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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例16(法人税)】 「雇用促進税制の適用を満たしていたにもかかわらず、事前アドバイスを怠ったため、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用が受けられなくなった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例16(法人税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成26年3月期の法人税につき、依頼者が、雇用促進税制の適用を満たしていたにもかかわらず、税理士が事前アドバイスを怠ったため、期限までにハローワークに雇用促進計画書を提出していなかった。 このため、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用が受けられなくなってしまい、過大納付となった法人税額等400万円につき賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 平成X2年4月1日・・・関与開始。 平成25年3月31日・・・平成25年3月期に、都内に新規店舗3店を開店。来期も新規店舗の出店計画を聞いていたが、雇用促進税制の説明は行わず。 平成25年5月30日・・・ ハローワークへの雇用促進計画書の提出期限(提出せず)。 平成26年3月31日・・・平成26年3月期に、都内に新規店舗3店を開店。 平成26年5月30日・・・雇用促進税制の適用を満たしていたが、上記計画書を提出していなかったため、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」を適用できずに申告。 平成26年6月19日・・・依頼者より内容証明郵便にて損害賠償請求を受ける。   《基礎知識》 ◆雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除(措法42の12①) 青色申告法人が、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、当期末の雇用者の数が前期末の雇用者の数に比して5人以上(中小企業者は2人以上)及び10%以上増加させるなど、一定の要件を満たした場合には、雇用者数の増加1人当たり40万円(平成25年3月31日までに開始した事業年度においては20万円)の税額控除が受けられる(法人税額の10%(中小企業者等については20%)相当額が限度)。 ただし、適用年度とその前事業年度に事業主都合による離職者がいないことが条件となる。 ◆雇用促進計画書(措規20の7) 上記特別控除の適用を受ける場合には、法人の所在地を管轄する都道府県労働局又は公共職業安定所(ハローワーク)の確認が必要となる。そのためには、適用年度開始後2ヶ月以内にハローワークに雇用促進計画を提出しなければならない。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 依頼者は飲食店をチェーン展開しており、近年、新規店舗を次々に出店していた。税理士は雇用者数の増加は満たすものの、事業主都合による離職者はいるだろうとの勝手な思い込みから、雇用促進税制の説明をせず、ハローワークへの雇用促進計画書の提出も指導しなかった。しかし、平成26年3月期においては、適用要件を満たしており、「雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」を受けることができた。 税理士は、依頼者から内容証明郵便を受け取り、はじめてその事実に気づいている。事前に雇用促進税制の説明を行い、期限までに雇用促進計画書を提出していれば税額控除の適用は受けられたことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 主な税制改正事項については事前に説明を行う 主な税制改正項目は事前に説明を行う。特に本事例のような納税者にとって有利な新設税制で、事前に届出書等の提出が要件となっているものに関しては、事前に一通り説明を行った上で、依頼者が適切な判断を行えるようにすべきである。   [ポイント②] 文章等による証拠を残す 十分な説明を行った場合でも、依頼者から説明を受けていないとして、損害賠償請求される場合もある。そこで、将来紛争になった場合に、必要な説明を行ったことを証明できるように、メール、FAX等文章による証拠を残しておくことが重要である。 (了)

#No. 79(掲載号)
#齋藤 和助
2014/07/24

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第6回】「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑥」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第6回】 「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑥」   公認会計士 佐藤 信祐 前回解説したように、従来から言われていた「取引が経済的取引として不合理・不自然である場合」だけでなく、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」も法人税法132条の2に規定する包括的租税回避防止規定の適用対象になると判示されている。 さらに、平成24年度に公表された斉木論文においても、既にその趣旨の内容が公表されているため、本稿においては、斉木論文を紹介したい。 (ⅳ) 斉木論文の概要 前回紹介したように、平成24年当時税務大学校研究部教授であった斉木秀憲氏の論文(以下、「斉木論文」という)によりまとめられた「組織再編成に係る行為計算否認規定の適用について」においては、課税要件、事実的要件、評価的要件に分けて解説されているが、本事件において争われた不当性要件については、評価的要件に詳しく解説されている。 斉木論文においては、同族会社等の行為計算の否認と異なり、純経済人そのものもその適用の対象として含むことを前提としていることから、包括的租税回避防止規定の適用においてはそれを適用することはできないとしている。 そのため、本規定における「不当」の評価としては、(イ)組織再編税制の基本的な考え方からの乖離、(ロ)組織再編成の濫用、(ハ)個別防止規定の3つに類型化されている。 その具体例として、以下のものを挙げているという点で興味深い内容となっている。 このうち、(イ)組織再編税制の基本的な考え方からの乖離については、税制適格要件の逸脱に当たるかどうかを中心的に述べているため、本事件を当てはめてみると、(ハ)個別防止規定の逸脱の類型が該当することになる。 本事件で原告が主張しているように「名ばかり役員」についてのみ包括的租税回避防止規定が適用されるという点については、 としている。さらに、包括的租税回避防止規定が適用されるべき場面として、 としているが、「共同で事業を営むための指標にならない場合」についての具体的な内容については述べられていない。この点については、本事件における判決文についても、【争点2】についての判断において触れられているため、いずれ本連載において明らかにしていきたい。 このように、斉木論文においては、経済合理性の有無により判断するという従来からの判例・学説と異なり、(イ)組織再編税制の基本的な考え方からの乖離、(ロ)組織再編成の濫用、(ハ)個別防止規定の3つに類型化したという意味で興味深い内容となっている。 (ⅴ) 私見 しかしながら、斉木論文で例示されている租税回避の内容は、多くの場合において、経済合理性の有無で判断することが可能であるため、通常の場面であれば、あまり意味のある内容でない。これに対し、前述のように、特定役員としての実態がある場合であっても、「共同で事業を営むための指標とならない場合」となってしまうと、かなり曖昧なものとなる可能性がある。 例えば、本事件において送り込まれた取締役副社長に実態がないのであれば、事実認定又は包括的租税回避防止規定により否認を受ける可能性があるというのは、おそらくは多くの税務専門家において同意できる部分であり、そこまでであれば、特に問題にならない。さらに、送り込まれた取締役副社長に実態があったとしても、単に事業目的を主張するために作られたものであって、税目的に比べてあまりに軽微なものであれば、包括的租税回避防止規定により否認を受ける可能性があるというのであれば、多少の争いはあったとしても、おそらくは想定できる意見であり、さほど気にする必要のないものである。 これに対し、「共同で事業を営むための指標とならない場合」となると、課税当局の恣意性により歪められる可能性は十分に考えられ、租税法律主義に真っ向から対立する内容となる。 しかしながら、本判決において、「取引が経済的取引として不合理・不自然である場合」だけでなく、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」について包括的租税回避防止規定の適用対象とした意義は十分に存在すると考えられ、後者の類型として、斉木論文で掲げた3類型を当てはめるというのは、基本的には成り立つ考え方であると思われる。 従来における実務においても、経済合理性の判断は制度趣旨を踏まえて検討する必要があり(※3)、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」について、包括的租税回避防止規定の適用対象とするという点については、さほど違和感のある内容ではない。法人税の負担を不当に減少させるか否かという点について、特定役員1名の実態のみで判断するのではなく、組織再編成の全体像を見ながら判断すべきとも考えられるため、制度趣旨を考えながら判定していくということでさほど問題はないと考えられる。 (※3) 佐藤信祐(2009)『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』中央経済社36-37頁 これに対し、前述のように、どのような場合が「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかである」かどうかについては、租税法律主義とのバランスからかなり慎重な対応が必要となると考えられ、斉木論文の内容ではややその範囲を広く捉えすぎているのではなかろうか。租税法の適用については、何の意図もなくても、結果的に法人税が多額に増えたり、減ったりすることは十分に存在し、何の意図もなくても、結果的に、法人税が多額に減少したということについて、組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反するという理由で包括的租税回避防止規定が適用されるのであれば、租税法律主義からするとかなり問題のある内容となる。 【争点2】においては、事前に取締役副社長を送り込む行為について、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかである」というのが裁判所の判断となっている。学術的にはともかくとして、実務的には、【争点2】こそが本事件における中核となるため、次回以降は【争点2】の内容につき、判決文の順番に沿って、解説を行っていく予定である。 (了)

#No. 79(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/07/24

〈条文解説〉地方法人税の実務 【第4回】「税額の計算(第12条~第14条)」

〈条文解説〉 地方法人税の実務 【第4回】 「税額の計算(第12条~第14条)」   税理士 小谷 羊太 税理士 伊村 政代   今回も前回に引き続き、「第三章 税額の計算」について詳解する。 Ⅰ 税率(第10条) ※再掲   Ⅱ 地方法人税額に関する留意点 上記算式において、税率を乗じた後の金額『地方法人税の額』について、次の金額がある場合には、それぞれの金額を控除することとなっている。 1 外国税額の控除(第12条) 地方法人税額から控除する金額については、一定の限度額基準が設けられている。 「一定の限度額」とは、課税標準法人税額につき地方税法の規定を適用して計算した地方法人税の額に、その課税事業年度に係る次の割合を乗じて計算した金額となっている。 この地方税法による外国税額控除の限度額計算は、法人税法による外国税額控除の控除限度額計算と類似している。 【法人税の控除限度額】  ※は、法人税申告書別表1(1)[4欄]の金額 【地方法人税の控除限度額】  ※は、この規定適用前の地方法人税額(=課税標準法人税額×4.4%) 【所得金額と国外所得金額の関係】 所得金額(分母)、国外所得の金額(上記①)は、それぞれ下図に示したアミカケ部分の金額を合計した金額となる。 2 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の控除(第13条) 仮装経理により払いすぎた地方法人税がある場合には、更正の請求に伴う是正後、その過払いをした税金が直ちに還付されるのではなく、各課税期間における地方法人税額から控除することで調整するようになっている。この取扱いは、法人税法に定めるものと同様の趣旨に基づくものである。 3 控除する順序について(第14条) 上記1、2の規定の適用を受ける場合には、まず「外国税額控除」、その後「仮装経理に基づく控除」の順に、地方法人税額から控除する。 (了)

#No. 79(掲載号)
#小谷 羊太、伊村 政代
2014/07/24

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第6回】「所得税及び復興特別所得税の予定納税」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第6回】 「所得税及び復興特別所得税の予定納税」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   私は飲食店を経営する個人事業主です。平成25年の所得は事業所得のみで所得税及び復興特別所得税の申告納税額は30万円でした。 平成26年6月中旬に税務署から「予定納税額の通知書」が送付されてきました。この通知書によると、予定納税額10万円を7月31日までに納付しなければなりません。 所得税及び復興特別所得税の予定納税についてご教示ください。 所得税及び復興特別所得税の「予定納税」とは、予定納税基準額が15万円以上の場合に、予定納税基準額の3分の1をそれぞれ7月と11月に納付する制度のことをいう。   1 予定納税基準額 予定納税基準額は、以下の通りである。 本問のケースでは、事業所得のみなので上記①に該当する。したがって、予定納税基準額は、平成25年の所得税及び復興特別所得税の申告納税額と同額の30万円である。   2 予定納税の対象者 予定納税の対象者は、予定納税基準額が15万円以上の者である。 本問のケースでは、予定納税基準額30万円≧15万円なので、予定納税の対象者である。   3 予定納税額 予定納税基準額の3分の1である。ただし、特別農業所得者は、予定納税基準額の2分の1である。 「特別農業所得者」とは、その年において農業所得の金額が総所得金額の10分の7を超え、かつ、その年の9月1日以後に生ずる農業所得の金額がその年中の農業所得の金額の10分の7を超える農家のうち、特別農業所得者として税務署長から承認を受けた農家をいう。 また、予定納税額は、税務署が送付する「予定納税額の通知書」により対象者に通知される。 本問のケースでは、予定納税額は、予定納税基準額30万円×1/3=10万円である。   4 予定納税額の納付期間 予定納税額の納付期間は、7月1日~7月31日(第1期)、11月1日~11月30日(第2期)の2回である。ただし、特別農業所得者の予定納税額の納付期間は、11月1日~11月30日の1回のみである。 本問のケースでは、7月1日~7月31日(第1期)に10万円、11月1日~11月30日(第2期)に10万円、合計20万円の予定納税額を納付することになる。   5 予定納税額の納付方法 予定納税額の納付方法は、次の通りである。 金融機関の窓口 税務署の窓口 コンビニ(1期当たりの予定納税額が30万円以下、かつ、バーコード付納付書を使用) 振替納税(第1期の振替日:平成26年7月31日、第2期の振替日:平成26年12月1日) 電子納税 (了)

#No. 79(掲載号)
#上前 剛
2014/07/24

税務判例を読むための税法の学び方【40】 〔第5章〕法令用語(その26)

税務判例を読むための税法の学び方【40】 〔第5章〕法令用語 (その26)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   14 不確定概念と宥恕規定 ④ 基本的な宥恕規定「『正当な理由』、『やむを得ない理由』と『やむを得ない事情』」 第37回では、宥恕規定の例をいくつか示したが、今回は、この宥恕規定の基本的な表現である「正当な理由」、「やむを得ない理由」と「やむを得ない事情」について、それぞれ見ていこう。 (1) 「正当な理由」 「正当な理由」の「正当」とは何であろうか。 「正当」は、正しいこと、道理にかなっていることで、「適法」が法令にかなっていることを表す概念なのに対し、「正当」は、一般的な正しさや、正当性を指すものといえる。 前々回「不当」は、通常形式的には法令に違反しないが、その内容が実質的にみて妥当ではないことを表すときに使われると書いた。すなわち、通常は、違法ではないが正当ではない「不当」という領域が存在することになる(前回「「不当」ではあるが「違法」ではない領域がある」と書いたのはこの意味である)のであるから、これを裏返せば、単に違法ではないのみならず、正当性が問われることになる。 したがって「正当な理由」といった場合には、単に違法ではない、すなわち合法である以上の、正当な理由が問われることになると考えるのが本来であるが、規定上、単に違法性があるかどうかの判断の問題とされる用例もあり、個々の条文の立法趣旨に照らして、その意味・内容を判断していかなければならない。 前々回に紹介した国税通則法第65条第4項の「正当な理由」については、DHCの国税通則法コンメンタールによれば、「申告した税額に不足が生じたことが、通常の状態において納税者が知り得ることができなかった場合や納税者の責めに任じられない外的事情(たとえば災害等)による場合が考えられ、法の不知は正当な理由とはならない」としている。 なお、同条のこの「正当な理由」については、昭和51年5月24日東京高裁判決(税務訴訟資料88号841頁)において以下にように判示している。 これによれば「正当な理由」に当たる場合とは、「真にやむをえない理由によるものであり、・・・過少申告加算税を賦課することが不当もしくは酷になる場合」であるとして、正当な理由として象徴できるのは、個別的・主観的なものではなく、客観的なものであることを要求しており、「正当」を厳格なものとして扱っている。 一方刑法では、以下のように規定している。 この刑法におけるこれらの使用例は、一応は違法な状態とされるものを適法化するだけの正当性を指すものである。したがって正当性が認められなければ違法となるのであり、よって「正当=合法」ということになるという点では、上記した違法ではないが正当ではない領域を認めるものではない。 しかし、元々が違法なものを、正当な理由があればこれを違法とはしないというものであるから、厳格な正当性が問われている点は上記国税通則法の例と変わらない。 したがって文言からは、上記の国税通則法が「「正当な理由」があると認められるものがある場合には」と加算税を課さないという宥恕規定としての使用例と異なり、正当な理由がない場合には刑罰が科されるものとして別の使用例のようにも見えるが、この刑法の使用例も、上記したように、元々が違法なものを、正当な理由があればこれを違法とはしないという条文であるから、「正当な理由」の存在を要件としてこの法令が適用される者が税を課されない、刑罰を科されないという点では、実は同じ使用例である。そしていずれも、厳格性を求められている点もまた同じである。 しかし私法においては、上記のような公法における「正当な理由」とは、若干異なる。 民法110条では、以下のように規定されている。 この条文は、代理人が本人より授権された権限外の行為をなした場合に、第三者(取引の相手方)に対してその代理人がなした行為を本人に帰属させることにより、第三者を保護しようとするものである。 ただしそれは、第三者が代理人にその行為についての代理権があると信じ、かつ、普通人ならばその事情の下でそう信じるのが当然だと判断される場合という意味で、「第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」としている。 したがってこれは、善意・無過失と同じ意味となる。 (続く)

#No. 79(掲載号)
#長島 弘
2014/07/24

『単体開示の簡素化』の要点をおさえる 【第1回】「制度改正の背景と簡素化の範囲」

『単体開示の簡素化』の要点をおさえる 【第1回】 「制度改正の背景と簡素化の範囲」   公認会計士 中村 真之   1 はじめに 平成26年3月26日に、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成26年内閣府令第19号、以下「改正府令」という)が公布され、平成26年3月期に係る有価証券報告書の作成から、単体開示に関して簡素化が図られている。 現在までに1,500社を超える会社において簡素化された単体開示が採用されており、その実例や実績を踏まえて、有価証券報告書の作成を今後に控えている会社や当期は採用を見送ったものの、今後の簡素化を検討される会社もあると思われる。 本稿では、改正府令のうち、財務諸表等規則の改正内容を中心に、改正の背景や狙いについて2回にわたり解説を行う。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをあらかじめ申し添えさせていただく。   2 単体開示の簡素化の概要 (1) 改正の背景と狙い 本改正府令に先立ち公表された「当面の方針」においては、「IFRSの任意適用の積上げを図ること」が謳われているが、IFRSの導入に当たっては、会計基準を変更することに伴って生じる調整や準備のために過大なコストが生じることが予想され、これがIFRS以降の障害になっているという指摘があった。 また、金商法における開示制度として連結開示を主、単体開示を従として以来十数年が経過し、現在では多くの財務諸表利用者が、連結における情報を中心に投資判断を行うという実態が定着していると考えられる一方で、連結開示を主としながらも単体開示にも一定の作成負担があることや、会社法と金商法という2つの開示体系が要求する開示内容が異なることに起因して、財務諸表作成者である企業にとって二重の負担となることが指摘されていた。 そこで、金商法における単体開示の在り方について検討し、投資者保護という金商法の趣旨を損なわない限りにおいて、一定の条件を満たした場合には、一部の開示を免除することや開示要求を会社法とあわせるなど、企業の負担軽減・コスト削減につながる単体開示の簡素化を主旨とする改正を行うこととした。 (2) 対象となる会社 今回の改正では、改正後の財務諸表等規則(以下「新財務諸表等規則等」という)の第1条の2において、金商法における単体開示の簡素化の対象会社として、「特例財務諸表提出会社」という新たな概念を規定した。 ここで「特例財務諸表提出会社」とは、以下の2つの条件をいずれも満たす会社とされている(ただし別記事業を営む会社等を除く)。 したがって、上場会社であることは特例財務諸表提出会社の条件とはされておらず、「当面の方針」において、IFRSの任意適用について、非上場会社であっても任意適用が可能としていることとも整合させている。 連結財務諸表を作成している会社には、日本基準に基づく連結財務諸表を作成している会社はもちろんのこと、指定国際会計基準又は米国会計基準を適用して連結財務諸表を作成している会社も含まれていると解されている。 また、会社計算書類規則第98条によれば、会計監査人設置会社と非設置会社とでは、会社法の計算書類において要求される注記項目が大きく異なる。そのため、有価証券報告書提出会社であるものの、会計監査人を設置していない会社を特例財務諸表提出会社とした場合に、単体開示の簡素化の基礎となるべき会社法における注記が存在せず、その結果、金商法における注記が開示されないという事態が想定される。そこで、金商法の要請である投資者保護の主旨を損なわないようにするため、会計監査人設置会社であるという要件を設けている。   3 本表に関する改正の概要 「当面の方針」において、 とされており、今回の改正では、これに則り、新財務諸表等規則第127条第1項第1号から第3号までにおいて、経団連のひな型を参考とした新様式を規定した。 また、これまで、貸借対照表の区分掲記および販売費及び一般管理費の主要な費目の開示に当たり、個別財務諸表の方が連結財務諸表よりも低い基準値が設定されていたが、今般の改正により、連結財務諸表規則と同じ基準となっている。 この重要性の変更については、特例財務諸表提出会社以外にも適用され、単体開示のみの会社に対しても一定の負担軽減が図られている。   4 注記、附属明細表、主な資産及び負債の内容に関する改正の考え方 「当面の方針」において、 とされていることから、注記、附属明細表、主な資産及び負債の内容(以下「注記等」という)について、連結財務諸表を作成している場合には単体での開示を要しない項目を整理している。 まず、連結開示で十分な情報が開示されている項目については、金商法の単体開示を免除することとした。次に、金商法の連結開示のみでは十分な情報が開示されていないために単体開示を免除できない項目についても、金商法の開示水準と会社法の開示水準が同程度であると認められる場合には、金商法の単体開示に関する規定を会社法の単体開示の規定に合わせることとした。 その一方で、 とされていることを踏まえて、 のいずれかの対応を行っている。 *   *   * 次回(2014/7/31公開)は具体的な免除項目の確認と本制度導入に当たっての留意事項について解説する。 (了)

#No. 79(掲載号)
#中村 真之
2014/07/24

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《退職給付債務・退職給付引当金》編 【第6回】「適用時差異がある場合」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《退職給付債務・退職給付引当金》編 【第6回】 「適用時差異がある場合」   公認会計士・税理士 前原 啓二   なお、この設例では、自社積立の退職一時金制度(自社退職金規程に基づく確定給付型)のみの場合において、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法を適用しているものとします。   1 退職時と決算時の仕訳 〈退職時の仕訳〉 〈決算時の仕訳〉 (※) 当期末自己都合要支給額60,000,000-(前期末自己都合要支給額55,000,000-そのうち当期退職者に係る額1,900,000)=6,900,000 〈適用時差異の仕訳〉 ① 適用時差異の全額を当期に費用処理する方法(原則)の場合 ② 適用時差異を10年にわたり定額法により費用処理する方法(特則)の場合 (※) 55,000,000÷10年=5,500,000 この設例は、退職給付引当金を計上してこなかった中小企業が当期から新たに退職給付引当金を計上する場合です。前期以前からフルに退職給付引当金を計上していれば前期末時点であったであろう引当金残高と実際の前期末引当金残高との差が適用時差異です。 適用時差異の処理方法は、上記①と②の2つの方法があります。上記①の方法により適用時差異を一時に費用処理するのが原則です。 しかし、一時に費用処理すると財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性が高くなるため、適用時差異は10年以内の一定の年数又は従業員の平均残存勤務年数のいずれか短い年数にわたり定額法により費用処理することができるという特則(上記②の方法)があります。この場合には、未償却の適用時差異の金額を注記します(中小企業会計指針57)。 この設例は、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法が適用されていて、前期以前からフルに退職給付引当金を計上していれば前期末時点であったであろう引当金残高は前期末自己都合要支給額55,000,000円です。したがって、適用時差異はこの金額と前期末の退職給付引当金残高0円との差額である55,000,000円になります。この適用時差異の仕訳処理については、上記①と②の方法で例示しているとおりです。 当期退職一時金支払額2,000,000円については、いろいろな処理方法が考えられますが、この設例では、前期末自己都合要支給額1,900,000円を退職給付引当金の減額、当期増加の自己都合要支給額100,000円を当期の費用として計上します。 前期末自己都合要支給額55,000,000円からそのうちの当期退職者に係る額1,900,000円を除いた額、すなわち当期末在職者に係る前期末自己都合要支給額の合計53,100,000円と、当期末自己都合要支給額60,000,000円との増差額は6,900,000円になります。この6,900,000円だけ退職給付引当金を増加させるために、決算時に同額の費用を計上します。 退職給付債務と貸借対照表上の退職給付引当金の関係は、次のようになります。 ① 適用時差異全額を当期に費用処理する方法(原則) ② 適用時差異を10年にわたり定額法により費用処理する方法(特則)   2 決算書の金額 ① 適用時差異の全額を当期に費用処理する方法 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉 ② 適用時差異を10年にわたり定額法により費用処理する方法(特則) 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉 〈注記〉   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 ① 適用時差異の全額を当期に費用処理する方法(原則) 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 ② 適用時差異を10年にわたり定額法により費用処理する方法(特則) 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 税務上は、実際に退職一時金を支給した日の属する事業年度にその支給額が損金算入されます。したがって、当期の退職給付引当金繰入及び適用時差異の費用計上額を加算・留保します。 一方、当期に退職一時金2,000,000円を支給しているので、この額を損金算入することができますが、会計上はこの支給額のうち100,000円を費用計上しているものの、1,900,000円を退職給付引当金の減額で処理し費用計上していないことから、税務上は1,900,000円を減算調整します。 (《退職給付債務・退職給付引当金》編 終了)

#No. 79(掲載号)
#前原 啓二
2014/07/24

減損会計を学ぶ 【第13回】「減損損失の認識の判定①」

減損会計を学ぶ 【第13回】 「減損損失の認識の判定①」   公認会計士 阿部 光成   減損の兆候があるとされた資産又は資産グループについては、次のステップとして、減損損失を認識するかどうかの判定を行うことになる。 減損の兆候があると識別された資産又は資産グループについて、ただちに減損損失を計上するのではなく、割引前将来キャッシュ・フローを用いて、減損損失の認識の判定を行うところに、減損会計の特徴がある。 今回は、減損損失の認識の判定について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 減損損失の認識 1 減損損失の認識の判定 減損損失の認識の判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に、減損損失を認識することになる(「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)二、2(1))。 2 減損損失の認識の判定を設けた理由 減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存することから、測定が主観的にならざるを得ない面がある。そこで、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適当であると考えられた(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「減損会計意見書」という)四、2(2))。 減損の存在が相当程度に確実な場合として、資産又は資産グループが生み出す割引前の将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回るときと規定された(減損会計意見書四、2(2)①)。   Ⅱ 将来キャッシュ・フローの見積期間 減損損失を認識するかどうかを判定するために割引前将来キャッシュ・フローを見積もる期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方で行うことになる(減損会計基準二、2(2))。 将来キャッシュ・フローの見積期間を制限する理由は、少なくとも土地については使用期間が無限になりうること、また、一般に、長期間にわたる将来キャッシュ・フローの見積りは不確実性が高くなることからである(減損会計意見書四、2(2)②)。   Ⅲ 将来キャッシュ・フローの見積期間(20年を超えるかどうか) 「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)では、将来キャッシュ・フローの見積期間について、20年を超えるかどうかによって、次のように規定している(次回以降でより詳しい解説を行う)。 1 20年を超えない場合 資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超えない場合には、当該経済的残存使用年数経過時点における資産又は資産グループ中の主要な資産の正味売却価額を、当該経済的残存使用年数までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する(減損適用指針18項(1))。 2 20年を超える場合 資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて算定された20年経過時点における回収可能価額((減損適用指針32 項)を、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する(減損適用指針18項(2))。 【将来キャッシュ・フローの見積りのイメージ(20年を超えるケース)】 (出所:監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)103ページを一部修正)   Ⅳ 留意事項 1 減価償却との関係 減損損失を認識するかどうかの判定は、減価償却の見直しに先立って行う(減損会計意見書四、2(2)①)。 2 見積値から乖離するリスク 減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられる割引前将来キャッシュ・フローは、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを反映させず、減損適用指針36項から42項の考え方に基づいて見積もる(減損適用指針19項)。 3 外貨建ての将来キャッシュ・フロー 将来キャッシュ・フローが外貨建てで見積もられる場合、外貨建ての将来キャッシュ・フローを、減損損失の認識の判定時の為替相場により円換算し、減損損失を認識するかどうかを判定するために見積もられる割引前将来キャッシュ・フローに含める(減損適用指針20項)。 4 経済的残存使用年数 資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数は、当該資産が今後、経済的に使用可能と予測される年数と考えられ、対象となる当該資産の材質・構造・用途等の物理的な要因のほか、使用上の環境、技術の革新、経済事情の変化による陳腐化の危険の程度、その他当該企業の特殊的条件も検討し、見積もる(減損適用指針21項)。 なお、資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が、当該資産の減価償却計算に用いられている税法耐用年数等に基づく残存耐用年数と著しい相違がある等の不合理と認められる事情のない限り、当該残存耐用年数を経済的残存使用年数とみなすことができる。 (了)

#No. 79(掲載号)
#阿部 光成
2014/07/24

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第51回】金融商品会計⑦「ゴルフ会員権の評価」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第51回】 金融商品会計⑦ 「ゴルフ会員権の評価」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① Aコース減損処理 (*1) 取得原価10,000-期末の相場4,500=5,500 ② Bコース減損処理 (*2) 取得原価15,000-預託保証金額8,000=7,000 (*3) 預託保証金額8,000-期末の相場6,000=2,000 〈会計処理の解説〉 ゴルフ会員権の形態はいくつか存在しますが、株式又は預託保証金から構成されるものは金融商品会計基準の対象となり、取得原価をもって貸借対照表価額とします。 ゴルフ会員権については、ゴルフ会員権協同組合が日々作成している業者間の取引相場表や、その相場を元にして大手のゴルフ会員権売買業者が公表している「ゴルフ会員権相場表」があります。しかし、当該相場は価格の信頼性と実現可能性を確保できるほどの市場の厚みがないと考えられています。 そこで、会計上はゴルフ会員権を時価評価の対象とせず、著しい価値の下落があった場合に評価減を行うこととされました。著しい価値の下落の判定は、有価証券に準じて行い、ゴルフ会員権の相場は、ゴルフ会員権の著しい価値の下落の判定に利用されます。 株式方式によるゴルフ会員権の減損処理については、相場が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合、その下落相当額をゴルフ会員権評価損として計上します。 一方、預託保証金方式によるゴルフ会員権の減損処理については、相場が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合、株式方式と同様に減損処理を行いますが、預託保証金額を上回る部分は直接評価損を計上し、下回る部分については貸倒引当金を設定します。 【預託保証金方式によるゴルフ会員権の減損処理】 預託保証金は、一定期間据え置かれた後、会員からの請求があれば返還されるものであるため、会員にとっては金銭債権と考えることができます。そこで、相場が預託保証金を下回る場合、その下回る部分については直接評価損とせず、金銭債権のように貸倒引当金を設定します。ただし、預託保証金の回収可能性がほとんどないと判断される場合には、貸倒損失額を預託保証金から直接控除します。 なお、相場がないゴルフ会員権については、発行会社の財政状態に基づき評価します。すなわち、ゴルフ場運営会社の貸借対照表に基づいて発行会社の財政状態、預託保証金の回収可能性を評価することとなります。 ただし、ゴルフ場運営会社の中には、貸借対照表等の財務情報を公表していない場合があるため、代替手段として、大手ゴルフ会員権取引業者に評価鑑定を依頼する方法も考えられます(金融商品会計に関するQ&A Q46)。 (了) ※8月は、人件費に関する会計処理について解説します。

#No. 79(掲載号)
#大川 泰広
2014/07/24

国際出向社員の人事労務上の留意点(日本から海外編) 【第4回】「海外給与とハイポタックス(みなし税)」

国際出向社員の人事労務上の留意点 (日本から海外編) 【第4回】 「海外給与とハイポタックス(みなし税)」   社会保険労務士 平澤 貞三   (1) 海外給与の基本的な考え方 会社の命令で海外に赴任する場合、最も配慮しなければならないことの1つが、赴任中の給与である。 税制も社会保険制度も各国まちまちであるから、仮に、「給与は現地の会社が払うので、その国の制度に従って税金や社会保険料はあなたが負担して支払ってください。」というルールにしてしまうと、赴任者本人は現地でいくら税金が引かれ、いくらの手取りで生活をしなければならないのか分からず、不安を持つのは当然である。 また、仮に給料が同じなのに、A社員は赴任先国で税率10%、B社員は赴任先国で税率30%では、その手取額に違いが生じ、社員間での不協和音が生じるリスクもある。 このように海外給与をグロス保証(=税金・社会保障費は社員負担)にしてしまうと、その税金や社会保障費の変動リスクを常に社員に持たせてしまうことになり、公平な給与制度とは呼べないものとなる。 赴任者に気持ち良く海外で勤務してもらい、最高のパフォーマンスを引き出すためには、公平、かつ、合理的な給与の取り決めが必要であり、そこで登場するのが“ハイポタックス”(みなし税)という考え方である。   (2) ハイポタックス(みなし税)とは 例えば、1年以上の予定で日本から海外へ赴任し海外現地の関連会社などで働く場合には、現実には、その間の日本での納税義務はなく、その海外現地の制度に従った納税を強いられることになる(【第1回】国際出向社員の各種法律における身分関係①(税務)参照)。 しかし、どの国に赴任しようとも赴任者本人に負担させる税金等は日本にいた時と同水準にするという目的で、「もし、その赴任者が日本にいたならば」、という想定で税計算をし、その仮想上の手取金額を計算する。 この仮の計算における税金がハイポタックス(Hypothetical Tax = 仮想に基づいた税金)であり、一般的には“みなし税”と呼ばれている。   (3) 海外給与の決め方 一般的には、みなし税控除後の手取給与を最低保証のベースとし、その他会社のルールに沿って、円貨・外貨の区分、生計費指数、海外手当などを考慮して海外赴任者の給与を決定するのである。 給与から既にみなし税が控除されているわけであるから、赴任先国で生ずる税金はすべて会社負担とするのが原則の考え方である。 【海外手当の一般的な種類】   (4) 給与の払い方と日本納税義務の関係 1年以上の予定で海外に出向する場合、その社員が受け取る給与は非居住者の国外源泉所得であるから、日本直接払い、海外現地払い、両方での分割払い、いずれの給与であっても日本での納税義務はない(内国法人の役員を除く)。   (5) タックスイコライゼーション(Tax Equalization) タックスイコライゼーション(Tax Equalization)とは、分かりやすく言うと、「ハイポタックス(Hypo Tax)の年末調整」のことである。 海外赴任時、又は、新年度初めに、日本で勤務していることを想定して、向こう1年間の給与をベースにみなし税金の計算を行うケースが一般的であるが、1年後には扶養条件が変わっていたり、税制や保険料率の変更などもあったりで、必ずしも当初計算したみなし税金が正しいとは限らないのである。 より公平性を保つには、年末調整を行うがごとく、改めて年間のハイポタックスを再計算し、その過不足を精算する手続きを行う必要がある。これが国際人事に携わる者の業界用語(世界共通)として、タックスイコライゼーションと呼ばれている。 ハイポタックスやタックスイコライゼーションという考え方は、決して日本の法律で定義されているものではなく、また、特定の外国のルールでもない。単に、海外に社員を派遣する際の国際人事上の考え方の1つである。 したがって、どの税金までを対象としてハイポタックスを計算するか、また、どのタイミングで、どの控除項目までのタックスイコライゼーションを行うのかは、各社の判断となる。 海外派遣社員の給与アレンジを考える上で大切なことは、会社にとっての経済的・事務的コストを最小化し、いかに社員のモチベーションを最大限に引き出すか、ということに尽きる。 (了)

#No. 79(掲載号)
#平澤 貞三
2014/07/24
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