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常識としてのビジネス法律 【第25回】「会社法《平成26年改正対応》(その6)」

常識としてのビジネス法律 【第25回】 「会社法《平成26年改正対応》(その6)」   弁護士 矢野 千秋     6 取締役と会社との関係 (1) 善管注意義務と忠実義務 取締役と会社との間の関係は委任に関する規定に従う(330条)ので、取締役は会社に対して善良な管理者としての注意義務を負担する(民644条)。善管注意義務とは、会社の業務および経理等に対して相当程度の知識、経験および能力を有する標準型の人が職務を行うにあたり通常払うであろう注意の程度を指す。 これを具体的に示せば、取締役は法令および定款ならびに総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行う義務を負うことになる(355条)。したがって、忠実義務は善管注意義務を明確にしたもので、これとは別の高度の義務を規定したものではない(最高裁昭和45年6月24日判決)。 しかし、これだけでは不十分なので、競業及び利益相反取引の制限(356条1項)がある。これらはいずれも取締役の職務外の行為であり、職務遂行上の注意義務である善管注意義務などの範囲に入らないものだからである(入るとする考え方もある)。 (2) 競業避止義務 取締役(執行役も。以下(2)(3)において同じ)は、会社の内部情報や営業の機密に通じ、また取引先と個人的な信頼関係を築いている場合も多い。したがって、取締役Aが自己または第三者のために甲会社の事業の部類に属する取引(目的物、市場が競合する取引)を自由にできることにすると、会社の取引先を奪うなど、会社の利益を害する危険が大きい。しかし、子会社に類似の事業を行わせるなど、競業が必要な場合も当然考えられる。 そこで、取締役が競業を行うためには、その取引について重要な事実を開示して、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を事前に得ることを要することとし、この義務に違反すれば、損害賠償責任を負うほか(423条)、解任の正当事由にもなりうる(339条1項)。さらに、取締役会設置会社ではこうした取引に対する取締役会の監視を強めるため、事後の報告も要求している(365条2項)。 (3) 自己取引(利益相反取引)の制限 甲会社の取締役Aが自ら当事者としてまたは他人乙の代理人もしくは代表者として、甲会社と取引をする場合には、その取締役Aが自ら甲会社を代表するときはもちろん、他の取締役Bが甲会社を代表するときも、AB容易に結託して甲会社にとって不利益な取引をするおそれがあるため、このような場合には甲の株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を事前に得ることを要することとし(356条1項2号3号、365条1項)、この義務に違反すれば、損害賠償責任を負うほか(423条)、解任の正当事由にもなりうる(339条1項)。さらに、取締役会設置会社ではこうした取引に対する取締役会の監視を強めるため、事後の報告も要求して会社の利益保護を図っている(365条2項)こと、競業取引と同様である。 取締役が自己または第三者のために会社と取引をなす直接取引(356条1項2号)のみならず、会社と取締役以外の第三者との取引において、実質的に会社取締役間に利害の衝突を生ずる間接取引についても、株主総会(取締役会)の承認が必要である(同項3号、365条1項)。たとえば、会社が取締役の債務を保証するような場合が例示されている。   7 取締役の責任 (1) 取締役の責任 会社法は、取締役の会社に対する責任は、過失責任を原則とした(423条1項)。すなわち、違法配当、株主への違法な利益供与および利益相反取引については、過失責任として取締役が過失のなかったことを立証したときは賠償義務を負わないものとされた(462条2項、120条4項、423条1項)。ただし、利益供与を行った取締役については無過失責任とし、また利益相反取引について自己のために株式会社と直接利益相反取引をした取締役も無過失責任を負うものとされた。 (2) 免責 ① 総論 取締役の責任を免除するには、原則として総株主の同意が必要である(424条、462条3項但書等)。しかし、大会社などでは実質上これらの免責は不可能である。 そこで取締役の任務懈怠責任(423条1項)については、株主総会の特別決議、定款の定めに基づく取締役の過半数の同意(取締役会設置会社の場合には取締役会決議)、または定款の定めに基づく事前の責任限定契約により、一部免除できることとしている(425条、309条2項8号、426条、427条)。特別責任と構成されている利益供与(120条4項)や、違法配当(462条1項)等には適用されない。 ② 任務懈怠責任の一部免除 ⅰ 第423条第1項の責任は、役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、株主総会に責任原因の事実、賠償すべき責任額等を開示し、賠償の責任を負う額から以下の合計額(最低責任限度額)を控除して得た額を限度として、株主総会の特別決議によって免除することができる(425条1項2項)。なお、責任免除の議案を株主総会に提出するには監査役設置会社においては監査役(複数なら各監査役)、監査等委員会設置会社においては各監査等委員(425条3項2号)、指名委員会等設置会社においては各監査委員の同意が必要である(同条3項)。 以下の金額および当該役員等が有利な条件で取得した新株予約権の財産上の利益額の合計額(最低責任限度額。425条1項)を超える部分の役員等の責任を、免除することができる。 ⅱ 第423条第1項の責任は、監査役設置会社(取締役が2人以上ある場合に限る)、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社は、定款をもって、役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、職務執行の状況、その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、免除することができる額を限度として、取締役(当該責任を負う取締役を除く)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)をもって、これを免除することができる旨を定めることができる(426条1項)。各監査役・監査等委員・監査委員の同意は、定款変更議案を株主総会に提出する場合、定款の定めに基づく責任の免除についての取締役の同意を得る場合および責任の免除に関する議案を取締役会に提出する場合について必要である(同条2項)。 この取締役(会)の免除の決議に対しては、総株主の議決権の100分の3以上を有する株主は異議を申し立てることができる。その場合、免除はできない(同条5項)。しかし、さらに株主総会の特別決議があれば免責が可能である。 ⅲ 会社法は、非業務執行取締役と同様、会計参与、監査役、会計監査人の地位の社外性から、責任の一部免除を認めるとともに、定款の定めに基づく責任限定契約による責任の一部免除を認めた。 定款をもって、非業務執行取締役、会計参与、監査役または会計監査人との間において、第423条第1項の行為により会社に損害を加えた場合において、その非業務執行取締役等が職務を行うにつき、善意にして重大な過失がないときは、定款に定めた範囲内においてあらかじめ定める額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度として、賠償の責任を負う旨の契約をすることができる旨を定めることができる(427条1項)。免責契約の議案を株主総会に提出するには各監査役等の同意が必要である(同条3項)。 非業務執行取締役等に、こうした形での免責契約を認め、人材を得やすくしているものである。 ③ 剰余金の配当等に関する責任 会社法では、分配可能額を超えて剰余金の配当等をなした場合には、その行為により金銭等の交付を受けた者ならびにその行為に関する職務を行った業務執行取締役・執行役および株主総会議案提案取締役(取締役会議案提案取締役)は、会社に対し、連帯して、金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負うものとされた(462条1項)。そして過失責任とされた(同条2項)。そして行為の時における分配可能額を限度として義務を免除することについて総株主の同意がある場合を除き、これらの者の負う義務は、免除することができない(同条3項)。剰余金の配当等を行い、その事業年度末に欠損が生じた場合も同様(462条1項)。一部免除なし。 ④ 株主の権利行使に関する利益供与に係る責任 会社法は、利益供与をした取締役または執行役に加え、当該利益供与に関与した取締役または執行役は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う(120条4項)が、ただしその者(当該利益の供与をした取締役・執行役を除く)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合はこの限りではないとして、利益供与に関する取締役または執行役の責任を、利益供与を行った取締役または執行役に限り無過失責任とし、その他の取締役または執行役については過失責任とした。一部免除なし。 ⑤ 任務懈怠に係る責任 役員等は、任務懈怠により会社に損害を与えた場合には、会社に対して損害賠償責任を負う(423条)。商法266条1項5号にあたる責任は任務懈怠責任とされた。取締役は会社に対して善良な管理者としての注意義務を負い(330条、民644条)、また忠実義務を負う(355条)。この注意義務等に違反して任務を怠ることが任務懈怠である。責任の一部免除が認められる。 ⑥ 利益相反取引に係る責任 会社法は取締役・執行役の利益相反取引に係る責任を過失責任とした(423条1項3項)。ただし、自己のために株式会社と直接に利益相反取引をした取締役らは無過失責任を負う(428条1項)。 利益相反取引にかかる責任を過失責任としたことで、他の任務懈怠責任と同様に、総株主の同意がなければ免除できない(424条)が、責任の一部免除を認めることとした(425条等)。ただし、自己のために株式会社と直接に利益相反取引をした取締役らについては、無過失責任であるし、責任の一部免除も認めない(428条2項)。 ⑦ 取締役の競業行為に係る責任 取締役・執行役が、自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をするには、株主総会(取締役会設置会社では取締役会。365条1項)において重要な事実を開示してその承認を受けなければならないとされている(356条1項1号)。 これを得ないで取引を行ってしまった場合、取締役らまたは第三者が得た利益の額は、会社の被った損害の額と推定され、損害賠償責任を負うことになる(432条2項、1項)。 株主総会等の決議で競業の承認を得ても、取締役らの会社に対する責任が完全に免除されたわけではなく、その競業により会社に損害が生ずれば当該競業行為に関して任務懈怠のある取締役らは責任を免れない。責任の一部免除が認められる。 (3) 役員等の責任追及の訴え(株主代表訴訟) 会社に対する取締役らの責任は、本来からいえば会社自身が追及すべきものであるが、取締役間の特殊関係からその追及がなされず、その結果、会社すなわち株主の利益が害されることにもなりかねない。そこで株主に、会社の権利を代表して行使して、取締役らに対して訴えを提起することを認めた。6ヶ月前(定款で引き下げ可能。非公開会社では「6ヶ月前より」の制限はない)より引き続き1株以上(定款で単元未満株主の訴権を制限した場合は1単元以上)を保有する株主が、会社に対して書面により取締役らの責任追及の訴えを提起するよう請求し、請求のあった日から60日以内に会社が訴えを起こさないときは、その請求をした株主は自ら取締役らに対して訴えを提起できる。また、この60日の経過によって会社に回復不能の損害を与えるおそれがあるときは、直ちに訴えを提起できる(847条1項3項5項)。 なお、株主が代表訴訟によって求め得る「取締役の責任」は、取締役の地位に基づく責任のほか、取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれる(最高裁平成21年3月10日判決)。 株主は、責任追求の訴えが、当該株主もしくは第三者の不正な利益を図りまたは株式会社に損害を加えることを目的とする場合には、役員等の責任追求の訴え(212条1項、285条1項)を提起するよう、株式会社に請求することができない(847条1項)。 株式会社が株主から提訴請求を受けた場合において、請求の日から60日以内に株式会社が訴えを提起しないときは、株式会社は、提訴請求をした株主等からの請求により、遅滞なく、当該請求をした者に対し、訴えを提起しない理由を、書面その他法務省令で定める方法により通知しなければならない(847条4項)。「請求対象者の責任又は義務の有無についての判断」のみならず「その理由」も含まれることを明確化した(平成21年改正・規218条)。 (4) 取締役の違法行為の差止め 取締役・執行役が法令定款違反行為をした場合には、任務懈怠として会社に対して損害賠償責任を負うが(423条1項)、このような事後の救済よりも事前にそのような行為を防止できることが望ましい。 会社としては取締役らの行為を差し止める権利を、当然、有するが、会社がそれを怠る場合に備え、6ヶ月前(定款で引き下げ可能。非公開会社では「6ヶ月前から引き続き」の制限はない)から引き続き株式を有する株主に、取締役らが会社の目的の範囲外の行為、法令定款違反行為をし、またはこれらの行為をするおそれがある場合において、その結果、会社に著しい損害(監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社においては回復することができない損害)を生ずるおそれがある場合には、当該取締役らにその行為をやめることを請求することができる(360条1項2項3項)。   8 取締役と第三者との関係 (1) 総説 取締役・執行役がその任務に違反した場合は、本来からいえば会社に対する関係で責任を負わされるにすぎない。取締役らは会社の受任者であり、第三者に対しては、直接、なんらの契約関係にもないからである。しかしその結果、株主や会社債権者が損害を被ることを考慮し、取締役らがその職務を行うについて悪意または重過失があった場合には、第三者に対する直接の権利侵害や故意過失の有無を問うことなく、取締役らに第三者に対しその損害を賠償する責任を負わせた(429条1項)。 取締役らは、本来、第三者に対しては不法行為の要件を備えない限り責任を負わないはずであるが、取締役らの権限が強大であり、場合によっては完全に会社を左右していることに鑑み、第三者保護のために特則を置いたものである。 (2) 第三者の損害 第三者の損害には、取締役らがあまりに過大な設備投資をして会社が倒産し、その結果、取引相手などの第三者が損害を被ったような間接損害と、取締役らが会社が窮状にあるのに第三者を騙して取引に入らせ、その結果第三者に損害が発生したような直接損害がある。 いずれにしても、取締役らの任務懈怠と第三者の損害の間に相当因果関係があることが必要である。   9 取締役の報酬・賞与・退職慰労金 (1) 総説 取締役は報酬を受けるが、その額の決定を取締役会に委ねるとお手盛りの危険があるので、定款の定めによるかまたは株主総会の決議によることが要求される(361条)。 本来、報酬決定は業務執行に関する事項であり、理論的には取締役会が決定権を有するはずであるが、自分たちが自分たちの報酬を決めたのでは、会社の利益のために行為すべしとする受任者性に反するおそれがあるので、政策的にこの規定を設けたものである。執行役の報酬は、個人別の報酬(退職慰労金を含む)を報酬委員会が決定する(404条3項、409条)。 (2) 報酬の範囲 報酬、賞与その他の職務執行の対価(報酬等)として受ける利益をいう。対価としての利益であるかぎり、給与、手当てなどの名称のいかんを問わない。 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額を、報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法を、報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容を定めねばならない(361条1項)。 しかし、株主総会では、個々の取締役への具体的支給額まで決定する必要はなく、取締役全体としての総額または最高限度額を定めれば足り、取締役間の具体的配分は取締役会に委ねてよい。 なぜなら、総額や最高限度額が決定されていれば会社の利益保護という会社法第361条の趣旨に反しないし、逆に同条は取締役間の公平を実現するための規定ではないからである。 (3) 退職慰労金 退職慰労金は在職中の職務執行の対価、すなわち報酬の後払いとしての性格と、功労加算金としての性格とが不可分に結びついた特殊な性格の給付金と解され、商法第269条(会社法第361条)の「報酬」に含まれる(通説。最高裁昭和44年10月28日判決)。 したがって、定款に定めのある場合はそれにより、ない場合は株主総会の決議によって、監査役の報酬とは別にその額を定める(387条)。 わが国では、退職慰労金については株主総会で支給することだけを決め、一般の報酬のように最高限度額を定めることもなく、具体的金額・支払期日・支払方法などを取締役会に一任するのが通例である。最高限度額を決めてしまうと、実際上、個々の取締役に支給する金額も明らかになってしまい、公開の場で取締役個人の功績の論議を引き起こすことにもなるからである。 この問題につき判例は、支給基準(会社業績、地位、勤続年数、功労等)を株主が推知し得る状況において、当該基準に従い決定すべきことを委任する趣旨の決議であれば有効としている(最高裁昭和39年12月11日判決等)。 (続く)

#No. 127(掲載号)
#矢野 千秋
2015/07/09

此の国にも『日本企業』! 【第7回】「《エチオピア》 アフリカで見つけた競争力の源泉~(株)ヒロキ~」

此の国にも『日本企業』! 【第7回】 「《エチオピア》 アフリカで見つけた競争力の源泉 ~(株)ヒロキ~」   中小企業診断士 西田 純     アフリカの北部・エチオピアは、日本からずいぶんと遠い国です。日本でよく知られていることといえば、「ケニアと並ぶマラソン強国だ」ということくらいでしょうか。 今回は、そんなエチオピアで競争力の源泉となる強みを見出し、そしてついには日本企業としては初の製造工場を現地に作ってしまった会社のお話です。   〈天然皮革へのこだわり〉 (株)ヒロキは、皮革衣料・鞄の製造小売業を営む会社で、1952年に横浜で創業しました。 プロでも天然の皮革と合成皮革とを見分けることが困難と言われる中、天然素材の質感にこだわった製品作りを志向する経営方針によって、競合他社との差別化を図ってきました。 近年では2005年から中国・北京で直営の縫製工場を稼働させたことに加えて、2014年からは材料の原産地であるエチオピアでも新たに製造工場を立ち上げ、材料供給と製造プロセスを近づけることでより一層の品質向上を目指しています。   〈さらなる品質を求めてエチオピアへ〉 では、そもそも「なぜエチオピアか?」という疑問について、社長の権田浩幸さんは同社にとって「エチオピアで産出される羊革の品質」が決定的な要因であるということを説明してくれました。 他の皮革原料に比べて圧倒的に薄くて柔らかく、しかも丈夫なエチオピア産の羊革は世界一と評されており、丁寧に加工すれば大変優れた衣料素材になるのです。 また、ここ10年ほどは、エチオピアで買い付けた原材料(羊革)を中国の工場に運んで縫製するというプロセスを採用していましたが、さらに品質を良くするために、原材料についてさまざまなリクエストを出せる製造プロセスを少しでも原材料供給地に近づけたい、という思いでエチオピアでの工場建設を決定したとのことです。 さらに、「エチオピアは物を安く作るための国ではなく、良い物をもっと良くするために時間をかけられる国である」という認識のもと進出を決めた、とも話してくれました。   〈新天地での苦労を乗り越え〉 進出に当たっては、様々なご苦労がありました。 例えば許認可手続き一つとっても、役人一人ひとりの言うことが違ったり、担当者が休むと仕事がそのまま滞ったりと、日本では全く考えられないトラブルに何度も悩まされることがあったそうです。 それでも(株)ヒロキにとって競争力の源泉たる高品質な素材を求め、エチオピア当局とは粘り強い調整を続けました。 また労働者教育・技術移転の場面でも、日本には「優れた職人で、英語のできる人」が皆無といっても過言ではなく、効率的な指導者派遣が進めづらいこともあったそうです。   〈素材の持つ難しさが逆に強みになる〉 競合他社にとっては、柔らかくて伸縮性がある分だけ加工のしづらいエチオピア産羊革は「使いたくても難しい素材」ということで、欧米を含めて現在のところ(株)ヒロキ以外に「エチオピア産のシープ(羊革)で勝負できる衣料メーカーは存在しない」のだそうです。 さすがにそれだけ加工の難しい素材ということもあって、現在エチオピアの現地法人には日本人指導者が3名常駐しており、さらには中国工場から技術指導のための応援も出しており、通常のビジネスモデルだと製造コストが膨らんでしまうことが懸念されます。 しかし(株)ヒロキの場合は、値下げ要請の厳しい卸売業者などへの販売を一切行わず、自社で最終消費者に製品を供給する「製造・小売業」であることと、競合他社が存在しない市場を切り開く、いわゆる「ブルー・オーシャン戦略」を採用していることが、このビジネスモデルを可能にしています。   〈未来に見据えるもの〉 さらに同社の目指すものについて、 と、社会貢献への意欲もにじませて夢を語る権田社長の言葉は、非常に示唆に富むものでした。 (了)

#No. 127(掲載号)
#西田 純
2015/07/09

《速報解説》 国税庁より「平成27年分用の相続税申告書」新様式が公表~基礎控除の引下げ等に対応。小規模宅地等特例適用者の提出様式が明瞭に~

《速報解説》 国税庁より「平成27年分用の相続税申告書」新様式が公表 ~基礎控除の引下げ等に対応。小規模宅地等特例適用者の提出様式が明瞭に~   Profession Journal編集部   本年の1月1日より相続税の基礎控除額が引き下げられ最高税率が引き上げられる等、いわゆる“相続増税”が施行されたわけだが、このたび国税庁ホームページにおいて、これらの改正を反映した「相続税の申告書等の様式一覧(平成27年分用)」が公表された。   〇平成25年度税制改正に対応した新様式改正の概要 本年1月1日より施行された相続税に係る平成25年度税制改正事項は以下のとおりである。 上記のように大幅な改正が行われたわけだが、様式の改正をみると①~③については、数値の変更によるもののため、様式に大きな変更はなく、第2表(相続税の総額の計算書)なども表内の数値が一部変更されている程度である。   〇小規模宅地等特例の適用者は自己申告も見据えた配慮 小規模宅地等の評価減特例については、今回の基礎控除額の引下げにより、税理士に頼ることなく自己申告をする納税者の増加を見込んで、提出書類の誤りが起きないような配慮が伺える。 具体的には、小規模宅地等特例を適用する際、改正前の様式では に加えて次の3つの明細書を提出することが求められていたため、小規模宅地等特例のみを適用するケースでは、馴染みのない特定計画山林又は特定事業用資産についての課税価格の計算特例の欄で混乱が生じるケースがみられた。 こうした状況を踏まえて、改正様式では、小規模宅地等特例のみを適用する場合(特定計画山林・特定事業用資産特例を適用しない場合)は、次の3つの付表を提出すれば足りることとされたため、提出書類の明確化が図られた形となっている。 ただし、上述した④の改正により、居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積が拡大(それぞれの限度面積まで適用可能)されたことにより、「限度面積要件の判定」の計算が複雑となっているため、記載に当たっては十分に注意したい。 なお、今回の申告書類の公表に合わせて、一般納税者に向けた下記のパンフレットが公表されている。   〇「結婚・子育て資金の贈与税非課税特例」への対応 平成27年度改正で創設され4月1日に施行された「結婚・子育て資金の贈与税非課税特例」への対応としては、対象期間中に贈与者が死亡した場合に、その残額が相続税の課税価格に加算されるものの、2割加算の対象とならないことなどを受け、 第4表 相続税額の加算金額の計算書・暦年課税分の贈与税額控除額の計算書 第14表 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに寄附した相続財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書 はそれぞれ平成27年4月1日以後の相続等ついて、別途「平成27年4月分以降用」の様式が用意されているため留意しておきたい。   〇マイナンバーは平成28年分以降から~すでに様式案が公表済み 話題のマイナンバーであるが、本制度は平成28年1月からスタートするため、相続税申告実務においては平成28年1月1日以後の相続開始分から適用されることとなる。このため今回公表された新様式には反映されていない。 なお、確定様式ではないが、国税庁のマイナンバー関連のホームページにおいて、事前情報提供として6月30日付けで、「個人番号又は法人番号」欄が追加された「相続税の申告書第一表(平成28年分以降用)」が掲載されているので、参考までに確認しておきたい。 (了)

#No. 126(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2015/07/07

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成26年10月~12月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成26年10月~12月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、平成26年6月23日、「平成26年10月から12月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加されたのは表のとおり、全14件の裁決である。今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部取り消された事例が10件、棄却又は却下された事例が4件であった。税法・税目としては、国税通則法が6件となっており、以下、法人税法関係が3件、所得税法関係が2件、相続税法関係、消費税法関係及び印紙税法関係が各1件であった。 【公表裁決事例平成26年10月~12月の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された14件の裁決事例のうち、注目される事例を紹介したい。なお、毎回のことであるが、論点を簡素化するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。   1 更正又は決定等(更正決定通知における処分の理由)・・・① (1) 争点 審査請求における争点は次のとおりであり、収益の帰属が最大の争点であり、それに付随する形で、推計課税の合理性や隠ぺい又は仮装した事実があったかが争点となっていた。 (2) 審判所の判断 これらの争点のうち、収益の帰属等について、審判所は以下のように判示して、原処分が適法であるとした。 その一方、請求人が主張していない「青色取消処分」について、処分そのものは適法であるとしたものの、原処分庁は、青色取消処分に伴い、青色欠損金の繰越控除が適用されないことから、控除金額を所得金額に加算して更正処分を行っているが、その理由を示していないことが認められるとした。 これに対し、原処分庁は、以下のとおり主張した。 しかし、審判所は、行政手続法第14条第1項本文の趣旨を説示したうえで、更正処分をする際は当該更正通知書自体に処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるという法の要求にかなう程度に理由を示す必要があるというべきであるから、理由の提示に不備があったとの判断が妨げられることはないと結論づけた。   2 調査手続(事前通知)・・・⑥ (1) 争点 争点は次の4つであるが、本稿では、これらのうち、①の「調査手続に処分を取り消すべき程度の違法事由があったか否か」について、審判所の判断を確認したい。 (2) 事前通知が行われたか否かの判断 原処分庁の「平成24年分の所得税の調査は、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査に該当し、平成23年法律第114号附則第39条第3項により通則法第74条の9第1項の適用はない」という主張に対して、審判所は、「調査は、納税義務者について税目と課税期間によって特定される納税義務に関してなされるものである」として、「請求人に対する平成24年分の所得税の調査は、独立した一の調査となり、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査には該当」しないとして、これを斥けた。 一方、請求人の主張に対しても、「調査担当職員は、通則法第74条の9第1項に基づく事前通知である旨を明示的に通知することなく、請求人と電話による応答を行い、請求人の事務所に臨場していることが認められる」とはしたものの、「調査担当職員は通則法に規定する事前通知事項のうち、調査の対象税目及び調査の対象期間に加えて、調査の開始時期、調査の場所、調査の目的及び調査の対象となる帳簿書類を請求人に対し通知していると認められ」るとして、請求人の主張には理由がない、と判断した。 (3) 調査理由の開示 上記(2)に加えて、請求人は、調査理由の説明を求めたにもかかわらず、調査担当職員が具体的な調査理由を説明しなかったことは違法であるという主張をしたが、審判所は、「税務職員が調査に際し、納税者に対して具体的な調査理由を開示することは法律上の要件とされて」いないこと、「質問検査権に基づいて行う税務調査は適正な租税負担の実現のために行うものである」から、過少申告の疑いが明らかでない場合でも、「申告の真実性や正確性を確認するために行い得ると解するのが相当である」としたうえで、「調査担当職員は、調査に当たり、申告内容の確認のための調査である旨を請求人に通知していると認められるから、それ以上の具体的な調査理由の開示がなかったとしても、本件調査が違法となるものではない」と判断している。   3 仕入税額控除(課税仕入れ等の経費区分)・・・⑬ (1) 争点 大きな争点としては、請求人が締結した賃貸借契約が、「賃貸借期間の中途において解除をすることができないもの」又は「これに準ずるもの」に該当するとした場合(争点②)には、売買があったものとされるリース取引に該当することとなるが、その課税仕入れの用途区分が非課税売上にのみ要するものか否か(争点③)であった。 審判所は、請求人の事由により解約する場合の条件等の定めがない賃貸借契約(裁決中では「L契約」)については、法人税法第64条の2第3項第1号の規定に該当すると認定したうえで、個別対応方式の計算上、非課税売上(具体的には住宅の貸付け)のみに要する課税仕入れに区分すべきであるという原処分庁の主張を斥けた。 (2) 審判所の判断 請求人が営む老人ホーム事業について、審判所は以下のように認定した。 そのうえで、結論として、本物件の「リース取引に係る課税仕入れについての個別対応方式の適用に当たって、その課税仕入れの用途区分については、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れに区分するのが相当である」としている。 (了)

#No. 126(掲載号)
#米澤 勝
2015/07/03

《速報解説》 東京国税局より「所得拡大促進税制」に関する文書回答事例が公表~出向者に係る給与負担金の取扱いについて確認~

 《速報解説》 東京国税局より「所得拡大促進税制」に関する文書回答事例が公表 ~出向者に係る給与負担金の取扱いについて確認~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成27年7月1日、国税庁ホームページにおいて「租税特別措置法第42条の12の4の適用における給与負担金の取扱いについて」(東京国税局・事前照会に対する文書回答事例)が公表された。 本件は、適用法人(事前照会者)が出向者を受け入れている場合において、その出向者が出向元において雇用保険の一般被保険者に該当するときには、その出向者に係る給与負担金を平均給与等支給額(及び比較平均給与等支給額)の算定基礎となる「継続雇用者給与等支給額(及び継続雇用者比較給与等支給額)」に含まれると解してよいか、という事前照会に対し、その通り解して差し支えないとの回答を得た事例である。 そこで本稿では、この文書回答事例のポイントについて解説を行う。 ただし、本事例は平成27年3月期の法人税申告に係る取扱いに対するものであり、平成27年度税制改正前の規定によっていることに留意されたい(以下の参照条文は当時のものである)。   2 制度の概要と適用要件(平成27年度税制改正前) 所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)は、以下の3つの要件を満たす場合に、雇用者給与等支給増加額の10%相当額を法人税額から控除することができるというものである(ただし法人税額の10%〈中小企業者等は20%〉を限度とする。措法42の12の4①)。 平均給与等支給額は、適用年度の継続雇用者給与等支給額(雇用者給与等支給額のうち、雇用保険一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限り、継続雇用制度適用対象者に対して支給したものを除く)を、給与等月別支給対象者の合計数で除して算定される(措法42の12の4②六、措令27の12の4⑫⑬)。 この制度の適用対象となる「雇用者給与等支給額」に関し、出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金を支出する場合において、その出向者が出向先法人の賃金台帳に記載されているときには、その給与負担金は出向先法人の「雇用者給与等支給額」に含まれる(措通42の12の4-3)。   3 事前照会の要旨 本照会は、所得拡大促進税制の適用を受ける法人(適用法人)が出向者を受け入れている場合において、「継続雇用者給与等支給額」の算定対象として、出向元法人において雇用保険一般被保険者とされている者を含めて計算すると解してよいかを確認するものである。   4 東京国税局からの回答(H27.6.17 東京国税局審理課長)   5 事前照会に係る取引等の事実関係   6 事前照会者の求める見解の内容及びその理由   7 筆者補足(一般被保険者に限定した趣旨について) 制度創設当初、平均給与等支給額は、雇用者給与等支給額から「日雇い労働者に係る給与等支給額を控除した額」に基づき算定されていた。しかしこの計算によると、月給の高い社員が退職する一方で新入社員を採用する場合など、構造的に平均給与が引き下がる場合に適用要件を満たすことができないといった問題が指摘されていた。 そこで、平成26年度の税制改正において、「一人当たりの給与等支給額」をより適切に算定するために、「継続雇用者に対する給与等支給額(継続雇用者給与等支給額)」を対応する支給人員数で除して計算することとされたのである。 継続雇用者(2期にわたり給与等の支給を受けている者)という概念を導入することによって、前期比較可能な国内雇用者のみが集計されることとなり、1人当たりの給与等支給額が前期に比べて増加しているかどうかの適切な判断が可能となった。 さらに、継続雇用者に対する給与等支給額のうち、雇用保険一般被保険者に該当する者に対する支給額のみを集計することとしたのは、一般被保険者の要件を満たす程度の継続的な雇用関係が存在する者のみを対象とすることで、一人当たり給与等支給額の増加の有無をより一層適切に判断し、本税制の制度趣旨(個人の可処分所得の増加を通じた経済活性化へのインセンティブ付与)を踏まえた一層適切な運用が可能となる、との思考によるものと考えられる。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 126(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/07/02

プロフェッションジャーナル No.126が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年7月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.126が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/07/02

monthly TAX views -No.30-「再開する政府税調-『配偶者控除』議論の行方」

monthly TAX views -No.30- 「再開する政府税調-『配偶者控除』議論の行方」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   7月から政府税制調査会が再開される。最近ではすっかり影の薄くなった政府税制調査会だが、来年夏までに策定される「中期答申」に向けて、わが国経済社会の課題を正面から受け止める税制議論を期待したいところである。 30日に公表された「骨太の方針」には、「人口動態、世帯構成、働き方・稼ぎ方など、経済社会の構造が大きく変化する中、持続的な経済成長を維持・促進するとともに、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般にわたるオーバーホールを進める。」と記載されている。 また、とりわけ所得税について、「今後の改革の中心となる個人所得課税については、税収中立の考え方を基本として、総合的かつ一体的に税負担構造の見直しを行う。」と記している。 抜本的な議論を行う中で、来年度改正としては、配偶者控除の取り扱いが大きな課題となる。 筆者は、10年ほど前から、配偶者控除を廃止して、児童税額控除のような子育てに重点を置く給付付き税額控除を創設することを主張してきた(『給付つき税額控除-日本型児童税額控除の提言』中央経済社、2008年)。 しかしそれには時間がかかるので、当面の解決策として、「移転的基礎控除」に代えることも提言してきた(『税で日本はよみがえる-成長力を高める改革』日本経済新聞出版社、2015年)。 一方、政府税制調査会は、昨年11月に、「働き方の選択に対して中立的な税制の構築をはじめとする個人所得課税改革に関する論点整理」と題する第1次レポートを公表した。その中には、「移転的基礎控除」の考え方(選択肢B)や、「税額控除」の考え方(選択肢B-2)も取り入れた3つの案が明記されている。 最近の与党や税制当局から受ける印象では、配偶者控除を「移転的基礎控除」に代える考え方は、配偶者が65万円から141万円までの所得の場合には(わずかではあるが)増税になることから、あまり評判がよくないようだ。 今後の政府税制調査会の議論は、選択肢Cである「夫婦世帯を対象とする新たな控除の導入」を中心にして議論されることになると思われる。 筆者も、新たに若い世代の結婚や子育てに配慮する観点から、新たな控除を創設することは基本的に賛成である。しかし課題もある。 第1に、それは所得控除なのか税額控除なのか、という点である。 先述の第1次レポートには、選択肢Bとしての税額控除化は明確になっているが、選択肢Cとしての税額控除化は明確にされていない。 本格的に所得再分配機能の強化を目指すというなら、所得控除ではなく税額控除にすることが望ましい。 第2に、当面は「配偶者控除」の取り扱いが議論になるが、いずれ基礎控除や扶養控除などの所得控除も議論の対象にならざるを得ない。オランダの2001年の税制改革は、それらを含めて税額控除にして、さらに夫婦間で移転できるようにした。 オランダは、同一労働・同一賃金という政策を中心に据えつつ、上述した所得税の抜本改革によって、1.5人型経済、ワークライフバランスの経済社会を作り上げた。 ここから得られる教訓は、きわめて多い。 (了)

#No. 126(掲載号)
#森信 茂樹
2015/07/02

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第3回】「欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第3回】 「欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   ③ 新設法人 連結親法人の設立の日(注1)から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する連結事業年度(注2)については、連結欠損金の控除限度額を連結所得金額の100%とする。 ただし、連結親法人が次に掲げる法人に該当する場合は除かれる。 (注1) 連結親法人が次の各号に掲げる法人に該当する場合には各号に掲げる法人の区分に応じ各号に定める日とし、連結親法人が各号のうち2以上の号に掲げる法人に該当する場合には2以上の号に定める日のうち最も早い日とする。 (※1) その他財務省令で定める法人は、本稿執筆日時点において定められていない。 (※2) その他財務省令で定める日とは、本稿執筆日時点において定められていない。 (注2) 次に定める事由が生じた場合には、その事由が生じた日以後に終了する連結事業年度を除く。 ⅰ 連結親法人の発行する株式等が金融商品取引所等に上場されたこと ⅱ 連結親法人の発行する株式等が店頭売買有価証券登録原簿に登録されたこと ◆ケーススタディ◆ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 126(掲載号)
#足立 好幸
2015/07/02

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第1回】「オープンイノベーション型の強化」

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第1回】 「オープンイノベーション型の強化」   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   1 はじめに 法人税改革が中心となった平成27年度税制改正では、租税特別措置についても一部見直しが行われ、研究開発税制に関してはオープンイノベーションの取組みを加速させることを目的とした改正がなされた。 本連載では本改正について解説するとともに、改正後のオープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)の要件等について確認していきたい。 第1回となる今回は、改正内容の確認を行う。   2 制度概要 今一度、研究開発税制について確認しておきたい。 研究開発税制とは、青色申告の法人・個人が、所得の計算上損金の額に算入される一定の試験研究費の額がある場合、その事業年度の法人税額・所得税額(国税)から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じて計算した金額を控除できる制度であり、下図のように恒久的措置である【総額型】と平成28年度までの時限措置である【増加型】【高水準型】からなる。また【総額型】には中小企業者等の特例措置(中小企業技術基盤強化税制)及びオープンイノベーション型の特例措置がそれぞれ設けられている(関連法令等については論末参照)。 ここでオープンイノベーション型が適用される特別試験研究費とは、国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究、国の試験研究機関、大学又は中小企業者に委託する試験研究のうち一定のものをいう(詳細は次回参照)。 《平成27年度税制改正前の制度概要》 (※) 経済産業省「平成27年3月までの制度概要」より   3 今回の改正内容 税額控除限度額の上限を当期法人税額の30%(措法42条の4の2)とする措置が適用期限(平成27年3月31日)をもって廃止され、新たに次の措置により、税額控除限度額の上限の総枠を当期法人税額の30%とすることとされた。 この改正は平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用される。 (1) 総額型の税額控除限度額 『試験研究費の総額に係る税額控除制度』及び『中小企業技術基盤強化税制』の税額控除限度額の上限を当期法人税額の25%とし、これらの税額控除額の計算における『試験研究費の額』には特別試験研究費を含まないこととする。 改正法を確認すると以下のとおりである。 旧措法42条の4第1項では税額控除限度額を20%(平成27年3月31日までは30%)としていたが、改正後の規定により25%に改められた。 旧措法42条の4第2項では税額控除限度額を20%(平成27年3月31日までは30%)としていたが、改正後の規定により25%に改められた。 (2) 特別試験研究費の額に係る税額控除制度 オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)について、以下の見直しが行われた。 ① 税額控除率について 改正前の税額控除率12%について、特別試験研究機関等(国の試験研究機関や大学など)との共同、または同機関等への委託をする場合には特別試験研究費を30%の税額控除対象とし、それ以外の特別試験研究費の額は20%とする。 ② 税額控除限度額について (1)とは別枠で、特別試験研究費に係る税額控除限度額を5%とする。 ③ 総額型との併用適用 改正法(後掲)において「・・・特別試験研究費の額(当該事業年度において前二項の規定の適用を受ける場合には・・・金額の計算の基礎となった特別試験研究費の額を除く。・・・)」と規定されていることから、一の特別試験研究費の額について総額型とイノベーション型の併用は認められていない。 ④ 範囲の見直し(旧措法42条の4の2) 平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度で試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の控除限度額を20%ではなく30%にする規定であったが、改正後の控除限度額の総枠を30%(総額型25%、イノベーション型5%)にすることから適用期限の到来をもって廃止された。 ①から④について、改正法を確認すると以下のとおりである。 《改正後のイメージ図》   (3) 繰越(中小企業者等)税額控除限度超過額に係る税額控除制度の廃止 適用期限の平成27年3月31日をもって、繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度を廃止する。 改正法を確認すると以下のとおりである。   (1)から(3)の改正事項をまとめると、下図のとおりである。 《研究開発税制全体における平成 27 年度改正の概要》 (※) 経済産業省「研究開発税制の改正(概要)」より   4 平成27年度改正前後の比較表 3の改正事項について、改正前後を比較すると下表のとおりである。 改正後の本制度の全体像は以下のとおりである。 《平成27年度税制改正後の制度概要》 (※) 経済産業省「平成27年4月以降の制度概要」より   *  *  * 次回は、控除枠が拡充されたオープンイノベーションの要件や適用にあたっての注意点及び税制改正により新たに適用できる企業の可否について解説をする予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#吉澤 大輔
2015/07/02

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第2回】「付加価値額の計算と平成27年度税制改正」

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項 ~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第2回】 「付加価値額の計算と平成27年度税制改正」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   前回(第1回)の記事では、法人事業税は「応益課税」の考え方に基づき課される地方税であり、行政サービスの受益規模を「所得」以外の指標に求める必要性が高まってきたこと等を踏まえ、平成15年度の税制改正において「付加価値額」及び「資本金等の額」を課税標準とする事業税(外形標準課税)が導入されたことを説明した。 この点に関し、下記リンクのとおり、平成27年7月1日、東京都における法人事業税の超過税率を定める条例が公布され、平成28年4月1日以後開始事業年度において適用される税率が明らかにされたので、あわせて参照されたい。 第2回(本稿)では、外形標準課税の概要、付加価値額の算定方法、及びこれに係る平成27年度の税制改正の内容(事業税における所得拡大促進税制)について解説を加えることとする。   1 法人事業税の種類と外形標準課税の適用対象法人 法人事業税には、所得割、付加価値割、資本割、及び収入割の4種類があり、「外形標準課税」というと一般的には「付加価値割」及び「資本割」のことを指す。 事業税の適用関係は、まず法人の営む「事業」による区分を行い、その次に「法人」の区分に従って、課される事業税の種類が決定されるという構造になっている(地法72の2①)。 具体的には下表のように決定される。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 以上の結果、外形標準課税が適用されるのは、 ということになる(地法72の2①一イ)。そして、資本金額又は出資金額の判定は各事業年度終了の日の現況によるものとされる(地法72の2②)。   2 付加価値割の課税標準となる付加価値額 付加価値割の課税標準となる各事業年度の付加価値額は、各事業年度の報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額(以下「収益配分額」という)と各事業年度の単年度損益(繰越欠損金控除前の法人税の課税所得)との合計額による(地法72の14)。なお、付加価値額の合計額がマイナスとなる場合には、ゼロとされる(下図参照)。 外形標準課税の導入検討時、政府税制調査会の中間答申(平成12年7月)において、望ましい外形基準として の4つが提示され、その中でも①事業活動価値は、法人の人的・物的活動量を客観的かつ公平に示すと同時に、各生産手段(労働・資本財・土地等)の選択に関し中立的であることや、課税ベースが広く安定的であること等、「外形基準としては理論的に最も優れた特徴を有している」とされている(※)。この事業活動価値が、現行制度の「付加価値額」の考え方の基礎となっている。 (※) 政府税制調査会「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-」(平成12年7月)p.207 以下、それぞれの要素について説明していく。 (1) 報酬給与額 ① 原則的取扱い 報酬給与額は、次の(ア)及び(イ)の額のうち、原則として、その事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものの合計額である(地法72の15①)。 以上要するに、報酬給与額は、所得税において給与所得又は退職所得とされるものであって、原則として各事業年度において法人税の所得金額の計算上損金の額に算入されるものに限られるということである。 ② 派遣労働者に対する取扱い 労働者派遣契約に基づき労働者派遣の役務の提供を受けている場合、労働者派遣契約料として労働者派遣をした者に支払う金額の75%を報酬給与額に加算する。一方、労働者派遣の役務を提供している者においては、報酬給与額から労働者派遣の対価として労働者派遣の役務の提供を受けたものから支払を受ける金額の75%を控除する(地法72の15②)。 これは、派遣元に支払う金額には、派遣元の利潤相当額が含まれているとの考え方から、原価相当額として支払金額の75%相当額を報酬給与額として取り扱うこととしたものである。 なお、報酬給与額の算定に関する具体的取扱いについては、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)第3章 事業税」(以下「事業税取扱通知」という)[4の2の1]から[4の2の16]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (2) 純支払利子 純支払利子は、各事業年度の支払利子の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものに限る)の合計額から、各事業年度の受取利子の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものに限る)の合計額を控除した金額による(地法72の16①)。 なお、純支払利子の算定に関する具体的取扱いについては、事業税取扱通知の[4の3の1]から[4の3の11]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (3) 純支払賃借料 純支払賃借料は、各事業年度の支払賃借料の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものに限る)の合計額から、各事業年度の受取賃借料の額(当該事業年度の法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものに限る)の合計額を控除した金額による(地法72の17①)。 ここで「支払賃借料」とは、法人が各事業年度において土地又は家屋(これらと一体となって効用を果たす構築物及び附属設備を含む)の賃借権、地上権、永小作権その他の土地又は家屋の使用又は収益を目的とする権利で、その存続期間が1月以上であるもの(以下「賃借権等」という)の対価として支払う金額をいう(地法72の17②)。 なお、純支払賃借料の算定に関する具体的取扱いについては、事業税取扱通知の[4の4の1]から[4の4の8]に詳細に記載されているので、参考にされたい。 (4) 雇用安定控除 報酬給与額が収益配分額の70%を超える場合、その超える部分を付加価値額から控除する(地法72の20①)。これを「雇用安定控除」という。 報酬給与額(を含む収益配分額)と単年度損益との間には、収益配分額を減少させれば単年度損益が増加するという関係がある。つまり、報酬給与額を減少させても単年度損益が増加するだけで、全体としての付加価値額には影響しないのである。 この点、雇用安定控除は、報酬給与額を引き下げるとむしろ付加価値額が増加するという仕組みを整えることによって、安易な報酬給与額の引下げを防止することを目的とするものである。「雇用安定控除」という用語は、この趣旨から導かれるものである。   3 平成27年度税制改正(事業税における所得拡大促進税制の導入) (1) 改正の趣旨 平成27年度の税制改正によって、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)の適用要件がさらに緩和され、制度の一層の利用促進が期待されるところである。賃上げに基因する個人の可処分所得の増加が個人消費や個人投資の拡大につながり、ひいてはわが国の経済活性化に資するという流れを早期に確立したいという趣旨が垣間見える。 しかしながら、所得拡大促進税制を適用することによる雇用者給与等支給額の増加は、外形標準課税における付加価値額(報酬給与額)の増加をもたらすのである。法人税では減税メリットがあるが、事業税負担が増加することによって、全体としての減税幅が縮小してしまうという問題点が指摘されていた。 そこで、平成27年度の税制改正では、所得拡大促進税制の適用を受ける法人に対し、事業税付加価値割の計算上、一定の調整を加えた雇用者給与等支給増加額を付加価値額から控除することとされた(地法附則9⑬)。 (2) 適用時期 平成27年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。 (3) 用語の定義 租税特別措置法に規定されている定義をそのまま用いており、事業税固有の定義はない。 (4) 適用要件 法人税における所得拡大促進税制の適用要件と同様である。すなわち以下の3つの要件をすべて満たす必要がある。 (※) 「増加促進割合」という用語は平成27年度税制改正で創設されたものであり、内容は以下の通りである(地法附則9⑮)。 ・平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する適用年度:3% ・平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する適用年度:4% ・平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する適用年度:5% (5) 控除額の計算 以下の算式によって計算された金額を、付加価値額の金額から控除する。 このような調整が入るのは、雇用者給与等支給増加額を報酬給与額から直接控除してしまうと、上記2(4)で述べたように、雇用安定控除が縮小し付加価値額がむしろ増加するという計算構造になっているためである。 上の計算式によって計算された控除額は、雇用安定控除の次の行で控除されることとなる。 (6) 適用上の留意点 ① 課税標準の調整計算であること 法人税(租税特別措置法)における所得拡大促進税制は「税額控除」であるのに対し、事業税における所得拡大促進税制は「課税標準の減額調整」である。 そのため、法人税で税額控除が発生しない場合であっても、適用要件を満たしている以上、事業税における所得拡大促進税制の適用が可能である(付加価値額から控除できる)点、留意が必要である。 ② 連結法人は単体ベースで適用要件を判断することとなること 連結納税制度の適用を受ける法人については、所得拡大促進税制は連結グループ全体で適用要件の充足を判定することとなる(措法68の15の5)が、事業税における所得拡大促進税制は単体法人への適用となることから、適用要件も各連結法人が単体で判断することとなる。 そのため、連結グループ全体としては適用要件を満たさず、連結法人税について所得拡大促進税制を適用できない場合であっても、各連結法人が単体で適用要件を満たしている場合、事業税において所得拡大促進税制の適用は可能である点、留意が必要である。 ③ 当初申告要件なし 法人税(租税特別措置法)における所得拡大促進税制では当初申告要件があり、控除税額は、確定申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額を上限とする(措法42の12の4④)が、事業税における所得拡大促進税制には当初申告要件は付されていない。 そのため、確定申告時に適用を失念した場合であっても、更正の請求が可能である点、留意が必要である。 *  *  * 次回は資本割の算定、「資本金等の額」に係る平成27年度の税制改正の内容、及び事業税の負担軽減措置について解説する予定である。 (了)

#No. 126(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/07/02
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