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《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成26年10月~12月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成26年10月~12月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、平成26年6月23日、「平成26年10月から12月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加されたのは表のとおり、全14件の裁決である。今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部取り消された事例が10件、棄却又は却下された事例が4件であった。税法・税目としては、国税通則法が6件となっており、以下、法人税法関係が3件、所得税法関係が2件、相続税法関係、消費税法関係及び印紙税法関係が各1件であった。 【公表裁決事例平成26年10月~12月の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された14件の裁決事例のうち、注目される事例を紹介したい。なお、毎回のことであるが、論点を簡素化するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。   1 更正又は決定等(更正決定通知における処分の理由)・・・① (1) 争点 審査請求における争点は次のとおりであり、収益の帰属が最大の争点であり、それに付随する形で、推計課税の合理性や隠ぺい又は仮装した事実があったかが争点となっていた。 (2) 審判所の判断 これらの争点のうち、収益の帰属等について、審判所は以下のように判示して、原処分が適法であるとした。 その一方、請求人が主張していない「青色取消処分」について、処分そのものは適法であるとしたものの、原処分庁は、青色取消処分に伴い、青色欠損金の繰越控除が適用されないことから、控除金額を所得金額に加算して更正処分を行っているが、その理由を示していないことが認められるとした。 これに対し、原処分庁は、以下のとおり主張した。 しかし、審判所は、行政手続法第14条第1項本文の趣旨を説示したうえで、更正処分をする際は当該更正通知書自体に処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという法の要求にかなう程度に理由を示す必要があるというべきであるから、理由の提示に不備があったとの判断が妨げられることはないと結論づけた。   2 調査手続(事前通知)・・・⑥ (1) 争点 争点は次の4つであるが、本稿では、これらのうち、①の「調査手続に処分を取り消すべき程度の違法事由があったか否か」について、審判所の判断を確認したい。 (2) 事前通知が行われたか否かの判断 原処分庁の「平成24年分の所得税の調査は、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査に該当し、平成23年法律第114号附則第39条第3項により通則法第74条の9第1項の適用はない」という主張に対して、審判所は、「調査は、納税義務者について税目と課税期間によって特定される納税義務に関してなされるものである」として、「請求人に対する平成24年分の所得税の調査は、独立した一の調査となり、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査には該当」しないとして、これを斥けた。 一方、請求人の主張に対しても、「調査担当職員は、通則法第74条の9第1項に基づく事前通知である旨を明示的に通知することなく、請求人と電話による応答を行い、請求人の事務所に臨場していることが認められる」とはしたものの、「調査担当職員は通則法に規定する事前通知事項のうち、調査の対象税目及び調査の対象期間に加えて、調査の開始時期、調査の場所、調査の目的及び調査の対象となる帳簿書類を請求人に対し通知していると認められ」るとして、請求人の主張には理由がない、と判断した。 (3) 調査理由の開示 上記(2)に加えて、請求人は、調査理由の説明を求めたにもかかわらず、調査担当職員が具体的な調査理由を説明しなかったことは違法であるという主張をしたが、審判所は、「税務職員が調査に際し、納税者に対して具体的な調査理由を開示することは法律上の要件とされて」いないこと、「質問検査権に基づいて行う税務調査は適正な租税負担の実現のために行うものである」から、過少申告の疑いが明らかでない場合でも、「申告の真実性や正確性を確認するために行い得ると解するのが相当である」としたうえで、「調査担当職員は、調査に当たり、申告内容の確認のための調査である旨を請求人に通知していると認められるから、それ以上の具体的な調査理由の開示がなかったとしても、本件調査が違法となるものではない」と判断している。   3 仕入税額控除(課税仕入れ等の経費区分)・・・⑬ (1) 争点 大きな争点としては、請求人が締結した賃貸借契約が、「賃貸借期間の中途において解除をすることができないもの」又は「これに準ずるもの」に該当するとした場合(争点②)には、売買があったものとされるリース取引に該当することとなるが、その課税仕入れの用途区分が非課税売上にのみ要するものか否か(争点③)であった。 審判所は、請求人の事由により解約する場合の条件等の定めがない賃貸借契約(裁決中では「L契約」)については、法人税法第64条の2第3項第1号の規定に該当すると認定したうえで、個別対応方式の計算上、非課税売上(具体的には住宅の貸付け)のみに要する課税仕入れに区分すべきであるという原処分庁の主張を斥けた。 (2) 審判所の判断 請求人が営む老人ホーム事業について、審判所は以下のように認定した。 そのうえで、結論として、本物件の「リース取引に係る課税仕入れについての個別対応方式の適用に当たって、その課税仕入れの用途区分については、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れに区分するのが相当である」としている。 (了)

#No. 126(掲載号)
#米澤 勝
2015/07/03

《速報解説》 東京国税局より「所得拡大促進税制」に関する文書回答事例が公表~出向者に係る給与負担金の取扱いについて確認~

 《速報解説》 東京国税局より「所得拡大促進税制」に関する文書回答事例が公表 ~出向者に係る給与負担金の取扱いについて確認~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成27年7月1日、国税庁ホームページにおいて「租税特別措置法第42条の12の4の適用における給与負担金の取扱いについて」(東京国税局・事前照会に対する文書回答事例)が公表された。 本件は、適用法人(事前照会者)が出向者を受け入れている場合において、その出向者が出向元において雇用保険の一般被保険者に該当するときには、その出向者に係る給与負担金を平均給与等支給額(及び比較平均給与等支給額)の算定基礎となる「継続雇用者給与等支給額(及び継続雇用者比較給与等支給額)」に含まれると解してよいか、という事前照会に対し、その通り解して差し支えないとの回答を得た事例である。 そこで本稿では、この文書回答事例のポイントについて解説を行う。 ただし、本事例は平成27年3月期の法人税申告に係る取扱いに対するものであり、平成27年度税制改正前の規定によっていることに留意されたい(以下の参照条文は当時のものである)。   2 制度の概要と適用要件(平成27年度税制改正前) 所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)は、以下の3つの要件を満たす場合に、雇用者給与等支給増加額の10%相当額を法人税額から控除することができるというものである(ただし法人税額の10%〈中小企業者等は20%〉を限度とする。措法42の12の4①)。 平均給与等支給額は、適用年度の継続雇用者給与等支給額(雇用者給与等支給額のうち、雇用保険一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限り、継続雇用制度適用対象者に対して支給したものを除く)を、給与等月別支給対象者の合計数で除して算定される(措法42の12の4②六、措令27の12の4⑫⑬)。 この制度の適用対象となる「雇用者給与等支給額」に関し、出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金を支出する場合において、その出向者が出向先法人の賃金台帳に記載されているときには、その給与負担金は出向先法人の「雇用者給与等支給額」に含まれる(措通42の12の4-3)。   3 事前照会の要旨 本照会は、所得拡大促進税制の適用を受ける法人(適用法人)が出向者を受け入れている場合において、「継続雇用者給与等支給額」の算定対象として、出向元法人において雇用保険一般被保険者とされている者を含めて計算すると解してよいかを確認するものである。   4 東京国税局からの回答(H27.6.17 東京国税局審理課長)   5 事前照会に係る取引等の事実関係   6 事前照会者の求める見解の内容及びその理由   7 筆者補足(一般被保険者に限定した趣旨について) 制度創設当初、平均給与等支給額は、雇用者給与等支給額から「日雇い労働者に係る給与等支給額を控除した額」に基づき算定されていた。しかしこの計算によると、月給の高い社員が退職する一方で新入社員を採用する場合など、構造的に平均給与が引き下がる場合に適用要件を満たすことができないといった問題が指摘されていた。 そこで、平成26年度の税制改正において、「一人当たりの給与等支給額」をより適切に算定するために、「継続雇用者に対する給与等支給額(継続雇用者給与等支給額)」を対応する支給人員数で除して計算することとされたのである。 継続雇用者(2期にわたり給与等の支給を受けている者)という概念を導入することによって、前期比較可能な国内雇用者のみが集計されることとなり、1人当たりの給与等支給額が前期に比べて増加しているかどうかの適切な判断が可能となった。 さらに、継続雇用者に対する給与等支給額のうち、雇用保険一般被保険者に該当する者に対する支給額のみを集計することとしたのは、一般被保険者の要件を満たす程度の継続的な雇用関係が存在する者のみを対象とすることで、一人当たり給与等支給額の増加の有無をより一層適切に判断し、本税制の制度趣旨(個人の可処分所得の増加を通じた経済活性化へのインセンティブ付与)を踏まえた一層適切な運用が可能となる、との思考によるものと考えられる。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 126(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/07/02

プロフェッションジャーナル No.126が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年7月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.126が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/07/02

monthly TAX views -No.30-「再開する政府税調-『配偶者控除』議論の行方」

monthly TAX views -No.30- 「再開する政府税調-『配偶者控除』議論の行方」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   7月から政府税制調査会が再開される。最近ではすっかり影の薄くなった政府税制調査会だが、来年夏までに策定される「中期答申」に向けて、わが国経済社会の課題を正面から受け止める税制議論を期待したいところである。 30日に公表された「骨太の方針」には、「人口動態、世帯構成、働き方・稼ぎ方など、経済社会の構造が大きく変化する中、持続的な経済成長を維持・促進するとともに、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般にわたるオーバーホールを進める。」と記載されている。 また、とりわけ所得税について、「今後の改革の中心となる個人所得課税については、税収中立の考え方を基本として、総合的かつ一体的に税負担構造の見直しを行う。」と記している。 抜本的な議論を行う中で、来年度改正としては、配偶者控除の取り扱いが大きな課題となる。 筆者は、10年ほど前から、配偶者控除を廃止して、児童税額控除のような子育てに重点を置く給付付き税額控除を創設することを主張してきた(『給付つき税額控除-日本型児童税額控除の提言』中央経済社、2008年)。 しかしそれには時間がかかるので、当面の解決策として、「移転的基礎控除」に代えることも提言してきた(『税で日本はよみがえる-成長力を高める改革』日本経済新聞出版社、2015年)。 一方、政府税制調査会は、昨年11月に、「働き方の選択に対して中立的な税制の構築をはじめとする個人所得課税改革に関する論点整理」と題する第1次レポートを公表した。その中には、「移転的基礎控除」の考え方(選択肢B)や、「税額控除」の考え方(選択肢B-2)も取り入れた3つの案が明記されている。 最近の与党や税制当局から受ける印象では、配偶者控除を「移転的基礎控除」に代える考え方は、配偶者が65万円から141万円までの所得の場合には(わずかではあるが)増税になることから、あまり評判がよくないようだ。 今後の政府税制調査会の議論は、選択肢Cである「夫婦世帯を対象とする新たな控除の導入」を中心にして議論されることになると思われる。 筆者も、新たに若い世代の結婚や子育てに配慮する観点から、新たな控除を創設することは基本的に賛成である。しかし課題もある。 第1に、それは所得控除なのか税額控除なのか、という点である。 先述の第1次レポートには、選択肢Bとしての税額控除化は明確になっているが、選択肢Cとしての税額控除化は明確にされていない。 本格的に所得再分配機能の強化を目指すというなら、所得控除ではなく税額控除にすることが望ましい。 第2に、当面は「配偶者控除」の取り扱いが議論になるが、いずれ基礎控除や扶養控除などの所得控除も議論の対象にならざるを得ない。オランダの2001年の税制改革は、それらを含めて税額控除にして、さらに夫婦間で移転できるようにした。 オランダは、同一労働・同一賃金という政策を中心に据えつつ、上述した所得税の抜本改革によって、1.5人型経済、ワークライフバランスの経済社会を作り上げた。 ここから得られる教訓は、きわめて多い。 (了)

#No. 126(掲載号)
#森信 茂樹
2015/07/02

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第3回】「欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第3回】 「欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   ③ 新設法人 連結親法人の設立の日(注1)から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する連結事業年度(注2)については、連結欠損金の控除限度額を連結所得金額の100%とする。 ただし、連結親法人が次に掲げる法人に該当する場合は除かれる。 (注1) 連結親法人が次の各号に掲げる法人に該当する場合には各号に掲げる法人の区分に応じ各号に定める日とし、連結親法人が各号のうち2以上の号に掲げる法人に該当する場合には2以上の号に定める日のうち最も早い日とする。 (※1) その他財務省令で定める法人は、本稿執筆日時点において定められていない。 (※2) その他財務省令で定める日とは、本稿執筆日時点において定められていない。 (注2) 次に定める事由が生じた場合には、その事由が生じた日以後に終了する連結事業年度を除く。 ⅰ 連結親法人の発行する株式等が金融商品取引所等に上場されたこと ⅱ 連結親法人の発行する株式等が店頭売買有価証券登録原簿に登録されたこと ◆ケーススタディ◆ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 126(掲載号)
#足立 好幸
2015/07/02

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第1回】「オープンイノベーション型の強化」

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第1回】 「オープンイノベーション型の強化」   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   1 はじめに 法人税改革が中心となった平成27年度税制改正では、租税特別措置についても一部見直しが行われ、研究開発税制に関してはオープンイノベーションの取組みを加速させることを目的とした改正がなされた。 本連載では本改正について解説するとともに、改正後のオープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)の要件等について確認していきたい。 第1回となる今回は、改正内容の確認を行う。   2 制度概要 今一度、研究開発税制について確認しておきたい。 研究開発税制とは、青色申告の法人・個人が、所得の計算上損金の額に算入される一定の試験研究費の額がある場合、その事業年度の法人税額・所得税額(国税)から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じて計算した金額を控除できる制度であり、下図のように恒久的措置である【総額型】と平成28年度までの時限措置である【増加型】【高水準型】からなる。また【総額型】には中小企業者等の特例措置(中小企業技術基盤強化税制)及びオープンイノベーション型の特例措置がそれぞれ設けられている(関連法令等については論末参照)。 ここでオープンイノベーション型が適用される特別試験研究費とは、国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究、国の試験研究機関、大学又は中小企業者に委託する試験研究のうち一定のものをいう(詳細は次回参照)。 《平成27年度税制改正前の制度概要》 (※) 経済産業省「平成27年3月までの制度概要」より   3 今回の改正内容 税額控除限度額の上限を当期法人税額の30%(措法42条の4の2)とする措置が適用期限(平成27年3月31日)をもって廃止され、新たに次の措置により、税額控除限度額の上限の総枠を当期法人税額の30%とすることとされた。 この改正は平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用される。 (1) 総額型の税額控除限度額 『試験研究費の総額に係る税額控除制度』及び『中小企業技術基盤強化税制』の税額控除限度額の上限を当期法人税額の25%とし、これらの税額控除額の計算における『試験研究費の額』には特別試験研究費を含まないこととする。 改正法を確認すると以下のとおりである。 旧措法42条の4第1項では税額控除限度額を20%(平成27年3月31日までは30%)としていたが、改正後の規定により25%に改められた。 旧措法42条の4第2項では税額控除限度額を20%(平成27年3月31日までは30%)としていたが、改正後の規定により25%に改められた。 (2) 特別試験研究費の額に係る税額控除制度 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)について、以下の見直しが行われた。 ① 税額控除率について 改正前の税額控除率12%について、特別試験研究機関等(国の試験研究機関や大学など)との共同、または同機関等への委託をする場合には特別試験研究費を30%の税額控除対象とし、それ以外の特別試験研究費の額は20%とする。 ② 税額控除限度額について (1)とは別枠で、特別試験研究費に係る税額控除限度額を5%とする。 ③ 総額型との併用適用 改正法(後掲)において「・・・特別試験研究費の額(当該事業年度において前二項の規定の適用を受ける場合には・・・金額の計算の基礎となった特別試験研究費の額を除く。・・・)」と規定されていることから、一の特別試験研究費の額について総額型とイノベーション型の併用は認められていない。 ④ 範囲の見直し(旧措法42条の4の2) 平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度で試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の控除限度額を20%ではなく30%にする規定であったが、改正後の控除限度額の総枠を30%(総額型25%、イノベーション型5%)にすることから適用期限の到来をもって廃止された。 ①から④について、改正法を確認すると以下のとおりである。 《改正後のイメージ図》   (3) 繰越(中小企業者等)税額控除限度超過額に係る税額控除制度の廃止 適用期限の平成27年3月31日をもって、繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度を廃止する。 改正法を確認すると以下のとおりである。   (1)から(3)の改正事項をまとめると、下図のとおりである。 《研究開発税制全体における平成 27 年度改正の概要》 (※) 経済産業省「研究開発税制の改正(概要)」より   4 平成27年度改正前後の比較表 3の改正事項について、改正前後を比較すると下表のとおりである。 改正後の本制度の全体像は以下のとおりである。 《平成27年度税制改正後の制度概要》 (※) 経済産業省「平成27年4月以降の制度概要」より   *  *  * 次回は、控除枠が拡充されたオープンイノベーションの要件や適用にあたっての注意点及び税制改正により新たに適用できる企業の可否について解説をする予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#吉澤 大輔
2015/07/02

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第2回】「付加価値額の計算と平成27年度税制改正」

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項 ~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第2回】 「付加価値額の計算と平成27年度税制改正」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   前回(第1回)の記事では、法人事業税は「応益課税」の考え方に基づき課される地方税であり、行政サービスの受益規模を「所得」以外の指標に求める必要性が高まってきたこと等を踏まえ、平成15年度の税制改正において「付加価値額」及び「資本金等の額」を課税標準とする事業税(外形標準課税)が導入されたことを説明した。 この点に関し、下記リンクのとおり、平成27年7月1日、東京都における法人事業税の超過税率を定める条例が公布され、平成28年4月1日以後開始事業年度において適用される税率が明らかにされたので、あわせて参照されたい。 第2回(本稿)では、外形標準課税の概要、付加価値額の算定方法、及びこれに係る平成27年度の税制改正の内容(事業税における所得拡大促進税制)について解説を加えることとする。   1 法人事業税の種類と外形標準課税の適用対象法人 法人事業税には、所得割、付加価値割、資本割、及び収入割の4種類があり、「外形標準課税」というと一般的には「付加価値割」及び「資本割」のことを指す。 事業税の適用関係は、まず法人の営む「事業」による区分を行い、その次に「法人」の区分に従って、課される事業税の種類が決定されるという構造になっている(地法72の2①)。 具体的には下表のように決定される。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 以上の結果、外形標準課税が適用されるのは、 ということになる(地法72の2①一イ)。そして、資本金額又は出資金額の判定は各事業年度終了の日の現況によるものとされる(地法72の2②)。   2 付加価値割の課税標準となる付加価値額 付加価値割の課税標準となる各事業年度の付加価値額は、各事業年度の報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額(以下「収益配分額」という)と各事業年度の単年度損益(繰越欠損金控除前の法人税の課税所得)との合計額による(地法72の14)。なお、付加価値額の合計額がマイナスとなる場合には、ゼロとされる(下図参照)。 外形標準課税の導入検討時、政府税制調査会の中間答申(平成12年7月)において、望ましい外形基準として の4つが提示され、その中でも①事業活動価値は、法人の人的・物的活動量を客観的かつ公平に示すと同時に、各生産手段(労働・資本財・土地等)の選択に関し中立的であることや、課税ベースが広く安定的であること等、「外形基準としては理論的に最も優れた特徴を有している」とされている(※)。この事業活動価値が、現行制度の「付加価値額」の考え方の基礎となっている。 (※) 政府税制調査会「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-」(平成12年7月)p.207 以下、それぞれの要素について説明していく。 (1) 報酬給与額 ① 原則的取扱い 報酬給与額は、次の(ア)及び(イ)の額のうち、原則として、その事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものの合計額である(地法72の15①)。 以上要するに、報酬給与額は、所得税において給与所得又は退職所得とされるものであって、原則として各事業年度において法人税の所得金額の計算上損金の額に算入されるものに限られるということである。 ② 派遣労働者に対する取扱い 労働者派遣契約に基づき労働者派遣の役務の提供を受けている場合、労働者派遣契約料として労働者派遣をした者に支払う金額の75%を報酬給与額に加算する。一方、労働者派遣の役務を提供している者においては、報酬給与額から労働者派遣の対価として労働者派遣の役務の提供を受けたものから支払を受ける金額の75%を控除する(地法72の15②)。 これは、派遣元に支払う金額には、派遣元の利潤相当額が含まれているとの考え方から、原価相当額として支払金額の75%相当額を報酬給与額として取り扱うこととしたものである。 なお、報酬給与額の算定に関する具体的取扱いについては、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)第3章 事業税」(以下「事業税取扱通知」という)[4の2の1]から[4の2の16]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (2) 純支払利子 純支払利子は、各事業年度の支払利子の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものに限る)の合計額から、各事業年度の受取利子の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものに限る)の合計額を控除した金額による(地法72の16①)。 なお、純支払利子の算定に関する具体的取扱いについては、事業税取扱通知の[4の3の1]から[4の3の11]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (3) 純支払賃借料 純支払賃借料は、各事業年度の支払賃借料の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものに限る)の合計額から、各事業年度の受取賃借料の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものに限る)の合計額を控除した金額による(地法72の17①)。 ここで「支払賃借料」とは、法人が各事業年度において土地又は家屋(これらと一体となって効用を果たす構築物及び附属設備を含む)の賃借権、地上権、永小作権その他の土地又は家屋の使用又は収益を目的とする権利で、その存続期間が1月以上であるもの(以下「賃借権等」という)の対価として支払う金額をいう(地法72の17②)。 なお、純支払賃借料の算定に関する具体的取扱いについては、事業税取扱通知の[4の4の1]から[4の4の8]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (4) 雇用安定控除 報酬給与額が収益配分額の70%を超える場合、その超える部分を付加価値額から控除する(地法72の20①)。これを「雇用安定控除」という。 報酬給与額(を含む収益配分額)と単年度損益との間には、収益配分額を減少させれば単年度損益が増加するという関係がある。つまり、報酬給与額を減少させても単年度損益が増加するだけで、全体としての付加価値額には影響しないのである。 この点、雇用安定控除は、報酬給与額を引き下げるとむしろ付加価値額が増加するという仕組みを整えることによって、安易な報酬給与額の引下げを防止することを目的とするものである。「雇用安定控除」という用語は、この趣旨から導かれるものである。   3 平成27年度税制改正(事業税における所得拡大促進税制の導入) (1) 改正の趣旨 平成27年度の税制改正によって、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)の適用要件がさらに緩和され、制度の一層の利用促進が期待されるところである。賃上げに基因する個人の可処分所得の増加が個人消費や個人投資の拡大につながり、ひいてはわが国の経済活性化に資するという流れを早期に確立したいという趣旨が垣間見える。 しかしながら、所得拡大促進税制を適用することによる雇用者給与等支給額の増加は、外形標準課税における付加価値額(報酬給与額)の増加をもたらすのである。法人税では減税メリットがあるが、事業税負担が増加することによって、全体としての減税幅が縮小してしまうという問題点が指摘されていた。 そこで、平成27年度の税制改正では、所得拡大促進税制の適用を受ける法人に対し、事業税付加価値割の計算上、一定の調整を加えた雇用者給与等支給増加額を付加価値額から控除することとされた(地法附則9⑬)。 (2) 適用時期 平成27年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。 (3) 用語の定義 租税特別措置法に規定されている定義をそのまま用いており、事業税固有の定義はない。 (4) 適用要件 法人税における所得拡大促進税制の適用要件と同様である。すなわち以下の3つの要件をすべて満たす必要がある。 (※) 「増加促進割合」という用語は平成27年度税制改正で創設されたものであり、内容は以下の通りである(地法附則9⑮)。 ・平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する適用年度:3% ・平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する適用年度:4% ・平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する適用年度:5% (5) 控除額の計算 以下の算式によって計算された金額を、付加価値額の金額から控除する。 このような調整が入るのは、雇用者給与等支給増加額を報酬給与額から直接控除してしまうと、上記2(4)で述べたように、雇用安定控除が縮小し付加価値額がむしろ増加するという計算構造になっているためである。 上の計算式によって計算された控除額は、雇用安定控除の次の行で控除されることとなる。 (6) 適用上の留意点 ① 課税標準の調整計算であること 法人税(租税特別措置法)における所得拡大促進税制は「税額控除」であるのに対し、事業税における所得拡大促進税制は「課税標準の減額調整」である。 そのため、法人税で税額控除が発生しない場合であっても、適用要件を満たしている以上、事業税における所得拡大促進税制の適用が可能である(付加価値額から控除できる)点、留意が必要である。 ② 連結法人は単体ベースで適用要件を判断することとなること 連結納税制度の適用を受ける法人については、所得拡大促進税制は連結グループ全体で適用要件の充足を判定することとなる(措法68の15の5)が、事業税における所得拡大促進税制は単体法人への適用となることから、適用要件も各連結法人が単体で判断することとなる。 そのため、連結グループ全体としては適用要件を満たさず、連結法人税について所得拡大促進税制を適用できない場合であっても、各連結法人が単体で適用要件を満たしている場合、事業税において所得拡大促進税制の適用は可能である点、留意が必要である。 ③ 当初申告要件なし 法人税(租税特別措置法)における所得拡大促進税制では当初申告要件があり、控除税額は、確定申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額を上限とする(措法42の12の4④)が、事業税における所得拡大促進税制には当初申告要件は付されていない。 そのため、確定申告時に適用を失念した場合であっても、更正の請求が可能である点、留意が必要である。 *  *  * 次回は資本割の算定、「資本金等の額」に係る平成27年度の税制改正の内容、及び事業税の負担軽減措置について解説する予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/07/02

ふるさと納税(平成27年度税制改正対応)のポイント 【第2回】「軽減される税額の計算例」

ふるさと納税(平成27年度税制改正対応)のポイント 【第2回】 「軽減される税額の計算例」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   【1】 税の軽減額の計算 (1) 所得税及び復興特別所得税の軽減額 ⇒ 平成27年分の所得税及び復興特別所得税が軽減される。 課税総所得金額:4,260,000-{2,000,000+(50,000-2,000)}=2,212,000円 課税総所得金額195万円超330万円以下に適用される所得税の税率は10%なので、所得税及び復興特別所得税の軽減額は次の通りとなる。 軽減額:(50,000-2,000)×10.21%(*1)=4,900円 (*1) 10.21%=10%(所得税)+0.21%(復興特別所得税)(*2) (*2) 0.21%=所得税率10%×2.1% (2) 住民税の軽減額 ⇒平成28年度分の住民税が軽減される。 住民税の軽減額は、基本控除額に特例控除額を加算した額となる。 ① 基本控除額 (50,000-2,000)×10%=4,800円 ② 特例控除額 (50,000-2,000)×79.79%(*3)=38,300円 (*3) 特例控除額の割合(再掲) (※) 復興特別所得税も考慮した割合 特例控除額には上限が設けられており、平成28年度分以降は、住民税所得割の20%相当額(平成27年度分までは10%相当額)が限度となる。 特例控除額の限度額:226,000(*4)×20%=45,200円 (*4) 226,000=住民税所得割:(4,260,000-2,000,000)×10% 本ケースの特例控除額は38,300円であり、限度額(45,200円)以下であるため、38,300円全額が軽減の対象となる。 (3) 税の軽減額の合計((1)+(2)) 4,900+4,800+38,300=48,000円(*5) (*5) 48,000円=ふるさと納税の額50,000円-2,000円   (1) 所得税及び復興特別所得税の軽減額 ⇒平成27年分の所得税及び復興特別所得税が軽減される。 課税総所得金額:4,260,000-{2,000,000+(100,000-2,000)}=2,162,000円 課税総所得金額195万円超330万円以下に適用される所得税の税率は10%なので、所得税及び復興特別所得税の軽減額は次の通りとなる。 軽減額:(100,000-2,000)×10.21%=10,005円 (2) 住民税の軽減額 ⇒平成28年度分の住民税が軽減される。 ① 基本控除額 (100,000-2,000)×10%=9,800円 ② 特例控除額 (100,000-2,000)×79.79%=78,195円>限度額45,200円 ∴ 45,200円 限度額(45,200円)を超えるため、特例控除額として軽減される住民税は45,200円となる。 (3) 税の軽減額の合計((1)+(2)) 10,005+9,800+45,200=65,005円 < 98,000円(*6) (*6) 98,000円=ふるさと納税の額100,000円-2,000円   【2】 ふるさと納税の額と税の軽減額との関係 給与所得426万円、ふるさと納税以外の所得控除の合計額200万円の場合に、ふるさと納税の額から2,000円を差し引いた額に相当する税の軽減を受けることができるのは、次の算式が成り立つときである。 この算式を満たすふるさと納税の額は58,648円である。ふるさと納税の額が58,648円を超えると特例控除額が上限の45,200円を超えてしまうため、ふるさと納税の額から2,000円を差し引いた額に相当する税の軽減を受けることができなくなる。 この算式を他の所得税の税率にも適用し、住民税所得割(A)とふるさと納税相当分(2,000円は除く)の税の軽減を受けることができる金額(以下「ふるさと納税の限度額」という)の関係を表にすると、次の通りとなる。 (※) ふるさと納税をした人の課税総所得金額に適用される最も高い所得税の税率 毎年の所得金額や所得控除の内容に大きな変化がない場合には、住民税の課税通知書の課税標準額と住民税所得割の金額を上表にあてはめることにより、ふるさと納税の限度額の目安を計算することができる。 また、総務省のホームページ等にもふるさと納税の限度額の目安を知るための各種の表やシートが公開されているので、簡易的な計算をするときにはそれらを利用することもできる。 【参考図】 課税総所得金額に対する所得税の税率 (了)

#No. 126(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/07/02

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第9回】「金銭又は有価証券の受取書③(受取金額の一部に売上代金を含む受取書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第9回】 「金銭又は有価証券の受取書③(受取金額の一部に売上代金を含む受取書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   不動産業を行っています。 家賃と敷金を受け取った際に領収書を発行しましたが、印紙税額はいくらですか。   第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当し、記載金額6,000,000円、印紙税額2,000円となる。   [検討] 受取金額の中に売上代金と、売上代金以外の受取が記載された受取書の場合で、受取金額が合計で記載されている場合と、区分記載されている場合について検討する。 (1) 敷金と家賃の受取金額が合計で記載されている場合 敷金は賃貸物件に入居する際に借主が賃貸人に預けておく金銭であり、地域によっては保証金とも言われているが、退去する際には原則として借主に返還されることとなり、売上代金には該当しない。また、家賃については不動産業を営む者が、資産を使用させることの対価として受領するものであることから、売上代金に該当する。 ここで、事例のように敷金と家賃の受取金額が合計で記載されている場合は、受取書の金額が売上代金に係る金額とその他の金額とに区分することができないため、その受取金額合計が売上代金として受取書の記載金額となる。(通則4のハ(2)) (2) 敷金と家賃の受取金額が区分記載されている場合 下記のように、売上代金に係る金額とその他の金額とに区分記載されている場合には、売上代金に係る金額がその受取書の記載金額となる。(通則4のハ(1)) 第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当し、記載金額1,000,000円、印紙税額200円となる。 ▷ まとめ 受取金額の一部に売上代金を含む受取書及び受取金額の内容が明らかにされていない受取書に係る取扱いは、次のとおりである。   ◆売上代金とは 資産を譲渡若しくは使用させること又は役務を提供することによる対価をいう。 ポイントは「対価性」を有するか、有しないかによって判定を行う。 印紙税法上における「売上代金」についてまとめると、以下のとおりである(第17号文書の定義)。 ◆売上代金に該当しないもの 本来的に売上代金に該当しないものと、売上代金に該当するが印紙税法上売上代金から除外しているものに区分される。 ポイントは、売上代金同様に売上代金は資産の譲渡等の対価をいうため「対価性」を有するか、有しないかにより判断する。主なものとしては以下のとおりである。 その他の例として、寄託物の受取、出資金等の受取、損害賠償金の受取、割戻金の受取等が売上代金に該当しないものとされる。 ◆売上代金から除外されるもの(株券の譲渡の対価等) 株券の譲渡の対価は、資産の譲渡の対価だが、印紙税法においては金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券の譲渡の対価は、売上代金から除くこととされている(第17号文書の定義欄1)。 (了)

#No. 126(掲載号)
#山端 美德
2015/07/02

租税争訟レポート 【第24回】「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京地方裁判所判決)〈前編〉」

租税争訟レポート 【第24回】 「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の 必要経費該当性(東京地方裁判所判決)」 〈前編〉   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   平成27年3月10日、最高裁判所は、馬券の的中による払戻金に係る所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、国税庁による「所得税基本通達」を否定する内容の判決を言い渡した。 この判決を受けて、国税庁は基本通達改正に向けた手続きに入っていた(「速報解説」参照)。 そうした中、最高裁判決とは別の課税処分等取消請求事件で、東京地方裁判所は、5月14日、最高裁判決とは異なる見解を示し、競馬所得を一時所得、総収入から控除する金額を的中した馬券に係る購入金額とすることが相当であるとして課税庁側勝訴の判決を言い渡した。 そして、判決から約2週間後である5月29日、パブリック・コメントを経て改正された所得税基本通達34-1が公表された。 本稿では、まず、〈前編〉として、東京地裁平成27年5月14日判決の概要を解説し、〈後編〉(次週公開)として、最高裁判決との相違点、最高裁判決から通達改正に至る手続きにおける問題点について、パブリック・コメントで寄せられた意見とこれに対する国税庁の考え方などを引用しながら、検討したい。   【事案の概要】 本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた原告が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長であった稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたため、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 なお、判決文中には、「類似事件」として、馬券の的中による払戻金を「雑所得」とし、外れ馬券の購入代金を必要経費とすることを認めた判決について、次のような説明がなされている。   【判示内容】 1 【争点①】 競馬所得の所得区分 (1) 被告(国)の主張 馬券購入行為は、客観的にみて継続的、安定的に収入を発生させ得る行為とはいえないから、「営利を目的とする継続的行為」とはいえず、これによって生じた馬券の的中による払戻金は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」である。 仮に馬券の的中による払戻金が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」になる余地があったとしても、原告と別件当事者とでは、馬券購入行為の態様に相違があるほか、原告が本訴訟において馬券購入行為の態様等を明らかにする客観的な資料の不存在を自認していることからすると、別件当事者の馬券の的中による払戻金とは異なり、原告の本件競馬所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」には当たらない。 (2) 原告(納税者)の主張 原告は、中央競馬における1年間のほぼ全てのレースにおいて、独自のノウハウに基づいて着順の予想をし、6年間にわたり、馬券を大量に機械的かつ継続的に購入しており、原告にとって馬券の購入は、遊興的、娯楽的性格を一切帯びるものではなく、専ら投資としての性質を有するものであり、多額の利益を上げていたことからすると、原告の馬券購入行為は、営利を目的とした継続的行為であり、それによって生じた本件競馬所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」といえる。 また、本件競馬所得は、原告独自のノウハウに基づく予測行為及び馬券購入行為という一連の行為(労務)の対価としての性質を有するから、「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」に該当しない。したがって、本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」ではなく、「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」でもないから、一時所得に該当せず、雑所得に該当する。 (3) 裁判所の判断 原告による馬券の購入は、原告の陳述によっても、レースの結果を予想して、予想の確度に応じて馬券の購入金額を決め、どのように馬券を購入するのかを個別に判断していたというものであって、その馬券購入の態様は、一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差があるものとは認められず、自動的、機械的に馬券を購入していたとまではいえないし、馬券の購入履歴や収支に関する資料が何ら保存されていないため、原告が網羅的に馬券を購入していたのかどうかを含めて原告の馬券購入の態様は客観的には明らかでないことからすると、原告による一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するというべきほどのものとまでは認められない。そうすると、本件競馬所得は、結局のところ、個別の馬券が的中したことによる偶発的な利益が集積したにすぎないものであって、営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当するということはできない。 別件最高裁判決がその理由中で説示するとおり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するものであるから、これらの事情が異なれば結論が異なるのが当然であるところ、原告は、別件当事者と同等以上の金額の馬券を購入し、同等以上の利益を得ていたものの、原告の具体的な馬券の購入履歴等が保存されていないため、原告が具体的にどのように馬券を購入していたかは明らかでなく、原告が別件当事者のように馬券を機械的、網羅的に購入していたとまでは認めることができないという本件の事実関係及び証拠関係の下では、原告による一連の馬券の購入が一体の経済的活動の実態を有するとまでは認めることができず、本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得には該当するものということはできない。 2 【 争点②】 外れ馬券の必要経費該当性 (1) 被告(国)の主張 本件競馬所得は雑所得ではなく一時所得であり、一時所得の総収入金額から控除されるのは「その収入を得るために支出した金額」に限られるところ、原告が当該払戻金を得るために支出したのは的中馬券の購入代金だけであるから、外れ馬券の購入代金は一時所得に係る総収入金額から控除されない。 仮に、本件競馬所得が雑所得に該当するとしても、外れ馬券の購入代金は、「総収入金額を得るため直接に要した費用」でも、「所得を生ずべき業務について生じた費用」でもないから、所得税法37条1項の規定する必要経費には算入されず、雑所得に係る総収入金額から控除されない。 (2) 原告(納税者)の主張 本件競馬所得は雑所得であるところ、原告が本件競馬所得を得るためには外れ馬券は必然的に生じるものであり、外れ馬券を含む購入した全馬券の購入代金が払戻金を得るために必要不可欠な支出であったといえるから、外れ馬券を含めた全馬券の購入代金が払戻金を得るために「直接に要した費用」に該当し、所得税法37条1項の規定する必要経費に算入され、雑所得に係る総収入金額から控除される。 仮に本件競馬所得が一時所得であったとしても、原告は、独自のノウハウに基づき、1年を通じて、機械的、継続的に大量の馬券を購入していたことからすると、1年間に購入した全ての馬券の購入代金が「その収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)」に該当するものとして、一時所得に係る総収入額から控除されることになる。 (3) 裁判所の判断 本件競馬所得を構成する収入は馬券が的中したことよる払戻金であるところ、原告による一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有するものとまでは認められず、馬券が的中したことによる払戻金に関して「その収入を生じた行為をするため直接要した金額」又は「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」は、結局のところ、当該払戻金に個別的に対応する馬券の購入代金、すなわち、的中馬券の購入代金ということになるから、一時所得である本件競馬所得に係る総収入金額から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られることになる。一方、当該払戻金に個別的に対応しない馬券の購入代金、すなわち、外れ馬券の購入代金は、何ら収入を発生させていない以上、一時所得である本件競馬所得に係る総収入金額からは控除されないことになる。 (次号に続く)

#No. 126(掲載号)
#米澤 勝
2015/07/02
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