及び2号) 11 「社外取締役の選任に代わる体制及び理由」/「社外取締役を置くことが相当でない理由」 (開示府令第三号様式記載上の注意(37)/施規124条2項) 12 「役員の報酬等」/「会社役員の報酬等」 (開示府令第三号様式記載上の注意(37)/施規121条4号及び5号並びに124条1項5号及び6号) 13 「監査公認会計士等に対する報酬の内容」/「各会計監査人の報酬等の額」及び「株式会社及びその子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額」 (開示府令第三号様式記載上の注意(38)/施規126条2号及び8号イ) 14 財務諸表及び計算書類の表示科目 (財規17条1項7号等/計規74条3項1号トからヲまで等) 15 財務諸表及び計算書類の1株当たり情報に関する注記 (財規68条の4及び95条の5の2並びに連結財規44条の2及び65条の2/計規113条) (了)
2018年3月29日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.262を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
これからの国際税務 【第6回】 「EUにおけるデジタル経済課税の検討とPE概念」 早稲田大學大学院会計研究科 教授 青山 慶二 1 なぜOECDの動きを待てなかったのか? 3月22日の日本経済新聞は、EUの欧州委員会(EUの執行機関でかつ唯一の立法提案権保有機関)がデジタル巨大企業に対する新税創設案を加盟国に向けて公表したと伝えた。その中身は、中長期的な課税ルールの提案と併せて、それが国際的に合意されるまでの暫定措置として、EUは売上高の3%の税率を課すデジタル税を導入するという提案である。 2015年10月に成立したG20/OECDによるBEPS最終報告書では、伝統的ルールの下で課税を免れているデジタル産業に対する課税については、移転価格税制や条約濫用防止、さらにはタックスヘイブン税制等の諸勧告の実行により当面十分に対応できると評価し、抜本的な課税制度の設計については2020年までにじっくりと検討すると合意されたはずである。 では、EUはなぜ待てなかったのか、その背景を探る。 2 EUのデジタル単一市場とそれを支える税制 2017年9月21日に欧州委員会が理事会に提出し、今後の立法化に向けた検討方向を示した文書「EUにおけるデジタル単一市場のための公平で効率的な課税システム」がその背景を説明している。 EUは課税問題の前に、既にデジタル化の下で「デジタル単一市場」戦略の実行に着手していた。すなわち、5億人を超えるEU消費者から構成される単一市場において個人と企業にとってのデジタル化のメリットを開放することを目的とし、その達成による経済効果を欧州経済にとって毎年4,150億ユーロ(雇用創出と公共サービスの改良効果を含む)と試算して各方面の施策の統一に取り組んでいる。 そして、このデジタル単一市場を支える不可欠なインフラが、デジタル経済のイノベーションを促進しつつ、市場の分断を防止し、すべてのプレーヤーに公平でバランスのとれた状況下で新市場への参入を許容する方向に沿った、近代的かつ安定的な課税枠組と認識されたのである。 一方、価値乃至利益の創造された場所で課税すべきとの改革理念を色濃く持つBEPSプロジェクトでは、電子産業に関する限り、独自の無形資産に基づきプラットフォームを大規模に提供してBtoBやBtoCの取引(データ収集を含む)を独占するIT巨大企業(主として米国所在)と、それらに大規模市場を提供しているEU等の先進国との間では、それぞれの貢献度の評価に差があり、迅速な合意が難しいという宿命がある。OECDでの税源浸食へのじっくりとした対応に関し、2015年の英国による迂回利益税創設を契機として、これに満足しないEU加盟国による1国限りの独自税制が散見されるようになった。 EUは、この状況を放置しておくと単一デジタル市場が分解するとの懸念に立ち、それらの動きを抑制する方向ではなく、EUとしての統一的な暫定的対応策を含めた形で、税制改革案を提案したものと思われる。 3 暫定措置の内容と課題 欧州委員会が提案した暫定措置は、「一定のデジタル産業の売上に対して、3%の税を課す」とする内容である。内外無差別の間接税であり、国際課税面での理論整理の必要性は少ないと思われる。 すなわち、所得課税に関する本格的な検討に基づく国際合意に達するまでの間の暫定措置であり、課税による中立性かく乱をめぐっての政策の当否に係る議論は別として、課税の仕組みについての新しい発想があるとは思われない。 4 中長期的解決策としての「デジタルPE」 一方、中長期の解決策としては、「PEなければ課税なし」の確立された枠組みの中で、従来は物理的PEに頼りすぎたとの反省に立ち、デジタルプラットフォームが次の3条件の1つを満たす場合には、課税ベースとなる「デジタル拠点」あるいは「バーチャルPE」と位置付けて、共通の所得課税を行うとしている。 この長期的改正案は、2020年に向けた検討を進行中のOECDへの牽制球としての性格も併せ持つものと思われる。すなわち、BEPSの他の勧告の実施でデジタル経済対応は十分とする考え方をとる国に対しては、EUの対応の真剣度を誇示するとともに、暫定案による場合の経済かく乱や課税理論の破壊リスクを危ぶむ国に対しては、国際ルールに関する沿革尊重やOECDでの議論への参加による決着が最も望ましいと考えていることを知らせている意味で、一定の効果を有していると思われるのである。 5 今後の見通し 今回の欧州委員会による税制改革案は、近く共通法の形式である指令案として提案されると期待されるが、全会一致方式をとっているEUでは、アイルランドやルクセンブルク等の反対国の存在もあり、早急な執行への到達は困難と思われる。 欧米に比べて検討が遅れていると思われる我が国も、欧州進出子会社に適用された場合の効果も検討しつつ、デジタル社会におけるPEというNexus概念の再構成につながるOECDでの今後の議論に、官民を挙げて積極的に取り組むべきであろう。 (了)
〔平成30年4月1日から適用〕 改正外国子会社合算税制の要点解説 【第3回】 「会社単位の合算課税」 税理士 長谷川 太郎 1 押さえておきたいポイント 2 会社単位の合算課税 外国子会社合算課税制度の適用の有無を、まず租税負担割合で判定する形は廃止(トリガー税率の廃止)されたが、改正前の制度との継続性を踏まえつつ、企業の事務負担を軽減する観点から、適用免除の基準として租税負担割合が採用されている。 具体的には、ペーパー・カンパニー等の特定外国関係会社については、租税負担割合が30%以上であれば、その事業年度に係る適用対象金額について合算課税の適用を免除するとされている(措法66の6⑤一)。 特定外国関係会社以外の外国関係会社については、租税負担割合が20%以上であれば、その事業年度に係る適用対象金額について合算課税の適用を免除するとされている(措法66の6⑤二、⑩一)。また、特定外国関係会社については、租税負担割合が30%未満であれば、経済活動基準(改正前の適用除外基準)の判定を経ずに会社単位の合算課税が適用され、それ以外の外国関係会社については、租税負担割合が20%未満であり、かつ経済活動基準(次回以降解説)を1つでも充足しない場合には対象外国関係会社として会社単位の合算課税が、経済活動基準を全て充足する場合には部分対象外国関係会社として部分合算課税が適用される。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 3 特定外国関係会社 ① 特定外国関係会社とは 租税回避リスクが高いと考えられるペーパー・カンパニー等については、租税負担割合が20%以上であっても会社単位で合算課税が適用されることになった。ただし、租税負担割合が30%以上の場合には、合算課税は適用免除となる(措法66の6⑤一)。 具体的な対象法人は以下の3種類に区分される(措法66の6②二)。 (イ) ペーパー・カンパニー その主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有しておらず、かつその本店等の所在する国等において、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていない外国関係会社が該当する(措法66の6②二イ)。 「実体基準」及び「管理支配基準」は経済活動基準(改正前の「適用除外基準」)における「実体基準」及び「管理支配基準」と基本的に同じ内容となっているが、ペーパー・カンパニー等の判定における「実体基準」については、固定施設の所在地が本店所在地国に限定されていないことに留意されたい。 なお、具体的な「実体基準」及び「管理支配基準」の解説は、次回以降の「経済活動基準」の解説の中で行う。 (ロ) 事実上のキャッシュ・ボックス 総資産に比べて受動的所得の占める割合が高い外国関係会社については、「事実上のキャッシュ・ボックス」として特定外国関係会社に該当することとされている。 具体的には、その総資産(その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額)に対する部分合算課税の対象となる各所得の金額で異常所得の金額を除いた金額の合計額(下記〇の合計額)に相当する金額の割合が30%を超える外国関係会社とされている(措法66の6②二ロ、措令39の14の3③)。 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P676より抜粋 ただし、総資産額に対する有価証券、貸付金、固定資産及び無形資産等の合計額の割合が50%を超える外国関係会社に限られるとされている(措法66の6②二ロ、措令39の14の3④)。 よって、実務上は、まずはセーフハーバーである50%判定を行うことになると考えられる。 なお、外国金融子会社等については別段の定めがあるが、本稿では解説を割愛する。 (ハ) ブラック・リスト国所在外国関係会社 情報交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域の所在する外国関係会社は「ブラック・リスト国所在外国関係会社」として特定外国関係会社に該当することとされている(措法66の6②二ハ)。 具体的には、財務大臣が指定し、告示(措法66の6⑭)された国又は地域が該当するが、本稿執筆現在において、指定された国又は地域は存在しない。 ② ペーパー・カンパニーの判定における推定課税 税務当局の職員は、外国関係会社の租税負担割合が30%以上である事実が客観的に確認することができず、ペーパー・カンパニーに該当するかどうかを判定するために必要があるときは、期間を定め、内国法人に対して実体基準及び管理支配基準を充足する事実を明らかにする書類等の提示または提出を求めることができる(措法66の6③)とされている。この場合において、書類等の提示または提出がない時は、当該外国関係会社について、実体基準及び管理支配基準を充足しない(特定外国関係会社に該当する)と推定することとされているため、この場合には会社単位の合算課税が適用されることとなる。 法定税率ベースで30%以上となっている国は限定的であり、推定課税制度の導入により、企業側においては租税負担割合が明らかに20%以上であり、これまで特に何も対応をしていなかった外国法人についても、今後はペーパー・カンパニーに該当しないことを立証するため、実体基準、管理支配基準を充足することを明らかにする書面及び根拠資料を保存しておく必要があり、事務負担が増加することになると考えられる。 (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第24回】 「別表14(4) 新株予約権に関する明細書」 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第24回目は、いわゆるストック・オプションを採用する企業が最近増えてきているため、「別表14(4) 新株予約権に関する明細書」を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、個人に法人税法第54条の2第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する新株予約権が交付されている場合に、同項の役務の提供を受ける法人が記載する。 本制度は、いわゆるストック・オプションと呼ばれているものであり、企業会計上は、「ストック・オプション等に関する会計基準」及び「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(平成17年12月27日、企業会計基準委員会)等に基づいて処理される。 すなわち、企業がストック・オプションを付与し、これに応じて従業員等から取得するサービスは、権利確定日まではその取得に応じて費用として計上し、対応する金額をストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に「新株予約権」として計上する。権利行使がなされたら、新株予約権として計上した金額のうち、その権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えることになる。 一方、税務では、新株予約権者の所得税法上の課税は、権利行使時に払込額と取得した株式の時価との差額を給与所得等として課税されることを原則としつつ、いわゆる税制適格ストック・オプション(措法29の2)に該当するものについては、付与時及び権利行使時には課税されず、権利行使により取得した株式を譲渡した時に譲渡所得として課税されることになる。 また、法人税法上は、従業員等から役務の提供を受けているのであれば、法人は何らかの対価を支払うべき債務を負うものであることから、基本的には損金性があるものと考えられる一方、新株予約権者において所得税課税される時点が、支給時ではなく権利行使時や譲渡時に繰り延べられており、権利行使日前の事業年度の損金の額に算入することとすると、損金計上が先行して事実上の課税の繰延べになってしまうことから、従業員等において給与所得等(所得税法に規定する給与所得、事業所得、退職所得及び雑所得の金額にかかる収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額)として課税される場合に限り、その課税される事由(以下「給与等課税事由」という)が発生する時点で損金算入を認めることとされている。 なお、ストック・オプションの付与時において測定したオプション価値(時価)は、権利確定日までの各期間に費用配分することになるが、対象勤務期間を基礎に配分するなどの合理的な方法で計算し、これらの費用総額はストック・オプションの公正評価額総額と一致することになる。 Ⅲ 「別表14(4)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成29年10月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) ストック・オプションに関する計算と仕訳例 (単位:円) 〔費用配分の計算〕 〔前期末の仕訳〕 〔権利確定時の仕訳〕 〔権利行使時の仕訳〕 (5) 別表の各記載欄の説明 「新株予約権の変動状況の明細」 (了)
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第31回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第4章》 平成13年から平成17年までの議論) 2 五枚橋實氏の見解 (1) はじめに 平成15年1月17日開催の会員懇談会において東京国税局の菅原英雄氏の講演があり、同年2月19日に同じく東京国税局の舛巴啓二氏の講演があった。本講演内容については、菅原英雄「企業組織再編税制を巡る留意点(その1)」租税研究642号25-35頁(平成15年)、舛巴啓二「企業組織再編税制を巡る留意点(その2)」租税研究643号14-30頁(平成15年)にそれぞれ掲載されている。しかし、組織再編税制が導入されてから間もないことから、すでに財務省主税局から公表されたものや、条文・通達で明らかなことのみが記載されており、特記すべき事項は存在しなかった。 これに対し、平成16年5月25日に行われた東京国税局の五枚橋實氏の講演では、事例が積み重なってきたこともあり、より具体的な内容が解説されている。なお、本講演内容については、五枚橋實「企業組織再編税制にかかる誤り事例と留意点について」租税研究658号58-68頁(平成16年)に掲載されている。以下では、その内容について解説を行うこととする。 (2) 合併交付金 まず、五枚橋氏は、平成17年改正前商法における合併交付金につき、利益配当としての性格を有するものと、合併比率を調整するためのものがあることを挙げたうえで、前者についてのみ金銭等不交付要件に抵触しないとしている(※1)。 (※1) 五枚橋實「企業組織再編税制にかかる誤り事例と留意点について」租税研究658号59頁(平成16年)。 そのうえで、合併契約書に利益配当の見合いであると記載すればすべて認められるのかという点については、配当方針に則っておらず、通常の年度よりも多額のものについては、利益配当としての合併交付金であると認められないとしている(※2)。 (※2) 前掲(※1)59頁。 しかし、五枚橋氏の見解は、中間配当を除き、年に1回しか配当を行えなかった平成17年改正前商法の時代のものであり、現行会社法では、年に何度でも配当を行うことが可能となっているため、現在では採用すべきではない。 すなわち、合併手続きとは別に、合併前に被合併法人から剰余金の配当を行うのであれば、当然に剰余金の配当と認められるのであるから、配当見合いとしての金銭等の交付が通常の年度よりも多額の配当であったとしても、合併当事者間の認識が配当見合いとしての金銭等の交付となっているのであれば、金銭等不交付要件に抵触しないと考えるべきであろう。 なお、現行会社法では、合併手続きとは別に、合併前に被合併法人から剰余金の配当を行うことが可能になっていることから、配当見合いとしての金銭等の交付を行うことは稀であると考えられる。 (3) 未経過固定資産税 五枚橋氏は、分割により分割承継法人に移転した固定資産に対する未経過固定資産税につき、分割法人と分割承継法人との間で精算した場合には、金銭等不交付要件に抵触するとしている(※3)。これは、1月1日に固定資産を有する者に対して1年分の固定資産税が課され(地法359)、かつ、分割による租税債務の移転が認められていないからである。この点については、平成16年12月7日に行われた名古屋国税局の谷口勝司氏の講演でも、同様の見解が述べられている(※4)。 (※3) 前掲(※1)60頁。 (※4) 谷口勝司「組織再編税制の概要と申告上の留意点」租税研究666号29頁(平成17年)。 しかし、会社法の施行により、分割の対価として未経過固定資産税の精算を行うためには、合併等対価の柔軟化の手続きによらざるを得ないのに対し、新設分割の場合には、金銭を対価とすることはできないため(会社法763①八)、分割とは別の手続きで未経過固定資産税の精算をせざるを得ない。すなわち、民法上は、分割承継法人から分割法人に対する贈与が行われたと考えざるを得ない。吸収分割の場合であっても、合併等対価の柔軟化の手続きに従っていないときは、新設分割とのバランス上、贈与として捉えるべきである。 そのため、現行法上は、合併等対価の柔軟化の手続きに従っていないのであれば、未経過固定資産税の精算を行ったとしても、金銭等不交付要件に抵触しないと考えるべきであろう。 (4) 組織再編成前の株式の異動 五枚橋氏は、少数株主から株式を買い取って、50%超の資本関係から100%の資本関係にしてから合併を行う場合には、従業者引継要件、事業継続要件を満たす必要がないことから、税制適格要件を満たすための株式異動については、包括的租税回避防止規定(法法132の2)の適用対象になり得る旨を指摘されている(※5)。そして、平成16年12月7日に行われた名古屋国税局の谷口勝司氏の講演でも、①合併前に被合併法人の従業者を退職させた後に、合併直前の被合併法人の従業者の全てを合併法人に引き継ぐことで、従業者引継要件を満たそうとする行為、②合併の直前に完全支配関係を成立させることで100%グループ内の組織再編成に該当させることは租税回避に該当するのではないかという指摘をされている(※6)。 (※5) 前掲(※1)60頁。 (※6) 前掲(※4)33頁。 しかし、従業者引継要件の制度趣旨は、事業単位の移転であることから、その制度趣旨に反していない限り、包括的租税回避防止規定の適用対象にすることは困難であると考えられる。すなわち、リストラにより被合併法人単独で事業を維持することができなくなり、合併法人から被合併法人に派遣をすることで、合併の直前まで事業を維持するような特殊な事案を除き、包括的租税回避防止規定を適用すべきではないと考えられる。 さらに、合併の直前に完全支配関係を成立させることで100%グループ内の組織再編成に該当させたとしても、それを前提として組織再編税制が構築されていることから、安易に租税回避という認定を行うべきではないと考えられる。 そのため、五枚橋氏、谷口氏の回答は、組織再編税制の事例が少なかった時代のやや保守的な回答であると捉えるべきと考えられる。 (5) 支配関係継続要件 すでに解説したように、後発事象により支配関係が継続しなくなる場合であっても、支配関係継続要件に抵触しないと考えられる。五枚橋氏もその点については否定していないが、将来における支配関係の解消の予定につき、経理担当者が知らなかったとしても、社長が知っていた場合には、支配関係継続要件に抵触する可能性がある旨を指摘されている(※7)。この点は、実務でも問題になりやすいため、留意すべきであろう。 (※7) 前掲(※1)61頁。 そして、上場や株式譲渡についても、「上場したい」「株式譲渡をしたい」というのでは支配関係継続要件に抵触せず、実際の上場準備又は株式譲渡の準備を始めてから支配関係継続要件に抵触するようになると指摘されている(※8)。まだ、この時点では事例が積み重なっていなかったと思われるが、上場準備の初期段階では、まだ、願望に近い状態であることも少なくなく、株式譲渡についても、交渉が始まっても値段の提示を受けない限りは、まだ、願望に近い状態であることも少なくない。 (※8) 前掲(※1)61-62頁。 実務上は、支配関係が解消される可能性が極めて高い状態(すなわち、ほぼ確実な状態)になるまで後発事象として捉えることにより、支配関係継続要件に抵触しないと解するべきであると考えられる。 さらに、ベンチャーキャピタルのような、3年や5年で株式を譲渡することがほぼ確実なものについては、支配関係継続要件や株式継続保有要件に抵触する可能性があることを指摘されている(※9)。ただし、実際に見てみると、必ずしも3年や5年で株式を譲渡することがほぼ確実なものと言えないものもあることから、それぞれの事案に応じた柔軟な対応が必要になると考えられる。 (※9) 前掲(※1)62頁。 * * * 次回も引き続き、五枚橋氏の講演内容について解説を行う予定である。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第55回】 「土地の賃貸借変更契約書」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 既に成立している土地の賃貸借契約において、賃料を変更する契約を下記のとおり結ぶこととしましたが、課税文書に該当しますか。 記載金額のない第1号の2文書(土地の賃借権の設定に関する契約書)に該当する。 [検討1] 変更契約書とは 「変更契約書」とは、既に存在している契約(原契約)の同一性を失わせずに内容を変更する契約書で、重要な事項以外の変更契約書は、課税文書に該当しない。 [検討2] 重要な事項とは 課税文書における契約の内容の重要な事項については、基通別表第2「重要な事項の一覧表」に例示されており、第1号の2文書における重要な事項は以下のとおりである。 土地の賃貸借における賃料はこのうち、「権利の使用料」に該当することとなるため、賃料を変更とすることを内容とする契約書は課税文書に該当する。 [検討3] 土地の賃貸借契約書の記載金額 第1号の2文書は土地の賃借権の設定に関する契約書であり、その記載金額は賃借権の設定又は譲渡に関して定められる金額であることから、契約に際して相手方当事者に交付し、後日において返還されることが予定されていない、権利金などをいう。 したがって、後日返還が予定されている保証金や敷金などの他、使用収益上の対価である賃貸料は記載金額には含まれない。 ▷まとめ 事例の土地の賃貸借変更契約書は土地の賃借権の設定に関する契約書に該当する。また、この場合の契約金額は、後日、返還されることが予定されていない金額をいう。 したがって、返還されることが予定されている保証金、敷金などや使用収益上の対価である賃貸料は契約金額には該当しないため、賃料を変更する契約書は記載金額のないものとなる。 (了)
計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第30回】 (最終回) 「金融商品時価情報で入力ミスが起こる理由」 公認会計士 石王丸 周夫 今年の連載のラストとなるうっかりミスをご紹介しましょう。 1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例30-1】 注記の数字が連結B/Sと整合していない。 【事例30-1】は連結計算書類の中から、連結貸借対照表と金融商品の時価情報を抜き出したものです。金融商品の時価情報は、連結注記表に記載される情報で、連結貸借対照表に計上された金融商品の残高(簿価)について、その時価を開示する注記です。 したがって、時価情報の内容は連結貸借対照表と対応したものになっているのですが、【事例30-1】では、1ヶ所だけ不整合な箇所があります。 それは数字の部分なのですが、どの数字だかわかりますか? ヒントを出しましょう。一致してはいけない数字が一致しています。 2 非上場株式を控除し忘れた では、正解を見てみましょう。以下のとおりです。 赤丸で囲ったところが、正しく修正された部分です。 時価情報の投資有価証券について、「連結貸借対照表計上額」と「時価」の2ヶ所が修正されましたが、「時価」の方は「連結貸借対照表計上額」の修正に連動して修正したものなので、「連結貸借対照表計上額」の修正理由の方を確認しておきましょう。 通常、時価情報に掲載されている各科目の「連結貸借対照表計上額」の数値は、連結貸借対照表の対応する勘定科目の残高と一致します。上の正解でも、投資有価証券以外の科目はすべて一致しています。 投資有価証券が一致しない理由は、時価情報の表の下の(注2)に書いてあります。 連結貸借対照表に計上されている投資有価証券には、時価評価が困難な非上場株式が含まれているのです。そのため、時価情報の表ではその非上場株式を除外しています。 したがって、時価情報の「連結貸借対照表計上額」は、連結貸借対照表の投資有価証券残高とは一致しないのです。 ところが、【事例30-1】では、投資有価証券について、時価情報の「連結貸借対照表計上額」と連結貸借対照表の投資有価証券残高が一致してしまっています。これが不整合な箇所でした。 本来であれば、正解のように、時価情報の「連結貸借対照表計上額」と「(注2)に記載された額」の合計が、連結貸借対照表の投資有価証券残高に一致します。 3 人間は態勢の切り替えが苦手 うっかりミスをした時に大事なことは、ミスの原因を明らかにすることです。ミスの原因は、ミスが起きた作業プロセスを特定するとわかります。 【事例30-1】のミスは、時価情報の投資有価証券の数値から非上場株式の残高を控除し忘れたミスです。このミスが起きた作業プロセスは、数字の転記作業です。より具体的には、時価情報の表を埋めていくために、連結貸借対照表の数字を転記するという作業です。 この作業では、ほとんどの数字が機械的な転記になります。時価情報の表の「連結貸借対照表計上額」は、基本的に連結貸借対照表の数字をそのまま時価情報の表に転記するだけだからです。 これは思考力をあまり必要としない作業といえますね。 「思考力を要しない作業」というのは、単調な作業です。単調な作業というのは、人間にとって容易な作業でもあり、本来はミスをする恐れが少ない作業だといえます。 ・・・ところがです。思考力を要しない作業に取り組んでいる最中に、突如、思考力を要する作業が舞い込んできたら・・・どうなるでしょうか。 思考力を要する作業をするための態勢が整っていないわけですから、そのような作業を正しく処理できない可能性が高まりますね。 そして、その結果どうなるかというと、ミスが起こるのです。 【事例30-1】のミスは、そうやって起きたミスだと考えられます。 まず、時価情報の表で、「現金及び預金」「受取手形及び売掛金」という順に数字を入力していきます。この2つの科目の「連結貸借対照表計上額」は、いずれも連結貸借対照表の数字と同じです。 したがって、思考力を要しない単純な転記作業が行われます。その態勢のまま、3番目の「投資有価証券」の入力に移ります。 前述したとおり、これは若干思考力を要する入力作業ですが、思考を働かせる用意ができていないため、「現金及び預金」や「受取手形及び売掛金」と同様に、単純な転記作業、つまり、連結貸借対照表の数字をそのまま転記するという作業をやってしまうのです。 これが【事例30-1】のミスです。 人間というのは、作業に取り組む姿勢を急に切り替えることが苦手なのでしょう。 4 勘定科目名の不整合 時価情報の内容が連結貸借対照表と不整合となっている事例は他にもあります。 たとえば次のようなものです。 【事例30-2】 注記に出てくる勘定科目名が連結B/Sに存在しない。 【事例30-2】は勘定科目名の不整合です。 時価情報の部分では「有価証券及び投資有価証券」という表現が見られますが、連結貸借対照表には「投資有価証券」しか見当たりません。「有価証券」の残高があれば流動資産に計上されるはずですが、「有価証券」はありません。 有価証券残高がよほど少額であれば、流動資産の「その他」に含まれている可能性もありますが、数字の整合性を確認すると、そうでないことがわかります。時価情報の「連結貸借対照表計上額」と「(注2)に記載された額」の合計が、連結貸借対照表の投資有価証券残高に一致しています。つまり、有価証券残高は0円だということです。 したがって、正確を期すなら、時価情報の「有価証券及び投資有価証券」は「投資有価証券」に変更すべきです。このようなミスにも気を付けましょう。 〈今回のまとめ〉 時価情報の「有価証券及び投資有価証券」の数字は、連結B/Sとの整合性を確認しましょう。 (連載了)
〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《繰延資産・資産除去債務-敷金》編 【第2回】 「敷金(2)」 公認会計士・税理士 前原 啓二 はじめに 前回は「中小企業会計指針」における資産除去債務の取扱いとして建物等賃貸借契約上の原状回復義務の発生時の処理を示しました。 今回は、この原状回復義務が実際に履行された時の会計処理をご紹介します。 【設例2】 A社(3月31日決算)は、×0年4月1日にO社との建物の賃貸借契約(退去時には、敷金1,200,000円のうち400,000円(敷引)を差し引いた額から原状回復費用を控除してO社へ返還する契約)により入居を開始し、同日に敷金800,000円、長期前払費用400,000円を計上しました。 入居時において、退去時の原状回復費用を300,000円と見積もり、同額を5年間にわたって敷金を減額して雑費計上しました。また、長期前払費用を5年間にわたり償却しました。この結果、×5年3月31日における敷金と長期前払費用の帳簿残高は、それぞれ500,000円と0円です。 その後、A社は×5年7月1日に同建物を退去し、実際の原状回復費用320,000円を控除した480,000円がO社から返却されました。 1 仕訳 A社の仕訳は、次のとおりです。 退去直前における敷金の帳簿価額は500,000円であり、これを敷金の返金に合わせて全額減額します。また、退去時の原状回復費用は、入居時点では300,000円と見積もられましたが、実際には320,000円となったので、この見積り誤差20,000円を、それが判明した事業年度において費用(雑費)計上します。 2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。 3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整は、次のとおりです。 (1) 長期前払費用については、前回記載したとおり、この設例では、会計上の処理と税務上の取扱いは一致しています。 (2) 資産除去債務に係る費用の金額は、前回記載したように税務上それを計上した事業年度ではなく、実際に原状回復工事を実施してその負担額が確定した事業年度の損金の額に算入されます。この設例では、×6年3月期において実際の負担額が320,000円と確定しているので、その事業年度に同額を損金算入します。 具体的には、会計上、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない金額として見積もった300,000円を償却期間(上記の5年)にわたって同資産から減額して費用(雑費)計上してきた(×1年3月期の敷金減額による費用計上額60,000円=300,000円×12/60月。翌年度以降×5年3月期まで同様)額が、税務上は加算調整されてきたので、これを減算します。 敷金の会計上と税務上の帳簿価額及び雑費処理については、×1年3月期から×6年3月期までを示すと次のとおりです。 (《繰延資産・資産除去債務-敷金》編 終了)
連結会計を学ぶ 【第15回】 「子会社の資産及び負債の評価」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価することになる(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)20項)。 今回は、資本連結に関する子会社の資産及び負債の評価について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 子会社の資産及び負債の評価 1 全面時価評価法 支配獲得時における資本連結の手続には次のものがある(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号。以下「資本連結実務指針」という)3項)。 連結会計基準は、連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価するとし、「全面時価評価法」を規定している(連結会計基準20項)。 時価により評価する子会社の資産及び負債の範囲については、部分時価評価法と全面時価評価法とが考えられる(連結会計基準61項、資本連結実務指針57項)。 前述のように、連結会計基準では「全面時価評価法」だけを採用している。 2 時価 資本連結実務指針は、子会社の資産及び負債の時価評価額について、原則として市場価格等に基づく評価額とするが、子会社の株式取得時に、個々の貸借対照表項目について、当該株式の売買契約等により取得側と売却側との間に合意された評価額が存在し、かつ、それらに合理性がある場合には、当該金額によることができると規定している(資本連結実務指針12項)。 3 評価差額 子会社の資産及び負債の時価による評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額(評価差額)は、子会社の資本になる(連結会計基準21項)。 これに関して、資本連結実務指針は、連結貸借対照表の作成に当たっては、支配獲得日において、取得した株式に係る子会社の資産及び負債を時価により評価し、この時価評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額を資産及び負債の帳簿価額の修正額(以下「時価評価による簿価修正額」という)として計上するとともに、その純額を「評価差額」として子会社の資本に計上すると規定している(資本連結実務指針11項)。 時価評価による簿価修正額が税効果会計上の一時差異に該当する場合、当該一時差異について繰延税金資産又は繰延税金負債を計上し、当該税効果額は法人税等調整額に計上せずに直接評価差額から控除することになる。したがって、評価差額の残高は当該税効果額を控除した後の金額となる(資本連結実務指針11項)。 なお、評価差額に重要性が乏しい子会社の資産及び負債は、個別貸借対照表上の金額によることができる(連結会計基準22項)。この場合の重要性の有無は、個々の貸借対照表項目の時価評価による簿価修正額ごとに判断する(資本連結実務指針13項)。 親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本については、投資と資本の相殺消去の資本連結手続が行われる(連結会計基準23項、24項)。 資本連結手続において相殺消去の対象となる子会社の資本の額は、以下の①及び②に③の項目を加えた額となる(以下の金額はいずれも税効果会計適用後の金額である。資本連結実務指針9項)。 資産及び負債の時価評価の結果生じた評価差額は、個別貸借対照表の資本に計上されても投資と資本との相殺消去により消去され、又は非支配株主持分へ振り替えられて連結貸借対照表の資本には計上されない(資本連結実務指針57項)。 具体的な会計処理は、資本連結実務指針の「設例10 資産の売却により評価差額が実現した場合」を参照していただきたい。 4 時価評価による簿価修正額及び評価差額の計上後の処理 次の会計処理が行われる(資本連結実務指針25~29項、64項、設例10、「金融商品会計に関するQ&A」Q75)。 (了)