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暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第63回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第63回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   24 ビットコインETFと分離課税(その8):まとめ これまで、米国のビットコインETFのうちBitwise Bitcoin ETFを取り上げ、日本の居住者が本信託に係る本件持分を米国の市場で購入し、譲渡した場合(冒頭の第3のルートを通った場合。本連載第49回参照)に、分離課税に係る本件分離課税特例が適用される可能性があるという見解を述べた。 このような見解が正しいとすると、米国のビットコインETFが日本の分離課税の議論に与える影響は過小評価できない。特に、現物の暗号資産と国内で組成等される暗号資産ETFの譲渡も同様に分離課税の対象とすべきという観点、あるいは、逆に、いずれも分離課税の対象とならないように法整備するという観点から議論がなされる可能性が高まるのではないか。暗号資産デリバティブへの分離課税の適用や、現物の暗号資産、暗号資産ETFの取扱いとの整合性も議論になりうる。 もっとも、これまで考察してきたところによれば、上記のルートは決して平坦なものではなく、特に、本信託が「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」(法法2二十九の二イ)に該当するかという点が課題となりうる。ここでいう証券を「財産法上の権利義務に関する記載のされた紙片」に限定する解釈を採用するならば、受益権を表示する「紙片」を発行する旨の定めがない本信託は上記信託に該当しないことになる。 他方で、本連載では、そのような解釈を採用することには問題があること及び「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」には、少なくとも社債等振替法の振替制度に類似した振替式を採用し、(電磁的方式により)受益権を発行する定めのある外国信託も含まれるとする見解が解釈論として検討に値することを指摘してきた。 このような指摘が正しいことを前提とするならば、本信託は法人課税信託に該当し、本件分離課税特例が適用されるという第3のルートの視界が開けてくる。 もっとも、次のような点に議論の発展性を見いだすことが可能であるし、さらに検討すべき余地も存在することを見過ごすことはできない。 ③に関連して、本信託の日本法における信託、外国投資信託、外国投資法人等該当性について参考となる議論を紹介する。 外国のファンドが、投信法上の外国投資信託と、同法2条25項の外国投資法人(外国の法令に準拠して設立された法人たる社団又は権利能力のない社団で、投資証券、新投資口予約権証券又は投資法人債券に類する「証券」を発行するもの)の中間的性格を持っている場合、いずれに該当するかが問題となる。 この点について、明確な指針があるわけではないため、どちらに、より似ているかという観点から判断するほかないが、米国マサチューセッツ州のビジネストラストや米国デラウェア州の法定信託は、投資法人に類するガバナンス組織を有しているものの、信託として組成されていることなどから伝統的に外国投資信託として取り扱われているという指摘がある(本柳祐介「外国ETF・外国ETFJDRの上場に関する法的論点と実務」商事法務2034号39頁参照)。 また、次のような見解も示されている(長島・大野・常松法律事務所編『アドバンス 金融商品取引法〔第3版〕』19~20頁(商事法務、2019)参照)。 また、次のような指摘もある(平川雄士「借用概念論に関係する国際的企業租税実務上の諸問題」金子宏編『租税法の発展』361~362頁(有斐閣、2010)参照)。 なお、財務省のホームページでは、振替国債等の利子の課税の特例(措法5の2)の適用要件を満たす適格外国証券投資信託に、このFonds Commun de Placementが含まれることが明らかにされている。同特例の外国投資信託も投信法2条24項の外国投資信託である。 上記のような指摘や見解に触れると、本信託の日本法における信託、外国投資信託、外国投資法人等該当性については、さらに精査をする余地があるのではないかという疑念が強まる。特に、本信託が信託ではなく、法人又は人格のない社団等に該当することにより本件分離課税特例の適用が肯定されるようなルートの探索も必要かもしれない。   (了)

#No. 610(掲載号)
#泉 絢也
2025/03/13

2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   Ⅲ 法定実効税率 2024年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正大綱に、2026年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税の創設が明記され、2025年2月4日に防衛特別法人税の導入を盛り込んだ税制改正法案が国会に提出された。 防衛特別法人税の導入が盛り込まれた税制改正法案が2025年3月31日までに国会で成立した場合には、2025年3月期決算から、当該防衛特別法人税を考慮して法定実効税率を算定する必要がある。 また、2025年3月31日に決算日を迎える企業の税効果会計に関する取扱いを明らかにするため、2025年2月20日にASBJより「補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(以下、「補足文書」という)」が公表された。 防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定のため、一時差異等の解消時期に応じて、法定実効税率を使い分ける必要がある。具体的には、①2026年4月1日前に開始する事業年度中に解消する見込みの一時差異等については改正前の税率で計算した法定実効税率を使用し、②2026年4月1日以後に開始する各事業年度中に解消する見込みの一時差異等については改正後の税率で計算した法定実効税率(防衛特別法人税を織り込んだ法定実効税率)を使用することになる。   1 防衛特別法人税 防衛特別法人税は、以下のように計算される。 (※1) 基準法人税額とは、以下の制度を適用しないで計算した法人税額をいう。 (※2) 税額控除は、以下のとおりである。   2 補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて 防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定であるため、2025年3月31日に終了する事業年度の決算にあっては、当期税金に係る影響はない(補足文書7)。 改正税法が2025年3月31日までに成立した場合、同日に決算日を迎える会社は、税効果会計の適用における2026年4月1日以後に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に際して、防衛特別法人税の影響を反映する必要がある(補足文書11)。また、法定実効税率は、以下の算式により算定する(補足文書13)。 防衛特別法人税の課税標準の計算において法人税額から基礎控除額として500万円を控除することが予定されているが、上記算式においては考慮されていない(補足文書13(注))。   3 法定実効税率 2026年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税が適用される予定である。上述のとおり、一時差異等の解消時期に応じて法定実効税率を使い分ける必要がある。 ◎東京都で外形標準課税適用法人の場合 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ◎東京都で外形標準課税「不」適用法人の場合 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   4 注記 (1) 影響額の注記 法人税等の税率が変更された場合、有価証券報告書において以下の注記が必要である(財務諸表等規則8の12③、連結財務諸表規則15の5③)。修正額を注記する必要があるため、改正前と改正後の法定実効税率による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を算定する必要がある。 なお、計算書類では、会社計算規則において、必ずしも上記の注記は求められていない。 (2) 負担率の注記 有価証券報告書においては、法定実効税率と負担率の差異の注記が必要である(財務諸表等規則8の12②、連結財務諸表規則15の5②)。そして、防衛特別法人税により、例えば、以下の差異が生じることから、これからの差異の影響について、差異の内訳項目として注記が必要か検討する必要がある。   Ⅳ 税制改正 2025年3月期決算における留意すべき税制改正として、以下が挙げられる。   1 賃上げ促進税制の見直し 令和6年度税制改正において、以下のとおり、賃上げ促進税制の見直しが行われている(財務省「令和6年度税制改正(令和6年3月発行)」3 法人課税(1)賃上げ促進税制の強化)。 (1) 賃上げ要件等 (2) 教育訓練費 人材投資や働きやすい職場づくりへのインセンティブを付与するため、教育訓練費を増やす企業への上乗せ措置の要件を緩和するとともに、子育てとの両立支援や女性活躍支援に積極的な企業への上乗せ措置が創設された(財務省「令和6年度税制改正(令和6年3月発行)」3 法人課税(1)賃上げ促進税制の強化)。 (3) 改正前後の概要 改正前と改正後の概要は、以下のとおりである。 (出所:財務省「令和6年度税制改正(令和6年3月発行)」P.5)   2 税制適格ストックオプションの適格要件の見直し 令和6年度税制改正において、スタートアップの人材獲得力向上のため、税制適格ストックオプションについて利用がしやすいように以下のとおり、改正が行われている。 (1) 年間権利行使価額の限度額の引上げ (2) 発行会社自身による株式管理スキーム 譲渡制限株式について、発行会社による株式の管理がされる場合には、証券会社等による株式の保管委託に代えて発行会社による株式の管理も可能となった。 (出所:経済産業省「ストックオプション税制」) (3) 社外高度人材に対するストックオプション税制 ストックオプション税制の適⽤対象者が、社内の取締役及び従業員等に加えて、⾼度な知識⼜は技能を有する社外の高度人材(外部協力者)にまで拡⼤された。 (出所:経済産業省「社外高度人材に対するストックオプション税制」) (4) 税制適格ストックオプションのまとめ 税制適格ストックオプションの適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要がある。 (出所:経済産業省「ストックオプション税制」)   3 特定税額控除規定の不適用措置の見直し 令和6年度税制改正において、特定税額控除規定の不適用措置について、以下の見直しが行われた上で、その適用期限が3年延長された。 〈特定税額控除規定の不適用措置の判定フロー〉 (出所:国税庁「令和6年度 法人税関係法令の改正の概要」P.14)   4 交際費等の損金不算入制度の見直し 交際費等は平成18年度税制改正により、会議費相当とされる1人5,000円以下の飲食費は交際費等の範囲から除外され、全額損金算入されている。この5,000円以下の飲食費の金額基準について、会議費の実態等を踏まえ、令和6年度税制改正において、10,000円以下まで引き上げられた。 (出所:財務省「令和6年度税制改正(令和6年3月発行)」P.8)   5 第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税の見直し 法人が保有する暗号資産のうち、活発な市場が存在するものについては、期末に時価評価し、評価損益は課税対象とされている。このうち、「自己」が発行した暗号資産で一定のものについては、期末時価評価課税の対象外とされているが、令和6年度税制改正において、「発行者以外の第三者」が継続保有する暗号資産についても、一定の要件の下、期末時価評価課税が不要とされた。 (出所:財務省「令和6年度税制改正(令和6年3月発行)」P.8)   6 グローバル・ミニマム課税 2021年10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税への対応が求められた。グローバル・ミニマム課税とは、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業を対象に、一定の適用除外を除く所得について各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組みをいう。また、グローバル・ミニマム課税には、以下の3つのルールがある。 そして、令和5年度税制改正において、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税額」が創設され、IIRが法制化された。令和6(2024)年4月1日以後開始する事業年度の国際最低課税額に対する法人税から適用される。 他のルールであるUTPR及びQDMTTについては、OECDにおいて令和5年以降詳細が議論されるものは、国際的な議論を踏まえた結果、検討されることになり、令和7年度税制改正大綱に記載(下記、「Ⅴ 令和7年度税制改正大綱」参照)されている。 (出所:財務省「令和5年度税制改正(令和5年3月発行)」P.11) 国際最低課税額確定申告書を最初に提出すべき場合(一定の場合に限る)には、その対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月以内(適用初年度は1年6ヶ月以内)に国際最低課税額確定申告書を提出する。 また、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、その特定多国籍企業グループ等の特定多国籍企業グループ等報告事項等(※)を各対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月以内(適用初年度は1年6ヶ月以内)に、e-Taxを使用する方法で、所轄税務署長に提供する。 (※) 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称、国別実効税率、グループ国際最低課税額等の事項を税務当局に提供する制度として、情報申告制度が創設されている。具体的には、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称、その構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率、その特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額、特定の規定の適用を受けようとする旨及び特定の規定の適用を受けることをやめようとする旨等の事項を提供する。   7 外国子会社合算税制の見直し グローバル・ミニマム課税の導入により追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、令和5年度税制改正において、外国子会社合算税制(CFC税制)について、①特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)の適用免除要件である租税負担割合の引下げ(30%⇒27%)、②書類添付義務の緩和等が行われた。   Ⅴ 令和7年度税制改正大綱 令和7年度の税制改正大綱のうち、特に重要なものとして以下が挙げられる。なお、防衛特別法人税については、「Ⅲ 法定実効税率」を参照されたい。   1 新リース会計基準に関する税制改正 (1) オペレーティング・リース 各事業年度にオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合に、その取引に係る契約に基づきその法人が支払う金額があるときは、その金額のうち債務の確定した部分の金額は、その確定した日の属する事業年度に損金算入することとされた。つまり、従来から実質変更はない。 新リース会計基準では、オペレーティング・リースも原則、資産計上される。そして、会計上、期間に応じて減価償却費及び支払利息で費用計上されるが、税務上は、支払時に損金算入される。 そのため、会計と税務で差異が生じるため、税務調整が必要であり、かつ、税効果にも影響する。 〈オペレーティング・リースの処理〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) 所有権移転外ファイナンス・リースの減価償却 2027年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約に係るリース資産の減価償却について、リース期間定額法の計算において取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円(備忘価額)まで償却できる。 ただし、2027年3月31日までに締結された所有権移転外リース契約に係るリース資産(その取得価額に残価保証額が含まれているものに限る)については、2025年4月1日以後に開始する事業年度の償却方法につき改正後のリース期間定額法により償却できる。 (3) リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止 リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例は、廃止される。改正後は、リース資産の引渡し時に一括で譲渡損益を計上する。 ただし、2025年4月1日前にリース譲渡を行った法人の2027年3月31日以前に開始する事業年度において行ったリース譲渡について、延払基準の方法(同日後に開始する事業年度にあっては、リース譲渡に係る利息相当額のみを同日後に開始する各事業年度の収益の額とする方法に限る)により収益の額及び費用の額を計算することができる。また、2025年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する事業年度において延払基準の適用をやめた場合の繰延リース利益額を5年均等で収益計上する(消費税は10年均等で資産の譲渡等の対価の額とする)ことができる。   2 グローバル・ミニマム課税 令和5年度税制改正において、以下のIIRは法制化されており、残りのUTPRとQDMTTについて、令和7年度税制改正大綱に記載された。 (出所:経済産業省「令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正について」P.22)   3 外国子会社合算税制の見直し グローバル・ミニマム課税の更なる法制化により、対象企業への追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、合算時期の見直しと申告書添付書類の簡素化が令和7年度税制改正大綱に記載された。 (出所:経済産業省「令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正について」P.21) (了)

#No. 610(掲載号)
#西田 友洋
2025/03/13

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第166回】株式会社ジェイ・エス・ビー「特別調査委員会調査報告書(開示版)(2024年11月21日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第166回】 株式会社ジェイ・エス・ビー 「特別調査委員会調査報告書(開示版)(2024年11月21日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【株式会社ジェイ・エス・ビー特別調査委員会の概要】   【株式会社ジェイ・エス・ビーの概要】 株式会社ジェイ・エス・ビー(以下「JSB」と略称する)は、1990(平成2)年7月、前身である株式会社京都学生情報センターで行っていた学生を主な対象とした物件の仲介業を引き継ぐ形で、設立。不動産賃貸管理事業を主たる事業とし、国内連結子会社9社を有する。 元代表取締役会長であり、調査時点では相談役である岡靖子氏(報告書上の表記はXa氏)。以下、「岡靖子相談役」と略称する)が自身の資産管理会社と合わせて発行済み株式の39.30%を有する大株主である。連結売上高69,529百万円、連結経常利益7,886万円、資本金4,336百万円。従業員数1,156名(2024年10月期実績)。本店所在地は京都府京都市下京区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、有限責任監査法人トーマツ京都事務所(以下、「監査法人トーマツ」と略称する)。   【特別調査委員会による調査報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 2024年5月頃、JSB常勤監査役の岡田健一氏(報告書上の表記は「Xk氏」。以下「岡田常勤監査役」と略称する)に、当時、専務取締役であった小菅香織氏(報告書上の表記は「Xd氏」。以下「小菅元専務」と略称する)が海外視察・研修に家族を同伴し、その費用を会社に負担させているとの情報が入った。岡田常勤監査役は当該情報を監査役会で共有し、調査を開始したところ、7月には、別途、同趣旨の通報もあったことから更に調査を行い、8月30日の臨時監査役会において、9月13日に開催される定時取締役会において調査内容の報告を行うことを決議した。 9月13日開催の定時取締役会の席上、岡田常勤監査役は、会社法382条に基づく監査役の報告として、小菅元専務が親族の旅行代金等の私的な費用のために経費を不正に使用した疑いが生じた旨を述べ、出席者に対して「専務取締役による経費不正使用の疑いについて」と題する資料を用いて説明を行った。 次に、事前に情報共有を受けていた取締役会議長で、代表取締役社長の近藤真彦氏(報告書上の表記は「Xc氏」。以下、「近藤社長」と略称する)は、JSBから独立した中立かつ公正な外部専門家並びに独立社外取締役及び独立社外監査役で構成される調査委員会を設置し、小菅元専務の経費使用に関する事実調査を実施する旨を内容とする議案を上程し、上記疑いに関し、小菅元専務に意見・反論を求めた上で採決した。 採決の結果、利害関係を有することから決議に参加しなかった小菅元専務のほか、鈴木康之社外取締役(報告書上の表記は「Xh氏」。以下「鈴木社外取締役」と略称する)及び同日の取締役会を欠席した白石徳生社外取締役(報告書上の表記は「Xg氏」。以下「白石社外取締役」と略称する)以外の取締役が上記議案に賛成し、同議案は承認可決され、特別調査委員会が設置された。 2 特別調査委員会が認定した事実関係による調査結果の概要 (1) 調査結果の概要 特別調査委員会は、調査の結果、2019年8月から2024年8月までの期間において、小菅元専務の家族の旅費をJSBが負担した出張、視察旅行、慰安旅行等が計18件あり、JSBが負担した金額は総額で1,600万円にあがること、また、18件のうち6件では、他の取締役の家族の旅費についても、JSBが負担した金額が総額で300万円であったとした。 さらに、特別調査委員会は、JSBが保管している金券類及びワインセラーの在庫棚卸しを実施した結果、小菅元専務が管掌する秘書室において、簿外資産として、総額1,300万円(計4,900枚)の旅行券・QUOカード・商品券等及び総額3,200万円(計784本)のワインが存在していたことを確認した。 (2) 小菅元専務の家族の交通費及び宿泊費としてJSBが支出した金額 特別調査委員会が、小菅元専務の家族の交通費及び宿泊費をJSBが負担したと認定した18の事案は、次表(筆者作成)のとおりである。うち3事案については、秘書室が簿外資産として管理していた旅行券を使用したため、JSBの稟議起案や経費申請は存在しておらず、1事案については、第三者の航空券を購入すると偽った稟議起案が行われている。なお、稟議申請には、取締役の家族が参加するという事実にはまったく触れていない。 小菅元専務以外の取締役等で、家族を帯同した記録が残っているのは、岡靖子相談役、元代表取締役社長の田中剛氏(報告書上の表記は「Xb氏」。以下、「田中元社長」と略称する)、近藤社長、林健児取締役(報告書上の表記は「Xe氏」。以下、「林取締役」と略称する)、山本貴紀取締役(報告書上の表記は「Xe氏」。以下、「山本取締役」と略称する)及び元取締役の金井宏之氏(報告書上の表記は「Xn氏」。以下「金井元取締役」と略称する)の合計7名であり、白石社外取締役は、事案18において、小菅元専務による家族分の航空券購入を隠蔽するために、名前が利用されていたことが判明している。 〈表:特別調査委員会により小菅元専務による経費の私的使用が認められた事案〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (3) 簿外資産として保管していた金券類 特別調査委員会が、JSB経理部の協力を得て、秘書室による旅行券・商品券・QUOカード等の金券類の購入データを抽出したところ、調査対象期間において合計20,357,498円の金券類の購入履歴があるとの報告を受けた。これら購入履歴に関する会計上の勘定科目は、主に接待交際費(手土産・お歳暮・お中元等)、福利厚生費(社員旅行や懇親会等の社内行事の景品等)、広告宣伝費(CSR活動の景品等)等である。 調査期間中、JSB事務局により、秘書室の執務室の戸棚内に保管している金券類の在庫棚卸しを実施した結果、総額13,213,500円(枚数合計4,900枚)の簿外在庫の存在が確認された(2024年9月25日時点)。 特別委員会の調査によれば、秘書室において簿外の金券類が発生した主たる要因として、秘書室が、接待交際費、福利厚生費、広告宣伝費等として金券類を購入する際に、小菅元専務の指示又は意向を受けて、実際に必要と見込まれる数量を大きく上回る過剰な数量を申請して購入していたため、使用されなかった分が簿外資産となっていた。こうした簿外の金券類のうち一部の旅行券は、上記(2)の18事案のうち3事案で、小菅元専務の家族が帯同した出張等の費用に充当されていた。 (4) 簿外資産として保管していたワイン 特別調査委員会の指示を受けて、JSB事務局が、JSBが所有しているワインセラー6箇所について、ワイン在庫の棚卸しを実施した結果、JSBが所有するワイン在庫の本数は合計2,783本であり、購入価格にして合計39,656,867円分であることが確認された。このうち、JSBの帳簿に計上されているのは1,999本(合計7,274,302円分)のみであり、それ以外の784本、購入価格にして合計32,382,565円分が、簿外の資産となっていることが判明した(2024年10月31日時点)。 特別調査委員会の調査によれば、秘書室において簿外のワイン在庫が発生した要因として、接待・贈答に際して必要と見込まれる数量を上回る数量を申請して購入したり、接待先・贈答先が具体的に決まっていないにもかかわらず、特定の接待・贈答に使用することを前提に稟議申請して購入したりしていたため、実際には使用されなかったワインが簿外の在庫として蓄積していったものである。 3 特別調査委員会による発生原因・要改善点(調査報告書96ページ以下) 特別調査委員会は、発生原因を次の5項目にまとめている。 ここでは、JSBに特有の事情である、「(3)オーナー企業意識の残存によるコーポレートガバナンス上の問題」に関する特別調査委員会の指摘事項を確認しておきたい。 まず、「(3)オーナー企業意識の残存によるコーポレートガバナンス上の問題」について、特別調査委員会は、小菅元専務が取締役になる以前から、家族同伴の旅行等について決裁資料にその旨を記載することなく損金処理する運用が存在し、家族同伴について会社法上及び税法上とるべき手続をとっていないなど、小菅元専務に限らず過去及び現在の常勤取締役らの対応に一様に問題があったといわざるを得ないとしたうえで、その原因は、JSBのかつての代表取締役兼大株主(報告書上の表記は「u氏」。2013年5月に逝去した元代表取締役会長兼社長の岡正人氏。以下「岡元会長兼社長」と略称する)との約束や、その後継となった者による容認があれば、あるいは他の常勤取締役が承認していれば、会社法・税法上問題があるとしても許されるというコーポレートガバナンスを軽視する意識が、2017年7月の上場から7年以上を経過した現在においても、JSBの常勤取締役らに色濃く残存していることに由来するものと思われると断じている。 さらに、特別調査委員会は、調査開始後の9月17日及び10月29日において、岡靖子相談役が、社内調査を中心的に実施した岡田常勤監査役を社外のホテルや喫茶店に呼び出し、近藤社長を除く常勤取締役(小菅元専務、林取締役及び山本取締役)同席の上で面談を行った事実を確認するとともに、10月29日の面談では、岡靖子相談役が、岡田常勤監査役に対して、小菅元専務の家族同伴での出張等は全取締役の共通認識であり不正ではなく、監査役会の調査は不十分であったことを指摘し、その経緯の確認、あるいは反省を求める趣旨の発言をしたことを確認したとして、相談役の肩書きを有するとはいえ、大株主である岡靖子相談役がこうした介入を行うこと自体、コーポレートガバナンス上適切でないことは論を俟たないと批判したうえで、会合に出席した小菅元専務、林取締役及び山本取締役においては、法令の規定を詳細に検討せずとも、JSBの多くの一般株主の存在を念頭に置けば、少なくとも取締役の家族同伴に伴う支出が、岡元会長兼社長との約束、あるいはその家族の意向のみで正当化し得るものか、また、会社法上の監査役の権限と責務に思いを致せば調査実施中にこのような面談を行うことが適切かについては、自ら疑問を抱くことになると思われるところ、そのような思いを抱き行動に移すことができなかったことについては、コ―ポレートガバナンスの尊重とコンプライアンスから乖離した意識が露呈したものと評価せざるを得ないとの判断を示している。 また、JSBでは、小菅元専務が、2024年5月15日開催の取締役会で、それまでの常務取締役から専務取締役に昇格することが可決されているが、それに先立つ4月22日に岡靖子相談役と小菅元専務がホテルで面談し、同日付で、組織変更案の書面に記載された小菅元専務の役職が「常務」から「専務」に変更され、岡靖子相談役の押印があることから、この専務取締役の選定手続きにも、岡靖子相談役の意向が尊重されていることがうかがえるという見解を表明している。 4 特別調査委員会による再発防止策(調査報告書101ページ以下) 特別調査委員会による再発防止策は次のとおり、大きく6項目からなっている。   【調査報告書の特徴】 特別調査委員会による調査報告書作成日付は2024年11月21日。JSBが「2024年10月期決算発表の延期に関するお知らせ」と題するリリースで、調査報告書の要約を公表したのが2024年12月13日。そして、調査報告書の全文公開は、年が明けて2025年1月15日であった。開示が遅れた理由について、JSBは、特別調査委員会による調査の後、外部専門家による追加調査を実施し、その結果、特別調査委員会による調査結果以外の新たな事実等はないことを確認していたためであると説明している。 JSBは、判明した事実が過去の各期の業績に与える影響は軽微であり、過年度有価証券報告書及び四半期報告書並びに2024年10月期の各四半期報告書の訂正はしないと言明しているが、金額的な影響はともかく、特別調査委員会調査報告書は、JSB取締役の倫理観の欠如を暴き、衝撃的であった。 1 監査法人トーマツによる会計監査 特別調査委員会による「ヒアリング対象者」リストには、JSBの会計監査を担当する監査法人トーマツの名称がない。また、報告書の中でも、監査法人と意見交換をしたことをうかがわせる表現も見当たらない。 監査法人トーマツの担当者が、会計監査の過程において、小菅元専務の家族の旅費が出張費として稟議申請された中に含まれていることを発見するのは、秘書室の担当者がそれを隠蔽するために策を弄していたこともあって難しかったことは納得できるが、多額の金券類や大量の高価なワインの購入について、その使途をきちんと調べていたのかどうか、少し気になるところである。 2 JSBによる再発防止策 JSBは、調査報告書の公開に先立つ2025年1月14日、「再発防止策の策定に関するお知らせ」をリリースし、特別調査委員会が提言した再発防止策を受けて、会社としての再発防止策を公表した。 A4用紙で8ページに及ぶ再発防止策につき、まず、その項目をまとめておきたい。 次いで、再発防止策の筆頭に挙げられている「支配的株主との適正な距離の確保」について、詳細を確認したい。 JSBは、大株主である岡康子相談役について、残存するオーナー企業意識を払拭するために、2024年12月に開催した臨時取締役会において、岡康子相談役に対し、2024年12月31日の雇用期間満了をもって退任することを求める決議を行い、岡康子相談役は、同日をもって相談役を退任した。 さらに、JSBは、支配的株主の意向を過度に尊重する傾向からの脱却を図り、緊張感ある経営を行うためにも、支配的株主の影響力低減に向けた取組みを検討し、支配的株主とも協議すること、「支配的株主と当社及び当社子会社の役職員との間における個人的な金品、その他経済的価値のある役務等の授受、提供」ならびに「支配的株主と当社及び当社子会社の役職員との間における饗応接待」を禁止した。 重ねて、支配的株主との面談については、面談時は「社外役員の同席」を必須とし、面談時期についても、「半期ごと及び定時株主総会前とし、その他取締役会で必要と認めた場合」とするとともに、支配的株主との面談については、時期・目的・内容について可能な限り取締役会に事前報告を行うとともに、面談後は次回取締役会にてその内容(結果)を報告するものと決めたことを公表した。 また、関係者の処分等として、JSBは、私的経費の弁済について、現任の常勤取締役3名(近藤社長、林取締役及び山本取締役)については、既に全額の弁済が終わっていること、退任をした過去の取締役4名(岡靖子相談役、田中元社長、金井元取締役及び小菅元専務)に対しても私的な経費の弁済を求めており、その内1名については既に全額の弁済を終えており、その他3名についても2025年1月20日までに全額弁済を求め、弁済に応じない場合は厳正に対応することを表明するとともに、現任の常勤取締役3名については、2024年10月期に関する業績連動報酬の受給を辞退するとともに、月額報酬50%の減額を2025年1月より2ヶ月間、実施することとしている。 3 開示すべき重要な不備 JSBは2025年1月29日、「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」をリリースして、同社の内部統制の開示すべき重要な不備について公表した。 同リリースで説明されている不備について、引用しておきたい。 4 取締役の異動 JSBは、2024年12月19日、「代表取締役の異動(内定)に関するお知らせ」をリリースして、近藤社長が2025年1月28日開催の定時株主総会の終了をもって代表取締役社長を退任し、後任の代表取締役には山本取締役が就任することを公表した。 さらに翌20日には、「取締役の辞任に関するお知らせ」をリリースし、小菅元専務(専務の役職は9月13日に辞任)が、一身上の理由により、取締役を辞任することを公表した。 2025年1月28日に開催された定時株主総会においては、会社側が提案した9名の取締役候補者のうち、林取締役及び山本取締役を含む4名が否決され、監査役候補者3名についても、岡田常勤監査役を含む2名が否決された。一方、JSBが定時株主総会の継続会を2月27日に開催して、事業報告や計算書類の内容報告を行うことが可決されたため、近藤社長は継続会の終結をもって、代表取締役社長を退任することとなった。 その後、2025年2月14日、JSBは「代表取締役の異動(内定・開示事項の変更)に関するお知らせ」をリリースし、1月28日開催の定時株主総会で取締役に選任された、執行役員企画開発本部長兼中日本事業部長である森高広氏を代表取締役社長に内定したことを公表した。 一連の取締役の異動、株主総会における否決によって、家族の旅費をJSBに負担させていた取締役等は一掃された結果となった。 (了)

#No. 610(掲載号)
#米澤 勝
2025/03/13

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2025年2月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2025年2月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年2月1日から2月28日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 次のものが公表されている。 ① 会計制度委員会研究報告「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」(公開草案)(内容:補助金等に関する会計処理及び開示について研究したもの。日本公認会計士協会。意見募集期間は2025年4月19日まで) ② 補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(内容:改正税法が2025年3月31日までに成立した場合を想定し、主として2025年3月31日に決算日を迎える企業における防衛特別法人税の取扱いを明らかにするもの。企業会計基準委員会)   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第6号)(内容:政策保有株式の開示について改正するもの) ② 「記述情報の開示の好事例集2024(第4弾)」(内容:コーポレート・ガバナンスに関する開示(コーポレート・ガバナンスの概要、監査の状況、株式の保有状況)に関する好事例集。金融庁)   Ⅳ 法務省令関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「会社計算規則の一部を改正する省令案」(内容:「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)の公表等を受けたもの。意見募集期間は2025年3月6日まで) ② 「会社計算規則の一部を改正する省令」(法務省令第5号)(内容:「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)を受けたものなど)   Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 法規・制度委員会研究報告第5号「インサイダー取引に関するQ&A」(内容:インサイダー取引事案の発生を受けて、今回、会員に対して改めて注意喚起するもの) ② 監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス)」の改正(内容:報酬依存度に関する取扱いが十分に理解されていないことなどについて補足するもの) ③ 財務報告内部統制監査基準報告書第1号「財務報告に係る内部統制の監査」の改正(内容:監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」に基づく要求事項と適用指針の明確化などを行うもの) ④ 期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」、期中レビュー基準報告書第2号「独立監査人が実施する期中財務諸表に対するレビュー」及び期中レビュー基準報告書第2号実務ガイダンス第1号「東京証券取引所の有価証券上場規程に定める四半期財務諸表等に対する期中レビューに関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正(公開草案)(内容:特定の事業体(Public Interest Entity(PIE)等)の財務諸表監査に特有の独立性に関する規定が期中レビューにも適用される点の明確化など。意見募集期間は2025年2月28日まで) (了)

#No. 610(掲載号)
#阿部 光成
2025/03/13

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第7回】「職種限定合意の効果」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第7回】 「職種限定合意の効果」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社はAさんを技術職として雇用しましたが、Aさんの業績が低いため、Aさんに対してその旨を説明し、「退職してほしい」と伝えました。しかしAさんは、「他の仕事だったらできるのだから、配転すべきだ」と主張して、退職を拒んでいます。 当社としては、Aさんを技術職以外で勤務させるつもりはないため、困惑しています。 このようなことが生じないよう、雇用契約締結時点でできることはあるでしょうか。 【Answer】 「職種限定合意」をすることが考えられます。 もっとも、職種限定合意があるからといって、当該職種に適さない従業員を必ず解雇できるとは限りません。 その職種が高度な専門性を有すること、かかる専門性に着目して雇用契約を締結することなどを雇用契約締結時に明示しておくべきものと考えます。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 職種限定合意とは 職種限定合意とは、職種や業務内容を特定する合意を指す。 従前は、雇用契約書や労働条件通知書等において職種限定合意が明示されることは多くはなく、裁判例において黙示の合意が認められることも少なかった。 しかし、2024年4月1日施行の改正労働基準法施行規則により、雇入れ時の労働条件明示義務の対象事項に「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」を記載することになったため、これにより職種限定合意が認められる場面が増えると思われる。   2 職種限定合意の効果 職種限定合意がなされた場合、使用者は、合意した職種や業務内容を超えて配転命令を行うことができず、その結果、当該従業員を解雇することが(比較的)容易になる、とも解されている。 すなわち、業務成績等の不良を根拠とした解雇が有効と認められるためには、①雇用契約上の労務提供義務の不履行に至っているといえるほどに労務提供能力や適格性が欠如している、ないし、雇用契約を継続することが困難なほどに信頼関係を破壊する程度の規律違反がある、といえる場合で、②指導や教育訓練、配置転換や休職などによっても改善等が期待できず、解雇を回避することが難しいといえる必要があるが(本連載【第2回】参照)、このうち「配置転換・・・によっても改善等が期待でき」ないことを立証する必要がなくなり、解雇が容易になる、というロジックのようである。 また、整理解雇においても、整理解雇の4要素のうちの1つである解雇回避努力(本連載【第4回】参照)が緩和されるのではないかとも言われている。 職務限定合意は、近年のジョブ型雇用(※1)への関心の高まりもあって、注目を集めている。 (※1) 職務内容や職種(ジョブ)に基づいて雇用契約を締結する雇用形態。内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針(令和6年8月28日)」参照。 しかし、職種限定合意が認められれば必ず解雇が容易になるのかというと、必ずしもそうではない。 東京地判平成20年9月30日(東京エムケイ事件)は、以下のとおり判示している。 上記を簡単に表に示すと、以下のとおりとなる。 以上によると、職種限定合意が認められる場合には、職種に高度の専門性があるか否かを問わず、当該合意に反する配転命令は認められず(※2)、また、職種限定合意の結果、解雇が容易になるのは職種に高度の専門性がある場合に限られることになる。 ただし、以下の点に注意が必要である。 (※2) 職種限定合意がある場合であっても、他の職種への配転命令に正当な理由があるとの特段の事情が認められる場合や解雇もあり得る状況のもとこれを回避するためになされる場合には認められるとする裁判例も存在する(前者は東京地判平成19年3月26日(東京海上日動火災保険事件)、後者は大阪高判令和4年11月24日(社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件))。一方、最判令和6年4月26日(前掲大阪高判の上告審判決)は、職種限定合意があるのであれば、使用者はこれに反する配転命令をする権限を有しないなどと判示している。  「職種限定合意」としてどのような内容の合意がなされたかにもよるが、基本的には上記最判令和6年のように、職種限定合意がなされた以上は、命令により一方的に配転させることはできないと整理するべきであると思われる。 (了)

#No. 610(掲載号)
#柳田 忍
2025/03/13

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第16回】「成年被後見人は遺言書を作成できるのか」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第16回】 「成年被後見人は遺言書を作成できるのか」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 成年後見人を務めていますが、成年被後見人の家族から「本人の遺言書が作成できないだろうか」という相談を受けました。家族としては、被後見人が亡くなった場合には遺言書を用いて、できるだけスムーズに相続手続を進めていきたいという意向のようです。 もともと私が成年後見人に就任したのも、被後見人の兄が亡くなり、遺産分割協議が必要になったことがきっかけでしたので、家族の気持ちも理解できます。 成年被後見人が遺言書を作成することはできるのでしょうか。 【A】 成年被後見人が遺言書を作成することができるかについての相談は、少なくありません。 結論からいうと一定の要件のもと、成年被後見人が遺言書を作成することは可能です。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 遺言能力とは 民法では、15歳以上の者であれば、遺言書作成に必要な「遺言能力」があるとされています(民法961条)。遺言能力とは、遺言の内容やその効果を理解する能力といわれています。 成年被後見人は「事理を弁識する能力を欠く常況にある」とされていますが(民法7条)、成年被後見人であれば遺言能力がなく、作成ができないと一律に取り扱われるわけではありません。   2 成年被後見人は遺言書を作成できるか 民法973条では、以下の要件のもと、成年被後見人も遺言書を作成することが可能であるとされています。 遺言の作成方式には特に制限はありませんが、成年被後見人の遺言能力に疑義が付きやすいことを考慮すると、公正証書遺言によることが望ましいといえるでしょう。   3 実例は少ない 上記で解説した通り、成年被後見人でも遺言書を作成することは可能です。では、実例があるのかといえば筆者の知る限り、あまり多くはないと思われます。 成年被後見人の方であっても意思がはっきりしている状態になることはあり得ますが、遺言作成に協力してくれる医師が見つかるかなど、ハードルがあるためと思われます。   4 被保佐人・被補助人による遺言書作成は? 成年被後見人だけではなく、被保佐人や被補助人が遺言書を作成したいと相談が寄せられることがあります(それぞれの職務、権限については本連載【第2回】を参照)。 被保佐人や被補助人が遺言書を作成する場合、成年被後見人のような要件は求められていないため、遺言能力があれば自由に遺言書を作成することは可能です。 ただしこの場合でも、遺言書の作成方式としては後々に紛争になることを防ぐために、公正証書遺言によるとよいでしょう。   5 遺言の内容はシンプルなものに 成年被後見人等が遺言書を作成する場合、内容が複雑なものは避けた方がよいと思われます。 公正証書遺言の作成の実務では、公証人が遺言者に対して遺言の内容を理解しているかの確認をしっかりと行うため、遺言書自身がしっかりと説明ができないような内容の遺言を作成することはできません。 税理士としてもこの点を認識をしておくとよいでしょう。 (了)

#No. 610(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/03/13

《速報解説》 ASBJ、改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」を公表~コメント受けファンド・オブ・ファンズの取扱いについて規定を追加~

《速報解説》 ASBJ、改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」を公表 ~コメント受けファンド・オブ・ファンズの取扱いについて規定を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年3月11日、企業会計基準委員会は、改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」を公表した。これにより、2024年9月20日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を時価評価するようにすみやかに会計基準を改正すべきとの要望を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を中心とする範囲に限定し、上場企業等が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に係る会計上の取扱いを見直すものである(308-2項)。 1 組合等の範囲 対象となる組合等の範囲に関して、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられたため、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等を直接的に定義することは行っていない(308-3項)。 一方、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するために、組合等の範囲に関して、次の要件を設ける(132-2項)。 2 組合等の運営者 「組合等の運営者」とは、我が国におけるベンチャーキャピタルファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態においては、無限責任組合員が該当すると考えられる。また、他の法形態に基づく組合等については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が該当すると考えられる(308-3項)。 3 時価をもって評価している場合 「時価をもって評価している」場合とは、組合等が適用している会計基準により市場価格のない株式について時価評価が求められている場合のほか、市場価格のない株式について時価評価する会計方針を採用している場合が含まれると考えられる(308-3項)。 時価評価の方法としては、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号)に基づいた時価で評価する場合のほか、IFRS第13号「公正価値測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれると考えられる(308-3項)。 4 任意組合、匿名組合、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ等への出資の会計処理 金融商品実務指針132項にかかわらず、上記1の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる。この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上する(132-2項、308-4項)。 5 132-2項の適用に際しての留意点 次のことに留意する(132-3項、132-4項、308-5項、308-6項)。 公開草案に対するコメントを受けて、ファンド・オブ・ファンズのように組合等が別の組合等に出資しているケースの取扱いについて規定されている(308-5項。コメントNo.4)。 また、「組合等への出資時」とは、組合等への出資の会計処理を行う時期を想定しているが、本公開草案第132-3項における本公開草案第132-2項の定めの適用対象かどうかの決定は、組合等への出資後最初に到来する出資者側の決算時までに判断することになると考えられるとのことである(コメントNo.24)。 6 注記 132-2項の定めを適用する組合等への出資については、「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第31号)24-16項で定める事項の注記に併せて、次の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない(132-5項)。   Ⅲ 適用時期等 2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から2025年改正実務指針を適用することができる。 経過措置に注意する。 (了)

#阿部 光成
2025/03/12

《速報解説》 企業会計基準委員会、2024年年次改善プロジェクトとして、包括利益の表示、特別法人事業税及び種類株式の取扱いについて改正

《速報解説》 企業会計基準委員会、2024年年次改善プロジェクトとして、 包括利益の表示、特別法人事業税及び種類株式の取扱いについて改正   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年3月11日、企業会計基準委員会は、「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正」を公表した。これにより、2024年11月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要とその対応も公表されている。また、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)に関する今後の基準開発の方向性についてのコメントも公表されている。 これは、2024年年次改善プロジェクトにおいて検出された事項について、改正するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 包括利益の表示関係 1 改正の対象となる会計基準等 2 改正の内容 包括利益の表示について、これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」などの用語について、連結財務諸表上は「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるための変更を行う。 株主資本等変動計算書について、個別株主資本等変動計算書に関する定めと連結株主資本等変動計算書に関する定めを分けたうえで、連結株主資本等変動計算書の用語についての見直しなどを行う。 3 適用時期等 改正包括利益会計基準及び改正株主資本適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用する。 ただし、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することができる。この場合、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度に係る中間連結財務諸表及び四半期連結財務諸表については改正包括利益会計基準を適用しないこと、また、当該連結会計年度に係る中間連結財務諸表については改正株主資本適用指針を適用しない。   Ⅲ 特別法人事業税関係 1 改正の対象となる会計基準等 2 改正の内容 3 適用時期等 改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。この場合、2025年改正会計基準と同時に改正された「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)についても同時に適用する必要がある。ここで、早期適用を行う場合であっても、当該連結会計年度及び事業年度の中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表並びに四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表については、2025年改正会計基準を適用しない。 経過措置などに注意する。   Ⅳ 種類株式関係 1 改正の対象となる会計基準等 2 改正の内容 実務対応報告第10号の適用対象となる種類株式について、会社法108条1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準となる株式以外の株式として定義する。 会社法108条1項を参照する定義とすることにより、実務対応報告第10号の適用対象が開発時において想定されていなかった種類株式に拡大することとなる。 3 適用時期等 2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用する。 2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より前に取得した種類株式のうち、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の前連結会計年度及び前事業年度の末日において保有する種類株式については、次のいずれかの方法を選択できる。 (了)

#阿部 光成
2025/03/12

《速報解説》 ASBJが「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」の公開草案を公表~いわゆる“バーチャルPPA”に関する会計上の取扱いを規定~

《速報解説》 ASBJが「非化石価値の特定の購入取引における 需要家の会計処理に関する当面の取扱い」の公開草案を公表 ~いわゆる“バーチャルPPA”に関する会計上の取扱いを規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年3月11日、企業会計基準委員会は、「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第70号)を公表し、意見募集を行っている。 これは、いわゆるバーチャル電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreement)(バーチャルPPA)に関する会計上の取扱いを規定するものである、 意見募集期間は2025年5月30日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 範囲 非化石価値取引において需要家による非化石価値の転売が想定されておらず、発電事業者から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうちおおむね次の特徴を有するものに適用する(2項)。 「需要家」とは、2項に掲げる特徴を有する契約を締結する者のうち、非化石価値を自己使用目的で購入する者をいう(3項(2))。 2 非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理等 次のように会計処理する(4項~6項)。   Ⅲ 適用時期等 20XX年4月1日[2026年4月1日を想定している]以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、公表日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本実務対応報告を適用することができる。 適用初年度の取扱いに注意する。 (了)

#阿部 光成
2025/03/12

《速報解説》 国税庁、「インボイスの取扱いに関するご質問」を公表~記載事項をHP上で公表する場合の取扱いなど含む計4問を示す~

《速報解説》 国税庁、「インボイスの取扱いに関するご質問」を公表 ~記載事項をHP上で公表する場合の取扱いなど含む計4問を示す~   税理士 石川 幸恵   令和7年2月25日、国税庁はホームページ上で「インボイスの取扱いに関するご質問(令和7年2月25日更新)」を掲載し、「適格請求書の記載事項のインターネットでの公表(問Ⅳ)」を含む計4問を公表した。 今回公表された4問は次のとおり。 上記のうち、問Ⅳが株式会社や個人事業者など一般の事業者の実務に幅広く関係すると思われるため、問Ⅳから確認したい。   1 適格請求書の記載事項のインターネットでの公表(問Ⅳ) 記載事項の一部が省略された適格請求書であっても、適格請求書に記載されたURLにアクセスすることで省略事項が補完される(下図を参照)のであれば、適正な適格請求書として取り扱えることが示された。 (※) 国税庁「インボイスの取扱いに関するご質問(令和7年2月25日更新)」問Ⅳより抜粋 ホームページにアクセスすることで、適格請求書の発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、税率(上図は適格簡易請求書として消費税額不要)を確認することができる。 (1) 買手が適格請求書を確認する際のポイント 「領収書には登録番号が記載されていないが、企業名を検索してホームページを見ればわかる」だけでは不十分であり、領収書にURLが記載されているなどの関連付けが必要である。 売手が下記(2)のポイントを満たしている限り、買手は該当のホームページをダウンロードして保存する必要はない。 (2) 売手のポイント 適格請求書に関する情報のページを、各税法に定められた保存期間が満了するまで随時確認可能な状態で提供を続ける必要がある。 青色申告法人の欠損金が生じた事業年度については、帳簿書類の保存期間が「事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日から10年(法法59②、法規26の3)」とされていることを考慮すると、URL等を変更せず、可能な限り恒久的に掲載し続けることが望ましい。   2 現金主義を適用する事業者における仕入税額控除のタイミング(問Ⅰ) 現金主義の特例の適用を受ける個人事業者は、支出した日の属する課税期間において仕入税額控除を受けることができる。支出した日の属する課税期間において適格請求書の交付を受けられなかった場合でも、事後的に交付される適格請求書を保存すれば差し支えない。 (1) 現金主義の特例の適用を受けられる事業者の要件 消費税の計算において現金主義の特例の適用を受けられるのは、所得税における現金主義の規定の適用を受ける個人事業者に限られる(消法18)。所得税法では次のような要件を定めており、自らの判断で現金主義とすることはできない点に注意されたい。 (2) 金額に変動があった場合 事後的に交付された適格請求書により仕入税額控除の額が変動した場合は、適格請求書の交付により確定した日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額に加算又は減算する。   3 任意組合に関する取扱いの整理(問Ⅱ、Ⅲ) (1) 任意組合の構成員が帳簿へ記載すべき課税仕入れの相手方の氏名又は名称(問Ⅱ) 任意組合の構成員は帳簿の「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」に「幹事会社の名称及び幹事会社を経由して行った課税仕入れである旨」を記載すればよいことが示された。ただし、適格請求書発行事業者と適格請求書発行事業者以外の事業者からの仕入れがある場合には区別して記載することに注意されたい。 (2) 任意組合の組合員のうち事業の損益の配賦を受けない者の取扱い(問Ⅲ) 問Ⅲでは世界中に組合員が存在している任意組合の取扱いについて整理している。 任意組合等が事業として行う資産の譲渡等について適格請求書を交付するためには、次のような要件がある。 問Ⅲでは、組合員のうち日本で課税資産の譲渡等を行っておらず、日本における事業の損益の配賦を直接又は間接にも受けない者がいる場合には、その組合員については任意組合員等の届出書の対象としなくても差し支えないことが示された。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#石川 幸恵
2025/03/07
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