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平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋     Ⅲ 有償ストック・オプションの会計処理   平成30年1月12日に実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(以下、「有償新株予約権取扱い」という)」がASBJより公表された。 近年、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引が見られる。当該取引は、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準(以下、「ストック・オプション基準」という)の公表時には想定されていなかった。 そのため、当該取引が、ストック・オプション基準の適用範囲に含まれるのか、企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(以下、「複合金融商品適用指針」という)」の適用範囲に含まれるのかが必ずしも明確ではなかったことから、ASBJで審議が行われた(有償新株予約権取扱い12)。 審議の結果、従業員等に対して有償新株予約権取扱いの対象となる権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権はストック・オプション基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとされた。 ただし、権利確定条件付き有償新株予約権が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価(ストック・オプション基準第2項(4))として用いられていないことを立証できる場合、当該取引についての会計処理は、複合金融商品適用指針に従う(有償新株予約権取扱い4)。 有償新株予約権取扱いでは、以下の事項が定められている。   1 範囲 有償新株予約権取扱いは、「概ね」以下の内容で発行される権利確定条件付き有償新株予約権を対象としている(有償新株予約権取扱い2、17)。 有償新株予約権取扱いでは、上記の権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引を対象としているが、取引の内容が上記①から⑨に記載された内容と大きく異ならない取引について有償新株予約権取扱いの対象となるかどうかを、実態に応じて適切に判断できるようにするため、「「概ね」以下の内容で発行される」という表現が用いられている(有償新株予約権取扱い15) 。 有償新株予約権取扱いは、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引についての取扱いが必ずしも明確ではないとの要請から開発したものであるため、現在行われている典型的な取引を対象としており、有償新株予約権取扱いの対象範囲を上記に定める取引以外の取引に広げないこととしている(有償新株予約権取扱い16)。 なお、有償新株予約権取扱いで取り扱っていない取引については、内容に応じて、有償新株予約権取扱いを参考にすべきかどうかを判断することが考えられる(有償新株予約権取扱い16)。 例えば、企業がその子会社の従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は有償新株予約権取扱いの適用対象となっていない(有償新株予約権取扱い16)。そのため、内容に応じて有償新株予約権取扱いを参考にすべきかどうかを判断することが考えられる。   2 会計処理 権利確定条件付き有償新株予約権は、その付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込むという特徴を除けば、引受先が従業員等に限定される点や権利確定条件が付されている点をはじめ、ストック・オプション基準を設定した当初に主に想定していたストック・オプション取引(付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込まない取引)と類似していることを踏まえ、ストック・オプション基準第4項から第7項に準拠した会計処理を定めた上で、以下の事項を追加している(有償新株予約権取扱い29)。 上記①から③の他にも、勤務条件は付されていないが業績条件は付されている場合、業績の達成又は達成しないことが確定する日を権利確定日とする、という項目が追加されている(有償新株予約権取扱い7(3))。 A社は、X1年10月10日に、従業員20名に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与することを決議し、同年11月1日に従業員20名から金銭が払い込まれ、当該従業員に権利確定条件付き有償新株予約権を付与した。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【X1年11月1日(新株予約権の計上)】 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員からの新株予約権の払込金額3,200,000円を、純資産の部に新株予約権として計上する。 【X2年3月期】 付与日における権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を費用計上額として算定する。X2年3月期における費用計上額は、公正な評価額のうち、付与日から権利確定日までの対象勤務期間(29ヶ月)を基礎とする方法に基づき、X2年3月期に発生したと認められる額として算定する。 付与日以降失効数の見積りに変化がないため、費用として計上する額はない。 (※1) 株式報酬費用0円=(公正な評価単価100円/個×32,000個-新株予約権の払込金額3,200,000円)×(5ヶ月÷29ヶ月) 【X3年3月期】 付与日以降失効数の見積りに変化がないため、費用として計上する額はない。 (※2) 株式報酬費用0円=(公正な評価単価100円/個×32,000個-新株予約権の払込金額3,200,000円)×(17ヶ月÷29ヶ月)-X2年3月期までの費用計上額0円 【X4年3月期】 業績条件を満たす可能性が高くなったことにより、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じたため、これに伴い権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。これにより、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づき、X4年3月期(見直しを行った期)までに費用として計上すべき額(全額)を算定する。 (※3) 株式報酬費用76,800,000円={(公正な評価単価100円/個×権利確定すると見込まれる数量800,000個)-新株予約権の払込金額3,200,000円}-X3年3月期までの費用計上額0円 【X5年3月期(権利行使期間開始)】 権利行使されていないため、仕訳はない。 【X6年3月期(権利確定条件付き有償新株予約権の行使)】 権利確定条件付き有償新株予約権の行使を受け、A社は新株を発行する。 (※4) 払込金額480,000,000円=600円/個×40,000個/名×20名 (※5) 権利行使された本新株予約権の金額80,000,000円=100円/個×40,000個/名×20名   3 注記 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する注記は、ストック・オプション基準第16項及び企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」第24項から第35項に従って行う(有償新株予約権取扱い9)。   4 適用時期等(有償新株予約権取扱い10、36) 有償新株予約権取扱いの適用初年度において、原則処理を行い、これまでの会計処理と異なることとなる場合及び容認処理を適用し従来採用していた会計処理を継続する場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(有償新株予約権取扱い10(4))。したがって、会計方針の変更の注記も必要である。 Ⅳ 在外子会社等の会計処理の改正   平成29年3月29日に実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「在外子会社取扱い」という)」がASBJより公表された。 また、同日に実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「持分法取扱い」という)」が改正された。   1 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い (1) 対象範囲 改正前在外子会社取扱いでは、国内子会社が国際財務報告基準(IFRS)を適用することは想定されていなかった。 しかし、在外子会社取扱いが在外子会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して、金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社を在外子会社取扱いの対象範囲に含める(在外子会社取扱い 平成29年改正)。 同様に、ASBJが公表した「修正国際基準」を国内子会社が適用する場合に関しても、在外子会社取扱いの対象範囲に含める(在外子会社取扱い 平成29年改正)。 したがって、対象範囲のみが変更となっただけで、会計処理自体に変更はない。 なお、国内子会社を在外子会社取扱いの対象範囲に含めたことから、在外子会社取扱いの表題が、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」から「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に変更されている(在外子会社取扱い 平成29年改正)。 (2) 適用時期 在外子会社取扱いは、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、在外子会社取扱いの公表日以後、適用することができる(在外子会社取扱い 適用時期等(5))。 なお、在外子会社取扱いの適用初年度の前から国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱い(以下、参照)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(在外子会社取扱い 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。 〇「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱いとは・・・ 在外子会社の財務諸表が、国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む)には、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができる。 ただし、以下の①から④の項目については、当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社等の会計処理を修正しなければならない。なお、以下の①から④以外の項目についても、明らかに合理的でないと認められる場合には、連結決算手続上で修正を行う必要があることに留意する。 【①:のれんの償却】 在外子会社等において、のれんを償却していない場合には、連結決算手続上、その計上後20年以内の効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、当該金額を当期の費用とするよう修正する。 ただし、減損処理が行われたことにより、減損処理後の帳簿価額が規則的な償却を行った場合における金額を下回っている場合、連結決算手続上、修正は不要であるが、それ以降、減損処理後の帳簿価額に基づき規則的な償却を行い、修正する必要がある。 【②:退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理】 在外子会社等において、退職給付会計における数理計算上の差異(再測定)をその他の包括利益で認識し、その後費用処理を行わない場合には、連結決算手続上、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理する方法(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む)により、当期の損益とするよう修正する。 【③:研究開発費の支出時費用処理】 在外子会社等において、「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費に該当する支出を資産に計上している場合には、連結決算手続上、当該金額を支出時の費用とするよう修正する。 【④:投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価】 在外子会社等において、投資不動産を時価評価している場合又は固定資産を再評価している場合には、連結決算手続上、取得原価を基礎として、正規の減価償却によって算定された減価償却費(減損処理を行う必要がある場合には、当該減損損失を含む)を計上するよう修正する。   2 持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い (1) 対象範囲 改正前持分法取扱いでは、国内関連会社が国際財務報告基準を適用することは想定されていなかった。 しかし、持分法取扱いが在外関連会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、持分法取扱いでは、国内関連会社が指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合、当面の間、在外子会社取扱いに準じることができる(持分法取扱い 平成29年改正)。 同様に、「修正国際基準」を国内関連会社が適用する場合に関しても、当面の間、在外子会社取扱いに準じることができる(持分法取扱い 平成29年改正)。 したがって、対象範囲のみが変更となっただけで、会計処理自体に変更はない。 (2) 適用時期 持分法取扱いは、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、持分法取扱いの公表日以後、適用することができる(持分法取扱い 適用時期等(4)、在外子会社取扱い 適用時期等(5))。 なお、持分法取扱いの適用初年度の前から国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱い(以下、参照)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(持分法取扱い 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。 〇「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱いとは・・・ 投資会社及び持分法適用関連会社が採用する会計方針の統一にあたっては、原則的な取扱い(会計方針を統一する)によるほか、当面の間、監査・保証実務委員会実務指針第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する監査上の取扱い」に定める会計処理の統一に関する取扱い(必ずしも統一を必要としない会計処理として、資産の評価方法及び固定資産の減価償却の方法が挙げられている)に準じて行うことができる。 また、在外関連会社の財務諸表が国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む)については、当面の間、在外子会社取扱いに準じて行うことができる。   Ⅴ 仮想通貨の会計処理   平成29年12月6日に実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)(以下、「仮想通貨取扱案」という)」がASBJより公表された。 仮想通貨取扱案は、平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されたことを受け、仮想通貨の会計処理及び開示に関する当面の取扱いとして、必要最小限の項目について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的とするものである(仮想通貨取扱案1、2)。 仮想通貨取扱案では、仮想通貨交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用が契機であったこと、及び適用範囲を明確にすることから、適用範囲を資金決済法上の仮想通貨としている(仮想通貨取扱案3、25)。具体的には、以下を参照されたい。 【資金決済法における仮想通貨の範囲】 (広義の)仮想通貨 (※) 例えば、次のものは資金決済法における仮想通貨には含まれない。 ・前払式支払手段発行者が発行するプリペイドカード ・ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)におけるポイント  ただし、仮想通貨の該当性等については、その利用形態等に応じ、最終的には個別具体的に判断する。 仮想通貨取扱案では、以下の事項が定められている。   1 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理では、以下の論点がある。 (1) 期末における仮想通貨の評価に関する会計処理 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、期末において保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ)について、以下のように評価する(仮想通貨取扱案5~7)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ここで、活発な市場が存在する場合(以下、(2)参照)とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいう(仮想通貨取扱案8)。 (2) 活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有している活発な市場が存在する仮想通貨の期末評価において、市場価格として仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所で取引の対象とされている仮想通貨の取引価格を用いるときは、保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格(取引価格がない場合には、仮想通貨取引所の気配値又は仮想通貨販売所が提示する価格)を用いる。なお、期末評価に用いる市場価格には、取得又は売却に要する付随費用は含めない(仮想通貨取扱案9)。 仮想通貨交換業者において、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所が自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所である場合、当該仮想通貨交換業者は、自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格等(取引価格、仮想通貨取引所の気配値及び仮想通貨販売所が提示する価格をいう。以下同じ)が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができる(仮想通貨取扱案10)。 (3) 仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨について、活発な市場の判断の変更があった場合、以下のように取り扱う(仮想通貨取扱案11、12)。 (4) 仮想通貨の売却損益の認識時点 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識する(仮想通貨取扱案13) 。   2 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨は下のように会計処理を行う(仮想通貨取扱案14、15)。   3 開示 (1) 表示 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示する(仮想通貨取扱案16) 。 (2) 注記 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨、及び仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨について、以下の事項を注記する(仮想通貨取扱案17)。 ただし、以下の場合は注記を省略することができる。   4 適用時期 平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する(仮想通貨取扱案18、63)。 公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することもできる(仮想通貨取扱案18、63)。 (了)

#No. 258(掲載号)
#西田 友洋
2018/03/01

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第26回】「自己株式数の注記はここで間違う」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第26回】 「自己株式数の注記はここで間違う」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例26-1】 本表と注書きが整合していない。 【事例26-1】は、個別注記表に記載されている「株主資本等変動計算書に関する注記」のうち、「自己株式の種類及び株数」に関する記載です。この中に、明らかにミスであるとわかるところが1ヶ所あります。 どこだかわかりますか?   2 すぐわかるミスだが・・・ さっそく、答えを見てみましょう。本来の正しい姿はこうです。 上の正解では、正しい姿に修正したところを赤丸で囲ってあります。本表の下に注書きされている文中の株数の記載が間違っていたようです。 当事業年度に増加した自己株式の数は、本表では120株となっていますが、注書きの文章では150株となっていました。本表の方で計算チェックをやってみると、期首株式数に期中増加株式数を足したものが期末株式数に一致することがわかるので、増加株式数「120株」というのは間違いないとわかります。 したがって、注書きの「150株」が間違いであると判明するわけです。   3 直して終わりではいけない このミスが起きてしまった原因は、「データのリサイクル」です。 今期の計算書類作成作業において、前期の「自己株式の種類及び株数」の注記データをコピーして、それを再利用(リサイクル)して当期の当該注記を作成したことが、ミスにつながりました。本シリーズでおなじみの「リサイクル・ミス」です。 リサイクルした前期のデータは以下のようなものでした。 《前年度の注記内容》 注書きの部分に注目してください。この文章は【事例26-1】の注書きの文章と一言一句同じです。つまり、この前期データを使って、本表の株式数の数字のみを当期の数字に置き換えたのが、【事例26-1】だったというわけです。 本来は、その作業に加えて、本表の下の注書きの文中にある「150株」を「120株」に書き換えなければなりませんでした。それをうっかり忘れてしまったのです。 たいしたミスではありませんね。仮に、このようなミスを犯してしまっても、たいていの人たちは気づいたら直して、それで終わりです。 しかし、それ故、同じミスが繰り返し発生するのです。 では、そうならないためにはどうしたらよいでしょうか。 【事例26-1】のミスについて言うならば、ミスが起きた「場所」にも注目する必要があります。   4 同じ場所で似たようなミスが! この注記では、同じ場所で違うミスも起きています。以下の事例です。 【事例26-2】 本来記載すべき増加理由の説明書きがない。 【事例26-2】のミスが起きた場所は、【事例26-1】のミスが起きた場所と同じです。本表の下に注書きする自己株式数の変動事由の部分です。【事例26-1】ではその内容にミスがありましたが、今度は記載自体が抜けてしまっています。 会社計算規則上は、事業年度末日における自己株式数の記載だけが求められているので、変動事由の記載がないからといって、必ずしも問題ではありません。 しかしながら、会計基準(株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針)では、前期及び当期の期末の自己株式数に加えて、当期の自己株式数の増減と変動事由の概要を記載することが求められています。 その趣旨を踏まえると、【事例26-2】は「増加理由の記載漏れ」ということになります。 このミスもリサイクル・ミスです。リサイクルされたデータは以下の前期データです。 《前年度の注記内容》 前年度は自己株式数の増減が全くない年度でした。したがって、本表の下に特に注書きはありません。このデータをコピーして、数字のみを当年度の数字に置き換えたのが【事例26-2】です。 作成者は、数字を更新したところで、完成したと早合点してしまったわけです。   5 うっかりミスの発生傾向を踏まえる 【事例26-1】も【事例26-2】も、ミスが起きた場所は同じでした。どちらも注記本表の下の注書き部分です。 なぜ、ここでミスが起きたのでしょうか。 それは、この部分に注意が十分に行き届かなかったからです。 このように本表と注書きからなるものを作成する場合、普通はまず本表を作成し、その次に注書きに取りかかります。そうすると、本表の作成作業で注意力を消耗し、注意力が少し落ちた状態で注書きの作成作業に取りかかることになります。 注意力というのは、無限に蓄えられているわけではありません。スマホの充電池と同じで、限度があります。では、限度のある注意力を人間がどう使うのかというと、大事なことから順にそれを配分して使うのです。 まず、メインとなる作業に十分な注意力を配分し、残りの注意力を付随的な作業に振り向けます。今回の例でいうと、本表の作成作業は十分に注意して行い、注書きの作成作業は、注意力が落ちた状態で遂行するというわけです。 注書きの方でミスが起こりやすいのはそのためです。 うっかりミスの発生にこうした傾向があることを踏まえると、会社法計算書類の作成作業の中で付随的な部分はどこなのかを意識し、その部分でミスをしないように気を付けていくということも大事です。 〈今回のまとめ〉 本表の下に注書きがある注記事項では、注書き部分にミスがないか確認しましょう。 (了)

#No. 258(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/03/01

税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説 【第2回】「繰延税金資産の回収可能性の判断手順」

税効果会計における 「繰延税金資産の回収可能性」の 基礎解説 【第2回】 「繰延税金資産の回収可能性の判断手順」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   1 はじめに 前回は、企業の状況に応じて繰延税金資産の回収可能性(将来の税額負担を軽減する効果の有無)について検討しなければならないが、実務上その判断には将来の様々な不確定要素を考慮する必要があるため、繰延税金資産の回収可能性が論点になりやすいことを説明した。 繰延税金資産の回収可能性は、企業会計基準委員会より「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)」(以下、「回収可能性適用指針」という)が公表されているため、これを指針として判断することになる。 そこで今回は、この回収可能性適用指針をもとに、繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について説明する。   2 繰延税金資産の回収可能性の判断 繰延税金資産の回収可能性は、次の(1)から(3)のいずれかを満たしているかどうかによって、将来の税額負担を軽減する効果があるかどうかを判断する。 (1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得が発生する可能性が高いと見込まれるかどうか まずは「一時差異等加減算前課税所得」について説明しよう(【図1】参照)。 【図1】 一時差異等加減算前課税所得の算定 【図1】のように、課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除いたものが「一時差異等加減算前課税所得」である。 なぜ、課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除くかというと、計算された課税所得1,070は、X1年末に存在している一時差異450(=350+100)が認容により減算された後の金額であるため、これ(1,070)とX1年末の一時差異の解消見込額(認容見込額)450を比較してしまうと、450を二重に控除してしまうことになる。そのため、課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除くこととなる(【図2】参照)。 【図2】 課税所得から一時差異の解消額(認容額)を除く理由 【図2】では、X2年の一時差異等加減算前課税所得が1,520発生すると見込まれている。もし、将来減算一時差異の解消がなければ1,520に対して丸々課税されることになるが、X1年末に存在した賞与引当金繰入限度超過額350と未払事業税100の合計450が認容されることで、1,520ではなく1,070(=1,520-450)だけの課税で済むことになる。 そのため、450に係る税額だけ減税効果があるといえることから、X1年に存在する将来減算一時差異である賞与引当金繰入限度超過額350と未払事業税100に係る繰延税金資産は、回収可能性があると判断することになる。 (2) タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が発生する可能性が高いと見込まれるか タックス・プランニングとは、将来の法人税等の発生額を見込む(計画する)ことである。 原則として、将来減算一時差異の解消見込年度に、含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等のタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれる場合、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する(例:X3年に将来減算一時差異が400解消される見込みであり、同年に含み益が500ある土地を売却することがほぼ確実で、一時差異等加減算前課税所得が500生じる可能性が高い場合、当該将来減算一時差異400に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する)。 なお、タックス・プランニングに基づく繰延税金資産の回収可能性の判断に関しては、本連載の【第5回】以降で詳しく説明する。 (3) 将来加算一時差異が解消されると見込まれるか 原則として、将来減算一時差異の解消見込年度に、将来加算一時差異が解消されると見込まれる場合、将来加算一時差異の解消見込額と相殺される額を限度として、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断する。 これは、特定の将来事業年度において、将来減算一時差異(税額負担を軽減する効果)を上回る将来加算一時差異(税額負担を増加する効果)が解消すれば、相殺によって税額負担を軽減する効果が見込まれるためである。   3 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順 上記2(1)に従って繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の具体的な手順は、概ね次のとおりである。なお、税務上の繰越欠損金の検討やタックス・プランニング等は、簡略化のため省略して説明する。 下記の【図3】のように、将来減算一時差異や将来加算一時差異が税務上でどのように認容されていくか、つまり、どのように解消されていくかを検討することを「スケジューリング」という。スケジューリングにより将来の税額負担を軽減する効果の有無を判定して、繰延税金資産の回収可能性を判断していく。 【図3】 繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の具体的な手順 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【図3】では、将来の5年間について一時差異の解消スケジュールを見積もっているが、例えば、これが無期限にスケジュールを見積ることができればどうだろう。すべての会社が期末時点に存在する将来減算一時差異に繰延税金資産を計上することができるだろう(いつかは解消されるものであるため)。 ただし、これでは将来の5年間で課税所得が発生すると見込まれる会社も、課税所得の発生が到底見込まれない会社も、同じだけ繰延税金資産を計上できることになり、将来の税額負担の軽減効果を正しく示しているとはいえない結果になる。 では、将来の何年間にわたって一時差異の解消スケジュールを見積ればよいのだろうか。 ここで実務上の指針となるのが、会社の分類に応じた取扱いである。 回収可能性適用指針では、過去の納税状況や将来の業績予測等をもとに要件を設けて会社を分類し、分類結果に応じて繰延税金資産の回収可能性の判断指針を示している。 次回からは、どのように会社を分類し、それぞれの分類ごとに、どのように繰延税金資産の回収可能性を判断するのかを説明する。 (了)

#No. 258(掲載号)
#竹本 泰明
2018/03/01

連結会計を学ぶ 【第13回】「連結会社相互間の取引高の相殺消去」

連結会計を学ぶ 【第13回】 「連結会社相互間の取引高の相殺消去」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 連結損益計算書の作成に際しては、連結会社相互間の取引高の相殺消去及び未実現損益の消去等の処理を行って作成する(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)34項)。 今回は、連結会社相互間の取引高の相殺消去について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取引高の相殺消去 親会社と子会社で取引が行われる場合(連結会社相互間の取引高)、それは企業集団としては内部取引であることから、連結損益計算書の作成に際して、相殺消去する必要がある(連結会計基準35項)。 なお、会社相互間取引が連結会社以外の企業を通じて行われている場合であっても、その取引が実質的に連結会社間の取引であることが明確であるときは、この取引を連結会社間の取引とみなして処理するので、注意が必要である(連結会計基準(注12))。 連結会計基準は、連結会社相互間における商品の売買その他の取引に係る項目として規定しているが、例えば、次のような取引が考えられる。 作成のイメージは、おおむね次の図表のとおりである。 【図表:連結損益計算書の作成プロセスのイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   Ⅲ 連結精算表の作成 ① 親会社と子会社の個別損益計算書における商品取引 子会社(100%の持分比率)は親会社に商品を売上げ(20,000)、親会社は当該仕入れ分を企業集団の外部にすでに販売している。このため、期末に、棚卸資産として残っているものはない。 連結財務諸表の作成に際して、親会社の個別損益計算書と子会社の個別損益計算書を単純に合算すると、「売上高20,000」と「売上原価20,000」が二重計上となってしまうので、相殺消去する。 ② 親会社と子会社の個別損益計算書における利息の支払取引 子会社は、親会社から資金を借り入れ、利息を支払っている(300)。 親会社は、子会社に対する貸付金により、利息を受け取っている(300)。 連結財務諸表の作成に際して、親会社の個別損益計算書と子会社の個別損益計算書を単純に合算すると、「受取利息300」と「支払利息300」が二重計上となってしまうので、相殺消去する。 連結損益計算書に関係する連結修正仕訳を示す趣旨から、貸付金と借入金の相殺消去については省略することとする(貸倒引当金の調整も同様に省略)。 ③ 連結精算表 連結精算表は次のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 258(掲載号)
#阿部 光成
2018/03/01

これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第13回】「登記管理実践にむけた総まとめ」-登記管理体制の完成と法改正等への対応-

これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第13回】 (最終回) 「登記管理実践にむけた総まとめ」 -登記管理体制の完成と法改正等への対応-   司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹   はじめに 本連載最終回となる本稿では、これまでの各回で解説してきた、任期管理、定款・議事録管理、株主管理(以下、【第1回】で定義したとおり「登記管理」という)について、その実践方法の総まとめを以下の3ステージに分けて振り返る。 最終的にステージ③に達すれば、登記管理としての体制づくりが完成していることになる。 【登記管理の3ステージ+α】   ステージ①:会社が登記管理をすることを“知らない”から“知っている”へ 登記管理は、会社主導で行うものである。この点を知っているだけで、以下のような「気づいたときには手遅れになっている事態」を防ぐことにつながる。 登記管理を行わずに不利益を被るのは、会社やその代表者である。 これら不利益の詳細については、全体像は【第2回】、任期管理は【第7回】、定款・議事録管理は【第8回】、株主管理は【第10回】でそれぞれ解説しているので、あらためて読み返していただきたい。 会社主導で登記管理を行うことを知ったうえで、次に、登記管理に着手するステージ②に進もう。   ステージ②:登記管理にまず着手してみる 登記管理ができているかを総合的に確認する方法として、役員変更の登記手続に必要な情報を漏れなくスムーズに揃えられるかが1つの指標となる。 「役員変更の登記手続に必要な情報」とは、これまでの各回でみてきた、定款、議事録、株主名簿である。 《役員変更の登記手続の必要な資料を収集する手順》 以下の手順に沿って、チェックポイントを確認してみよう。 各実践方法については、任期管理は【第6回】、定款・議事録管理は【第9回】、株主管理は【第12回】の解説を参照してもらいたい。 ここまでを精査し、情報に漏れがなければ、登記管理としていったん完成された状態となる。しかし、その状態は一時的なものに過ぎないため、中長期にわたって管理するための循環を作る必要がある。 次のステージ③では、中長期にわたって登記管理を行うための観点となる。   ステージ③:登記管理の循環を作る 役員の任期が複数年であり、毎年役員の任期満了に伴う役員変更の登記手続を行う必要がない会社であっても、“毎年役員変更の登記手続があれば”という視点で、毎年定期的な登記管理を行う機会を設けることを推奨する。そのメリットは以下のとおりである。 【“毎年役員変更の登記手続がある”と仮定して、定期的な登記管理を行うメリット】 《実施時期》 “毎年役員変更の登記手続がある”と仮定して、定期的な登記管理を実施する時期としては、毎年決算期に行うことを推奨する。役員の任期到来の時期は、決算期から2、3ヶ月後が多く、決算期に登記管理を実施することで役員変更の登記手続の準備をしやすくなるからである。   +α:法改正等への対応 冒頭に述べたとおり、ステージ③への到達は、登記管理としての体制づくりが実質的に完成していることを意味する。 ただし、近年、商業法人登記に関連する制度等が頻繁に更新されており、中長期に登記管理を行ううえで、これら法改正等への対応が欠かせない。 例えば、平成26年度以降法務省により毎年実施されている「みなし解散」では、12年間にわたり登記手続をせずにいると、たとえ事業活動をしていたとしても、みなし解散の登記が入り、その会社は解散の状態となる。そのため、登記がそのままでは事業活動の継続が困難となる。 また、平成28年10月から登記手続の添付書面となった「株主リスト」が導入されてからは、株主の住所、氏名の情報が必要となり、株主名簿の正確性が、より問われるようになった。 もともと登記管理をしっかりと行っていれば、これらの法改正等への対応はしやすい。 例えば、任期管理を行っていれば、みなし解散になることはまず避けられるだろう。また、株主名簿を整備していれば、株主リストの作成は容易である。 現状の法改正等の頻度や内容からして、今後、登記管理の重要性がよりいっそう問われるのではないだろうか。 なお、登記管理に係る最新の法改正等の情報を入手する際は、下記を参照するとよい。 (連載了)

#No. 258(掲載号)
#本橋 寛樹
2018/03/01

AIで士業は変わるか? 【第4回】「AIで不動産鑑定士の業界はどうなるか」

AIで 士業は変わるか? 【第4回】 「AIで不動産鑑定士の業界はどうなるか」   株式会社東京アプレイザル 代表取締役 不動産鑑定士 芳賀 則人   AIの進化による影響の前に、まず、「不動産鑑定士は何をやっているか」を知っていただく必要があります。 不動産鑑定士にとって最もと言っていいほど重要な業務として、地価公示法に基づく地価公示価格(毎年1月1日付けの評価額が公示される)の鑑定評価があります。 この業務に全ての不動産鑑定士が携わっているわけではありませんが、全国で約3,200人の鑑定士が行っている業務です(筆者も昭和58年~平成25年度まで公示価格の評価員でした)。 この公示価格が相続税評価の元になる路線価(公示価格の80%程度に設定)と固定資産税評価(公示価格の70%に設定)の大元を担っていることは周知の通りです。 公示価格は国土交通省より毎年3月20日頃に発表されますので、国がエイヤッと決めたかのように見えますが、実は公示地点を毎年毎年、不動産鑑定士が周辺の取引事例を収集・選択・分析して、対象不動産である公示地の鑑定評価を行っているのです。 公示地は更地(土地上に何も建っていない)であり、整形な土地を条件とします。ですから、鑑定評価の類型としては基本的な案件であり、難易度は高くありません。 しかし、1公示地点の評価において取引事例を5か所程度集めそれとの要因比較により公示価格を算定するのですが、1年前との時点修正率をどのように判断するのかが、やや難しい判断を必要とします。この取引事例が昨年度のものと比べて明らかに高ければ変動率はプラスになりますし、低ければマイナスになります。 この判断は人間でやっているのが現状です。 また、先ほど「要因の比較をする」と述べましたが、次の4つの要因があります。 これらが鑑定評価において最も重要で基本です。 この4つの項目のうち筆者がいつも悩むのは、③の環境条件です。他の3つは全て定量化(数値化)できますが、環境条件は人によって価値観が違うのと同様に、その地域の雰囲気とか居住性を数値化することを求められますので、この判断は極めて難しいと思っています。 つまり、人間の感性(この感性が人によって違うので困ります)に頼っているのが、現状の鑑定評価なのです。 また、商業地域はもっと複雑です。駅からの距離が50m、いや10m違うだけで、また、道路1本違うだけで人の流れが大きく異なることがあります。それだけで価格が倍になったり半分になったりします。 ただし、商業地域はそのビルの家賃が分かれば収益性が判断できます。収益価格が評価を決める大きなポイントであることは論を待たないでしょう。しかし、利回りも未だに不動産鑑定士の判断によるところが大きいのです。 ここで、今までの論についてAI化が可能かどうか考えてみます。 まずは取引事例の分析です。ただし、今のところ全ての売買取引を事例化する仕組みが確立されていません。国土交通省により取引当事者に「その値段はいくらだったか」をアンケ―ト方式によりお願いベースで聞くに止まっています。 このため、公示地1ポイントごとに比較可能なものはせいぜい10件ぐらいの事例しかなく、AIを使うほどのデータがそろっていないのが実情です。AIを使うには、すべての取引当事者に強制的に価格を提示させて、データベース化することが必要です。個人情報保護法との兼ね合いで、ここがネックになると思います。 逆にいうと、取引事例、例えば市区町村ごとに何千件単位の数がそろい、環境条件を町や丁ごとに数値化させ、さらに個別的な要因の格差付けを決めておけば、大いに可能性が出てきます。これは相続税の路線価評価も固定資産税評価も同様です。あくまでも筆者の感覚ですが、5年後には公示地のAI化が進んでいる気がします。 また、先に述べた収益価格を決める最も重要な還元利回りも、多くのデータベース(物件によってかなり異なるのでデータ化が困難かも)が必要になりますので、容易ではありません。 しかし、一般の鑑定評価において標準的な土地の鑑定は、それほど頻度が高くありません。特に郊外地主層が所有する土地は(元々の農地が切り売りされたり、道路や公園に取られたり、ハウスメーカーの言うままに建てたり等)、相続において相続人の間で分割する上でも難しい判断が求められる、かなり個性豊かな土地が多いのが実態です。 さらに、会社(中小企業や同族法人)所有地の場合、権利関係が複雑なケースが多いのが特徴です。親会社・子会社・社長親族共有などでぐちゃぐちゃな状態です。 つまり、公示地のような典型的な更地や標準的な土地は少ないのです。 いわば、個性の塊のような土地を持っている人々にとって、単なる土地評価をすれば良いわけではなく、人との関係性の中において土地評価の位置づけがあるということです。 分かりやすく言うと、コンサルタント的な要素が土地評価に組み込まれないと、そのお客様の役には立たないということです。 少し大げさですが、「人の心の中に土地評価がある」のかもしれません。 これは不動産鑑定の世界だけではないと思われます。建築の世界でも不動産の売買仲介の世界でも、生命保険の世界でも、その人の生活事情や資産背景などが大きく関わってきます。ただし、機械的な計算や判断で済む分野等、AIに任せることは今後どんどん進歩するでしょう。 (了)

#No. 258(掲載号)
#芳賀 則人
2018/03/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第6話】「発信主義と到達主義」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第6話】 「発信主義と到達主義」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「中尾統括官、この申告書は・・・期限後申告になるのですか?」 浅田調査官は、席の後ろを通りかかった中尾統括官に、確定申告書の入った封筒を見せた。 「この納税者は『間違いなく3月13日に申告書を郵便局から送った!』と言っているのですが・・・税務署には16日に着いているのです・・・」 中尾統括官は封筒を確認すると、浅田調査官の机にあった税務六法を開く。 「・・・提出期限については、国税通則法22条に書いてあるだろう・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、条文を読む。 「これが、いわゆる『発信主義』といわれているものだ。」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。 「しかし、申告等の効力の発生時期を判定する一般的基準については・・・税法では特別に規定がなく、民法97条が『到達主義』を採っているから・・・原則として、税法でも、到達主義になるのだけれど・・・」 中尾統括官は、今度はポケット六法を開いて確認する。 「もっとも、民法526条1項では、発信主義を採っている・・・」 中尾統括官は、再びポケット六法をめくる。 「・・・そうすると、国税通則法22条は、なぜ、発信主義を採っているのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「これは、平成18年度税制改正で・・・納税者と税務官庁との地理的間隔の差違による不公平を是正し、納税者の利便性の向上と円滑な申請ができるようにと・・・国税通則法22条が改正されたことによる。その意味で・・・同法は到達主義の例外といえるね。」 中尾統括官の説明に、浅田調査官は頷く。 「国が推進している電子申告(e‐Tax)などが納税者に普及してくると、瞬時に確定申告書などが送達されますから・・・今後このような規定は、重要ではなくなるのかもしれませんね。」 「・・・確かにそうだな。」 今度は、中尾統括官が頷く。 「ところで・・・この規定にある「郵便物又は信書便物」ですが・・・」 浅田調査官は、国税通則法22条を見ながら、尋ねる。 「・・・税務上の申告書や届出書は「信書」に該当するから、税務署にこれらを送付するときには、「郵便物」(第一種郵便物)又は「信書」として送付しなければならないとされていますよね。今回のケースは“ゆうパック”で申告書等が送付されたのですが・・・これについては・・・到達主義が適用されるのですか?」 「これはたしか・・・平成19年の郵政公社の民営化に伴う郵政法の改正で、郵便物は第一種郵便物から第四種郵便物のみとされて・・・これまでの小包郵便物は、郵便法に定める郵便物ではなくなり、荷物扱いとなったんだ。」 中尾統括官は、記憶を辿りながら説明する。 「ということは・・・ゆうパックに日付の印が押されているのですが・・・これは、提出日の判定には関係ない・・・ということですね。」 浅田調査官は、日付の印が押されたゆうパックを見る。 「それは・・・今言ったように、荷物扱いになるのだから、到達主義によって判断されることになる。」 中尾統括官はキッパリと言う。 「そうですね・・・ということは、この確定申告書は、3月16日に税務署に到達したのだから・・・期限後申告、ということになるのですね。」 浅田調査官は中尾統括官を見る。 「仕方ないな・・・もともと申告書等は、「郵便物」又は「信書」で送付しなければならないのに・・・ゆうパックなどで申告書等を送るからだろう・・・」 中尾統括官の声には、少し怒りが含まれている。 「・・・国税通則法22条では、発信主義が適用されている書類は、次の2種類に分類されている。」 そう言うと、中尾統括官は罫紙にペンを走らせる。 「実際に、ゆうパックで申告書等を提出して到達主義が採られ、期限後申告となったため、税法上の非課税の適用が受けられなくなり過大納付となったことに対して、税理士が損害賠償請求を受けたという事件もあったから、我々も気をつけなければ・・・」 中尾統括官の言葉に、浅田調査官は大きく頷いた。 (つづく)

#No. 258(掲載号)
#八ッ尾 順一
2018/03/01

本誌連載記事から事例を大幅に追加! 『金融・投資商品の税務Q&A』発刊のお知らせ

本誌連載記事から事例を大幅に追加! 『金融・投資商品の税務Q&A』発刊のお知らせ

#Profession Journal 編集部
2018/02/27

《速報解説》 民法(相続関係)等の改正に関する要綱が正式決定、今国会での改正法案審議へ~今後の遺産分割協議に影響のある改正項目も~

《速報解説》 民法(相続関係)等の改正に関する要綱が正式決定、 今国会での改正法案審議へ ~今後の遺産分割協議に影響のある改正項目も~   Profession Journal編集部   法務省の「法制審議会-民法(相続関係)部会」で審議が続けられていた「民法(相続関係)等の改正に関する要綱」が、2月16日の法制審議会総会において正式に決定された。 (※) 民法(相続法制)部会のページでは要綱案を確認することができる。 今回の改正へ向けた動きは、平成25年9月の最高裁判決(非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条規定を違憲と判断)等が契機とされ、時代に即した相続法制に向けた見直しが検討されてきたもの。相続法制検討ワーキングチームから法制審議会へと審議が引き継がれ、平成28年の中間試案及び昨年の追加試案と二度のパブリックコメントを経て決定に至った。 要綱で示された改正項目としては、まず、遺産分割の結果、被相続人の配偶者が住み慣れた居住建物から急に退去させられたり、居住建物を相続した結果老後の生活資金に問題が生じることのないよう、居住建物の所有権を相続により取得した者に対する「被相続人の配偶者の居住権」が創設される。 この居住権には存続期間が終身である「配偶者居住権」(居住建物の全部について無償で使用及び収益する権利)と、居住建物の帰属が決定した日又は相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの間に認められる「配偶者短期居住権」(居住建物について無償で使用する権利)とがあり、終身の「配偶者居住権」には被相続人と配偶者との間にこの権利を取得させる旨の死因贈与契約がある場合等、短期居住権に比べてハードルの高い要件が設けられる。 なお、配偶者短期居住権によって受けた利益については配偶者の具体的相続分からその価額を控除することを要しないとされているのに対し、配偶者居住権を取得した場合にはその財産的価値に相当する価額を相続したものとして扱うとしており、この評価方法については財産評価基本通達の改正動向にも注目しておきたい。 さらに配偶者保護の方策として、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、被相続人から配偶者に対しその居住建物について遺贈又は贈与をした場合に、持戻し免除の意思表示があったものと推定され遺産分割の対象から除外される規律が追加される。 一方で、かねてより論点のあった、無償で被相続人の療養看護等を続けていた長男の配偶者など、被相続人の財産の維持又は増加に一定の貢献をした相続人以外の親族が、相続人に対しその寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求できる規律が盛り込まれる。 また平成28年12月の最高裁決定により預貯金債権が遺産分割の対象となったため、遺産分割前に遺産に属する預貯金の払戻しが原則禁止されたものの、相続債務の支払いや相続人の当面の生活費などの事情を踏まえ、遺産に属する預貯金債権の仮払い制度が創設される。仮払い制度には家庭裁判所の判断を要するものと判断を経ずに払戻しが認められるものの2つがあり、後者については払戻し額に上限がある。 上記の他には、自筆証書遺言について保管制度の創設や財産目録の自著を要しない改正が行われる。遺産分割協議における安全性を考慮すると実務家としては従前どおり公正証書遺言による遺言書作成を勧めることになるが、自筆証書遺言による遺言書作成が約7割という日本財団による遺言書に関する調査結果(2016.12)にもあるとおり、自筆にこだわる遺言作成者の要望にも応えることができるようになるともいえよう。 今後は2月20日の川上法務大臣記者会見にもあるように、現在会期中の第196回通常国会へ民法等の改正法案が提出され成立に向け審議されることになるが、改正法の施行時期が来年(2019年)となった場合には、今後の相続対策としてすでに検討を進めている方策に影響のある改正項目も含まれることから、改正内容と実務への影響については早めにおさえクライアントへ周知しておきたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 257(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/02/22

《速報解説》 日本取引所自主規制法人より「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(案)が公表される~不祥事対応プリンシプルとの両輪で実効性の高い取組みを推進~

《速報解説》 日本取引所自主規制法人より 「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(案)が公表される ~不祥事対応プリンシプルとの両輪で実効性の高い取組みを推進~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2018年2月21日、日本取引所自主規制法人は、「「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(案)の策定について」を公表し、意見募集を行っている。 これは、近年、業種を超え、また、規模の大小にかかわらず、上場会社において多くの不祥事が表面化し報道されていることから、不祥事の発生そのものを予防する取組みについてプリンシプルを策定するものである。 日本取引所自主規制法人は、2016年2月に「不祥事対応のプリンシプル」を策定し、不祥事発生後の事後対応に重点を置いた指針を示していたが、今回は、これに加えて、事前対応としての「不祥事予防のプリンシプル」を策定するものである。 意見募集期間は2018年3月14日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 本プリンシプルにおける各原則は、各上場会社において自社の実態に即して創意工夫を凝らし、より効果的な取組みを進めていくためのプリンシプル・ベースの指針となっている。 仮に本プリンシプルの充足度が低い場合であっても、上場規則等の根拠なしに、日本取引所自主規制法人が上場会社に対する不利益処分等を行うものではないとのことである。 「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)~企業価値の毀損を防ぐために~」として、次の6つの原則とその解説が記載されている。 各原則の内容と「不祥事につながった問題事例」は以下の通りである。 (不祥事につながった問題事例) ▷旧来の慣行を漫然と継続して違反行為を放置 ▷労働基準やハラスメントの認識に外部とのズレ ▷内部告発が適切に報告されず内部通報制度の実効性が欠如   (不祥事につながった経営陣に係る問題事例) ▷事業の実力とかけ離れた短期的目線での利益目標が設定され、会計不正が発生 ▷経営陣や現場マネジメントによって製造現場の実態にそぐわない納期が一方的に設定された結果、現場がこれに縛られ、品質コンプライアンス違反を誘発 (不祥事につながった監査・監督機関に係る問題事例) ▷品質保証部門の業務を実務上支援するために必要十分なリソースが確保されず ▷元財務責任者(CFO)が監査担当部門(監査委員)となり、自身が関与した会計期間を監査 ▷事業ユニットにおける製造部門と品質保証部門の責任者が同一となり、品質保証機能の実効性を毀損 ▷指名委員会等設置会社に移行するも、選解任プロセスにおいてトップの適格性を的確に評価・対処できないなど、取締役会、指名委員会、監査委員会等の牽制機能が形骸化   (不祥事につながった問題事例) ▷経営陣が独断的に利益目標を設定し、達成を繰り返し求めた結果、中間管理層や現場のモラルの低下を招き、全社的に職責・コンプライアンス意識の希薄化を招来 ▷経営陣から実態を無視した生産目標や納期の必達を迫られても現場は声を上げられず、次第に声を上げても仕方がないという認識が蔓延 ▷伝統的な「現場の自立性」を過度に尊重した結果、現場と経営陣の間にコミュニケーションの壁を生じさせ、問題意識や課題の共有が図れず   (不祥事につながった問題事例) ▷社内でコンプライアンス違反に係る指摘がなされても、これを是正する対処や業務改善を行わず ▷過去の不祥事を踏まえ再発防止策を講じたものの、機械的な対応に終始し自律的な取組みとして定着しなかったことから、不祥事予防につながらず   (不祥事につながった問題事例) ▷海外子会社との情報共有基準・体制が不明確で、問題が本社に報告されず ▷許容する独立性の程度に見合った管理体制が未整備 ▷買収先のリスクを事前に認識していたにも関わらず、それに対処する管理体制を買収後に構築せず   (不祥事につながった問題事例) ▷サプライチェーンのマネジメントを怠り、徹底的な原因解明もしないことでステークホルダーの不信感を増大 ▷発注者、元請、下請、孫請という重層構造において、極めて重要な工程であったにも関わらず、委託先の業務実態を把握しようとする意識が不十分 ▷外部委託先担当者に対するセキュリティ権限が適切に管理されず情報漏えいを招く ▷海外の製造委託先工場における過酷な労働環境について外部機関より指摘を受け、ブランド価値を毀損   Ⅲ 適用時期等 2018年3月下旬を目途に正式決定する予定とのことである。 (了)

#No. 257(掲載号)
#阿部 光成
2018/02/22
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