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生産性向上設備投資促進税制の実務 【第1回】「先端設備の要件」

生産性向上設備投資促進税制の実務 【第1回】 「先端設備の要件」   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   1 制度の概要 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法施行の日(平成26年1月20日)から平成29年3月31日までに生産等設備を構成する「先端設備」及び「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」で一定の規模以上のものの取得等をして、国内にあるその法人の事業の用に供した場合には、特別償却又は税額控除の選択適用ができる。 ただし、税額控除における控除額は、当期の法人税額の20%を上限とする。 特別償却の割合、税額控除の割合は以下の通りである(措法42の12の5①②⑦⑧)。 (注) 平成26年4月1日前に終了する事業年度において産業競争力強化法施行日(平成26年1月20日)から平成26年3月31日までの間に対象資産の取得をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において特別償却又は税額控除ができる(措法42の12の5③⑨)。   2 対象設備 具体的な対象設備は、 の大きく2つに分類される(産強法2、経産規5)。 今回は「先端設備」について解説し、「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」については次回取り上げる。   3 先端設備の要件 対象となる設備は以下のものであり、後述する3つの要件(最新モデル要件・生産性向上要件・最低取得価額要件)をすべて満たすものをいう。 (注1) サーバー用の電子計算機については、中小企業者等(情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の情報提供を行う事業を行う法人を除く)が取得又は製作をするものに限る。 (注2) ソフトウエアについては、中小企業者等が取得又は製作をするものに限る。   (1) 最新モデル要件 最新モデルであること。 「最新モデル」とは各メーカーの中で、下記のいずれかのモデルをいう。 ① 一定期間内(下表参照)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル   ② 販売開始年度が取得等をする年度及びその前年度であるモデル *  *  *   (2) 生産性向上要件 ●旧モデル(最新モデルの一世代前モデル)と比較して、「生産性」が年平均1%以上向上しているものであること。ただし、ソフトウエアについては、この生産性向上要件は不適用。 ●「生産性」の指標については、「単位時間当たりの生産量」「精度」「エネルギー効率」等、メーカーの提案を元に、各工業会がその設備の性能を評価する指標として妥当であるかを判断する。 ●あくまで比較するのは同メーカー内での新モデル・旧モデルのみであり、他メーカーとの比較や、ユーザーが元々使用していたモデルとの比較は行わない。 ●特注品であっても、カスタムのベースとなる汎用モデルや中核的構成品がある場合は、そのベースとなる旧モデルとの比較を行う。 ◆  ◆  ◆   (3) 最低取得価額要件 ●最低取得価額以上のものであること(下記参照)。 ●工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアについては、単品価額での要件に準ずるものとして、年度合計での要件を設定。 ●単品とは、機械装置、工具、器具備品においては1台又は1基、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウエアにおいては一の設備を指す。    (了)

#No. 68(掲載号)
#石田 寿行
2014/05/08

貸倒損失における税務上の取扱い 【第17回】「判例分析③」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第17回】 「判例分析③」   公認会計士 佐藤 信祐 第15回目、第16回目においては、日本興業銀行事件に係る第1審判決の内容について解説を行った。 第17回目にあたる本稿においては、控訴審判決についての解説を行う。なお、紙面の関係上、当事者が主張を行った内容については割愛し、裁判所の判断についてのみ解説を行う。 (2) 控訴審・東京高裁平成14年3月14日判決(民集58巻9号2768頁、訟月49巻5号1571頁、判時1783号52頁、税資252号順号9086、金判1141号34頁) このように、控訴審判決においては、第一審判決と異なり、国側の主張を認め、平成8年3月期ではなく、平成9年3月期の損金として処理すべきであると判断した。控訴審判決の根拠としては、債権放棄の効力が平成9年3月期に確定しているということであり、解除条件が付されているという点がその根拠となっていると考えられる。また、法人税基本通達9-6-2、9-6-1(4)、9-4-1、9-6-1(3)について、それぞれ順番に検討していることから、国側の主張や理論構成に従った判決であると考えられる。 たしかに、実務の現場においても、解除条件を付すという行為については、損失の確定性を阻害するという判断がなされることもあり、もし、債権放棄を行う前に相談を受けた場合には、細かな事実関係を聞く前であれば、直感的にそのリスクを感じる税務専門家も存在するであろう。 次回においては、最高裁判決について解説し、その後、さらなる詳細な分析を行う予定である。 (了)

#No. 68(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/05/08

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第30問】「離婚訴訟中の配偶者が居住している家屋を譲渡した場合」-配偶者等の居住用家屋-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第30問】 (最終回) 「離婚訴訟中の配偶者が居住している家屋を譲渡した場合」 -配偶者等の居住用家屋-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)とY(妻)は、6年ほど前から別居し、現在離婚訴訟中です。 Xは、横浜市にあるアパートに単身で生活しており、YはXの所有する藤沢市にある家屋に子供と一緒に居住しています。 Xは収入が低いため、Yと子供に対し生活費を送金することはしておらず、このほどXは慰謝料の支払いに充てるため、Yと子供が居住している家屋を売却することとしました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 XとYは離婚を前提としての別居であることから、転勤等の事情のため別居している場合などに認められる措通31の3-2(居住用家屋の範囲)(1)には該当せず、Xは、その所有する家屋を自己の居住の用に供しているとは認められない。 また、Xは、子供を扶養していないことから、措通31の3-6(生計を一にする親族の居住の用に供している家屋)の適用を受けることもできない。 (連載了)

#No. 68(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/05/08

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第21回】 「遺産分割協議と相続税申告」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第21回】 「遺産分割協議と相続税申告」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   相続税申告業務を進めるにあたり、一般的には、相続税申告期限までに遺産分割協議を完了させ、相続税申告を行うことが多い。 これは、小規模宅地特例、配偶者の税額軽減という相続税の特例について、遺産分割が完了していることが適用条件になっており、遺産分割が完了していないと、相続税額が大きくなるためと考えられる。 今回は、相続税申告業務を行うにあたって必要な遺産分割協議の知識を整理することとする。   1 遺産分割協議 前回述べたとおり、相続にあたり、法定相続人が複数いる場合(*1)には、遺言がなければ遺産分割協議を行う必要がある。遺産分割協議とは、相続人全員が、相続財産(債務含む)につき、誰がどの財産を取得するか、話し合うことを意味し、遺産分割を完了させるためには、この遺産分割協議を行い、相続人全員が合意する必要がある。 遺産分割協議の合意の手続であるが、 という3点を確定した上で、行う必要がある。 合意した内容(*4)は、「遺産分割協議書」として書面に記載し、法定相続人全員が自署(*5)、押印(実印による押印)を行い、印鑑証明書を添付する(*6)。 なお、法律上は、遺産分割協議のやり直しは制限されていないため、一度合意した遺産分割協議の内容を取り消し、再度、遺産分割協議を行い、合意することは可能である。ただし、この場合には、一般的には、一度合意された遺産分割内容から変動した部分については、贈与があったとみなされ、贈与税の対象となるため、留意が必要である。   2 遺産分割協議と相続税申告 相続税申告は、遺産分割協議が合意していなくても行うことは可能である。ただし、この場合には、小規模宅地特例(租税特別措置法69条の4)、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)については、相続税申告時において未分割(遺産分割協議が合意できていない状態をいう)であるため、適用要件を満たさず、適用できずに申告・納税を行うこととなる。 したがって、一般的には、相続税申告期限までに(*7)、遺産分割協議を行い、合意した上で、相続税申告を行うことが多い。 なお、未分割の状態で相続税申告を行う際には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を忘れずに提出しておく必要がある これを提出しておけば、申告期限後3年以内に遺産分割協議が合意されれば、更正の請求を行い、小規模宅地特例・配偶者税額軽減を適用することができる(相続税申告期限までに、一旦相続税を納付する必要があるが、小規模宅地特例・配偶者税額軽減を適用した場合との差額の相続税額につき、更正の請求後、還付される)。 逆に、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出を、当初の申告時に失念すると、申告期限後3年以内に遺産分割協議が合意されても、小規模宅地特例・配偶者税額軽減を適用できないため、忘れずに、対応しておく必要がある(*8)。 (了)

#No. 68(掲載号)
#根岸 二良
2014/05/08

日本の会計について思う 【第5回】「待機合格者問題が解消された今こそ取り組むべき課題」

日本の会計について思う 【第5回】 「待機合格者問題が解消された今こそ取り組むべき課題」   関西学院大学教授 平松 一夫   公認会計士法の改正 公認会計士法が改正されて、10年余りが経過した。 新公認会計士法のもとで見直され、新しくなった公認会計士試験制度は、この短い期間中に大きな問題に直面し、矛盾を露呈した。 その一つに、試験合格者が就職できないという、いわゆる「待機合格者問題」があった。 現在この問題は解消されたが、今後のためにもいま一度検討しておく必要があると考えるものである。 現在の公認会計士法は2003年5月30日に成立した。改正に至ったのは、環境の変化に伴いわが国の公認会計士監査制度がいくつかの問題点に直面していたからである。 当時求められていたのは、 などへの対応であった。 そのため公認会計士監査制度の改革が喫緊の課題とされたのである。 新たな公認会計士法により、 公認会計士法についてはこのように大きな改正がなされ、その一環として公認会計士試験制度の見直しが行われたのである。   待機合格者問題の発生 新しい公認会計士試験制度のもとでは、「公認会計士数を5万人にする」という国の方針もあり、大量の合格者が誕生することとなった。 1950年以降の公認会計士数の推移を見てみると、 1950年:  392 1960年: 2,172 1970年: 5,134 1980年: 8,357 1990年:11,401 2000年:16,656 2010年:27,792 2014年3月:34,022 となっている。 1990年まで40年間は10年ごとに約3,000人が安定的に増加していたが、2000年までの10年間に約5,000人の増加となった。その後2010年までの10年間の増加数は11,000人と急増し、最近では4年間で6,000人余りの増加となっている。 このように見てみると、最近の増加が著しいことがわかる。 その理由が試験合格者数の急増にあることは明白である。 年度別の合格者数は次の表のとおりである。なお、2005年まで(点線より上)は旧試験制度の時のデータである。 〈年度別 公認会計士試験 合格者〉   (出所:公認会計士・監査審査会ホームページ) このデータから明らかなように、2007年には合格者数が4,041人と最大になり、合格率も19.3%と最高になった。これに誘われるかのように、試験応募者数も増加し、2010年には25,648人と最高となった。 ところが、その結果として、公認会計士試験に合格しても就職できないという「待機合格者問題」が顕在化したのである。 例えば、2009年には合格者のうち28%に及ぶ約700人が待機合格者となり、 2010年には合格者のうち43%にあたる約1,000人が待機合格者になったといわれる。 社会問題になった待機合格者問題に直面して、会計士業界に対する評判は悪化し、試験応募者数も激減することとなった。 2010年に25,648人であった応募者は、2013年には13,224人と半減したのである。   世界から尊敬される公認会計士育成制度の検討を その後、試験合格者数が絞り込まれた結果、待機合格者問題は2012年にはほぼ解消し、2013年には話題にもされなくなったが、一度低下した一般社会での評判を回復させるのは容易でない。 待機合格者問題の影響は公認会計士試験の応募者数に現れただけではない。厳密なデータを持ち合わせているわけではないが、大学で会計学を専攻する学生の数が減ったようである。とりわけ、高い理念をもって2005年から設立され始めた会計大学院は一時18大学を数えたが、現在は14大学に減少している。また、存続している会計大学院でも定員を削減するところが増えている。 会計大学院は高い理念をもち、国際会計士連盟の「国際教育基準(IES)」に合致するカリキュラムを展開しており、日本として世界に誇ることができる教育の仕組みである。 しかし、現在の試験制度では、その高い理念が生かされることはない。 応募者数が減少すると、公認会計士の質を維持できるかという別の問題が気になるところである。合格者は就職できたとしても業界への社会的評価が回復しなければ長期的な展望は開けない。仮にでも会計士の質に疑念がもたれるようなことになれば、上述した①我が国資本市場の活性化、②監査と会計の複雑化・多様化・国際化、③国際的な信任の確保への対応という公認会計士法改正の趣旨は生かされないことになる。 この間、企業会計審議会で一度は公認会計士試験制度の見直しが審議されたが、頓挫した。 現行の試験制度には、いくつかの問題点がある。 受験資格がまったく設けられていないことや、公認会計士という社会性の高い職務を遂行するにもかかわらず試験科目以外には一般教育(倫理を含む)を履修することすら求められていないなどである。 これでは、強く独立性が求められる公認会計士を生む日本の試験制度が国際的に信任されるか心許ない。 待機合格者問題が解消した今こそ、わが国の公認会計士制度、とりわけ試験制度が国際的に適格とされるのかを再検討し、世界の中でも尊敬に値する公認会計士試験制度としなければならないのではないか。 その時に考慮すべき規範の一つが「国際会計教育基準(IES)」である。 日本公認会計士協会だけでなく、大学も、監督官庁も、IESを踏まえて世界に通用する職業会計人を育てる制度を確立すべきである。 (了)

#No. 68(掲載号)
#平松 一夫
2014/05/08

企業結合会計基準に対応した改正連結実務指針等の解説 【第2回】「一部売却(支配継続)の会計処理」-子会社株式から子会社株式

企業結合会計基準に対応した 改正連結実務指針等の解説 【第2回】 「一部売却(支配継続)の会計処理」 -子会社株式から子会社株式   公認会計士 布施 伸章   ◆ 解説 ◆ 1 子会社株式の追加取得の連結上の基本的な会計処理 【持分構成等のイメージ】 上記を前提に、会計処理を整理すると、次のようになる(資本連結実務指針66-2項)。 子会社株式を一部売却した場合(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限る)には、上記のように、売却による親会社の持分の減少額(「売却持分」(B:180)(※))と売却価額(A:400)との間に生じた差額(C:220)は、資本剰余金となる。また、「売却した株式に対応する持分」(E:200)を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額することになる(連結会計基準29項)。 ここで、「売却した株式に対応する持分」(200)(=増加する非支配株主持分)には、(支配獲得後に増加した)子会社に係るその他の包括利益累計額(20)部分が含まれるが、「売却持分」(180)には、(支配獲得後に増加した)その他の包括利益累計額(20)は含まれない(資本連結実務指針42項)。 この結果、(支配獲得後に増加した)子会社に係るその他の包括利益累計額のうち売却持分相当額は、売却価額と売却持分の差額として算定される資本剰余金と非支配株主持分の一部を構成することになる。 (※) 売却持分及び増額する非支配株主持分については、親会社の持分のうち売却した株式に対応する部分として計算する(連結会計基準(注9)(1))。 〔参考〕平成25年改正前会計基準と改正後会計基準による連結修正仕訳の比較 (※) 資本剰余金に振り替えられる金額220は、改正前ののれんの取崩額60と改正前の連結上の子会社株式売却益160の合計額から構成されることとなる。 (1) 平成25年改正前の会計基準による連結修正仕訳 子会社株式を一部売却した場合(売却後も支配継続)には、「売却した株式に対応する持分」(200)を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額したうえで、売却による親会社の持分の減少額(「売却持分」)(180)と投資の減少額との間に生じた差額(20)は、子会社株式売却損益の修正として処理することとされていた。また、のれんの未償却額のうち売却した株式に対応する額(60)を、子会社株式売却損益の修正として処理するものとされていた(改正前連結会計基準29項、(注9)(1))。 この結果、連結財務諸表には子会社株式売却益160(売却価額(400)と連結上の売却原価(180+60)との差額)が計上されていた。 (2) 平成25年改正後の会計基準による連結修正仕訳 子会社株式を一部売却した場合(売却後も支配継続)には、「売却した株式に対応する持分」(200)を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額したうえで、売却による親会社の持分の減少額(「売却持分」(180))と売却価額(400)との間に生じた差額(220)は、資本剰余金とすることとされた(連結会計基準29項)。 改正前会計基準による連結修正仕訳との対比でいえば、改正前会計基準では売却割合に対応したのれんの未償却額を減額させていたが、改正後会計基準では結果として資本剰余金が増加することになる。   2 売却持分に対応するのれんの未償却額の取扱い 支配獲得時に計上したのれんの未償却額については、子会社株式を一部売却した場合等において減額しないこととされている(連結会計基準66-2項)。先の数値例では、支配獲得時に計上されたのれん150は、持分が一部売却されても支配関係が継続している限り、(償却や減損の場合を除き)減額されない。 このため、子会社株式を一部売却して持分が減少したとしても、支配を獲得したときの持分に対応するのれんの償却額が、親会社株主に帰属する当期純利益に全額計上されることとなる。   3 売却関連費用の会計処理 子会社株式の一部売却に係る支払手数料等は、売却時の費用として処理することとされている(資本連結実務指針42項)。   4 連結上の税効果の会計処理 子会社株式の一部売却において、関連する法人税等(子会社への投資に係る税効果の調整を含む)は、資本剰余金から控除することとされている(連結会計基準(注9)(2))。 (了)

#No. 68(掲載号)
#布施 伸章
2014/05/08

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第42回】過年度遡及会計②「表示方法の変更」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第42回】 過年度遡及会計② 「表示方法の変更」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 前期の財務諸表の表示を変更するため、以下の表示組替の仕訳を行います。 ① 「作業くず売却益」として営業外収益の中で独立掲記した場合 ② 営業外収益の「作業くず売却益」から「売上高」に表示区分を変更した場合 〈会計処理の解説〉 「表示方法の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から、他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することをいい(過年度遡及会計基準4(6))、具体的には以下のようなものが含まれます(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針4)。 本事例における《ケース1》は、「a.財務諸表における同一区分内での科目の独立掲記、統合あるいは科目名の変更」に該当し、《ケース2》は、「c.財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更」に該当します。 ちなみに、財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更は、従来、会計方針の変更として取り扱われていましたが、過年度遡及会計基準の導入に伴い、表示方法の変更として取り扱われるようになりました。 《ケース1》の表示方法の変更を、過年度遡及会計基準適用前後で比較すると、以下のようになります。 過年度遡及会計基準適用前の財務諸表では、前期の財務諸表を組み替えないため、あたかも、当期から「作業くず売却益」という収益が発生したかのような印象を投資家に与えます。一方、過年度遡及会計基準適用後の財務諸表では、前期の財務諸表を組み替えることにより、前期と当期の「作業くず売却益」を比較することが可能となっています。 これにより、「作業くず売却益」が増加しているという会社の実態を、投資家に分かりやすく伝えることができます。 《ケース2》の表示方法の変更も同様に、過年度遡及会計基準適用前後で比較してみます。 過年度遡及会計基準適用前の財務諸表では、作業くずの売却収入を含まない売上高と、作業くずの売却収入を含む売上高を比較することとなります。また、一見すると「作業くず売却益」が当期から発生しなくなったかのような印象を投資家に与えてしまいます。 一方、過年度遡及会計基準適用後の財務諸表では、作業くずの売却収入を含んだ状態で、前期と当期の売上高を比較することが可能となるため、投資家は会社の業績をより適切に判断することが可能となります。 過年度遡及会計基準適用前後の財務諸表を比較して見ると、「財務諸表の組替え」を行うことによって、財務諸表の比較が容易になり、投資家の意思決定に対する財務諸表の有用が高まるという、過年度遡及会計基準の目的が達成されていることが分かりますね。  *   *   * 次回は、会計上の見積りの変更について解説します。 (了)

#No. 68(掲載号)
#大川 泰広
2014/05/08

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第4回:2014年5月改訂】退職給付会計①「退職一時金制度」─退職給付費用の計上及び退職金の支払い

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第4回:2014年5月改訂】 退職給付会計①「退職一時金制度」 ─退職給付費用の計上及び退職金の支払い   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   〈事例による解説〉 退職給付債務の計算を依頼している受託機関からの報告によると、期首の退職給付債務は5,000で、当期に発生する勤務費用は500です。 当社で計算した利息費用は100で、利息費用の計算に用いた割引率は2%です。また、従業員に退職金を200支払っています。 当社の退職金制度は、非積立型の退職一時金制度であるため、年金資産はありません。 なお、税効果会計は適用していません。 〈会計処理〉 1 退職給付費用の計上 2 退職金の支払い 〈会計処理の解説〉 1 退職給付費用の計上 退職給付費用は、会社が従業員へ支払うべき退職金等のうち、当期に発生した金額を計上することになります。したがって、退職金等を支払ったとき(現金主義)ではなく、発生主義に基づいて費用計上を行います。 基本的には、退職給付費用は、以下の「①+②-③」の合計により計算されます(退職給付に係る会計基準三)。 本事例では、勤務費用は500です。また、利息費用は期首の退職給付債務5,000×割引率2%=100です。さらに、非積立型の退職一時金制度のため、年金資産はないことから、期待運用収益はゼロです。そのため、退職給付費用は600となります。 なお、年金資産がある場合、期待運用収益相当額は「期首の年金資産×長期期待運用収益率」により計算されます。 また、退職給付費用の相手の勘定科目は、連結財務諸表上は「退職給付に係る負債」、個別財務諸表上は「退職給付引当金」となります(退職給付に関する会計基準第27項、第39項)。 2 退職金の支払い 退職金を従業員に支払った場合、退職給付債務が減少します。そのため、「退職給付に係る負債」又は「退職給付引当金」を取り崩します。   (了)

#No. 68(掲載号)
#西田 友洋
2014/05/08

メンタルヘルス不調と労災 【第2回】「精神障害の労災認定基準と労基署の調査」

メンタルヘルス不調と労災 【第2回】 「精神障害の労災認定基準と労基署の調査」   社会保険労務士 井下 英誉   はじめに 前回は、精神障害による労災認定の現状やその背景及び労災が認められた場合の企業活動への影響や企業の責任等について解説した。今回は、精神障害が労災と認められる要件(基準)と実際の事案が発生したときに労働基準監督署が行う調査について解説する。 なお、今回の内容は「心理的負荷による精神障害の認定基準について(平成23年12月26日付基発1226第1号)」を参考にしているため、より詳しい内容を知りたい場合は、この認定基準を参考にされたい。   1 精神障害の労災認定要件 平成23年12月26日に定められた「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、次の①、②及び③のいずれの要件も満たす対象疾病は、業務上の疾病として取り扱うとされている。 これは、対象疾病(認定基準で対象にしている精神障害)の発病の有無、発病の時期、疾患名について明確な医学的判断があることに加え、当該対象疾病の発病の前おおむね6ヶ月の間に業務による出来事で強い心理的負荷が認められた場合に労災として認定されることを意味している。 また、認定基準における対象疾病の発病に至る原因の考え方は、「ストレス脆弱性理論」に基づいており、業務による強い心理的負荷とは、精神障害を発病した労働者がその出来事及び出来事後の状況が持続する程度を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者(職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者)が一般的にどう受け止めるかという観点から評価される。   2 認定要件の具体的内容 ここからは上記3つの認定要件について、さらに詳しく解説する。 (1) 発病の有無等の判断 認定基準の対象となる精神障害は、国際的に用いられている診断ガイドラインICD-10の「精神および行動の障害」に分類される精神障害であるが、仕事に関連して発病する可能性がある精神障害は、F2からF4(特にF3とF4)とされている。 また、対象疾病の発病の有無、発病時期及び疾患名は主治医の意見書や診療録等の関係資料、請求人や関係者からの聴取内容、その他の情報から得られた認定事実により、医学的に判断される。 〈ICD-10 「精神および行動の障害」分類の一例〉 (2) 業務よる心理的負荷(ストレス)の強度の判断 認定要件②の「対象疾病の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」とは、対象疾病の発病前おおむね6ヶ月の間に業務による出来事があり、当該出来事及びその後の状況による心理的負荷が、客観的に対象疾病を発病させるおそれのある強い心理的負荷であると認められることをいう。 このため、心理的負荷の強度の判断に当たっては、当該出来事及びその後の状況を具体的に把握し、それらの心理的負荷の強度がどの程度であるかについて、「業務による心理的負荷評価表」を指標として「強」、「中」、「弱」の三段階に区分することになる(業務による心理的負荷評価表の内容については、本連載の第3回及び第4回に取り上げる)。 なお、心理的負荷評価表の「強」、「中」、「弱」が表す程度はそれぞれ以下のとおりであるが、出来事及びその後の状況の総合評価が「強」と判断される場合には、認定要件②を満たすことになる。 (3) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因の判断 認定要件③の「業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」とは、次の①又は②の場合である。 なお、業務以外の心理的負荷の判断については、対象疾病の発病前6ヶ月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務以外の出来事の有無を確認し、「業務以外の心理的負荷評価表」を指標として、その強度を判断する。 一方、本人の個体側要因については、その有無とその内容について確認し、個体側要因の存在が確認できた場合には、それが発病の原因であると判断することの医学的な妥当性を慎重に検討して、上記②に該当するか否かを判断することになる。   3 監督署の認定実務 認定要件(基準)の考え方については上記に述べたとおりであるが、実際の請求事案に対し、労働基準監督署はどのような調査を経て労災か否かを判断するのであろうか。 事案や監督署によって調査事項や内容は異なるが、ここでは一般的な調査を紹介する。 (1) 発病の有無を判断するための調査 ① 治療歴がある場合 疾病名、発病時期、発病原因について、主治医に医学的根拠に基づく意見を求める。また、心身の変調(食事量、体重、飲酒量、不眠等)の程度やそれらが認められた時期、医療機関への受診状況等について、請求人(当該労働者)から聴取する。 ② 治療歴がない場合 治療歴のない自殺の場合、当該労働者の心身の変調等の様子(いつ頃から、どのような言動があったか等)について、日常的に接触する機会を有していた者(家族、同僚等)から聴取する。 (2) 業務の心理的負荷の強度を判断するための調査 まず、請求人が精神障害の原因であると考えている出来事を把握し、その出来事の事実確認を行う。必要に応じて関係資料(勤務先への依頼も含む)の収集や請求人、同僚等から事情聴取などの調査が行われる。 また、調査の過程で発病の原因となる他の出来事が認められたときは、その出来事についても同様に調査する。 一方、出来事が明確でない場合は、請求人からの聴取内容等から、出来事を推定して調査を行う。 (3) 業務外の心理的負荷の有無を判断するための調査 請求人や主治医、関係者から業務以外の心理的負荷に関する出来事について情報を得た場合は、その内容や程度について聴取を行う。 (4) 個体側要因の有無を判断するための調査 ① 既往歴について 請求人に精神障害の既往歴があることが確認された場合には、主治医に対し発病時期、疾患名、病状、治療経過等に関する意見を求める。 ② アルコール等の依存状況について 飲酒により何らかの問題がある場合、飲酒機会の頻度、飲酒の量、酒類の種類等を調査する。 ③ 生活史(社会適用状況)について 職場の関係者から仕事への取組状況、人間関係等、また、当該労働者や家族から、生い立ち、学生生活、家庭生活における適応の状況を聴取し、問題があることが窺われる場合は、その内容を確認する。 (了)

#No. 68(掲載号)
#井下 英誉
2014/05/08

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第6回】「買いたたきに当たらない「合理的な理由」」

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第6回】 「買いたたきに当たらない「合理的な理由」」   のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳       1 どの程度安い場合に買いたたきとされるのか 消費税転嫁対策特別措置法において、買いたたきとは、 とされている。 買いたたきは下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)でも禁止されているが、同じ「買いたたき」でも、その内容は大きく異なっていることに注意しなければならない。 つまり、下請法における買いたたきは、「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」(下請法4条1項5号。下線は筆者による)をいうのに対し、消費税転嫁対策特別措置法の買いたたきの定義規定には、上記のとおり、「著しく」と「不当に」という文言が除かれているのである。 したがって、通常の対価より若干安いが、著しく安いとまで言えない場合には、下請法にいう「買いたたき」には当たらないが、消費税転嫁対策特別措置法にいう「買いたたき」には当たるということになる。   2 「通常支払われる対価」の意味 「通常支払われる対価」とは、 とされている。 したがって、消費税率引上げ前まで税込10,500円で購入していた商品については、本体価格に8%の消費税相当額を乗せた10,800円が「通常支払われる対価」であり、これを税込10,500円に据え置くことや、10,700円で購入することは、原則として買いたたきに当たることになる。   3 買いたたきに当たらない「合理的な理由」 公取委ガイドラインにおいては、商品・役務の対価の額を「通常支払われる対価に比し低く」定めても買いたたきに当たらないのは、「合理的な理由」がある場合であるとされている(公取委ガイドライン第1部第1の3(3))。 この「合理的な理由」が認められる場合については、公取委ガイドラインが、以下のとおり例を挙げている。 上記ア及びイのポイントは、いずれも以下のとおり整理することができる。 つまり、「合理的な理由」の有無を考えるに当たっては、①例えば税込10,500円であったものを10,500円のまま据え置くことについて、売手側の製造コストが下がったなどの客観的事情(客観的な理由)が認められるかという客観面と、②当事者間でどの程度十分な協議が行われたかという交渉経緯の双方が重視されるということである。 なお、上記ウはいわゆるフォーミュラ方式であり、やや特殊な事例である。   4 まとめ 今回は、買いたたきの判断基準と「合理的な理由」の基本的な考え方について述べた。 特定供給事業者(売手)との価格交渉に当たっては、本稿で述べた基本的な考え方を念頭に置き、買いたたきを行うことのないよう十分にご注意いただきたい。 (了)

#No. 68(掲載号)
#大東 泰雄、山田 瞳
2014/05/08
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