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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例36(消費税)】 「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する事業年度においては、その事業を開始した日の属する課税期間の末日までに「課税事業者選択届出書」を提出すれば、課税事業者を選択できたにもかかわらず、これを失念したため、設備投資に係る消費税の還付が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例36(消費税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆課税事業者の選択(消費税法9条、46条) 免税事業者が設備投資に係る消費税の還付を受ける場合には、その還付を受けようとする課税期間の初日の前日までに「課税事業者選択届出書」を提出しなければならない。ただし、提出した日の属する課税期間が「事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」である場合には、その事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出すれば、課税事業者を選択することができる。 なお、本件事故の依頼者は、資本金1,000万円で法人を設立しており、新設法人の納税義務の免除の特例(資本金額が1,000万円以上である法人については、当該新設法人の基準期間がない事業年度については、納税義務は免除されない)により、設立2期目まで課税事業者となっているが、この基準期間がない事業年度においても、課税取引を行っていなければ、当該事業年度は「事業を開始した日」には該当しない。   ◆法人における課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間の範囲(消費税法基本通達1-4-7) その事業者が法人である場合の事業を開始した日の属する課税期間等の範囲に規定する「国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」とは、原則として、当該法人の設立の日の属する課税期間をいうのであるが、例えば、非課税資産の譲渡等に該当する社会福祉事業のみを行っていた法人又は国外取引のみを行っていた法人が新たに国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した課税期間もこれに含まれる。 なお、設立の日の属する課税期間においては設立登記を行ったのみで事業活動を行っていない法人が、その翌課税期間等において実質的に事業活動を開始した場合には、当該課税期間等もこれに含むものとして取り扱う。       (了)

#No. 162(掲載号)
#齋藤 和助
2016/03/24

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第11回】「創設規定と確認規定⑤」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第11回】 「創設規定と確認規定⑤」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、広島高裁昭和43年3月27日判決の解説を行った。本稿では、最高裁昭和54年9月20日判決、最高裁平成16年7月20日判決の解説を行うこととする。 【第7回】で解説したように、この頃から同族会社等の行為計算の否認が確認規定ではなく、創設規定であるという立場が通説になっており、本稿で紹介する事件でも、その影響が見受けられる。   (6) 最高裁昭和54年9月20日判決(TAINSコード:Z106-4467) 本事件では、宇野歌子の役員報酬、加藤修子の役員報酬、交際費、売上計上もれについてそれぞれ否認されているが、同族会社等の行為計算の否認の対象となったものは、宇野歌子の役員報酬のみである。しかしながら、原処分庁が同族会社等の行為計算の否認を適用したものの、第1審(東京地裁昭和51年7月20日判決・TAINSコード:Z089-3832)では、仮装の役員に対する報酬であるということで損金性を否定しており、「同族会社の行為計算の規定によるまでもない」としている。 これに対し、傍論ではあるが、同族会社等の行為計算の否認について、 と判示しており、創設規定であるとしている点が特徴的である。 なお、控訴審(東京高裁昭和53年11月30日判決・TAINSコード:Z103-4287)は第1審の内容を踏襲しており、上告審では上告適法の理由にならないものとして棄却していることから、本稿では詳細な解説は省略する。 (7) 最高裁平成16年7月20日判決(TAINSコード:Z254-9700) 本事件は、平和事件と呼ばれているものであり、別の連載(「貸倒損失における税務上の取扱い」【第11回】、【第12回】)でそれぞれ解説した内容である。そのため判決文の内容はそちらを参照されたいが、矢内教授が指摘されているのは、東京地裁平成9年4月25日判決(TAINSコード:Z223-7906)の被告である課税庁が、 であると主張している点である。 これを受けて、東京地裁でも、 と判示している。そして、この判断は、最高裁まで維持されており、具体的には、以下のように判示されている。 法人税法ではなく、所得税法の世界において、無利息貸付けに対する利息を認定した平和事件に対しては批判が多く、実務においてもほとんど参考にされていない。しかしながら、同族会社等の行為計算の否認の制度趣旨そのものを被告である課税庁ですら創設規定であるとしたという点は非常に重要なものであり、確認規定であるとする考え方を採用することは困難であると言わざるを得ない。 第7回から第11回までは、同族会社等の行為計算の否認が創設規定であるのか、それとも確認規定であるのかについて分析を行ったが、確認規定であるという裁判例は、そもそも事実認定で解決すべき問題を同族会社等の行為計算の否認の問題としていたという特徴が見受けられる。そのため、非同族会社に対して、事実認定で解決できない事件に対して、同族会社等の行為計算の否認を適用したものが多数存在しているのであれば、現在でも参考にできる事件もあったのかもしれないが、あいにくそのような事件を見つけることができなかったため、仮に存在していたとしても少数の事件であると言えよう。 これに対し、最近の裁判例では、事実認定で解決すべき問題なのか、同族会社等の行為計算の否認で解決すべき問題なのかが明確に整理されていることから、裁判例や学説の分析をする際には、その内容が古いものであればあるほど、その点に留意する必要がある。 次回以降では、次の論点である行為計算の主体について、裁判例の傾向を分析する予定である。 (了)

#No. 162(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/03/24

特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第4回】「〈事例2〉欠損等法人が既存事業を廃止して新しい事業を開始するケース(第2号事由)」

特定株主等によって支配された欠損等法人の 欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い ~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第4回】 「〈事例2〉欠損等法人が既存事業を廃止して 新しい事業を開始するケース(第2号事由)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   〈事例2〉 欠損等法人が既存事業を廃止して新しい事業を開始するケース(第2号事由) 《検討》 本ケースのように、買収した会社がうまくいかない場合に、買収時の事業を廃止し、改めて新しい事業を開始しようとするケースがある。 しかし、第2号事由に該当する場合、適用事業年度以後に、適用事業年度前の事業年度に生じた繰越欠損金の使用制限が生じることとなる。また、同様に、欠損等法人の特定資産の譲渡等損失額の損金算入制限が生じることとなる。   [検討1] A社は欠損等法人に該当するか? 本ケースの場合、A社は、平成24年10月1日(特定支配日)に、P社による特定支配関係を有することになり、特定支配事業年度前の事業年度において生じた繰越欠損金を有するため、欠損等法人に該当する。   [検討2] 特定事由に該当するか? 本ケースでは、特定支配日以後5年を経過した日の前日(平成29年9月30日)までに、第2号事由「欠損等法人が、特定支配日の直前において営む事業(旧事業)のすべてを特定支配日以後に廃止し、又は廃止することが見込まれている場合において、旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行うこと」に該当するかを検討することとなる。 この場合、A社は、平成27年3月31日で買収前から営む飲食店事業のすべてを廃止しているため、新たに不動産賃貸業を開始するに際して行うP社からの借入れ又は出資等について「旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行うこと」に該当するかが問題となる。 第2号事由における事業規模の比較に関する取扱いは次のとおりである。 ① 事業規模の判定方法 事業規模とは、売上金額、収入金額その他の事業の種類に応じたものであるが、具体的には、旧事業の種類に応じた次に定める金額をいう(法法57の2①二、法令113の2⑪)。 なお、該当する事業が2以上ある場合には、それぞれの事業の区分に応じ、それぞれに定める金額の合計額となる。 なお、この場合、月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とする(法令113の2⑫)。 (※1) 事業規模算定期間 第2号事由及び第5号事由で使用する「旧事業に係る事業規模」を算定する場合にあっては、欠損等法人の支配日直前期間(欠損等法人の特定支配日の1年前の日から特定支配日までの期間)又は支配日直前事業年度(欠損等法人の特定支配日の属する事業年度の直前の事業年度)をいう。 また、第5号事由で使用する「非従事事業に係る事業規模」を算定する場合にあっては支配日以後期間(欠損等法人の特定支配日以後の期間を1年ごとに区分した期間)又は支配日以後事業年度(欠損等法人の特定支配日の属する事業年度以後の事業年度)をいう。 したがって、第5号事由で使用する事業規模算定期間については、「旧事業の事業規模」は、支配日直前期間又は支配日直前事業年度であり、「非従事事業の事業規模」は、支配日以後期間又は支配日以後事業年度となる。 (※2) 支配日直前事業年度又は支配日以後事業年度が1年に満たない場合には、当該合計額を支配日直前事業年度又は支配日以後事業年度の月数で除し、これに12を乗じて計算した金額とする。 また、資金借入れ又は出資等により行われることが見込まれる事業(新事業)の内容が明らかである場合には、旧事業と新事業の事業の種類ごとに次に定める「新事業による事業規模算定期間(※3)における新事業計数」が「旧事業による事業規模算定期間(※3)における旧事業計数」のおおむね5倍を超えるものとなるかどうかを判定する方法により、欠損等法人が旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行ったかどうかを判定する(法令113の2⑬、法規26の4②③)。 (※3) 事業規模算定期間は、旧事業にあっては、上記(※1)に規定する事業規模算定期間をいい、新事業にあっては資金の借入れ又は出資等の日以後の期間を1年ごとに区分した期間又は同日の属する事業年度以後の事業年度をいう。 この取扱いは、資金の借入れ又は出資等を行った日の属する事業年度の確定申告書、修正申告書又は更正請求書に旧事業及び新事業に係る事業規模等を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する(法令113の2⑭、法規26の4④)。 (※4) 「原価所要額」とは、旧事業による事業規模算定期間における棚卸資産に係る譲渡原価の額と棚卸資産の事業規模算定期間終了の時における残高から事業規模算定期間開始の時における残高を控除した金額との合計額をいう。 (※5) 「棚卸資産資金額」とは、資金の借入れ又は出資等による金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(資金の借入れ又は出資等が合併、分割又は現物出資(以下「合併等」)によるものである場合にあっては、当該合併等により移転を受けた棚卸資産の価額と金銭の額及び金銭以外の預金、貯金、貸付金、売掛金その他の債権の価額(これらに対応する貸倒引当金勘定の金額がある場合には、これを控除した金額。(以下「金銭等価額」)との合計額)をいう。 (※6) 「譲渡利益額」とは、旧事業による事業規模算定期間における譲渡収益額から、その売上原価その他の原価の額を控除した金額をいう。 (※7)  「貸付資産資金額」とは、資金の借入れ又は出資等による金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(資金の借入れ又は出資等が合併等によるものである場合にあっては、当該合併等により移転を受けた貸付けの用に供されることが見込まれる資産の価額と金銭等価額との合計額)をいう。 (※8)  「役務提供資金額」とは、資金の借入れ又は出資等による金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(資金の借入れ又は出資等が合併等によるものである場合にあっては、当該合併等により移転を受けた当該役務の提供の用に供することが見込まれる資産の価額と金銭等価額との合計額)をいう。 (※9) 「貸付資産額」とは、旧事業による事業規模算定期間終了の時における貸付けの用に供していた資産の価額をいう。 (※10) 「役務提供所要額」とは、旧事業による事業規模算定期間における役務の提供の用に供していた資金額をいう。 ② 資金の借入れ又は出資等の範囲 資金の借入れ又は出資等とは、資金の借入れ又は出資による金銭その他の資産の受入れ(合併又は分割による資産の受入れを含む)をいい、次に掲げるものは含まれないものとする(法法57の2①、法令113の2⑮)。 したがって、欠損等法人が、旧事業を廃止し、新事業を行う場合で、旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行った場合でも、財務体質の改善のためにその調達した資金のおおむね全部を欠損等法人の債務の弁済に充てた場合は、第2号事由には該当しない。 本ケースでは、旧事業の区分ごとに次に定める事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行う場合に、第2号事由に該当する。この場合、事業規模算定期間は、支配日直前期間(平成23年10月2日から平成24年10月1日)又は支配日直前事業年度(平成23年4月1日~平成24年3月31日事業年度)となる。 一方、本ケースで、資金借入れ又は出資等により行われることが見込まれる不動産賃貸業(新事業)の内容が明らかである場合、資金の借入れ又は出資等を行った日の属する事業年度の確定申告書に必要書類を添付すれば、次に定める「新事業計数」が「旧事業計数」のおおむね5倍を超えるものとなるかを比較することによって判定することができる。この場合、新事業の事業規模算定期間は、新事業にあっては資金の借入れ又は出資等の日以後の期間を1年ごとに区分した期間又は同日の属する事業年度以後の事業年度となる。 ただし、欠損等法人A社が、P社からの資金の借入れ又は出資等により調達する資金のおおむね全部を自社の債務の弁済に充てる場合は、第2号事由には該当しない。   [検討3] 使えなくなる繰越欠損金と繰越欠損金が使えなくなる事業年度は? 本ケースでは、欠損等法人A社において、第2号事由に該当する場合、平成27年4月1日~平成28年3月31日事業年度(適用事業年度)から、平成26年4月1日~平成27年3月31日事業年度以前の事業年度に生じた繰越欠損金が使用できなくなる。 また、平成27年4月1日~平成29年9月30日までの適用期間(適用事業年度開始の日から同日以後3年を経過する日は、平成30年3月31日となる)において生ずる特定資産の譲渡等損失額は損金不算入となる。 以上より、本ケースでは、法人税法第57条の2及び60条の3の適用により、第2号事由に該当する場合、欠損等法人A社の繰越欠損金は切り捨てられ、特定資産の譲渡等損失額が損金不算入となる。 〈事例2〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (了)

#No. 162(掲載号)
#足立 好幸
2016/03/24

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第24回】「金銭又は有価証券の受取書⑤(権利金等の受領がある建物賃貸借契約書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第24回】 「金銭又は有価証券の受取書⑤(権利金等の受領がある建物賃貸借契約書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   不動産賃貸業を営んでいます。建物賃貸借契約にあたり権利金等を受領した旨の記載がある契約書の場合には、金銭の受取書(第17号文書)として課税文書に該当する場合があるとのことですが、事例の場合はどうなりますか。   事例の建物賃貸借契約書には建物賃貸借に関する事項の他に、権利金、敷金の受領文言の記載があることから、賃借人が所持する契約書が第17号文書(金銭の受取書)に該当する。 なお、受領した金額のうち権利金は第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当し、敷金は後日返還されるものであるため、第17号の2文書(売上代金以外の金銭の受取書)に該当することとなる。この場合、売上代金に係る部分と売上代金以外に係る部分に区分できることから、通則3のハの規定により、権利金の記載金額100万円の第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当する。   [検討] 建物賃貸借契約のパターンごとの検討 1 賃貸借に関する事項のみが記載されているもの ◆所持者:すべての者⇒不課税文書 2 権利金等の後日賃借人に返還されないものの受領文言の記載があるもの ◆所持者:賃借人⇒第17号の1文書 ◆所持者:賃借人以外の者⇒不課税文書 3 敷金、保証金等の後日賃借人に返還されるものの受領文言の記載があるもの ◆所持者:賃借人⇒第17号の2文書 ◆所持者:賃借人以外の者⇒不課税文書 4 上記2、3の両方の金銭の受領文言の記載があるもの ◆所持者:賃借人⇒第17号の1文書 ◆所持者:賃借人以外の者⇒不課税文書 (※) 第17号の1文書と第17号の2文書に該当した場合には、最少の号数である第17号の1文書に該当する(通則3のハ)。   ▷ まとめ   (了)

#No. 162(掲載号)
#山端 美德
2016/03/24

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第10回】「確定的な脱税意思による過少申告事件」~最判平成7年4月28日(民集49巻4号1193頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第10回】 「確定的な脱税意思による過少申告事件」 ~最判平成7年4月28日(民集49巻4号1193頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 162(掲載号)
#菊田 雅裕
2016/03/24

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第13回】「新会計基準の適用開始とうっかりミス」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第13回】 「新会計基準の適用開始とうっかりミス」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例13-1】 負数の前に△をつけ忘れている。 【事例13-1】には間違いが1ヶ所あります。数字の前に△をつけるべき箇所があるのですが、それをつけ忘れているのです。どの数字だかわかりますか。 ヒントを出しましょう。まず、すべての科目の合計を計算して、純資産合計の額との差額を把握しましょう。   2 差額を2で割ってみると・・・ 合計計算が合わないときは、その差額を2で割ると、プラスマイナスを逆にしてしまっている数字を見つけることができます。実務では差額が発生する要因が様々なので、この方法が役に立つケースは限られていますが、ここではこの方法が使えます。 【事例13-1】の純資産の部の個々の科目の数字をすべて合計すると、18,378になります。一方で、純資産合計の欄には18,278とありますので、不一致です。さっそく、差額を求めて2で割ってみましょう。 この50という数字を【事例13-1】で探せばよいのです。すぐ見つかりますね。「退職給付に係る調整累計額50」です。この数字がプラスマイナス逆になっているというわけです。 答えを見てみましょう。   3 これはファーストタイム・ミス 数字の前の△をつけ忘れるうっかりミスは、この連載の【第3回】で取り上げました。それはリサイクル・ミスに分類されるうっかりミスでした。プラスにもマイナスにもなるうる科目で、前期と当期の符号が異なる場合に、数字の上書き作業時に符号を間違うという仕組みです。 【事例13-1】の場合も、「退職給付に係る調整累計額」はプラスにもマイナスにもなる科目ですから、同じようにミスが起きたと考えることができます。しかし、この事例には少し違う要因もあります。 間違いが起きてしまった「退職給付に係る調整累計額」という科目は、退職給付に係る会計基準の改正を受けて2014年3月期に初めて登場した科目です。 【事例13-1】のミスが検出されたのは2015年3月期でしたので、新科目が登場してから間もない頃です。連結計算書類の作成担当者は、この科目がプラスにもマイナスにもなりうる科目であることや、そもそもこの科目の内容がどのようなものかなどを十分に理解していなかった可能性があります。 このように新しい領域の作業で起きてしまうミスを、筆者は「ファーストタイム・ミス」と呼んでいます。 人間というのは、新しいことに直面すると、過去の自らの経験に照らして解決しようとするクセがあります。新しい問題を処理するには新たに学ばなければならないことも多く、労力を要します。ですから、疲れてくるとどうしても過去の経験に依存して判断してしまうのです。ある意味これは、目の前の新しい事象に対して思考停止状態になっていることと同じです。 その結果、ミスが引き起こされるのです。   4 類似事例の紹介 退職給付会計が改正、適用された2014年から2、3年は、関連する項目でうっかりミスが多く見られるはずです。たとえば、以下のような事例もよく見られます。 【事例13-2】 有価証券報告書の記載を計算書類にそのまま写している。 【事例13-2】は、退職給付会計に関する会計処理方法が連結と個別で異なることを、注意喚起するために個別計算書類の方に注記したケースです。 この注記の記載は、計算書類では義務ではありませんが、有価証券報告書では記載を義務づけられています(財務諸表等規則ガイドライン8の2-10)。その趣旨を踏まえて、計算書類でも任意に記載している会社がよくあります。 したがって、上の事例の注記の作成にあたっては、有価証券報告書の記載内容を計算書類にコピペしたと考えられます。その際に「財務諸表」を「計算書類」に書き換えることを忘れてしまったわけです。 その点では、この事例は本連載の【第5回】で紹介した【事例5-2】と同様、「フルコピー・ミス」です。ただし、退職給付会計の改正から間もない時期であったことが、こうしたミスを招いているとも考えられます。   〈今回のまとめ〉 会計基準の改正等により新たな事柄が登場した場合は、うっかりミスが起こりやすいので十分に注意するとよいでしょう。 (了)

#No. 162(掲載号)
#石王丸 周夫
2016/03/24

〔経営上の発生事象で考える〕会計実務のポイント 【第3回】「工場の著しい操業度の低下の場合」

〔経営上の発生事象で考える〕 会計実務のポイント 【第3回】 「工場の著しい操業度の低下の場合」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明     1 操業度の著しい低下によって一般的に考えられる事象 ライバル企業の台頭により、自社の製品需要よりも供給が大きく上回り、工場の操業度が著しく低下した場合、将来獲得できるであろうキャッシュが著しく減少することが想像される。また、将来キャッシュ・フローがあまりにも下落する場合には、工場を閉鎖することも検討される可能性がある。 工場の操業度が著しく低下した場合、企業の状況を踏まえ、想定される事象を洗い出したうえで会計処理を検討する必要がある。 それでは、個々の会計処理についてみていく。   2 減損会計の検討 工場の操業度が著しく低下した場合、「資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下される変化が生じた又は生じる見込みである場合」に該当すると考えられる。つまり、使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化に関する減損の兆候が認められる。 ただし、減損会計では、操業度が著しく低下したことのみをもって直ちに減損の兆候があるとはしておらず、著しく低下した操業度が回復する見込みがない場合に減損の兆候があるとしている(「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」第13項(5)」)。 そのため、工場の操業度が回復する見込みがあるかどうかを判断する必要がある。 なお、減損の兆候が認められる場合、減損損失の認識の判定という次のステップに進むが、ベーシック会計Q&Aで詳しく説明しているので、そちらをご参照いただきたい。   3 固定資産の耐用年数の見直し 減価償却は耐用年数(経済的使用可能予測期間)にわたって固定資産の適正な原価配分を行うため、固定資産の使用状況や環境の変化等によって、当初予定による残存耐用年数と将来の経済的使用可能予測期間にかい離が明らかになった場合には、耐用年数を変更する必要がある。 本件の場合、設備過剰な状態が続いている。例えば工場の一部の設備について半年後に処分することが決定された場合、通常、その設備について将来の経済的使用可能予測期間は当初予定していたよりも短くなると考えられる。 そのため、個々の状況に応じて、固定資産の使用状況や環境の変化等が将来の経済的使用可能予測期間に変化を生じさせていないか耐用年数の見直しを行う必要がある。 なお、固定資産の耐用年数の変更に係る会計処理については、ベーシック会計Q&Aで詳しく説明しているので、そちらをご参照いただきたい。   4 固定費の特別損失への振替 原価計算基準三(四)によれば、「原価は正常な状態のもとにおける経営活動を前提として把握された価値の消費であり、異常な状態を原因とする価値の減少を含まない。」とされている。この基準によれば、操業停止期間中の固定費(減価償却費等)が異常な原因により発生したものであり、かつ、巨額な場合は、異常な状態によって発生した減価償却費等の固定費を非原価項目として特別損失に振り替える処理も考えられる。 この場合、異常な状態によって発生した費用であるということが客観的に証明できる必要がある。 特に本件のようなケースでは、操業度の著しい低下が正常な状況下で発生したものではなく、異常な状況下で発生したものであるということを証明する必要があるが、本件のように、操業度の著しい低下が競合他社との競争の激化という通常の状態から予測しうるような事象によるものであれば、通常、状態の異常性について客観的に証明することは難しいと考えられる。 なお、仮に異常性が客観的に証明できたとして固定費を特別損失に振り替える場合、特別損失への振替が認められるのは、あくまで原価のうち異常な状態によって発生した部分のみで、正常な状態によって発生した部分まで特別損失に振り替えることは認められないことに留意が必要である。 (※) 上記は一般的に考えられる会計処理について解説したものであり、会計処理のすべてを網羅的に解説したものではない。   【検討事項のチェックリスト】 ~工場の著しい操業度の低下の場合~ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 162(掲載号)
#竹本 泰明
2016/03/24

[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第12回】「海外子会社の内部統制システムとコンプライアンス強化」~親会社視点での国内子会社との相違点・留意点等~

[子会社不祥事を未然に防ぐ] グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第12回】 (最終回) 「海外子会社の内部統制システムとコンプライアンス強化」 ~親会社視点での国内子会社との相違点・留意点等~   弁護士 遠藤 元一   1 海外子会社のコンプライアンス・リスク 2015年に公表された経済産業省「第44回海外事業活動基本調査概要-平成25(2013)年度実績-」(2015年4月)からも明らかなとおり、世界的なグローバリゼーションの潮流が日本企業にも及び、製品やサービスの輸出を積極的に推進する形態から、海外企業と合弁会社や完全子会社を設立したり、既に設立された会社をM&A等で子会社・関連会社化しそれらを通じて製品・サービスを供給する等、グローバル展開が本格化している。 現地の会社との合弁会社を組成する場合、あるいは設立後に出資比率が過半数となると、連結子会社となり連結監査の対象に含まれることになる。海外子会社を含めたグループ会社のコンプライアンス体制の重要性が高いことはいうまでもなく、海外子会社に対するコンプライアンス体制をどのように構築・運用するかは、わが国親会社にとって喫緊の課題である。 しかし、海外のグローバル企業がグループ会社に対するコンプライアンス体制を確立しているのに比べると、日本企業の海外子会社・連結会社に対するコンプライアンス体制は相対的に脆弱であり、モニタリング・内部通報体制等も必ずしも実効的に機能していないという声が、企業側からも、監査法人の側からも聴かれる。   2 海外子会社と国内子会社との相違点等 海外子会社の管理においても、国内子会社と同様、リスクベースド・アプローチによりリスクを洗い出して対応策を講ずることが基本となる。 ただし、海外子会社は国内子会社と異なり、①文化的背景が異なり、独自の価値観に基づく企業文化が形成されやすく、国内で形成されているコンプライアンス重視等の企業文化が共有されていないことも少なくない、②インフラストラクチャーの断絶、労働争議、大気汚染・水質汚濁、環境規制、交通事故等、国内子会社と同じリスクであっても、リスクが顕在化・発生する頻度が高い場合がある、③製造物責任、リコール、セクハラ・差別に関わる労働問題等、リスクが発生した場合の被害が国内子会社と比べ増大化し、深刻な影響を及ぼす可能性が高い場合がある、④大規模テロ、海賊行為等、国内子会社とは異なるリスクが顕在化・発生する可能性があるとの相違点がみられる、⑤海外子会社の上記①~④のリスク、複雑さを考慮した国内子会社以上の網羅的かつ深堀りした会計監査が必要であるにもかかわらず、実際は必ずしもそれが徹底されないまま、日本の親会社によるコンプライアンス監査が業務監査、経営監査という括りで現地経営の課題を指摘することに留まりがち、といった傾向がみられる。 さらに、競争法や贈賄規制法の領域では、グローバルな域外適用や執行が強化され、例えば、海外腐敗防止法(The Foreign Corrupt Practices Act of 1977、FCPA)は、【1】法令違反行為を実効的に捕捉・摘発する組織的体制を有する規制当局が租税当局等や先進諸国の規制当局、金融機関・競合者・取引先等からの情報提供・協力により情報や証拠を収集しうる体制が整備され、【2】盗聴・おとり捜査・司法取引等、法執行のための多様なエンフォースメント手段やそれとは別の制裁性の強い損害賠償制度を有し、【3】法執行状況も罰金の水準がわが国に比較して高く、【4】国・地域によっては、企業に対する罰金のみならず実行行為を行った担当者個人さらには企業の取締役も収監され、執行猶予のない禁固刑を科すなど厳罰化の傾向がみられ、【5】海外子会社のみならず国内子会社・親会社も域外適用の対象となるため、海外での正当な営業関連活動まで過度に委縮しているとの指摘もある。 このような特徴を有する競争法・贈賄規制法違反リスクを適正に制御して正当な営業活動を行う環境を整備する観点(「『日本再興戦略』改訂2015」第3章・第4章参照)に立ち、日本の親会社は、対応策の整備を海外子会社に委ねるのではなく、日本の親会社自らがリスクベースド・アプローチによりリスクを検出して、子会社全てについて統一的な指針を構築し、それを海外子会社に導入させ、統一的に管理を行うことが重要である。   3 「コード・オブ・コンダクト」及び「グローバルポリシー」の策定及び浸透 2で整理したような国内子会社と異なる海外子会社の特徴及び法規制の相違等を踏まえて、コンプライアンス体制を構築する手順を考えてみよう。 第1の段階は「コード・オブ・コンダクト」の制定である。 コード・オブ・コンダクトとは、各企業にとって特に重要な行動基準・基本原則を全社的に的確に伝達・周知することを目的として制定される行動規範のことをいい、「行動指針」や「コンプライアンスマニュアル」等、様々な名称で呼ばれている。 親会社及びグループ会社の事業・規模・地域、取引形態等に含まれるコンプライアンス・リスクの棚卸しを行い、各リスクの発生可能性・影響度及びそれらを踏まえた重要性を評価し、重要性・優先順位が高いリスクの中から、基本方針・基本原則として、海外子会社を含め全社的に浸透・周知すべき事項を整理したうえで「コード・オブ・コンダクト」を制定することが、その出発点となる。 行動規範は、的確にコミュニケーション(情報の伝達と共有)できるように「わかりやすく、理解できるもの」として整理・表現することが肝要である。 次の段階は「グローバルポリシー」の策定である。 グローバルポリシーとは、グループ企業内の共通言語・指標となる管理方針・規程のことをいい、国内子会社と異なる様々な特徴を有する海外子会社の役職員が遵守すべき具体的な管理方針や規程を明らかにすることで、グローバルベースでのリスク管理体制やコンプライアンス体制を構築することが可能となる。 策定すべき具体的なものとしては、 グローバル経営管理方針 (贈賄防止、競争法等対応を含めた)グローバルリスクマネジメント方針 グローバルセキュリティ規程 IFRSのグローバル規程 等が挙げられるが、その位置付けやグループ会社への強制力、対象範囲等を事前に十分協議して、必要なポリシーを明確に定義・体系化すること、また、海外子会社毎のエリア・業態等に応じて具体的に実務として落とし込ませ、浸透させるための仕組み(発信、教育、CSA)を整備し、PDCAを回して根付かせ、浸透させることが重要である。 上記のうち、域外適用や執行強化が著しく、コンプライアンス・リスクが極めて懸念される領域である贈賄防止、競争法等については、策定したグローバルポリシーに基づきリスクベースド・アプローチをより徹底し、子会社の事業・規模・地域、取引形態等に含まれるコンプライアンス・リスク及び関連する法令を網羅的に洗い出し、それらのリスクに適正に対処しうる対応策を整備ずる必要がある。   4 現地法人管理要員、現地の外部専門家との連携強化 連結対象の海外子会社については、親会社から子会社の役職員を派遣し、派遣した役職員を通じて、親会社は、親会社としての当該海外子会社の管理を行う。 ただし100%子会社でない限り、他の出資者との利益相反等の問題から、親会社の意向や方針は尊重しつつも必ずしもそれに沿うことができないケースも生じ得る。合弁会社で生じ得るこのような問題に適正に対処するために、当該エリア・国に設立された複数の事業会社の管理・運営をサポートする現地法人を設立しておき、その現地法人管理会社の役職員を海外子会社の非常勤役員として派遣するというやり方が有用な方法の1つとして考えられる。 また、海外子会社には、わが国とは異なる現地の様々な諸法令や現地特有の会計処理が存在する。親会社が海外の諸法令や会計処理を網羅的・統一的に把握し、モニターすることは著しく困難であるため、海外子会社が独自に(必要に応じて現地の信頼できる法律事務所や監査法人等の専門家と連携する等して)対応策を整備し、親会社がそれを事後的にその適正さをチェックする手法をとるというやり方をとることになる。 当該エリア・国に新たに進出する企業の場合には、既に同じエリア・国に進出している日本企業からアドバイスを受けたり(国内では競争関係にある同業他社であっても、海外では同朋意識等から有効で緊密な連携をとることが多い)、日本貿易振興機構(JETRO)等の公的機関に相談する等して、現地における企業経営のノウハウや専門家とのネットワークを構築することが重要であろう。   (連載了)

#No. 162(掲載号)
#遠藤 元一
2016/03/24

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《有価証券》編 【第2回】「満期保有目的の債券」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《有価証券》編 【第2回】 「満期保有目的の債券」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 「中小企業会計指針」では、有価証券は保有目的の観点から、①売買目的有価証券、②満期保有目的の債券、③子会社株式及び関連会社株式、④その他有価証券の4つに分類し、それぞれの分類に応じた貸借対照表価額とします。 今回は、②満期保有目的の債券の貸借対照表価額及び会計処理をご紹介します。   1 取得日(×1年1月1日)、×1年12月末、×5年12月末における仕訳 (ⅰ) 取得日(×1年1月1日) (ⅱ) ×1年12月末 [利払日] [償却原価法による評価替] (ⅲ) ×5年12月末 [利払日] [償却原価法による評価替] [償還] 満期保有目的の債券とは、満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(満期まで所有する意図をもって取得したものに限る)をいいます。 満期保有目的の債券は、取得価額と額面金額の差額が金利の調整と認められる場合には、償却原価法により処理し、それによる差額は当期の損益(営業外損益)として処理します。それ以外の場合には、取得原価をもって貸借対照表価額とします(中小企業会計指針19)。   2 決算書の金額   3 法人税法の規定における満期保有目的等有価証券(参考) 法人税法の規定による満期保有目的等有価証券とは、中小企業会計指針の分類でいう満期保有目的の債券だけでなく、子会社株式及び関連会社株式も含まれた定義とされています(法令119の2)。 満期保有目的の債券に相当する法人税法上の定義は、償還期限の定めのある有価証券(売買目的有価証券に該当するものを除く)のうち、その償還期限まで保有する目的で取得したものとして、その取得の日に「満期保有目的債券」等の勘定科目により区分した有価証券です。 子会社株式及び関連会社株式に相当する法人税法上の定義は、法人の特殊関係株主等がその法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の20%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における、その特殊関係法人等の有する株式又は出資をいいます。 (了)

#No. 162(掲載号)
#前原 啓二
2016/03/24

改正労働者派遣法への実務対応《派遣元企業編》~人材派遣会社は「いつまでに」「何をすべきか」~ 【第3回】「労働者派遣契約等の見直し」

改正労働者派遣法への実務対応 《派遣元企業編》 ~人材派遣会社は「いつまでに」「何をすべきか」~ 【第3回】 「労働者派遣契約等の見直し」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   【第3回】は、労働者派遣契約等の見直しについて検討する。   1 変更すべき書類 今回の改正により、派遣元が変更して整備すべき主な書類は、「労働者派遣契約」、「派遣先への通知書」、「派遣元管理台帳」、「就業条件明示書」の4点となっている。 「労働者派遣契約」については、「改正労働者派遣法への実務対応《派遣先企業編》】【第4回】でその内容を確認したため、ここでは、「派遣先への通知書」、「派遣元管理台帳」、「就業条件明示書」について変更すべき事項を確認する。 (1) 派遣先への通知書 これまで、年齢については、45歳以上である場合はその旨を、18歳未満である場合はその年齢を通知する必要があったが、これらに加えて、期間制限の対象外となる「60歳以上の者であるか否かの別」が追加されている。 なお、社会保険・雇用保険に関する被保険者資格取得届の提出の有無については、改正前より通知が必要だったが、改正後は、当該通知に加えて被保険者証の写し等の加入させていることがわかる資料を派遣先に提示又は送付が必要となる。 (2) 派遣元管理台帳 派遣元管理台帳に記載しなければならない事項として、以下の6項目が追加されている。 ① 無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別、有期雇用派遣労働者の場合は労働契約の期間 ② 60歳以上の者であるか否かの別 ③ 組織単位 ④ 段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時とその内容に関する事項 ⑤ キャリアコンサルティングを行った日時とその内容に関する事項 ⑥ 雇用安定措置の内容 (3) 就業条件明示書 就業条件明示書に記載しなければならない事項として、以下の4項目が追加されている。 ① 組織単位 ② 派遣労働者個人単位の期間制限の抵触日及び派遣先の事業所単位の期間制限の抵触日(期間制限のない労働者派遣に該当する場合はその旨) 抵触日と合わせて、派遣先が派遣期間の制限に違反して労働者派遣を受けた場合は労働契約の申込みをしたものとみなされることを併せて明示することとされている。 ③ 派遣先が、労働者派遣の終了後に、当該派遣労働者を雇用する場合に、その雇用意思を事前に労働者派遣をする者に対し示すこと、当該者が職業紹介を行うことが可能な場合は職業紹介により紹介手数料を支払うことその他の労働者派遣の終了後に労働者派遣契約の当事者間の紛争を防止するために講ずる措置 ④ 健康保険被保険者資格取得届等の書類が行政機関に提出されていない場合は、その理由 (※) (1)派遣先への通知書の記載例②を参照   2 確認体制 労働者派遣契約も含めた書類については、一般的には派遣元で準備することとなるため、契約書等の統一のフォーマットを法改正に対応した形で作成し、労働者派遣に係る書類として常に使用すれば、項目等の漏れを確認する体制を構築する必要は特にない。ただし、派遣元管理台帳については、項目はあっても中身が記載されていないということが考えられるため、きちんと更新をして整備する体制が必要となる。 これらの必要な書類をシステムを導入して作成することもあるが、この場合システムの改修に一定の期間が必要となるため注意が必要となる。   3 対応スケジュール 労働者派遣契約については、平成27年9月30日以降に締結する契約から項目の追加が必要となる。派遣先への通知についても同様となる。 派遣元管理台帳については、平成27年9月30日以降に作成すべきものから項目の追加が必要となる。 なお、派遣元管理台帳は、労働者派遣を実施する都度作成するものであるため、平成27年9月30日以降に新たに実施した労働者派遣に関するものだけでなく、改正前より引き続き実施している労働者派遣に関するもの(平成27年9月30日以降の分)についても、項目の追加が必要となる。 *  *  * 次回(最終回)は、事業報告等への対応について検討する。 (了)

#No. 162(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2016/03/24
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