《速報解説》 会計士協会、「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」 (公開草案)を公表 ~税制改正を受け監査証拠がイメージ文書となる場合の留意点など示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年9月26日、日本公認会計士協会は、IT委員会研究報告「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 公開草案は、平成27年及び平成28年の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(以下「電子帳簿保存法施行規則」という)等の改正によるスキャナ保存制度の緩和の内容を周知し、企業がスキャナ保存制度を採用している場合の監査上の対応について述べている。 意見募集期間は平成28年10月26日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 電子保存とは、当初から電磁的記録で作成された文書を電磁的記録で保存すること及び書面で作成された書類をスキャナでイメージ化し、電磁的記録で保存することの両方を含んでいる(公開草案Ⅰ、1)。 1 平成27年度税制改正後のスキャナ保存制度 平成27 年度税制改正及び平成28年度税制改正の概要について述べている(公開草案「付録2:平成27年度・28年度税制改正の詳細」も参照)。 平成28年の電子帳簿保存法施行規則の改正によりスキャナ保存における入力機器は、「原稿台と一体になったものに限る」という要件が外されたことから、ハンディスキャナやデジタルカメラ、スマートフォン搭載のカメラによる撮影データによる電子データ化も認められることになった。 2 監査証拠がイメージ文書の場合の留意点 スキャナ保存制度により、企業は当初書面で受け取った証憑についても、電子的イメージとして保存できるようになる。 書面からイメージ文書への媒体の変換は、企業の管理下において実施されるので、会計記録や監査証拠が、オリジナルな形を変えることとなり、そこに種々のリスクが想定される(公開草案Ⅲ)。 監査人は、スキャナ保存制度の導入による被監査会社におけるリスクの発生及びそれに対応した内部統制の変化に留意するとともに、監査証拠の質の変化に伴う発見リスクの変動にも留意することになる(公開草案Ⅲ)。 3 経営者による内部統制の構築 書面からイメージ文書への媒体の変換により、紙の文書に比べて保存場所を取らないため保管コストが低減されるなどの利点がある。 その一方で、例えば、改竄やすり替えなどの不正行為の痕跡が残らない可能性、システム障害などにより文書が消失する可能性などのリスクがある(公開草案Ⅲ、1(1))。 そこで、経営者は、これらのリスクを低減する適切な内部統制を構築することにより対応することが述べられており、全般統制、業務処理統制等の整備・運用について詳細に述べられている(公開草案Ⅲ、1(2))。 4 監査人の対応 重要な業務処理に関するプロセスにおいてスキャナ保存手続が採用されている場合、スキャナ保存手続に関する全般統制及び業務処理統制について理解し、その整備・運用状況の有効性を評価することが考えられる。 被監査会社におけるリスク及びそれに対応して構築された内部統制を前提にして、監査人が実施する監査手続について述べられている(公開草案Ⅲ、2)。 公開草案では、「データ提供依頼書の例」を示し、監査人は、企業とイメージ文書入手の手続等をあらかじめ決定しておくことが望ましいとしている(公開草案Ⅲ、4、【図表2】データ提供依頼書の例)。 5 原本の保存に関する被監査会社との協議 自主規制・業務本部 平成27年審理通達第3号「平成27年度税制改正における国税関係書類に係るスキャナ保存制度見直しに伴う監査人の留意事項」(平成27年9月30日)では、「監査上必要と判断される金額以上の契約書など、重要な監査証拠となり得る書類の原本を、監査に必要な期間、保存することの必要性に関して、被監査会社と事前に十分協議することが適切と考えられる。」とされている。 被監査会社との事前の協議事項のポイントとして、次の事項が挙げられている(公開草案Ⅲ、3)。 (了)
《速報解説》 関信局、庭先部分を相続した場合の小規模宅地等特例の適用について 文書回答事例を公表 税理士 菅野 真美 関東信越国税局は9月20日付けで、庭先部分を相続した場合の小規模宅地等特例の適用について、下記の文書回答事例を公表した。 ▷どのような事案を事前照会したのか? 被相続人甲の居住の用に供していた家屋の敷地はX部分とY部分の2筆から成り立っていた。甲の生前から相続人Aがこの家屋で同居し、相続開始後も継続してAが居住していた。 この居住用不動産のうち、家屋並びにY部分の敷地は相続人B(甲の養子)が取得し、X部分はAが取得した。Y部分の上に居住用家屋が建てられており、X部分には建てられていない。 この場合、X部分について、小規模宅地等の特例の適用があるか。 ▷何が問題か? 被相続人の所有する居住用家屋の敷地について小規模宅地等の減額の特例が受けられる条件の1つとして、『被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族が、その被相続人の居住の用に供された宅地等を相続により取得し、相続開始から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その建物に居住している』というものがある。 相続人Aは相続前から引き続き被相続人の居住していた家屋に居住している。そして、居住用家屋の敷地のうちX部分を取得している。ただし、このX部分の上には居住用家屋は建っていない。 被相続人の居住の用に供された宅地等の減額の趣旨が「相続人において居住の用を廃してこれを処分することについて相当の制約を受けるのが通常であることから、相続税の課税価格に算入すべき価額を計算する上において、政策的な観点から一定の減額をすることとした」(東京地裁平成23年8月26日判決等)と考えると、X部分の土地は、家屋を廃することなく処分することが可能なことから、小規模宅地の減額の対象にはならないのではないかとも考えられる。 ▷結論は? 今回公表された事例では、居住の用を廃する必要があるかどうかではなく、相続の開始直前において被相続人の居住の用に供された家屋で所有していたものの敷地としてX部分、Y部分が一体として供されていたものであることから、X部分について小規模宅地の特例の対象になると結論付け、この意見で差し支えないとされた。 (了)
2016年9月21日(水)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.186を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第27回】 「課税要件法定主義を考える」 税理士 山本 守之 第1節 課税要件と交際費等 1 交際費の課税の趣旨 交際費課税の趣旨は、この制度が創設された当時と現在とでは大いに異なっているが、その判決例を検討してみると、依然として創設当時の古い考え方が残っているのが気にかかります。 例えば、平成15年9月9日の東京高裁における「萬有製薬事件」における判決文では、交際費課税の趣旨を次のように述べています。 確かに、この制度の創設時(昭和29年)には冗費、濫費を抑制して資本を蓄積させようという趣旨であったことは事実です。 判決文の③は、いわゆる代替課税として説明されていたものです。 例えば、売上割戻しを金銭又は事業用資産で行った場合、相手方収益に計上されて課税が確保されているから支出した側では交際費等としません。これに対して事業用資産以外の資産の交付では相手方において課税が確保されているとは限らず、飲食の接待等についてはその経済的利益が課税されないから、支出する側で交際費課税をするというものでした。 例えば、昭和45年当時の税の専門誌には、次のような解説がありました。 (『税務弘報』vol.18 No.12 国税審理室(当時)桜井巳津男稿) しかし、現在ではこのような代替課税のねらいは通用しません。 例えば、法人が創立〇周年パーティー等を催した場合に、来客が持参するお祝い金をそのパーティー費用から控除することを認めない現行の取扱いに対して「お祝い金を持参する法人は、そのお祝金について交際費課税を受けているのであるから、これを控除しないのは代替税の考えからみても不合理である」という主張をしたとしても、「二重課税が生ずるとしても、それは立法政策の問題であり、法解釈上は格別の意味を持つものではない」(平2.11.19浦和地裁)と斥けられています。 萬有製薬事件の東京高裁判決は全体として評価できます。しかし、交際費課税の趣旨については少々古い時代の解説を拠り所にしているように思われます。 2 交際費の課税要件 課税要件法定主義は次のように考えられます。 (『税法用語辞典』税務大学校研究部長監修 大蔵財務協会) 税法に携わる者は、課税要件を無視してはなりません。その意味では、「萬有製薬事件」の東京高裁判決(平15.9.9)は交際費における課税要件(成立要件)を真正面から検証し、その課税要件(①の支出の相手方、②支出の目的、③行為の態様)について、いわゆる三要件説の立場から、法的基準に基づく判示を行っている点が注目されます。 とかく税理士等の実務家は交際費等の判定に関し、措置法関係通達やその解説書、質疑応答等の記述を拠り所にする傾向があります。税理士が単なる職業会計人ではなく、租税法に関する専門家であると考えると、法的基準である課税要件を重視した実務を行うべきであるという教訓を与えてくれたものとして注目されます。 特に、税理士法により税理士に出廷陳述権が与えられたことからも、会計実務を超えた法律家としての素養が税理士に求められているように思われます。 筆者は判決例による交際費課税の成立要件は次のように変化しており、「このうち三要件説は支出の目的と行為に態様を区分しており、一般的にすぐれていると考えられよう。」と解説しました(拙著『交際費の理論と実務』税務経理協会)。 3 本件の概要 本件の概要は次のようなものでした。 4 行為の態様 交際費等の第3の成立(課税)要件は、行為の態様として「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」であることが必要であるとされています。 ところで、ここで問題になるのは、交際費の課税要件として「相手方の受益の認識が必要であるか否か」という点です。 この事件で重要なことは、X社は添削料の差額負担の事実を医師等や研究者等に知らせていなかった点です。 このため、X社は「交際費等に該当するためには、その相手方が、接待等により利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることが必要である。」という解釈基準を示し、その基準に立脚して「本件負担額については、本件英文添削が、その依頼者において、原告による本件負担額の支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われていないことから、交際費等に該当しない。」と主張したのです。 この点について国側では「支出の目的がかかる相手方に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のためであれば足り、接待等が、その相手方において、当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることは必要でない。交際費等に該当する接待等の行為は、相手方の欲望を満たすものである必要はない。」と主張していました。 その事例として「飲酒の嗜好の全くない事業関係者に対して、そのことを全く知らずに飲酒の接待を行った場合、相手方の欲望は満たされていないが、接待等の行為に該当する」ことを挙げています。 ところで、注目すべきは、判決では、交際行為(接待等に該当する行為)を「一般的に見て、相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足させる行為をいうと解される。」としていることです。 この意味からすれば、来客に昼食等を提供したとしても、それが会社通念上通常の程度のもので、相手方の個人的歓心を買うような利益を与えている(又は与えられている)という認識がなければ交際費等に該当しないと解すべきです。 ここでも、交際費の課税要件である「行為の態様」は成立しないと判示されました。 5 不確定概念 租税特別措置法第61条の4第3項では、交際費の定義を「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為のために支出するもの」と規定していますが、「その他」という不確定概念を多用し、規定それ自体が課税要件明確主義に反するおそれが強いと思われます。 (注) 下線は筆者が付けました。 筆者がかねがね疑問に思っているのは、課税庁やそのOBが執筆した解説書や質疑応答集では、接待、供応、慰安、贈答に続く「その他これらに類する行為」を幅広く解しているという点です。 本件訴訟においても国側は、「その他これらに類する行為」とは接待、供応、慰安、贈答とは性格が類似しつつも、行為形態の異なるもの、すなわち、その名目のいかんを問わず、取引関係の円滑な進行を図るためにする利益や便宜の供与を広く含むものであると主張しました。 これに対して判決では、「課税の要件は法律で定めるとする租税法律主義(憲法84条)の観点からすると『その他これらに類する行為』を国側主張のように幅を広げて解釈できるか否かが疑問である。そして、ある程度幅を広げて解釈することが許されるとしても、本件英文添削のように、それ自体が直接相手方の歓心を買うような行為ではなく、むしろ学術研究に対する支援、学術奨励といった性格のものまでがその中に含まれると解することは、その字義からして無理があることは否定できない」としています。 差額負担を交際費等における行為の態様である「金銭の贈与」であるという考え方もあるでしょう。 しかし、本件の場合は研究者らにおいてそのような利得があることについて明確な認識がない場合です。差額負担は相手方の個人的歓心を買うことができず、交際費等となる金銭の贈答には該当しません。 結局、行為の態様からみると、「本件英文添削の差額負担は、通常の接待、供応、慰安、贈答などとは異なり、それ自体が直接相手方の歓心を買えるというような性格の行為ではなく、むしろ学術推奨という意味合いが強いこと、その具体的態様等からしても、金銭の贈答と同視できるような性質のものではなく、また、研究者らの名誉欲等の充足に結びつく面も希薄なものであることなどからすれば、交際費等に該当する要件である「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」をある程度幅を広げて解釈したとしても、本件英文添削の差額負担がそれに当たるとすることは困難である。」として交際費課税を取り消したのです。 第2節 個人所得における利子認定 1 平和事件の上告審から 「平和事件」の上告審の判決が平成16年7月20日に最高裁第三小法廷で出され、納税者が全面敗訴しました。この事件を巡って実務家や学者から多くの意見が出され、メールでも活発な意見交流がありました。 この事件は筆者にとっても興味のあるものでしたが、当初から筆者の主張は少数派だったようです。最高裁判決に対する筆者の考え方を述べてみます。 2 会社側の主張 会社側は、①所得税法第36条による収入すべき経済的利益はない、②したがって所得税法第157条の適用余地はない、③無利息貸付けは会社の利益を増加させているから不合理、不自然な行為ではない、④所得税法で利子認定をしないことにしていることは市販の質疑応答集でも明らかにされている、と主張していました。 中島氏は雑誌『税理』のインタビューでも、“所得がないところになぜ税金がかかるのか”と不満を述べており、同誌の特集(『税理』vol.36 No.5)でも税理士や学者が“所得なきところに課税なし”と意見を展開していました。 この点について筆者の主張は下級審の頃から「収入すべき経済的利益がないということは同族会社等の行為又は計算の否認規定(所法157)の適用を受けない場合に主張できるので、所得税法第157条の適用を受けないというのは理論の展開が逆である。また、所得があるか否かは所得税法第157条の適用を含めたところで判断されるべきである。」というものでした。 しかし、この主張は少数派であって、多くの学者や実務家は、「所得税法では利子の認定課税はできない」というものでした。筆者の主張を支持していたのは故中村利雄氏だけであり、同氏は「無利息貸付けの場合についてみれば、なるほど、納税者の申告ではこの貸付けによる所得はないが、経済人であれば通常有利息貸付けとしてその利息収入が所得となるべきものが、無利息貸付とすることにより、その貸付けによる所得の課税を回避したものであるから、その租税回避行為を否認し、有利息貸付けに引きなおしたところで判断すれば、所得がないとはいえないこととなる。つまり、山本守之氏が述べている『所得があるか否かは所得税法第157条の適用を含めたところで判断されるべき』ものである。」(『税理』vol.36 No.13)としておられました。 この事件は所得があるか否かではなく、同族会社等の行為又は計算の否認規定が適用されるか否かが検討されるべき事柄なのです。 もし、その適用が当然ということであれば、行為又は否認によって所得金額が生じてしまうからです。 3 信義則との関係 納税者とその顧問税理士は、個人から法人への無利息貸付けに対して、所得税を課さないと理解していたようで、このように解したのは、いわゆる「お役所本」に次のような記述があったからだとしています。 例えば、前職及び現職の東京国税局税務相談室長が編集した『昭和58年版・税務相談事例集』には、会社が代表者から運転資金として無利息で金銭を借り受けたという設例について、所得税法、別段の定め(同法第59条等)のあるものを除き、担税力の増加を伴わないものについては課税の対象とならないとして、参照条文として同法第36条第1項を挙げた上で、代表者個人に所得税が課税されることはない旨の記述があります。 また、東京国税局直税部長が監修し、同局法人課税長が編集した『回答事例による法人税質疑応答集』(昭和55年3月発行)及び『昭和59年版・回答事例による法人税質疑応答集』には、会社が業績悪化のため資金繰りに困って代表者から運転資金500万円を無利息で借り入れたという設例について、所得税の課税の対象となる収入金額とは「収入すべき金額」(所得税法第36条第1項)とされており、無利息で金銭の貸付をした代表者は、経済的利益を受けていないから所得税の申告をする必要がない旨の記述がありました。 これらの解説書(お役所本)には、編者、推薦者及び監修者が官職名を付して表示され、各巻頭の「推薦のことば」、「監修のことば」等には、その内容が、東京国税局税務相談室その他の税務当局に寄せられた相談事例及び職務執行の際に生じた疑義について回答と解説を示すものである旨の記載があります。また、本件各解説書の各巻末には、その発行者である一般財団法人大蔵財務協会が旧大蔵省の唯一の総合外殻団体であり、財務、税務行政の改良、発達及びこれに関する豆知識の普及という使命に基づいて出版活動を続けている旨の記載があります。 このため、平和事件の控訴審では とされました(平11.5.31東京高裁)。 しかし、自由職業人として独立し、税の専門家とされる税理士が法解釈について「お役所本」を頼りにし、分からないことがあると課税庁(税務署)に教えを請うという事情を悲しいと感じていた筆者は、この中途半端な高裁判決を納得することができませんでした。 幸いなことに最高裁では、次のような判決が出されました。 (平16.7.20最高裁第三小法廷) 確かに、お役所本では、業務悪化のため資金繰りに窮した会社のために代表者個人が運転資金500万円を無利息で貸し付けたというケースについて、代表者の経営責任が棚上げされたというケースや別段の定めのあるものを除くという前提条件を付した上で認定課税をしないとしていますが、これをもって、個人から法人への無利息貸付けには、税務上の認定課税はないと単純な考え方をするのは問題です。 それよりも、経営者や税理士は、それぞれ租税法解釈権をもっているので、そろそろ「お役所本」から抜け出してもいい頃ではないでしょうか。 実は、この事件の発生した当時は、税理士が頭の体操的節税に夢中であった時期であって、税の専門誌(『速報税理』平5.2.21号)の「相続税対策ノート」では、関西居住の公認会計士、税理士であり大学の教授であるY氏が次のような相続税節税対策を解説しています。 このように、個人が法人に対して時価の2分の1以上で譲渡すれば、個人サイドでは、たとえ時価を下回っていてもその譲渡収入は譲渡価額となり、一方、法人サイドでは、時価と譲受価額との差額を受贈益とされても、その後法人が他に譲渡した場合には、その譲受価額に受贈益を加算した金額が取得価額(譲渡原価)となり、節税となるというものです。 なるほど、この節税策は、所得税法第157条を度外視した一般的な事例としては、そのとおりです。しかし、同条の適用はないとする保証はないから、場合によってはその適用のあることも指摘するべきであったと考えます。 この点について故・中村利雄氏が「この点については、山本守之氏が税理5月号で述べている『納税者や実務家が頭の体操的な『節税』手法に夢中となり、正常な取引のあるべき姿を見失っている』との指摘に同感である。」としています(『税理』Vol.36 No.13)。 平和事件における無利息貸付について、これと同じように安易な節税発想がなかったか否か、また、個人から法人への無利息貸付については認定課税がないという平面的な法解釈がなかったかを問いたださなければなりません。 さらに、法解釈を「お役所本」に委ね、自らの法解釈権を放棄し、信義則適用を主張するという主体性のない態度をとっていなかったかも反省すべきです。 (了)
「更正の予知」の実務と 平成28年度税制改正 【第1回】 税理士 谷口 勝司 1 過少申告加算税と更正の予知の制度概要 (1) 過少申告加算税 過少申告加算税は、申告納税方式をとる法人税、所得税、消費税、相続税等の期限内申告書が提出された場合等において、その後修正申告書の提出又は更正があったときに、その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額(以下「追加本税額」という)に対し、原則10%の割合で、賦課課税方式により課される加算税である(通則法65、16)。 要するに、過少申告加算税は、期限内申告を行った後に追加本税額が生じた場合にいわば自動的に賦課される加算税である。ただし、追加本税額が生じない修正申告又は更正(例えば、法人税の欠損金額を減少させるもの)の場合には、当然賦課されることはない。 加算税には、他にも無申告加算税、不納付加算税又は重加算税があるが、過少申告加算税は最も一般的なものといえよう。 10%の加算税割合には、いくつかの例外がある。一つは、いわゆる二段階制であり、追加本税額が、期限内申告税額と50万円とのいずれか多い金額を超える場合は、その超える部分については5%加重されて15%の割合となる(通則法65②③)。また、もう一つは国外財産調書又は財産債務調書に関するもので、5%加重又は5%軽減の措置が講じられている(国外送金等調書法6、6の3)が、詳しくは割愛する。 さらに、後述する平成28年度税制改正では、調査に係る事前通知後は5%の割合で新たに賦課されることになった。 (2) 更正の予知 過少申告加算税の賦課が例外的に免除される規定として、「更正の予知」がある。 すなわち、国税通則法第65条第5項では、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る事前通知がある前に行われたものであるときは、過少申告加算税を賦課しない旨を規定している(下線部分は平成28年度改正箇所)。 平成28年度改正後の規定はやや読みにくいところがあるが、ごく簡単にいえば、更正の予知・事前通知のいずれもない場合において提出された修正申告書(換言すれば、納税者からの自発的な修正申告書で、実務上は自主修正とも呼ばれる)については、過少申告加算税を賦課しないとするものである。 なお、無申告加算税には「決定の予知」という軽減規定があるが、その規定振り等は更正の予知とほぼ同じであり、さらに、不納付加算税には「納税の告知の予知」という軽減規定がある。 2 平成28年度税制改正 今般の平成28年度税制改正において、加算税制度について何点かの改正が行われた。 その改正点の中で、更正の予知に関するものとして、 という改正が行われた(通則法65①②⑤、通則令27③)。 改正前は、更正の予知がある前に提出された修正申告書については過少申告加算税が賦課されなかった(免除されていた)ところ、改正後は、更正の予知がある前に提出された修正申告書であっても、調査に係る事前通知以後に提出されたものである場合には、新たに原則5%の過少申告加算税の賦課を行うというものである。 なお、無申告加算税についても、上記と同様に、調査に係る事前通知から決定の予知までの間は、原則10%(改正前:5%)の割合とする改正が行われたが、源泉所得税に係る不納付加算税についてはこのような改正は行われていない。 これらの改正は、いずれも、平成29年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される(改正法附則54③)。 平成25年1月以降、法定化された調査手続規定に基づき、実地の調査(国税の調査のうち、当該職員が納税義務者の支配・管理する場所(事業所等)等に臨場して質問検査等を行うものをいう。以下同じ)については、納税者(税務代理人を含む)に対して事前通知が原則行われているが(通則法74の9①)、今回の改正は、この事前通知の直後に多額の修正申告等を行うことにより(更正の予知がないとして)、加算税の賦課を回避している事例が散見されたことが背景にあったと趣旨説明がなされている(下記参照)。 当初申告のコンプライアンスを高める観点から行われた今回の改正は、自身の申告が過少申告であることを知っている納税者が事前通知を受けてから修正申告書を提出する、あるいはあえて過少申告をしておいて事前通知を受けてから修正申告書を提出する、といった不誠実・悪質な行為を抑制するものであって、後述する加算税制度の趣旨に沿うものであろう。 なお、実地の調査であっても、国税当局が保有する情報等から、事前通知を行うことにより正確な事実の把握を困難にする、又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、法令上事前通知を要しない(通則法74の10)こととされている(※)。また、実地の調査以外の調査(この点は後述)についても、事前通知を行うことが法律上義務付けられておらず(通則法74の9①)、これらの調査は実務上、いわゆる事前通知は行われていない。 (※) 事前通知を行うことなく実地の調査を実施する場合には、実務上、臨場後速やかに、調査対象税目、調査対象期間、実地調査を行う旨等を納税者に説明することが通達(平成24年9月12日付 課総5-11ほか「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」(以下「調査運営通達」という))に定められている。 これらの調査と今回の税制改正との関係について現時点で明らかにされているものはないが、事前通知や後述する更正の予知に関するこれまでの税務執行・取扱いに変更がないことを前提にすれば、これらの調査に係る過少申告加算税の取扱いについては、今回の税制改正による影響はないと見込まれる。 また、次の①及び②の修正申告等については、今回の改正による加算税の対象外となることが、今後通達等において示される予定である、と説明されている(前掲「平成28年度税制改正の解説」874頁参照)。 上記①について若干敷衍すると、現行の法人税の調査実務では、納税者の事前の同意がある場合には、法人税調査を「移転価格調査」と「それ以外の部分の調査」に区分して別々の調査として実施するという運用が行われている。これは、移転価格調査は通常長期間にわたることが多いこと等の理由から、1つの納税義務ではあるものの、納税者の負担軽減策のため、調査を区分して別々の調査として実施しようというものである。 この納税者の区分の同意を得て、例えば、「移転価格調査」を行うため事前通知を行った後、移転価格以外の部分に関して修正申告書が提出されたとしても、移転価格以外の部分について調査及び事前通知は行われていないため、28年度税制改正後においても、この修正申告について過少申告加算税は賦課されないことになるということであろう。また、このことは、連結納税の調査において、複数の連結子法人のうちの一部を調査対象として事前通知を行った場合に、調査対象以外の連結子法人に関して修正申告書が提出されたときも、同様である。 いずれにせよ、上記①及び②については、今後通達等で示される予定とのことなので、具体的な内容は通達発遣等を待つこととしたい。 ところで、今回の税制改正を契機に、例えば更正の予知とは具体的にいつの時点なのか等、改めて「更正の予知」とはどういうものか、調査などの税務執行において実務上どのように取り扱われているか等を理解しておくことが重要になってくると思われる。 そこで、次回以降、法人税の過少申告加算税に関する「更正の予知」を中心に、その取扱いを説明していくこととする。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例42(贈与税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例(措法70の2①) 平成27年中に直系尊属からの贈与により一定の住宅用家屋の新築等に充てるための金銭の取得をした一定の受贈者が、住宅用家屋の新築等についてそれぞれ一定の要件を満たすときは、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち1,000万円までの金額については、贈与税の課税価額に算入しない(平成27年以後の非課税限度額については、こちらを参照)。この非課税制度には、取得した新築住宅の床面積が50㎡以上240㎡未満でなければならないという基準が設けられており、床面積基準の判定は、贈与を受けた者の居住の用以外の用に供されている部分も含めた家屋全体の床面積で行わなければならない。 ◆住宅用家屋の要件(措令40の4の2①) この非課税特例制度の対象となる住宅用家屋とは、特定受贈者の居住の用に供する家屋で、次の要件を満たすものをいう。 したがって、店舗兼住宅の場合でも、居住用部分の床面積だけで判定するのではなく、家屋全体の床面積で判定を行わなければならない。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第17回】 「相互タクシー事件」 ~最判昭和41年6月24日(民集20巻5号1146頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q12】 「外国金融機関の国外営業所に預け入れた預金の利子の取扱い」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 1 利子に対する課税 所得税法上、預貯金の利子は利子所得に分類されます。利子所得の金額は、その年中の利子等の収入金額とされています。 居住者が国内において支払を受けるべき所得税法第23条第1項に規定する利子等については、他の所得と区分し、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率にて源泉徴収が行われ、課税関係が完結します(源泉分離課税)。 すなわち、通常の国内の銀行等に預け入れられた預貯金の利子については、源泉徴収で課税関係が終了するような仕組みがとられており、申告を行う必要はありません。 この源泉徴収の規定は、「国内において支払を受けるべき利子」についてのみ適用されるため、「国外において支払を受ける利子」については源泉徴収が行われません。 したがって、本件のような外国銀行の国外支店の口座において受ける預金利子については、所得税法の原則に則り、その収入すべき日(2を参照)の属する年分の利子所得として総合課税の対象となります(原則として申告が必要です)。 この場合における利子所得として収入金額に計上すべき金額は、外貨建の利子の金額をその収入すべき日におけるTTMにより円換算した金額となります。 2 収入すべき日 定期預金の利子については、それぞれ次に掲げる事由に応じ、それぞれに記載する日に収入認識すべきこととされています。 3 外国税額の取扱い 支払われる利子について、外国において所得税が源泉徴収されている場合は、個人の申告上、外国税額控除の適用を受けることにより、二重課税を排除することが可能です。 外国税額控除の適用に当たっては、国外所得の計算を行い、その限度額の範囲内での控除が可能です。また、確定申告書に一定の書類の添付が必要となります。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第36回】 「継続的取引の基本となる契約書③(単価決定通知書)」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 当社は製造業者です。下記「単価決定通知書」は、製造委託基本契約を取り交わしている下請業者に対して、あらかじめ協議のうえ決定した単価を通知するために作成する文書ですが、課税文書に該当しますか。 継続して行う請負契約に係る加工単価を定める文書であるため、第2号文書(請負に関する契約書)と第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当する。なお、この場合は契約金額の記載がないため、通則3のイの規定により第7号文書に該当する。 [検討1] 「単価決定通知書」は印紙税法上の契約書に該当するか 「通知書」という連絡文書のような名称であっても、印紙税法上の「契約書」とは、名称のいかんを問わず、契約の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実を証すべき文書をいい、当事者の一方のみが作成する文書であっても、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を称することとされているものを含むものとされている(通則5)。 事例の場合は、当事者間において協議のうえ、加工単価を決定したことが明らかであり、第2号文書及び第7号文書の重要事項である「単価」を補充した文書に該当することから、印紙税法上の契約書に該当する。 [検討2] 第2号文書と第7号文書に該当した場合は 第2号文書と第7号文書に該当した場合、通則3のイ規定を図示すると下記のとおりであり、原則は第2号文書に該当するが、契約金額の記載のない場合は第7号文書に該当する。したがって、事例の場合は、契約金額の記載がないため第7号文書に該当する。 ▷ まとめ (了)
包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第23回】 「実質主義④」 公認会計士 佐藤 信祐 前回までは、実質主義に対する主要な裁判例について解説を行った。その結果、法的実質主義は認められるものの、経済的実質主義を認めるべきではないと考えられる。 本稿では、法的実質主義の範囲内で、実務上、どのように適用されるのかについて解説を行うこととする。 6 実質主義の実務への適用 (1) 基本的な考え方 前回までで解説したように、現行法上、実質主義の適用は法的実質主義の範囲内に留まり、経済的実質主義は適用されないと考えられる。 法的実質主義が適用される場合には、形式的な法律関係ではなく、真実に存在する法律関係に即して課税関係が検討されることになる。その典型的なものは、実質所得者課税の原則(所法12、法法11、地法24の2、72の2の3、294の2の2)が挙げられる。 さらに、租税回避として否認される可能性が高いものとして、通謀虚偽表示(民法94)や仮装行為が考えられる。裁判例においても、これらについて争われたものも少なくない。 例えば、名義株に関する通達として、法人税基本通達1-3の2-1にて、「法第2条第12号の7の5《支配関係》の規定の適用上、一の者と法人との間に当該一の者による支配関係があるかどうかは、当該法人の株主名簿、社員名簿又は定款に記載又は記録されている株主等により判定するのであるが、その株主等が単なる名義人であって、当該株主等以外の者が実際の権利者である場合には、その実際の権利者が保有するものとして判定する。」とされたうえで、「同条第12号の7の6《完全支配関係》の規定の適用上、一の者と法人との間に当該一の者による完全支配関係があるかどうかについても、同様とする。」とされている点には留意が必要であろう。 グループ法人税制外しとして、1%だけグループ外の者に保有させるといった手法が可能かどうかという議論はあるが、租税回避という議論以前に、名義株として事実認定により否認がなされる可能性は考慮する必要があろう。 税務調査では、実際に株式を取得した時点におけるお金の動きについてまで調査の対象となり、名義株であったか否かが議論される可能性があるという点に留意が必要である。 (2) 具体的な検討 さらに、佐藤信祐『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』32頁(中央経済社、平成21年)では、①株主名簿における株主と実際の所有者が異なる場合、②非適格分割による分割承継法人に移転したことになっている不動産が、実際には移転したものと認められない場合、③経営参画要件(特定役員引継要件)の判定において、被合併法人から引き継いだ特定役員が、合併法人において特定役員としての実態を備えていない場合の3つについて、形式的な事実関係と真実の事実関係が異なるものとして否認される可能性があると記載した。 このうち、①②については異論がないところだと思われる。これに対し、③についてはヤフー事件もあったことから、やや実務では議論がなされているところである。 実務上は、名ばかり役員は否認される可能性が高いことは言うまでもない。しかし、ヤフー事件では、名ばかりかどうかは不明であるが、表見代表取締役に該当する副社長であったことから、事実認定による否認が困難であり、包括的租税回避防止規定が適用されたものと考えられる(※)。そうなると、専務取締役、常務取締役が名ばかり役員であったとしても、事実認定による否認がどこまで可能なのかは学術的には疑問のあるところである。 (※) 佐藤信祐「経営参画要件の判定」税務QA2013年4月号22-25頁(平成25年) 平成17年改正前商法であれば、専務取締役、常務取締役も表見代表取締役であったことから、学術的には、法的実質主義では否認できず、経済的実質主義にまで踏み込まざるを得ないのではないかという疑問も存在する。 さらに、同書23-24頁で指摘した株式継続保有要件についての議論も問題となる。同書では、被合併法人の株主が48人である場合において、事前に株主数を増加させ、被合併法人の株主が50人以上であるという外観を作ったときに、実質主義により株主が50人未満であるという否認が可能かどうかについて検討した。 当時は、「税務調査においては、株主名簿における記載状況のほか、株式譲渡契約書の約定日、株券の引渡状況、代金支払状況の有無を確認することにより、実質的に引き渡しがなされていたか否かを判断することになると思われる」と記載させていただいた。この範囲内であれば、法的実質主義の範囲内であり、株券が引き渡されていなかったり、代金の支払いが予定されていなかったりすれば、否認される可能性は十分に考えられる。 しかし、「法形式ではなく、経済的実質を重視する見地からは、株券の引渡しや代金の支払いが行われていたとしても、①株主としての権利を行使することが可能な状態にあったのか否か、②Y氏、Z氏が交付を受けた合併法人株式をX氏に譲渡することにより、合併前に株式譲渡を行わなかった場合と同様の結果になっているか否かなども判断材料になってくると考えられる。」と記載させていただいた。 実務上は、株主としての権利を行使することができなければ、譲渡人と譲受人との間に何らかの合意があったと推認されるため、単なる名義株であるという疑いは生じてくるであろう。すなわち、譲渡代金が授受されていたとしても、将来の買戻しのための預り金という認識を当事者が有している場合も考えられる。さらに、被合併法人の株主になっておきながら、合併後にすぐに譲渡人に取得価額で買い戻させれば、やはり名義株であるという疑いは生じてくるであろう。ただし、疑いはあくまでも疑いに過ぎないものであり、直接的な証拠にはなり得ない。実務上は、上記のような場合でも否認されると考えられるが、学術的に考えれば、他の証拠による補強が求められるところであろう。 このように、法的実質主義といっても、事実認定の問題であり証拠の積上げが重要であるという点に何ら変わりはない。すなわち、否認するための都合の良い事実関係の創造は法的実質主義の範囲を超えているものであり、あくまでも真実の事実関係を認定するための手法に過ぎないという点に留意が必要である。 次回以降では、私法上の法律構成による否認論について解説をしていく予定である。 (了)