谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第44回】 「国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討の観点(その2)」 -租税債権の立法政策的要素- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 1 はじめに 前回は、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討は、「租税基本法的要請」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])E16頁[須貝脩一=清永敬次執筆]。太字筆者)に応えるべく、「租税法律関係の明確化」の観点から行うべきであるとの立場から、租税法律関係のうち国税徴収法の第一次的規律対象としての租税債権について、その本質的要素を検討したが、今回は、その検討を踏まえた上で、租税債権の立法政策的要素を検討することにする(租税債権の立法政策的要素に関する本稿とは異なる観点(「『公法上の債権』論」と「私法からの租税『債権』論」)からの優れた研究として、佐藤英明「『租税債権』論素描」金子宏編『租税法の発展』(有斐閣・2010年)3頁参照)。 ここで租税債権の立法政策的要素とは、租税の徴収確保及び租税負担公平の確保のための立法政策の構成要素(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)30頁参照)をいうのであるが、そのような立法政策的要素は、「租税徴収制度調査会の答申に盛られた体系的な改革を全面的に実施に移したもの」(吉国二郎ほか共編『国税徴収法精解〔令和6年改訂・21版〕』(大蔵財務協会・2024年)24頁)とされる現行国税徴収法(昭和34年法律第147号)でも、下記のとおり、自力執行権と一般的優先権である(租税徴収制度調査会『租税徴収制度調査会答申―附参考資料―』(昭和33年12月)1頁。下線筆者。なお、村井正「租税債権と私債権―租税債権の優先性を中心に―」租税法研究15号(1987年)1頁も参照)。この点では、「現行法は旧法を維持している」(雄川一郎ほか『行政強制―行政権の実力行使の法理と実態』(ジュリスト増刊・1977年)26頁[金子宏発言])のである。 租税徴収制度調査会答申の上記の考え方では「租税徴収の確保」が前面に出されているが、これは租税負担公平の確保とは対概念であること(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【18】参照)からすると、上記の考え方も、租税徴収に関する自力執行権及び一般的優先権を、「租税徴収の確保」からだけでなく租税負担公平の確保からも認められるべき租税債権の立法政策的要素として捉えているといってよかろう。この点については、「国税の適正な徴収は、国の財源の確保という本来の目的のみならず、国税の公平な負担の観点からも重要なことである。そのため、国税債権の確保措置として、実体的な面で国税の優先権、手続的な面で自力執行権がある。」(税務大学校『国税徴収法(基礎編)令和8年度版』(税大講本・2026年)1頁。太字原文)と説かれているところである。 ここで注意しておかなければならないのは、租税徴収制度調査会答申の前記の考え方について夙に次の指摘(雄川ほか・前掲書27頁[金子発言]。下線筆者)がなされていたことである。 この指摘は、かつては、租税の賦課徴収に関する国家権力も国家の課税権(統治権)に含まれその発現形態の1つであること(谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第1回Ⅱ2参照)を所与の前提として、前回検討した租税債権の「本質的要素」と今回検討する租税債権の「立法政策的要素」とが必ずしも意識的かつ明確に区別して論じられていなかったという当時の理論状況を踏まえたものと解される。つまり、かつて、租税債権の自力執行権及び一般的優先権は、次の見解(原田尚彦『訴えの利益』(弘文堂・1973年)104-105頁。下線筆者)にいう「従来の理論」における「統治権発動の属性」として「一連の包括的な権力性が当然に付随するもの」のように、解されていたのではないかと考えられるのである。 しかし、上記の見解にいう「従来の理論」は、次のとおり(原田・前掲書109頁)、今日では放棄されている。 以上では、租税徴収の確保のための租税債権の自力執行権及び一般的優先権について一般論を極く簡単に述べてきたが、以下では、それぞれについて個別的に検討を加えることにしよう。 2 租税債権の自力執行権 上記1の最後に述べた見解によれば、「狭義の執行力(自力執行力)が行政行為の本質的属性とはいえないことは[今日では]明らかである」(原田・前掲書109頁)とされていたが、ただ、昭和30年に設置された租税徴収制度調査会では前述のとおり租税債権の自力執行権と一般的優先権とは「租税徴収の確保」の観点から「やむを得ない必要性を有する」とされ、下記3でみるように一般的優先権については「私法秩序の尊重」(同調査会・前掲答申2頁)の観点から基本的な考え方にまで立ち入って根本的な制限が検討・提案されたものの、自力執行権については「徴収制度の合理化」(同頁)の観点から制度面での整理合理化が図られるにとどまった。 したがって、租税徴収制度調査会答申の後も、「技術的な必要に基いて国なり地方公共団体なりが、強制徴収という形での自力執行権を持つということについては、おそらくだれにも異論をさしはさむ余地はないだろうと思うのです。」(租税法研究会編『租税徴収法研究(上)』(有斐閣・1959年)3頁[田中二郎発言])と認識されていたのは事実であろう。このことは次のような歴史認識(租税法研究会編・前掲書2頁[吉国二郎発言]。下線筆者)に基づくものであると考えられる。 ここで述べられている歴史認識も必ずしも「実証的検討」(雄川ほか・前掲書27頁[金子発言])に基づくものとは考えられず、むしろ「行政行為を命ずる権限のうちには強制執行をする権限も当然に含まれているとする、従来からの考え方」(原田・前掲書109頁)と親和性があるようにも思われる。 しかしながら、そもそも、わが国おいては、明治維新後近代国家として初めて明治5年9月24日太政官布告第285号で定められた租税滞納処分制度では、次のとおり、自力執行権は認められていなかった(小柳春一郎「明治期の国税滞納処分制度について」税大ジャーナル14号(2010年)1頁、5頁。下線筆者)。 ここで「身代限り」とは、「近世において、無担保の債務を弁済するため、公権力の命令により債務者の財産を没収し、債務弁済に充てる方法」(国史大辞典編集委員会編『国史大辞典〔第7巻〕』(吉川弘文館・1986年)876頁)をいうが、これを税務官庁の自力執行権に基づいて行うのではなく、一般の民事債権と同じく裁判所を通じて行うことを基本的建前としたところに明治初期の国税滞納処分制度の特徴があったことからすると、前記の歴史認識は必ずしも「実証的検討」に基づくものとは考えられないのである。ただ、このような国税滞納処分制度は明治10年太政官布告第79号によって廃止され自力執行権が承認された(小柳・前掲論文5頁参照。同頁では同太政官布告の「柱書」は「租税未納の者はこれまでは、滞納金と身代限りによって処理していたが、その制度を廃止し、次の通り[特に第4条で地方官による滞納処分の執行を]定めたので、布告をするように。」と現代語に訳されている)。 このように、明治10年太政官布告第79号によって、「行政強制」による租税徴収が制度化されたのであるが、このことを一般化すれば次のようにいえよう(塩野宏「『行政強制』論の意義と限界―序にかえて」雄川ほか・前掲書(ジュリスト増刊)3-4頁。下線筆者)。 「行政強制」に関する以上のような一般論に照らして考えてみると、自力執行権という租税債権の立法政策的要素は、歴史認識においてだけでなく、理論(国家論)的にも、統治権としての課税権という国家権力の属性として租税債権の本質的要素と密接不可分の関係にあるように思われる。そうであるからこそ、繰り返しになるが、「技術的な必要に基いて国なり地方公共団体なりが、強制徴収という形での自力執行権を持つということについては、おそらくだれにも異論をさしはさむ余地はないだろう」(租税法研究会編・前掲書3頁[田中発言])と考えられてきたのである。 3 租税債権の一般的優先権 他方、租税債権の一般的優先権の方は、自力執行権に比べて立法政策的色彩が色濃いものであるといえよう。この点については、「租税債権にどこまで優先的地位という形で特別な取扱いを認めていくかという問題は、やはり立法論的にも問題で[ある]」(租税法研究会編・前掲書9頁[田中発言])ことから、租税徴収制度調査会答申では、下記のとおり(租税徴収制度調査会・前掲答申2頁。下線筆者)、特に一般的優先権については「租税徴収の確保」の要請に対して「私法秩序の尊重」の要請との調整による制限が加えられることとなった。 以上のような基本的な考え方は、国税徴収法第2章(8条~26条)で個別具体化された。それらの各規定に関するコンメンタール的「読み物」については後の回に譲ることにする。 (了)
音声記事令和9年食料品減税、ここが困りそう──税理士が語る消費税実務【第1回】消費減税の大綱を読んで 収録時点の情報について 本記事は、2026年9月15日に公表された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」の内容を前提に収録しています(収録日:2026年9月26日)。その後の法案審議等により、制度の内容が変わる場合があります。 出席者(※発言者順) 司会八ッ尾 順一公認会計士・税理士 出席日髙 真帆税理士 出席廣瀬 周平税理士 出席三木 孝夫税理士 この連載について 軽減税率が始まった令和元年10月、レジの入れ替えや請求書の様式変更に追われた方も多いと思います。令和9年からの実施が検討されている飲食料品の消費税減税でも、同じような対応に追われることになるかもしれません。 この連載は、税理士が集まり、減税が始まったら実務のどこで困りそうかを話し合った内容を音声にしたものです。顧問先からどんな問い合わせが来そうか、システム改修は間に合うのかといった、解説記事ではなかなか取り上げられない話が中心となっています。 音声記事 再生時間 約10分 CHAPTER 00:06大綱で何が決まったか01:37届け出の特例について02:36減税の入り口と出口06:03国会の日程と、届出の選択09:16顧問先の動向 (了)
消費税減税大綱に伴い想定される 実務への影響と対応 【第2回】 「各種特例の確認と注意点」 税理士 石川 幸恵 【第2回】では、飲食料品の税率引下げに伴って設けられる各種の特例について確認する。 【第1回】で確認したとおり、飲食料品の税率引下げは、農林漁業者や食品事業者、外食事業者などの納付税額や資金繰りに影響を及ぼすことが考えられる。免税事業者か課税事業者か、簡易課税か一般課税かといった選択を見直す必要が生じる可能性もある。一方で、制度の施行までの準備期間が短く、通常の手続きでは対応が間に合わないといったことも考えられる。 こうした影響に対応するため、課税事業者の選択や簡易課税制度、中間申告などについて各種の特例が設けられる。 1 免税事業者から課税事業者になるための届け出に関する特例、簡易課税から一般課税になるための届け出に関する特例について (1) 免税事業者から課税事業者になるための届け出に関する特例 課税事業者選択届出書の原則的な提出期限は適用を受けようとする課税期間の初日の前日(消法9④)であるが、飲食料品の譲渡を行う免税事業者は、令和9年4月1日の属する課税期間中にその課税期間から課税事業者となることを選択する旨を記載した「課税事業者選択届出書」を所轄の税務署長に提出することで、その課税期間から課税事業者となることができる特例が設けられる(消費税率引下げQA問3-2)。 なお、適格請求書発行事業者の登録を受けることにより課税事業者となる方法(消費税率引下げQA問3-4)については【第4回】において解説する。 (2) 簡易課税から一般課税になるための届け出に関する特例 簡易課税制度選択不適用届出書の原則的な提出期限は、適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日(消法37⑤⑦)であるが、飲食料品の譲渡を行い、かつ簡易課税の適用を受けている事業者は、令和9年4月1日の属する課税期間中に、その課税期間から簡易課税制度の適用をやめようとする旨を記載した簡易課税制度選択不適用届出書を所轄の税務署長に提出することで、その課税期間から一般課税により申告できる特例が設けられる(消費税率引下げQA問3-5)。 なお、簡易課税選択については2年間の継続適用要件があるが、この特例の適用を受けて簡易課税を取りやめる場合、2年継続適用要件は適用されない。 (3) 届出書の記載の注意 (1)の課税事業者選択届出書、(2)の簡易課税制度選択不適用届出書のいずれも「適用開始課税期間」欄に令和9年4月1日の属する課税期間を記載、「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載する(消費税率引下げQA問3-2、3ー5)。 2 1の特例の対象者が「飲食料品の譲渡を行う事業者」に限定されていることについて 1の課税事業者選択届出書、簡易課税制度選択不適用届出書の提出期限に関する特例の対象者に「飲食料品の譲渡を行う事業者」という限定が入っているが、飲食料品の譲渡をどの程度行っていれば該当するのかなど、具体的な判定基準は示されていない。今後公表される法令や情報を確認する必要がある。 3 課税事業者選択の特例を利用した場合の「2年縛り」「3年縛り」「棚卸資産に係る消費税の調整」 (1) 課税事業者選択に係る2年縛り 1の特例を利用して課税事業者となった場合でも、課税事業者選択に係る「2年縛り」の適用がある。このため、個人事業者が1の特例により課税事業者となった場合、令和9年と令和10年は課税事業者として申告する必要がある。 なお、飲食料品の税率引下げは令和11年3月31日まで続くため、令和11年についてどのように対応するかは、課税期間の特例とあわせて次回以降検討する。 (2) 3年縛り 1の特例を利用して課税事業者となった場合も、いわゆる「3年縛り」の適用がある。 (1)の2年縛りの期間中に調整対象固定資産の課税仕入れ等を行い、その仕入れ等を行った日の属する課税期間について一般課税で申告した場合には、一定期間、免税事業者に戻ることができない(消法9⑦)。 また、課税事業者が高額特定資産の仕入れ等を行い、その仕入れ等を行った日の属する課税期間について一般課税で申告した場合にも、同様に3年縛りの適用がある(消法12の4①②)。 (3) 棚卸資産に係る消費税の調整 1の特例を利用して課税事業者となった場合も、棚卸資産に係る消費税額の調整(消法36①)が適用されるので、適用漏れに注意されたい。 4 簡易課税制度の計算方法の特例 飲食料品の譲渡を行う事業者が簡易課税制度を適用して申告を行う場合(2割特例、3割特例を適用して申告を行う場合を含む)、業種区分にかかわらず、飲食料品の譲渡(1%対象)に係る売上税額と同額の仕入税額を計上することとされる(消費税率引下げQA問3-6)。 (※) 消費税率引下げQA問3-6の図に筆者一部追記 5 外食事業者が行う取引の消費税率、簡易課税の適用に関する整理 飲食店が行う店内飲食は消費税率10%、簡易課税の事業区分は第四種事業、みなし仕入れ率60%である。同じ飲食店が行う取引であっても、その業態や取引の内容によって適用される消費税率や事業区分が異なる。 売上の内容 消費税率 事業区分・ みなし仕入率 店内飲食 10%のまま 第四種事業 60% 飲食設備を有する飲食店等が行う仕出し、出前 8%→1% 第四種事業 60% 喫茶店における珈琲豆の仕入れ販売 8%→1% 第二種事業 80% ハンバーガーショップ等の持ち帰り用の販売 8%→1% 製造した製品は 第三種事業 70% 購入した商品は 第二種 80% 飲食設備を有しない宅配ピザ店等 8%→1% 第三種事業 70% 簡易課税制度の計算方法の特例については、税率1%が適用される飲食料品の譲渡が対象とされている(消費税率引下げQA問3-6)。例えば簡易課税の事業区分が第二種事業となる飲食料品の小売販売だけでなく、第三種事業となるテイクアウト、第四種事業となる出前などについても、税率1%が適用される飲食料品の譲渡であれば、特例の対象になるものと考えられる。 6 二種類以上の事業を営む場合、三種類以上の事業を営む場合の簡易課税の特例制度の取扱い 二種類以上の事業を営む場合、三種類以上の事業を営む場合の75%ルールの判定や計算については、飲食料品の譲渡(1%対象)に係る取引を除いて行うこととされる。 (※) 消費税率引下げQA問3-6より抜粋 4の簡易課税の事例で検討する。 7 中間申告制度の特例(消費税率引下げQA問3-8) (1) 特例の概要 令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間に係る中間申告を行う場合、その直前課税期間(令和9年3月31日以前に開始する課税期間に限る。)の飲食料品の譲渡やその課税仕入れについて税率1%が適用されたものとしたときの消費税額に基づく中間申告税額を記載した仮決算による中間申告書を提出することができる。 特例の対象となるのは、「令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間」であるため、個人事業者で中間申告が年1回の場合、令和9年8月31日が納付期限の中間申告は特例の対象にならない。 (2) 手続き 「仮決算による中間申告書」を提出するが、第一表のみの提出で差し支えないとされ、記載すべき事項も限定されている。 (3) 計算 簡易課税制度を適用して中間申告を行う事業者は、4の簡易課税制度の計算方法の特例を用いて計算する。 また、簡易課税から一般課税になるための届け出に関する特例により、令和9年4月1日の属する課税期間中に簡易課税制度選択不適用届出書を提出した場合、提出前に簡易課税を適用して仮決算による中間申告書を提出していたとしても、一般課税で中間申告をやり直す必要はない(消費税率引下げQA問3-5)。 (4) 中間申告の回数 この特例を適用する場合でも、中間申告の回数については、税率1%が適用されたものとした消費税額によって判断するのではなく、直前課税期間の確定消費税額に応じた回数(年1回、3回又は11回)となる。 税率引下げ期間終了後の令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間については、第4回にて検討する。 (了)
社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第10回 何でもかんでも債務控除 〈JUN税会〉 税理士 植西 正 * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 社長へのヒアリングと現状確認により、以下の事実が確認されました。 2 法的論点の整理 (1) 相続税法の規定 債務控除については、相続税法において次のように規定されています。 【相続税法13条1項】(今回の事案に関するものに限定して要約しています) 【相続税法14条1項】 【相続税法基本通達14-1】 (2) 通達・質疑応答事例等 ① 被相続人の生前の医療費 被相続人の生前の医療費については次のように示されています。 (TAINS相談事例:相続事例707396参照) ② 被相続人が加害者となった場合の損害賠償金等 交通事故が被相続人の過失に基づくものであれば、被相続人は加害者としての損害賠償責任を負って死亡したこととなり、相続人はその責任を相続により承継することになります(民法896)。そのため、支払った金員が損害賠償の範囲内であると認められるときは、被相続人の債務に該当します(国税庁質疑応答事例「加害者が死亡した場合における損害賠償金についての債務控除」参照)。 ③ 非課税相続財産に係る債務 非課税資産に係る債務の金額については、その取得のためのものだけでなく、維持または管理のために生じた債務も債務控除の対象とはなりません。 【相続税法12条1項】 【相続税法13条3項】(今回の事案に関するものに限定して一部改変しています) 【相続税法基本通達13-6】 ④ 葬式費用の範囲 下記の相続税法基本通達13-4のように葬式費用の範囲については、「相当程度」、「通常」といった不確定概念を用いて示されています。 【相続税法基本通達13-4】 ※下線筆者 葬儀のあとに参列者に感謝の気持ちを示すための会食(精進落とし)は、上記(3)の「葬式の前後に生じた出費」、「通常葬式に伴うものと認められるもの」に該当すると考えられます。 戒名料は、葬式に際して寺院等に支払われ、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものであれば、葬式費用に該当します (TAINS相談事例:相続事例千葉会030244参照)。 また、法会とは、一般的に法事と呼ばれるものです。最近は葬式当日に初七日法要を済ませてしまうことが多くなっていますが、あくまで「法会」の一つですので初七日費用は葬式費用には含まれません。四十九日の法要費用も葬式費用になりません。 【相続税法基本通達13-5】 なお、弔問客全員に、お清めの塩などと一緒に、香典の有無にかかわらず渡すお茶や海苔などの会葬御礼品は、香典の返礼ではありませんので、葬式費用として債務控除の金額に含めることができます(TAINS相談事例:相続事例千葉会030244参照)。 (3) 裁判例 ① 「履行が確実な債務と認められる費用」とは 「確実な債務と認められる費用」について東京地裁では、次のような判断が示されています。 ◆東京地裁令和6年11月28日判決(LEX/DB25616526) ② 相続税法12条1項2号(非課税財産の規定)の「これらに準ずるもの」とは 相続税法12条1項2号(非課税財産の規定)の「これらに準ずるもの」については、東京地裁において次のような判断が示されました。 ◆東京地裁平成24年6月21日判決 3 本件事例へのあてはめ (1) 入院時に社長が支払った前金 本来父が支払うべき前金を社長が支払い、立替金(父に対する債権)として認識している以上、父は社長に対する債務を負っていたといえます。また、父の死亡後に入院費用を精算し、未払金の支払いに前金が充当された段階で病院への債務は履行されたことになります。病院が金銭を預かっていたことから「履行が確実な債務」と考えられるため、債務控除の金額に算入されます。 次の①と②のいずれの場合も父の相続開始の際、父の病院への債務は存在しますが、取扱いは異なります。 (2) 自転車事故の損害賠償金 今回のケースは、加害者が死亡し相続人がその損害賠償義務を承継した場合とは少し異なります。被相続人の死亡前に相続人である社長が代わりに賠償金を支払っているからです。それでも相続人の立替金と認められる場合には、債務控除ができると思われます。 この場合、「支払いのことはワシは知らん!」と言われたとしても、「履行が確実な債務」と認められると考えられます。相手方と社長の父は示談書まで交わしており、トラブルがそれ以上長引くことを避けるために社長が立て替えていたわけです。社長は父に対する求償権があり、父の社長に対する債務は 「履行が確実な債務」と認められると思われます。「父が返してくれなさそう」という主観的な基準で判断するのは妥当ではありません。 (3) 非課税財産に係る債務 非課税財産の取得、維持又は管理のために生じた債務の金額は、債務控除の金額に算入できません。相続税法基本通達13-6では墓碑だけを挙げていますが、仏壇・仏具や墓地の取得、維持または管理のために生じた債務が含まれると考えられます。そのため、墓石の購入代金だけでなく、仏壇・仏具の購入代金や墓所管理料の支払いを父が未払いであったとしても債務控除の対象とはなりません。 (4) 葬式費用関連 本件事案のように、葬式を行わずに親族が火葬場に集まる「直葬」が最近は見られます。特に近年、コロナウイルス感染症で亡くなった方は、故人の意思にかかわらず直葬されることが多かったようです。 葬式を行っていないのに 「葬式費用」とすることができるのかという点については、火葬費用など死者の弔いのための費用は 「葬式費用」に含まれると考えられます。火葬後の会食についても、「葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの」であれば債務控除の金額に算入することができます。 戒名料については、相続税法基本通達13-4(2)の 「施与した金品」に該当すると考えられます。ただし、初七日法要費用を区別できる場合には、その金額を葬式費用の金額から除く必要があります。 (5) 水道光熱費 被相続人が長期入院中に死亡したとしても、居宅としていた家の電気、ガス、水道代は被相続人の債務ですので、債務控除の対象となります。ただし、相続税法13条に「相続開始の際現に存するもの」と規定されていますので、引き落とされた金額を相続開始日までの日数按分で計算すべきものと考えられます。
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第77回】 「海外移住のリタイアメントプラン」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 西田 尚子 相談内容 私は、食品の輸入販売業を営む非上場会社X社の代表取締役社長Aです。私はX社の株式を100%所有しています。私の息子Bは、私の意思を汲んで数年前にX社で働き始めました。 私は今年60歳の還暦を迎え、そろそろ引退後の生活について考え始めています。将来的にX社の株式と経営は息子Bに引き継ぎ、私は妻と二人で海外に移住して残りの人生を楽しみたいと考えています。 顧問税理士に相談したところ、株式の承継対策は海外移住前に済ませておくべきとのアドバイスを受けました。そのほか海外移住を検討する際に税務上、注意すべき点を教えてください。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 個人に対する課税上の留意点 (1) 国外転出時課税(出国税)の適用 海外移住時に時価1億円以上の有価証券等、未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引(以下「対象資産」という)を所有等しており、過去10年以内に5年を超えて日本に居住していた場合、出国時に所有する対象資産の譲渡があったものとみなして、含み益に対して所得税・復興特別所得税15.315%が課されます(所法60の2)。 出国時までに納税管理人を選定して担保提供等の手続きを行うことで、5年間(延長届出により最長10年間)は出国税の納税を猶予することが可能です。海外に移住した後に日本に戻る可能性がゼロでない場合には、納税猶予の手続きをしておくことが考えられます。 X社の株式については、まずは現在の時価を算出して、株価が1億円を超えるようでしたら、出国税の対象とならないように、早めにBに贈与もしくは譲渡することを検討するべきです。その際に、事業承継税制を活用して贈与を行うことが考えられます。Aが海外移住することについて、事業承継税制の適用要件への影響はありません。 その他の有価証券等を所有している場合、非居住者に対する日本の証券口座の取扱いは証券会社によって異なりますので注意が必要です。出国税の影響を考えて日本の証券口座は閉鎖してから出国するなどの準備を行っておくことをお勧めします。 (2) 役員報酬・退職金に対する源泉所得税課税 海外移住後もX社の非常勤役員等として役員報酬を受け取る場合、非居住者に対する役員報酬として20.42%の税率により源泉徴収されます。なお、役員としての実態が伴わないなど、報酬が不相当に高額な場合には、X社で損金不算入とされます。 役員退職金を支給する場合には、支給のタイミングが出国前か後かによって源泉徴収税の計算及び手続きが異なります。 移住後に受け取る役員報酬や役員退職金については、移住先の国においても所得税が課される可能性があります。二重課税は外国税額控除や租税条約の適用により解消できる可能性がありますので、租税条約や現地の税制を確認する必要があります。 [2] 法人に対する課税上の留意点 移住後も海外から継続して、X社の経営指導や重要な意思決定を行ったり、X社のために契約を締結したりする場合、移住先国でX社が恒久的施設(PE)を有しているとみなされる可能性があります。 PEとみなされると、PEを通じて得た所得について、X社が移住先国で申告・納税が必要になり二重課税が生じます。二重課税排除のために、日本において外国税額控除の適用を検討する必要があります。 [3] 相続税・贈与税に関する留意点 海外移住してから10年経過した後にAの相続が発生した場合やAが贈与を行った場合、日本の相続税・贈与税の課税範囲については、相続人・受贈者の居住の状況により異なります。Aの妻はAと共に海外移住しているため、相続・受贈した財産のうち国内財産のみが相続税・贈与税の課税対象になります。一方、国内に居住しているBは、国内・国外を問わず、相続・受贈した全ての財産に対して相続税・贈与税が課されます。 海外移住してから10年以内に日本国籍を保持したまま、相続・贈与が発生した場合、Aの妻もB同様に、全ての相続・贈与財産が相続税・贈与税の課税対象になります。 相続税の納税義務と課税範囲については、本連載【第29回】をご参照ください。 [4] 結論 オーナー社長が引退後に海外に移住する場合、移住前に株式の承継を行っておかなければ、出国税の対象になります。A氏の場合、後継者が親族内にいるため、まずはX社の株式を後継者に移す検討を始めることをお勧めします。 また、移住先でX社の経営に関与し続ける場合には、役員報酬の二重課税やX社のPE認定の問題が生じます。完全に引退する時期も合わせて検討するべきです。 海外移住後は、現地税制や租税条約の確認が必要になります。事前の検討に際しては、国際税務に知見のある税理士に相談されることをお勧めします。 (了)
〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第5回】 「デジタル時代のPE」 -インターネット取引からPEを考える- 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 吉本 壮介 Q 顧問先である日本法人は、自社で開発したクラウド型の業務支援サービスを、インターネットを通じて海外の顧客にも提供しています。 海外の顧客はウェブサイトから利用を申し込み、サービスの提供から代金決済まで、全てサイト上で完結します。 海外に支店や事務所はなく、現地に従業員もいません。 「PEなくして課税なし」という考え方に基づけば、現地にPEはない状況かと思うので、海外で法人税が課税されることはないと考えてよいでしょうか。 A 海外に支店や事務所がなく、従業員もおらず、インターネットを通じて商品やサービスを提供しているだけであれば、従来型のPEとして認定される可能性は一般的には高くありません。 ただし、インターネット取引だからPEを考える必要がない、ということではありません。 例えば、ウェブサイトを動かすために使用しているサーバーは物理的な設備です。そのため、日本法人が海外にサーバーを保有するなど一定の場合には、そのサーバーがPEに該当する可能性があります。 また、近年ではデジタルビジネスの拡大に伴い、PEがなくとも一定の課税を行う国もありますので、そのような観点にも目を向ける必要があります。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ 1 デジタル時代にPEが問題となる理由― 場所がなくても事業が行える時代に ― 前回は、駐在員事務所を例に、PEについて解説しました。 従来の海外ビジネスでは、進出先国で継続的に事業を行うならば、店舗、事務所、工場などを設けて、そこに従業員を配置することが一般的でした。 そのため、その国に「事業を行うための一定の場所」があるか否かという考え方は、企業の事業活動と課税権を結びつける基準として、企業・当局も判断がしやすく合理的であったものと考えられます。 しかし、インターネットなどのIT技術の進化に伴い状況が変わりました。 事例のように、日本法人がクラウドサービスを世界中の顧客に提供する場合、現地に店舗も事務所も従業員も置かず、日本に居ながらにしてサービスを提供することが可能になりました。 進出先国からみれば、外国企業が国内に拠点などを置かないまま、多数の顧客から継続して利益を稼得しているのにもかかわらず、従来の解釈ではPEがないため課税ができないという状況になります。 このようなビジネスのデジタル化によって、従来のPEの考え方だけで課税関係を判断することが果たして妥当なのかという問題が生じました。 2 ウェブサイトはPEになるのか― パソコン画面の向こう側に「場所」があるか ― 会社のウェブサイトを考えてみます。 海外の顧客が日本法人のウェブサイトにアクセスし、商品を購入したりサービスを申し込んだりしているとしても、ウェブサイトそのものはデータやソフトウエアによって構成されるもので、店舗や事務所のような物理的な場所ではないことから、通常PEには該当しないものとされています。 したがって、ウェブサイトを作り、海外から多数のアクセスがあり、多額の売上があるという事実のみで直ちにPEと認定されるものではありません。 3 サーバーはPEに該当するか (1) ウェブサイトとサーバーの違い 一方で、ウェブサイトを動かすサーバーについては事情が変わります。 サーバーは実際に物理的に存在するコンピューター等からなる設備です。 例えば、日本法人が海外に自社専用のサーバーを設置し、そのサーバーを継続的に使用して商品の受注、決済、サービス提供を行っている場合、そのサーバーが日本法人の事業を行うための一定の場所としてPEに該当するものと考えられます(日本における外国法人に対するサーバーPEについては、法基通20-1-1)。 ウェブサイトはデータ、サーバーは設備という違いがあり、デジタル取引におけるPEを考えるときの一つの目安となります。 (2) サーバーの保有とクラウドサービス もっとも、現在では企業自身がサーバーを保有するよりも、外部のクラウドサービスを利用する方が一般的かと考えられます。 事例のケースで、サーバーをクラウド事業者が提供している場合、このサーバーを自社の事業所として自由に使用していることにはならず、あくまでクラウド事業者が管理する設備の一部を利用しているに過ぎないため、そのサーバー所在地に日本法人のPEがあると判断される可能性は通常高くないものと考えられます。OECDモデル租税条約コメンタリーでも、一般的なホスティング契約では、サーバーやその設置場所が利用企業の自由にできる状態にあるとは通常考えられないとされています。 サーバーPEにおける実務上のチェックポイント 一つの目安として、以下を確認するとよいでしょう。 サーバーは誰の所有物か 日本法人がそのサーバーをどの程度自由に利用できるか そこで日本法人がどのような業務を行っているか、どのような機能をもたせているか 4 「PEがない=海外の課税はない」ではない― デジタル取引で注意したいポイント ― 前回、企業の事業所得については「PEなくして課税なし」の話をしました。 ただし、国によっては、デジタル取引について、外国企業に対して独自の課税を行っているケースがあります。 例えばインドでは、外国企業が国内に物理的な拠点を持っていなくとも、一定規模の売上や利用者との継続的な関係がある場合、「重要な経済的存在(Significant Economic Presence:SEP)」として、国内法上、インドとの事業上のつながりがあるものとして独自に課税を行う仕組みが設けられています。SEPはOECDにおいて、デジタル化に対応する新たな課税上のつながり(Nexus)の一つとして検討された考え方です。 ただし、日本法人については、インド国内法だけで課税関係が決まりません。 日印租税条約第5条及び第7条では、企業の事業所得について、原則としてインドに租税条約上のPEがなければ課税されないこととしています。現在の日印租税条約にはSEPは含まれていないため、インド国内法上SEPに該当したとしても、インドでは原則として国内法と条約の規定のうち納税者に有利なものを選択できますが、適用のための手続きも含めて現地専門家に確認することが望ましいと言えます。 また、ソフトウエアやオンラインサービスの提供について、VAT(付加価値税)やGST(物品サービス税)など、日本の消費税と同様の税金の登録や申告が必要になるケースもあるため、PEがないことだけを確認して、この国では税務手続きが不要とは即断できませんので、留意する必要があります。 さらに、ソフトウエアやクラウドサービス等の対価は、契約内容や取引の性質によって、ロイヤルティや技術サービス料などとして扱われるケースがあり、PEとは別の課税関係が生じる場合もあり、注意が必要ですが、本稿では割愛します。 5 設例におけるPEの判定 設例では、日本法人は海外に事務所や従業員を置いておらず、インターネットを通じて海外顧客にサービスを提供しています。 また、通常のクラウドサービスを利用しているだけで、日本法人自身が海外に専用サーバーを置いていないとすれば、従来型の事業所PEとして認定されるリスクは一般的には高くないものと考えられます。 しかし、そこからさらに踏み込んで、 進出先国にデジタル取引に関する独自の課税制度がないか VAT(付加価値税)やGST(物品サービス税)などの登録義務はないか 日本との租税条約ではどのような取扱いになっているか などについて、最終的には現地の専門家も交えて確認する必要があるものと考えられます。 6 まとめ デジタル化によって、企業は海外に店舗や事務所を置かなくても、世界中の顧客を相手にビジネスが展開できるようになりました。これは、GAFAのような巨大企業だけでなく、中小企業にとっても身近なものとなっています。 一方、従来の国際課税では、PEのような物理的拠点を課税権の重要な基準としてきましたが、物理的拠点を持たずに海外市場から継続的に収益を得ることのできるデジタルビジネスの拡大に伴い、従来のルールだけで適切に課税できるのかという問題が生じています。 こうした問題に対し、OECDを中心として国際的な課税のルールの見直しが議論される中、インドのSEPのように各国が国内法に独自の課税ルールを導入する動きも見られます。 したがって、顧問税理士としては、デジタル取引を巡る様々な動向を注視し、進出先の課税制度や租税条約の取扱いについても意識しておくことが重要です。 次回は、このデジタル取引にまつわる消費税の観点をテーマに、分かりやすく解説したいと思います。 デジタル取引におけるPEチェックリスト ☑ 海外の顧客にインターネットを通じて商品販売やサービス提供をしているか ☑ 海外に事務所、店舗、従業員などが存在するか ☑ ウェブサイトを運営するサーバーはどこにあるか ☑ そのサーバーは自社保有か、外部のクラウドサービスか ☑ サーバー上で受注、決済、サービス提供など重要な業務が行われていないか ☑ 進出先国にデジタル取引に関する独自の課税制度がないか ☑ VATやGSTなどの登録・申告義務が生じていないか ☑ 日本との租税条約の内容や条約適用のための手続きの要否を確認したか (了)
期中会計基準を学ぶ 【第7回】 (最終回) 「開示(表示及び注記)」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、開示(表示及び注記)に関する規定について解説する。 本稿では解説しないが、「<補足文書>実務対応報告及び移管指針において定めている期中の取扱い」が公表されており、実務対応報告及び移管指針において定めている期中財務諸表における会計処理及び開示に関する定めの内容について記載されているので、実務において、適宜参照していただきたい。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 基本的な考え方 期中会計基準は、原則として、「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)の定め及び考え方を取り入れた「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号)における定め及び考え方を引き継いでいる(期中会計基準BC34項)。 そして、期中会計基準BC19項(2)に記載のとおり、他の企業会計基準及び企業会計基準適用指針における期中財務諸表に関する注記事項の取扱いを取り込むにあたり、期中財務諸表の注記事項に関する基本的な考え方について、次のように整理している(期中会計基準BC34項)。 Ⅲ 期中財務諸表の科目の表示 期中財務諸表の科目の表示について、次のように規定している(期中会計基準21項、22項)。 期中適用指針では、期中財務諸表の科目の集約記載の取扱いについて、詳細な規定を設けている(期中適用指針32項、33項)。 Ⅳ 表示方法の変更 期中財務諸表の表示方法を変更した場合、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)14項に準じて財務諸表の組替えを行う(期中会計基準23項)。 ただし、財務諸表の組替えが実務上不可能な場合には、財務諸表の組替えが実行可能な最も古い期間から新たな表示方法を適用する(期中会計基準23項)。 Ⅴ 注記事項 期中会計基準は、期中財務諸表に関する注記事項を規定しており、その一部を紹介すると、次のとおりである(期中会計基準24項)。 期中適用指針では、注記事項に関して、詳細な規定を設けている(期中適用指針34項~67項)。 期中連結財務諸表を作成する場合には、期中会計基準24項に加えて、連結の範囲に含めた子会社、持分法を適用した非連結子会社及び関連会社に関する事項その他連結の方針に関する事項について、重要な変更を行ったときは、その旨及びその理由を注記しなければならない(期中会計基準25項)。 期中個別財務諸表を作成する場合には、期中会計基準24項に加えて、関連会社に持分法を適用した場合の投資の額及び投資損益の額などを注記する(期中会計基準26項)。 なお、「後発事象に関する会計基準」(企業会計基準第41号)においては、財務諸表の公表の承認に関する注記(「後発事象に関する会計基準」10項)が求められているが、国際的な会計基準においては期中財務諸表に当該注記は求められていないこと、また、期中財務諸表の開示について適時性に係るより強い制約があることを踏まえ、期中適用指針では当該注記を求めていない(期中適用指針BC25-3項)。 Ⅵ 6か月ごとより高い頻度で期中財務諸表を作成する場合の固有の取扱い 1 注記事項 6か月ごとより高い頻度で期中会計基準に従い期中財務諸表を作成する場合には、期中会計基準24項から26項の注記事項に加えて、期中財務諸表において次の事項を注記しなければならない(期中会計基準32項)。 なお、注記事項の記載に際しては、期中適用指針の規定にも注意する。 2 期中キャッシュ・フロー計算書の開示の省略 期中会計基準28項に従い、期中キャッシュ・フロー計算書の開示の省略を行った場合には、期中会計基準24項(18)の注記を要しない。 ただし、期首からの累計期間に係る有形固定資産及び無形固定資産(のれんを除く)の減価償却費並びにのれんの償却額(負ののれんの償却額を含む)を注記する(期中会計基準33項)。 3 第一種中間財務諸表等における開示 6か月ごとより高い頻度で期中財務諸表を作成する場合において、期中会計期間に取引が行われたときに注記が求められる次の事項については、最初の期中会計期間において開示を行った場合であっても、第一種中間財務諸表等の作成にあたっては、中間会計期間において取引が行われたことになるため、第一種中間財務諸表等において開示を行うこととなる(期中適用指針BC30項)。 Ⅶ 終わりに 「期中会計基準を学ぶ」の連載は、今回の【第7回】で終了することとなる。 期中会計基準は、基本的に、「四半期財務諸表に関する会計基準」と「中間財務諸表に関する会計基準」の定め及び考え方を引き継いでいることから、実務に与える影響は限定的なものと考えられる。 今回の連載が少しでも実務に役立てば幸いである。 (連載了)
従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第25回】 「社内で会社・上司を批判する従業員を解雇できるか」 弁護士 柳田 忍 【Question】 当社の従業員Xが社内で会社批判を繰り返し、若手従業員を煽動したりしており、大変困っています。Xは当社の設立時からのメンバーで、長年当社の発展に尽くしてきており、会社批判も当社や当社の従業員のことを思ってのことのようなので、やんわりと受け流しているのですが、正直なところ、手を焼いています。 また、Xは社内でそれなりの発言力を持つため、若手従業員への悪影響も心配です。Xには辞めてもらった方がよいのではないかと考えていますが、自分から辞める気はなさそうです。Xを解雇することは可能でしょうか。 【Answer】 従業員による会社批判は、それだけで直ちに解雇理由となるものではありません。 他方、批判が会社の改善を目的とするものであり、その内容に一定の合理性があるからといって、解雇が常に否定されるわけでもありません。 まずは、Xに対して、主張内容の正誤ではなく、批判の表現や方法・態様が職制及び組織秩序の維持という観点から妥当でないことを指導し、指導を行っても改善がみられない場合には、その経緯を踏まえて解雇の可否を慎重に判断することになると思います。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに 会社の経営方針や上司の指導方針について批判を繰り返す従業員への対処法についての相談を受けることがある。 例えば、会社の立ち上げ当初からのメンバーだが、徐々に経営陣と見解が合わなくなってきて、社内で公然と経営陣の批判を行っている、とか、幹部候補として採用した中途社員のパフォーマンスが会社が期待したほどではなく、低評価を与えられた当該中途社員が反発して会社や上司の批判を行っている、といった内容である。 共通しているのは、当該従業員は、自分の見解や姿勢が正しく、間違っているのは会社や上司である、と主張していることである。経営方針や指導方針などは明確に正しい、または、誤っているといった評価が難しいことも多いし、また、従業員の主張があながち誤っているとはいえなかったりする場合には、誤りを指摘して改善を求める、といったプロセスに苦慮することにもなる。 また、取引先等、社外に向けて批判行為がなされる場合は、会社の名誉や信用を毀損し得る行為に当たるため、問題となりやすいが、批判行為が社内に留まる場合は、これを問題視して指導等の対象としてよいのか、悩んでいる会社も少なくない。 以下、本稿においては、社内において会社批判・上司批判を行う従業員の解雇の有効性について論じるものとする。 2 会社批判・上司批判の解雇事由該当性の判断要素 まず、押さえておくべき点は、従業員が会社批判・上司批判を行うことが必ず法的に問題視されるわけではないということである。 会社批判・上司批判は、「上司に反抗し、または侮辱するような行動を行ったこと」や「他の従業員の業務を妨害し、または職場の風紀秩序を乱したこと」といった解雇事由に該当すると主張されることが多いが、文言上これらに該当するとしても、その動機、内容、態様等において社会通念上著しく不相当と評価される場合でなければ解雇事由に該当しない(グレイワールドワイド事件(東京地判平成15年9月22日))。 どのような場合に、「動機、内容、態様等において社会通念上著しく不相当と評価される」かについては、例えば、従業員同士で上司や同僚を侮辱・誹謗するやりとりを行ったり、経営陣を批判して他の従業員を扇動する言動を行ったりした場合には、その動機、内容等が社会通念上著しく不相当と評価される傾向にあるといえる。 一方、会社批判・上司批判が、会社を良くしようという意図に基づいていたり、批判の内容がある程度正論であった場合などには、「その動機、内容」等が社会通念上著しく不相当と認められないことが少なくないと思われる。 もっとも、会社は組織としての秩序及び指揮命令系統の維持を前提として運営されているものである。このことに照らすと、仮に会社批判・上司批判が、会社を良くしようという意図に基づいていたり、ある程度正論であったとしても、職制・組織維持の観点からそのような批判をすべきではなく、その旨を説明して指導したにもかかわらず、改善しない場合などにおいては、「動機、内容、態様等において社会通念上著しく不相当と評価される」可能性が高まるのではないかと思われる。 3 解雇の相当性と指導・警告の必要性 解雇事由該当性が認められても、解雇に客観的に合理的な理由及び社会的相当性(相当性)がなければ解雇は無効となる(労働契約法16条)。 特に、従業員の批判が会社の改善を意図したものであり、その内容にも一定の合理性がある場合には、事前に具体的な問題点を示して指導・警告を行い、改善の機会を与えたにもかかわらず問題行動が継続したなどの事情がない限り、解雇の社会的相当性が否定される可能性は高いと考えられる(前掲【参考②】のセコム損害保険事件においても、職制を通じた指導、業務指示及び人事部門等による警告が繰り返されていたことなどを踏まえ、普通解雇としての有効性が認められている。)。 4 会社の対応 会社としては、従業員の主張の当否のみを問題とするのではなく、問題となる具体的な言動、その表現方法及び職場秩序への影響を確認する必要がある。その上で、従業員の主張が正しいか否かとは別に、侮辱的な表現を用いたり、職制を無視して他の従業員に働きかけたりする方法で批判を行うことは、職制及び組織秩序の維持という観点から適切でないことを説明し、指導すべきである。 また、適切な意見表明の方法や経路を示し、本人の説明を聴いた上で改善の機会を与えることが望ましい。解雇は、このような指導を行っても問題行動が改善されない場合に、慎重に検討すべきである。 (了)
〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第35回】 「申立て書類について理解しよう(その4)」 ~後見人等候補者事情説明書について~ 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 【Q】 成年後見開始の審判申立てには、後見人となる候補者に関する書類も提出が必要であると聞きました。どのような書類が必要になるのでしょうか。 【A】 成年後見開始の審判申立ては、申立人側から成年後見人の候補者の希望を述べることができます。家庭裁判所が申立人の希望した候補者が成年後見人として相応しいかを判断するために、「後見人等候補者事情説明書」を添付する必要があるほか、候補者の「住民票又は戸籍附票」(発行から3ヶ月以内のもの)を添付する必要があります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● ◎ 後見人等候補者事情説明書 成年後見開始の審判申立てには、申立人が希望する候補者が成年後見人として相応しいかを家庭裁判所が判断するために、「後見人等候補者事情説明書」を添付することになります。候補者の年収や預貯金など、あまり開示したくないと思われる情報も記載する必要がありますが、適切な判断をしてもらうために正確に記載をしていく必要があります。ただし、年収についての公的証明書や通帳のコピーの添付が求められるわけではありません。 後見等候補者事情説明書の主な記載事項は次のとおりです。 (1) 候補者の氏名、住所、連絡先 候補者の氏名、住所、連絡先を記載します。連絡先については、裁判所名で電話をすることに支障があるかや、裁判所から連絡するに当たり留意すべきことも記載することができます。これは裁判所からの電話により、成年後見制度の利用に向けて動いていることを親族等に察知され、トラブルになることがありうるためです。 (2) 候補者の生活状況、健康状態など 候補者の職業、勤務先、同居している人の情報、年収、資産、負債、健康状態、学歴や職歴について記載をします。一般的な感覚ではあまり開示したくない情報といえますが、成年後見人として本人の財産を管理し、身上保護をしていくためには、候補者が経済的、健康的に問題なく生活できていることが前提となります。適切な判断をしてもらうために必要と割り切って記載をしていくとよいでしょう。 (3) 候補者が未成年者や成年後見人等を解任されたことがないか等 候補者に次の事情がないかを記載します。 成年後見人に就任するのに相応しくない事情の調査のために記載するものですが、該当するものがなければ、いずれにも該当しないと記載することになります。 (4) 本人との交流状況等 候補者と本人の関係性(親族であるか否か等)や、同居の有無、本人との家計の状況(同一の家計であるか)、候補者が行っている介護や援助について記載をします。 (5) 本人と候補者の間で金銭の貸借、立替えなどがあるか 本人と候補者の間で金銭の貸し借りや、担保提供、保証、立替え等があるかについて記載をします。本人と候補者との間の利害関係を明確にするためですが、これらの事情がある場合には借用書や立替払を示す領収書などを添付する必要があります。 (6) 候補者となった経緯や事情 候補者となった経緯や事情を記載します。仮に税理士が候補者となるのであれば、本人の財産を把握していることや、士業として公正な立場で財産の管理ができることなどを記載していくことになると思われます。 (7) 本人の財産管理と身上保護に関する方針 本人の財産管理や身上保護についての方針を記載します。現状を維持するのであればその旨を記載し、相続により財産を取得したり、施設入居をすることが予定されている場合には、その旨を記載します。 (8) 成年後見人の選任手続についての理解 候補者が成年後見人の選任手続について次の点を理解しているかを記載します。 本連載でも何度か解説をしている注意点ですが、候補者が認識をしていないとトラブルにつながるため、しっかりと確認をするという意味があります。 (9) 成年後見人の役割等について 候補者が成年後見人の役割について理解しているか、成年後見人に選任された場合には、本人の意思を尊重して財産管理などの職務を適切に行うことに同意するかについて記載をします。 【記載例:後見人等候補者事情説明書(抜粋)】 (※) 裁判所ホームページより転載(筆者が一部抜粋) (了)
B PJ Bookmark ── October 2026 ── ◇ その生前贈与、 渡したあとのことまで考えていますか? 年の瀬が近づくと、「年内に贈与を済ませておきたい」という相談が増えてくるかと思います。 暦年課税か相続時精算課税か、誰に何を渡すか・・・生前贈与は、相続を待たずに財産を動かせる数少ない手段です。 ところが実務で問題になるのは、制度の中身そのものよりも、その手前や先にあることが少なくありません。要件のカウントを一つ間違えただけで特例が使えなくなり、届出書を一枚出し忘れただけで課税方式が変わり、うまく渡せたはずの財産が数年後にかえって家族を悩ませる。 今回は「生前贈与・資産承継」を切り口に、渡す前・渡すとき・渡したあとで実務がつまずくポイントを、分野を横断して5本ご紹介します。 〇 「渡せば終わり」ではない贈与の実務 まず、配偶者への贈与です。婚姻期間20年の夫婦間で使える贈与税の配偶者控除は定番の対策ですが、要件の数え方を誤ればその年の贈与は無駄になり、渡したあとの財産管理まで見ておかないと別の問題が待っています →1本目。 税務 〔失敗事例から考える〕この相続対策の問題はドコ!? 【第2回】「贈与税の配偶者控除に関する失敗事例(その1)」~「婚姻期間」のカウントミスを原因とする贈与契約の不成立と自宅管理の未対応~ 執筆:公認会計士・税理士 木下勇人 婚姻期間20年を記念して妻に自宅を贈与しようとしたところ、その年が来る前に妻が認知症を発症してしまった、そんな事例から始まる一本です。失敗の直接の原因は、配偶者控除の「婚姻期間20年」を「1月1日現在」で数えてしまったカウントミス。住宅取得等資金贈与の年齢要件などと混同しやすい落とし穴です。ただ、この記事の読みどころはその先にあります。仮にミスがなく贈与できていたとしても、妻の認知症によって共有名義の自宅は担保にも売却にも出せなくなる。「課税関係さえよければいい」では済まされない、財産管理まで見据えた助言とは何かを考えさせられます。「税理士=財産管理の一翼を担う存在」という筆者の言葉が、読み終えたあとに残る記事です。 この記事を読む 次は、子や孫へ渡すときの課税方式の選択です。相続時精算課税を選ぶつもりが、届出書の提出を失念して暦年課税になってしまった税賠事例から、手続の重さを確認します →2本目。 税務 「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント 【事例151(贈与税)】「期限内の相続時精算課税選択届出書及び贈与税申告書の提出を失念したため、結果として暦年課税制度での申告となり、過大納付が発生してしまった事例」 執筆:税理士 齋藤和助 相続時精算課税で申告する依頼を受け、届出書も申告書も作成していた。それなのに、提出そのものを失念してしまった。届出書が一枚間に合わなかっただけで課税方式は暦年課税に切り替わり、過大納付が生じて賠償請求に至った事例です。単純な提出ミスだからこそ、申告書自体のダブルチェック体制で防げるという指摘は重く響きます。あわせて、令和5年度改正による生前贈与加算期間の7年への延長や、精算課税への110万円基礎控除の創設といった有利選択を誤らないための知識も整理されています。制度を理解していることと、手続をやり切ることは別なのだと、あらためて突きつけられる一本となっています。 この記事を読む 視点を法務に移すと、孫への承継では養子縁組という選択肢が出てきます。孫養子にどれだけの節税効果があるのか、具体的な数字とともにたどります →3本目。 法務 養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第16回】「孫養子の相続税の節税効果」 執筆:弁護士・税理士 米倉裕樹 孫を養子にすると相続税はどれだけ変わるのか。この記事は、当初の財産が10億円・5億円・2億円という3つのケースについて、何も対策しない場合、孫を養子にした場合、子の配偶者を養子にした場合を、実際の税額まで計算して比較しています。孫養子には2割加算がかかるにもかかわらず、世代を飛ばして承継できることで、トータルでは相応の節税効果が生じる。数字で示されるとより説得力があります。筆者は弁護士でもあり、子の配偶者を養子にした場合の離婚・再婚リスクなど、税額だけでは見えない法務の懸念にも目を配っているので読みごたえがあります。節税手段として語られがちな養子縁組を、法的な効果とリスクの両面から捉え直せる一本です。 この記事を読む オーナー経営者の相続対策としてよく使われる「毎年の贈与」にも、連年贈与や名義預金とみなされる落とし穴があります。事業承継の現場からその勘どころを押さえます →4本目。 会計 事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第5回】「毎年同額の金額を贈与する際の注意点」 執筆:太陽グラントソントン税理士法人(事業承継対策研究会) 「子に毎年1,000万円ずつ贈与していきたい」。事業と資産を引き継ぐための、よくある相談です。ところがこの方法には、「もともと決まっていた総額を分割して渡しただけ」と見られて定期金の贈与とされるリスクや、通帳や印鑑を親が管理していたために名義預金とされるリスクがあります。記事では、こうした落とし穴を避ける鍵が「贈与の都度、双方が合意していること」にあると示し、贈与契約書の作成、受贈者による財産管理、受贈者名義での申告といった具体策まで落とし込んでいます。オーナー経営者への助言で使う場面の多い、実務直結の一本です。 この記事を読む 最後は、ベテランコンサルタントの実例語りです。よかれと思った節税策が時代や家族の変化で空回りする様子を通じて、「対策の優先順位」そのものを問い直します →5本目。 読み物 老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第8回】「その相続対策、早計ではありませんか?」~相続増税と時代の流れで、変わる"優先順位"~ 執筆:財務コンサルタント 木山順三 締めくくりは、ベテラン財務コンサルタントの体験談です。逆縁で娘婿が再婚し、可愛がってきた孫との縁が薄れてしまった話。相続時精算課税を適用したことを15年後に忘れていた話。妻にと思って贈与したのに、その妻に先立たれてしまった話。よかれと思った節税策が、家族や時代の変化で空回りする実例が並びます。そのうえで筆者は、自身の「遺産分割の優先順位」が長年の経験を経てどう変わってきたかを率直に語ります。節税ありきで対策を急ぐ前に、一度立ち止まって考えたくなる、そんな味わい深い一本です。 この記事を読む Afterword 今回は「生前贈与・資産承継」を切り口に、配偶者・子・孫それぞれへの承継と、その落とし穴を5本ご紹介しました。要件の確認、手続の徹底、法務の視点、そして「そもそも急ぐべきか」という問い直しまで、贈与という一つの行為にこれだけの目配りが要るのだと、あらためて感じます。 PJには、ほかにも相続・贈与にまつわる記事が数多くあります。年内の対策を相談される機会が増えるこの時期、気になるテーマがあればぜひ探してみてください。 Profession Journal (了)