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《速報解説》 IASBによるIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の公表について

《速報解説》 IASBによるIFRS第15号 「顧客との契約から生じる収益」の公表について   公認会計士 松橋 香里   2014年5月28日に国際会計基準審議会(IASB)からIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」が公表された。本基準について、要点を解説する。   はじめに 新基準では取引価格の決定には変動対価の見積もりが含まれ、それらは個々の履行義務に配分される。従って、従来よりも見積もりや判断の要素が多くなるであろう。また、企業によっては認識のタイミングが変わることが予想される。 IFRS第15号は、影響の大小はあれ、ほぼすべての企業に関連する基準であることから、個々の企業は自社にどのような影響を及ぼすのかを詳細に検討しなければならないものと思われる。   1 改訂の経緯・趣旨 国際会計基準にはIAS第18号「収益」、IAS第11号「工事契約」が存在していたが、これらは複雑な取引に適用するための指針が不足していた。一方で米国基準では業態毎に詳細な会計処理が求められており、類似する取引に対して異なる会計処理が適用されるという問題が指摘されていた。 このため、国際会計基準審議会と米国財務会計基準審議会(FASB)は、財務諸表の比較可能性を高めるため、原則としてすべての業界に適用される単一の基準の開発を共同で進めてきた。収益は企業の業績を示す最も重要な指標であることから、実務上の検討事項は多岐にわたり、最初の公開草案から約4年にわたる長期のプロジェクトは長い審議期間を経て、ようやく完成に至ることとなった。   2 新基準の特徴 新基準の特徴は、これまでの「リスク・経済価値アプローチ」に代えて、「履行義務アプローチ」を採用したことである。履行義務アプローチのもとでは、企業は顧客に対する履行義務を果たした時に収益を認識することとなる。 すなわち、企業は契約時点で顧客に対する財及びサービスを引き渡す義務(履行義務)を負い、対価請求権を得る。そして実際に財及びサービスを顧客に移転した時点で履行義務が消滅し、履行義務に配分された取引価格を収益として認識すると同時に対価請求権を資産として認識することになる。資産及び負債の変動に着目して収益を認識することから、概念フレームワークと整合した会計処理といえる。   3 適用上の論点 収益は具体的には以下の5ステップで認識される。 Step1(契約の識別) ―会計処理の対象となる契約を特定する 企業はまず、契約が基準の適用対象となるか否かを特定しなければならない。 契約は文書に限らず、口頭や企業の慣習的な事業慣行が含意される場合もあるが、(法律上の)強制力をもち、経済的な実質を伴うものでなければならない。 また、一定の条件を満たす場合には、企業は複数の契約を結合し、一つの契約として会計処理を行わなければならない。 新基準では、本基準の適用対象となる契約か否かを判定する際に、顧客の信用リスクを考慮することが示された(再公開草案からの変更点)。 すなわち、契約に基準を適用するためには、企業は顧客の支払能力と支払の意思を考慮し、対価の回収可能性が高い(probable)と結論づけていなければならない。 回収可能性が高くないと判断した場合には、顧客からキャッシュを回収するまで収益を認識することができない。   Step2(契約内の履行義務の識別) ―収益を履行義務単位で認識するため、契約を各履行義務に区別する 企業は契約に基づいて、財又はサービスを顧客に提供する約束をするが、これを履行義務という。企業は契約内の財又はサービスを別個の履行義務に区別し、区別した履行義務単位で収益を認識する。区別できない場合は、単一の履行義務として会計処理しなければならない。また、一定の要件を満たす場合には複数の財又はサービスの組み合わせを単一の履行義務として会計処理しなければならない。   Step3(取引価格の算定) ―顧客から受け取る対価に基づいて取引価格を測定する 取引価格とは、企業が約束した財又はサービスと引き換えに顧客から受け取る対価の金額をいう。対価が変動する場合には取引価格の算定が困難になるが、この場合には合理的な金額を見積もった上で収益を認識する。 対価が変動する場合には、以下のすべての要件を考慮して取引価格を算定する。 対価が変動する場合、企業は加重平均法か最頻値法のいずれかの方法を用いて受け取るであろう対価をより適切に表す額を見積もる。 また、事後的な変動によって大幅な収益の戻し入れ(取消)が生じない“可能性が非常に高くなる(highly probable)”ように収益の累計額を見積もらねばならない。 ただし、知的財産のライセンスから生じる収益については、収益を生じさせる売上または利用が生じた時のみに収益が認識される。   Step4(取引価格の履行義務への配分) ―企業は各履行義務が充足された時に収益として認識される金額を決定する 取引価格を各履行義務に配分する場合、通常は各履行義務の相対的な独立販売価格に基づき配分する。このため企業は入手可能な情報を用いて独立販売価格を算定しなければならない。独立販売価格が直接的に観察可能でない場合には、合理的に入手可能なすべての情報を考慮し、適切な見積もり方法によって独立販売価格を見積もる。また、独立販売価格の変動性が高い又は不確定である場合には、残余法(取引価格の総額から他の財又はサービスの観察可能な独立販売価格の合計を控除した額を参照して独立販売価格を見積もる方法)を用いることができる。   Step5(履行義務の充足時に収益を認識) ―企業は財又はサービスの「支配」が顧客に移転し、履行義務を充足した時点で収益を認識する ここでいう支配とは、顧客が財又はサービスの販売や使用によって収益を得ることができるようになることを意味する。履行義務は、支配の移転パターンに応じて一時点もしくは一定期間にわたり充足され、収益は支配の移転パターンと整合するように認識される。 履行義務が一時点で充足される場合は、収益も一時点で認識され、履行義務が一定期間にわたり充足される場合には、収益は当該期間にわたり認識される。この場合の進捗度の測定には、インプット法またはアウトプット法など顧客への支配の移転パターンを最も適切に表す方法を用いる。   4 その他 ◎不利な履行義務 再公開草案で提案されていた不利な履行義務、いわゆる赤字履行義務に関する負債及び対応する費用の認識については当基準書では取り扱わないこととされた。 ◎開示事項 新基準では開示情報の範囲が拡大されている。企業は以下に関する情報の開示が求められる。 顧客との契約 契約に基準を適用する際の重大な判断及び当該判断の変更 顧客との契約の獲得又は履行のためのコストから認識した資産 企業は顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性が経済的要因にどのように影響されるのかを描写する主要な区分に分解しなければならない。 契約残高については、再公開草案で提案されていた調整表の作成は求められないものの、契約資産及び契約負債の期首残高及び期末残高の開示が求められる。 注記情報が増加するため、必要な情報を適時に入手できる体制を整備する必要がある。 (了)

#No. 71(掲載号)
#松橋 香里
2014/06/03

Profession Journal No.71が公開されました!~お薦め記事のご紹介~

2014年5月29日(木)AM10:30、Profession Journal  No.71 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。

#Profession Journal 編集部
2014/05/29

所得拡大促進税制・雇用促進税制の対象となる「従業者」に関する要件整理~雇用形態による適用関係の差異を検討する~ 【第1回】「雇用者等の用語定義を整理」

所得拡大促進税制・雇用促進税制の対象となる 「従業者」に関する要件整理 ~雇用形態による適用関係の差異を検討する~ 【第1回】 「雇用者等の用語定義を整理」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 我が国経済の積年の課題であるデフレ脱却からの安定的な経済成長の達成に向け、現政権は様々な経済活性化政策を打ち出している。特に、雇用対策については非常に重視されており、雇用環境および個人所得の改善を通じた経済活性化が期待される。 既に本誌にも数回にわたり寄稿したところであるが、こういった雇用対策を税制面からサポートするための租税特別措置として、雇用促進税制(雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除:措法42の12)および所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除:措法42の12の4)が設けられている。 特に所得拡大促進税制は、平成25年度税制改正で創設されたものであるにもかかわらず、直後の平成26年度税制改正(民間投資活性化のための税制改正大綱)において適用要件の緩和を行い、本税制の一層の適用促進の姿勢を見せたことは記憶に新しく、非常に特異的であった。 所得拡大促進税制の改正事項については多くの解説記事が出そろいつつあり、読者各位におかれても適用要件について一定の理解を得られていることと思う。 そこで今回は少し切り口を変え、それぞれの税制の適用対象となる「従業者」の雇用形態に着目し、いかなる雇用形態の従業者がそれぞれの税制の適用対象に含まれるのかを整理することとした。 本稿は原則として、平成26年3月31日に公布された平成26年度改正税法に基づいているが、必要に応じ、改正前の制度にも言及することとする。 なお、所得拡大促進税制に係る平成26年度改正事項については、『〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載58〕所得拡大促進税制の平成26年度改正事項と別表6(20)新様式の変更点』(竹内陽一氏)において詳細に述べられているため、そちらの記事を参照されたい。   2 所得拡大促進税制・雇用促進税制における「雇用者」概念の整理 (1) 所得拡大促進税制 本税制は、「国内雇用者」に対する給与等支給増加額の10%相当額の税額控除を認めるものであるから、「国内雇用者」の範囲を理解する必要がある。 「国内雇用者」とは、法人の使用人(当該法人の役員、役員の特殊関係者、使用人兼務役員を除く)のうち、当該法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者をいう(措法42の12の4②一、措令27の12の4①②)。 労働基準法第108条には、 との定めがあり、これを受けた労働基準法施行規則第54条では、 と定めている。 ここで「労働者」とは何かが問題となるが、労働基準法における労働者は と定義されている(9条)ことから、賃金台帳は、雇用形態にかかわらず、すべての労働者について作成する義務を負っているということになる。 したがって「国内雇用者」という概念は、基本的には雇用形態とは無関係の、比較的幅広く捉えられるものであるといえる。 他方で、適用要件の一つである「平均給与等支給額」の算定に当たっては、「継続雇用者給与等支給額」という概念が登場する。 継続雇用者の概念は、平成26年度税制改正によって新たに導入されたものであり、平成26年3月期決算法人の税務申告に当たっては、従前の平均給与等支給額の算定方法が適用されるので留意されたい(日雇い者に係る金額及び支給人数を控除して算定。ただし翌期に上乗せ控除する場合の適用要件の検討に当たっては、継続雇用者給与等支給額を用いて判断することとなる)。 「継続雇用者」とは、当該適用年度及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者をいい、継続雇用者給与等支給額は、継続雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対して支給する額に限り、一定の継続雇用制度対象者に対して支給された額を除くものとされている(措法42の12の4②六、措令27の12の4⑪)。 要するに継続雇用者とは、前期と当期の2期にわたり給与等の支給対象となった雇用保険一般被保険者(継続雇用制度の適用対象者を除く)ということである。 よって以下のケースのように、2期にわたり給与等支給対象たる雇用保険一般被保険者となっていない(1期しか支給対象になっていない)者については、平均給与等支給額の算定対象となる継続雇用者には含まれないこととなる。 継続雇用者の範囲から除外される「一定の継続雇用制度対象者」は、当該法人の就業規則において継続雇用制度を導入している旨の記載があり、かつ、雇用契約書又は賃金台帳のいずれかに当該継続雇用制度に基づき雇用されているものである者である旨の記載がある場合の当該者をいう(措規20の9)。 「継続雇用制度」とは、現に雇用している高年齢者(55歳以上)が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて65歳まで雇用する制度をいう(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9①)。 本制度の適用を受ける上では、引き続き雇用保険の一般被保険者の立場を維持することができるが、65歳を迎えた段階で本制度の適用が終了するとともに、一般被保険者としての資格を喪失する(年齢制限)。 ただし、継続雇用制度の適用を受けている中で企業との別段の合意のもと、65歳を超えても引き続き雇用が維持される状況になったときは、雇用保険の高年齢継続被保険者の資格を取得することとなる。 このように、継続雇用者と雇用保険の高年齢継続被保険者(以下参照)とは直接関連しないので、念のため申し添える。 (2) 雇用促進税制 本税制は、「基準雇用者数」1人あたり40万円の税額控除を認めるものであり、「基準雇用者数」は「高年齢雇用者を除いた雇用者」の数を期間比較して算定される(措法42の12②四)ものであるから、「雇用者」及び「高年齢雇用者」の範囲を理解する必要がある。 「雇用者」とは、法人の使用人(当該法人の役員、特殊関係者及び使用人兼務役員を除く)のうち、雇用保険の一般被保険者に該当する者をいう(措法42の12②二)。 これに対して「高年齢雇用者」とは、法人の使用人のうち雇用保険の高年齢継続被保険者に該当する者をいう(措法42の12②三)。なお「高年齢継続被保険者」とは、被保険者であって、同一の事業主の適用事業に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されているもの(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く)をいう(雇用保険法37の2)。   3 本稿の検討対象とする雇用形態 以上を踏まえ、次回(2014/6/5公開)では、以下の雇用形態ごとに、それぞれの制度適用の可否を検討していくこととする。ただし説明の都合上、60歳定年制を前提とする。 (了)

#No. 71(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2014/05/29

中小法人の〈交際費課税〉平成26年度改正のポイント 【第2回】「改正により生じた実務の疑問点」

中小法人の〈交際費課税〉 平成26年度改正のポイント 【第2回】 「改正により生じた実務の疑問点」   公認会計士・税理士 新名 貴則   前回は平成26年度改正のあらましについて解説したが、今回はこの改正を受けて新たに生じた疑問点について解説したい。 Q1 「接待飲食費の50%損金算入」と従来の「5,000円基準」の関係は? 前回解説したとおり、平成26年度税制改正において「接待飲食費の50%損金算入」が導入された。 ここでいう「接待飲食費」の定義は次のとおりである。 また、交際費課税においては以前から、いわゆる「5,000円基準」が存在する。 これは、1人当たり5,000円以下の飲食費(社内飲食費を除く)については、税務上の交際費等から除かれ、全額が損金算入されるというものである。 ここで、平成26年度税制改正によって「接待飲食費の50%損金算入」が導入された結果、従来の「5,000円基準」は適用できなくなり、飲食費はその金額に関係なくすべて50%損金算入となるのか、という疑問が生じる。 しかし、決してそのようなことはなく、改正後も「5,000円基準」を満たす飲食費は交際費等から除かれて全額損金に算入できる(措法61の4④二、措令37の5)。 ここで、1年間の交際費支出が次のとおりだったとする。 この場合、下図のような取扱いとなる。 なお、「5,000円基準」における「飲食費」の定義は次のとおりである。 したがって、帳簿書類への記載事項の要件には違いがあるが、「接待飲食費の50%損金算入」における「接待飲食費」と、「5,000円基準」における「飲食費」の範囲は同じである。 それぞれの用語の位置づけを整理すると、下図のようになる。   Q2 「接待飲食費の50%損金算入」の具体的な適用期間は? 平成26年度税制改正によって「接待飲食費の50%損金算入」が導入されたが、具体的に『いつ支出した接待飲食費が適用対象となるのか?』という疑問が生じる。 これについては において支出する接待飲食費が適用対象とされている。 「平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に支出する接待飲食費」ということではないので、注意が必要である。 したがって、3月末決算法人であれば、通常は次の2事業年度において支出する接待飲食費が対象となる。 また、仮に9月末決算法人であれば、通常は次の2事業年度において支出する接待飲食費が対象となる。 上記を図で示すと、以下のようになる。 〈9月末決算法人の適用関係〉   Q3 「年間800万円まで全額損金算入」と「接待飲食費の50%損金算入」の選択適用の手続は? 資本金1億円以下の中小法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く)では、「年間800万円まで全額損金算入」と「接待飲食費の50%損金算入」を、事業年度ごとに選択して適用できる。 具体的には法人税申告書別表15において、選択した方法に従った記入をして申告することになり、事前の申請等は要求されていない。 なお、別表15の具体的な記載方法については、次回(第3回)で解説する。   Q4 「年間800万円まで全額損金算入」と「接待飲食費の50%損金算入」はどちらが有利か? 中小法人においては決算のつど、上記のどちらが有利かを検討した上で選択適用する必要があるが、接待飲食費が年間1,600万円を超える場合は、「接待飲食費の50%損金算入」を選択した方が有利となる。 (了)

#No. 71(掲載号)
#新名 貴則
2014/05/29

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第2回】「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)②」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第2回】 「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)②」   公認会計士 佐藤 信祐   第1回目で解説したように、本事件の争点は下記の3点である。 ① 法人税法132条の2の意義【争点1】 (ⅰ) 法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(不当性要件)の解釈について (ⅱ) 「その法人の行為又は計算」の意義について ② 法人税法施行令112条7項5号の要件を充足する本件副社長就任について、法132条の2の規定に基づき否認することができるか否か【争点2】 ③ 本件更正処分に理由付記の不備があるか否か【争点3】 原告には7名の著名な学者の鑑定書、被告には今村教授のほか財務省主税局のOBである朝長税理士が鑑定書を出されており(※1)、裁判所の判断を分析する前に、それぞれ原告、被告の主張に触れてみるのも意義のあることと考えている。 (※1) 新日本法規「検証ヤフー・IDCF事件」T&Amaster 542号5頁 原告、被告の主張は、判決文の別紙4に記載されており、争点ごとにまとめられているため、第2回目以降は、それぞれの争点ごとにおける原告、被告の主張について検討したい。 (5) 法人税法132条の2の意義【争点1】についての当事者の主張 【争点1】については、法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(不当性要件)の解釈についても争われているが、「その法人の行為又は計算」の意義についても争われている。 しかしながら、後者については、本件副社長の就任が「その法人の行為又は計算」であるか否かという点を争っているが、形式的なものであると考えられるため、本稿においては、前者のみについて解説を行うこととする。 ① 被告の主張 法132条の2においては、法132条1項と同様に、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは」との文言が用いられていることに鑑みれば、同項をめぐる議論を参考とすべきであって、法132条の2の「不当」の意義についても、法132条1項の「不当」の意義について、純経済人の行為として不合理・不自然な行為又は計算によって税負担の減少が生じている場合がそれに当たると解されていることを参考とすべきである。 法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の解釈・適用は、組織再編成に係る法人の行為又は計算の特徴、組織再編税制における各個別規定の趣旨・目的について十分に考慮し、その実態に即して行われるべきである。 組織再編成によって行われる資産の移転には、事業上の必要性や、事業上の目的が全くないような場面を想定することができないことから、租税回避防止規定の適用場面として、事業上の必要性や事業上の目的が全くないことを要求することは、相当でなく、当該行為又は計算について、事業目的が完全に否定できないとしても、そのことから直ちに「不当」性が否定されるものではなく、主たる目的が租税回避目的であると認められる場合には、課税減免等に係る規定ないし制度の濫用があったとみて、否認されるべきである。 ② 原告の主張 租税回避行為の意義を踏まえると、法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は、私的経済取引プロパーの見地から合理的理由があるか否か、すなわち経済人の行為として不合理・不自然な行為又は計算か否かという観点から判断されるべきである。 特定役員引継要件の充足が「不当」と認められるか否かという本件で問題となっている争点に即して敷衍すると、当該の特定役員の就任は私法上有効であるものの、その者において特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しない場合かどうかという基準となると解される。この基準であれば、およそ職務執行の意思と事実があるかどうかを判断すれば足りることから、すべての納税者によって明確かつ客観的な基準といえるものである。 法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は、第1に、法132条1項は、租税回避行為の否認規定という点において、法132条の2と趣旨及び性質を同じくすること、第2に、法132条の2は、法132条の直後に同条の枝番として新設されたものであること、第3に、法132条の2は、法132条1項では同族会社でない法人の組織再編成取引に対応できないため、新設されたものであること、第4に、法132条の2と法132条1項は、「法人税の負担と不当に減少させる」という同一の文言を用いていること、第5に、組織再編税制の創設が議論された税制調査会の場において、法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件が、法132条1項の不当性の要件とは異なるとの解釈は、一度たりとも議論されたことはないことなどの点からすると、法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は、法132条の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件と同様に解釈されるべきである。 個別否認規定が想定している取引の否認は、原則として、現実に発生した具体的な事実を対象に、法57条3項のような個別否認規定の適用による否認に委ねられるべきであって、法132条の2は、租税負担の公平の観点からみて看過し難い具体的な不当性がある場合に限り、発動される規定と解すべきである。そして、そのような「具体的な不当性がある場合」とは、前記の通り、納税者の行為が純経済人の行為としての不合理・不自然であること、より具体的には、行為が異常ないし変則的で、かつ、租税回避以外に正当な事業目的ないし理由がないことを意味すると解すべきである。 特定役員への選任が私法上適法有効にされているという事実こそ存在するものの、特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しないような、いわば「形だけ」「名前だけ」にすぎない場合のみが、法132条の2の解釈適用上「不当」と評価されると解すべきである。 特定役員が、特定役員として職務執行するというその就任の目的に従って(主観面)、実際にも会社の経営の中枢に関与し特定役員として職務執行しており、合併後も被合併法人から承継した事業の中枢に関与している客観的事実が存在する(客観面)ならば、その就任は、経済社会において通常行われている正常な行為であるとともに、特定役員として職務執行する意思を伴った行為であり、正当な理由ないし事業目的も伴っているものであるから、異常ないし変則的で、かつ、租税回避以外に正当な事業目的ないし理由がない行為、すなわち純経済人の行為として不合理・不自然な行為であるとは到底評価できず、法132条の2の解釈適用上「不当」と評価する余地はないものと解される。 ③ 総括 このように、法人税法132条の2に規定する包括的租税回避防止規定の射程範囲については、原告側は従来の租税回避や法人税法132条の判例・学説に従って主張したのに対し、被告側は法人税法132条の判例・学説を参考にすべきとしつつも、組織再編成に係る法人の行為又は計算の特徴、組織再編税制における各個別規定の趣旨・目的からして別個に判断すべきであると主張している。 租税回避についての学説については、法人税法132条に規定する同族会社等の行為計算の否認のみを対象としたものではなく、租税回避一般について対象としたものであることから、包括的租税回避防止規定が組織再編成を利用した租税回避行為を否認するために導入されたものであるという点を考えると、原告側の主張の方が正しいようには思える。しかしながら、「租税回避以外に正当な事業目的ないし理由がない行為」とまで限定してしまうと、わずかな事業目的を外形的に作り出して、実行された組織再編成に経済的合理性があることを主張したとしても、租税回避に該当する可能性は十分にあり(※2)、訴訟上の戦術としてはともかくとして、実務上は、より保守的に考えるべきであると思われる。 (※2) 佐藤信祐(2009)『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』中央経済社12頁 本争点については、法人税法132条の2の射程範囲を同法132条よりも広く捉えるという裁判所の判断となっているが、いずれその内容についても、本連載において解説する予定である。 次回においては、【争点2】に関する当事者の主張について解説を行う予定である。 (了)

#No. 71(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/05/29

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第2回】「報酬の分割支払時の復興特別所得税の計算」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第2回】 「報酬の分割支払時の復興特別所得税の計算」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社は、フリーの経営コンサルタントと契約することになりました。報酬額は200万円(税込)で、6月に50万円、9月に残り150万円を支払う契約になっています。この場合の所得税及び復興特別所得税の計算方法についてご教示ください。 また、その経営コンサルタントが「手取額が減るので、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収をしないでほしい」と言うのですが、将来、税務調査で徴収もれを指摘されないでしょうか。 所得税及び復興特別所得税の計算方法について、6月の報酬額は100万円以下なので10.21%で源泉徴収し、9月の報酬額は100万円超なので100万円以下は10.21%、100万円超は20.42%で源泉徴収する。 また、会社が個人事業主へ支払いをする際、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が必要な場合と必要で無い場合がある。フリーの経営コンサルタントは、源泉徴収が必要な場合に該当する(所得税法基本通達204-15)。 したがって、会社が源泉徴収せずに報酬を支払った場合、将来、税務調査で所得税及び復興特別所得税の徴収もれを指摘される可能性がある。徴収もれを指摘された場合、報酬額であるはずの50万円と150万円は手取額とされることがある。 この場合、会社は手取額をもとにグロスアップ計算にて算出された所得税及び復興特別所得税を納付することになる。 (了)

#No. 71(掲載号)
#上前 剛
2014/05/29

[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした]95%ルール改正後の消費税・仕入税額控除の実務 【第7回】「「課税売上割合に準ずる割合」の実務」-課税売上割合・課税売上割合に準ずる割合の意義-

[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした] 95%ルール改正後の 消費税・仕入税額控除の実務 【第7回】 「「課税売上割合に準ずる割合」の実務」 -課税売上割合・課税売上割合に準ずる割合の意義-   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   1 課税売上割合の意義 本連載では消費税の仕入税額控除の実務についてみているところであるが、第7回となる今回は、個別対応方式の一形態であり、一般になじみの薄い「課税売上割合に準ずる割合」の意義とその選択を検討すべきケースについて見ていくこととする。 「課税売上割合に準ずる割合」の意義を検討する前に、まず「課税売上割合」の意義について見ていくこととする。平成23年度の税制改正後の課税仕入れ等に係る消費税額の具体的な計算方法は、以下の区分により行うこととなる。 上記における「課税売上割合」とは、課税期間中の国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額に占めるその課税期間中の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の割合をいう(消法30⑥、消令48①)。 これを算式で示すと、以下の通りとなる。 資産の譲渡等から非課税取引を除いたものを「課税資産の譲渡等」という(消法2①九)から、上記算式中の分子・分母の違いは非課税取引の金額ということになる。そのため、課税売上割合の計算において最も重要なのは、課税取引(免税取引を含む)と非課税取引との区分である。 なお、上記算式中分子・分母はともに税抜(消費税及び地方消費税を含まない)の金額であり、かつ売上に係る対価の返還等の金額控除後の金額である。また、課税売上割合について、原則として端数処理は行わないが、行う場合には切り捨てることとなる(注)(消基通11-5-6)。 (注) したがって、例えば課税売上割合が四捨五入して95%になる場合(94.8%のケースなど)には、その期間における課税売上高が5億円以下であっても全額控除されるわけではない(個別対応方式か一括比例配分方式の選択適用となる)ことに留意する必要があるだろう。 上記課税売上割合を計算する際、一般に注意すべき事項は以下の点である。   2 課税売上割合に準ずる割合の意義 仕入税額控除の方法の一つである個別対応方式とは、課税仕入れ等について以下のア~ウの3つの用途区分に分類し、かつ以下の算式に基づきその区分に応じた仕入控除税額を計算する方法である。 すなわち、個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合には、上記算式のとおり、原則としてウ「両方に共通して要するもの」に係る消費税額に課税売上割合を乗じることとなるが、所轄税務署長の承認を受けた場合には、当該課税売上割合に代えて、その他の合理的な割合により計算することも可能である(消法30③)。 このような合理的な割合のことを「課税売上割合に準ずる割合」という。 事業者が仕入税額控除の計算において課税売上割合ではなく「課税売上割合に準ずる割合」をわざわざ用いるのは、「両方に共通して要する課税仕入れ等(共通対応分)」を課税売上対応と非課税売上対応とに分類する際、その分類(按分)基準が課税売上割合では事業の実態に即していない、すなわち課税売上割合が事業の実態よりも低くそれを適用すると仕入控除税額が小さくなることが見込まれるため、それを回避し仕入控除税額を増額するタックスプランニングの目的があるためである。 ここで留意すべきは、「課税売上割合に準ずる割合」は税務署長の承認事項だということである。したがって、事業者が承認申請を行いそれを税務署長が認めない限り、当該割合を適用することができない。言い方を変えれば、通常のタックスプランニングのように、申告後一定期間を経て税務調査によりそのスキームが認められるかどうか確認される「不安定な」ものではなく、一度承認されれば、承認時の要件を満たしている限り税務調査で否認されるリスクはない「安全な」プランニングであるといえる。極論すれば、「ダメ元」で税務署長に承認申請をしてもよいのではないだろうか。 【「課税売上割合に準ずる割合」の位置づけ】 通達によれば、「課税売上割合に準ずる割合」の適用の前提となる「合理的な割合」とは、以下のような基準のことをいう(消基通11-5-7)。 課税売上割合に準ずる割合は、個別対応方式により課税仕入れ等に係る消費税額の計算を行っている事業者についてのみ適用され、一括比例配分方式により課税仕入れ等に係る消費税額の計算を行っている事業者には適用がないことに留意すべきである。したがって、用途区分を行っていない事業者は課税売上割合に準ずる割合の適用を受けることができないこととなる。 なお、課税売上割合に準ずる割合の適用の承認を受けた場合、共通対応分に係る仕入控除税額の計算は必ず当該承認を受けた割合を適用するのであり、仮にその後の事情の変化により課税売上割合を適用した方が有利であっても選択できないので、注意を要する(すなわち「有利選択」ではない、消法30③)。したがって、そのような場合には「課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出する必要がある。 *   *   * 次回は、課税売上割合に準ずる割合を検討すべきケースとして、事業部ごとに独立採算性を採用しているケースについて解説を行う。 (了)

#No. 71(掲載号)
#安部 和彦
2014/05/29

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第15回】「給与計算と労働保険」

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第15回】 「給与計算と労働保険」   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久   1 労働保険の概要 労働保険とは、雇用保険と労働者災害補償保険(いわゆる労災保険)とを総称したものです。 保険給付は各々の保険制度で別個に行いますが、保険料の納付等については一体として取り扱います。また、アルバイトやパートタイマーを含む労働者を1人でも雇用していれば、労働保険の適用事業所となり、事業主は成立(加入)手続を行い、労働保険料を納付する必要があります。 2 労働保険の対象者 労働保険の対象者は、職業の種類を問わず、事業に従事する者で賃金を支払われる者をいいます。 3 保険料率 雇用保険料と労災保険料は、労働保険料として併せて徴収します。具体的な保険料は、事業に従事するすべての労働者に支払う賃金総額に雇用保険料率と労災保険料率を加えた率を乗じた額となります。また、保険料は、標準報酬月額や標準賞与額ではなく、実際の給与、賞与の総額に保険料率を乗じて保険料を算出します。 (1) 雇用保険料率 平成26年4月1日から平成27年3月31日までの雇用保険料率は、次のとおりです。なお、平成25年度から変更はありません。 失業給付の保険料は労使折半ですが、雇用保険事業の保険料は全額が事業主負担であるため、事業主と労働者(被保険者)負担の保険料率が異なります。 (2) 労災保険料率 労災保険率は、事業の種類毎に過去の災害率等を考慮して定められており、54業種について最高1000分の89から最低1000分の2.5となっています。なお、詳細は「労災保険率表」をご参照ください。 4 労働保険の計算と納付方法 事業主は、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付する必要があります。 これを年度更新といい、原則して6月1日から7月10日までの間に、労働基準監督署等で手続を行います。 5 概算保険料の延納(分割納付) 概算保険料を分割して納付する制度のことをいい、原則として、納付すべき概算保険料の額が40万円以上の場合や、労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託している場合には、3回に分けて納付することができます。 また、事業主負担分の労働保険料の損金算入時期は次のとおりです(法人税基本通達9-3-3)。 6 労働保険料の計算例 〈保険料の計算〉 労働保険料は、賃金総額×(労災保険率+雇用保険率)で算定されるので、5,600,000円×(6+13.5)÷1000=109,200円となります。 また、労働者(被保険者)負担分は次のように28,000円と算定されます。事業主負担分は、雇用保険の労働者(被保険者)負担分を除いた額となるので、事業主負担分の労働保険料は、109,200円-28,000円=81,200となります。 なお、労働者(被保険者)負担額については、事業主は、労働者に賃金を支払う都度、その賃金額に応ずる労働者(被保険者)負担額を賃金から控除し、年度更新により納付するまで預かります。 (了)

#No. 71(掲載号)
#草薙 信久
2014/05/29

税務判例を読むための税法の学び方【36】 〔第5章〕法令用語(その22)

税務判例を読むための税法の学び方【36】 〔第5章〕法令用語 (その22)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   13 科料と過料 前回、「科する」の説明をする際に次回詳述するとしていた「過料」と、それと同じ音である「科料」について説明する。 ① 科料 まず刑法には、次のように規定されている。 これから分かるように、「科料」は、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留と並んで主刑の一つであるが、そのうち最も軽いものであり、罰金とともに財産刑の一種である。このため「科料」の場合には特別の定めがない限り刑法総則の規定が適用され、その手続は刑事訴訟法によることになる。 したがって、この「科料」について、前回説明した「科する」か「課する」いずれを使うかという点で確認すれば、これは刑罰の一種であるから、「科する」を使うことになる。 ② 過料 「過料」は、前回、秩序違反に対する制裁であると記した。すなわちこれは、法令違反に対して国又は地方公共団体が科する金銭罰の一種ではあるが、「罰金」や「科料」と異なり、刑罰ではない。したがって刑法総則の適用もなく、また刑事訴訟法も適用されない。 この「過料」については、原則、その「過料」を定めた各個別法規において定められた手続に従うが、特に定めがない場合又は定めのない事項については非訟事件手続法(第119条~122条)が適用されることになる。 ただし地方公共団体の条例や規則に基づき科される「過料」については、首長の処分としてなされるものとして地方自治法(第255条の3)が適用される。 なお、この「過料」の額については、「科料」と異なり通則的な定めはない。そのため「科料」の場合には単に「科料に処する」と規定することも許されるが、「過料」の場合にはこの「過料」を定めた各個別法規において額が定められる。 もっとも次の例のように、額だけを定める例が多い。例えば地方税法72条の57には、以下のように規定されている。 そしてこれを受けて東京都では、東京都都税条例の中で次のように規定している。 なお、この「過料」について先に「秩序違反に対する制裁」と記したが、詳細に分類すれば、その性格から大きく次の3つの種類に分けられる。 (A) 秩序罰としての過料 この「秩序罰としての過料」は、法令違反に対する一種の制裁と考えられるが、これを刑罰の「罰金」や「科料」としないのは、一般には、道徳的な非難をするほどでもない形式的で軽微な義務違反などに対して科されるものとされている。 例えば、「路上禁煙地区」での喫煙や吸い殻のポイ捨てを規制するいわゆる「路上喫煙禁止条例」では、多くの市区町村で「過料」を科しているが、「罰金」としているところ(例:高松市)もある。 これは、当該違反行為をその地方公共団体がどう捉えているかという当該違反行為に対する評価の問題だけではなく、「罰金」や「科料」の場合には刑法総則や刑事訴訟法の適用があるのに対し、上記のごとく「過料」にはこれらの適用がないことから、実効性の確保の点から「罰金」や「科料」ではなく「過料」としているともいわれている。このように実効性の視点から「罰金」や「科料」ではなく、「過料」としている例も多い。 (B) 執行罰としての過料 執行罰とは、「罰」という名が付いているものの、その実態は強制執行(間接強制)の方法の1つと考えられ、行政上の義務を履行しない者に対し一定額の過料を科すことを予告して心理的に強制を加え、間接的に義務の履行を促すものである。 強制執行の方法であるため、不作為が続く限り繰り返して行うことができる。 なお、この執行罰としての過料の規定例は、砂防法第36条に見ることができる。 (C) 懲戒罰としての過料 「懲戒罰としての過料」は、一定の身分のある者に対して懲戒として科す過料のことである。 裁判官分限法に規定されている「過料」はこれに当たる。 なお、先に記したように、「過料」は国の法令のみならず、地方公共団体が条例や規則に基づいても科することができる。 先に示した地方税法72条の57の例は、法律で「当該道府県の条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と地方公共団体が科することが認められていることを受けて条例で科している。しかしそれ以外に、地方自治法第14条第3項では、5万円以下の過料について一般的な権限として条例や規則で(すなわち地方公共団体独自に)過料を定めることができるとされている。 なお最後に、過料と科料を区別するために、科料を「とがりょう」と読み、過料を「あやまちりょう」と読むことがあることを付言しておく。また前回説明したように、過料の場合も制裁であるから「課する」ではなく「科する」を用いる。 (了)

#No. 71(掲載号)
#長島 弘
2014/05/29

《編集部レポート》 東京税理士会が報道関係者との懇談会を開催~消費税の軽減税率へ反対を表明・相続税の増税へ向け無料相談会を実施~

《編集部レポート》 東京税理士会が報道関係者との懇談会を開催 ~消費税の軽減税率へ反対を表明・相続税の増税へ向け無料相談会を実施~   Profession Journal 編集部   東京税理士会は2014年5月23日(金)、日本記者クラブにおいて「報道関係者との懇談会」を開催し、税制改正に関する意見発表を行った。 〇消費税の軽減税率に対し反対を表明 冒頭の田口絢子広報部長、西村新副会長の挨拶に続き、日本税務会計学会学会長の多田雄司氏より「軽減税率適用に関する考え方(会長諮問)に対する答申」(平成26年1月28日)をもとに、消費税の軽減税率導入がもたらす問題点についての指摘があった。 具体的には、軽減税率の対象品目の選定が困難であること、どのような品目を選定した場合においても所得層による逆進性の問題が解消されないこと、インボイス等の導入による中小企業の事務負担及びコスト増が問題点として挙げられた。 さらに平井貴昭調査研究部長からは「平成27年度税制及び税務行政の改正に関する意見書」(平成26年3月20日)をもとに、酒類・外食を除く「全食料品」に対して、消費税率10%時に軽減税率5%を適用した場合の逸失税収額(試算)1兆3,056 億円のうち、1兆1,424 億円(逸失税収額の87.5%)は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税額となる点など、逆進性についての具体的な検証について説明があった。 また消費税率8%引上げへの影響については、成田忠幸広報部副部長をはじめとした広報部委員より、各企業における値上げの判断等、消費税率引上げ時における取組み事例が紹介されたほか、経過措置に関する事務処理や新たな会計ソフトの導入等、負担増もあったことが報告された。   〇相続税の増税へ向け無料相談会を実施 平成27年からの相続税の基礎控除額引下げによる課税ベース拡大への影響を考慮し、東京税理士会では無料相談会(参加費無料・事前電話予約制)の取組みを行っており、2月23日(日)には東京都8会場にて開催された。 なお、同相談会は9月7日(日)においても下記のとおり実施される予定となっている。 ※詳細は東京税理士会へお問合せください。 (了)

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#Profession Journal 編集部
2014/05/29
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