検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10310 件 / 8931 ~ 8940 件目を表示

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第5回】「連結財務諸表における税効果会計」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第5回】 「連結財務諸表における税効果会計」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。前回は「個別財務諸表における税効果会計」について解説したが、今回は「連結財務諸表における税効果会計」について解説する。「連結納税における税効果会計」は次回取り上げたい。 連結財務諸表の作成は、親会社及び連結子会社の個別財務諸表を単純合算することから始まる。本解説では、単純合算「後」を解説する。 連結財務諸表における税効果会計は、以下の5つのステップに分けることができる。 この5つのステップをフロー・チャートにすると、以下のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   個別財務諸表で集計したものだけが一時差異ではない。連結手続によっても一時差異は生じる。連結手続により生じる一時差異のことを連結財務諸表固有の一時差異という。 連結財務諸表固有の一時差異についても税効果会計を適用する必要があるため、まず、連結財務諸表固有の一時差異を連結会社(納税会社)ごとに集計する(連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針(以下、「連結実務指針」という)10)。 また、連結財務諸表固有の一時差異も個別財務諸表における一時差異と同様に、将来減算一時差異と将来加算一時差異に分類することができる(連結実務指針5)。ただし、連結財務諸表固有の一時差異は、連結手続上で発生するだけで、実際の課税所得の計算には関係しないということに留意が必要である。 連結財務諸表固有の一時差異は、大きく(1)連結上の会計方針の統一により生じる一時差異、(2)資本連結により生じる一時差異、(3)成果連結により生じる一時差異に分けることができる(連結実務指針3、4)。 そのため、連結財務諸表固有の一時差異の集計の際には、一時差異が、(1)から(3)のどの内容により生じているかを検討し、集計することになる。 主な連結財務諸表固有の一時差異は以下のとおりである。 なお、連結手続上、計上される「のれん(負ののれん)」については、繰延税金負債(繰延税金資産)は計上しない(連結実務指針27)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 連結上の会計方針の統一により生じる一時差異 連結財務諸表作成にあたっては、親子会社の会計方針を統一する必要がある。この統一により子会社の貸借対照表に計上している資産又は負債と連結財務諸表に計上される資産又は負債に差額が生じる場合がある。この差額が一時差異に該当する。   (2) 資本連結により生じる一時差異 資本連結により生じる一時差異は、大きく以下の4つに分けることができる。 ① 子会社支配獲得時における子会社の資産及び負債の時価評価に伴う評価差額 連結手続上、子会社支配獲得時に子会社の資産及び負債を時価評価することにより評価差額が生じる。これにより、個別貸借対照表に計上している資産及び負債と連結貸借対照表に計上する資産及び負債に差額が生じる。この差額が一時差異に該当する。 この一時差異は、資産の売却、減価償却(償却資産の場合)等により解消される。   ② 子会社株式評価損及び投資損失引当金の連結修正に伴う差異 個別貸借対照表上の子会社株式に対して、子会社株式評価損又は投資損失引当金(以下、「子会社株式評価損等」という)を計上している場合、連結上、これらは消去する。そのため、子会社株式評価損等が税金計算上、損金算入されていない場合、子会社投資に対する個別上の簿価と連結上の簿価に差額が生じる。当該差額が一時差異(将来加算一時差異)となる(連結実務指針28)。 個別財務諸表上、子会社株式評価損等に係る繰延税金資産を計上している場合、当該将来加算一時差異に係る繰延税金負債と同額となり、連結貸借対照表上、相殺されるため(詳細は【STEP5】(3)参照)、結果的に、この連結修正に関する繰延税金資産及び繰延税金負債は計上されない。また、個別財務諸表上、子会社株式評価損等に係る繰延税金資産について、回収可能性がなく、繰延税金資産を計上していない場合は、税効果は認識しない。  【子会社株式評価損及び投資損失引当金の連結修正に伴う差異】   ③ 子会社への投資の個別上の簿価と連結上の簿価の差異 子会社の支配獲得時には、子会社への投資に対する個別上の簿価と連結上の簿価は一致している。しかし、のれんの償却や連結子会社となった後に子会社で生じる利益・その他有価証券評価差額金・為替換算調整勘定等、段階取得(複数の取引による支配獲得)に係る損益により、個別上の簿価と連結上の簿価に差額が生じる。この差額が一時差異に該当する(連結実務指針29、29-2)。 一時差異の発生原因、解消、税効果の取扱いは以下のとおりである(連結実務指針30~38-3)。   (3) 成果連結により生じる一時差異 ① 未実現損益の消去に係る差異 連結会社相互間の取引で生じた未実現損益は連結手続上、消去する。例えば、親会社が子会社へ棚卸資産を売却した場合、子会社の貸借対照表上は、親会社から取得した金額で計上されるが、連結貸借対照表上は親会社の個別貸借対照表で元々計上されていた金額(未実現損益を含まない金額)で計上されることになる。 したがって、子会社の個別貸借対照表と連結貸借対照表の計上額に差異が生じるため、一時差異に該当する。 当該一時差異は、資産の売却、減価償却費(償却資産の場合)等により解消する。 ② 債権債務の消去に伴い減額修正される貸倒引当金 連結グループ内の会社に対する債権債務は、連結手続上、相殺消去する。そのため、連結手続上、相殺した債権に個別貸借対照表上、貸倒引当金を計上していた場合、当該貸倒引当金を修正する。 これにより、個別貸借対照表上と連結貸借対照表上の貸倒引当金の計上に差額が生じるため、一時差異に該当する。 なお、税務上損金算入されているかどうかで、以下のように会計処理が異なる。 (ⅰ) 税務上、損金算入されている場合 この場合、個別貸借対照表と税務上の貸倒引当金は一致している。そのため、連結手続における貸倒引当金の修正により、「個別貸借対照表(税務)上の貸倒引当金 > 連結貸借対照表上の貸倒引当金」となる。したがって、将来加算一時差異に該当し、原則、繰延税金負債を計上する。 (ⅱ) 税務上、損金算入されていない場合 この場合、「税務上の貸倒引当金 < 個別貸借対照表上の貸倒引当金」となる。そのため、個別貸借対照表上では、将来減算一時差異が生じる。ここで、連結手続における貸倒引当金の修正により、「税務上の貸倒引当金 = 連結貸借対照表上の貸倒引当金 < 個別貸借対照表上の貸倒引当金」となる。 これにより、連結上、将来減算一時差異がなくなるため、個別貸借対照表で繰延税金資産を計上していた場合、これを取り崩す必要がある。個別貸借対照表で、繰延税金資産を計上していない場合は、税効果について、特段の検討は不要である。 【債権債務の消去に伴い減額修正される貸倒引当金】 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 連結財務諸表固有の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債も、個別財務諸表と同様に一時差異に法定実効税率を乗じて算定する。 【STEP2】では、この法定実効税率を算定する。 未実現損益の消去に係る一時差異とそれ以外の一時差異で用いる法定実効税率は異なる。そのため、それぞれで法定実効税率を算定する。   (1) 未実現損益の消去以外の一時差異における法定実効税率 未実現損益の消去以外の一時差異における法定実効税率の計算方法は、個別財務諸表と同じため、第4回「個別財務諸表における税効果会計」を参照のこと。 また、連結財務諸表においても個別財務諸表と同様に、納税会社ごとに連結決算日又は子会社の決算日現在における税法規定に基づく法定実効税率を適用する。したがって、改正税法が当該決算日までに公布されて(施行ではない)おり、将来の税率改正が確定している場合は改正後の法定実効税率を適用する。 ただし、子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、連結決算日又は仮決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行っているときは、当該子会社で適用する法定実効税率は、連結決算日又は仮決算日現在における税法の規定に基づく法定実効税率とする(連結実務指針11)。   (2) 未実現損益の消去に係る一時差異における法定実効税率 未実現損益の消去に係る一時差異に適用する法定実効税率は、計算方法は上記(1)と同様であるが、用いる法定実効税率の時点等が異なる。 未実現損益の消去に係る一時差異に適用する法定実効税率は、その取引の売却元に適用される法定実効税率が適用される。また、売却元での実際の課税関係は取引時に終了しているため、売却年度に適用された法定実効税率を用いる。 そのため、連結決算日又は仮決算日に改正税法が公布されていても、改正後の法定実効税率は用いない(連結実務指針13)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 【STEP3】では、回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する。【STEP2】で未実現損益の消去に係る一時差異とそれ以外の一時差異で別々に法定実効税率を算定したため、それぞれの一時差異に別々の法定実効税率を用いて算定する。 (1) 回収可能性考慮前・繰延税金資産の算定 回収可能性考慮前・繰延税金資産を納税会社ごとに、以下のとおり算定する。   (2) 繰延税金負債の算定 繰延税金負債も納税会社ごとに、以下のとおり算定する。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 【STEP3】で算定した繰延税金資産は、回収可能性がない限り連結貸借対照表にできない。また、繰延税金負債も例外的な場合に支払可能性の検討が必要な場合がある。ただし、未実現損益の消去に係る一時差異については、その検討方法が異なる。 そこで、【STEP4】では、納税会社ごとに未実現利益に係る一時差異とそれ以外の一時差異に分けて回収可能性を検討する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。  (1) 未実現利益の消去以外の一時差異の繰延税金資産及び繰延税金負債の検討 未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産について、その全額を連結貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか連結貸借対照表に計上できない。 そこで【STEP4】では、連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために、納税会社ごとに未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産と個別財務諸表上の繰延税金資産を合算し、「繰延税金資産の回収可能性」を検討する(連結実務指針41)。 具体的には、以下の①~③の検討が必要である(詳細は第4回「個別財務諸表における税効果会計」参照)。 (2) 未実現損益の消去に係る一時差異の繰延税金資産及び繰延税金負債の検討 ① 未実現利益の消去に係る税効果 連結手続上、消去された未実現利益に係る税効果は、未実現利益が発生した連結会社と一時差異の対象となった資産を保有する連結会社が異なるという特殊性を考慮し、かつ、従来からの実務慣行を勘案し、売却元で発生した税金額をそのまま繰延税金資産として計上する。この場合、繰延税金資産の回収可能性を検討する必要はない。 その後、未実現利益の実現(減価償却費の計上、売却等)に対応させて取り崩す(連結実務指針13)。 土地、建物等のように、未実現利益の実現が長期間にわたることになっても繰延税金資産を計上する。 ただし、無制限に繰延税金資産を計上できるわけではない。未実現利益の消去に係る将来減算一時差異の額は、売却元の売却年度における課税所得額が限度となる(連結実務指針15)。 ② 未実現損失の消去に係る税効果 未実現損失の消去に係る税効果は、売却元で課税所得の計算上、未実現損失が損金処理されたことによる税金軽減額を繰延税金負債として計上する。その後、未実現損失の実現(減価償却費の計上、売却等)に対応させて取り崩す(連結実務指針14)。 なお、未実現損失に係る繰延税金負債の計上にも限度額がある。未実現損失の消去に係る将来加算一時差異の額は、売却元の当該未実現損失に係る損金を計上する前の課税所得額が限度となる(連結実務指針15)。 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) 【STEP5】では、税効果会計の会計処理について検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等の純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果を除く)の計上 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針2)。 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金に係るものを除く)の会計処理の例は以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) 当期末の繰延税金資産-前期末の繰延税金資産 (*2) 当期末の繰延税金負債-前期末の繰延税金負債   (2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果- その他有価証券評価差額金の場合 その他有価証券評価差額に係る税効果会計の会計処理(時価>取得価額の場合)は以下のとおりである。 【会計処理】 (※) (時価-取得価額)× 法定実効税率   (3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 同一納税主体ごとに流動資産の繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債を相殺して表示する。また、同一納税主体ごとに投資その他の資産の繰延税金資産と固定負債の繰延税金負債も相殺して表示する(連結実務指針42)。 したがって、親会社と子会社、子会社間で繰延税金資産と繰延税金負債を相殺することはできない。 また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(連結財務諸表等規則15条の15)。 なお、連結計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。    (了)

#No. 71(掲載号)
#西田 友洋
2014/05/29

減損会計を学ぶ 【第9回】「共用資産の減損の兆候・のれんの減損の兆候」

減損会計を学ぶ 【第9回】 「共用資産の減損の兆候・のれんの減損の兆候」   公認会計士 阿部 光成   「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「減損会計意見書」という)、「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下「減損適用指針」という)では、共用資産及びのれんも減損会計の対象となっている。 今回は、共用資産及びのれんについて、減損の兆候を識別する際の留意点を解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 共用資産の減損の兆候 1 共用資産 減損会計基準では、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産のうち、のれん以外のものを共用資産と定義している(減損会計基準注解(注1)5)。 共用資産は、通常、単独でキャッシュ・イン・フローを生じさせることはないが、他の資産または資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産である。 共用資産には、次のようなものがある(監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)34ページ)。 2 共用資産のグルーピング 共用資産のグルーピングには、次の2つの方法がある。 減損会計基準では、上記①の方法を原則としている(減損会計意見書四、2(7))。 イメージで表すと次のようになる。 【図表1】 より大きな単位でグルーピングを行う方法 上記②の「共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法」では、各資産又は資産グループに、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で配分することになる。 イメージで表すと次のようになる。 【図表2】 共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法 (出所:図表1及び図表2については、監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)36ページ(一部、筆者が修正)) 3 共用資産に関する減損の兆候 共用資産に関して、より大きな単位でグルーピングを行う場合には、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、まず、共用資産を含まない資産又は資産グループごとに行い、その後、共用資産を含む、より大きな単位で行うことになる(減損会計意見書四、2(7)③)。 減損会計基準は、以下のいずれかに該当する場合には、共用資産に減損の兆候があることとなり、共用資産を含む、より大きな単位で減損損失を認識するかどうかの判定を行うと規定している(減損会計基準注解(注7)、減損適用指針16項、92 項)。 共用資産は、単独の資産である場合のほか、複数の資産である場合もある。 複数の資産の場合、共用資産全体について減損適用指針13項又は15項における事象がある場合のほか、共用資産全体の帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占める資産について、減損適用指針13項又は15項における事象がある場合には、減損の兆候に含まれる。 共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法を採用した場合には、共用資産に減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産又は資産グループに配分することとなり(減損会計意見書四、2.(7)②ただし書)、当該配分された各資産又は資産グループに減損適用指針12項から15項における事象がある場合、減損の兆候があることとなる(減損適用指針16項)。 福利厚生施設について減損損失を計上した事例としては、次のものがある。 東京瓦斯(株)(平成25年3月31日)   Ⅱ のれんの減損の兆候 1 のれんのグルーピング のれんのグルーピングには、次の2つの方法がある(減損会計意見書四、2.(8)②)。 のれんは、それ自体では独立したキャッシュ・フローを生まないことから、上記①の方法が原則とされている(減損会計意見書四、2.(8)②)。 2 減損の兆候 のれんを含む、より大きな単位について、減損適用指針12項から15項における事象がある場合は、のれんに減損の兆候があることとなり、より大きな単位で減損損失を認識するかどうかの判定を行う(減損会計基準注解(注7)、減損適用指針17項、95項)。 のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法を採用した場合には、のれんに減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分することとなり(減損会計意見書四、2.(8)②ただし書)、当該配分された各資産グループに減損適用指針12項から15項における事象がある場合、減損の兆候があることとなる。 のれんについて減損損失を計上した事例としては、次のものがある。 アサヒグループホールディングス(株)(平成24年12月31日) (了)

#No. 71(掲載号)
#阿部 光成
2014/05/29

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第7回:2014年5月改訂】退職給付会計④「確定拠出制度(中小企業退職金共済制度)」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第7回:2014年5月改訂】 退職給付会計④ 「確定拠出制度(中小企業退職金共済制度)」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   〈事例による解説〉 確定拠出年金に要拠出額500を掛金として拠出しています。 〈会計処理〉 〈会計処理の解説〉 確定給付型の場合、将来の金利の変動や年金資産の運用リスク等を会社が負担します。そのため、会社が拠出した掛金以外でも将来、負担が増加する可能性があります。その負担の増加を認識するために連結財務諸表上、「退職給付に係る負債」(個別財務諸表上、「退職給付引当金」)を計上する必要があります。 他方、確定拠出型は、会社が制度に対して拠出した掛金が従業員の個人ごとに明確に区分され、従業員個人が自己責任により運用指示を行い、掛金と運用成績により、将来の退職給付の額が決まる制度です。 そのため、確定拠出型の場合、将来の金利の変動や年金資産の運用リスク等は会社が負担せず、従業員が負担することになります。つまり、会社の負担は掛金の拠出額のみとなります。 したがって、会計処理は、当期に負担する要拠出額を費用処理するのみとなります(退職給付に関する会計基準第31項)。なお、要拠出額のうち、当期において未払いがある場合には、その分を未払金として計上することになります。 また、従業員に退職金等を支払っても、会社が負担する費用は掛金のみであるため、会計処理は不要です。 なお、確定拠出年金と似たような制度として、「中小企業退職金共済制度」というものがあります。これも会社は掛金のみを拠出するだけで、追加で拠出が求められるわけではありませんので、確定拠出年金と同様に、要拠出額を費用処理するのみとなります。 (了)

#No. 71(掲載号)
#西田 友洋
2014/05/29

メンタルヘルス不調と労災 【第5回】「メンタル不調者を生まない環境づくり」

メンタルヘルス不調と労災 【第5回】 (最終回) 「メンタル不調者を生まない環境づくり」   社会保険労務士 井下 英誉   はじめに 前回は、「複数の出来事又は出来事と恒常的な長時間労働を総合評価すると「強」になる場合」について、対象となり得る出来事と労務管理上のリスクについて触れた。 最終回である今回は、精神障害の労災を発生させないため、メンタル不調者を生まない環境づくりについて解説する。   1 産業医(指定医)の必要性 企業内においては、前回紹介した心理的負荷「中」程度の出来事(人事権や指揮命令権に伴う行為や対人関係に関する問題)が定期的に、または毎日のように発生していると考えられる。 もちろん、労災の認定要件に明示されているように、これらの出来事がいくら発生しても、労働者のストレス度合いが高いだけで精神障害を発病していなければ、労災申請に結びつくことはない。 しかし、現在の認定基準は、過去の判断指針等を被災者側に有利に、かつ、柔軟に改定されているため、労働基準監督署と主治医の認定事実が一致して、評価表の「強」に当たることが明らかな場合は、主治医の意見のみで認定の判断を行うことができるようになっている(過去の判断指針等では、精神科医の専門部会が全件協議することになっていた)。 これは、仮に主治医の意見に問題がある場合でも、そのまま主治医の意見が通ってしまう可能性があることを意味している。 一般的に主治医は患者(労働者)側の立場で発言をするものであるが、その多くは患者の勤務先の状況や仕事の内容までは把握してない。 つまり、勤務先のことも仕事のことも把握していない医師の判断によって、労災が認められる可能性が高まるということである。 企業側の対策としては、本当に精神障害を発病しているのか、また発病は業務上の出来事が原因なのかを正確に調査するためにも、産業医の選任(労働安全衛生法では常用労働者50人以上は義務)や指定医(精神科医等)との連携を通して、事が起こったときに企業主導で原因の調査ができる体制を整えておく必要がある。   2 ストレスチェックの必要性 心理的負荷(ストレス)がかかったときの反応は人によって異なるため、見た目だけでストレス度合いはわからない。 もちろん、以前は見られなかった問題行動が見られたり、誰が見ても塞ぎ込んでいる場合は、極度のストレス状態にあったり、精神障害を発病している可能性も考えられるが、そのような状態になる前に手を打つことが本当の意味での予防である。 昨今、国も予防の必要性を強く認識しており、労働安全衛生法改正案の中に「心の健康診断の義務化」を盛り込んでいる。 しかし、国が義務化を予定している心の健康診断は9つのチェック項目(ひどく疲れた、へとへとだ、だるい、気が張り詰めている、不安だ、落ち着かない、憂鬱だ、何をするのも面倒だ、気分が晴れない)について最近1ヶ月の状態を問うレベルである。 これではストレス状態は把握できても、その原因が把握できないため、予防に使うのは難しいと筆者は考える。 精神障害の予防を目的にストレスチェックを行うのであれば、上記項目だけではなく、心理的負荷評価表の出来事(仕事の量、仕事の質、上司・部下・同僚・顧客との関係等)や業務以外の出来事(病気、家族、教育、お金等)についても幅広く確認し、原因を明らかにする必要がある。 定期的なストレスチェックでストレス状態とその原因を把握し、産業医等の医師の意見を参考にしながら必要な措置を講じることが、労災の予防にはもっとも重要である。   3 研修の必要性 先に述べたストレスチェックは個人のストレス状態を把握することを主な目的としているが、母集団(企業全体、部署等)を広げてストレス度合いやその原因を分析することで、企業全体で取り組むべき課題を把握することが可能になる。 その代表例が研修である。 例えば、ある部署では上司との関係でストレス度合いが高い部員が多いという傾向が出た。部員への面談等を通してその原因を探った結果、上司のハラスメントが原因である可能性が高ければ、ハラスメント研修を通してハラスメントの防止を促す必要性が生じる。 一方、年齢が若くストレス耐性が低い部員が多ければ、部員一人一人がストレスに気がつき、それに対処する必要性を認識するためのセルフケア研修(「心の健康の保持増進のための指針」に定められた研修の一つ)を行うという選択肢も出てくる。 多くの中小企業では、業務に直結する専門能力の向上を目的とした教育以外の教育が体系化されていない現状からすると、上記のように目的に即した研修を行うことが有効である。   4 時間外労働削減の必要性 前回の「出来事と恒常的な長時間労働の総合評価」でも触れたとおり、長時間労働は心身の疲労を増加させ、ストレス対応能力を低下させるため、それが原因で精神障害を発病する可能性は少なくない。 時間外労働とストレスの関係に個人差はあるが、精神障害だけではなく、脳疾患、心疾患の労災認定基準でも時間外労働は重視されている点からすれば、恒常的に月80時間を超える時間外労働がある場合は、時間外労働の削減に取り組む必要性は極めて高いと言える。 (連載了)

#No. 71(掲載号)
#井下 英誉
2014/05/29

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第9回】「業種別の転嫁拒否等の留意点〔①小売業〕」

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第9回】 「業種別の転嫁拒否等の留意点〔①小売業〕」   のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳     1 大規模小売事業者に対する重点的な調査 近年、独占禁止法が禁止する優越的地位の濫用を行ったとして摘発される事例の多くは、大規模な小売業者によって占められている。それらの典型例は、取引上の地位の劣る納入業者に対し、新規開店や改装開店の際に協賛金の支払いや手伝い店員の派遣を要求したり、売れ残った商品を返品したり、代金を減額したり、自社商品を購入させたりするというものである。 このような摘発状況の背景には、強力なバイイングパワーを持つ大規模小売事業者が、メーカーよりも強い力を持つようになったという流通構造の変化があると考えられる。 そして、消費税転嫁対策特別措置法も、大規模小売事業者である特定事業者については、資本金額と関係なく、継続して商品・役務の供給を受けるすべての取引先との間で転嫁拒否等の行為を行うことを禁止しており、大規模小売事業者による転嫁拒否等の行為を警戒しているように思われる。 また、公正取引委員会等も、大規模小売事業者による消費税転嫁拒否等の行為を強く警戒している模様であり、公正取引委員会は、平成26年4月だけで、大規模小売業等の大企業を中心とした特定事業者(買手側)に対して、96件もの集中的な立入検査を行ったことを公表している。 そして、本連載第5回で解説したとおり、消費税転嫁対策特別措置法に基づく初の勧告・公表事例も、大規模小売事業者に対するものであった。 したがって、特に大規模な小売業者は、常に公正取引委員会及び中小企業庁の監視の目にさらされていると考え、転嫁拒否等の行為を行うことのないよう、厳に注意する必要がある。 なお、本連載第1回で解説したように、消費税転嫁拒否等の禁止対象となる取引は極めて広範に及ぶものの、小売業者においては、特に商品(ナショナルブランド及びプライベートブランド)の仕入取引に注意が必要であろう。   2 買いたたき及び減額に関する留意点 (1) 仕入価格の維持・引下げ 本連載第4回及び第6回で解説したように、買いたたきとは、商品・役務の対価の額を、通常支払われる対価よりも低く定める場合をいい、通常支払われる対価とは、通常、当該商品・役務の消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額をいうとされている。 そして、この場合は、特定事業者(買手)側で「合理的な理由」を説明できない限り、買いたたきと扱われ、その「合理的な理由」は、当事者間での合意があるというだけでは足りないと解される。 このように考えると、本稿執筆時点において消費税率引上げから既に約2ヶ月が経過しているとはいえ、小売業者が、平成26年3月における税込仕入価格に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い価格で商品を仕入れる場合には、「買いたたき」であるとの疑いを招き、「合理的な理由」の説明を求められることになるであろう。 「合理的な理由」の要素となりうる事情としては、市場価格の下落、仕入量の増加、より安価な仕入先の出現などが考えられる。 (2) セール等への協力依頼 小売業者は、消費税率引上げに伴う消費の落ち込みに対応するべく、様々な工夫を凝らしたセール等を行っているが、その原資を自らすべて負担することは容易でないため、仕入業者に対して協力を要請することが考えられる。 本連載第5回で解説した初の勧告・公表事例は、まさにそのような事例であった。第5回の解説をご参照いただき、同様の行為を行うことのないようにご留意いただきたい。 セール等の原資の一部を納入業者に負担させることについて、「合理的な理由」が認められる場合は、相当限定的であると考えられる。本連載第6回で解説したとおり、買いたたきに当たらない「合理的な理由」が認められるためには、特定供給事業者(売手)のコストが削減されたという客観的事情の存在が重視されているため、セール等により売上が増加し、セール等の原資を負担してもなお、売手の利益が増加するといったような事情が必要とされるであろう。また、「合理的な理由」の有無の判断に当たっては、当事者間の交渉プロセスも重視されているため、納入業者を一同に集めた説明会や、一方的に文書を送付するなどの方法ではなく、個別に協議を重ねて売手の納得を得ることも必要とされるであろう。 (3) リベートの提供要請 公正取引委員会「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方」(以下「公取委ガイドライン」という)は、リベートに関し、以下のとおり、「合理的な理由」がある場合とない場合の例をそれぞれ挙げている。 前者の事例において、合理的な理由があると判断されるポイントは、 であると考えられる。 もっとも、公正取引委員会「『消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方(案)』に対する意見の概要とこれに対する考え方」においては、「『合理的な理由』のあるリベートなのかどうかは、当該リベートの取決めがなされた時期や背景事情、取決めの内容等を踏まえて個別の事案ごとに判断することとなります」とされており、また、リベートの新規提供要請や増額変更要請については「一切許されないわけではありません。」としている。 したがって、結局のところ、リベートについて「合理的な理由」が認められるか否かは、個別の事情により判断されることになる。 また、小売業においてよく用いられるセンターフィーの取扱いについては、公取委ガイドラインは言及していないものの、上記リベートとおおむね同様の考え方が当てはまると思われる。 なお、消費税転嫁対策特別法にいう「減額」については、「合理的な理由」のある場合には適法とされているが、下請法にいう「減額」については、下請代金からリベートやセンターフィー等の名目で金銭を差し引いている限り、当事者間の合意等の個別事情を考慮するまでもなく、形式的な判断により違法とされてしまう。小売業者においても、プライベートブランド商品の製造委託については下請法が適用されるため、別途の注意が必要である。   3 商品購入、役務利用または利益提供の要請に関する留意点 公取委ガイドラインが挙げる問題事例のうち、小売業で起こりがちな事例をピックアップすると、以下のとおりである(第1部第1、4(6))。これらと同様の行為を行うことのないようにご留意いただきたい。   4 独占禁止法・下請法に抵触する行為 消費税転嫁対策特別措置法が、転嫁拒否等の行為として禁止するのは、①減額、②買いたたき、③商品購入、役務利用又は利益提供の要請、④本体価格での交渉の拒否、⑤報復行為の5つである。 したがって、特定事業者(買手)が、消費税転嫁の拒否に関連して、受領拒否、納期の延期、不当返品、支払遅延、取引拒絶、差別対価、不当な給付内容の変更、不当なやり直し等を行ったとしても、消費税転嫁対策特別措置法に違反するものではない。 しかし、これらの行為は、消費税転嫁対策特別措置法とは別途、独占禁止法上の優越的地位の濫用や、下請法違反として取締りを受ける可能性があるため、このような行為も行うことのないように留意していただきたい。 消費税率引上げに伴う優越的地位の濫用規制や下請法に関する考え方は、公取委ガイドライン第1部第2及び第3において解説されている。 (了)

#No. 71(掲載号)
#大東 泰雄、山田 瞳
2014/05/29

リゾート会員権をめぐる法律問題とトラブル事例 【第2回】「近年発生しているトラブル事例とその対応策①」

リゾート会員権をめぐる法律問題とトラブル事例 【第2回】 「近年発生しているトラブル事例とその対応策①」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   前回はリゾート会員権の権利関係及び関連する法律の複雑性について解説したが、今回からはリゾート会員権をめぐり近年発生しているトラブル事例を紹介し、その対応方法を解説する。 代表的な事例について把握しておくことは、トラブルへの対処方法を知るのみならず、リゾート会員権の取得・入会を検討する際のリスク評価としても極めて重要である。   1 会員権の取得・入会にあたっての注意点 - 解 説 - リゾート会員権をめぐるトラブルを予防するためには、まず何といっても、会員権を取得して入会する際に、十分な確認を行うことが重要である。 入会後に発生するトラブルの多くは、入会時に必要な確認を行っていれば防ぐことができるものといえる。 会員権の取得・入会にあたり主に確認すべきポイントは、以下のとおりである。 そのリゾート会員権を取得することのメリット・デメリットをあらゆる角度から慎重に検討する必要がある。 そして、調査の結果、契約事項や提供されるサービスに不明瞭な点があればクラブ側に十分確認をし、納得できる説明を受けた上で契約を締結すべきである。 なお、クラブ側に確認した結果は、回答書面やメール等により書面化しておくことが望ましい。 他方、質疑応答の中で、クラブ側の対応に誠意が見られない等の場合には、リゾート会員権の取得を見合わせることも考えるべきである。 これらの注意事項は、ゴルフ会員権等の取得を検討する際にも当てはめることができる。   2 リゾート施設の利用ができない - 解 説 - リゾート会員権は、通常、会員に対してリゾート施設の優先的な利用権を与えるものである。 会員はクラブに対して予め利用したい日時及び期間を申告して予約を取り、会員は数日から1週間前後程度の施設利用を許可される。 このような利用形態につき、広告等においては『タイムシェア』というような謳い文句で宣伝されている場合が多い。 しかし、クラブが保有する施設の数(ホテルであれば客室数、プールであれば一度に利用可能な人数等)と会員数とのバランスによっては、少ない施設に利用申込みが殺到することになるのは容易に想像できる。 そのようななかで、近年、国民生活センター等の相談窓口に寄せられる件数が急増しているのが、上記のようなケースである。 会員であるにもかかわらず施設を利用できないというトラブルを避けるためにも、まずは[ケース1]で解説したような入会前の十分な事情確認が必要かつ有効である。 それでは、不幸にして入会後に上記のようなトラブルが発生した場合には、どう対応すべきか(以下、クラブが日本国内に所在する団体であることを前提とする)。 採りうる方法としては、まず、 べきである。 そもそもリゾートクラブ会員権の取得が、リゾート施設を優先的に利用することを目的としている以上、入会したにもかかわらずシーズンに一度も施設を利用できないということは、会員契約の趣旨に反する事態といえる。 このような事態は、クラブ側が債務者として負うべき債務を履行していない、つまり債務不履行(民法415条)と評価できる場合も多い。 なお、後日民事訴訟等に発展する場合も視野に入れた証拠作りのためにも、クラブに対する申入れや履行請求は、書面で行うべきである。最低限メールでやりとりし、その経緯を後に残せる形にしておく必要がある。 このようにして施設利用の請求を繰り返し求めたにもかかわらず、施設の利用が実現しない場合には、 ことが考えられる。 これに加え、 ことが考えられる。 クラブ側との任意の協議だけでは解決しそうにない場合には、民事調停の申立てや民事訴訟の提起を検討することになろう。 (了)

#No. 71(掲載号)
#栗田 祐太郎
2014/05/29

《速報解説》 日本公認会計士協会による「監査業務と不正等に関する実態調査」について

《速報解説》 日本公認会計士協会による 「監査業務と不正等に関する実態調査」について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年5月23日付で、 日本公認会計士協会は、「監査業務と不正等に関する実態調査」(以下「実態調査」という)を公表した。 当該実態調査は、公認会計士の不正な財務報告等に関する意識や過去の経験を調査し、不正な財務報告を未然に防止又は会計監査での適切な対応を行うための施策を検討する際の参考とするために行ったものである。 実態調査では、多数のアンケート対象者に回答を依頼し、回答があったものだけを分析する手法を採っているため、分析結果を理解するに当たり、寄せられた回答が、監査業務を行う公認会計士全体の傾向を正確に反映していない可能性があることに留意が必要であると述べられているので、当該実態調査をお読みになる場合には、注意が必要である。 また、本稿では、質問内容や回答を省略して記載している部分があるので、ぜひ、実態調査の原文をお読みいただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な事項 以下では、主な質問事項とその回答について記載している。 下記以外にも貴重な分析が記載されているので、ぜひ、実態調査の原文をお読みいただきたい。   (1) 監査業務を通じて不正な財務報告に遭遇したことが何件くらいありますか(過去10年間程度を目安)。 回答者数(936人)の約半数(48.8%)の回答者が1件以上の「不正等との遭遇あり」と回答している(479人はゼロ件)。 回答者一人当たりの平均件数は2.02件である。   (2) 不正な財務報告を防止する上で障害となっていると思われるものを以下から選んで下さい。 下記の結果が記載されている。 出所:実態調査の「Ⅱ―2」に記載の表   (3) 「不正等との遭遇」の内容は次のどれに当たりますか(最も当てはまるものを選択)。 下記の結果が記載されている。 出所:実態調査の「Ⅲ―4」に記載の表 出所:実態調査の「Ⅲ―5」に記載の表   (4) 不正等に関与していた最も高位の被監査会社(法人)の関係者はどのレベルでしたか。 次の分析が示されている。 (了)

#No. 70(掲載号)
#阿部 光成
2014/05/23

Profession Journal No.70が公開されました!~お薦め記事のご紹介~

2014年5月22日(木)AM10:30、Profession Journal  No.70 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。

#Profession Journal 編集部
2014/05/22

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例14(法人税)】 「親会社の減資により特定中小企業者に該当することとなり、「中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除」の適用ができたはずとして賠償請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例14(法人税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成X5年3月期及び平成X6年3月期の法人税につき、親会社乙社の減資により100%子会社である依頼者(甲社)が特定中小企業者に該当することとなった。 これにより、甲社は「中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除」(以下、単に「特別控除」という)の適用が受けられたにもかかわらず、税理士がこれを適用しなかった。 このため、法人税等が過大納付となり、過大納付税額350万円つき賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 税理士はグループ全体の顧問税理士であった。 乙社は平成X4年9月に資本金を1億円に減資した。 甲社は乙社の100%子会社であり、資本金3,000万円、従業員30人であった。 甲社は特別控除の適用がある機械装置を平成X5年3月に2,000万円、平成X6年3月に3,000万円、それぞれ取得していた。   《基礎知識》 ◆中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法42の6⑦) 特定中小企業者が、指定期間内に新品の特定機械装置等を取得等して事業供用した場合において、特別償却の適用を受けないときは、取得価額の7%(法人税額の20%を限度)を法人税額から控除できる。 ◆「中小企業者等」の意義(措令27の4⑩) 資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち次の①②に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とする。 ① その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)の所有に属している法人 ② その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人   ◆「特定中小企業者」の意義(措令27の6⑨) 中小企業者等のうち、資本金の額又は出資金の額が3,000万円以下の法人をいう。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 甲社の資本金はもともと3,000万円であったところ、平成X4年9月に親会社乙社が減資をしたことにより、同日以後は特別控除の適用を受けることができる特定中小企業者に該当することとなった。 しかし、税理士はこれを失念したまま法人税の申告をし、甲社の社長に指摘されてはじめてその事実に気づいた。 税理士は親会社乙社にも関与しており、乙社の減資について知り得る立場にあった。 乙社が減資をした段階で甲社の特別控除の適用要件を確認していれば適用は受けられたことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 資本金の増減には注意する 法人税の場合、中小企業者だけに適用を認める特別償却や特別控除があるため、増資や減資があった場合には、特例の適用の有無をその都度確認する必要がある。 中小企業者の判定には、本事例のように甲社だけでなく、その親法人の資本金が関係してくるケースもあるので注意が必要である。 本事例は親法人、子法人とも同じ税理士が関与していたが、グループ会社内では別の税理士が関与しているケースもあることから、少なくとも申告時には親法人の資本金を確認するようにしたい。 なお、中小企業者等で資本金3,000万円超の法人には特別控除の適用はない(特別償却のみ適用可能である)ので併せて注意したい。   [ポイント②] チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築 申告時のミスは、期中処理と違い、ある程度は申告書自体をチェックすることで防げる。 したがって、申告時のチェックリストを作成して、担当者だけでなく、所長税理士又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。 (了)

#No. 70(掲載号)
#齋藤 和助
2014/05/22

《編集部レポート》 物納のハードルは、それほど高くない!?~平成18年度改正で要件が明確になった物納は困難との雰囲気だが、その実態は・・・~

《編集部レポート》 物納のハードルは、それほど高くない!? ~平成18年度改正で要件が明確になった物納は困難との雰囲気だが、その実態は・・・~   Profession Journal 編集部   来年からの相続税課税強化を前に、相続対策はもちろん納税対策に頭を痛めている納税者も多い。相続税の納税は金銭納付が原則ではあるが、それが困難な場合には物納が認められることとなる。 この物納、平成18年度税制改正で金銭納付困難理由等が明確化されたことから、物納を選択肢から外さなければならない、という雰囲気が蔓延している。だが、税務の現場では「当初想定されたほどハードルは高くない」との感想も聞かれる。   〇制度明確化の影響か、物納申請はわずか209件 物納申請件数は、国税庁ホームページによると、ピークとなった平成4年度の12,778件(平成6年度は16,066件だが特例物納7,268件を含むため排除)を境に下落し、最新のデータとなる平成24年度はわずか209件にまで落ち込んでいる。 だが、平成27年1月からの相続税の課税ベースの拡大により、税理士の間では物納に改めて注目が集まっている。 物納制度は、「金銭納付困難 ⇒ 延納困難 ⇒ 物納」と相続税納税の最終手段となっており、その前提条件となる金銭納付困難理由が平成18年度税制改正で明確化されたことから、以後、物納のハードルが上がったとみられてきた。これを裏付けるように、平成18年度から19年度の改正を境とした物納申請件数をみると1,036件から383件と大きく件数が落ち込み、改正の影響がみてとれる。 その改正内容だが、金銭納付困難理由については、改正前では「子どもが来年に大学入学予定であるため納税資金が賄えない」など、一種の“作文”をすれば認められていたが、改正後には「延納許可限度額」と「物納許可限度額」などの計算式が新たに導入され、納税者ごとに固有財産・給与所得・生活費等を基にその上限金額を計算し、物納申請や延納申請の上限金額が定められた。 加えて、管理処分不適格財産と物納劣後財産も明確化されるなど、物納が可能となる状況が限定されることとなったため、「物納は困難」との認識が税理士の間に広がり、現在に至っている。   〇厳格な要件チェックはナシ? こうした状況に対して、「それほどハードルが上がったとは思えない」と話すのは、相続税に特化した事務所に勤務するA税理士だ。 「たしかに金銭納付困難理由は明確化されましたが、例えば支出に関しても、以後に予定されている支出内容を記入すればよく、その裏付けは求められないなど、現時点でもある程度の“調整”の余地は残されている」と語る。 国税サイドの組織で相続税を扱うのは資産課税部門であるが、物納を扱うのは管理運営部門であり、物納申請者の状況についてあまりに極端な数字でなければ確認などは行われないのは従前のとおりのようだ。   〇成功のカギは相続開始前からの事前準備! また、勘違いしがちなのが、金銭納付困難であることが求められるのは物納申請者に限られる点だ。つまり、相続財産に現預金や上場株式が多く含まれていたとしても、申請者がそれらの金融財産を相続しておらず、自身の預貯金も少額などである場合には、金銭納付困難とみなされる可能性は高くなる。 すなわち、物納を成功させるポイントは、相続開始前から“いかに仕組み作りをするか”なのだという。 上記のように、誰に物納をさせるのか、そのためにどの財産を相続させるのか、またどの財産を物納にあてるのかなどを相続開始前から計画・準備する。そして、その財産について境界確定測量を行い確定図面を用意するなど収納されやすい状況を作っておくことが肝要のようだ。 国税庁が「来年からの相続税増税により相続税の申告件数が増加することに伴い、物納申請件数も増加すると予想される」と話すように、金銭納付困難の納税者の増加も想定されている。 18年度改正以前に比べれば困難となった物納――確かに従前のように相続発生後にバタバタと対応を行えばどうにか収納された状況とは異なるとはいえ、相応の準備を行っていれば、そのハードルは想像するより高くはなさそうだ。 【参考】 国税庁ホームページより ※Wordファイルはこちら 「金銭納付を困難とする理由書(延納申請・物納申請共通)」 (表面) (裏面) (了)

#No. 70(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2014/05/22
#