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プロフェッションジャーナル No.126が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年7月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.126が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/07/02

monthly TAX views -No.30-「再開する政府税調-『配偶者控除』議論の行方」

monthly TAX views -No.30- 「再開する政府税調-『配偶者控除』議論の行方」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   7月から政府税制調査会が再開される。最近ではすっかり影の薄くなった政府税制調査会だが、来年夏までに策定される「中期答申」に向けて、わが国経済社会の課題を正面から受け止める税制議論を期待したいところである。 30日に公表された「骨太の方針」には、「人口動態、世帯構成、働き方・稼ぎ方など、経済社会の構造が大きく変化する中、持続的な経済成長を維持・促進するとともに、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般にわたるオーバーホールを進める。」と記載されている。 また、とりわけ所得税について、「今後の改革の中心となる個人所得課税については、税収中立の考え方を基本として、総合的かつ一体的に税負担構造の見直しを行う。」と記している。 抜本的な議論を行う中で、来年度改正としては、配偶者控除の取り扱いが大きな課題となる。 筆者は、10年ほど前から、配偶者控除を廃止して、児童税額控除のような子育てに重点を置く給付付き税額控除を創設することを主張してきた(『給付つき税額控除-日本型児童税額控除の提言』中央経済社、2008年)。 しかしそれには時間がかかるので、当面の解決策として、「移転的基礎控除」に代えることも提言してきた(『税で日本はよみがえる-成長力を高める改革』日本経済新聞出版社、2015年)。 一方、政府税制調査会は、昨年11月に、「働き方の選択に対して中立的な税制の構築をはじめとする個人所得課税改革に関する論点整理」と題する第1次レポートを公表した。その中には、「移転的基礎控除」の考え方(選択肢B)や、「税額控除」の考え方(選択肢B-2)も取り入れた3つの案が明記されている。 最近の与党や税制当局から受ける印象では、配偶者控除を「移転的基礎控除」に代える考え方は、配偶者が65万円から141万円までの所得の場合には(わずかではあるが)増税になることから、あまり評判がよくないようだ。 今後の政府税制調査会の議論は、選択肢Cである「夫婦世帯を対象とする新たな控除の導入」を中心にして議論されることになると思われる。 筆者も、新たに若い世代の結婚や子育てに配慮する観点から、新たな控除を創設することは基本的に賛成である。しかし課題もある。 第1に、それは所得控除なのか税額控除なのか、という点である。 先述の第1次レポートには、選択肢Bとしての税額控除化は明確になっているが、選択肢Cとしての税額控除化は明確にされていない。 本格的に所得再分配機能の強化を目指すというなら、所得控除ではなく税額控除にすることが望ましい。 第2に、当面は「配偶者控除」の取り扱いが議論になるが、いずれ基礎控除や扶養控除などの所得控除も議論の対象にならざるを得ない。オランダの2001年の税制改革は、それらを含めて税額控除にして、さらに夫婦間で移転できるようにした。 オランダは、同一労働・同一賃金という政策を中心に据えつつ、上述した所得税の抜本改革によって、1.5人型経済、ワークライフバランスの経済社会を作り上げた。 ここから得られる教訓は、きわめて多い。 (了)

#No. 126(掲載号)
#森信 茂樹
2015/07/02

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第3回】「欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第3回】 「欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   ③ 新設法人 連結親法人の設立の日(注1)から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する連結事業年度(注2)については、連結欠損金の控除限度額を連結所得金額の100%とする。 ただし、連結親法人が次に掲げる法人に該当する場合は除かれる。 (注1) 連結親法人が次の各号に掲げる法人に該当する場合には各号に掲げる法人の区分に応じ各号に定める日とし、連結親法人が各号のうち2以上の号に掲げる法人に該当する場合には2以上の号に定める日のうち最も早い日とする。 (※1) その他財務省令で定める法人は、本稿執筆日時点において定められていない。 (※2) その他財務省令で定める日とは、本稿執筆日時点において定められていない。 (注2) 次に定める事由が生じた場合には、その事由が生じた日以後に終了する連結事業年度を除く。 ⅰ 連結親法人の発行する株式等が金融商品取引所等に上場されたこと ⅱ 連結親法人の発行する株式等が店頭売買有価証券登録原簿に登録されたこと ◆ケーススタディ◆ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 126(掲載号)
#足立 好幸
2015/07/02

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第1回】「オープンイノベーション型の強化」

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第1回】 「オープンイノベーション型の強化」   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   1 はじめに 法人税改革が中心となった平成27年度税制改正では、租税特別措置についても一部見直しが行われ、研究開発税制に関してはオープンイノベーションの取組みを加速させることを目的とした改正がなされた。 本連載では本改正について解説するとともに、改正後のオープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)の要件等について確認していきたい。 第1回となる今回は、改正内容の確認を行う。   2 制度概要 今一度、研究開発税制について確認しておきたい。 研究開発税制とは、青色申告の法人・個人が、所得の計算上損金の額に算入される一定の試験研究費の額がある場合、その事業年度の法人税額・所得税額(国税)から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じて計算した金額を控除できる制度であり、下図のように恒久的措置である【総額型】と平成28年度までの時限措置である【増加型】【高水準型】からなる。また【総額型】には中小企業者等の特例措置(中小企業技術基盤強化税制)及びオープンイノベーション型の特例措置がそれぞれ設けられている(関連法令等については論末参照)。 ここでオープンイノベーション型が適用される特別試験研究費とは、国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究、国の試験研究機関、大学又は中小企業者に委託する試験研究のうち一定のものをいう(詳細は次回参照)。 《平成27年度税制改正前の制度概要》 (※) 経済産業省「平成27年3月までの制度概要」より   3 今回の改正内容 税額控除限度額の上限を当期法人税額の30%(措法42条の4の2)とする措置が適用期限(平成27年3月31日)をもって廃止され、新たに次の措置により、税額控除限度額の上限の総枠を当期法人税額の30%とすることとされた。 この改正は平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用される。 (1) 総額型の税額控除限度額 『試験研究費の総額に係る税額控除制度』及び『中小企業技術基盤強化税制』の税額控除限度額の上限を当期法人税額の25%とし、これらの税額控除額の計算における『試験研究費の額』には特別試験研究費を含まないこととする。 改正法を確認すると以下のとおりである。 旧措法42条の4第1項では税額控除限度額を20%(平成27年3月31日までは30%)としていたが、改正後の規定により25%に改められた。 旧措法42条の4第2項では税額控除限度額を20%(平成27年3月31日までは30%)としていたが、改正後の規定により25%に改められた。 (2) 特別試験研究費の額に係る税額控除制度 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)について、以下の見直しが行われた。 ① 税額控除率について 改正前の税額控除率12%について、特別試験研究機関等(国の試験研究機関や大学など)との共同、または同機関等への委託をする場合には特別試験研究費を30%の税額控除対象とし、それ以外の特別試験研究費の額は20%とする。 ② 税額控除限度額について (1)とは別枠で、特別試験研究費に係る税額控除限度額を5%とする。 ③ 総額型との併用適用 改正法(後掲)において「・・・特別試験研究費の額(当該事業年度において前二項の規定の適用を受ける場合には・・・金額の計算の基礎となった特別試験研究費の額を除く。・・・)」と規定されていることから、一の特別試験研究費の額について総額型とイノベーション型の併用は認められていない。 ④ 範囲の見直し(旧措法42条の4の2) 平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度で試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の控除限度額を20%ではなく30%にする規定であったが、改正後の控除限度額の総枠を30%(総額型25%、イノベーション型5%)にすることから適用期限の到来をもって廃止された。 ①から④について、改正法を確認すると以下のとおりである。 《改正後のイメージ図》   (3) 繰越(中小企業者等)税額控除限度超過額に係る税額控除制度の廃止 適用期限の平成27年3月31日をもって、繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度を廃止する。 改正法を確認すると以下のとおりである。   (1)から(3)の改正事項をまとめると、下図のとおりである。 《研究開発税制全体における平成 27 年度改正の概要》 (※) 経済産業省「研究開発税制の改正(概要)」より   4 平成27年度改正前後の比較表 3の改正事項について、改正前後を比較すると下表のとおりである。 改正後の本制度の全体像は以下のとおりである。 《平成27年度税制改正後の制度概要》 (※) 経済産業省「平成27年4月以降の制度概要」より   *  *  * 次回は、控除枠が拡充されたオープンイノベーションの要件や適用にあたっての注意点及び税制改正により新たに適用できる企業の可否について解説をする予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#吉澤 大輔
2015/07/02

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第2回】「付加価値額の計算と平成27年度税制改正」

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項 ~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第2回】 「付加価値額の計算と平成27年度税制改正」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   前回(第1回)の記事では、法人事業税は「応益課税」の考え方に基づき課される地方税であり、行政サービスの受益規模を「所得」以外の指標に求める必要性が高まってきたこと等を踏まえ、平成15年度の税制改正において「付加価値額」及び「資本金等の額」を課税標準とする事業税(外形標準課税)が導入されたことを説明した。 この点に関し、下記リンクのとおり、平成27年7月1日、東京都における法人事業税の超過税率を定める条例が公布され、平成28年4月1日以後開始事業年度において適用される税率が明らかにされたので、あわせて参照されたい。 第2回(本稿)では、外形標準課税の概要、付加価値額の算定方法、及びこれに係る平成27年度の税制改正の内容(事業税における所得拡大促進税制)について解説を加えることとする。   1 法人事業税の種類と外形標準課税の適用対象法人 法人事業税には、所得割、付加価値割、資本割、及び収入割の4種類があり、「外形標準課税」というと一般的には「付加価値割」及び「資本割」のことを指す。 事業税の適用関係は、まず法人の営む「事業」による区分を行い、その次に「法人」の区分に従って、課される事業税の種類が決定されるという構造になっている(地法72の2①)。 具体的には下表のように決定される。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 以上の結果、外形標準課税が適用されるのは、 ということになる(地法72の2①一イ)。そして、資本金額又は出資金額の判定は各事業年度終了の日の現況によるものとされる(地法72の2②)。   2 付加価値割の課税標準となる付加価値額 付加価値割の課税標準となる各事業年度の付加価値額は、各事業年度の報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額(以下「収益配分額」という)と各事業年度の単年度損益(繰越欠損金控除前の法人税の課税所得)との合計額による(地法72の14)。なお、付加価値額の合計額がマイナスとなる場合には、ゼロとされる(下図参照)。 外形標準課税の導入検討時、政府税制調査会の中間答申(平成12年7月)において、望ましい外形基準として の4つが提示され、その中でも①事業活動価値は、法人の人的・物的活動量を客観的かつ公平に示すと同時に、各生産手段(労働・資本財・土地等)の選択に関し中立的であることや、課税ベースが広く安定的であること等、「外形基準としては理論的に最も優れた特徴を有している」とされている(※)。この事業活動価値が、現行制度の「付加価値額」の考え方の基礎となっている。 (※) 政府税制調査会「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-」(平成12年7月)p.207 以下、それぞれの要素について説明していく。 (1) 報酬給与額 ① 原則的取扱い 報酬給与額は、次の(ア)及び(イ)の額のうち、原則として、その事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものの合計額である(地法72の15①)。 以上要するに、報酬給与額は、所得税において給与所得又は退職所得とされるものであって、原則として各事業年度において法人税の所得金額の計算上損金の額に算入されるものに限られるということである。 ② 派遣労働者に対する取扱い 労働者派遣契約に基づき労働者派遣の役務の提供を受けている場合、労働者派遣契約料として労働者派遣をした者に支払う金額の75%を報酬給与額に加算する。一方、労働者派遣の役務を提供している者においては、報酬給与額から労働者派遣の対価として労働者派遣の役務の提供を受けたものから支払を受ける金額の75%を控除する(地法72の15②)。 これは、派遣元に支払う金額には、派遣元の利潤相当額が含まれているとの考え方から、原価相当額として支払金額の75%相当額を報酬給与額として取り扱うこととしたものである。 なお、報酬給与額の算定に関する具体的取扱いについては、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)第3章 事業税」(以下「事業税取扱通知」という)[4の2の1]から[4の2の16]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (2) 純支払利子 純支払利子は、各事業年度の支払利子の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものに限る)の合計額から、各事業年度の受取利子の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものに限る)の合計額を控除した金額による(地法72の16①)。 なお、純支払利子の算定に関する具体的取扱いについては、事業税取扱通知の[4の3の1]から[4の3の11]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (3) 純支払賃借料 純支払賃借料は、各事業年度の支払賃借料の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものに限る)の合計額から、各事業年度の受取賃借料の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものに限る)の合計額を控除した金額による(地法72の17①)。 ここで「支払賃借料」とは、法人が各事業年度において土地又は家屋(これらと一体となって効用を果たす構築物及び附属設備を含む)の賃借権、地上権、永小作権その他の土地又は家屋の使用又は収益を目的とする権利で、その存続期間が1月以上であるもの(以下「賃借権等」という)の対価として支払う金額をいう(地法72の17②)。 なお、純支払賃借料の算定に関する具体的取扱いについては、事業税取扱通知の[4の4の1]から[4の4の8]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (4) 雇用安定控除 報酬給与額が収益配分額の70%を超える場合、その超える部分を付加価値額から控除する(地法72の20①)。これを「雇用安定控除」という。 報酬給与額(を含む収益配分額)と単年度損益との間には、収益配分額を減少させれば単年度損益が増加するという関係がある。つまり、報酬給与額を減少させても単年度損益が増加するだけで、全体としての付加価値額には影響しないのである。 この点、雇用安定控除は、報酬給与額を引き下げるとむしろ付加価値額が増加するという仕組みを整えることによって、安易な報酬給与額の引下げを防止することを目的とするものである。「雇用安定控除」という用語は、この趣旨から導かれるものである。   3 平成27年度税制改正(事業税における所得拡大促進税制の導入) (1) 改正の趣旨 平成27年度の税制改正によって、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)の適用要件がさらに緩和され、制度の一層の利用促進が期待されるところである。賃上げに基因する個人の可処分所得の増加が個人消費や個人投資の拡大につながり、ひいてはわが国の経済活性化に資するという流れを早期に確立したいという趣旨が垣間見える。 しかしながら、所得拡大促進税制を適用することによる雇用者給与等支給額の増加は、外形標準課税における付加価値額(報酬給与額)の増加をもたらすのである。法人税では減税メリットがあるが、事業税負担が増加することによって、全体としての減税幅が縮小してしまうという問題点が指摘されていた。 そこで、平成27年度の税制改正では、所得拡大促進税制の適用を受ける法人に対し、事業税付加価値割の計算上、一定の調整を加えた雇用者給与等支給増加額を付加価値額から控除することとされた(地法附則9⑬)。 (2) 適用時期 平成27年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。 (3) 用語の定義 租税特別措置法に規定されている定義をそのまま用いており、事業税固有の定義はない。 (4) 適用要件 法人税における所得拡大促進税制の適用要件と同様である。すなわち以下の3つの要件をすべて満たす必要がある。 (※) 「増加促進割合」という用語は平成27年度税制改正で創設されたものであり、内容は以下の通りである(地法附則9⑮)。 ・平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する適用年度:3% ・平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する適用年度:4% ・平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する適用年度:5% (5) 控除額の計算 以下の算式によって計算された金額を、付加価値額の金額から控除する。 このような調整が入るのは、雇用者給与等支給増加額を報酬給与額から直接控除してしまうと、上記2(4)で述べたように、雇用安定控除が縮小し付加価値額がむしろ増加するという計算構造になっているためである。 上の計算式によって計算された控除額は、雇用安定控除の次の行で控除されることとなる。 (6) 適用上の留意点 ① 課税標準の調整計算であること 法人税(租税特別措置法)における所得拡大促進税制は「税額控除」であるのに対し、事業税における所得拡大促進税制は「課税標準の減額調整」である。 そのため、法人税で税額控除が発生しない場合であっても、適用要件を満たしている以上、事業税における所得拡大促進税制の適用が可能である(付加価値額から控除できる)点、留意が必要である。 ② 連結法人は単体ベースで適用要件を判断することとなること 連結納税制度の適用を受ける法人については、所得拡大促進税制は連結グループ全体で適用要件の充足を判定することとなる(措法68の15の5)が、事業税における所得拡大促進税制は単体法人への適用となることから、適用要件も各連結法人が単体で判断することとなる。 そのため、連結グループ全体としては適用要件を満たさず、連結法人税について所得拡大促進税制を適用できない場合であっても、各連結法人が単体で適用要件を満たしている場合、事業税において所得拡大促進税制の適用は可能である点、留意が必要である。 ③ 当初申告要件なし 法人税(租税特別措置法)における所得拡大促進税制では当初申告要件があり、控除税額は、確定申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額を上限とする(措法42の12の4④)が、事業税における所得拡大促進税制には当初申告要件は付されていない。 そのため、確定申告時に適用を失念した場合であっても、更正の請求が可能である点、留意が必要である。 *  *  * 次回は資本割の算定、「資本金等の額」に係る平成27年度の税制改正の内容、及び事業税の負担軽減措置について解説する予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/07/02

ふるさと納税(平成27年度税制改正対応)のポイント 【第2回】「軽減される税額の計算例」

ふるさと納税(平成27年度税制改正対応)のポイント 【第2回】 「軽減される税額の計算例」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   【1】 税の軽減額の計算 (1) 所得税及び復興特別所得税の軽減額 ⇒ 平成27年分の所得税及び復興特別所得税が軽減される。 課税総所得金額:4,260,000-{2,000,000+(50,000-2,000)}=2,212,000円 課税総所得金額195万円超330万円以下に適用される所得税の税率は10%なので、所得税及び復興特別所得税の軽減額は次の通りとなる。 軽減額:(50,000-2,000)×10.21%(*1)=4,900円 (*1) 10.21%=10%(所得税)+0.21%(復興特別所得税)(*2) (*2) 0.21%=所得税率10%×2.1% (2) 住民税の軽減額 ⇒平成28年度分の住民税が軽減される。 住民税の軽減額は、基本控除額に特例控除額を加算した額となる。 ① 基本控除額 (50,000-2,000)×10%=4,800円 ② 特例控除額 (50,000-2,000)×79.79%(*3)=38,300円 (*3) 特例控除額の割合(再掲) (※) 復興特別所得税も考慮した割合 特例控除額には上限が設けられており、平成28年度分以降は、住民税所得割の20%相当額(平成27年度分までは10%相当額)が限度となる。 特例控除額の限度額:226,000(*4)×20%=45,200円 (*4) 226,000=住民税所得割:(4,260,000-2,000,000)×10% 本ケースの特例控除額は38,300円であり、限度額(45,200円)以下であるため、38,300円全額が軽減の対象となる。 (3) 税の軽減額の合計((1)+(2)) 4,900+4,800+38,300=48,000円(*5) (*5) 48,000円=ふるさと納税の額50,000円-2,000円   (1) 所得税及び復興特別所得税の軽減額 ⇒平成27年分の所得税及び復興特別所得税が軽減される。 課税総所得金額:4,260,000-{2,000,000+(100,000-2,000)}=2,162,000円 課税総所得金額195万円超330万円以下に適用される所得税の税率は10%なので、所得税及び復興特別所得税の軽減額は次の通りとなる。 軽減額:(100,000-2,000)×10.21%=10,005円 (2) 住民税の軽減額 ⇒平成28年度分の住民税が軽減される。 ① 基本控除額 (100,000-2,000)×10%=9,800円 ② 特例控除額 (100,000-2,000)×79.79%=78,195円>限度額45,200円 ∴ 45,200円 限度額(45,200円)を超えるため、特例控除額として軽減される住民税は45,200円となる。 (3) 税の軽減額の合計((1)+(2)) 10,005+9,800+45,200=65,005円 < 98,000円(*6) (*6) 98,000円=ふるさと納税の額100,000円-2,000円   【2】 ふるさと納税の額と税の軽減額との関係 給与所得426万円、ふるさと納税以外の所得控除の合計額200万円の場合に、ふるさと納税の額から2,000円を差し引いた額に相当する税の軽減を受けることができるのは、次の算式が成り立つときである。 この算式を満たすふるさと納税の額は58,648円である。ふるさと納税の額が58,648円を超えると特例控除額が上限の45,200円を超えてしまうため、ふるさと納税の額から2,000円を差し引いた額に相当する税の軽減を受けることができなくなる。 この算式を他の所得税の税率にも適用し、住民税所得割(A)とふるさと納税相当分(2,000円は除く)の税の軽減を受けることができる金額(以下「ふるさと納税の限度額」という)の関係を表にすると、次の通りとなる。 (※) ふるさと納税をした人の課税総所得金額に適用される最も高い所得税の税率 毎年の所得金額や所得控除の内容に大きな変化がない場合には、住民税の課税通知書の課税標準額と住民税所得割の金額を上表にあてはめることにより、ふるさと納税の限度額の目安を計算することができる。 また、総務省のホームページ等にもふるさと納税の限度額の目安を知るための各種の表やシートが公開されているので、簡易的な計算をするときにはそれらを利用することもできる。 【参考図】 課税総所得金額に対する所得税の税率 (了)

#No. 126(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/07/02

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第9回】「金銭又は有価証券の受取書③(受取金額の一部に売上代金を含む受取書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第9回】 「金銭又は有価証券の受取書③(受取金額の一部に売上代金を含む受取書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   不動産業を行っています。 家賃と敷金を受け取った際に領収書を発行しましたが、印紙税額はいくらですか。   第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当し、記載金額6,000,000円、印紙税額2,000円となる。   [検討] 受取金額の中に売上代金と、売上代金以外の受取が記載された受取書の場合で、受取金額が合計で記載されている場合と、区分記載されている場合について検討する。 (1) 敷金と家賃の受取金額が合計で記載されている場合 敷金は賃貸物件に入居する際に借主が賃貸人に預けておく金銭であり、地域によっては保証金とも言われているが、退去する際には原則として借主に返還されることとなり、売上代金には該当しない。また、家賃については不動産業を営む者が、資産を使用させることの対価として受領するものであることから、売上代金に該当する。 ここで、事例のように敷金と家賃の受取金額が合計で記載されている場合は、受取書の金額が売上代金に係る金額とその他の金額とに区分することができないため、その受取金額合計が売上代金として受取書の記載金額となる。(通則4のハ(2)) (2) 敷金と家賃の受取金額が区分記載されている場合 下記のように、売上代金に係る金額とその他の金額とに区分記載されている場合には、売上代金に係る金額がその受取書の記載金額となる。(通則4のハ(1)) 第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当し、記載金額1,000,000円、印紙税額200円となる。 ▷ まとめ 受取金額の一部に売上代金を含む受取書及び受取金額の内容が明らかにされていない受取書に係る取扱いは、次のとおりである。   ◆売上代金とは 資産を譲渡若しくは使用させること又は役務を提供することによる対価をいう。 ポイントは「対価性」を有するか、有しないかによって判定を行う。 印紙税法上における「売上代金」についてまとめると、以下のとおりである(第17号文書の定義)。 ◆売上代金に該当しないもの 本来的に売上代金に該当しないものと、売上代金に該当するが印紙税法上売上代金から除外しているものに区分される。 ポイントは、売上代金同様に売上代金は資産の譲渡等の対価をいうため「対価性」を有するか、有しないかにより判断する。主なものとしては以下のとおりである。 その他の例として、寄託物の受取、出資金等の受取、損害賠償金の受取、割戻金の受取等が売上代金に該当しないものとされる。 ◆売上代金から除外されるもの(株券の譲渡の対価等) 株券の譲渡の対価は、資産の譲渡の対価だが、印紙税法においては金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券の譲渡の対価は、売上代金から除くこととされている(第17号文書の定義欄1)。 (了)

#No. 126(掲載号)
#山端 美德
2015/07/02

租税争訟レポート 【第24回】「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京地方裁判所判決)〈前編〉」

租税争訟レポート 【第24回】 「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の 必要経費該当性(東京地方裁判所判決)」 〈前編〉   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   平成27年3月10日、最高裁判所は、馬券の的中による払戻金に係る所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、国税庁による「所得税基本通達」を否定する内容の判決を言い渡した。 この判決を受けて、国税庁は基本通達改正に向けた手続きに入っていた(「速報解説」参照)。 そうした中、最高裁判決とは別の課税処分等取消請求事件で、東京地方裁判所は、5月14日、最高裁判決とは異なる見解を示し、競馬所得を一時所得、総収入から控除する金額を的中した馬券に係る購入金額とすることが相当であるとして課税庁側勝訴の判決を言い渡した。 そして、判決から約2週間後である5月29日、パブリック・コメントを経て改正された所得税基本通達34-1が公表された。 本稿では、まず、〈前編〉として、東京地裁平成27年5月14日判決の概要を解説し、〈後編〉(次週公開)として、最高裁判決との相違点、最高裁判決から通達改正に至る手続きにおける問題点について、パブリック・コメントで寄せられた意見とこれに対する国税庁の考え方などを引用しながら、検討したい。   【事案の概要】 本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた原告が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長であった稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたため、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 なお、判決文中には、「類似事件」として、馬券の的中による払戻金を「雑所得」とし、外れ馬券の購入代金を必要経費とすることを認めた判決について、次のような説明がなされている。   【判示内容】 1 【争点①】 競馬所得の所得区分 (1) 被告(国)の主張 馬券購入行為は、客観的にみて継続的、安定的に収入を発生させ得る行為とはいえないから、「営利を目的とする継続的行為」とはいえず、これによって生じた馬券の的中による払戻金は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」である。 仮に馬券の的中による払戻金が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」になる余地があったとしても、原告と別件当事者とでは、馬券購入行為の態様に相違があるほか、原告が本訴訟において馬券購入行為の態様等を明らかにする客観的な資料の不存在を自認していることからすると、別件当事者の馬券の的中による払戻金とは異なり、原告の本件競馬所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」には当たらない。 (2) 原告(納税者)の主張 原告は、中央競馬における1年間のほぼ全てのレースにおいて、独自のノウハウに基づいて着順の予想をし、6年間にわたり、馬券を大量に機械的かつ継続的に購入しており、原告にとって馬券の購入は、遊興的、娯楽的性格を一切帯びるものではなく、専ら投資としての性質を有するものであり、多額の利益を上げていたことからすると、原告の馬券購入行為は、営利を目的とした継続的行為であり、それによって生じた本件競馬所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」といえる。 また、本件競馬所得は、原告独自のノウハウに基づく予測行為及び馬券購入行為という一連の行為(労務)の対価としての性質を有するから、「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」に該当しない。したがって、本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」ではなく、「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」でもないから、一時所得に該当せず、雑所得に該当する。 (3) 裁判所の判断 原告による馬券の購入は、原告の陳述によっても、レースの結果を予想して、予想の確度に応じて馬券の購入金額を決め、どのように馬券を購入するのかを個別に判断していたというものであって、その馬券購入の態様は、一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差があるものとは認められず、自動的、機械的に馬券を購入していたとまではいえないし、馬券の購入履歴や収支に関する資料が何ら保存されていないため、原告が網羅的に馬券を購入していたのかどうかを含めて原告の馬券購入の態様は客観的には明らかでないことからすると、原告による一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するというべきほどのものとまでは認められない。そうすると、本件競馬所得は、結局のところ、個別の馬券が的中したことによる偶発的な利益が集積したにすぎないものであって、営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当するということはできない。 別件最高裁判決がその理由中で説示するとおり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するものであるから、これらの事情が異なれば結論が異なるのが当然であるところ、原告は、別件当事者と同等以上の金額の馬券を購入し、同等以上の利益を得ていたものの、原告の具体的な馬券の購入履歴等が保存されていないため、原告が具体的にどのように馬券を購入していたかは明らかでなく、原告が別件当事者のように馬券を機械的、網羅的に購入していたとまでは認めることができないという本件の事実関係及び証拠関係の下では、原告による一連の馬券の購入が一体の経済的活動の実態を有するとまでは認めることができず、本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得には該当するものということはできない。 2 【 争点②】 外れ馬券の必要経費該当性 (1) 被告(国)の主張 本件競馬所得は雑所得ではなく一時所得であり、一時所得の総収入金額から控除されるのは「その収入を得るために支出した金額」に限られるところ、原告が当該払戻金を得るために支出したのは的中馬券の購入代金だけであるから、外れ馬券の購入代金は一時所得に係る総収入金額から控除されない。 仮に、本件競馬所得が雑所得に該当するとしても、外れ馬券の購入代金は、「総収入金額を得るため直接に要した費用」でも、「所得を生ずべき業務について生じた費用」でもないから、所得税法37条1項の規定する必要経費には算入されず、雑所得に係る総収入金額から控除されない。 (2) 原告(納税者)の主張 本件競馬所得は雑所得であるところ、原告が本件競馬所得を得るためには外れ馬券は必然的に生じるものであり、外れ馬券を含む購入した全馬券の購入代金が払戻金を得るために必要不可欠な支出であったといえるから、外れ馬券を含めた全馬券の購入代金が払戻金を得るために「直接に要した費用」に該当し、所得税法37条1項の規定する必要経費に算入され、雑所得に係る総収入金額から控除される。 仮に本件競馬所得が一時所得であったとしても、原告は、独自のノウハウに基づき、1年を通じて、機械的、継続的に大量の馬券を購入していたことからすると、1年間に購入した全ての馬券の購入代金が「その収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)」に該当するものとして、一時所得に係る総収入額から控除されることになる。 (3) 裁判所の判断 本件競馬所得を構成する収入は馬券が的中したことよる払戻金であるところ、原告による一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有するものとまでは認められず、馬券が的中したことによる払戻金に関して「その収入を生じた行為をするため直接要した金額」又は「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」は、結局のところ、当該払戻金に個別的に対応する馬券の購入代金、すなわち、的中馬券の購入代金ということになるから、一時所得である本件競馬所得に係る総収入金額から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られることになる。一方、当該払戻金に個別的に対応しない馬券の購入代金、すなわち、外れ馬券の購入代金は、何ら収入を発生させていない以上、一時所得である本件競馬所得に係る総収入金額からは控除されないことになる。 (次号に続く)

#No. 126(掲載号)
#米澤 勝
2015/07/02

~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第4回】「教育機関等に派遣した講師等に対して支払った金員が給与所得に当たるとされた事例(源泉所得税)」

~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第4回】 「教育機関等に派遣した講師等に対して支払った金員が 給与所得に当たるとされた事例(源泉所得税)」   税理士 佐藤 善恵     (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 納税者(甲)は、教育機関又は一般家庭から講義等又は家庭教師の業務を受託し、一方で、当該業務に関して講師や家庭教師(本件講師等)と契約して、本件講師等に講義等の業務を行わせていた。 甲は、本件講師等に支払った金員(本件各金員)について、給与所得に該当しないものとして源泉徴収をせず、また、消費税については仕入税額控除の対象として申告をしていた。これに対して税務署長は、本件金員は給与所得に該当するから源泉徴収が必要であり、また、仕入税額控除の対象とならないとして、源泉所得税納付告知処分等を行った。本件は、これらの処分の取消しを求めて争いとなったものである。 ここで取り上げる争点は、本件各金員に係る所得が所得税法28条の給与所得に該当するか否かである。   〔裁判所の判断(要約)〕 (ア) 本件各金員は、業務の遂行又は労務の提供(労務の提供等)をしたことの対価としての性質を有するものである。 (イ) 本件講師等による労務の提供等は、自己の計算と危険によるものとは言い難く、非独立的なものと評価するのが相当である。 (ウ) 本件講師等は、直接的又は少なくとも間接的に甲の監督下に置かれているものというべきである。 (※) 甲は、本件講師等に対して、費用負担、研修指導等に関するアンケートを実施して、裁判所に証拠として提出していた。 (エ) 本件講師等は、甲から空間的、時間的な拘束を受けているものということができる。 (オ) 以上の事情を総合すれば、本件各金員は、雇用契約に類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものとして、それに係る所得は、所得税法28条1項所定の給与所得に当たるものというべきである。   〔判断の分水嶺〕 本件は、各事情を総合判断したもので、特定のものが判断の分水嶺となっているわけではない。また、各要件について裁判所は、上記赤線囲み部分のような複数の事実関係に着目しており、甲が主張するような、本件講師が契約条件を自由に交渉できたことや、授業単価が実績等を前提としたランク別に個別の契約ごとに決定されていたこと等の個々の事情は重視していない。甲主張の事実があったとしても、直ちに給与所得該当性が否定されるわけではないからである。   〔 判 示 〕   〔本判決が示唆するもの〕 裁判所は、「空間的、時間的な拘束」あるいは「従属性」は、給与所得に該当するための必要要件ではないと判示している。 本件では、裁判所の判断を前提とすると「空間的、時間的な拘束」は有り、「従属性」も有ったということになるが、仮に各要件が満たされないケースであっても給与所得に当たるものが存在することが示唆されているのである。形式に当てはまらない新しい労働形態を考慮したものであろう。 なお、「判決情報」においては、次のようにコメントされている。 (了)

#No. 126(掲載号)
#佐藤 善恵
2015/07/02

貸倒損失における税務上の取扱い 【第46回】「貸倒損失の法律論③」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第46回】 「貸倒損失の法律論③」   公認会計士 佐藤 信祐   前回においては、法的に債権が消滅した場合における貸倒損失の計上について解説を行った。これだけでなく、貸倒損失を計上することができる場面としては、法的には残っているものの実質的に回収不能である場合も含まれる。 しかしながら、実務上、これに該当することができるか否かの判断がかなり難しく、平成23年度税制改正により、金融機関や中小法人等を除き、貸倒引当金を設定することが認められなくなったことを考えると、極めて重要な論点であると考えられる。 本稿においては、どのような場合に実質的に回収不能であるとして貸倒損失を計上することができるかという点について解説を行うこととする。   3 実質的に回収不能である場合 (1) 基本的な取扱い 第44回で解説したように、法的には債権が残っていたとしても、その回収可能性がない場合には、貸倒損失を認識することができる。これもまた、「確定」という要素が必要であると考えるのであれば、その全額が回収することができないことが明らかになった場合である。 すなわち、法人税基本通達9-6-2においては、「法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。」ことが明らかにされている。また、この場合における回収可能性の判断であるが、企業会計よりも厳格な判断が求められており、わずかでも回収可能性がある場合には貸倒損失を認識することができない。 なお、全額を回収することができないことが「明らかになった事業年度」において損金の額に算入することができるのであるから、利益操作により貸倒損失を認識する事業年度を操作することはできないという点は、第39回で解説したように、昭和55年度法人税基本通達の改正により明らかにされた内容である。 さらに、「損金経理をすることができる」としていることから、「損金経理をした場合に限り損金の額に算入することができる」のか、「損金経理をしなくても損金の額に算入することができる」のかについては、理論上は、損失が確定したのであるから損金経理の如何を問わず、損金の額に算入すべきであると考えられるが、実務的には、損金経理を要件とするという考え方が強いように思える(*1)。 (*1) なお、損金経理をしなくても損金の額に算入することができるという見解として、中村慈美税理士『貸倒引当金制度廃止後の不良債権処理の実務 要点解説』53-54頁、大渕博義教授『法人税法解釈の検証と実践的展開第Ⅰ巻(改訂増補版)』349-350頁が挙げられる。  また、物的担保、人的担保がある場合には、これらの担保からの回収が可能であるため、これらの担保が形式的なものであり、実際には回収することができないような場合を除き、原則としては、貸倒損失を認識することはできない。なお、担保が形式的な場合とは、物的担保が価値のなさそうな動産等であることから、時価が0円である場合と見込まれる場合、物的が不動産であっても、二番抵当以下であることから、実際には回収することができないと見込まれる場合、人的担保があっても、当該保証人の返済能力がない場合などが挙げられる。 さらに、同通達9-6-3においては、「債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合」、「法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき」のような場合には、備忘価額を残したうえで、貸倒損失として損金経理できることが明らかにされている。 このように、同通達9-6-2については、債権の全額を回収することができないことを前提としており、同通達9-6-3については、債務者の自主的な対応でもない限り、債権を回収しようとしても実現可能性がほとんどないことを前提としている。 なお、同通達9-6-2の適用について、担保付債権については一部回収可能であるものの、無担保債権については全額回収不能である場合の取扱いについては、第25回で解説したように、当該無担保債権に対して貸倒損失を認識することが可能である。 (2) 部分貸倒れの議論 ① 貸倒損失についての会計処理 このように、貸倒損失については、その全額が回収できないことが明らかになった場合において、損金の額に算入することが可能である。 これに対し、金子宏教授により主張されたのが部分貸倒れの議論である。そもそも部分貸倒れの議論を公定解釈および裁判例が明確に否定していたのは、法人税法33条2項により資産の評価損が限定的に解釈されていたからである。その後、平成17年度税制改正により、一定の事由が生じた場合に限り、金銭債権についても評価損の計上が認められるようになった。そのため、更生計画認可の決定があったことにより会社更生法の規定に従って行う評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、金銭債権の評価損を損金の額に算入することが可能になる。 これに対し、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があった場合や私的整理ガイドラインに定める手続に基づく再建計画による債務免除等を受けた場合において、法人税法33条4項、7項の規定に従って、評価損明細を確定申告書に添付する手法を選択するときには金銭債権の評価損を損金の額に算入することは認めているものの、法人税法33条2項の規定に従って、損金経理により金銭債権の評価損を計上する手法を選択するときには損金の額に算入することを認めていないと解され、法人税基本通達9-1-3の2も同様に解している。その理由としては、企業会計上、金銭債権の評価損を計上するという会計慣行は存在せず、あくまでも貸倒引当金の議論とされているため、損金経理を行ったとしても、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に反して計上したものであり、それを法人税法が容認するということにはならないからである(*2)。 (*2) 佐々木・松汐(2005)「法人税法の改正」『改正税法のすべて(平成17年度版)』大蔵財務協会 207頁参照 筆者が部分貸倒れの議論について否定的な見解を有するのもまさにその一点であり、企業会計上、担保及び保証による回収見込額を控除した残額について貸倒損失として計上することができるとされているが、あくまでも、ほとんど確実となった時点に限定されており(*3)、いわゆる回収不能見込額について直接減額を行うという部分貸倒れの考え方は存在せず、公正処理基準を採用する我が国の法人税法の体系からも、別段の定めがない限り、部分貸倒れを容認するという考え方は解釈論としては取り得ないと考えるからである(*4)。 (*3) 「金融商品会計に関するQ&A(平成12年9月14日、日本公認会計士協会会計制度委員会)」Q42参照 (*4) 銀行業においては、金融検査マニュアルにおいて、実質破綻先・破綻先について、貸倒引当金と貸倒損失の双方を容認する取扱いとなっており、トーマツ金融インダストリーグループ(2013)『Q&A業種別会計実務9・銀行』中央経済社128頁においてもその旨の記載が存在する。しかしながら、銀行業においては、法人税法上、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の計上が認められており、事業会社と異なり、貸倒損失として処理するのか、貸倒引当金として処理するのかという点については、不良債権比率の問題についてはともかくとして、少なくても、法人税法上の観点からは大きな問題にはならない。 ② 金子説とそれに対する反論 金子宏教授によれば、 としたうえで、 とのことである(『租税法理論の形成と解明 下巻』97-98頁)。 ここまでの解釈については合理性のあるものであり、部分貸倒れの議論について、法人税法33条2項の問題として捉えるのか、「公正妥当な会計処理の基準」の解釈の問題として捉えるのかという点につき、前者として捉えるのであれば部分貸倒れが認められる余地は存在しなくなり、後者として捉えるのであれば、「公正妥当な会計処理の基準」が部分貸倒れを容認している場合に限り、部分貸倒れが認められるという整理になる。 この点については、法人税法上、部分貸倒れを認めていないのは金銭債権の評価損を否定する法人税法33条2項との整合性を制度趣旨にしながらも、条文解釈としては、貸倒損失の規定が存在しないことを考えると、「公正妥当な会計処理の基準」と捉えるというところまでは賛同したい。 しかしながら、一方で個別貸倒引当金の制度を明文で規定しておきながら、他方で部分貸倒れを容認するとなれば、個別貸倒引当金の制度がほとんど意味のない制度となってしまうだけでなく、平成23年度税制改正により、法人税の実効税率の引下げの対価として課税標準の拡大を行うために、貸倒引当金制度を、金融機関や中小法人等に限定したという趣旨そのものも否定することになり、解釈論としては行き過ぎではないかと考えられる。 さらに、前述のように、金融商品会計に関する実務指針(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号)における規定を見る限り、会計制度が不整備であった会計ビッグバン以前であればともかくとして、少なくとも現在の会計慣行からは、事業会社においては部分貸倒れを行うような実務慣行は公表されておらず、「公正妥当な会計処理の基準」として部分貸倒れを容認しているという反証がない限り、このような理論で法人税法上も部分貸倒れを容認するというのは難しいのではないかと考えられる。 結局のところ、部分貸倒れについての主張は、法人税法上、貸倒損失の損金算入が困難であったことが不良債権処理を進めるうえでの障壁となっていた時代において、金子宏教授が租税法学者の立場から行った提案に過ぎず、会計ビッグバンにより会計制度が整備され、平成10年度税制改正により法人税法が整備された現在においては、解釈論としては取り得ないというのが実態ではないかと考えられる。 第44回から第46回(今回)までは、今までの議論から貸倒損失の法律論についてまとめた。次回以降は、法人税基本通達にそれぞれ当てはめを行って、具体的な事例について解説を行う予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/07/02
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