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《顧問先にも教えたくなる!》資産づくりの基礎知識 【第30回】「自らの“生き方”を支えるために必要な“お金の知識”」

《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第30回】 (最終回) 「自らの“生き方”を支えるために必要な“お金の知識”」   株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝   〇NISA等の税制優遇制度の拡充に注目 令和8年度の税制改正大綱に盛り込まれることが予想される、NISA等の税制優遇制度の拡充に注目が集まっています。 本稿執筆時点(2025年12月11日)における新聞報道等によると、NISAは18歳未満に年間積立投資枠60万円、総額600万円の非課税枠を設定し、教育費の運用を可能とするようです。また、早ければ2027年にスタートする見込みです(正確な拡充内容については今後公表が予定されている令和8年度税制改正大綱をご参照ください)。 iDeCoの拡充も予定されています。こちらは2025年の年金制度改正により、掛金上限額の引上げや加入可能年齢の引上げ(70歳まで)が決定し、2027年開始予定と言われています。 掛金上限額の大幅引上げは、若い時からしっかりと老後資金を作りたいという方には朗報です。第1号被保険者は、月68,000円から75,000円に7,000円引き上げ、第2号被保険者で会社に企業年金がない方の場合、月23,000円から62,000円に39,000円の大幅増とされています。企業年金がある方の場合、iDeCo以外の制度の掛金との合計が62,000円になります。 それぞれ掛金が大きく引き上げられることで、将来の老後資産をより大きくする可能性が出てきますし、掛金が増えると確実に所得控除額が増え節税額も増えます。   〇税制優遇制度拡充の「背景」 最近の税制優遇制度拡充の動きを見ていると、「その背景」を知らずして傍観していてはいけないのだということをつくづく感じます。 老後の生活資金として最も重要な公的年金は、購買力を維持するための機能「物価スライド」が、かつてほど有効に働いていない状態です。これは「マクロ経済スライド」という抑制が効いているためで、物価上昇に対して年金額の上昇は抑えられています。 マクロ経済スライドは、年金財政の均整がとれるようになるまで継続させるという方針ですが、最近は「適用拡大」がうまく進み、厚生年金についてはすでに抑制期間が短縮できるほど財源のめどがついています。 実際、適用拡大により低年金が懸念されていた短時間労働者が厚生年金に加入することにより、国民年金に上乗せで厚生年金が受けられるようになる、あるいは会社員の厚生年金に入ることにより、傷病手当金など保障が手厚くなるといった恩恵があります。 また、2025年は「手取りを増やす」意識が非常に高まりました。実際、給与所得控除は65万円が最低保障となり、基礎控除も特に低収入の方の引上げは大きく、手取りが増えたと実感する方は少なからずいらっしゃるでしょう。 そういう時流にうまく乗っている人は、前述した税制優遇制度を最大限活用することができるでしょう。むしろ、共助である公的なシステムが後押しをしているのですから、自助である私的年金制度あるいは私的資産形成制度は活用しなければならないといえます。   〇進まない「国民年金への理解」 一方、置き去りにされた感があるのが、国民年金(基礎年金)のみの加入者です。この方たちは、厚生年金と異なり、所得にかかわらず一定の国民年金保険料を支払うため、収入の少ない方にとって特にその負担感は大きいです。 また「会社員ではない人」が原則的には国民年金に加入するわけですから、適用拡大から漏れてしまうような不定期あるいは短時間で働いている人、病気等で働くことが難しい人、障害を負った人などが、将来的にも国民年金に頼って生きていくことになります。 国民年金に対するマクロ経済スライドの影響は大きく、かつ長引くことが予想されています。本来であれば、60歳までの国民年金加入義務を65歳に引き上げるだけでも一定の改善が期待できるのですが、国民の理解が得られませんでした。 あるいは、厚生年金の財源から若干負担金を増やしてもらうという案も、大反対に遭いました。厚生年金加入者にとっても国民年金は土台ですから、そこが安定するということはメリットと考えられるのですが、なんとなく「他人事」と思ってしまうのかもしれません。 今の国の方針を見ると、会社勤めをしていれば将来的にも豊かな暮らしを手に入れやすい環境にありますが、そうではない人達の環境は依然厳しいままと格差が広がりそうです。 だからこそ、税制優遇制度を活用していただきたいのですが、それでも将来展望を持ち「今、するべきこと」に優先順位を付けられないと、なかなか難しいのかもしれません。   〇ますます必要となる「お金の知識」 税制優遇制度をうまく活用できても、「使い方」を間違うと自身の幸せのために使いきれずに亡くなる方もたくさんいらっしゃいます。筆者は後見人としても活動をしておりますが、お金の使い方を間違えてしまうと暮らし向きが傾いたり、資産はあるのに使い方を知らずに豊かさを実感できないままという方もいらっしゃいます。 税制優遇制度は、受取りの際の仕組みも異なります。これまでのように、銀行に行って必要なお金を都度引き出すというわけにはいきません。 たとえばNISAは投資信託や株式の解約に相当するため、値動きもありますし、現金化するためには少なくとも4営業日程度かかります。 iDeCoにおいてはもっと複雑で、一括・分割・併用かを選んだり、またそれに伴い課税が発生したりと、「知らなかった」では済まされないようなことが発生する可能性があります。 結論として、これからはますます「お金の知識」が必要になってくると考えます。さらに言うと、「何が儲かるのか」という観点での知識ではなく、自らの「生き方」を支えるためのツールとしての「お金」という観点での知識が最も重要になるのではないかと考えます。 しかし、包括的にお金の知識を学び続けることは非常に困難です。だからこそ、日本でもこれからは「お金のアドバイザー」が定着していくでしょう。少なくとも、アドバイザーの存在は必要とされると考えています。 今回が連載の最終回となりますが、これまでの記事が少しでも皆様のお役に立ちましたら幸いです。 (連載了)

#No. 649(掲載号)
#山中 伸枝
2025/12/18

【重要】会員2万人突破記念! 新連載開始キャンペーンのお知らせ

【重要】 会員2万人突破記念! 新連載開始キャンペーンのお知らせ 平素より株式会社プロフェッションネットワークのサービスをご愛用いただき、厚くお礼申し上げます。 既報のとおり、当社が運営しております税務・会計Web情報誌プロフェッションジャーナル(Profession Journal)はおかげさまで会員2万人を突破いたしました。 会員2万人突破に伴い、2025年10月1日(水)より、本誌掲載の連載第1回をすべて無料公開とさせていただいておりますが、今回これに続くキャンペーンの一環として、年明けより複数の新連載を順次開始してまいります。 以下、新連載の概要及び開始時期等をお知らせさせていただきますので、どうぞご期待ください。 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ※下記の新連載のタイトルをクリックすると詳細箇所に遷移します。   ◆   ◇   ◆ ◆   ◇   ◆ ◆   ◇   ◆ ◆   ◇   ◆ ※上記新連載の内容は随時更新し、今後も追加を予定しています。 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ 今後ともプロフェッションジャーナルをご愛読賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

#Profession Journal 編集部
2025/12/18

《速報解説》 JICPAが品質管理基準報告書(「監査事務所における品質管理」及び「監査業務に係る審査」)の改正案を公表~対象範囲にサステナビリティ情報の保証業務を追加~

《速報解説》 JICPAが品質管理基準報告書(「監査事務所における品質管理」及び 「監査業務に係る審査」)の改正案を公表 ~対象範囲にサステナビリティ情報の保証業務を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月16日、日本公認会計士協会は、「品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」及び品質管理基準報告書第2号「監査業務に係る審査」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2025年10月15日に公表した「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」」(公開草案)及び国際監査・保証基準審議会(International Auditing and Assurance Standards Board:IAASB)からの「IESBA倫理規程の改訂に伴うISQM、ISA及びISRE 2400(改訂)の狭い範囲の改訂」に伴うものである。 意見募集期間は2026年1月16日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ サステナビリティ情報の保証業務に範囲を拡大するための改正 対象範囲に、サステナビリティ情報の保証業務を加える。 従来、「監査事務所」としていた記載を「事務所」と記載するなどの改正を行う。   Ⅲ 倫理規程改訂に伴う狭い範囲での改訂を受けた改正 品基報第1号において公に取引されている事業体(Publicly Traded Entity)の定義の追加、品基報の適用指針における上場企業の用語を公に取引されている事業体の用語への改正などを行う。   Ⅳ 適用時期等 2027年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査並びに2027年4月1日以後開始する期間を対象としたサステナビリティ情報に対する保証業務又は2027年4月1日以後の特定の日付時点のサステナビリティ情報に対する保証業務から適用する。 ただし、サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」を早期適用する場合には、併せて本報告書を早期適用する。 (了)

#阿部 光成
2025/12/17

《速報解説》 期中財務諸表に関する会計基準等を受け、「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」等の改正案が会計士協会より公表される

《速報解説》 期中財務諸表に関する会計基準等を受け、 「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」等の 改正案が会計士協会より公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月16日、日本公認会計士協会は、期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」などの改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号)及び「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第34号)等の公表を受けたものである。 意見募集期間は2026年1月16日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 「中間財務諸表に関する会計基準」及び「四半期財務諸表に関する会計基準」を用いていた記載を、「期中財務諸表に関する会計基準」を用いた記載に改正している。 上記のほか、IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」に関連する記載も行われている。   Ⅲ 適用時期等 2026 年4月1日以後開始する中間財務諸表に係る会計期間の中間財務諸表に対する期中レビューから適用する。 2026年4月1日以後開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対する期中レビューから適用する。 (了)

#阿部 光成
2025/12/17

《速報解説》 会計士協会、監査基準報告書等の改正案を公表~「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」の公表に伴う変更~

《速報解説》 会計士協会、監査基準報告書等の改正案を公表 ~「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」の公表に伴う変更~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月16日、日本公認会計士協会は、「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」の公表に伴う監査基準報告書等の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2025年10月15日に公表した「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」」(公開草案)に伴うものである。 意見募集期間は2026年1月16日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査基準報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」の改正 サステナビリティ報告書等が年次報告書の1つに含まれることが想定されるため、監査基準報告書720のA3項及びA5項を改正する。   Ⅲ 監査基準報告書805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」の改正 過去財務情報以外に対して行う合理的保証業務に、該当する場合にサステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」を追加する(A4項)。   Ⅳ 保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」の改正 「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」」(公開草案)により、サステナビリティ情報に対する保証業務は保証業務実務指針3000の適用対象外となるため、同実務指針1項、5項及びA22項について改正する。   Ⅴ 適用時期等 改正後の監査基準報告書720は、2027年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。 ただし、2027年3月31日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から早期適用することを妨げない。 改正後の監査基準報告書805は、2027年4月1日以後開始する事業年度に係る個別の財務表又は財務諸表項目等の監査から適用する。 ただし、2027年3月31日以後終了する事業年度に係る個別の財務表又は財務諸表項目等の監査から早期適用することを妨げない。 改正後の保証業務実務指針3000は、2027年4月1日以後開始する期間を対象とした保証業務又は2027年4月1日以後の特定の日付時点の保証業務から適用する。 (了)

#阿部 光成
2025/12/17

《速報解説》 会計士協会、監基報570「継続企業」の改正に係る公開草案を公表~経営者による継続企業の評価期間の開始日を変更~

《速報解説》 会計士協会、監基報570「継続企業」の改正に係る公開草案を公表 ~経営者による継続企業の評価期間の開始日を変更~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年12月15日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書570「継続企業」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2025年4月9日に国際監査・保証基準審議会(The International Auditing and Assurance Standards Board :IAASB)から公表された、Internal Standard on Auditing(ISA)570 (Revised 2024), Going Concern に対応するものである。 公開草案は、現行のものから大幅な項目の追加・削除等が行われている。 意見募集期間は2026年1月15日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査人の手続の改正 主に次の改正が行われている。   Ⅲ 監査役等とのコミュニケーション 識別した継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況について、監査役等と適時にコミュニケーションを行わなければならず、監査役等とのコミュニケーションの内容が強化されている。   Ⅳ 監査報告書の記載事項など 監査報告書において、継続企業の前提に関する監査人の結論などを新たに記載する。 すべての企業の監査で要求される記載事項に加え、経営者の評価を監査人がどのように評価したかの説明などを新たに記載する。 経営者確認書に記載を求めるべき項目の拡充も行われている。   Ⅴ 適用時期等 2027年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。 (了)

#阿部 光成
2025/12/15

プロフェッションジャーナル No.648が公開されました!~今週のお薦め記事~

2025年12月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.648を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2025/12/11

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第82回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第82回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   オ 暗号資産の分散性 暗号資産について、スーパータックスヘイブンとなる可能性を秘めているという見解を示したMarianは、「仲介役の金融機関の不存在」に着目していた(本連載第78回参照)。 通常の銀行取引では、必ず銀行や決済業者などの仲介者が関与し、その記録は中央のサーバーなどで管理される。しかし、ビットコインなどの暗号資産では、こうした中央の管理者や仲介者が存在しない取引が可能になる。 このような特徴は、「中央集権的に運用されるものではない」という意味における暗号資産の分散性と言い換えることができる。 暗号資産の文脈で「分散性」という語が使われる場合、主に次のような側面が含まれる。 このような分散性の要素は、伝統的な金融機関に依存しないエコシステムを構築する基盤として機能している。 特に、分散化された運営構造は、国家権力や特定企業による恣意的介入を回避しうる制度的枠組みとして理解されており、その意味では「政治的中立性」、「検閲耐性」といった制度的自律性の確保を志向した仕組みとも理解される。 暗号資産の分散性については、ノードの分布、コンセンサスメカニズムによる合意形成のあり方、意思決定権限の所在など種々の考慮要素を検討する必要がある。 参考として、FSB(金融安定理事会)は、金融サービスの分散化とは、伝統的に金融サービスの提供に関与してきた1つ以上の仲介機関や中央集権的なプロセスの排除又は役割縮小を指し、場合によっては伝統的な仲介業者からのリスクテイクの分散化を意味し、一般に、以下の3つの形態をとると説明している(FSB, DECENTRALISED FINANCIAL TECHNOLOGIES: REPORT ON FINANCIAL STABILITY, REGULATORY AND GOVERNANCE IMPLICATIONS 1-4(2019))。 このような分散性は、分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)に支えられている。 ここでいう「台帳」とは取引記録を管理する帳簿のようなもので、銀行では中央サーバーに保管されている。一方、ブロックチェーンなどの分散型台帳では、全ノードが同じ台帳を持ち、互いに検証し合う仕組みとなっている。 分散型台帳技術により、ノードは、信頼できるデータを得るために、中央集権的な機関に依存することなく、ネットワークのノード全体で一貫した状態変更又は更新を提案、検証、記録することが可能となる(FSB, DECENTRALISED FINANCIAL TECHNOLOGIES, at 26)。 このように、分散型台帳とは複数のノードに分散されたデータの集合体であり、その整合性は分散型台帳を通じて情報を記録する分散型台帳技術によって確保される。 より具体的には、次のような仕組み等で成り立っている。 このような構造により、分散型台帳は、単なるデータの分散保存ではなく、制度的権力の分散=ガバナンスの脱中心化を可能にする技術であると位置づけられている。 また、このような分散型台帳は、単一障害点の除去、改ざん耐性のほか、実行されたトランザクションやプログラムが公開されることからくる透明性や事後検証の容易さ(暗号資産の追跡可能性・透明性)という種々の利点を有するといわれる(デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会「中間論点整理」(2021)2-3頁)。 これらの点にこそ、暗号資産が金融インフラとしての信頼を得つつも、国家主導の課税・規制システムと構造的に緊張関係に立つゆえんがあるといえる。 ところで、暗号資産の取引については、次のような異なる潮流が観察されている。 多くの利用者は、本人確認を実施し、法定通貨との交換や使いやすいインターフェースを提供するCEXを利用している。これにより、当初の分散性とは裏腹に、中央集権的な仕組みが中核的な役割を果たすこととなった。 他方、暗号資産の利用者の一部は、手元の暗号資産を運用する際にDeFi(分散型金融)を利用している。 DeFiの台頭により、仲介機関を介さない金融取引の仕組みが現実化している。 DeFiとは、スマートコントラクトなどの技術を活用し、誰でも自由にアクセスできるパーミッションレス型のブロックチェーン上で構築された金融サービスである。 ネットワーク上でデータを記録し、共有する分散型技術の1つであるブロックチェーン技術に基づく分散型金融システムでは、仲介者や中央集権化されたプロセスの必要性を低減又は排除したピアツーピア、つまりコンピュータ同士が直接的につながり、データを送受信するネットワークモデルの金融取引が可能となる。 例えば、暗号資産に関わる貸付・借入・保険・資産運用などの金融取引を、銀行などの仲介なしに自動で実行する仕組みが提供されている(DeFiの意義及びDeFi取引の課税関係については、本連載第65回参照)。 つまり、このようなDeFiの出現は、暗号資産が単なる「価値移転手段」にとどまらず、制度的金融インフラの代替物として機能し得る段階に達しつつあることを意味する。その実現には分散性が不可欠な要素として組み込まれており、分散性は理念ではなく、制度技術の中核となっている。 もっとも、分散性が制度的優位性を意味するとは限らない。DeFiには、スマートコントラクトの脆弱性、プロトコル設計の瑕疵、ハッキングリスクなどの構造的課題が存在し、利用者保護や内部統制の不在といった問題も浮き彫りとなっている。 したがって、分散性=透明・公正・安全とは必ずしも直結しないという視点が必要である。 分散性が高まることによって規制回避が容易になり、同時に情報非対称性が拡大するという逆説も内包している。   (了)

#No. 648(掲載号)
#泉 絢也
2025/12/11

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第15回】「インボイス発行事業者である国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第15回】 「インボイス発行事業者である国外事業者から受けた 事業者向け電気通信利用役務の提供」   税理士 石川 幸恵   【Q】 国外の事業者にインターネットによる広告配信を依頼しました。この国外事業者は日本のインボイス発行事業者として登録を受けているので、日本に消費税の申告・納税を行っていると考えられます。 この場合、広告配信に係る消費税はその国外事業者が納め、当社はリバースチャージの対象とならないという理解でよろしいでしょうか。 なお、当社は当課税期間について簡易課税制度や2割特例の適用はなく、課税売上割合は95%未満です。 【A】 リバースチャージ方式による申告が必要です。 インターネットによる広告配信は、通常「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当し(詳しくは後述の「解説」参照)、リバースチャージ方式の対象となります。リバースチャージでは、サービスの受け手が納税義務者となります。 ここで、上記【Q】のケースのように、サービス提供者が日本に申告・納税している場合、「サービス提供者である国外事業者が、この広告配信についても課税売上げとして納税するのでは?」と感じられるかもしれません。 消費税法においては、課税資産の譲渡等を行った事業者が、その課税資産の譲渡等に係る申告・納税を行いますが、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、リバースチャージ方式によって国外事業者からその役務の提供を受けた事業者が「特定課税仕入れ」として、申告・納税を行います(リバースチャージQ&A問1)。 さらに、「事業者向け電気通信利用役務の提供」について、消費税法第2条第8の4項は次のように定義しています。 (※) 下線は筆者追記 ここでポイントとなるのは、「国外事業者が行う」ことのみが規定されており、「国外の免税事業者が行う」とは書かれていない点です。 そのため、サービス提供者が申告・納税を行う事業者であっても、リバースチャージ方式の対象となります。同時に、サービス提供者である国外事業者が消費税申告する場合も「事業者向け電気通信利用役務の提供」について、課税売上げに含める必要はありません。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 以下では、平成27年度に導入されたリバースチャージ方式の整理と、インボイス制度との関係について主なポイントを改めて確認する。   1 リバースチャージ方式による納税が必要かどうかの確認ポイント (1) 役務の性質又は取引条件等により、事業者向けか消費者向けかを判断 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等からその役務の提供が通常事業者に限られるものが「事業者向け」に該当する。 なお、EU諸国においてはサービスの受け手が課税事業者番号(VAT-ID)を有している場合、その取引はリバースチャージ方式の対象とされている。 一方、日本でリバースチャージ方式が導入された平成27年10月時点ではインボイス制度が存在しなかったこともあり、役務の性質又は取引条件等から「事業者向け」を定義して、リバースチャージ方式の対象とした。現在、日本にも登録番号制度が整備されたため、将来的に見直しが議論される可能性に留意されたい。 (2) 事業者向け電気通信利用役務の提供である旨の表示 国内において「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、当該役務の提供に際し、カタログ等の取引相手が容易に認識できる場所に、あらかじめ「当該役務の提供に係る特定課税仕入れを行う事業者が消費税を納める義務がある旨」を表示する必要がある(消法62)。 ただし、表示がなかったとしても当該役務の提供が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものであれば、仕入れた事業者において消費税を納める義務が生じる(リバースチャージQ&A問20、21)。 (3) サービスの受け手がリバースチャージ方式による納税が必要となる事業者であるか 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合であっても、次の①又は②に該当する課税期間については、当分の間、リバースチャージ方式による申告は不要となる。同時に仕入税額控除も適用されない(リバースチャージQ&A問16)ので、会計処理上は不課税仕入れとして取り扱われる。   2 国外事業者によるインボイス発行事業者の登録申請 (1) インボイス発行事業者の登録申請 国外事業者もインボイス発行事業者の登録を受けることが可能である。ただし、消費税に関する税務代理の権限を有する税務代理人や納税管理人の届出等、国内事業者と異なる登録の要件があるので、注意が必要である。 なお、登録国外事業者制度はインボイス制度に移行したので、下記拙稿も参照されたい。 (2) 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた事業者における仕入税額控除の要件 「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受け、リバースチャージ方式による納税が必要となる事業者は、その取引について仕入税額控除を受けることができる。 この場合、インボイスの保存は不要で、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで、仕入税額控除が可能である(インボイスQ&A問103-3)。   (了)

#No. 648(掲載号)
#石川 幸恵
2025/12/11

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第72回】「複数の価格で行う外部株主からの株式集約」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第72回】 「複数の価格で行う外部株主からの株式集約」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳   相談内容 私は、Y社の代表取締役を務めるCです。当社は、私を含む取締役4名と古参の従業員3名が、創業者(A氏の父)からY社株式を低廉な価格で譲り受ける形で非同族承継を行っており、7名で総株主の議決権の55%を保有しています。 先日の定時株主総会終了後、創業家株主のA氏から株式の買い取り要請を受けました。A氏は当社の筆頭株主ですが、会社経営には関与しておらず、総株主の議決権の25%しか株式を保有していません。役員・従業員が協力して55%の議決権を保有している私たち経営陣から見ると、A氏は少数株主であり、株式を買い取るとしても少数株主に見合った比較的低廉な対価しか支払いたくないと考えています。 当社は純資産が10億円、発行済株式総数10,000株(一株当たり純資産価額100,000円、配当還元価額1,000円)の会社ですので、A氏の純資産価額による持分は2億5,000万円になります。自己株式として取得することを想定しているため、A氏から「税引後の手残りを1億円にするために、2億円程度で買い取ってほしい」との要望を受けています。 顧問税理士に確認したところ、当社には議決権の30%以上を保有する「同族株主」がいないため、15%以上の議決権を有するA氏から自己株式を取得する場合は、純資産価額や類似業種比準価額を用いた原則的な評価方法により算定した価格で取引しないと、想定外の課税がなされてしまう可能性があるそうです。 また、個人間売買であれば税務上の評価額と売買金額の差額が贈与となるため、低廉な価格で取得してもA氏に課税関係が生じることはないようですが、各取締役の議決権割合が15%以上になると買主側に課税関係が生じてしまうため、取締役が株式を取得することは避けてほしい、とのアドバイスでした。 当社としては、最大限譲歩した場合でも1億5,000万円までしかお支払いできないと考えていますが、A氏からの要請に応じて2億5,000万円で自己株式を取得するしか方法がないのでしょうか。 〈図1〉Y社の株主構成 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ 1 「同族株主のいない会社」における株式集約 Y社は、総株主の議決権の30%以上を有する「同族株主のいない会社」に該当するため、15%以上の議決権を有するA氏は、純資産価額や類似業種比準価額により算定する「原則的な評価方法」により算出された価格が税務上の評価額となります(財産評価基本通達188ならびに〈図2〉参照)。 したがって、経営権を有していない株主であることや、高値で買い取りたくないことを理由に低廉な価格で自己株式取得を行ってしまうと、みなし譲渡課税(所法59①)など、A氏に想定外の課税関係が生じてしまう可能性があることに注意が必要です。 比較的低廉な価格で株式を取得することを望む場合には、税務上の評価額と取引価格との差額が買主に対する「みなし贈与」(相法7)となり、売主に想定外の課税関係が生じない個人間の取引とし、買主に「特例的な評価方法」である配当還元価額によることが可能な少数株主を用意することになります。従業員持株会などの少数・個人株主で株式を取得することができれば、発行会社の金銭的な負担を抑えることが可能です。 C氏を含む取締役がA氏から株式を取得し、株式取得後の議決権割合が15%以上になると、買主である取締役が原則的評価の対象となります。原則的評価による評価額と売買金額との差額が買主に対する「みなし贈与」(相法7)となるため、各取締役の議決権割合は15%未満に留めるべく自己株式として取得するのが現実的でしょう。ただし、Y社が自己株式を取得して総株主の議決権数が減少する場合など、株式取得後における各取締役の議決権割合には注意を要します。 〈図2〉株主の態様による評価方法の概要 (出所)「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)令和2年9月30日 国税庁資産課税課   2 複数の価格で行う株式集約スキーム A氏が保有する株式の全てを純資産価額、あるいは、小会社方式(純資産価額と類似業種比準価額の折衷法)による価額で取得することが難しい場合は、一部の株式は高めの価格で自己株式として取得し、残りの株式は比較的低廉な価格で株式を取得することが可能な相手を斡旋して株式を譲渡してもらうような、複数価格での株式買い取りスキームを受け入れてもらえないかを提案してみることをお勧めします。 株主への提案にあたっては、会社法上の買取義務が生じていない現時点においては、買主不在では株式を売却することができないこと。非上場株式の取引価格は一物一価ではなく、売主・買主の立場によりその価値が異なること。この2点を丁寧に説明したうえで、Y社が現実的に支出可能な範囲で自己株式を取得する意思があり、残りの株式については従業員持株会など比較的低廉な価格で株式を取得することが可能な安定株主に譲渡していただきたい旨を一つのパッケージとして提案すると、売主の理解が得られやすくなるでしょう。 低廉な価格で譲渡することに抵抗を感じにくい相手、具体的には、従業員持株会や公的機関である中小企業投資育成などを組み合わせることが売主の理解を得るためのポイントになります。 〈図3〉複数価格による買取提案の一例   3 結論 株式の売却を希望する株主が、「原則的な評価方法」により評価しなければならない株主であったとしても、必ずしも原則的な評価方法により算定した価格で売買しなければならない訳ではありません。 会社として支出できる金額の限度が1億5,000万円だと仮定した場合、一株当たり100,000円で取得することが可能な1,500株だけを自己株式として取得したのでは、ほぼ確実に、将来、残りの1,000株についても買い取りを求められることになります。したがって、高値での取得が難しい部分については、継続保有を求めるのではなく、配当還元価額など低廉な価格で取得することが可能な相手に譲渡してもらえるように、複数価格での取引を組み合わせてパッケージ化した株式買い取りスキームを提案することが必要でしょう。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 648(掲載号)
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2025/12/11
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