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日本の企業税制 【第151回】「カリフォルニア州の税制改正に対する懸念」

日本の企業税制 【第151回】 「カリフォルニア州の税制改正に対する懸念」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博   国際課税を巡って昨年、アメリカで報復措置としての899条が議論になったことはまだ記憶に新しい。2025年6月28日にG7がグローバル・ミニマム課税に関する共同声明を公表したことで、米国連邦議会に提出された税制改正法案であるOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA)に当初盛り込まれた報復措置が撤回された。 最終的には、147ヶ国・地域で構成されるOECD/G20のBEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework)が、今年1月5日、「共存システム(side-by-side system)」を含むデジタル化・グローバル化した経済環境におけるグローバル・ミニマム課税制度の協調的運用に向けた道筋を示すパッケージに包括的に合意したことを公表した。これにより、報復措置の再燃懸念は払拭され、日本や欧州をはじめとするアメリカでビジネスを展開する多国籍企業にとっての予見可能性が確保されたと考えられる。 ところが、最近、カリフォルニア州における税制改正を巡る新たな問題の発生が懸念されている。すでに現地においては、同州の経済界や各国政府を巻き込んだ対応が展開されているほか、ワシントンDCに拠点を置く経済団体も動き出す事態へと発展している。   〇税制改正法案「AB-1790」 具体的には、カリフォルニア州議会に提出された税制改正法案「AB-1790 Corporations Tax Law: water's-edge election: global intangible low-taxed income」が、4月27日の州議会下院歳入税制委員会で可決されたことから、法案の成立可能性が高まっていることが背景にある。 当該法案は、今年2月10日に民主党のDamon Connolly州下院議員らの連名で州議会に提出され、「water's-edge election(水際選択方式)」を段階的に廃止し、2028年以降、カリフォルニア州で事業を行う多国籍企業に対し、全世界の連結報告(合算申告方式)の採用を義務付けるものである。 現行制度においては、企業の選択により、カリフォルニア州の州境(water's-edge)の外側にあると指定した収益に対する課税を回避することで抜け穴が生じており、その額は毎年約30億ドルに及ぶとの指摘が出ていた。州財政における財源確保策としての見方もあることから、上記歳入税制委員会の採決では、民主党議員4名の賛成、共和党議員2名の反対、民主党議員1名の棄権という結果となっている。 賛成派からは、州財政の逼迫状況や抜け穴をふさぐ目的などから税法改正を支持する意見が強い。一方、反対派は、既に多国籍企業は高額の税金を支払っていること、本法案が成立すれば企業は二重課税が生じるなど増税に加えて新たな仕組みに適合するためのコストも生じること、他国政府からの報復措置の導入も考えられること、州の歳入不足は企業だけでなく広く負担すべきであることなどを指摘している。   〇幅広い懸念の声 欧州においても問題の発生を懸念する声が出ている。報道によると、4月下旬開催の欧州理事会税務問題ハイレベル作業部会の会合において本件が議論されており、欧州委員会は、同法案が一方的な第1の柱のアプローチと同様に機能し、二重課税のリスクを生じさせる可能性があるほか、第1の柱に関連する税収がシリコンバレーに流れ込む可能性もあると述べたとされている。 また、アメリカで事業展開する多国籍企業の声を代表する経済団体であるGlobal Business Allianceは、カリフォルニア州下院歳入税制委員会のMike Gipson委員長宛に、同法案の成立によって生じる問題を伝える書簡を送付している。 当該法案の目的は国外への所得流出に対処することにあるものの、実際には、世界中に拠点を置き、カリフォルニア州に投資している多国籍企業に対して、不当な二重課税を課すような域外課税制度を導入してしまうことを問題視している。また、過去に、真の水際選択方式制度を導入せずに全世界合算報告の義務化を図ろうとした州に対し、外国政府が報復措置を講じてきたとも警告している。加えて、カナダ、ドイツ、アイスランド、アイルランド、日本、韓国、ウクライナ、イギリスの各国政府も連名で懸念を伝える書簡を送付している。 カリフォルニア州の地元では、California Chamber of Commerceをはじめ同州で活動する28の商工会議所が、当該法案に対して明確に反対の意思を表明している。歳入の変動可能性や経済的損害、貿易相手国との関係悪化、報復リスクや合憲性に関する訴訟リスク、国際的に異質な事業環境による競争上の不利益、生活費の高騰、現行制度の適切性といった課題を指摘して州議員の理解を求めている。 ここでは日系企業を代表する北加日本商工会議所(JCCNC:Japanese Chamber of Commerce of Northern California)と南カリフォルニア日系企業協会(JBA:Japan Business Association of Southern California)も同調して対応を進めている。 JCCNCは、日米のビジネス促進と友好関係の発展、アメリカにおける日本企業とその関係者が円滑に機能できるよう支援し、会員間の親睦を深める目的で1950年に結成され、翌1951年にカリフォルニア州法に基づく非営利団体として正式に認可された団体である。日系アメリカ人と日系企業によって設立され、日系人・日本人だけでなく、北カリフォルニアで日本と関係のあるビジネスを行っている企業や団体も会員として参加しており、共同で活動を続けている全米でもユニークな団体である。 JBAは、南カリフォルニアと日本との相互理解を深め、ビジネスと人の交流を促進するために、1960年に設立された非営利の経済団体で、現在、南カリフォルニアで事業を営む日系企業を中心とする会員企業約430社で構成され、事業環境の整備及び改善を図ることを目的としている。   〇今後の展開 今後、5月下旬に開催される下院本会議で審議されるほか、8月頃の会期末までに上院の関係委員会や本会議での審議も想定されることから、これからの展開には注視が必要である。 加えて、最終的に成立しなかったものの、東部のメイン州でも今年1月に同趣旨の税制改正法案が提出されており、今後、他の州でも追随する動きが出てくることも考えられるため、各州の動向も無視できないと考えられる。   (了)

#No. 669(掲載号)
#魚住 康博
2026/05/21

税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 【第2回】「従業員用の借上げ社宅②」~社会保険料・更新料・基本的注意点~

税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 第2回 従業員用の借上げ社宅② ~社会保険料・更新料・基本的注意点~ 公認会計士・税理士 桝井康弘   〇社会保険料の負担について (※) 1畳=1.65㎡ 【表1:現物給与価額(1畳当たり・月額)(一部抜粋)】 都道府県名 1人1月当たりの住宅の利益の額 (畳一畳につき)(単位円) 1 北海道 1,110 ... 13 東 京 2,830 ... 27 大 阪 1,780 28 兵 庫 1,580 29 奈 良 1,310 ... (出典) 日本年金機構「令和7年4月から現物給与の価額が改正されます」より一部抜粋 【図:間取り図例】 (出典) 日本年金機構「令和7年4月から現物給与の価額が改正されます」より一部抜粋 (※) 社会保険の現物給与は、給与の締日にかかわらず、その月の末日までの現物給与額を、その月に金銭で支払う給与と合算した額が標準報酬となります。 【表2:厚生年金保険料額表(抜粋)】 (※) 固定的賃金の変動により、変動月から3か月の報酬月額の平均額に基づく標準報酬月額が2等級以上の変動 【随時改定】 〇更新料の会計処理と損金算入時期   〇注意すべきポイント 【その他の注意点】   (次回に続く)  

#No. 669(掲載号)
#桝井 康弘
2026/05/21

相続税の実務問答 【第119回】「教育資金贈与の特例に係る贈与者が令和8年4月1日以降に亡くなった場合」

相続税の実務問答 【第119回】 「教育資金贈与の特例に係る贈与者が令和8年4月1日以降に亡くなった場合」   税理士 梶野 研二   [答] 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例は、令和8年3月31日の適用期限をもって終了しましたが、同日以前に贈与を受けた者については、引き続き同特例が適用されます。 あなたが祖父から贈与を受けた教育資金1,000万円のうち、祖父の相続開始時における残額400万円は、あなたが祖父から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例 教育資金管理契約(注)を締結する日において30歳未満の者が、平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、①その直系尊属(父母、祖父母などが該当します)と受託者との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、②その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき国内にある銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合又は③教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託の受益権、金銭又は金銭等(以下「信託受益権等」といいます)の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされていました。この特例が「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」(以下本稿において「教育資金の非課税特例」といいます)です。ただし、その個人の信託受益権等を取得した日の属する年の前年分の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、この非課税の特例は適用できません(措法70の2の2①)。 (注) 教育資金管理契約とは、受贈者の教育に必要な教育資金を管理することを目的とする契約であって次に掲げるものをいいます。   2 教育資金の非課税特例制度と令和8年度税制改正 教育資金の非課税特例制度は、租税特別措置法第70条の2の2に定められていますが、同条は信託受益権等の取得時における贈与税を非課税とすることのみを定めたものではなく、その後の管理の方法、教育資金管理契約に係る贈与者に相続が開始した場合の課税関係、同契約の終了事由や同契約が終了した場合の課税関係など同制度に係る一連の課税関係等について定めています。 教育資金の非課税特例は、令和8年3月31日までに行われた信託受益権等の取得に対する贈与税に適用されることとなっており、令和8年度税制改正において、この期限は延長されませんでしたので、この特例を同日後の贈与に適用することはできませんが、この特例について定めた租税特別措置法第70条の2の2の規定自体が廃止されたわけではありません。 すなわち、令和8年3月31日までに教育資金の非課税特例に係る贈与者に相続が開始したときの課税関係、教育資金管理契約の終了事由やその場合の課税関係などについては、これまでと同様に扱われることとなります。   3 教育資金の非課税特例に係る贈与者に相続が開始した場合の課税 信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、その贈与者に係る受贈者については、管理残額(原則として、贈与者が死亡した日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額)がその贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされて(2名以上の者から贈与により取得した教育資金がある場合には、当該死亡した贈与者の信託受益権等に対応する金額に限られます)、その管理残額は、相続税の課税対象になります(注)(措法70の2の2⑫⑬、措令40の4の3㉑)。〔詳細は、措通70の2の2-9参照〕 (注) 次のいずれかに該当し、かつ、死亡した贈与者から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者の相続税の課税価格の合計額が5億円以下の場合には、管理残高は相続税の課税対象とはなりません(令和5年3月31日以前に信託受益権等を取得した場合には、相続税の課税価格の合計額が5億円を超えていても①、②又は③のいずれかに該当すれば、管理残高は相続税の課税対象とはなりません(令和5年改正法附則51②))。 ① 受贈者が23歳未満である場合 ② 受贈者が学校等に在学している場合 ③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合 なお、令和3年3月31日以前に信託受益権等を取得した場合には、原則として管理残高は相続税の課税対象とはなりません(令和3年改正法附則75③)。   4 教育資金管理契約の終了と終了時の課税 教育資金管理契約は次の場合に、次に掲げる日に終了しますが、同契約が終了した場合(受贈者が死亡したことにより終了した場合(④の場合)を除きます)において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額(上記3により相続又は遺贈により取得したものとみなされた管理残額を含みます)を控除した残額があるときは、その残額をその終了の日において贈与により取得したものとみなして、相続税法その他贈与税に関する法令の規定が適用され、その残額が贈与税の課税対象となります(措法70の2の2⑯⑰、措令40の4の3㉖)。〔詳細は、措通70の2の2-13参照〕   5 ご質問の場合 教育資金の非課税特例を適用することのできる贈与は、令和8年3月31日までの贈与ですが、同特例を定めた租税特別措置法第70条の2の2が廃止されたわけではありませんので、同日以前に贈与を受け、同特例の適用により贈与税が非課税とされた者については、引き続き同特例を定めた同条が適用されることとなります。 一定の要件を満たす場合には、贈与者の相続開始時に相続税の課税はされません(上記3の(注)参照)。しかしながら、あなたは祖父の相続開始時に24歳であり、学校等に在学しておらず、かつ教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講してはいないと思われますので、あなたが祖父から教育資金として贈与を受けた1,000万円のうち祖父の相続開始時における管理残額である400万円は、あなたが祖父から遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。   (了)

#No. 669(掲載号)
#梶野 研二
2026/05/21

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第96回】「国際興業事件(混合配当に関する事案)-プロラタ計算違法判決-(地判平29.12.6、高判令元.5.29、最判令3.3.11)(その1)」~法人税法23条1項1号・23条の2第1項・24条1項3号・61条の2第1項・61条の2第17項、法人税法施行令23条1項3号・119条の9第1項~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第96回】 「国際興業事件(混合配当に関する事案)-プロラタ計算違法判決-(地判平29.12.6、高判令元.5.29、最判令3.3.11)(その1)」 ~法人税法23条1項1号・23条の2第1項・24条1項3号・61条の2第1項・61条の2第17項、法人税法施行令23条1項3号・119条の9第1項~   公認会計士・税理士 西川 浩史     1 はじめに 本件は、外国子会社から資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当(以下「混合配当」ともいう。)を受けた納税者が、資本剰余金を原資とする部分は資本の払戻し(法人税法24条1項3号[現4号:以下省略])とし、利益剰余金を原資とする部分は剰余金の配当(法人税法23条1項1号)として申告したところ、課税庁から、配当の全額が資本の払戻しに該当するとして更正処分を受けた事案である。 本件の納税者は、当時、経営再建中のため海外資産を売却して早期に資金を回収する必要があったものと思われる。そこで、平成21年度税制改正で企業の海外利益還流を促進する目的で導入された外国子会社受取配当益金不算入制度(外国子会社からの受取配当の95%を益金不算入とする制度)を利用するだけでなく、さらに資本の払戻しを組み込むことにより多額の株式譲渡損失計上による節税策を行った。 地裁、高裁、最高裁ともに納税者勝訴となったが、混合配当に関する規定適用の考えが各判決において異なっている。高裁は、納税者同様、資本剰余金を原資とする配当は資本の払戻しとし、利益剰余金を原資とする配当は剰余金の配当に該当するとした。一方、地裁及び最高裁では、課税庁同様、配当の全額が資本の払戻しに該当するとした。 また、最高裁は、法人税法施行令23条1項3号[現4号:以下省略](株式対応部分金額のプロラタ計算を定めた規定)について、本件のような場合に限れば、法人税法の趣旨に適合するものではなく、同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきであると判示した。   2 事案の概要 (1) 納税者(A社、原告、被控訴人、被上告人)の処理 内国法人A社は、平成24年11月14日に、100%子会社B社(米国デラウェア州LLC法に基づき組成された法人)から資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当512億444万円(6億4,400万ドル、以下「本件配当」という。)を受けた。このうち、資本剰余金を原資とする部分79億5,100万円(1億ドル、以下「本件資本配当」という。)を資本の払戻し(法人税法24条1項3号)として、また、利益剰余金を原資とする部分432億5,344万円(5億4,400万ドル、以下「本件利益配当」という。)を剰余金の配当(法人税法23条1項1号)として平成25年3月期の連結事業年度の申告を行った。 なお、A社は、事前にB社に対し、B社及びその子会社から資金をA社に還流させることを企図して、税務上の取扱いも踏まえた上で、総額6億4,400万ドルを「資本の払戻し」としての1億ドルと「利益の分配」としての5億4,400万ドルとに切り分けて分配を行うべき旨等を連絡していた。B社は、自社では配当の財源が乏しいため、その子会社であるC社から、利益の配当として6億4,400万ドルの送金を受け、更にこれをA社に還流するため、平成24年11月12日付けで、LLC法に基づき、A社との間で同意書及び各決議書を取り交わした。 上記同意書は、その効力発生日を同日として採択することに同意することを内容とするものであり、各決議書は、B社に対し、資本金の額を減少させ、その減少額を追加払込資本に振り替えた上で、追加払込資本の払戻しとしてA社に対して1億ドルの分配を行うこと、留保利益からA社に対して5億4,400万ドルの分配を行うこと等の権限を付与することをその内容とするものであった。なお、追加払込資本は我が国の会社法上の資本剰余金に、留保利益は同じく利益剰余金にそれぞれ該当する。 (2) 課税庁(被告、控訴人、上告人)の処分 課税庁は、A社に対し、本件資本配当及び本件利益配当のそれぞれの効力発生日が同一であること等から、本件配当の全額6億4,400万ドルが法人税法24条1項3号の資本の払戻しにより交付を受けた金銭に該当するとして本件更正処分をした。 (図表1)本件配当の流れ (図表2)B社の税務上の簿価純資産の推移 (3) 納税者の処理と課税庁の処分の比較(※1) (※1) 地裁判決文の別紙(別表2-1~別表4-2)等を参考に作成した。円金額は億円単位としているが、仕訳の貸借金額が一致するよう調整を行っている(以下同様)。 ① 受取金額の内容 (注1) 減少資本剰余金金額:1億ドル > 簿価純資産価額:9,768万ドル(*1) (*1) 前期末簿価純資産価額から資本の払戻し直前までの資本金等の額の増減及び利益積立金額の増減(組織再編等による増減で当期所得分は除く)を調整した金額で、今回の場合は 図表2の③利益積立金減少後の金額 施行令規定割合=減少資本剰余金金額/簿価純資産価額は1を超える⇒∴1 株式対応部分金額=直前資本金等の額×1=2億1,106万ドル×為替レート@79.51(*2)=168億円 (*2) 平成24年11月12日のTTM 資本の払戻しは79億円のため、株式対応部分金額は79億円まで引き戻される。 みなし配当:資本の払戻し79億円-株式対応部分金額79億円=0億円 (注2) 株式対応部分金額168億円までの計算は上記(注1)と同じ。 資本の払戻しは512億円のため、株式対応部分金額は168億円となる。 みなし配当:資本の払戻し512億円-株式対応部分金額168億円=344億円 ② 株式譲渡損益 (注3) 株式譲渡原価:株式帳簿価額209億円×施行令規定割合1=209億円 ③ 税務仕訳 ④ 課税所得への影響額   3 裁判所の判断 (1) 本件の争点及び高裁と最高裁の判断 (注) 判決文では、「法人税法23条1項1号及び法人税法24条1項3号の『資本剰余金の額の減少に伴うもの』の意義等はどのようなものか。」と記載されている。 (2) 最高裁の判決に基づく処理 最高裁の判決に基づく税務仕訳は以下のようになり、納税者のもの(2(3)③参照)と下記2点の違いはあるが、課税所得に与える影響額は同額になった。 ((その2)へ続く)

#No. 669(掲載号)
#西川 浩史
2026/05/21

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第20回】「会計の領域はどこまで広がるのか ~サステナビリティ開示の時代へ」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第20回】 (最終回) 「会計の領域はどこまで広がるのか ~サステナビリティ開示の時代へ」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔ジャーナル食品社の登場人物〕 *  *  * 我が国のSSBJ基準は、有価証券報告書において段階的に適用していく形で導入される予定です。 この点、2025年7月に金融庁から「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」が公表されていましたが(【第12回】参照)、2026年1月には、その後の検討結果を取りまとめた確定版として「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 報告」が公表されています。 同報告によれば、プライム市場上場企業を株式時価総額に基づき次のようにグループ分けし、段階的にSSBJ基準の適用を開始する方針が示されています。 上記に含まれない株式時価総額5,000億円未満のプライム市場上場企業への適用については、企業の開示状況や投資家のニーズ等を踏まえて引き続き検討していくものとされています。 *  *  * *  *  * 二段階開示では、有価証券報告書の提出時点で未確定であったサステナビリティ情報について、後日、訂正報告書によって追補開示する形が想定されています。 また、SSBJ基準の適用開始年度は、サステナビリティ関連財務情報に対する保証は義務とせず、その翌年度から保証を義務付けることが想定されています。 保証の範囲については、第三者保証制度の適用開始から2年間は、有価証券報告書におけるサステナビリティ関連財務情報のうち、Scope1・Scope2排出量、ガバナンス及びリスク管理に関する開示に絞る方針が示されています。 *  *  * *  *  * 有価証券報告書に含まれる財務諸表は、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人による「監査」を受けることが求められます。この「監査」によって付される保証は、財務諸表には全体として重要な虚偽の表示がないということについての「合理的保証」です。 これに対し、重要な虚偽の表示があるときに不適切な結論を表明する可能性を適度な水準に抑える保証形態として、「限定的保証」があります。上場企業の半期報告書に含まれる中間財務諸表に対して行われる期中レビューは、この限定的保証業務に該当します。 限定的保証業務により付される保証水準は、合理的保証業務により付される保証水準よりも低いのが特徴です。 *  *  * *  *  * サステナビリティ関連財務情報に対する保証については、その担い手の在り方についても財務諸表監査とは異なる制度設計が示されています。 金融審議会の整理では、サステナビリティ保証の担い手は監査法人に限定せず、一定の登録制度の下で専門性を有する第三者が保証業務を担う枠組みとする方向が示されています。これは、サステナビリティ情報が環境・社会・ガバナンスなど多様な分野にわたることから、必ずしも会計監査の専門性のみによらず、幅広い専門性を活用する必要があると考えられているためです。その一方で、保証業務の品質確保の観点から、登録制度や行為規制、監督の仕組みなどを設けることも想定されています。 *  *  * *  *  * 企業が社会に説明すべき内容は、時代とともに広がってきました。 もともと英語のaccountという言葉には、「勘定」という意味のほかに、「説明する」「報告する」といった意味があります。accountingは、単に数値を記録・計算する行為にとどまらず、企業活動の結果や影響を社会に説明する仕組みと捉えることもできます。 このように、企業が社会に説明すべき情報の範囲が広がっていく流れの延長線上には、環境や社会への影響そのものを貨幣的に評価しようとする考え方も現れています。 その代表例の一つが、インパクト加重会計(Impact-Weighted Accounting)です。 インパクト加重会計は、企業活動が環境や社会、雇用などに及ぼす正負の影響を貨幣価値に換算し、損益情報に接続して示そうとする試みです。従来の会計が主として企業内部の経済取引を対象としてきたのに対し、企業が外部に与える影響まで含めて企業のパフォーマンスを捉えようとする点に特徴があります。具体的には、温室効果ガス排出や資源消費といった環境負荷、雇用創出や労働条件といった雇用への影響、製品やサービスが社会にもたらす影響などを評価対象とし、それらを貨幣換算したうえで企業の損益情報と併せて表示することが構想されています。 *  *  * *  *  * インパクト加重会計は、現時点では評価手法や制度的位置付けは確立しておらず、研究・実務の両面で試行が続いている段階にありますが、企業価値をより広い視点で理解しようとする動きとして注目されています。 サステナビリティ開示や炭素会計の広がりは、企業が社会に対して説明すべき対象が拡張していることを示していますが、インパクト加重会計は、その流れをさらに一歩進め、企業の影響そのものを財務的に表現しようとする試みと言えます。 *  *  * *  *  * Q サステナビリティ開示・保証制度はどのように導入され、これからの企業には何が求められるの? A 我が国では、SSBJ基準に基づくサステナビリティ開示がプライム市場上場企業の有価証券報告書に段階的に導入され、適用開始の翌年度からは限定的保証が義務付けられる予定です。開示対象や保証範囲は当初限定的に開始されますが、制度の進展に伴い企業が社会に説明すべき情報は広がっていくと考えられます。 (連載了)

#No. 669(掲載号)
#石王丸 香菜子
2026/05/21

連結会計を学ぶ(改) 【第21回】「子会社の欠損及び優先株式に関する非支配株主持分の特殊な処理」

連結会計を学ぶ(改) 【第21回】 「子会社の欠損及び優先株式に関する非支配株主持分の特殊な処理」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、子会社の欠損及び優先株式に関する非支配株主持分の特殊な処理について、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)及び「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(移管指針第4号。以下「資本連結実務指針」という)にしたがって解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社の欠損 子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は、非支配株主持分として処理される(連結会計基準26項)。 1 基本的な会計処理 子会社の欠損のうち、当該子会社に係る非支配株主持分に割り当てられる額が当該非支配株主の負担すべき額を超える場合には、当該超過額は、親会社の持分に負担させる(連結会計基準27項、資本連結実務指針50項)。 この場合において、その後当該子会社に利益が計上されたときは、親会社が負担した欠損が回収されるまで、その利益の金額を親会社の持分に加算する。 特定の非支配株主と親会社又は他の株主や債権者との間で子会社の債務の引受けなど、出資を超えた非支配株主による負担が合意されている場合には、当該負担額まで非支配株主持分に欠損の負担を行わせ、それを超える欠損額はその後子会社に利益が計上され、超過欠損額が相殺されるまで親会社が負担する(資本連結実務指針69項)。 2 考え方 上記の会計処理となる理由は次のものであり、通常、非支配株主の負担すべき額は非支配株主の出資額に限定される(資本連結実務指針69項)。   Ⅲ 子会社が発行し外部株主が保有する優先株式の処理 子会社が発行し外部株主が保有する優先株式については、次のように会計処理する(資本連結実務指針51項、70項)。 また、優先株式の株主が議決権を有するかどうかにより、次のように会計処理する(資本連結実務指針51項、70項)。   (了)

#No. 669(掲載号)
#阿部 光成
2026/05/21

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第77回】「用途地域がまたがる敷地に適用される建築物の高さ制限」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第77回】 「用途地域がまたがる敷地に適用される建築物の高さ制限」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回は、「複数の敷地が異なる用途地域にまたがる場合の建築制限」について取り上げ、そのなかで、同じ用途地域内にのみ存する敷地と比べて、 について述べました。 また、用途地域が防火地域(または準防火地域)とその指定を受けていない地域にまたがる(あるいは防火地域と準防火地域にまたがる)場合、敷地全体にはどのような防火規制が適用されるのかについても言及しました。 今回は、前回の続編となりますが、用途地域がまたがる敷地に適用される建築物の高さ制限について取り上げます。   2 用途地域がまたがる敷地に適用される建築物の高さ制限 これには、絶対高さ制限と高度地区による制限、斜線制限および日影規制があります。 以下、それぞれの概要を述べておきます。 (1) 絶対高さ制限と高度地区による制限 建築物の高さが制限されるケースとしては、まず、 があり、それぞれ制限の内容は異なってきます。 ここで、絶対高さ制限が適用される用途地域は、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域および田園住居地域とされ、高さの上限は10mまたは12mとなります(いずれにするかは各自治体が都市計画に基づいて定めます)。 次に、高度地区の規制内容ですが、これは行政(自治体)により異なっています。 参考までに、(資料1)は神戸市の例です。 (資料1) (出所) 神戸市役所ホームページ さらに、用途地域がまたがる場合の高さ制限ですが、建築物の高さ(上記「高度地区」による制限を含みます)は、それぞれの用途地域ごとの制限を受けることとなります(同法第55条~56条の2)。 例えば、(資料2)の図で、用途地域(A)が第1種中高層住居専用地域の場合はある程度の高さまで建築が可能ですが(先程は20mの制限の例をあげましたが、高さの程度については都市計画で指定された高度地区の種類によって異なります)、用途地域(B)が第1種低層住居専用地域の場合は、絶対高さは10mまたは12mに制限されます。 (資料2) (2) 斜線制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線)と高さ制限 一概に斜線制限といっても、これには道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の3つがあります。文章で表わすと煩雑になりますので、図を中心にポイントのみ掲げておきます。 ① 道路斜線制限とは 道路斜線制限とは、道路に面した建築物の高さを制限し、道路や周辺の建築物の日照・採光・通風が妨げられないようにするための建築基準法上の規制を指します。 道路斜線のイメージは(資料3)の図のとおりですが、用途地域ごとに道路幅等に応じて斜線が引かれ、建築物の高さが斜線の範囲を超えないよう制限を受けることとなります(建築基準法第56条第1項第1号)。 (資料3) (出所) 東京都都市整備局ホームページ ② 隣地斜線制限とは 隣地斜線制限とは、隣地の採光・通風が妨げられないようにするための建築基準法上の規制を指し、これも建築物の高さを制限するものです(同法第56条第1項第2号)。 そのイメージは(資料3)の図のとおりですが、ここでは敷地境界線上の地盤面から垂直に20m(注1)または31m(注2)立ち上がった地点を起点とし、そこから(資料3)に示す角度で斜線を引き、その範囲内に建築物が収まるよう制限を受けます。 (注1) 用途地域が第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域の場合に20mの制限が適用されます。 (注2) 用途地域が近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域の場合に31mの制限が適用されます。 なお、隣地斜線制限は、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域のように、建築物の絶対高さが10mまたは12mに制限される地域においては適用されません。 ③ 北側斜線制限とは 北側斜線制限は、住居系の用途地域のみに適用される制限であり、北側の隣地や道路に面する建築物の高さを制限し、隣地の日照や通風が妨げられないようにするための建築基準法上の規制を指します。 そのイメージは(資料3)の図のとおりですが(同法第56条第1項第3号)、北側からの斜線には、これ以外に各自治体で定めた高度地区による高さ制限があることに留意が必要です。 以上、用途地域がまたがる敷地に適用される斜線制限(高さ制限)に関しては、それぞれの用途地域にかかる制限を受けることとなり、煩雑なものとなります。 (3) 日影規制と高さ制限 日影規制とは、冬至の日を基準として、建築物が周辺に一定時間以上の日影を生じさせないように、建築物の高さと配置を制限する建築基準法上の規制を指します(同法第56条の2)。そのイメージ図は(資料4)のとおりです。 (資料4) (出所) 目黒区役所ホームページ 日影規制に関しては、各自治体の条例により用途地域や容積率に応じて規制対象となるエリアが指定されているのも特徴の一つです。 なお、用途地域がまたがる敷地の場合、日影規制による高さ制限に関しては、それぞれの用途地域による制限を受けることとなります。   3 まとめ 前回と今回にわたり、複数の敷地が異なる用途地域にまたがる場合の建築制限につき様々な視点から述べてきましたが、鑑定評価においてはそれぞれの場面ごとに適用される制限の内容や相違を念頭に置くことが必要となります。 不動産鑑定士にとっても建築基準法の基本的知識は必須なものとされている所以です。 (了)

#No. 669(掲載号)
#黒沢 泰
2026/05/21

《税理士のための》登記情報分析術 【第36回】「株式会社の役員変更登記」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第36回】 「株式会社の役員変更登記」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   税理士は顧問先の役員が変更になった場合、司法書士に役員変更登記を依頼することが多いであろう。ここ10年程度で会社に関する登記の規律もさまざまな変更があり、司法書士から提供を求められる資料や情報の量が増えていると感じている読者も多いと思われる。本稿ではよくある役員変更登記の事例に触れつつ、近年どのような改正が行われてきたのかを紹介する。   1 辞任による退任の登記 役員が辞任すると退任の登記を申請する必要があるが、その際に必要になるのが「辞任届」である。辞任届には辞任する役員が署名または記名押印をすることになるが、押印に用いる印鑑は認印で原則として差し支えない。ただし、平成27年2月27日からは商業登記規則の改正により会社実印の法務局への届出を行っている代表取締役が辞任する場合には、辞任届に会社実印で押印をするか、辞任する代表取締役の個人の実印で押印を行い、印鑑証明書を添付することが必要となっている。これは代表取締役が知らないところで勝手に辞任届を作成され、退任の登記を申請されてしまうことを防止することを目的としている。 会社からすると手間が増えたといえるが、実際に代表取締役が勝手に退任させられてしまったというトラブルが生じているようであり、やむを得ないといえるだろう。司法書士によっては、別途退任する代表取締役に電話確認を行うこともある。   2 就任の登記 役員の就任の登記はその選任機関に応じて株主総会議事録、取締役会議事録等の選任を証する書面が必要になるほか、以下のような添付書面が必要となる。 (1) 就任承諾書 会社による選任に応じて役員候補者が就任を承諾したことを証する就任承諾書が必要になる。就任承諾書には氏名だけではなく住所を記載する必要がある。 (2) 本人確認証明書 再任を除き就任承諾書に記載された役員の住所、氏名が記載された公的書面(本人確認証明書)の添付が必要となる。これも商業登記規則の改正により平成27年2月27日から変更された取扱いである。本人確認証明書の添付により役員が実在することを証明させることで虚偽の登記を防止する趣旨である。 本人確認証明書の例としては以下のものがある。 ① 住民票の写し ② 戸籍の附票 ③ 運転免許証のコピー(両面) ④ マイナンバーカードのコピー(表面のみ) ③、④の本人確認証明書については本人が「原本と相違がない。」と記載して、記名することが求められる。押印は必須ではない。なお、新規就任する代表取締役のように登記申請に印鑑証明書を添付する役員について本人確認証明書は不要とされている。 M&Aのように役員が大幅に入れ替わる事例では、役員候補者に対して本人確認証明書の準備を事前に案内しておくとスムーズである。 (3) 株主リスト 平成28年10月1日からは商業登記規則の改正により株式会社等の登記申請において、株主総会議事録を添付する場合には、併せて「株主リスト」を添付することが必要になった。これは虚偽の登記申請の防止や会社の実質的支配者を法務局が把握することで、会社の透明性を確保することなどが制度の創設理由であるとされている。 株主リストには、「議決権数上位10名の株主」または「議決権割合が3分の2に達するまでの株主」のいずれか少ない方の株主について、住所、氏名、株式数、議決権数等を記載することになる。株主リスト作成のために司法書士から税理士に対して株主の情報が記載されている「法人税申告書の別表二(同族会社等の判定に関する明細書)」の提出を求めることが増えたのはこうした背景がある。 株主リストの作成がきっかけとなり、名義株の存在が明るみに出て解消に向けて会社が動き出すなど影響が生じることもある。株主の正確な把握は適正な経営や事業承継においても重要であるため、好ましい影響といえるだろう。   3 就任の登記に関して必要となるヒアリング事項 添付書面に関することではないが、制度改正により会社からヒアリングすべき事項も増えている。具体的に次のようなものがある。 (1) 旧氏(旧姓)の併記 商業登記規則の改正により平成27年2月27日から婚姻前の旧氏を併記して登記することが可能となったが、令和4年9月1日からは婚姻前の旧氏に限らず、養子縁組前の旧氏や、離婚後婚姻中の旧氏なども併記可能となった。可能であれば役員候補者から旧氏を併記するかをヒアリングすることが望ましいといえる。 (2) 代表取締役の住所非表示措置 商業登記規則の改正により、代表取締役の住所非表示措置が創設され、令和6年10月1日からは登記記録に表示される代表取締役の住所を最小行政区画(「東京都大田区」など)までとすることが可能となった。プライバシー保護のために創設された制度であるが希望する人が多いため、代表取締役の候補者には希望するかをヒアリングすることが望ましいといえるだろう。 (了)

#No. 669(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/05/21

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉『ここがヘンだよ日本の税制』【第5回】「酒の通信販売免許、アップデートが必要?フリマサイト転売によるリスク3つ」

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉 ここがヘンだよ日本の税制 第5回 酒の通信販売免許、アップデートが必要? フリマサイト転売によるリスク3つ 税理士・税務ライター 鈴木 まゆ子   日本ではお酒の製造にも販売にも「免許」が必要です。しかし数年前から、ウィスキーなどの価格高騰にともない、オンラインでのフリーマーケットやオークションサイト(以下「フリマサイト」)でお酒の転売を行うケースが増えた模様です。ときには酒税法違反となり、ニュースになることも。 このようなフリマサイトでのお酒の転売、みなさんはどのように感じられるでしょうか。 と思われるかもしれません。しかし酒の販売免許制度の趣旨を考えると、デメリットがあまりにも大きいのです。今回は、酒の販売免許制度の概要を伝えつつ、フリマサイトで安易に転売できてしまうことのリスクを分析します。   なぜ酒の販売に免許が必要なのか 日本では、酒類の販売業免許がなければ酒類を売ることができません。理由は次の2つです。 引用元:令和8年度版 税大講本 間接税法(基礎編)|税務大学校 免許が必要な酒類販売は対面販売だけではありません。インターネットなどを介した通信販売でも求められます。 また、酒類の小売業者については現在、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第86条の9により、酒類販売管理者を選任する義務を負わされています。これは20歳未満の者に対する酒類の販売を行わないようにするための制度です。 引用元:酒類の販売管理|国税庁 ちなみに、酒類の製造にも免許が必要です。これは高税率である酒税を確実に徴収できるようにするため、検査監督を十分に行えるようにすることで高税率に適する酒の品質を維持し、同時に国民の保健衛生を担保するためだとされています。 なお、酒類の販売免許は「販売業、代理業、媒介業」などと「業として」、つまり反復継続して行う場合に必要となります。一方、製造については業であるかどうかを問わず、一切について免許が必要です。明治初期の日本では「どぶろく」など、酒を自家発酵して作る風習がありました。しかし明治32年(1899年)以降、禁止されています。   酒のオンライン転売はコロナ禍の時期に増加・・・なぜ? 酒類の販売には免許制度が必要ですが、その網をかいくぐるかのような行為が近年、散見されるようになりました。フリマサイトで個人同士が相対で酒を売買しやすくなったからです。 特に令和2年以降数年にわたるコロナ禍では、酒の個人の相対取引が急増しました。飲食店の営業が休業あるいは短時間営業となり、外食での飲食ができなくなったため、自宅で飲む用のお酒の需要が高まったからと見られます。加えて、ジャパニーズウィスキーが平成後期から価格高騰するようになり、「いいお酒を安く買いたい」というファンがフリマサイトで買い求めるようになった模様です。 「このお酒、お歳暮でもらったけど飲まないのよね」くらいの気持ちで安く譲るくらいなら問題ありません。業として販売するのでなければ免許はいらないからです。しかし、中には転売で味をしめ、気がついたら反復・継続して販売していた・・・となることもあります。そうなると無免許で販売していたとして、酒税法違反が問われます。 実際「業として酒の販売をしていた」とされて酒税法違反で処分されたケースがありました。 酒の売買が業に該当する可能性について、本人に自覚があったかどうかはわかりません。ただ、中には「ちょっとお酒が余っただけだから」を言い訳に、意図的に繰り返し転売をする可能性もないとは言い切れないのです。   無免許の酒の転売を放置するリスクとは このようなフリマサイトでのお酒の無免許販売を放置すると、次のような悪影響が懸念されます。 ●免許を受けている小売業者・通販業者が損をする 1つ目は「正直者が馬鹿を見る」状況になってしまうことです。酒類の販売免許は、通信販売も含めて、資本要件や場所の要件などが厳格に定められています。また記帳も適宜、行わなくてはなりません(※)。つまり、マジメに酒類販売をするなら、高いハードルを超えなくてはならないのです。 (※) 参考:通信販売酒類小売業免許申請の手引|国税庁 一方、フリマサイトで転売をする人の多くは、販売免許の許可が下りにくい人だと思われます。販売するお酒は狭い自宅で保管しているでしょう。資金力はそれほどなく、中には税金を滞納している人がいるかもしれません。そういう人が酒の転売で儲けても、たいていは所得税も消費税も申告せずに終わる可能性が高いと言えます。つまり、マジメにルールを守って販売している業者たちの利益を転売者たちがかすめとるような構造になってしまうのです。 ●ニセモノの酒が横行する 2つ目に懸念されるのが「ニセモノの酒の横行」です。 オンラインのフリーマーケットやオークションサイトでは、よくお酒の空瓶が販売されています。多くは安酒の瓶ではなく、国内外問わず人気のある高級ウィスキーの瓶です。転売者の中には、この瓶に安酒をつめこんでフリマサイトで転売する人もいると見られています。実際、高級ウィスキーと信じて買ったものの、飲んでみたら安酒だった・・・という声もあるようです。 酒を混ぜて販売すること自体、酒税法違反です。これを放置すると、それぞれの酒のブランド価値を毀損することになりかねません。さらに、ニセモノの酒を飲んだ人の健康を害するおそれもあります。 ●20歳未満の酒の購入を許してしまう 3つ目の懸念が、20歳未満の酒の購入を許してしまうことです。オンラインでの酒の購入では、身分証の提示を求められることがありません。「あなたは20歳未満ですか?」の確認画面が出るのみです。つまりそこでウソをつけば20歳未満でも酒の購入ができてしまいます。フリマサイトが誰でもアクセスできる場所である以上、これは避けようがありません。 なお、この問題はフリマサイトに限らずAmazonのようなオンラインのショッピングモールについても同じことが言えます。   酒類の通信販売免許はアップデートが必要 このような問題を解決するには、酒類の通信販売免許の厳格化が必要だと思われます。筆者は、次のような対策が必要ではないかと感じている次第です。 転売者たちをすべて見つけて処分するのには限界があります。そのため、彼らの活動場所であるプラットフォームそのものに義務を課すことで、酒税法違反を取り締まることが可能になるのではないでしょうか。 なお、酒類の通信販売免許制度が創設されたのは平成元年(1989年)です。当時はインターネットもなく、カタログでの販売が中心でした。時代の変遷を経て途中改正されることもありましたが、それでもなお、基本的なルールは平成初期のままです。 本来の酒税法の趣旨、そして国民生活や経済活動への影響を考えるなら、そろそろ抜本的な改正が必要なのかもしれません。 (了)

#No. 669(掲載号)
#鈴木 まゆ子
2026/05/21

《速報解説》 【続報】非上場株式評価、大改正へ~第2回有識者会議の論点と評価通達のあり方から読み解く~

 《速報解説》 【続報】 非上場株式評価、大改正へ ~第2回有識者会議の論点と評価通達のあり方から読み解く~   税理士 柴田 健次   国税庁は令和8年5月11日、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第2回を開催し、その資料が公開された。   1 はじめに 第1回有識者会議が会計検査院の指摘を受けた評価額の著しい乖離の実態整理と国税庁が問題視する圧縮スキームの開示に充てられたのに対し、第2回有識者会議では、租税法学者、会社法学者、M&A実務家という外部専門家による提出資料を中心に議論がなされ、評価通達の理論的・実証的基盤そのものへの根本的な問題提起がなされた。 本稿では、渋谷雅弘委員(中央大学法学部教授)、弥永真生委員(明治大学専門職大学院会計専門職研究科教授)、熊谷秀幸委員(株式会社日本M&Aセンター取締役常務執行役員)の3委員の提出資料を踏まえ、論点を整理する。   2 相続税法22条の時価評価と評価通達の考察 渋谷委員は、相続税法22条の時価評価原則を再確認した上で、「取引相場のない株式については、事業承継の観点から評価額が押さえられてきた」と現状を率直に指摘した。 特に、東京高判令和6年8月28日の事案では、通達評価額がM&Aによる買収額の約8%にとどまったとの具体例が示された。マンション評価をめぐる最高裁令和4年4月19日判決の事案(通達評価額が取引価格等の約4分の1)よりもはるかに大きい乖離が、非上場株式の世界では現に発生している。第1回会議で会計検査院が指摘した「類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%」という乖離は、より大きな問題の一端に過ぎないということになる。 また、渋谷委員は最高裁令和4年判決における平等原則について、「この最判は、平等原則を、同じ評価方法を用いるという意味で用いている(評価方法の平等)」と指摘した上で、「評価水準の平等は、異なる種類の財産間でも、同じ種類の財産間でも達成されない」、「評価水準の平等を達成するためには、評価通達の内容の合理化が必要」と説いた。これは、最高裁の判断枠組みが形式的な評価方法の平等を要求するにとどまり、実質的な租税負担の公平を実現するためには評価通達自体の合理化が不可欠であるという問題提起である。総則6項による事後的打消しでは限界があり、評価通達本体の手当てが必要であるという立場と理解される。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年5月11日(第2回)渋谷委員提出資料」より抜粋   3 会社法の観点からの取引相場のない株式の評価 会社法学者である弥永委員は、現行評価通達の中核である類似業種比準方式に対して、理論的にも実証的にも極めて厳しい評価を下している。 第一に、会社法上の裁判例において類似業種比準方式は事実上「死に体」となっている。提出資料添付の裁判例一覧(昭和59年~令和5年)によれば、「公刊物掲載裁判例では、京都地決昭和62・5・18を最後として、類似業種比準方式によるものはみあたらない」とされ、また「札幌高決平成17・4・26を皮切りに、DCF法による評価額またはそれを主な要素として価格決定を行う裁判例が多数を占めるに至っている」と整理されており、純資産価額方式は「下支え(下限)」として位置付けられることが多いとされる。 第二に、類似業種比準方式が用いられなくなった理由として、弥永委員は次の2点を挙げる。すなわち、「比準割合の算定方法やしんしゃく割合については理論的な根拠も実証的な裏付けもない」、「適切な比準対象の上場会社を見出すことが難しい(実際には不可能である)」の2点である。第1回会議で示された会計検査院の27.2%という乖離は、まさにこの理論的根拠なきしんしゃく割合(0.7・0.6・0.5)が累積した結果といえる。 第三に、純資産価額方式と継続価値の関係について、弥永委員は「清算価値>継続価値であれば、解散して清算することが合理的なので、会社法の観点からは、企業価値が純資産価額方式による評価額を下回ることはないことを前提として考えるのが自然」とし、「かりに、税法が純資産価額による評価額よりも低い企業価値を前提として株式価値を算定するという考え方をとるのであれば、それは、経済的に不合理な行動をとるよう企業を動機づけることになりかねない」と警鐘を鳴らした。 結論として弥永委員は、「取引相場のない株式の評価方法のレベルではなく、たとえば、事業承継税制などで、納税の猶予等の措置を講ずることが筋なのではないか」と提言した。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年5月11日(第2回)弥永委員提出資料」より抜粋   4 M&A実務における企業価値評価と税務評価との決定的乖離 東証プライム上場の日本M&Aセンターから提出された熊谷委員の資料は、現場のM&A実務における中堅中小企業の企業価値評価が、税務上の評価方式と決定的に異なることを示している。 中堅中小企業のM&Aにおける株式価値計算において最も多く採用されている評価手法は「時価純資産+営業権法」とされている。 同社の資料では、類似業種比準法・類似会社比準法・配当還元法のいずれも採用できない理由が明示されている。すなわち、類似業種比準法については「類似業種比準法は、相続対策や同族間での株式の移動を検討する際に適した計算方法ですが、独立した第三者間の取引価格を計算する際に利用することは適当ではありません」とされ、類似会社比準法は規模・業種が類似する会社を複数選定できないため不適、配当還元法は「一般的には投資目的が主に配当期待である少数株主の立場から株式価値を計算する場合に適切な方法であり、本件取引の場合には適当ではない」と判断されている。 同社の評価方式と税務上の評価方式との具体的差異として、①不動産(土地)の評価が時価(3年以内など関係なく時価での評価を行い、路線価ベースよりも高いことが多い)、②前払費用なども控除せずに計上、③減価償却不足・特別償却・圧縮記帳の調整、④賞与・退職給付引当金の計上、⑤営業権算定上の損益修正(高額な役員報酬、節税目的の保険、オペレーティングリースなど節税商品の損益、非経常的な損益の修正)が挙げられている。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年5月11日(第2回)熊谷委員提出資料」より抜粋   5 事業承継配慮の本来あるべき場所 第2回会議において租税法学者の渋谷委員と会社法学者の弥永委員が、それぞれ異なる切り口から同じ結論に到達した点は重要である。すなわち、渋谷委員は「税負担の考慮は、本来は基礎控除、税率や特別措置によるべき」とし、弥永委員も「取引相場のない株式の評価方法のレベルではなく、たとえば、事業承継税制などで、納税の猶予等の措置を講ずることが筋なのではないか」とした。 これは、評価通達における「評価の引下げ」によって事業承継への配慮を達成しようとする現行の構造そのものへの根本的な問題提起である。法人版事業承継税制の特例措置は令和9年12月末で贈与・相続の適用期限を迎えるが、事業承継税制と非上場株式評価は不可分の関係にあり、両者は一体で議論されるべき問題である。 すなわち、非上場株式の評価は相続税法22条における時価であるべきであり、評価通達による価額と時価との乖離は是正されるべきものである一方で、法人の事業継続性の観点から事業承継税制のような税負担軽減措置の政策的な配慮が必要となる。   6 総括(私見) 最後に、評価通達見直しのあるべき方向性について、筆者の私見を述べておきたい。 第一に、評価通達は相続税法22条の時価以下の金額で評価することが前提となっており、評価の安全性が考慮されている点を改めて確認しておく必要がある。現に路線価は時価(地価公示価格)の8割での評価が前提となっており、令和6年1月1日以後に適用されている居住用の区分所有財産の評価についても、理論的な市場価額の6割になるように個別通達が運用されている。非上場株式の場合においても、一般的に類似業種比準価額が時価よりも低い価額であることは周知の事実である。したがって、評価通達による価額と相続税法22条の時価との乖離はそもそもある程度は想定されているが、問題は、この「想定された範囲」を超える乖離が、評価通達自体の構造的要因によって恒常的に生じている点である。評価通達の見直しは、まさにこの「想定外の乖離」を是正することが前提となるべきである。 第二に、最高裁令和4年判決の枠組みにおいても、評価通達を超える価額で課税することは、平等原則の観点から原則として違法とされている点が重要である。評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合に限り、合理的な理由があると認められて違法にはならないという例外的な構造である。すなわち、評価通達こそが大原則であり、その大原則自体に構造的欠陥があるならば、評価通達本体の手当てによって解決すべきである。 第三に、評価通達の見直しと事業承継配慮との関係について、渋谷教授のご指摘のとおり、税負担の考慮は本来、基礎控除、税率や特別措置によるべきである。事業承継への配慮を評価通達における「評価の引下げ」によって達成しようとする現行の構造は、①相続税法22条の時価評価の原則を歪め、②評価通達による画一的評価と実勢価額との乖離を恒常化させ、③納税者の予見可能性を著しく損なう、という問題を生じさせている。仮に評価通達の見直しによって非上場株式の評価額が上昇し、事業承継の観点から税負担で問題になることがあるとしても、それは評価自体の問題ではなく、事業承継税制のような政策的措置によって税額負担措置を考慮するべきである。 以上を踏まえると、評価通達の見直しは、「評価通達本体の合理化」と「事業承継税制の抜本拡充」の両輪で実施されるべきものといえる。事業承継税制は平成21年に創設されたものの実際の適用件数はまだ少なく、現行制度を分かりやすい制度に見直すことと、非上場株式評価の適正化は、本来一体として議論されるべきものである。第1回・第2回有識者会議の議論は、まさにこの両輪改革の必要性を強く示唆するものである。 今後の有識者会議の議論を引き続き注視していきたい。 (了)

#柴田 健次
2026/05/15
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