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〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第42回】「「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかの判断(貸付事業用宅地等の特例の適否)」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第42回】 「「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかの判断 (貸付事業用宅地等の特例の適否)」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲は令和4年6月20日に相続が発生し、その所有するAマンションの1室と、B宅地を配偶者である乙が相続し、引き続き、貸付事業の用に供しています。 不動産の利用状況は下記の通りですが、被相続人の貸付事業はいわゆる「準事業」に該当します。 貸付事業用宅地等の対象となる準事業は「相当の対価を得て継続的に行うもの」とされていますので、上記不動産に係る賃料については、利益が生じていることから相当の対価を得ているものとして、小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例の対象になると考えていいでしょうか。 [A] Aマンションの1室は、小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例(以下、単に「特例」という)の対象になりませんが、B宅地は特例の対象になると考えられます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 「相当の対価を得て継続的に行うもの」の要件 貸付事業用宅地等の特例は、相続開始の直前において被相続⼈又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という)の貸付事業の用に供されていた宅地等に適用されますが、貸付事業は、下記の通り準事業と特定貸付事業に分類することができます(措法69の4③四、措令40の2①⑦⑲)。 本問の場合には、準事業に該当することになりますので、「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかが問題となります。   2 「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかの判断 「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかについては明確な基準があるわけではありませんので、他の法令等や過去の裁判事例等を基に検討する必要がありますが、判断基準として下記の2つの方法があります。 (1) 相当の利益を算定する方法 所得税における特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例の適用において「相当の対価を得て継続的に行う」の意義が租税特別措置法関係通達37-3に記載されています。これによれば、相当の対価とは、収入から必要経費を差し引いてなお相当の利益が生じるような対価を得ているかどうかにより判定することになっています。また、継続的か否かの判断は、貸付契約時にその貸付等が相当期間継続して行われることが予定されているかどうかで判定することとされています。 租税特別措置法関係通達37-3 (下線部は筆者による) 当然、所得税における特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例と小規模宅地等の特例では、その制度趣旨も異なりますが、過去の裁決や裁判事例において、相当の利益を算定して判断されていることが少なくありません。 例えば、平成27年10月1日の裁決(TAINSコード:F0-3-445)は、被相続人が生計一親族と法人に定期借地権設定契約に基づき土地を賃貸している事例で、生計一親族の貸付部分の特例の適否が争われた事件です。被相続人の事業の用に供されていた宅地等に該当するかどうかの判断を下記の通り判示しています。 また、平成9年11月19日の裁決(TAINSコード:J54-4-22)は、下記の通り判示しています。 上記の裁決事例の判断から考察しても、租税特別措置法関係通達37-3に基づき判定を行うことは、合理性があるといえます。 (2) 周辺相場と比較する方法 貸付けの対価が周辺相場と比較して低額である場合には、相当の対価を得ていないとする考えです。特に親族間の取引の場合には、通常の相場よりも低額で賃貸することも少なくないため、注意が必要となります。 平成7年1月25日の裁決(TAINSコード:J49-4-25)は、長女に対する駐車場の土地賃貸料が周辺地域の賃貸料に比し著しく低額であると認められたため、相当な対価を得て貸し付けられていたとはいえないとされた事例です。具体的には、長女への駐車場の賃貸に伴う賃貸料は、1平方メートル当たり4,825円に対して、周辺地域における賃貸料は、1平方メートル当たり13,447円又は18,181円であり、第三者に賃貸している賃貸料と比較して著しく低額であるため、相当な対価を得て行われたものとはいえないと判断された事例となります。 また、平成18年12月7日の裁決(TAINSコード:F0-3-201)は、親子間の土地の貸付けが権利金の支払いではなく、保証金の支払いが行われ、地代も通常の相場よりも低い場合に賃貸借であるのか、使用貸借であるかについて争われた事例ですが、最終的に使用貸借と認定され、特例も否認されました。 当該裁決では、本件地代が低額であるか否かを判断するにあたって、継続地代の平均的活用利子率(継続地代の収集事例のうち、客観的な時価(近隣公示価格等を規準として求めた土地の正常価格)が判明したものについてその時価に対する継続地代(支払地代年額)の割合を求め、それらの平均値を算定したもの、すなわち土地を元本としたときの地代との比率。以下「既存借地地代率」 という)が用いられました。具体的には下記のとおり判示しています。 本件は保証金の設定自体が被相続人から本件土地を確実に承継するためのいわば担保として設定されたもので実質的には親子という特殊な関係に基づく使用貸借契約であると認定がされた特殊な事例ではありますが、世間相場の比較に公表されている継続地代の平均的活用利子率が用いられた点については、地代を決めるに当たって参考となる事例となります。 上記(1)(2)より「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかを考察すると、下記の点に留意する必要があります。   3 本問への当てはめ 不動産ごとに特例の適否を判断した場合には、下記の通りとなります。 〔Aマンション1室〕 相当の利益を得ていたかどうかの判断ですが、毎月6万円ですので、年間の収入は72万円となります。必要経費は管理費、固定資産税及び都市計画税15万円及び減価償却費40万円の合計55万円ですので、毎年17万円の利益を得ていたことになります。 建物賃貸借契約書はありませんので、いつでも使用貸借に変更も可能であり、継続性の観点から問題があります。さらに、個人から親族に対して家賃等を収受する場合には、周辺相場相当の家賃を収受しているかどうかが問題となり、通常の相場の4分の1しか収受していませんので、「相当の対価」を得ていないと判断できます。 したがって、継続性の観点、周辺相場との比較の観点から「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当しないことになりますので、特例の適用を受けることはできないと考えられます。 〔B宅地〕 固定資産税及び都市計画税の合計の3倍程度の地代となりますので、相当の利益を得ていたということになります。土地賃貸借契約書もあり、毎年、地代の支払いもされていますので、継続性の観点からも問題ないといえます。 周辺相場としての比較ですが、個人と法人の「土地の無償返還に関する届出書」を賃貸借としている場合の地代の設定は、通常、固定資産税及び都市計画税の合計の3倍程度であれば問題ないかと考えます。したがって、「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当し、特例の対象になります。   ★実務上のポイント★ 「相当の対価を得て継続的に行うもの」に該当するかどうかの判断については、明確な基準はありませんが、相当の利益が生じているかどうか、賃貸借契約から継続性に問題ないかを基本としつつ、周辺相場との比較についても留意しておく必要があります。   (了)

#No. 475(掲載号)
#柴田 健次
2022/06/23

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例111(消費税)】 「個別対応方式が有利であったにもかかわらず、前期に一括比例配分方式を選択したため、2年間の継続適用要件により、不利な一括比例配分方式での申告となってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例111(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆仕入控除税額の計算方法(消法30②) 消費税の原則課税における仕入税額控除を計算する際、課税売上高5億円超又は課税売上割合が95%未満の場合には、全額控除は認められず、(1)個別対応方式と(2)一括比例配分方式のいずれかを選択しなければならない。 (1) 個別対応方式 その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額のすべてを、①課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(以下「課税対応」という)、②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(以下「非課税対応」という)、③課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの(以下「共通対応」という)に区分が明らかにされている場合には、次の計算式により仕入控除税額を計算することができる。 したがって、「課税対応」の課税仕入れが大きい場合には、個別対応方式が有利になる。 (2) 一括比例配分方式 個別対応方式のように課税仕入れ等に係る消費税額が区分されていない場合、又は区分されていてもこの方式を選択する場合に適用し、次の計算式により仕入控除税額を計算する。なお、一括比例配分方式を選択した場合には、2年間の継続適用要件がある。 したがって、「非課税対応」の課税仕入れが大きい場合には、一括比例配分方式を選択すると、課税売上割合分の控除ができるため、有利になる場合がある。       (了)

#No. 475(掲載号)
#齋藤 和助
2022/06/23

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第18回】「塩田跡地を造成してゴルフ場用地とした土地について鑑定評価額をもって登録価格としたことは違法か否かが争われた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第18回】 「塩田跡地を造成してゴルフ場用地とした土地について 鑑定評価額をもって登録価格としたことは違法か否かが争われた事例」   税理士 菅野 真美   ▷固定資産税の課税標準となるものは 固定資産税の課税標準となるものは、土地の場合は、賦課期日における価格で土地課税台帳もしくは土地補充課税台帳に登録されたものとするとされている(地法349①)。 課税台帳に登録された価格(以下「登録価格」という)は、固定資産評価基準(以下「評価基準」という)に基づいて算定されることになる。 基本的には登録価格は、評価基準に基づく価格となるが、異なる場合もある。最高裁平成25年7月12日判決によると、登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合は、当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず、その登録価格の決定は違法なものとされる。 つまり、固定資産税においては評価基準に基づいて算定された価格が絶対的な尺度と考えられる。しかし、土地の形や立地は多様であり、評価基準は、必ずしもすべての土地の適切な評価ができるように網羅されているものではない。それでは、評価基準で適切な評価ができないような場合は、何に基づいて評価すれば合理的なのだろうか。 今回は、当初塩田であった土地を造成してゴルフ場にした案件にかかる固定資産税評価額について、評価基準ではなく鑑定評価に基づいて登録価格を算定したことから争われた事案を検討する。   ▷どのような事案か ゴルフ場の用に供された一団の土地についてK市が平成27年度に登録した価格について、Xは不服であるとして固定資産税評価委員会に審査の申出をしたところ、棄却されたために訴訟となり適正な時価を超える部分の取消しを求めて訴えた事案である。 このゴルフ場用地は、当初塩田跡地であったものを造成してゴルフ場用地としたものであるが、造成してからかなりの期間がある。平成27年1月1日のゴルフ場用地の評価について、K市は、不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて付近の工場用地に比準する方法により工場用地として取得価額を評定し、造成費を加算せず、合計32億933万8,607円と決定して土地台帳に登録したが、これが、評価基準に定める評価方法に従って算定されたものではないとして、Xは取消しを求めた。   ▷評価基準におけるゴルフ場用地の評価方法は 評価基準におけるゴルフ場用地の評価方法は次のとおりである。 (※) 総務省「固定資産評価基準」第1章第10節二 つまり、ゴルフ場用地は、原則的には、取得価額+造成費に基づいて算定し、取得後価格変動がある場合は、附近の土地の価額又は最近の造成費から評定するとされている。 また、これだけではわかりにくいことから平成11年9月1日付で自治省税務局資産評価室長「ゴルフ場の用に供する取扱いについて」(以下「ゴルフ場通知」という)を発出したが、これは、周辺地域が宅地化されているゴルフ場用地の評定に関し、ゴルフ場の近傍の宅地に比準しながら山林の価額を評定する方法を示している。   ▷高裁の判決は 高裁は、評定されるべき取得価額は、ゴルフ場用地に造成される前の塩田跡地の客観的な時価と解すべきだが、鑑定によってこれを求めることができないので、登録価格が評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということはできない。登録価格が評価基準によって決定される価格を上回らないとはいえないとして、K市の決定は全部取り消すべきものと判断した。   ▷最高裁の判決は しかし、最高裁は、高裁の判断は是認できないとした。造成前の状態である塩田跡地としての取得価額を評定していないことをもって、登録価格が評価基準の定める評価方法に従っていないと解すべき理由が見当たらない。造成から長期間経過しているから、造成前の状態を前提に取得価額を正確に算定できないことも想定できる。また、ゴルフ場通知も、山林を造成したことを前提にしているから、本件とは異なる。 そのため、高裁の判断は、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤っており、更に審理を尽くすために、高裁に差し戻すとした。 *   *   * このように最高裁は、鑑定評価でゴルフ場用地を登録価格としたことをもって違法であるとはいえないとして、高裁の判断を否定した。相続税において借入による不動産の取得につき総則6項を適用する課税処分が令和4年4月19日の最高裁判決で認められたが、適用された価額は鑑定評価額であった。固定資産税の世界においては、適正な時価よりも評価基準が重視されている。評価基準では対応不能な場合は、鑑定価格に基づかれるものなのか、差戻し審の判示に注目したい。 (了)

#No. 475(掲載号)
#菅野 真美
2022/06/23

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第81回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第81回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也     〈Q5〉 出荷基準・到着(着荷)基準と引渡基準 売主であるA社(3月決算)は、X1年3月末に、買主であるB社に、B社が購入したA社の商品を出荷した(配送業者に引き渡した)。その後、A社は、X1年4月1日にB社に商品が到着したことを配送業者のウェブサイト上の追跡サービスを利用して確認した。この場合、A社は、その販売に係る収益をその商品を出荷した日の属する事業年度(X1年3月期)の収益に計上することが認められるか。 また、A社は、その販売に係る収益を出荷日ではなくウェブサイトの確認によって把握した商品のB社への到着日(着荷日)の属する事業年度(X2年3月期)の収益に計上することも認められるか。 〈A5〉 A社は、その販売に係る収益をその商品を出荷した日の属する事業年度(X1年3月期)の収益に計上することが認められる。ただし、次に掲げるケースなど一定の場合には認められない可能性がある。 また、通常、到着日(着荷日)基準は引渡基準に含まれる。よって、その販売に係る収益をウェブサイトの確認によって把握した商品のB社への到着日(着荷日)の属する事業年度(X2年3月期)の収益に計上することも認められる。ただし、上記出荷の場合と同様の理由により、一定の場合には認められない可能性がある。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 商品を出荷した日は、法人税法22条の2第1項の引渡日に含まれるため、出荷した日の属する事業年度(X1年3月期)の収益として計上することが認められる。しかし、商品を出荷した日をもって常に収益計上の日として認められるわけではないことなど、いくつか注意点がある。 出荷基準が法人税法22条の2第1項の引渡基準に含まれる場合(A社における出荷した日が同項の引渡しの日に含まれる場合)には、一定の要件を満たして法人が近接日基準の採用を選択しない限り、引渡基準としての出荷基準による収益計上が認められる。近接日基準を定める2項の適用要件を満たす場合には、1項よりも2項が優先適用されるということである(本連載第79回及び第80回参照)。 一定の要件とは、基本的には、法人が、契約の効力が生ずる日を含む近接日基準を採用し、その日の属する事業年度の確定決算で収益経理することを選択し、かつ、それが一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従っていることである。 注意点として、これまで継続して出荷日以外の日に収益を計上している場合において、出荷日に収益を計上するように変更する合理的な理由が認められないとき(法人税基本通達2-1-2参照)や、課税庁から課税処分を受ける場面で出荷日よりも合理的な基準があると認められるときには、出荷日以外の日に収益を計上することを求められる可能性もある。 着荷基準は引渡基準の一種であると考えられるため、A社が、その販売に係る収益をウェブサイトの確認によって把握した商品のB社への到着日(着荷日)の属する事業年度(X2年3月期)の収益に計上することも認められるが、出荷基準に関する上記の注意点を共有する。 ただし、出荷基準、着荷基準、あるいは検収基準と一口にいっても棚卸資産の種類や性質、個々の契約や商慣習等により、その具体的内容や状況は異なりうる。 このため、個別の事例に対峙する場面では、このような抽象的な基準ないし中間概念を通さずに、より直接的に、個々の日が法人税法22条の2第1項の引渡しの日に該当するか否かを精査する必要が出てくる。 (了)

#No. 475(掲載号)
#泉 絢也
2022/06/23

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第59回】「自社利用のソフトウェア」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第59回】 「自社利用のソフトウェア」   史彩監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、自社利用のソフトウェアの会計処理について解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 自社利用のソフトウェアは、購入又は作成に要した費用を全て資産計上できるわけではない。将来の収益獲得又は費用削減が確実である場合のみ、資産計上できる。 そのため、ソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する。その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合はソフトウェアを無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する(会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下、「指針」という)11)。 確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、以下の検討は不要である。 資産計上される場合の例としては、以下が挙げられる(指針11)。 【STEP1】で将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められても、ソフトウェアの購入費用又は作成に関係する費用項目の全てを資産計上できるわけではない。項目によって、資産計上するもの、費用計上するものを分ける必要がある。 (1) ソフトウェア本体の購入又は作成費用 ソフトウェア本体を購入した場合、その購入費用は、ソフトウェアの取得価額に含める。また、ソフトウェアを作成した場合は、ソフトウェア作成にかかった費用(人件費、外注費、その他経費)を集計し、その金額を資産計上する。 (2) 購入ソフトウェアの設定等に係る費用 外部から購入したソフトウェアについて、そのソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用は、購入ソフトウェアを取得費用として当該ソフトウェアの取得価額に含める。 ただし、これらの費用について重要性が乏しい場合には、費用処理することができる(指針14)。 (3) ソフトウェアを大幅に変更して自社仕様にするための費用 自社で過去に制作したソフトウェア又は市場で販売されているパッケージソフトウェアの仕様を大幅に変更して、自社のニーズに合わせた新しいソフトウェアを制作するための費用は、それによる将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合を除き、研究開発目的のための費用と考えられるため、購入ソフトウェアの価額も含めて費用処理する。 将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、購入ソフトウェアの価額を含めて当該費用を無形固定資産として計上する(指針15)。 (4) その他の導入費用 ソフトウェアを利用するための環境を整備し有効利用を図るための費用は、原則としてソフトウェアそのものの価値を高める性格の費用ではない。したがって、その費用は原則として発生時の費用として会計処理する(指針40)。 例えば、以下のような費用は、発生した事業年度の費用として会計処理する(指針16)。 なお、ソフトウェアを購入する際に、上記のような導入費用も含めた価額で契約等が締結されている場合には、導入費用は合理的な見積りによって購入の対価とそれ以外の費用とに区分して会計処理を行う(指針40)。 〈まとめ〉 資産計上したソフトウェアは、その後、減価償却する必要がある。 (1) 減価償却方法 自社利用のソフトウェアにおいても、その利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用する必要がある。一般的には、定額法による償却が合理的である(指針21)。 (2) 耐用年数 耐用年数は、ソフトウェアの利用可能期間によるが、原則として5年以内の年数とする。5年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要である。 利用可能期間については、毎期見直しを行う必要がある(指針21)。 例えば、利用可能期間の見直しの結果、新たに入手可能となった情報に基づいて当事業年度末において耐用年数を変更した場合には、以下の計算式により当事業年度及び翌事業年度の減価償却額を算定する(指針21)。 *  *  * 以上、3つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 475(掲載号)
#西田 友洋
2022/06/23

〔具体事例から読み取る〕“強い”会社の仕組みづくりQ&A 【第5回】「海外拠点で起きがちな贈賄事件を予防するためにはどのような対応が必要か」

〔具体事例から読み取る〕 “強い"会社の仕組みづくりQ&A 【第5回】 「海外拠点で起きがちな贈賄事件を予防するためにはどのような対応が必要か」   米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   ◆◇ 解 説 ◇◆ 1 「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」について 企業活動のグローバル化・ボーダーレス化に伴い、海外市場での商取引の機会をひろく確保してゆくためには、公正取引に基づくフェアな国際競争が求められる。そのため、贈賄など不正な利益供与をする腐敗行為を、国際社会全体で防止する必要がある。こうした意識が国際的に高まり、公務に携わる外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約が締結された。 2017年時点で43ヶ国が「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」に調印している。わが国もこの条約の締結を受け、国内法の不正競争防止法に基づいて、日本国内において外国公務員への贈賄行為が行われた場合(贈賄を行った者が日本人か外国人かは問わない)、処罰の対象としている。 【参考】不正競争防止法第18条 (※) 罰則については、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(又はこれの併科)(同法第21条第2項第7号)、また、法人両罰については3億円以下の罰金(同法第22条第1項第3号)。   2 外国公務員贈賄罪をめぐる事件 ビシネスを有利に進めるため、賄賂を提供するといった古臭い時代は、今となっては一部政治家の選挙における買収などを除き、既に終わりを告げたかに思われたが、残念ながら依然として事件は起きている。冒頭の事例のほかにも、例えば次のような事件がある。   3 海外諸国の腐敗防止に向けた対応 こうした外国公務員贈賄防止規制に対する対応は、わが国だけに留まらない。米国では、海外腐敗行為防止法(FCPA)が国内だけでなく域外適用の姿勢を示している。また英国でも、贈収賄禁止法(Bribery Act)が成立しており、これについても同様に域外適用の余地がある。   4 外国公務員贈賄防止に向けたコンプライアンス対応 開発途上にある国の公務員によっては、権限を悪用して自ら不当なリベートを求めてくる場合がある。これに安易に応ずることは極めて危険である。不正競争防止法による処罰の対象は自然人(人)に留まらず、法人(会社)にも3億円以下の罰金刑を科すなど非常に厳しい。刑事罰によって、培った信用やブランド力の失墜など社会的にも大きな痛手を被る。こうしたことを踏まえ、会社として取り組むべきことは次の通りである。 (1) 経営陣が明確な方針を打ち出す 経営陣は、外国公務員に対する贈賄などの不正行為に決して関わらないという方針を国内や海外拠点の役職員に向けて伝え、周知する必要がある。どんなことをしても受注や売上を確保するという営業姿勢は、もはや社内的にも受け入れられないことを経営層が認識するとともに、それを継続して役職員に説く必要がある。 (2) 不正・腐敗防止体制をつくる 国内外の営業部門における活動を管理部門が適切にコントロールできる体制を構築する。 取り組みやすい仕組みづくりとして、次のような例が考えられる。 (3) 研修の継続的な実施 海外法令の研修をせずに、日本人営業マンを海外に向かわせることほど無謀なことはない。全役職員を対象として、不正競争防止に係る外国公務員への贈賄について、継続した研修を実施することが重要である。 (4) 共同企業体を組むパートナー企業の調査 共同企業体を組んだパートナー企業が不正腐敗行為を起こし、共同企業体を構成する企業が共謀行為を図ったものと認定され、処罰の対象となる事例が生じている。共同企業体を構成する場合、パートナー企業のコンプライアンス体制について、あらかじめ十分調査をすることが大切である。   5 ファシリテーション・ペイメントの問題 ファシリテーション・ペイメント(Facilitation Payments)とは、行政サービスに関する手続きを円滑にしてもらうため、少額の支払いをすることである。日本には、こうした慣習は存在しない。しかし、国によって許認可を求める場面などに、現地公務員から少額の金銭を求められ、一定の金銭を支払うことが社会常識として浸透している場合もある。不正競争防止法では、こうした少額の支払も禁じているが、現地社会事情のなかでビジネスを展開する営業マンにとっては、仕事が進まなくなる懸念が残る。こうした特殊かつ個別のケースは、現地の法令や裁判例に詳しい弁護士に相談することが必要となる。 (了)

#No. 475(掲載号)
#打田 昌行
2022/06/23

税理士事務所の労務管理Q&A 【第8回】「雇用契約から業務委託契約への切り替え」

税理士事務所の労務管理Q&A 【第8回】 「雇用契約から業務委託契約への切り替え」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   働き方改革の流れの中、雇用契約から業務委託契約への切り替えを考える企業も増えています。 今回は、雇用契約と業務委託契約の違い、契約を区別する判断基準等、雇用契約から業務委託契約へ切り替えるに当たっての留意点等について解説します。 * * 解 説 * * 1 有資格者の失業給付受給の可否 以前は、公認会計士、税理士、弁護士、社会保険労務士、弁理士などのいわゆる士業の有資格者が、労働者として勤務していた事業所を退職しても、法律の規定に基づいて名簿や登録簿などに登録している場合、登録の資格で個人事業を営んでいると判断されたため、失業中に支給される雇用保険の基本手当(失業給付)の支給対象にはなりませんでした。 しかし、現在(平成25年2月1日以降)では、上記に該当する場合でも、基本手当の受給要件を満たすことができれば、失業給付の対象となっています。 〈基本手当の主な受給要件〉   2 業務委託契約への切り替え (1) 雇用契約と業務委託契約 雇用契約とは、労働者が労働に従事し、使用者がその労働の対価としての報酬を支払うことを約束する契約をいい、原則として、労働基準法などの労働法の保護を受けることになります。 業務委託契約(法律上は、請負契約又は委任契約)とは、企業が業務を外部の企業や個人に委託する際に行う契約をいい、労働力ではなく仕事の成果を提供します。 使用者と雇用関係を結ばず、対等な立場で業務を遂行しますので、労働法の保護を受けることができません。 (2) 雇用契約と業務委託契約の見分け方 業務委託契約を締結しても、雇用契約と業務委託契約の区別が困難な場合も生じます。雇用契約における「労働者」であるか、業務委託契約における独立した「個人事業主」であるかは、契約の形式のいかんにかかわらず、使用従属性の有無により判断されます。 下記に該当する場合は使用従属性が認められ、業務委託契約ではなく、雇用契約になる可能性が高いですが、各要素を総合的に見て、雇用契約になるのか業務委託契約になるのかを判断することになります。 〈使用従属性に該当するか否かの主な判断要素〉 (3) 留意点 雇用契約から業務委託契約への切り替えに際しては、十分な協議と説明が必要です。 ① 退職の合意と業務委託契約 雇用契約から業務委託契約に切り替えた場合、雇用契約は終了することになりますので、退職扱いになります。解雇して業務委託契約に変更することは通常考えられませんので、合意退職になります。退職願いを提出してもらうこと又は退職合意書等の書面を締結することが望ましいです。 業務委託契約になれば、労働者でなくなり、労働基準法などの労働法や社会保険の適用ができなくなることを説明しなければなりません。 また、契約の際にはお互いの合意により、「業務委託契約」が成立したように思えても、契約相手が「労働者性」を主張するケースもありますので、注意が必要です。 ② 秘密保持・競業避止についての検討 雇用契約の場合、就業規則等に明記していれば、従業員に秘密保持義務や競業避止義務を課すことができますが、業務委託契約の場合には、契約相手に就業規則を適用することはできません。したがって、秘密保持義務や競業避止義務を課す場合には、相手方と十分話し合ったうえで、契約書に明記する必要があります。   3 結びに 働き方改革により、多様な働き方の選択が可能になっています。雇用契約から業務委託契約への切り替えは、副業にも対応しやすく、事務所と相手方の双方にメリットのある働き方になるのであれば、良い選択かもしれません。切り替えに当たっては、本稿を参考にしていただければ幸甚です。 (了)

#No. 475(掲載号)
#佐竹 康男
2022/06/23

〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第7回】「不動産所有者の住所変更登記義務化の概要と注意点」

〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第7回】 「不動産所有者の住所変更登記義務化の概要と注意点」   司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行  【Q】 不動産の所有者の住所変更登記も義務化されたと聞きましたが、具体的にどうなるのでしょうか。 【A】 その変更があった日から2年以内に、住所の変更の登記を申請する必要がある。 -《解説》- 住所等の変更登記がされていないことは、所有者不明土地の原因として、相続登記がされていないことに次いで大きな割合を占めている(特に、都市部の人口集中地区においては、むしろ相続登記がされていないことよりも大きな原因である)。 不動産登記法改正前は、住所等の変更登記は任意であり、不動産の所有者の氏名又は住所を、わざわざ変更登記する人はまれであった。結果として、登記記録のみから所有者の所在を確認することができず、不動産登記情報の正確性は担保されていなかった。このことが積み重なり、所有者不明土地問題の原因となっていた。 上記を踏まえて、所有者の住所等の変更を不動産登記に反映するために、不動産の所有者の住所等の変更登記が義務化された。 具体的な内容は以下のとおりである。 (※) 本稿公開時点では、政令は未制定のため施行日は決まっていない。 (了)

#No. 475(掲載号)
#丸山 洋一郎、松井 知行
2022/06/23

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例72】キッコーマン株式会社「2022年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」 (2022.4.27)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例72】 キッコーマン株式会社 「2022年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」 (2022.4.27)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、キッコーマン株式会社(以下「キッコーマン」という)が2022年4月27日に開示した「2022年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」である。サマリー情報の「2023年3月期の連結業績予想(2022年4月1日~2023年3月31日)」には次のような記載がなされ、来期の業績予想は未定とされている。 「配当の状況」には次のような注記が付され、来期の配当予想も未定とされている。 2022年5月19日付の日本経済新聞によると、2022年3月期の決算短信で業績予想を未定とした東証プライム上場企業は全体の6%に上るという。業績を予想することが困難な状況にあるからなのだと思われるが、キッコーマンの場合、同社の過去の開示をみると、それだけではないように思われてくる。   2 IFRS適用後に変化が キッコーマンは、2020年5月12日に「国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に関するお知らせ」を開示し、2021年3月期からIFRS(国際財務報告基準)を任意適用するとしている。2021年4月27日に開示した「2021年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」には、タイトルどおり日本基準による数値が記載され、サマリー情報の「2022年3期の連結業績予想(2021年4月1日~2022年3月31日)」には次のような記載がなされている。 同社は、その後、2021年7月2日に「2021年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」と「業績予想(IFRS)の開示に関するお知らせ」を開示したのだが、このIFRS適用後に同社の開示に変化が生じるのである。   3 ほとんどなかった業績予想修正 キッコーマンは、これまで業績予想を修正することがほとんどなかった。IFRS適用前の過去10年間のうち、業績予想の修正に関する開示は1回のみである。しかもやむを得ない修正だった。2016年6月1日に開示された「業績予想の修正に関するお知らせ」に記載されている、その「修正の理由」は次のとおりである。 2016年4月27日に開示された「持分法適用関連会社の異動を伴う自己株式の公開買付けへの応募に関するお知らせ」の「今後の見通し」には、次のような記載がなされていた。業績予想を修正するか否かは、公開買付けの結果次第だったのである。 業績を予想しやすい業種なのかもしれないが、同社はこれまで確度の高い業績予想を開示してきた。しかし、IFRS適用後に変化が生じる。2021年7月2日に「2021年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」と「業績予想(IFRS)の開示に関するお知らせ」を開示したのだが、その4ヶ月後の2021年11月5日に「2022年3月期第2四半期連結業績予想と実績値との差異および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」を開示している。その「差異及び修正の理由」の記載は次のとおりである。 やむを得ない状況かとも思えるのだが、第2四半期(2021年の4月から9月)の数値が、2021年7月2日に開示された予想と乖離していたのである。これまでの同社の開示と見比べると、どうしたのだろうと思えてしまう。 また、タイトルに「第2四半期連結業績予想と実績値との差異」とあるとおり、「2022年3月期第2四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」と同時に開示している。もっと早く「第2四半期連結業績予想の修正」として開示できなかったのだろうか。   4 決算短信の訂正も キッコーマンは、これまで決算短信を訂正することもほとんどなかった。こちらもIFRS適用前の過去10年間のうち1回のみで、2019年5月29日に開示された「(訂正)『2019年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)』の一部訂正について」である。訂正といっても、添付資料の「経営成績等の概況」中の「中国・香港市場および韓国」を「中国および香港市場」に訂正するというものだった。 しかし、これにもIFRS適用後に変化が生じる。まず2021年4月27日に「2021年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」を開示した後、同日に「(訂正)『2021年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)』の一部訂正について」を開示している。決算短信に添付された補足説明資料について、複数箇所の数値を訂正している。 次に2022年2月4日に「(訂正)『2022年3月期第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)』の一部訂正について」を開示している。こちらも四半期決算短信に添付された補足説明資料で、複数箇所の数値を訂正している。 そして、今回の開示の前日2022年4月26日には「(訂正・数値データ訂正)『2021年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)』の一部訂正について」を開示している。ケアレスミスにみえるが、添付資料のキャッシュフロー計算書の数値を訂正している。   5 業績予想未定の原因 こうみてくると、キッコーマンの業績予想未定の原因は「未確定な要素が多く、数値を示すことが困難な状況」にあるからだけではないように思われてきてしまう。確かにその状況も一因かと思うが、もしかするとIFRS適用によって経理財務部門の方々の負担が増していることもあるのではないだろうか。あくまで筆者の勝手な想像なのだが、現場の方々が疲弊しきってしまい、「今回はもう無理」となってしまったのではないだろうか。IFRS適用がなければ、注記を付すなどの工夫をして、業績予想を開示していたかもしれない。 今回の開示の後、2022年3月期の業績は増収増益であるにもかかわらず、同社の株価は急落した。業績予想を未定としたからなのだろうか。同社は業績予想を開示しないと言っているわけではない。「業績予想については、合理的に予測可能となった時点で公表いたします」としている。 決算短信で来期の業績予想を開示しない会社の株式は売るという考えの投資家がいるのかもしれないが、個人的にはそうした考え方に違和感を覚える。予想というよりは目標のような数値を開示して、業績予想の修正を繰り返す会社もある。それよりは、確度の高い業績予想の開示に努めようとする会社の方が好ましいように思う。「合理的に予測可能となった時点」での開示を待てないのだろうか。 ちなみに、証券会社は以前から業績予想を開示していない。例えば、株式会社大和証券グループ本社は2022年4月27日に「2022年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」を開示しているが、そのサマリー情報の「2023年3月期の連結業績予想(2022年4月1日~2023年3月31日)」の記載は次のとおりである。 決算短信で来期の業績予想を開示しない証券会社の株式は、決算短信開示後いつも売られたのだろうか。そんなことはないはずだが。 (了)

#No. 475(掲載号)
#鈴木 広樹
2022/06/23

プラス思考の経済効果 【第4回】「パンダとネコの「たま駅長」の経済効果」

プラス思考の経済効果 【第4回】 「パンダとネコの「たま駅長」の経済効果」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 双子のパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」の経済効果 (1) 日本におけるパンダの人気 上野動物園のパンダ「シャンシャン」の中国への返還がまた延期になりました。最初は2019年6月末に返還が予定されていたのですが、新型コロナウイルスの影響等で延期が繰り返され、今回は2022年12月末までの延期となりました。パンダ好きの人たちは喜んでいることでしょう。日本人ほどパンダ好きな国民は世界でもまれではないでしょうか。 日本には1972年の10月に「カンカン」と「ランラン」の2頭のパンダが上野動物園に中国から送られてきて、大変な人気になりました。パンダが来る前の上野動物園の年間入園者数は毎年400万人前後でしたが、パンダが来た1972年以後に急増し、1974年には過去最高の約765万人を記録しました。 もちろん、諸外国でも初めてパンダが来た時は大変な人気でした。アメリカでは1972年4月にワシントン国立動物園にパンダが来た時は大騒ぎになりました。しかし、今では当初ほどの人気はありません。また、イギリスでは1974年にパンダが初めて来て人気になりましたが、今ではエジンバラ動物園に2頭いるだけで、レンタル料(年間約1億円)や飼育費用がかかるので飼育を続けるかどうか議論中だということです。諸外国のマスコミ関係者は「現在、外国では日本人ほどパンダで大騒ぎはしない」と言っています。 なぜ、日本人はパンダが大好きなのでしょうか。一般的に人間は丸いものを可愛いと思う感情がありますが、日本人が欧米人と比べて特にパンダが好きな理由として次のような説が考えられています。 それでは日本におけるパンダの経済効果の計算結果を紹介しましょう。 (2) 双子のパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」の経済効果 パンダの経済効果は、上野動物園にパンダを見に来る人、または動物園には来ないがネットや百貨店などでパンダのぬいぐるみを買う人などの消費総額から計算します。まず、パンダを上野動物園に見に来る人数を推計します。双子のパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」を見に来る人は過去のパンダ・フィーバーの時の入園者数を参考に、一般公開されてから1年間で約568万人と予測しました。 しかし、この観客の中には有料入園者と無料入園者がいます。小学生以下、都内在住の中学生、身体障害者は無料です。この無料入園者の人数は意外と多く、過去のデータでは約半数の人が無料入園者です。しかし、無料入園者でも交通費、飲食費、グッズ代などは消費します。また、遠方から来て宿泊する入園者と近隣から来て日帰りの入園者もいます。宿泊する入園者は日帰り入園者と比べて数倍の消費を行います。すべての入園者をこれらの人達に分類して、それぞれの消費金額を計算するのです。 双子のパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」を上野動物園に見に来る人、また見に来なくてもネットや百貨店でパンダのグッズを購入する人の消費総額は約169億円になりました。その消費総額の経済効果を最新の「東京都産業連関表」を用いて計算すると、約309億円になりました。 (3) 過去のパンダの経済効果 筆者がパンダの経済効果を計算したのは、2011年に「リーリー」と「シンシン」が来た時が初めてで、この時の経済効果は公開後1年間で約208億円でした。そして、次に計算したのは2017年に「シャンシャン」が誕生した時で、この時の経済効果は約267億円と予測しました。しかし、結果的には入園者数が予測ほど伸びず、約232億円に留まりました。 そして、今回の双子のパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」の経済効果の予測値は過去最高の約309億円となりました。これは、①上野動物園では初めての双子であり、双子がじゃれあう可愛い姿を初めて目にすることができること、②新型コロナウイルスで巣ごもり生活を長い間強いられて、ストレスがたまった人々が一斉に癒しを求めて外出すると予想されること、③諸物価が上昇したこと、などが理由であると考えられます。   2 「たま駅長」の経済効果 (1) たま駅長の影響 次に、パンダと同じように可愛いということで人気のある猫の経済効果を1つ紹介しましょう。2007年に和歌山電鐵貴志川線の終点の駅「貴志駅」で、売店で飼われていた猫の「たま」が駅長に就任して、マスコミで取り上げられ大フィーバーとなりました。 そこで筆者は2008年に過去1年間の「たま駅長」の地元和歌山における経済効果を推計しました。まず、たま駅長フィーバーにより増加した乗客数と売上金額、売店で販売されているたま駅長グッズの売上高、そしてたま駅長人気により急増した和歌山の観光客の宿泊、飲食、土産物などの売上高を計算しました。 計算の結果、経済効果は猫1匹で約11億円になりました。たま駅長がマスコミで取り上げられると、国内だけでなく海外のマスコミからの取材もありました。 (2) たま駅長の地元経済への貢献 和歌山市内の観光地である新和歌浦のホテルに取材に行った時に、ホテルの社長さんに「たま駅長効果で宿泊客は増えましたか」と聞くと、「増えました。たま駅長さまさまです」と笑顔で答えてくれました。 その時、ホテルの受付の電話が鳴りましたので、そばにいた社長さんが電話をとりました。会話を聞くともなしに聞いていると、電話の相手は東北地域の猫好きの方のようでした。相手の方は「そちらのホテルはたま駅長のいる貴志駅までは近いですか」と聞いているようでした。社長さんは「近いです。すぐそばです」と答えましたので、相手の方は家族での宿泊を予約されたようでした。 社長さんは笑顔で筆者に「こんな調子で次々に予約が入るんです」とおっしゃいました。本当に「たま駅長」は地元和歌山に予想外の経済効果をもたらしたものだと感じました。 その年、国土交通省から大学に「たま駅長の経済効果」のレポートを参考までに送ってほしいとの連絡があり、大学から送りました。その後、国土交通省から「正確に計算されているので国土交通白書に掲載したい」とのお返事があり、その年度の白書に載りました。具体的には、地方の交通機関が人口や観光客の減少などで経営が苦しくなってきているといわれているが、アイディア次第で乗客も観光客も増加する例として掲載するとのことでした。 和歌山電鐵の社長さんとお話しすると、「たま駅長就任には多くのファンの人からサポートしていただいたので、ほとんど費用がかかりませんでした。かかった費用はたま駅長の帽子代だけです」と言われました。これまで計算した経済効果の計算の中では非常に少ない費用で大きな経済効果をもたらした最も効率的なケースになりました。 (了)

#No. 475(掲載号)
#宮本 勝浩
2022/06/23
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