〔会計不正調査報告書を読む〕 【第29回】 株式会社アイセイ薬局 「第三者委員会調査報告書(平成27年1月30日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【調査委員会の概要】 株式会社アイセイ薬局の概要 株式会社アイセイ薬局(以下「アイセイ薬局」と略称する)は、1984(昭和59)年9月創業。調剤薬局をチェーン展開する。2011(平成23)年12月JASDAQ株式上場。連結売上高48,788百万円、連結経常利益752百万円(数字はいずれも平成26年3月期)。従業員数1,727名。本店所在地、東京都千代田区。東京証券取引所JASDAQ上場。 調査報告書のポイント 1 調査に至った経緯――証券取引等監視委員会による開示検査 調査報告書冒頭に掲げられた「当委員会設置の経緯」によれば、アイセイ薬局は、証券取引等監視委員会開示検査課による金融商品取引法第26条に基づく開示検査を受け、過去の一部の工事請負契約、土地賃貸借契約及び不動産売買契約等に基づく取引(以下「本件疑義取引」という)につき、会計処理の適正性に関し疑義を呈された。 これを受けて、アイセイ薬局は、本件疑義取引に係る事実解明及び会計処理の適正性に係る事実解明を目的として、平成26年11月28日に取締役会を開催し、アイセイ薬局と利害関係を有しない中立・公正な外部の専門家から構成される第三者委員会を設置することを決議した。 2 調査報告書により判明した事実 (1) 本件疑義取引の概要 第三者委員会が調査した本件疑義取引は大きく4つに区分されるが、取引概要を簡単に図示すると、以下のとおりである。 簡単にいえば、アイセイ薬局の資金が還流するだけの架空取引が繰り返し行われていた。 (2) 本件疑義取引が開始された経緯 アイセイ薬局代表取締役社長岡村幸彦氏(以下「岡村社長」という)の資産管理会社である株式会社おかむら(当時の社名は株式会社L&T)は、平成18年3月29日に、城北信用金庫から手形貸付により300百万円の融資を受けた。この融資は、アイセイ薬局の前身であった株式会社エルストファーマの貸借対照表に計上されていた土地約190百万円が実際には同社が所有していないものであったことから、近い将来の上場を計画していた岡本社長は、これを個人で買い取ることとして、その資金として借り入れたものであった。 その後、当該借入金は弁済期を延長して借換えを行ってきたが、平成21年3月、アイセイ薬局が外部会社へ建築代金及び賃貸借保証金を315百万円支払い、これを株式会社おかむらに還流させて、城北信用金庫へ一括弁済したものである。 その1年後、当該支払の基となった契約は合意解約され、工事代金及び賃貸保証金は平成22年5月末までに返還するものとされていたが、実際には、アイセイ薬局が別の店舗に係る保証金として支払った360百万円を原資として、資金が還流されて、未収入金が回収されたこととして処理がされている。 (3) 過年度決算に与えた影響額 本件疑義取引に関して、アイセイ薬局から支出された資金は、最終的には、岡村社長が個人的に金融機関等の第三者から資金を調達して、アイセイ薬局に返済しているため、貸借対照表の表記については修正する必要があるものの、損益的な影響はないことが判明している。 この点に関して、第三者委員会は次のようにコメントしている。とくに、後段部分の指摘は、次項でも触れるが、かなり厳しいものであると言えよう。 3 調査報告書の特徴 (1) 岡村社長の辞任 創業社長でワンマン経営者である岡村社長抜きには、アイセイ薬局のここまでの発展はなかったのは間違いないところであるが、取締役会及び監査役らが岡村社長の行動を制御できない以上、アイセイ薬局が上場会社としての適正性を有するためには、岡村社長が経営から退くという選択肢しかない――報告書にそこまでの記述はないが、先に引用したように、岡村社長による返済原資を「役員報酬の名目でアイセイ薬局が負担している」とまで書かれている以上、岡村社長は代表取締役を辞任し(2月12日付)、さらに取締役をも辞任するに至った(2月20日付)のは、当然の帰結であったと言えよう。 (2) 平成24年9月における税務調査 アイセイ薬局は、平成24年9月に麹町税務署による調査を受け、今回発覚した本件疑義取引4件のうち3件(1件はまだ取引開始前であった)について、各案件名義で支出した資金を、アイセイ薬局から取引先に対する貸付金と認定され、その他指摘事項も含めて修正申告を行っている。 その後、同年12月14日の取締役会において、顧問弁護士及び監査役からの意見に基づき、管理本部が社内調査を実施、同月26日の取締役会において報告を行った。調査により、各案件名目で支出した資金が、各取引先から岡村社長に流れていた事実が判明したにもかかわらず、取締役会、監査役らは、社内調査の結果を受け入れただけで、それ以上の原因解明や責任追及を行わなかった。 (3) 問題点と再発防止策 第三者委員会が指摘した問題点は以下の3点である。 3つに分けてはいるものの、問題の根幹は、岡村社長の経営姿勢にあり、岡村社長に対して意見具申ができない取締役会、監査役の姿勢が強く問われている。そして、再発防止策として繰り返されているのが、岡村社長の個人的な事業とアイセイ薬局との隔絶であり、岡村社長グループとアイセイ薬局との取引の解消である。 4 経営改善委員会による再発防止策策定 2月7日、アイセイ薬局は、第三者委員会による調査報告書受領後の2月6日における取締役会で、経営改善委員会を設置する決議を行ったことを公表した。その後、経営改善委員会は、再発防止策について、2月16日に中間報告を、3月6日に最終報告を公表している。 本項目では、経営改善委員会による再発防止策を検討したい。 (1) 経営改善委員会の目的 2月7日付リリースには、目的として以下のような記載がある。 (2) 経営改善委員会のメンバー 経営改善員会の構成は、以下のとおりである。なお、浅井氏及び澤井氏は、2月12日において追加選任された委員であり、その必要性について同日公表されたリリースでは、「経営改善委員会の構成に公平性を期す観点から判断」したと説明したうえで、委員の過半数を社外役員及び外部の有識者とした、ということである。 (3) 経営改善員会による不適切な会計処理の原因 第三者委員会報告書により指摘された問題点の原因として、経営改善委員会は次の5点を挙げている。第三者委員会報告書で言及がなかった「内部監査機能」についても、「平時の薬局運営に対する監査に主眼を置くもの」であったとしている点など、経営改善委員会による更なる調査・検討の跡がうかがえるところである。 (4) 再発防止策(最終報告)の内容 経営改善委員会は、再発防止策の提言として、以下の6項目を挙げている。 真っ先に取り上げられているのは「代表取締役に対するガバナンス(内部統制)の強化策」である。 (5) 再発防止策の検証 上場してもなお「岡村商店」的な体質を脱することができず、その結果、岡村社長の主導する不適切な会計処理が発覚していながら、それを追及する取締役・監査役が不存在であったことが、本件疑義取引の原因であったとすれば、岡村社長が代表取締役及び取締役を辞任し、岡村グループとの関係を隔絶すれば、ほぼ原因は撲滅できたことになろう。しかし、それだけでは、これまで岡村社長が果たしてきた「事業拡大」を誰がどのように担うのかという問題が生じてしまう。 そこで、経営改善委員会は、取締役会・監査役会の構成員の見直し(Ⅰ)、経営判断プロセスにおけるルール遵守(Ⅱ)などといった施策によって、具体化を図ったものと評価できるのではないか。 経営改善委員会の再発防止策がどこまで実効性を上げることができるかは、次回の定時株主総会における取締役・監査役の選任状況、経営を退いたとはいえ大株主であることには変わりはない岡村社長の影響力がどう排除されているかなどの検証が不可欠であろう。 5 その後公表されたリリース (1) 公認会計士等の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ 経営改善委員会による最終報告が公表される直前である平成27年3月3日には、公認会計士等の異動がリリースされた。アイセイ薬局は、それまで会計監査を担当してきた新日本有限責任監査法人との契約を合意解除し、新たに清新監査法人を一時会計監査人に選任した。 リリースに合意解除の理由についての言及はなく、退任する公認会計士等の意見についても「特段の意見はない」とのことである。 (2) 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求についてのお知らせ 次いで、3月31日には、東京証券取引所から、アイセイ薬局が4月1日から原則として1年間、特設注意市場銘柄に指定されること、上場契約違約金10百万円の支払いを求められたことをリリースした。 特設注意銘柄指定の理由については、概ね、第三者委員会調査報告書記載のとおりであるため割愛するが、上場契約違約金の徴求理由について、引用したい。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第78回】 純資産会計⑥ 「増資」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 〈事例による解説〉 【仕訳】(単位:千円) ① 申込時 ② 払込期日の到来 ③ 付随費用の支出 〈会計処理の解説〉 増資とは会社設立後に資本金を増加させることで、資金を調達し会社の財産的基盤をより強化することを目的とする募集株式の発行(有償増資)と、剰余金から資本金への振替など資本の充実を図ることを目的とする純資産の部の株主資本の中での振替(無償増資)があります。 今回は、有償増資について解説します。 募集株式の発行は、誰に新株を割り当てるかによって「株主割当増資」と「第三者割当増資」に区分されますが、いずれの場合も増資する会社にとっては払込みが行われ、株主資本が増加することに違いはないため、会計処理に相違点はありません。 本事例について、次のようなスケジュールで募集株式の発行を行ったと仮定します。 ① 申込時 申込みから払込期日までの間に募集株式の引受人から払い込まれた金銭は、新株申込証拠金として処理します(通常、振込先の金融機関が事前に決定され、金融機関は別段預金として管理することが多いと考えられるため、別段預金を使用しています)。 ② 払込期日の到来 募集株式の引受人は払込期日から株主になるため、払込期日である3月20日に資本金及び資本準備金に新株申込証拠金が充当されます。 なお、新株申込証拠金が決算日に存在する場合、株主資本の資本金の区分の次に区分を設けて表示することになります(「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」3項)。 ③ 付随費用の支出 新株の発行に係る費用、すなわち、株式交付費は原則として支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動に係る株式交付費については、繰延資産に計上することができます。この場合、株式交付のときから3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければなりません(「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」3(1))。 * * * 次回は、減資の会計処理について解説します。 (了)
中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第2回】 「年金の支給開始年齢」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 1 老齢の年金の種類と支給開始年齢 国民年金から支給される老齢の年金を「老齢基礎年金」といい、厚生年金保険から支給される老齢の年金を「老齢厚生年金」という。 それぞれの年金は、原則として65歳から支給される。 なお、現在、厚生年金保険は、生年月日により60歳(男性の場合は61歳)から「特別支給の老齢厚生年金」として支給されている。 (1) 支給開始年齢 法人の代表者等で厚生年金保険に加入していた期間を有する人は、老齢厚生年金と老齢基礎年金の2つの年金が支給される。 他方、個人事業主等で国民年金だけに加入している人は、老齢基礎年金のみが支給される。 (2) 厚生年金保険の支給開始年齢 特別支給の老齢厚生年金は、定額部分(厚生年金保険の加入期間に応じて支給される部分)と報酬比例部分(報酬の高低によって支給される部分)の年金が支給されるが、それぞれ、生年月日及び性別により下図のとおり、支給開始年齢が異なる。 〈特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢引上げスケジュ-ル〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 2 年金の請求 受給資格期間を満たし、支給開始年齢に達したら、年金の請求ができる。 《おさらいQ&A》 (了)
〈IT会計士が教える〉 『情報システム』導入のヒント (!) 【第7回】 「システムの「導入」と「維持」には どんなコストが発生するのか?」 公認会計士 小田 恭彦 はじめに 情報システムを導入する際に考慮すべき重要な要素の1つに、費用(コスト)がある。 情報システムの導入は、単にソフトウエアとハードウエアを購入すればよいというだけでなく、ユーザーには見えにくいさまざまなコストが発生する。 今回は会計システムのパッケージソフトを導入する場合を例に、「システムの導入と維持にどのようなコストが発生するのか」という点について紹介したい。 ▼かかるコストは2つに分類▼ システム導入にかかるコストは、大きく2つに分類される。 1つは「導入コスト」と呼ばれるシステムを購入してから稼働までにかかるいわゆる“イニシャルコスト”であり、後者は「運用コスト」と呼ばれるシステム稼働後にかかる“ランニングコスト”である。 ▼システム「導入コスト」の例▼ システム導入コストは、一般に以下のようなものが挙げられる。 以下、費用ごとに紹介していく。 ▼システム「運用コスト」の例▼ システム運用コストは、一般に以下のようなものが挙げられる。 以下、費用ごとに紹介していく。 ▼システムにかかる見積りの難しさ▼ ◆見積り対象の網羅性 前述のとおり、システム導入にはハードウエア、ソフトウエア、支援作業などさまざまな有形無形コストが発生する。基本的には購入するソフトウエアのベンダーに対してすべての項目の見積りを依頼できればよいが、ベンダーの規模や導入範囲によって、ハードはハード、ソフトはソフトなど、その全部ないし一部について、個別に見積りをとらなければならない場合も少なくない。 その際には、今回の導入にあたり何のソフト又はハード、支援が必要なのかという点について、自社で洗い出しを行う必要があり、漏れがないよう注意しなければならない。 ◆カスタマイズの範囲 自社要件にあわせてパッケージ機能にカスタマイズを行う場合、その対象範囲について事前にすべてが明確になっていれば問題ないが、プロジェクトがある程度進んでからでないと分からない場合もある。 そのため、カスタマイズ費用を事前にどの程度見積もっておくかは慎重に検討する必要がある。 ◆導入支援と運用支援の範囲 システム導入時とシステム導入後の運用局面のそれぞれにおいて、外部ベンダーの作業支援を受けることになるが、その範囲と役割分担については事前に細かく決めておく必要がある。 ベンダーも責任範囲の観点から一定の範囲内でのみ対応する場合も多く、ユーザー側との期待ギャップが発生するケースも少なくない。 (了)
女性会計士の奮闘記 【第28話】 「P子の教え」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 上記の数値等は実例を元に筆者が作成。 ◆ワンポントアドバイス◆ 経営会議に用いる表を作る場合、まずはその表を作る目的に立ち返って、集計する数字を考えましょう。 またお客様になるべく負担をかけないようにするため、もともと使っている数字を基にできないかどうかを検討しましょう。 (了)
《速報解説》 東京証券取引所より 「平成26年会社法改正に伴う有価証券上場規程等の一部改正」が公表 ~特別支配株主の株式等売渡請求制度などへ対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月10日付で、株式会社東京証券取引所は、「平成26年会社法改正に伴う有価証券上場規程等の一部改正について」を公表した。 次のものが改正されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 今回の改正は、本年5月1日に施行される「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号)において、特別支配株主の株式等売渡請求制度の導入、社外取締役や社外監査役の社外性要件の一部緩和などを踏まえたものである(有価証券上場規程の402条(会社情報の開示)等について改正)。 このほか、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社への対応も行われている。 Ⅲ 適用時期等 有価証券上場規程等の一部改正については、平成27年5月1日から施行する。 (了)
《速報解説》 改正会社法等を踏まえた『経団連ひな型』が公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月10日付で、一般社団法人 日本経済団体連合会 経済法規委員会企画部会は、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を公表した。いわゆる経団連ひな型である。 今回の改訂は、本年5月1日に施行される改正会社法及び改正法務省令への対応及び「企業結合に関する会計基準」等の改正を踏まえたものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 本稿では、事業報告と計算書類及び連結計算書類に関する改正点について解説を行う。 「株主総会参考書類」及び「監査報告」などの改正点については、改訂後の経団連ひな型をお読みいただきたい。 なお、改訂後の経団連ひな型の適用時期については、改正法務省令に合わせて、経団連ひな型の【本ひな型の適用時期】に詳細に述べられているので、お読みいただきたい。 1 事業報告関係 事業報告に関して、全体的に次の対応を行っている。 事業報告に関する主な改正点は次のとおりである。 2 計算書類及び連結計算書類関係 計算書類及び連結計算書類に関する主な改正点は次のとおりである。 (了)
《速報解説》 「国税徴収に係る猶予制度見直し」の適用開始(H27.4.1~)に合わせ 『取扱要領』等、関連資料が公表 弁護士 木村 浩之 1 はじめに 平成26年度税制改正において、納税環境整備の一環として、国税徴収に係る猶予制度の見直しがなされたが、今般、国税庁HPにおいて同制度の具体的な取扱要領(以下「本取扱要領」という)が公表された。 本取扱要領では、納税の猶予及び換価の猶予等の処理に当たっての基本的な考え方、具体的な処理方法等が詳細に定められており、実際にこれらの制度の適用を検討するに当たり、実務の参考になると思われることから、本稿においてその概要を紹介する次第である。 なお、本取扱要領以外にも以下の資料等が公表されているので、合わせて確認されたい。 2 基本的な考え方 本取扱要領では、以下の3点に留意することが明記されている。 注目すべき点として、近年、納税者保護の観点から、適正手続の保障ということが潮流になっているが、本取扱要領でも、納税者の視点に立って、猶予制度の活用を検討すること、また、その処理も迅速に行うよう努めることなどが明記されており、今後、同制度の積極的な適用が期待されるといえよう。 3 換価の猶予 換価の猶予は、事業の継続や個人の生活の維持に不可欠な財産について、国税差押えがなされたとしても、その換価手続(実際の売却処分等)が一定の期間猶予されるというものであり、従前は税務署長の職権によるものだけが認められていた。これが平成26年度税制改正により、毎月の分割納付を条件として、納税者の申請に基づいて換価の猶予をすることが認められるようになった。 本取扱要領では、換価の猶予が認められるための要件及び手続が詳細に定められているが、申請による換価の猶予の場合も、従来の職権による換価の猶予の場合と同様の要件が必要とされていることに注目される。また、そのほか注目すべき点として、換価の猶予がなされる場合の猶予される金額、猶予される期間及び分割納付の方法が詳細に定められている。 4 納税の猶予 納税の猶予は、災害等が生じた場合、賦課手続が遅延した場合などで、一時に国税を納付することが困難なときに、一定の期間納税が猶予されるというものである。 なお、換価の猶予と共通してのものであるが、従前は税額50万円を超える場合には担保の提供が必要であったのが、平成26年度改正により、100万円まで無担保での猶予が認められることになった。また、100万円を超える場合であっても、猶予期間が3ヶ月以内であれば同様に担保が不要とされ、より使いやすい制度となっている。 本取扱要領では、換価の猶予と同様、納税の猶予が認められるための要件及び手続が詳細に定められており、さらに、これらに共通の事項として、上記の担保の適用に関するものも含め、猶予の許可等に関する処理、猶予の取消し等に関する処理などが詳細に定められている。 5 適用時期 本取扱要領については、平成27年4月1日以降に適用される。特に、今回新たに認められることになった申請による換価の猶予に関しては、同日以後に納期限が到来する国税について適用されることになるので、留意されたい。 (了)
《速報解説》 マイナンバー法の施行時期を定める政令が公布 ~番号の付番開始は「平成27年10月5日」から~ 仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司 1 はじめに 平成27年4月3日の官報第第6506号において「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行期日を定める政令」(以下「本政令」という)が公布された。 本政令は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号、以下「マイナンバー法」という)附則第1条(第1号から第3号まで及び第5号を除く、すなわち柱書と第4号)の委任規定を受け交付されたものである。 これにより、個人番号及び法人番号の付番の開始は「平成27年10月5日」から、個人番号の利用の開始は「平成28年1月1日」からとなる。 2 マイナンバー法の各規定の施行期日について 本政令の交付により、マイナンバー法の施行は平成27年10月5日と定められた。つまり、個人番号及び法人番号の付番は平成27年10月5日から開始されることになる。個人番号の利用は平成28年1月1日からとなる。 そこで、関係事務実施者である各事業者においては、改めてこれらの期日を確認し、各期日に間に合うように実務対応の準備を進めていく必要がある。 なお、内閣官房から、平成27年2月17日付で「事業者による個人番号の事前収集について」と題したお知らせが公表されている。そこで、平成27年10月5日以降付番を受けた個人番号については事業者による事前の情報収集が可能である。本件についての詳細は、下記の拙稿をご覧いただきたい。 参考までに、マイナンバー法における各規定の施行期日についてまとめておく。 (了) ↓お薦め連載↓
2015年4月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.114が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。