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法人税改革の行方 【第2回】「欠損金の繰越控除と減価償却」

法人税改革の行方 【第2回】 「欠損金の繰越控除と減価償却」   慶應義塾大学経済学部教授 土居 丈朗   本連載は、今回以降、法人税での課税ベースの見直しに関わるところを詳説したい。今回は、欠損金の繰越控除と減価償却を取り上げる。 前回も述べたように、法人実効税率引下げを優先するという大局観から見れば、できるだけ企業行動に悪影響が及びにくい形で課税ベースを拡大することで代替財源を捻出することが望まれる。   《欠損金の繰越控除の控除割合縮小と繰越期間延長》 さて、欠損金の繰越控除は、法人税の課税ベースが小さくなっている要因の中で最も大きい。図1によると、2012年度で欠損金の繰越控除による法人税の減収額は2.3兆円に上る。 図1[法人税額(国税)と税引き前利益の関係(平成24年度)]  (政府税制調査会第2回法人課税ディスカッショングループ「財務省資料〔課税ベースの拡大等〕」(2014年3月31日)) 欠損金の繰越控除は、企業がゴーイング・コンサーンである限り認めるべきものである。 例えば、毎年10万円の黒字を出す企業と、ある年に10万円赤字になり次の年に30万円黒字になる企業は、利子率がゼロなら2年間合計の利益の現在価値は同じだが、他が同じなら欠損金の繰越控除が制約なく認められないと、前者の企業より後者の企業の方が多く法人税を払わなければならなくなる。欠損金の繰越控除に制限を付けるのは、本来は望ましくない。 しかし、欠損金の繰越控除は、法人税率引下げを行った2011年の税制改正時に、大企業の控除上限を10割から8割に引き下げるとともに、繰越期間を7年から9年に延長したことを受けて、控除上限の引下げに伴う増収見込額を織り込んだ前例がある。財務省主税局「平成23年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額」によると、2011年の税制改正時における増収見込額は、1,788億円(平年度ベース)とされている。 これはどういうことかを、数値例で示すと次のようになる。 0年目に400の欠損金が生じたが、1年目以降、毎年50の控除前法人所得(利益)を上げる企業があったとする。法人税率が引下げ後に20%となったとして、欠損金の繰越控除が控除前利益の80%まで適用できる仕組みだったとする。 このとき、〈表1〉のように、1年目は控除前所得50から80%の40まで繰越控除が適用され、差額10に20%の税率で法人税が課税される。400の繰越欠損金のうち、1年目に40を使ったので、残る繰越欠損金は360となる。 このように、2年目以降も欠損金の繰越控除が適用されるが、控除期間が9年とされていると、9年目までは繰越控除が使えるが、10年目以降は使えず、40だけ繰越控除を使い残すことになる。 〈表1〉※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ここで、もし欠損金の繰越控除の控除上限を60%に引き下げるとともに控除期間を15年に延長したとする(この割合や年数に他意はない)。 このとき、〈表2〉のように、1年目は控除前所得50から60%の30まで繰越控除が適用され、差額20に20%の税率で法人税が課税される。400の繰越欠損金のうち、1年目に30を使ったので、残る繰越欠損金は370となる。2年目以降も繰越控除が使えて、最終的に14年目で繰越欠損金を使い尽くして0となる。15年目以降は、控除できる繰越欠損金はないので、(他に控除できるものがなければ)控除前法人所得にそのまま20%の税率で法人税が課税されることになる。 〈表2〉※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ここでいう欠損金の繰越控除による控除割合縮小と繰越期間延長に伴う増収見込額(初年度ベース)は、まさに〈表1〉と〈表2〉の1年目に現れる税収の差(この企業の場合は4-2=2)の全企業合計額となる(もちろん、税制改正決定時に見積もられる増収額は、個社の実額の積み上げ計算ではなくマクロで推計されたものとなる)。 ただ、この増収額は短期的なものにすぎない。長期的に見れば、企業からすれば、控除期間が短くて欠損金の繰越控除を使い残す〈表1〉よりも、たとえ控除割合が小さくても控除期間が長くて繰越控除を使い切る〈表2〉の方が、合計の法人税額は小さくなる。 例えば、単純化のため当該期間の単純合計が現在価値とみなせるよう利子率が0%としたならば、1年目から14年目までの法人税合計額は、〈表1〉では68なのに対し、〈表2〉では60である。 税務当局からすれば、長期的に見れば、繰越控除の使い残しがなければ、控除割合縮小と繰越期間延長は、税収の増減はほぼない。むしろ、繰越控除の使い残しがある分、繰越期間が短い方が、長期的には税収が増える可能性がある。とはいえ、2011年税制改正時には、欠損金の繰越控除の控除割合縮小と繰越期間延長による増収分を課税ベースの拡大とみなした前例があるのは事実である。 目下、多くの企業にとって、業績回復局面に入り、繰越欠損金が使い切ったり大きく縮小したりすると見込まれ、その局面においては、控除割合を縮小することによる企業への悪影響は小さいと見込まれる。その意味では、法人税の課税ベース拡大の項目として、欠損金の繰越控除の見直しは有力なものといえよう。   《減価償却方法の定額法への統一》 次に、減価償却方法の定率法から定額法への変更が検討されている。 政府税制調査会の議論でも、この変更は肯定的な意見が多かった。特に、国際会計基準(IFRS)が定額法を採用していることも、追い風となっている。 定率法を定額法に変更することは、設備投資直後の短期的には、減価償却費は小さくなるため、法人税の課税ベースを拡大する効果を持つ。ただ、これも欠損金の繰越控除の長期的な効果と同様に、最終的には減価償却を終了するまでの期間を捉えれば、減価償却費の合計額は定率法でも定額法でも(利子率や割引率が低ければなおさら)ほぼ同額であるから、法人税額に与える効果もほぼ同様である。 ただ、これも2011年の税制改正時において、250%定率法を200%定率法に見直したことを受けて、減価償却制度の見直しに伴う増収見込額を織り込んだ前例がある。財務省主税局「平成23年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額」によると、2011年の税制改正時におけるこの増収見込額は、1,780億円(平年度ベース)とされている。 減価償却の方法の変更は、設備投資に対し短期的に影響を及ぼす可能性はあるが、長期的に見れば中立的になる方向に作用する。次回取り上げる設備投資や研究開発に関する租税特別措置との整合性を担保すれば、設備投資に対する短期的な悪影響も小さくできるだろう。 その点で、減価償却制度の見直しは、法人税の課税ベース拡大に資するものとして意義が認められるだろう。 (了)

#No. 80(掲載号)
#土居 丈朗
2014/07/31

生産性向上設備投資促進税制の実務 【第7回】「事例を元にした特別償却付表(7)の記載方法の確認」

生産性向上設備投資促進税制の実務 【第7回】 「事例を元にした特別償却付表(7)の記載方法の確認」   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   前回は具体例により、別表6(21)〈生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉の記載方法を解説した。 今回は、生産性向上設備投資促進税制の特別償却を選択した場合に作成する特別償却の付表(7)〈特定生産性向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表〉について、以下、事例を前提に具体的な記載方法を確認していく。 なお、今回も前回と同様に、本連載第3回で設定した事例を前提としている。 【記載例】 特別償却の付表(7):特定生産性向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 以下では、上記の記載例を確認しながら、各欄の記載方法について確認していく。 (了)

#No. 80(掲載号)
#石田 寿行
2014/07/31

「調査の終了の際の手続に関する同意書」の役割と税理士業務への影響

「調査の終了の際の手続に関する同意書」の役割と 税理士業務への影響   公認会計士・税理士 八ッ尾 順一     1 改正前の取扱い【税務慣行】 平成23年度改正前は、実地の税務調査が終了すると、税務当局は、納税者に対して、調査の結果を説明することになっていた。 その場合、「非違がある場合」と「非違がない場合」で、次のような説明をしていた。   2 改正後の取扱い【国税通則法で具体的に規定】 平成23年度改正後は、以下のように法定された。 上記の「調査結果の内容の説明等」及び「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」については、納税義務者が「連結子法人である場合」又は「税務代理人がある場合」には、その納税義務者への通知等に代えて、それぞれ次の者に行うことができることとされている(国通法74の11④⑤)。 上記の(ロ)を書面化したものが、「調査の終了の際の手続に関する同意書」(平成25年1月から適用)である。 〈調査の終了の際の手続に関する同意書〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 同意書に記載された「対象となる行為」は、国税通則法第74条の11第1項から3項に規定する行為である。 「対象とする行為」の[2]では となっている(同法同条第2項)。この項に印(√)を付けることによって、税務代理人は、単独で調査の結果の説明を税務当局から聞くことができる。 すなわち、納税義務者よりも税務代理人である税理士は、更正決定等をすべきと認められる非違の内容を先に知ることが可能となるのである。 これによって、税理士の申告ミスに基づく更正等の指摘が仮に税務当局から行われたとしても、納税義務者に対して税理士が、その説明をする(対応する)時間的な余裕を獲得することができる。 その意味で、税理士は、上記の項目に印を付けて同意書を提出することが好ましいのかもしれない。 なお、同意書を提出しない場合でも、「電話または臨場により納税義務者に直接同意の意思を確認できた場合」には、税務代理人である税理士が単独で、調査の結果の説明を税務当局から聞くことが認められている。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 80(掲載号)
#八ッ尾 順一
2014/07/31

改正『税理士法』の検証と今後への期待 【第2回】「税理士業務に関する改正事項・税理士の信頼性確保に関する改正事項」

改正『税理士法』の検証と今後への期待 【第2回】 「税理士業務に関する改正事項・ 税理士の信頼性確保に関する改正事項」   弁護士 木村 浩之     2 税理士業務に関する改正 (1) 補助税理士制度の見直し~補助税理士から所属税理士へ~ 税理士制度については、平成13年にも大幅な改正がなされ、税理士法人制度、補助税理士制度、補佐人制度、書面添付制度の創設など、いくつかの重要な新制度の導入がなされている。 このうち補助税理士制度については、従前、税理士の業務を行うためには、自ら開業する必要があったものが、他の税理士又は税理士法人の補助者として常時従事する場合には、「補助税理士」として業務を行うことができるとされたものである。 ただし、補助税理士については、その従事する税理士等が受任した案件について業務を行うことができるものの、自己が直接受任して業務を行うことはできないとされていた。 今回の改正では、これをより柔軟にして、その所属する税理士等の承諾を得るなど、一定の手続を経ることで、自己が直接依頼者から案件を受任して税理士業務を行うことができるようになった。 そのためには、具体的には、次の手続が必要とされている(税理士法施行規則1条の2)。 以上の手続を経ることにより、開業していない税理士であっても、自らの名義と責任で税理士業務を行えることになり、業務の幅が拡大することになったといえる。 また、このように、自己の名義と責任で業務を行えるようになったことに伴い、その名称も「補助税理士」から「所属税理士」に変更されている。 なお、この改正については、平成27年4月1日から適用される。 (2) 調査の事前通知 周知のとおり、平成25年度税制改正において、国税通則法の一部改正によって調査手続の大幅な見直しがなされ、調査の事前通知については、納税者本人と税理士の双方に行うものとされていた。 しかしながら、本来、税理士は、自らの専門家としての責任で税務代理権限証書を添付して納税申告書を提出しているのであり、それにもかかわらず納税者本人に事前通知が必要であるとするのは、むしろ、税理士に対する信頼を損なうものとも考えられる。 そこで、今回の改正では、税務代理権限証書に納税者の同意があれば、当該納税者に通知せずとも「税理士へ通知すれば足りる」とされることになった。 これにより、税理士が納税者からの信任を得た上で、専門家としての責任と自覚をもって納税申告書を作成し、提出することで、ひいては申告納税制度を円滑に機能させるということが期待されているものといえる。   3 税理士の信頼性確保に関する改正 (1) 概要 税理士が申告納税制度を支えるという公共的使命をよりよく果たすため、社会からの信頼を得ることが必要不可欠であることは言うまでもない。 ところが、昨今、OB税理士と国税職員との間で発生した不祥事や税理士による脱税事件への関与など、社会から非難されるべき事件が相次ぎ、税理士制度に対する信頼回復が急務になっていたといえる。 そこで、今回の改正では、税理士の信頼性を確保するため、いくつかの改正がなされている。 具体的には、非税理士に対する名義貸しの禁止を明文化し、その違反に対する罰則を定めたこと、懲戒処分における業務停止の期間を最大1年から2年に延長し、税理士に係る懲戒処分の適正化を図ったこと、税理士会の会則に租税教育等の活動に関する規定を明記することなどが定められた。 (2) 税理士に係る処分の適正化 税理士に係る懲戒処分の適正化について敷衍すると、もともと法44条は、税理士に対する懲戒処分の種類として、「戒告」「1年以内の業務停止」「業務禁止」の3つを定めていた。 このうち「業務禁止処分」については、当該処分がなされれば、税理士としての欠格条項に該当し、処分から3年は税理士となることができず、税理士登録は抹消され、税理士会からも退会を余儀なくされることになる。そのため、もっとも重い処分とされる。 これに対して、「業務停止処分」については、その期間は税理士業務を行い得ないが、税理士登録は抹消されず、税理士会会員としての身分も保持され、停止期間が満了すれば業務を再開することができる。一般に、業務禁止処分では処分が重くなりすぎる場合に業務停止処分が選択されるが、その期間が1年では十分な抑止効果が得られない場合がある。 そこで、今回の改正では、業務停止の期間が「1年以内」から「2年以内」に延長されることになった。 2年ということに関しては、弁護士、公認会計士などの他士業における懲戒処分に係る業務停止期間が2年以内とされており、それとの均衡も図られたことになる。 なお、この改正については、平成27年4月1日から適用される。   おわりに 今回の税理士法改正は、平成13年度改正以来の大幅な改正であった。 言うまでもなく、社会環境は日々変化しており、それにあわせて制度の変容も迫られる。 このうち、税理士資格の制度については、これまでも少しずつ変容してきたところであるが、大幅な変更には至っていない。今後の見通しとして、今回の改正で日税連の意見が一部実現したことにより、当面の間は、さらなる見直しがなされることはないと思われるが、不断の見直しが必要であろう。 ただし、重要なのは、資格そのものではなく、資格を得た後も日々研鑽に努め、専門家としての責務を全うすることで、納税者ひいては社会からの信頼を勝ち得るということである。 そのため、今回の改正でも、税理士業務を遂行する環境が整えられ、信頼性を確保するための仕組みが設けられている。これらはいずれも、制度そのものが重要なわけではなく、あくまでも制度を運用する個々の税理士自身が重要であることは言うまでもない。 本稿が少しでも税理士の方々の意識的な向上に貢献できれば幸いである。 (連載了)

#No. 80(掲載号)
#木村 浩之
2014/07/31

貸倒損失における税務上の取扱い 【第23回】「判例分析⑨」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第23回】 「判例分析⑨」   公認会計士 佐藤 信祐   第21回においては、債権放棄の対象となる債権については、回収不能なものである必要があるという点について解説を行い、第22回においては、回収不能な部分のみを抜き出して債権放棄を行った場合について解説を行った。 第23回にあたる本稿においては、日本興業銀行事件において、法人税基本通達9-6-1(4)がどのように適用されるのかについて検討を行う。 (ⅲ) 日本興業銀行事件における法人税基本通達9-6-1(4)の検討 法人税基本通達9-6-1(4)についての原告、被告の主張については第15回で解説した通りであるが、 という点の2点が争われていた。 このうち後者については、第1審における原告側の主張として、「弁済を受けることが困難」であれば足り、法人税基本通達9-6-2と同様の意味での「回収不能」までは必要ないと主張しており、この主張については、第22回で紹介した大渕博義教授の見解もこれに近いものであると思われる。 このように、回収不能か否かという点を争っていないという点に違和感が存在するが、推測するに、もし、回収不能であるということであれば、法人税基本通達9-6-2で貸倒損失が認められることから、法人税基本通達9-6-1(4)の適用についてはそれほど厳密に回収不能である旨を主張するつもりがなかったのではないかと思われる。 そして、第1審における被告側の主張としても、法人税基本通達9-4-1の適用については、債権放棄に付された解除条件の不成就が確定した翌事業年度においては認められるとしていることから、本事件においては、解除条件付債権放棄の効力が生じていたと認められていれば法人税基本通達9-4-1により貸倒損失の損金算入が認められ、解除条件付債権放棄の効力が生じていたと認められない場合には、法人税基本通達9-6-2に該当した時に限り、貸倒損失の損金算入が認められるというのが被告側の解釈であると考えられる。 さらに、第1審における裁判所の判断においても、 としており、法人税基本通達9-6-1(4)についての判断をさほど行わず、同通達9-4-1についての判断を行っているように思える。 こうしてみると、本事件において、法人税基本通達9-6-1(4)についてはほとんど問題にならなかったように思える。これに対し、同通達9-4-1の適用については、貸倒損失を認識すべき事業年度のみが問題とされており、寄附金該当性についてはほとんど問題とされていないことから、解除条件付債権放棄の効力については重要な問題となっている。 過去の判例を見てみると、法人税基本通達9-4-2の適用について争われた事件は多いものの、同通達9-4-1の適用について争われた事件はほとんど存在せず、本事件についても、寄附金該当性について争われていない。 これは、法人税基本通達9-4-2が「例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等」の場合に適用されるのに対し、同通達9-4-1は「子会社等の解散、経営権の譲渡等」に伴って適用されることから、通達の要件に該当するかどうかの判断が容易であり、かつ、「子会社等の解散、経営権の譲渡等」に伴っていることから、「その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由がある」と認められるケースがほとんどであるため、裁判で争うまでもない事案が多いことが原因であると推定される。 しかしながら、法人税基本通達9-6-1(4)と9-4-1の境界線はどこにあるかも疑問に感じるところである。本事件においても、最高裁判決において、金銭債権が回収不能か否かについては、 としており、もしそうであるならば、社会通念に従って総合的に判断した結果、債権放棄の対象となった債権については全額回収不能であることから、法人税基本通達9-6-1(4)の適用は認められるという判断になっても不思議ではない。第20回で法人税基本通達9-6-1(3)と9-4-1の境界線について曖昧なものであるという解説を行ったが、結局のところ、同通達9-6-1(4)と9-4-1の境界線についても同様に曖昧であると言わざるを得ない。 この点につき、1984年の記事であるが、当時国税庁審理室係長であった大渕博義教授は、子会社に対する債権放棄に対する法人税基本通達9-6-1(4)の適用について、 としたうえで、 としており、法人税基本通達9-4-1の条項をあえて挙げずに、法人税基本通達9-4-1に含まれるべき内容を同通達9-6-1(4)に続けて解説しており、これもまた、同通達9-4-1の位置付けが極めて曖昧な証左であると言える。 実務上も、子会社に対する債権放棄について、法人税基本通達9-6-1(4)を適用することができるか否かを検討することはあまり多くなく、同通達9-4-1を適用することができるか否かを検討することがほとんどである。法人税基本通達の体系からすると、回収不能なものを書面による債権放棄を行った場合には法人税基本通達9-6-1(4)を適用し、回収可能ではあるにもかかわらず、経営判断により債権放棄を行った場合には同通達9-4-1又は9-4-2の適用を判断するということになるが、実務上は、回収不能の判断をほとんど行わず、法人税基本通達9-4-1又は9-4-2の適用を検討することはほとんどである。 これは、事業活動を継続している子会社に対して債権放棄を行う場合には回収不能であるという立証が困難であることから法人税基本通達9-4-2によらざるを得ず、子会社を清算したり経営権の放棄をしたりするのであれば、もともと寄附の要素はあることを否定していない法人税基本通達9-4-1の方が同通達9-6-1(4)に比べてハードルが低いということが理由であると推測される。 このように、理論上はともかくとして、実務上は、関係会社に対する債権放棄について法人税基本通達9-6-1(4)を適用することができる場面はそれほど多くはないというのが実態であると考えられる。法人税基本通達9-6-1(3)(4)、9-4-1、9-4-2の位置付けについては、いずれこの連載を通じて明らかにしていきたいと考えている。 次回は、本事件に対する法人税基本通達9-4-1の適用について解説を行う予定である。 (了)

#No. 80(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/07/31

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第27回】 「納付方法の選択」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第27回】 「納付方法の選択」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   今回から相続税の納税をめぐるポイントについて、見ていくこととする。相続税の納税期限は、申告期限と同様に、他界した日の翌日から10ヶ月以内である(相続税法33条)。 〔3つの納付方法〕 相続税の納付方法としては、以下の3つがある。 この3つのいずれかを納税者が任意で選択できるわけではない。 納付期限までに「現金一括納付」を行うことが原則である(相続税法33条)。 そして、「金銭で納付することを困難とする理由」がある場合にのみ、その納付を困難とする金額を限度として、「延納」が認められる(相続税法38条)。 さらに「延納によっても金銭で納付することを困難とする理由」がある場合にのみ、その納付を困難とする金額を限度として、「物納」が認められる(相続税法41条)。   〔ほとんどのケースでは現金一括納付〕 国税庁が公表している、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの実績によると、延納・物納の件数は、以下のようになっている。 また、国税庁が公表している、平成24年中に相続が開始した相続税申告案件(税額がない場合を除く)の実績によると、以下の通りである(上記の実績数の期間とは厳密には対応していないが、他に参照できる国税庁公表データがないため、簡便的に同一期間とみなして検討する)。 このデータからわかるように、大半のケースは現金一括納付であり、延納、物納は非常に限定的であることがわかる。 これは延納・物納は常に認められるわけではなく、「金銭で納付することを困難とする理由」「延納によっても金銭で納付することを困難とする理由」がある場合のみ、納付を困難とする金額を限度として認められるためであり、かつ、この「金銭で納付することを困難とする理由」「延納によっても金銭で納付することを困難とする理由」は、具体的な数値・根拠を示して延納・物納申請を行う必要があるため、延納・物納の許可を得るハードルが高くなっているという事情があると思われる(延納については、次回検討を行う予定である)。 筆者の実務経験では、平成18年の延納・物納手続の改正後、大半のケースは現金一括納付、まれに延納を選択するケースがある、という印象である。   〔納税資金の準備と特例適用時の注意点〕 上述のとおり相続税の申告・納付期限は他界後10ヶ月以内であるが、相続税の納税が発生する場合には、「納税資金の準備」が必要となる。 相続財産に金融資産があり、相続税納税資金に困らない場合は問題ないが、相続財産の大半を不動産が占める場合などは、相続税納税資金の準備に時間が必要な可能性がある。 したがって、相続税業務を受託した場合には、相続税概算額を早期に計算し、納税者に早い段階で報告を行い、納税者に納税資金準備のための時間を多く確保する必要がある(第22回参照)。 なお、納税資金が不足する場合には、一般的には延納手続を行うことになると思われるが、利子税負担があることなどから、多くのケースでは、延納手続の後、相続財産(不動産など)の一部を処分し、延納している相続税を納付することが多いと考えられる。 このような場合には、以下の2点に留意を行う必要がある。 (1) 相続財産売却時の税金(所得税・住民税) 相続財産の取得費加算特例(租税特別措置法39条)の適用にあたり、土地等については、平成27年以後の相続により取得したものについて、平成26年度税制改正により、計算方法が従来と異なるため、留意が必要である。 (2) 小規模宅地特例の適用(相続税) 相続税申告において小規模宅地特例(租税特別措置法69条の4)の適用対象としている土地等を売却する場合、小規模宅地特例の適用要件として、「相続税申告期限までに継続して所有していること」が求められるケースがあるため、相続税申告期限前に売却を行うことは、この特例の適用の観点からは回避する必要がある(*)。 (了)

#No. 80(掲載号)
#根岸 二良
2014/07/31

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第17回】「欠損金の繰越控除」

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第17回】 「欠損金の繰越控除」   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久   1 欠損金の繰越控除制度とは 法人税法においては、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した所得の金額を計算し、この所得の金額に一定税率を乗じて法人税額を計算します。つまり、法人税額の計算は、事業年度ごとに区切って行うことが原則です。 一方、法人は事業を継続して営んでいることから、所得の生じた事業年度についてだけ課税し、ある事業年度の欠損金と他の事業年度の所得の金額を通算できないと、税負担が加重となるため、この例外の一つとして、前事業年度以前に発生した欠損金を当事業年度の損金の額に算入することができる『欠損金の繰越控除制度』があります。 2 制度のあらまし 前事業年度以前に生じた欠損金がある場合に、次の3つの要件に該当する場合に、その欠損金のうち当事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額の80%に相当する金額を、当事業年度の所得の金額を計算する上で、損金の額に算入することができます(法法57)。なお、この80%相当額の縮減の制限は、平成24年4月1日以後に開始した事業年度から適用されます(平成23改正法附則10)。 3 中小法人の特例 中小法人については、繰越控除される欠損金に80%相当額の縮減の制限はありません。 したがって、欠損金は、繰越欠損金控除前の所得金額を限度として、当事業年度の所得の金額を計算する上で、損金の額に算入することができます(法法57⑪)。 4 欠損金の控除制限 特定支配関係を有することとなった日以後5年以内に一定の事由に該当した場合には、欠損等法人の欠損金については、この欠損金の繰越控除の規定は適用されません(法法57の2)。 5 繰越控除の順序 繰越欠損金が複数の事業年度において生じている場合には、最も古い事業年度において生じたものから順次、繰り越して控除をします(法基通12-1-1)。 なお、欠損金が発生した事業年度から9年(または7年間)に繰越控除期間が制限されていますので、繰越控除期間内に控除しきれない欠損金は切り捨てられます。 6 制度適用に当たっての留意点 欠損金が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度において提出した確定申告書が白色申告書であっても、欠損金の繰越控除制度が適用されます。 ただし、連続して確定申告書を提出していることが必要ですので、無申告の事業年度がある場合には、欠損金の繰越控除制度は適用されません。 7 大法人(中小法人以外の法人)であった場合の欠損金の繰越控除計算例 資本金額2億円で大法人に該当する場合には、繰越控除される欠損金に80%相当額の縮減の制限があります。 各事業年度の所得と欠損の金額が設問のQと同じであった場合、当事業年度の欠損金控除前の所得金額の80%に相当する金額1,200万円(=1,500万円×80%)を限度とし、古い事業年度から生じた欠損金から順次、繰り越して控除をします。 なお、当事業年度の所得の金額から控除できなかった欠損金については、中小法人と同様、各欠損金が生じた事業年度以後9年間、繰り越すことができます。 8 中小法人と大法人の比較 中小法人に該当する場合には、例えば、繰越欠損金の額が200万円で、その事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合には、200万円のうち100万円が損金の額に算入され、その事業年度の所得金額は0となります。 一方、大法人(中小法人以外の法人)に該当する場合には、例えば、繰越欠損金の額が200万円で、その事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合には、200万円のうち80万円(=100万円×80%)が損金の額に算入され、その事業年度の所得金額は20万円となります。 (了)

#No. 80(掲載号)
#草薙 信久
2014/07/31

『単体開示の簡素化』の要点をおさえる 【第2回】「具体的な免除項目と導入に当たっての留意事項」

『単体開示の簡素化』の要点をおさえる 【第2回】 「具体的な免除項目と導入に当たっての留意事項」   公認会計士 中村 真之   5 免除項目の確認 (1) 単体開示を免除する項目 前回紹介した通り、「当面の方針」を踏まえ、連結開示で十分な情報が開示されている項目について、単体開示を免除することとしているが、連結開示で十分な情報が開示されているか否かについては、投資者保護の観点から、主として2つの観点から検討が加えられている。 1つ目は金商法の連結開示と単体開示を比較し、単体開示における情報が連結開示における情報に包含されているような場合など、連結開示の情報から単体の情報が推測できる程度の情報が提供されているかという視点である。 2つ目は当該項目を免除した場合でも、投資者にとって必要な情報を大きく損なわないかどうかという視点である。例えば重要な会計方針の注記や重要な後発事象の注記、継続企業の前提に関する注記などについては、投資者保護の観点から開示を省略することが適当でないと考えられる項目については、連結開示で十分な情報が開示されていると認められても、単体開示の免除はしないこととした。 その結果、以下の項目について、単体開示を免除することとした。 (2) 単体開示を会社法の水準に合わせる項目 以下の項目については、金商法の連結開示のみでは十分な情報が開示されていないために単体開示を免除できないものの、金商法の開示水準と会社法の開示水準が同程度であると認められるため、金商法の単体開示に関する規定を会社法の単体開示の規定に合わせることとした。 (3) その他の免除項目 上記のほか、以下の項目については、単体開示が免除されている。 ① 製造原価明細書 連結財務諸表においてセグメント情報を注記している場合は、製造原価明細書の作成が免除されている。これは、作成に要する負担に比してその有用性が低下している旨の指摘があることや、多角的に事業展開を行う会社が多くなっている現在において、複数の事業に係る原価を合算して1つの明細書で開示しても投資情報としての有用性は低いと考えられたためである。 ただし、単一事業の場合には、投資情報としての製造原価明細書の有用性は低下していないと考えられることから、セグメント情報を開示していない会社においては、引き続き製造原価明細書の作成が求められている。 なお、売上原価明細書に関しては、有用性が低下しているという指摘はなく、改正の対象外とされていることに留意する必要がある。 ② 主要な資産及び負債の内容 主要な資産及び負債の内容については、連結開示を主としている中、単体財務諸表の内容開示についての有用性は相対的に低くなっていると考えられることから、連結財務諸表を作成している会社は、主要な資産及び負債の内容の開示を要しないものとしている。 ③ 合併により消滅した会社の最終事業年度に係る財務諸表の記載 当該情報については、連結財務諸表の企業結合の注記において記載されているため、単体財務諸表においての開示を要しないものとしている。なお、合併以外の企業結合のケースは従前どおりとされているので、留意が必要である。 (4) 非財務情報に移行する項目 従来、会社法以外の法律の規定又は契約により、剰余金の配当について制限を受けている場合、貸借対照表に係る注記としての開示を求められていたが、投資家の利便性の観点から、記載箇所の一元化を図るため、非財務情報として開示されている配当政策に関する情報と合わせて開示することとしている。 (5) 現状の開示を維持する項目 今般の改正後においても、税効果に関する注記、会計方針の変更に関する注記及び重要な後発事象の注記、継続企業の前提に関する注記については、これまでの開示水準が維持されている。   6 導入に当たっての留意事項等 (1) 冒頭記載事項 新財務諸表等規則第127条の規定に基づいて単体開示を簡素化する場合、財務諸表提出会社はその旨を記載することとされている。一般的には、経理の状況の冒頭に、「会社が特例財務諸表提出会社に該当する」旨、「財務諸表規則等127第1項に従った処理を行う」旨を記載する。 (2) 比較情報の取扱い 「当面の方針」を踏まえ、金商法における単体開示の簡素化の検討に当たって、金商法の単体開示を会社法の要求水準に合わせる中で、開示期間についても1期間のみとすることも検討された。しかし、期間比較可能性の確保は、投資者保護に資する情報提供という観点で必要と判断されたことから、現行の2期間の開示を維持することとされた。 そのため、新財務諸表等規則を適用し、単体開示を簡素化した場合でも、比較情報の開示は必要となるが、比較情報については以下の通り記載することになる。 ① 本表を会社法に合わせる場合 この場合、新様式に基づき本表が作成されることになるため、前期分に関しては新様式に合わせて適宜組み替えを行う。 ② 注記等について 単体開示が免除されている項目について、注記を省略する場合は、比較情報としての前期分を開示する意義がなくなるため、比較情報の記載は不要となる。 一方、注記等について、会社法と合わせた開示を行う場合、前期分についても前年度の計算書類で開示されている情報を比較情報として記載する。 (3) 表示方法の変更について 新財務諸表等規則を適用し、単体開示を簡素化する場合には、注記を省略する場合、注記を会社法の記載と合わせる場合のいずれについても、表示方法の変更に該当するため注記が必要となる。 ただし、通常、表示方法の変更の注記については、前期の数値を当期の方法によった場合、どのようになるかを注記することが求められるが、実務上困難であることに鑑み、新財務諸表等規則第127条の規定を適用する場合、適用初年度においては、表示方法の変更の旨のみを記載し、前期の金額の記載は要しないものとされている。 なお、本表の区分掲記の重要性基準の改正に伴い、表示方法を変更する場合には、新財務諸表等規則127条に係るものではないことから、通常の表示方法の変更として、前期の数値を記載することになる点は留意する必要がある。 (連載了)

#No. 80(掲載号)
#中村 真之
2014/07/31

基礎から学ぶ統合報告 ―IIRC「国際統合報告フレームワーク」を中心に― 【第4回】「7つの「指導原則」とは?(その1)」

基礎から学ぶ統合報告 ―IIRC「国際統合報告フレームワーク」を中心に― 【第4回】 「7つの「指導原則」とは?(その1)」   公認会計士 若松 弘之   前回は、長期にわたる価値創造を様々なステークホルダーに分かりやすく説明しようという統合報告書の主目的において、とても重要なフレームワークの「基礎概念」、すなわち6つの「資本」や「ビジネスモデル」と「価値創造プロセス」の関係などを解説しました。 それでは各企業や組織において、6つの「資本」や「価値創造プロセス」が明確に識別された後、それをどのような視点や表示方法で報告書に表していけばよいのでしょうか。 今回と次回は、統合報告書作成の指針となる「指導原則」について解説します。 まずは、東郷くんと豊国さんの会話から、「基礎概念」と「指導原則」の関係を理解していきましょう。 「指導原則」とは、統合報告書の内容や情報の開示方法に関する考え方を示すものであり、次の7つの視点により構成されています。 以下では、フレームワーク本文での定義とそのポイントについて簡潔に解説していきます。   (A) 戦略的焦点と将来志向 この項目で大事なキーワードは「戦略」「価値創造能力」「資本の利用」「資本への影響」です。 このうち、「資本の利用」と「資本への影響」については、前回の「価値創造プロセス」イメージ図をあらためて確認してみましょう。 (出所:IIRC国際統報告フレームワーク日本語訳) この図の中で、企業や組織のビジネスモデルへの6つの資本の流入が「インプット」となっており、これが「資本の利用」を表しています。同様に、企業や組織のビジネスモデルから6つの資本への流出が「アウトカム」となっており、これが「資本への影響」を表しています。 企業は、6つの資本をビジネスモデルに「インプット」し、それを上回る「アウトカム」を目指していきます。これが実現することで長期にわたる価値創造が継続し、この効率が良いほど「価値創造能力」が高いといえます。通常、長期にわたり価値を着実に創造していくためには、長期的視野や大所高所からの「戦略」が必要となるでしょう。 したがって、フレームワークでは、統合報告書を作成するうえで、企業の「戦略」を「価値創造能力」と関連付けて分かりやすく説明することを求めています。   (B) 情報の結合性 この項目の定義はシンプルですが、要求していることはなかなか奥が深く、ある意味で統合報告が求めている核心といえる部分です。 フレームワークでは「情報の結合性」の実現のためには、「統合思考」が組織に根付いている必要があるといっています。この「統合思考」がまさに統合報告の原点といえるでしょう。 では、具体的にはどのような要素を統合的に結合させて考えればいいのでしょうか。フレームワークでは、具体例として、次の7つの相互関係を挙げています。   (C) ステークホルダーとの関係性 企業価値は組織単独ではなく、企業を取り巻く様々なステークホルダーとの関係性を通じて創造されていくため、企業は、自社に対するステークホルダーのニーズや関心をきちんと理解する必要があります。 統合報告書では、企業がステークホルダーとの日常継続的または臨時的なコミュニケーションや意思決定、行動、実績を通じて、そのニーズや関心をどのように理解し、対応しているかについて開示することを求めています。 「(D) 重要性」以降の「指導原則」については、次回解説します。 (了)

#No. 80(掲載号)
#若松 弘之
2014/07/31

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第7回】「連結会計」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第7回】 「連結会計」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 昨今では、1社単独ではなく、複数の企業を一体とした企業グループにより経営活動を行うことが多い。このような状況では、企業グループ間で様々な取引を行っており、個別財務諸表だけでは、企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を経済的実態に沿って開示することはできない。 例えば、同じ企業グループ内でA社からB社へ製品の販売を行い、B社が消費者へその製品を販売する場合、個別財務諸表においては、A社及びB社ともに売上が計上される。しかし、企業グループとしてはB社の消費者への販売のみが売上に該当し、A社のB社への売上は企業グループ内の内部取引にすぎない。したがって、個別財務諸表だけでは、企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を正しく開示することはできない。 そのため、企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を経済的実態に沿って、適切に開示するために「連結財務諸表」が必要となる。   連結会計は、以下の9つのステップに分けることができる。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 なお、持分法については、次回解説する。 【連結・持分法会計の全体イメージ】 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 連結財務諸表を作成するためには、まず、連結の範囲(連結財務諸表に含める子会社の範囲)を決定しなければならない。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 子会社とは 株主総会等の意思決定機関を支配している場合、当該企業は子会社に該当する。具体的には、以下の①~③に該当する場合、子会社に該当する。 ただし、更生会社、破産会社その他これらに準ずる企業であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業は除く(企業会計基準第22号「連結財務諸表における会計基準」(以下「連結基準」という)6、7)。   (2) 連結の範囲 原則としてすべての子会社を連結の範囲に含める必要がある(連結基準13)。ただし、以下の①及び②は連結の範囲内に含めない(連結基準14)。また、以下の③については、連結の範囲に含めないことができる(連結基準注3)。 子会社のうち、連結の範囲に含まれた子会社を連結子会社といい、連結の範囲に含まれなかった子会社を非連結子会社という。 (注)持分法適用会社、持分法非適用会社については、次回、解説する。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 親会社の決算日が連結決算日となる(連結基準15)。ただし、親会社と連結子会社の決算日は異なることも多い。そこで、連結基準では、連結子会社と連結決算日との差異が3ヶ月を超えるか否かで異なる取扱いが設けられている。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 連結子会社の決算日と連結決算日との差異が3ヶ月を超えない場合 連結子会社の決算日と連結決算日との差異が3ヶ月を超えない場合には、連結子会社の決算日における個別財務諸表を用いて連結することができる。 この場合には、連結子会社の決算日と連結決算日が異なることから生じる連結会社間の取引の重要な不一致について、必要な調整を行う必要がある(連結基準注4)。   (2) 連結子会社の決算日と連結決算日との差異が3ヶ月を超える場合 連結子会社の決算日と連結決算日との差異が3ヶ月を超える場合には、連結子会社は連結決算日における正規の決算に準ずる合理的な手続によって仮決算を行う(連結基準16)。ただし、相当の理由がある場合には、連結決算日から3ヶ月を超えない範囲の一定の日を仮決算日とすることができる(連結財務諸表規則ガイドライン12-1)。 この場合には、連結子会社の決算日と連結決算日が異なることから生じる連結会社間の取引の重要な不一致及び連結子会社と連結会社以外の会社との取引・債権・債務等に係る重要な変動について、必要な調整を行う必要がある(連結基準注4、連結財務諸表規則ガイドライン12-1)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 親会社、連結子会社間で会計方針、勘定科目に違いがある場合、本格的な連結の会計処理を行う前にその違いを統一しておく必要がある。また、決算日が異なることによる修正の検討も必要である。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 会計方針の統一による修正 同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社と連結子会社が採用する会計方針は、原則として統一しなければならない(連結基準17)。 例えば、同一の取引に係る売上の計上基準について、親会社で出荷日基準を採用している、連結子会社で納品日基準を採用している場合、企業集団の財政状態及び経営成績をより適切に表示する会計方針に統一する必要がある。 (※) 在外子会社との会計方針の統一については、本フロー・チャートでは解説していない。   (2) 勘定科目の統一による修正 同一環境下で行われた同一の性質の取引等については、親会社と連結子会社で同じ勘定科目を使用する必要がある。そのため、親会社と連結子会社で使用している勘定科目が異なる場合には、統一する必要がある。   (3) 決算日が異なることによる修正 【STEP2】で解説したとおり、以下のような場合に修正が必要となる。 例えば、以下のような場合に修正が必要となる。 連結決算日が3月末で連結子会社の決算日が12月末の場合に、3月中に連結子会社から親会社に重要な土地の売却があった。この場合に何ら修正しないと、「親会社の土地購入」という取引は親会社の3月末の個別財務諸表に計上されるが、「連結子会社の土地売却」という取引は12月末の個別財務諸表に計上されておらず、3月末に連結財務諸表を作成する際に、適切な連結修正を行うことができない。 そのため、連結子会社の12月末の個別財務諸表に土地売却取引の会計処理を追加する必要がある。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 在外子会社の個別財務諸表は外貨で表示されているため、日本円に換算する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 具体的には、以下のように換算を行う(外貨建取引等会計処理基準第三、会計制度委員会第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨指針」という)39、44)。 (*1) 在外子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、在外子会社の貸借対照表項目の換算に適用する決算時の為替相場は、在外子会社の決算日における為替相場とする(外貨指針33)。なお、連結決算日との差異期間内において為替相場に重要な変動があった場合、在外子会社は連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続による決算を行い、当該決算に基づく貸借対照表項目を連結決算日の為替相場で換算する(外貨指針33、71)。 (*2) 在外子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、在外子会社の損益計算書項目の換算に適用する期中平均相場は、連結会計期間に基づく期中平均相場ではなく、当該在外子会社の会計期間に基づく期中平均相場とする(外貨指針34)。 換算したことによる差額は「為替換算調整勘定」として連結貸借対照表の純資産の部に計上する。 《設例1》 換算後の財務諸表は以下のとおりである。 (*1) 1,000ドル×決算時の為替相場@110 (*2) 800ドル×決算時の為替相場@110 (*3) 100ドル×株式取得時の為替相場@100 (*4) (*10)と同額 (*5) 差額 (*6) 500ドル×期中平均相場@105 (*7) 500ドル×親会社との取引時の為替相場@100 (*8) 500ドル×(期中平均相場@105 - 親会社との取引時の為替相場@100) (*9) 900ドル×期中平均相場@105 (*10) 差額 又は 100ドル×期中平均相場@105   (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) 連結子会社は親会社に支配されていることから、資産・負債・収益・費用のすべて(連結会社間の取引は除く)を、連結財務諸表に計上する。そのため、親会社と連結子会社の個別財務諸表は単純合算する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 連結財務諸表の作成においては、連結財務諸表専用の会計帳簿はないため、【STEP5】~【STEP9】までの会計処理は、連結精算表で記録する。 (次ページ【STEP6】へ進む) (前ページ【STEP5】へ戻る) 単純合算まで終わったら、次に連結修正仕訳を行う。連結修正仕訳は資本連結、取引・債権債務の相殺、未実現損益の消去、連結税効果に分けることができる。【STEP6】では資本連結を解説する。 資本連結とは、親会社の連結子会社に対する投資とこれに対応する連結子会社の資本を相殺消去し、消去差額が生じた場合には当該差額をのれん(又は負ののれん)として計上するとともに、連結子会社の資本のうち、親会社に帰属しない部分を非支配株主持分に振り替える一連の処理をいう(連結基準59)。 具体例として、以下の(1)~(4)の手続がある。 (※) 他にも応用的な論点として、株式売却による支配喪失の場合、株式売却により子会社から関連会社になった場合、増資の場合等あるが、本フロー・チャートでは解説していない。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 支配獲得時の資本連結 資本連結は大きく支配獲得時と支配獲得後に分けることができる。まず、支配獲得時の資本連結を解説する。 また、支配獲得時の資本連結は、「一括取得」と「段階取得」に分けて考えることができる。 ① 一括取得における投資と資本の相殺 一括取得とは、連結子会社を一度の取得で支配した場合をいう。一括取得における支配獲得時の資本連結では、以下の検討を行う。 (ⅰ) 連結子会社の資産・負債の時価評価 通常、資産を購入するときに、時価を考慮する。したがって、子会社株式を取得する時も時価を考慮するはずである。 したがって、連結子会社を支配した時は、連結子会社の資産・負債のすべてを支配獲得日の時価で評価する(連結基準20)。この時価評価方法を「全面時価評価方法」という。 時価評価したことによる差額は子会社の資本に「評価差額」として計上する。この際には、税効果も考慮する。 《設例2》 会計処理は以下のとおりである(法定実効税率は35%とする)。 (*1) 時価1,200-簿価1,000=200 (*2) 差額 or (*1)×(1-35%) (*3) (*1)×35% (ⅱ) 投資と資本の相殺 親会社の投資(子会社株式の取得)は企業グループで見ると、単に金銭が親会社から子会社へ移動しているにすぎない。つまり、企業グループ内の内部取引にすぎない。 したがって、親会社の投資と子会社の資本を相殺する必要がある(連結基準23)。 ここで、子会社の資本には、以下が含まれる(会計制度委員会第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下「資本指針」という)9)。 (※) 子会社の資本には、新株予約権は含まれない。   なお、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、個別財務諸表上、子会社株式の取得原価に含まれている。しかし、連結財務諸表上は、発生した事業年度の費用として処理する(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業基準」という)26)ため、投資と資本の相殺の際の投資の金額には含めない。 (ⅲ) 非支配株主持分の計上 子会社の資本のうち親会社に帰属する部分を「親会社持分」という。親会社に帰属しない部分(親会社以外の株主に帰属する部分)を、「非支配株主持分」という(連結基準26)。非支配株主持分は、親会社以外の株主に帰属する部分のため、連結貸借対照表の純資産の部に「非支配株主持分」として計上する。 なお、親会社が子会社株式の100%を保有している場合には、非支配株主持分は生じない。 (ⅳ) のれん(又は負ののれん)の計上 親会社が子会社株式を取得するとき、子会社の資本の金額よりも高く購入したり、安く購入したりする。「親会社の子会社への投資額=子会社の資本」になるとは限らない。 そのため、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本を相殺消去すると、差額が生じる場合がある。この場合に、借方に生じた差額を「のれん」という。貸方に生じた差額を「負ののれん」という(連結基準24)。 具体的な会計処理は以下のように行う。 《設例3》 投資と資本の相殺の会計処理は以下のようになる。 (*1) 取得原価(=個別上の簿価) (*2) 子会社の資本900(=800+100)×20%=180 (*3) 連結上の簿価1,000(=(800+100)×80%+280) (*4) 差額   (注) 「個別上の簿価」とは、個別財務諸表上の子会社株式の金額をいう。「連結上の簿価」とは、「連結子会社の資本に対する親会社持分」と「のれん未償却残高」をいう。なお、支配獲得時には、個別上の簿価=連結上の簿価となる。   ② 段階取得における投資と資本の相殺 段階取得とは、複数回に分けて株式を取得して、支配を獲得した場合をいう。例えば、前期末に30%の株式を取得し、当期末に40%の株式を取得し、子会社を支配した場合が該当する。 段階取得における投資と資本の相殺は以下のように行う。 (ⅰ) 支配獲得前の子会社株式の時価評価 個別財務諸表上、親会社の子会社株式は取得原価で計上される。一方、連結子会社の資産・負債は支配獲得時の時価で評価する(下記(ⅱ)参照)。段階取得においてこのまま投資と資本の相殺をすると、連結子会社の資本は支配獲得時の時価になっているが、親会社の子会社株式には、支配獲得「前」の取得原価と支配獲得時の取得原価(=支配獲得時の時価)が含まれており、支配獲得時の時価同士で相殺することができなくなり、のれんの算定が正しく行われない。 そのため、投資と資本の相殺を支配獲得時の時価同士で相殺するために、支配獲得前に取得した子会社株式を支配獲得時の時価に評価替えする必要がある。 そして、評価替えによる差額は「段階取得に係る損益」として原則、特別損益に計上する(企業基準25(2)、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」305-2)。 《設例4》 【個別財務諸表】 当期末のA社株式  80,000 前期末と当期末のA社株式の取得単価が異なるため、前期末に取得した300株を当期末の時価に評価替えを行う。 300株×(@125-@100)=7,500 【投資と資本の相殺する際の投資金額】  87,500   (ⅱ) 連結子会社の資産・負債の時価評価 連結子会社を支配した時は、連結子会社の資産・負債のすべてを支配獲得日の時価で評価する(連結基準20)。詳細は上記①(ⅰ)参照。 (ⅲ) 投資と資本の相殺 親会社の投資(子会社株式の取得)は企業グループで見ると、単に金銭が親会社から子会社へ移動しているにすぎない。つまり、企業グループ内の内部取引にすぎない。したがって、親会社の投資と子会社の資本を相殺する必要がある(連結基準23)。詳細は上記①(ⅱ)参照。 (ⅳ) 非支配株主持分の計上 非支配株主持分は、親会社以外の株主に帰属する部分のため、連結貸借対照表の純資産の部に非支配株主持分として計上する。詳細は上記①(ⅲ)参照。 (ⅴ) のれん(又は負ののれん)の計上 親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本を相殺消去すると、差額が生じる。この場合に、借方に生じた差額を「のれん」という。貸方に生じた差額を「負ののれん」という(連結基準24)。詳細は上記①(ⅳ)参照。   (2) 支配獲得後の資本連結 支配獲得後における資本連結では、例えば、以下のような検討が必要である。 ① 当期純損益の按分 連結子会社の支配後に連結子会社が獲得した利益には、親会社株主に帰属する部分と親会社以外の株主(非支配株主)に帰属する部分がある。したがって、連結子会社が獲得した利益のうち、非支配株主に帰属する部分は、非支配株主持分に振り替える必要がある。 非支配株主に帰属する部分は、連結損益計算書上は、当期純利益の内訳項目である「非支配株主に帰属する当期純損益」として表示する(連結基準39(3))。 《設例5》 当期純利益の非支配株主への按分の会計処理は以下のとおりである。 1,000 × 非支配株主持分比率 20%=200 【連結損益計算書】 ※当期純利益は連結子会社A社のみとする。 ② 配当金の消去 連結子会社が親会社に配当金を支払ったときに、親会社では損益計算書上、受取配当金として計上される。しかし、この受取配当金は企業グループ内での資金移動にすぎないため、消去する必要がある。 また、非支配株主へ配当金を支払っているときは、それは、企業グループ外への資金流出であるため、その分、連結子会社から利益剰余金(資本)が減少していることになる。そのため、非支配株主への支払配当金分を非支配株主持分から減少させる。 なお、連結子会社が支払った配当金は、全額、受取配当金と消去するか、非支配株主持分から減少させるため、連結株主資本等変動計算書に計上されない。 《設例6》 配当金の消去及び非支配株主持分の減少の会計処理は以下のとおりである。 【配当金の消去】 1,000×親会社持分比率80%=800 【非支配株主持分の減少】 1,000×非支配株主持分比率20%=200 ③ その他の包括利益の按分 その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益等のその他の包括利益も当期純損益と同様に支配獲得後に発生した部分のうち、非支配株主に帰属する部分は、非支配株主に振り替える必要がある。 《設例7》 その他有価証券評価差額金の非支配株主への振り替えの会計処理は以下のとおりである。 500×非支配株主持分比率20%=100 ④ のれんの償却 のれんは原則、発生後、その効果の及ぶ期間にわたって20年以内の年数で定額法等により規則的に償却する(企業基準32)。詳細は、上記(1)①(ⅳ)参照。   (3) 追加取得 ここでは、追加取得の会計処理を検討する。「追加取得」とは、前期末に70%株式を取得し、子会社となった後に、当期末に10%取得した場合等の、支配獲得後にさらに株式を取得した場合をいう。 追加取得すると、非支配株主の持分比率が減少し、親会社の持分比率が増加するため、連結子会社の資本に対する非支配株主持分が減少し、親会社持分が増加する。 そして、追加取得によって増加した親会社持分は、追加投資額と相殺する。この相殺によって生じる差額はのれんではなく、資本剰余金として処理する(連結基準28)。 なお、資本剰余金残高がマイナスとなる場合には、連結会計年度末において、資本剰余金をゼロになるように、マイナス部分を利益剰余金から減額する(連結基準30-2、67-2)。 《設例8》 追加取得の会計処理は以下のとおりである。 (*1) 取得原価 (*2) 子会社の資本 10,000×10%=1,000 (*3) 差額   (4) 一部売却(売却後も支配継続あり) ここでは、一部売却(売却後も支配継続あり)を検討する。一部売却(売却後も支配継続あり)とは、前期末に80%の株式を保有していて、当期末に10%売却した場合等の、支配していて、その後、支配を喪失しない範囲内で一部の株式を売却した場合をいう。 一部売却(売却後も支配継続あり)すると、親会社の持分比率が減少し、非支配株主の持分比率が増加するため、子会社の資本に対する親会社持分が減少し、非支配株主持分が増加する。 そして、一部売却(売却後も支配継続あり)によって減少した親会社持分は、支配が継続していることから、子会社株式売却損益として計上せずに、資本剰余金の増減として処理する(連結基準29)。なお、のれんの未償却残高があっても、のれんの取崩しは行わない(連結基準66-2)。 資本剰余金残高がマイナスとなる場合には、連結会計年度末において、資本剰余金をゼロになるように、マイナス部分を利益剰余金から減額する(連結基準30-2)。 《設例9》 一部売却(売却後も支配継続あり)の会計処理は以下のとおりである。  【個別財務諸表】 (*1) 12,000÷80%×10%=1,500 (*2) 売却金額 (*3) 差額 (*4) 子会社の資本 10,000×10%=1,000 (*5) 差額 (*6) (*1)と同じ (*7) (*3)と同じ (次ページ【STEP7】へ進む) (前ページ【STEP6】へ戻る) 親会社と連結子会社間の取引、連結子会社間の取引(以下「企業グループ間の取引」という)は、企業グループ内の内部取引に過ぎないため、連結財務諸表上は相殺消去する必要がある(連結基準35)。また、連結決算日に貸借対照表に計上されている企業グループ間の取引によって生じた債権債務も相殺消去する必要がある(連結基準31)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 取引の相殺 取引の相殺とは、親会社と連結子会社、連結子会社間の取引を相殺消去することである。連結修正仕訳として消去する必要がある取引としては、例えば、以下のようなものがある。   なお、直接的な企業グループ間の取引のみならず、形式的には企業グループ間の取引ではなくても、実質的には企業グループ間の取引と考えられる間接取引についても消去する必要がある(連結基準注12)。 ここでは、以下の取引の相殺について解説する。 ① 売上高と仕入高の相殺 親会社から連結子会社への売上、連結子会社からの親会社への売上、連結子会社Aから連結子会社Bへの売上の場合で、相手が仕入として計上している場合、企業グループ間の取引であるため、売上高と売上原価を相殺する。 損益計算書を単純合算する時に、仕入高ではなく、売上原価として合算するため、売上高と消去する勘定科目は売上原価となる。 ② 売上高と販売費及び一般管理費の相殺 企業グループ間の取引において、売上側が売上高として計上していても、相手先が仕入高として計上しているとは限らない。相手先が販売費及び一般管理費として計上することもある。このような場合、売上高と販売費及び一般管理費を相殺する。 ただし、売上高と販売費及び一般管理費を相殺すると、売上総利益が大きく減少する。そのため、企業グループの実態に合った損益計算書になるように、相殺した売上高に相当する売上原価を販売費及び一般管理費に振り替える必要がある。 《設例10》 ただし、子会社Aの売上高に対応する費用90は売上原価に計上している。しかし、企業グループで見た場合、当該費用は、販売費及び一般管理費に計上するのが妥当である。 したがって、子会社で計上した売上原価90を販売費及び一般管理費に振り替える必要がある。 ③ 未達取引における相殺 一方の会社では売上高を計上しているが、他方の会社では、未達のため仕入高を計上していない場合がある。 このような場合、何にも追加で会計処理しないと、売上高と仕入高を相殺することができない。そのため、未達取引について追加で会計処理をする必要がある。 未達取引については、2つの考え方があり、どちらかの考え方に基づいて会計処理する。なお、どちらの考え方でも会計処理後の連結財務諸表は同一となる。 《設例11》 この場合の会計処理は以下のとおりである。 (ⅰ)  売上を計上した会社の売上がなかったとする考え方 この考え方の場合、親会社の売上がなかったものとする。 そのため、親会社で計上していた売上高と売掛金を消去する。 また、商品に係る売上原価を消去し、その分、在庫を増加させる。 (ⅱ)  未計上である仕入を計上するという考え方 この考え方の場合、連結子会社で仕入があったものとする。 そのため、仕入(売上原価)と買掛金を計上し、また、仕入(売上原価)は連結子会社の在庫になるので、在庫を増加させる。 次に親会社の売上高と連結子会社の仕入高を相殺する。 また、売掛金と買掛金も相殺する(下記(2)参照)。さらに、連結子会社の保有している在庫には、親会社が計上した利益が含まれているので、未実現利益の消去(【STEP8】参照)が必要となる。 連結子会社の在庫金額100-親会社の売上原価90=10   (2) 債権債務の相殺 債権債務の相殺とは、親会社と連結子会社、連結子会社間での取引により生じた債権債務を相殺消去することである。 連結修正仕訳として消去する必要がある取引としては、例えば、以下のようなものがある。 また、債権に対して個別財務諸表で貸倒引当金を計上している場合、債権債務の相殺消去により、債権がなくなるので、貸倒引当金も修正する必要がある。 ここでは、以下の連結修正仕訳について解説する。 ① 売掛金と買掛金の相殺 企業グループ内で売上取引を行ったことにより発生した売掛金と買掛金は、企業グループ間の取引で発生したものであり、企業グループ外への債権及び債務ではない。したがって、当該取引で発生した売掛金と買掛金は相殺する。 ② 貸付金と借入金の相殺 企業グループ内で資金の貸付を行ったことにより発生した貸付金と借入金は、企業グループ間の取引で発生したものであり、企業グループ外への債権及び債務ではない。したがって、当該取引で発生した貸付金と借入金は相殺する。また、受取利息と支払利息も相殺する(経過勘定も含む)。 ③ 貸倒引当金の修正 上記①、②のように相殺した債権に個別財務諸表で貸倒引当金を計上していた場合、債権が相殺されているため、それに対する貸倒引当金を修正する必要がある。 《設例12》 この場合の会計処理は以下のとおりである。 (次ページ【STEP8】へ進む) (前ページ【STEP7】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 企業グループ間で資産の売買を行う場合、資産を売却する会社は簿価よりも高く売ったり、安く売ったりすることがある。この場合、購入した会社にその購入資産が残高として残っていれば、その資産には、販売した会社の利益や損失が含まれている。しかし、この利益や損失は企業グループ内の取引で発生したものであるため、未実現の利益・損失(実現していない損益)である。したがって、全額消去する必要がある(連結基準36)。 ただし、売手側が親会社か連結子会社かで会計処理が若干、異なる。 親会社が売手(ダウン・ストリーム)である場合は、未実現損益を全額消去する。一方、連結子会社が売手(アップ・ストリーム)の場合、未実現損益を全額消去することに変わりはないが、非支配株主がいる場合には、非支配株主にも未実現損益の消去額を持分比率に応じて負担してもらう(連結基準38)。 なお、未実現損失の場合、売手側の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分は、消去しない(連結基準36)。これは、企業グループ外に販売しても損失が出ることが明らかである場合には、保守主義・健全性の観点から消去しないというものである。 また、未実現損益の金額に重要性が乏しい場合には、消去しないことができる(連結基準37)。 さらに、未実現損益の消去後、実現した場合には、実現に係る連結修正仕訳が必要である。未実現損益の実現の態様を資産の種類ごとにまとめると以下のようになる。 ここでは、以下の連結修正仕訳について解説する。 ① 商品販売における未実現利益の消去 企業グループ内で商品販売を行い、購入会社が企業グループ外に販売していなければ、購入会社にはその取引による在庫が残っていることになる。そして、その在庫には、未実現損益が含まれている(売手が簿価で販売した場合を除く)。 そのため、その在庫に含まれている未実現損益を消去する必要がある。 《設例13》 【取引の相殺消去】 【未実現利益の消去】 100-90=10 連結子会社Bでは在庫金額100となっているので、連結子会社が保有していた時の在庫金額である90になるように修正する。 【非支配株主への按分】 未実現利益消去額10×30%=3 なお、翌期に連結子会社Bが企業グループ外へ販売した時には、上記で消去した未実現損益が実現する。 その際の会計処理は以下のとおりである。 【前期連結修正仕訳の引継(開始仕訳)】 【実現仕訳】 連結子会社Bは個別財務諸表上、在庫金額100であったものを販売している。 一方、連結財務諸表上は在庫金額は90であったものを販売している。 したがって、売上原価を10減少させる会計処理を行う。 ② 固定資産の売却における未実現利益の消去 企業グループ内で固定資産の売買を行い、購入会社が企業グループ外へと売買等していなければ、購入会社にはその固定資産が残っていることになる。そして、その固定資産には、未実現損益が含まれている(売手が簿価で売買した場合を除く)。 そのため、その固定資産に含まれている未実現損益を消去する必要がある。 《設例14》 【未実現利益の消去】 1,000-800=200 連結子会社の建物の帳簿価額1,000となっているので、親会社が保有していた時の建物の帳簿価額である800になるように修正する。 なお、翌期に減価償却費を計上することで、上記で消去した未実現損益が実現する。 その際の会計処理は以下のとおりである。 【前期連結修正仕訳の引継(開始仕訳)】 【実現仕訳】 未実現利益消去額200÷10年=20 (次ページ【STEP9】へ進む) (前ページ【STEP8】へ戻る) 【STEP6】から【STEP8】で行った連結修正仕訳について、税効果を考慮する必要がある。詳細は、第5回「連結財務諸表における税効果」参照。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 *   *   * 以上、9のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   (了)

#No. 80(掲載号)
#西田 友洋
2014/07/31
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