検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 11243 件 / 41 ~ 50 件目を表示

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第80回】「不動産鑑定評価基準に規定のない「場所的利益」の概念」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第80回】 「不動産鑑定評価基準に規定のない「場所的利益」の概念」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 鑑定実務に長年携わっていると、不動産鑑定評価基準には何ら規定がないものの、不動産鑑定士としての意見を求められ、あるいは鑑定評価そのものを依頼される案件もあります。このような案件に遭遇した場合、実務的な判断の拠り所を過去の判例に求めることが多くあります。 今回取り上げる「場所的利益」という概念はこれに該当する典型的な例であり、借地借家法に基づき借地権者(借主)から借地権設定者(貸主)に建物買取請求がなされた場合の建物の時価に土地の利用価値相当分が含まれるかという点をめぐって、従来から考え方が分かれていたものです(ただし、現時点では考え方に一つの方向性が見出されています)。 なお、「場所的利益」という概念は鑑定実務に登場しますが、税務では登場せず、判例の生み出した産物ともいうべきものです。   2 「場所的利益」という概念はどこから生じたか 借地借家法第13条及び第14条(旧借地法第10条)では、借主(借地権者)から貸主(借地権設定者)に対する建物買取請求に関し、次のように定めています。 〇借地借家法 ここで、上記条文に規定されている借地権者の請求権が建物買取請求権と呼ばれるものです。そして、判例によれば、「借地上の借地人所有の建物について借地人が借地法第10条(注1)に基づく買取請求権を行使したときは、その時に右建物につき売買契約が成立し、同時に所有権移転の効力を生ずるとともに両当事者は互に同時履行の抗弁権(注2)を有するものと解すべきである」(最高裁昭和30年4月5日判決、民集9巻4号439頁)とされてきました。 (注1) 筆者注。判決当時適用されていた旧借地法を指します。 (注2) 筆者注。同時履行の抗弁権とは、双務契約(例えば、代金支払請求と目的物引渡請求のような反対債務が互いに結び付けられている契約)において、当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるとする権利です(民法第533条)。 また、上記最高裁昭和30年4月5日判決の内容は、建物買取請求権が形成権(当事者の一方からの意思表示のみによって法律的な効果を生ずるもの)の性格を有することを意味するものと受け止められています。 なお、建物買取請求権が行使されるタイミングとしては、上記条文に規定されているとおり、借地権の存続期間が満了した場合(借地借家法第13条第1項)又は借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しない場合(同法第14条)が考えられます。 ただし、いずれにしてもこのような場合には、借地権者は借地上で引き続き建物を利用する権利を失った状態と化してしまいます。そのため、理論の上だけで考えれば、借地権者には最早、借地権を有することによる経済的利益は生じておらず、借地権設定者の買取価格は建物自体の時価だけで足りるということもいえそうです。 しかし、従来の判例ではこのようなケースについても、建物が存在することにより当該建物の所有者が事実上利益を受けることに着目し、当該利益相当額を別途算定の上、これを建物の時価に含めて捉えています(最高裁の判例では「場所的環境を参酌する」旨の表現をしていますが、「場所的利益」と同じ意味で捉えられています。そのため、以下、便宜上「場所的利益」という表現を用いることとします)。 このような考え方は、最高裁昭和35年12月20日判決を契機に芽生えてきたといわれていますが、これが特に鮮明に表れたのが最高裁昭和47年5月23日判決です。   3 「場所的利益」とその算定基準 上記最高裁昭和47年5月23日判決の趣旨は以下のとおりです。 〇最高裁昭和47年5月23日判決 ~建物買取請求権が行使された場合における建物の買取価格と場所的環境の参酌 なお、「場所的利益」の算定基準に関しては不動産鑑定評価基準に規定はなく、上記の判例においても、例えば「場所的利益」相当額が更地価格の何%位かというような画一的な判断基準は示されていません。 しかし、その後に表れた裁判例の傾向をおおまかにみれば、「場所的利益」とは借地権の価格ではないものの、(同じような目線でみれば)更地価格の10%程度を相当としている例が多く見受けられます。   4 おわりに 以上述べてきたとおり、いわゆる「場所的利益」そのものは借地権の価格ではなく、かといって貸主が使用貸借契約を消滅させるために借主に支払う補償金のような金銭とも意味合いが異なります。 「場所的利益」という概念は、明確な基準が存在しないところに不動産鑑定士にとっても悩みの種がありますが、評価の客観性をできる限り担保するためには、過去の判例の傾向分析を十分に行うことが不可欠となっています。 (了)

#No. 682(掲載号)
#黒沢 泰
2026/08/20

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉『ここがヘンだよ日本の税制』【第6回】「新・青色申告特別控除75万円、案外ハードル低い?なぜ国税庁はイケズなのか」

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉 ここがヘンだよ日本の税制 第6回 新・青色申告特別控除75万円、案外ハードル低い? なぜ国税庁はイケズなのか 税理士・税務ライター 鈴木 まゆ子   しばらくお休みしていました。申し訳ありません。気を取り直して、今月から元気に税制を斬って(?)まいります。 さて今回は、税制そのもの・・・ではなく、国税庁の姿勢に焦点を当てます。みなさまご存じの通り、令和8年度税制改正で青色申告特別控除が最大75万円に引き上げられました。要件の1つが「優良な電子帳簿保存」とあるので、ほとんどの税理士の方は「うわ・・・ウチの関与先には無理だわ。あきらめよう」と思っておいでかもしれません。ですが、実はそんなに大変ではないのです。しかしなぜか、国税庁のパンフレットなどではハッキリと教えてはくれません。なぜでしょうか。 今回は青色申告特別控除75万円の本当のしくみを解説し、国税庁がなぜ積極的にアナウンスしないのかを考察します。   新・青色申告特別控除、国税庁のパンフレットはどうなっているか 最初に、令和9年分から新たに始まる青色申告特別控除についての国税庁のパンフレットを見てみましょう。 引用元:75 万円の青色申告特別控除|国税庁 といったことが書かれています。 このほか、次のようなパンフレットも出ています。 引用元:電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?|国税庁 こちらは「デジタルシームレス保存か優良な電子帳簿保存をすれば、青色申告特別控除75万円を受けられますよ」というアナウンスがメインです。 ちなみに、優良な電子帳簿保存やデジタルシームレス保存については事細かく書いていますが、青色申告特別控除75万円の要件はあまり細かく触れていません。 この2つの案内を見ていると、筆者は「国税庁、青色申告の75万円控除、本当にさせたいの? どちらかというと過少申告加算税5%コースの優良な電子帳簿保存をさせたいのでは?」と思ってしまうのです。   新・青色申告特別控除75万円のしくみ 「は? 何を言っているんだ・・・鈴木まゆ子は」。そう思った方が多いかと思います。ここで令和9年から始まる青色申告特別控除75万円のしくみについて説明しましょう。 ●青色申告特別控除75万円には「優良な電子帳簿保存」か「デジタルシームレス保存」のどちらかが必要 これまでの65万円・55万円・10万円控除が今年いっぱいで終わり、来年分からは75万円・65万円・10万円控除になることは、ほとんどの税理士先生がご存じかと思います。 そして、75万円は「複式簿記+e-Taxで期限内申告」に加え、次の2つのいずれかの要件を満たすことが求められます。 いずれも届出が必要です。提出すべき届出書は次のようになっています。 ●優良な電子帳簿保存でなぜ届出が2つなのか ここで一瞬、混乱するかと思います。 「なぜ優良な電子帳簿保存に2つ届出があるの? 『または』って? どちらが何を意味するの?」 実はこの2つの届出は、次のようになっています。 つまり「ベースとなる税法が何か」で届出書が変わるのです。そして、青色申告特別控除75万円を受けたいだけなら、実はそうハードルは高くありません。   「青色申告特別控除75万円のみ」か、「青色申告特別控除75万円+加算税5%軽減」か 結論から言いましょう。 青色申告特別控除75万円だけを受けるなら、優良な電子帳簿保存にすべき対象は「総勘定元帳」「仕訳帳」の2つだけで十分なのです。実際、措置法ベースの届出書は次のようになっています。 引用元:国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書|国税庁 ※令和9年分以降「65万円→75万円」となる予定 「G01」の欄に「1」と書けば青色申告特別控除75万円のみ、「2」と書けば青色申告特別控除75万円と過少申告加算税5%軽減の両方が受けられることになります。 そして、目をこらして見ていただきたいのが、届出書に書かれている「優良な電子帳簿保存の対象となる帳簿の範囲」です。青色申告特別控除だけを受けたいなら、総勘定元帳と仕訳帳だけでよいのです。「加算税5%軽減も受けたい!」となったとき、はじめて他の帳簿も優良な電子帳簿保存にしなければいけないこととなります。 引用元:はじめてみませんか?青色申告|国税庁 ※赤字、オレンジの文字の部分は筆者作成 「総勘定元帳と仕訳帳だけ優良な電子帳簿保存にしておけば、最大の青色申告特別控除を受けられる」という制度は、すでに現存しています。65万円控除の「優良な電子帳簿保存」の要件です。 こちらは、紙申告であっても優良な電子帳簿保存をしているなら65万円控除を受けられるわけですが、この「優良な電子帳簿保存」の対象となるのは総勘定元帳と仕訳帳のみでよい、とされています。 しかし現存している制度であるにもかかわらず、このハードルの低さはあまり知られていません。背景には、電子帳簿保存法があまりに複雑であること、優良な電子帳簿保存が旧来かなりハードルが高かったこと、そして「国税庁が積極的にアナウンスしようとしない」ことにあるかと思われます。   わかりやすいパンフレットで75万円控除は広がるはず!だが・・・ ここで、最初に見た国税庁のパンフレットを拡大して見てみましょう。 引用元:75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!(令和8年6月)|国税庁 ※赤字は筆者 書いてあると言えば書いてあるのですが、さらっと一文に入れてあるだけです。これではなかなか気づきません。 さらに注意したいのが「記帳のサイクル」です。実はこの優良な電子帳簿保存、個人事業主あるあるの「年1回、まとめて記帳して決算・申告」というのが許されません。 引用元:電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)|国税庁 ※赤い下線は筆者 Q&Aなど、なかなか一般の人は見ないものです。言い換えると、よほど関心を持つか、意識するかでないと2か月のサイクルに気づかず、年1回の記帳・決算・申告にとどまってしまうのです。このほか、課税期間の最初から優良な電子帳簿保存の要件を満たしていることも必要となります。 個人事業主が使う会計ソフトは、優良な電子帳簿保存が求める要素を通常、満たしています。あとは、国税庁が「対象は総勘定元帳と仕訳帳だけでいい」「最低でも2か月に1度は記帳してね」「1月1日から優良な電子帳簿保存にしてね」と明確にアナウンスを出せば、青色申告特別控除75万円はできそうです。 しかし、国税庁は積極的なアナウンスをしていません。これが「75万円控除?・・・いや、やめとくよ。怖いし、65万円控除でいいわ」と個人事業主と税理士に言わしめる原因となっているように思われます。「ちょっと意識すれば75万円控除を受けられそうな個人事業主もいる」にもかかわらず、です。   「75万円控除=オール優良な電子帳簿保存」の誤解が個人事業主のデジタル化を阻む なぜ国税庁はもっとわかりやすく、ポイントをおさえて青色申告特別控除75万円控除のアナウンスをしないのでしょうか。 ●国税庁「最初から完璧な『すべて優良な電子帳簿保存』を狙いたい」 筆者の私見ですが、国税庁はこう言いたいように感じられます。 だから「青色申告特別控除75万円」にも2パターンがあり、75万円控除だけならば要件は比較的シンプルだ、と明確に言わないのではないか・・・と思われます。 ●個人事業主の会計ソフト利用率は34%程度にすぎない では、個人事業主の実情はどうなのでしょうか。残念ながら「総勘定元帳と仕訳帳だけを優良な電子帳簿保存にすることだけでも、彼らにとってハードルが高い」と言わざるを得ません。令和の現在でも、個人事業主の会計ソフト浸透率は、そう高くないのです。 引用元:青色申告を行わない理由|内閣府 このグラフを見ると、クラウド型・インストール型含めての会計ソフト利用率は2020年4月段階で34%弱しかありません。逆に、会計ソフトを利用してない層が60%近くいます。 このような状況で「あらゆる自社の帳簿を優良な電子帳簿保存で完璧に対応にしないと、75万円控除はできない」と、個人事業主たちが誤解していたらどうでしょう。 「面倒くさそう」と、個人事業主たちは逃げ腰になり、相変わらず会計ソフトを使うことなく、Excelか小遣い帳で済ませ続けることになるのではないでしょうか。会計ソフトを使っている個人事業主でも、まめな記帳をせず、年明けにあわてて記帳するクセが直らないままで終わるように思います。 ●優良な電子帳簿保存は徐々に行うべし 何事も順番や段取りが大切です。恋愛・結婚で考えてみましょう。一目惚れした女性にいきなり「結婚してください」と言う男性はいません。アラブの石油王か超イケメンの人気俳優でない限り、警戒されるに決まっています。まずは友達付き合いから始め、徐々に2人だけの時間を作り、そのあと手をつないだりして物理的・心理的距離を詰めていくのが王道です。税務・会計のデジタル化も、王道にのっとって徐々に進めていくべきです。 優良な電子帳簿保存については、度重なる税制改正で多くの税理士が「複雑でめんどくさい」と感じています。また、令和3年度税制改正で電子帳簿保存等の税務署長の事前承認制度が廃止されましたが、廃止されるまでが長かったせいか、優良な電子帳簿保存については「ハードルが高い」という印象がいまだに根強くあります。 補助簿を含めた完璧な「優良な電子帳簿保存」の宣伝をいったん弱め、まずは「75万円を目指して総勘定元帳・仕訳帳だけでも優良な電子帳簿保存でまめに記帳しませんか」と言った方が、個人事業主の記帳の習慣が変わりやすくなると思います。 (了)

#No. 682(掲載号)
#鈴木 まゆ子
2026/08/20

《速報解説》 ASBJ、資金決済法等の改正受け、特定の電子決済手段の会計処理等に関する当面の取扱い(案)を公表~外国信託型第4号電子決済手段の会計上の取扱いを第1号から第3号電子決済手段と同様に~

《速報解説》 ASBJ、資金決済法等の改正受け、 特定の電子決済手段の会計処理等に関する当面の取扱い(案)を公表 ~外国信託型第4号電子決済手段の会計上の取扱いを第1号から第3号電子決済手段と同様に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年8月17日、企業会計基準委員会は、「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第74号。以下「公開草案」という)等を公表し、意見募集を行っている。 これは、「資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第66号)による資金決済法及び関連する法令等の改正、2026年6月に施行された「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(令和8年内閣府令第47号)に対応するものである。 意見募集期間は2026年10月19日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 上記の法令等の改正を受け、第3号電子決済手段に関する会計上の性格について改めて検討を行い、また、第4号電子決済手段(以下「外国信託型第4号電子決済手段」という)の会計上の取扱いについて検討を行い、次のように取扱いを示している。   Ⅲ 適用時期等 公表日以後適用し、特段の経過的な取扱いを定めないことを提案している(公開草案15-2項、BC47項)。 (了)

#阿部 光成
2026/08/18

《速報解説》 国税庁、令和8年熊本地震を受けて地域指定による国税の申告・納付期限延長を決定~地震で被害を受けた場合の税制上の措置(手続)等をまとめた特設ページも設置~

 《速報解説》 国税庁、令和8年熊本地震を受けて 地域指定による国税の申告・納付期限延長を決定 ~被害を受けた場合の税制上の措置(手続)等をまとめた特設ページも設置~   Profession Journal編集部     国税庁は令和8年8月12日付けで、7月28日に発生した令和8年熊本地震を受け、国税通則法施行令第3条第1項に基づき、下記の通り、地域指定による国税の申告・納付等の期限延長を行うこととし、8月12日の官報に掲載し公示した。 また、上記の国税の申告・納付期限延長の情報をはじめ、今回の地震で被害を受けた場合の税制上の措置(手続)等をまとめた特設ページが国税庁にて開設されているので、今後の情報の更新につき留意したい。 (了)

#Profession Journal 編集部
2026/08/13

プロフェッションジャーナル No.681が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年8月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.681を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/08/13

-国税庁レポート2026等から読み解く-今後の税務執行・税務調査の動向 【後編】「課税の効率化・高度化と税務調査の動向」

-国税庁レポート2026等から読み解く- 今後の税務執行・税務調査の動向 後編 「課税の効率化・高度化と税務調査の動向」   公認会計士・税理士 荒井 優美子   1 「国税庁実績評価実施計画」等 国税庁が達成すべき目標の設定とこれに対する実績の評価を分析した「令和8事務年度 国税庁実績評価実施計画」等(2026年6月30日公表)によれば、実績目標(大)の一つである「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収」では、実績目標(小)として、①税務行政の適正な執行、②税務行政のデジタル・トランスフォーメーション、③納税者サービスの充実、④適正な調査・徴収等の実施及び納税者の権利救済、⑤国際化への取組を挙げている。 ②税務行政のデジタル・トランスフォーメーションは、前編で解説した通り、オンラインによる税務手続の推進やデジタルの活用による業務の効率化・高度化、事業者のデジタル化促進を業績目標とするものである。①税務行政の適正な執行は、関係法令の適正な適用と迅速な処理や税務行政の透明性の確保及び個人情報の適切な取扱い等、税務執行における適正かつ迅速な処理や税務職員の対応や行為規範に関連するものである。 ③納税者サービスの充実では、広報・広聴活動等の充実や納税者からの相談等への適切・迅速な対応が業績目標とされる。 ④適正な調査・徴収等の実施及び納税者の権利救済の中でも、税務調査に関連した業績目標としては、有効な資料情報の収集、効果的・効率的な調査事務運営の推進、大法人の税務コンプライアンスの維持・向上、大口・悪質な不正事案等への的確な対応、国際化や新分野の経済活動への的確な対応、悪質な脱税者に対する査察調査の的確な実施等が挙げられている。 (※) 消費税事案、無申告事案、国際事案及びその他社会的波及効果が高いと見込まれる事案 ⑤国際化への取組は、経済取引のグローバル化・デジタル化の進展により、新たな取引形態が拡大する中で、国際的な租税回避行為への対応や税務上のコンプライアンスの維持・向上などの課題に的確に対応するため、外国税務当局との知見の共有や協力関係の強化等がこれまでも推進されてきた。共通報告基準(CRS)に基づく金融口座情報の情報交換の的確な実施、国別報告事項(CbCR)の情報交換の的確な実施は、国際取引への諸外国との協力により調査対応の強化として業績目標に挙げられてきたものである。   2 税務行政のDXと課税の効率化・高度化 課税の効率化・高度化の取組みは、スマート税務行政の時代から大きく変容している。スマート税務行政の時代は、情報システムの高度化を基に情報の利活用による課税の効率化が図られることに重点が置かれてきたが、税務行政のDXの時代となり、情報の利活用の徹底を図ることを第一の目標とするも、調査におけるオンラインツール等の活用や金融機関等関係機関への照会等のデジタル化も併せて取組の対象とされている。 Web会議システムを用いたリモート調査は、一部の大規模法人を対象に試行的に実施されており、税務調査において求められた書類は、e-Taxやオンラインストレージサービスを利用した提出(PDF又はCSV)も可能となっている。 (出典:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-(2023 年6月23日)」) AIの活用による申告漏れリスクの高い納税者の判定は、収集した様々なデータを、BAツール・プログラミング言語を用いて統計分析・機械学習等の手法により分析し、過去の調査事績等の傾向から、申告漏れの可能性が高い納税者を判定するものである。 国税庁が2025年12月に公表した「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」では、AI・データ分析の活用による追徴事例が紹介されている。 ※ BA(Business Analytics) ツール:統計学や機械学習等の技術を用いてデータ分析を行うツール。 (出典:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-(2021年6月11日)」)   3 「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」による法人税等の調査事績の概要 「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」によれば、令和6事務年度では、調査必要度の高い法人を的確に抽出した実地調査の結果、実地調査件数は対前年比7.4%減であるにもかかわらず、追徴税額(法人税・消費税)の総額は3,407億円で、直近10年で最高値となり、調査1件当たりの追徴税額は直近10年で2番目の高水準となったことが報告されている。 単年度の比較のみで判断することは難しいが、AI・データ分析の効果が調査結果に表れているということであろう。 (出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」) (出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」) 海外取引等に係る実地調査による申告漏れの追徴は、国際化への取組の一環として調査の重点課題に挙げられているものであるが、税制が複雑であることから、企業の経理担当者の不知が申告漏れとなる場合も少なくない。海外取引については、コンプライアンス体制の整備がより重要となっていることの認識が必要であろう。 (出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」)   (了)

#No. 681(掲載号)
#荒井 優美子
2026/08/13

社長からの無理難題の断り方・かわし方 【第8回】「土地と建物の対価の按分」

社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第8回 土地と建物の対価の按分 〈JUN税会〉 公認会計士・税理士 桝井 康弘   * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 社長へのヒアリングと現状確認により、以下の事実が確認されました。   2 法的論点の整理 (1) 土地と建物の按分についての法規定 課税資産(建物)と非課税資産(土地)を同一の者に対し同時に譲渡し、その譲渡対価の額が課税資産と非課税資産に合理的に区分されていない場合は、次のとおりとなります。 【上記計算式を用いる場合の具体的な按分方法】 (国税庁タックスアンサー(No.6301)より) (2) 土地と建物の按分についての課税庁の考え方 東京地裁令和4年6月7日判決(TAINS:Z272-13726)で、課税庁は次のように主張しています。 全てのケースに当てはまるとは限りませんが、課税庁の基本的な考え方として参考になるでしょう。 (3) 固定資産税評価額の決定方法 (※) 天災、火災その他の事由により損耗の状況が、経年による損耗の状況に比べ大きい場合、経年減点補正率に代えて「損耗減点補正率」を適用します。 不動産鑑定士の3つめの評価手法として、純収益を還元利回りで割り戻す収益還元法があります。 固定資産税評価額の決定方法には、この収益還元法の考え方が織り込まれていないため、収益物件の場合、市場性が反映されにくいという問題があります。 (4) 固定資産税評価額を按分に用いるのが合理的でない場合 ① 建物の築年数が浅いとき、固定資産税評価額が時価より低くなる傾向がある (参考)固定資産評価基準 別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表 ② 建物の築年数が古い(法定耐用年数を経過しているなど)とき、固定資産税評価額が時価より高くなる傾向がある (5) 時価についての裁判所の考え方 ① 契約書で土地と建物の価額が区分されていない場合 競売取得物件について、原告は、土地については路線価を、建物等については類似物件を参考とした再調達価格に基づき按分を行い申告しました。これに対し課税庁は、固定資産税評価額の比率で処分を行いました。これを不服とした原告が、裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定を申し出ました。 裁判所は下記のとおり、裁判所鑑定の比率での按分を合理的と判示しています。 一方、同じ鑑定評価額でも、原告が当初主張していた原告依頼の鑑定評価額は、合理的な価額とは認められませんでした。 ② 契約書で土地と建物の価額が区分されているが、これと異なる按分を行った場合 (ⅰ) 売買契約書での区分が合理的 納税者が一括購入した土地と建物について、売買契約書では、固定資産税評価額を基に区分されていました。納税者がこれと異なる不動産取得税の概算税額の比で按分した申告に対し、課税庁は売買契約書の金額に基づくべきとして更正処分を行い、これを不服とした納税者は訴えを提起しました。 裁判所は、不動産取得税の概算税額の比での按分の合理性には触れず、固定資産税評価額比での按分計算により決定された価額について、 (※) A:納税者の取引相手方である売主 として、納税者の訴えを退けました。 (ⅱ) 売買契約書での区分が合理的でない 土地付きの中古住宅を仕入れて建物のリフォームを行い販売を行う事業者が、次のような割合で土地・建物の販売価額の按分を行っていました。 これに対し課税庁は、土地及び建物の仕入金額を基にリフォーム費用等を建物の価額に反映させた按分比率で更正処分を行いました。 納税者は、売買契約書に基づく区分等での按分を主張し、訴えを提起しました。 裁判所は、売買契約書において土地及び建物の対価が区分されていたとしても、その区分が合理的でなければ、消費税法施行令45条3項により時価での按分が適用される。また納税者が主張する建物価額は、リフォームによる付加価値の増加を反映していないので合理的でないとして、納税者の訴えを退けました。   3 本件事例へのあてはめ (1) 固定資産税評価額を基にした按分 (2) 不動産鑑定評価額を基にした按分 (3) 結論 本事例では、(1)と(2)で、仕入税額控除額の差は63万円ですが、建物の取得価額で700万円以上の差がありますので、今後の減価償却費計上による法人税減少効果に鑑み、不動産鑑定費用60万円を負担し、鑑定評価額を用いることとしました。   4 実務上の対応 (1) 契約締結前の情報収集 関与先の不動産購入情報は、なるべく早めに取得するようにしましょう。簡易課税適用事業年度に建物を取得した場合など納税額が不利になってしまう可能性があります。 (2) 契約書に土地と建物の区分を入れるかどうかの判断 契約書で定められた価額の区分は、売買当事者の法的な意思表示として取り扱われ、後にこれと違う価額で申告を行うことは困難です。 またインボイス制度開始後は、適格請求書の要件を満たしていないと、原則として仕入税額控除が出来なくなりました(※4)。したがって、取得の場合、売買契約書で建物価額及びその消費税額について区分記載の必要があります。一方で譲渡の場合、契約時点で売買価額の区分が間に合わない時は、あえて区分しないという選択肢もありえましょう(買主が一般の個人の場合、比較的容易だと思われます)。 (※4) 適格請求書がない場合について、仕入税額控除の経過措置があります。 宅地建物取引業を営む者(不動産業者)が、棚卸資産として建物を取得する場合を除きます。

#No. 681(掲載号)
#桝井 康弘
2026/08/13

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第23回】「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税に関するQ&Aの公表について」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第23回】 「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税に関するQ&Aの公表について」   税理士 石川 幸恵   【Q】 当社は国内に本店を有する法人です。海外メーカーと取引契約を締結し、その商品を日本国内の消費者に販売しています。販売方法は、次の3つです。 なお、(1)の商品は海外メーカーへファックスで注文して輸入し、(2)及び(3)は海外メーカーから購入者へ商品を直送しています。 令和8年7月15日に国税庁より公表された「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税に関するQ&A」のうち、当社が確認しておくべき問はありますか。 【A】 はい。今回公表されたQ&Aには62題が掲載されていますが、「少額輸入貨物(課税価格の合計額が1万円以下の輸入貨物で一定のもの)」を通信販売の方法により譲渡する場合の取扱いをはじめ、内国法人向けにも実務上参考となる問が含まれています。 下記の【解説】にて、令和10年4月1日以後、内国法人が質問のような取引を行う場合に確認しておきたい問を紹介します。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 令和8年度税制改正では、課税の公平の観点から「国境を越えた電子商取引に係る課税の見直し」が盛り込まれた。改正の背景や概要は本誌掲載の下記拙稿も参照されたい。 (1) 実店舗での対面販売 貴社は輸入者の立場であるが、当質問のように海外メーカーへファックスで注文して商品を仕入れる取引は通信販売の方法による少額輸入貨物の取引には該当せず、店舗での消費者への販売は通常の国内取引であるため、今回の改正の影響はない。 輸入時に支払った輸入消費税等については、仕入税額控除の適用を受けることができる。なお、「通信販売の方法」の意義については、問2で解説されている。 (2) 自社サイトでの販売 ① 特定少額資産の譲渡について 譲渡が行われた時の資産の所在場所が国外であるため、令和8年度税制改正前においては課税の対象とはされていなかった。改正により特定少額資産の譲渡に該当する場合には、国内において行われた資産の譲渡として、消費税の課税対象とされる(問1)。特定少額資産は一の資産について対価の額が1万円以下とされているが、「一の資産」の詳細については問3~9を参照されたい。 また、簡易課税制度により仕入控除税額を計算する場合、特定少額資産の譲渡に係る課税売上高はみなし仕入率を乗ずる対象となる課税売上高に含まれない。この点については、問10で示されている。 ② 特定少額資産販売事業者について 貴社が特定少額資産販売事業者の登録を受けると、輸入者は保税地域からの引取りに係る消費税が免除される(問14)。 この登録は任意である(問15)。ただし、登録を受けた場合は事業者免税点制度が適用されない(問27)。 (3) ECモールによる販売 オンラインマーケットプレイスなどのデジタルプラットフォームを提供している事業者のうち、一定の要件を満たし、国税庁長官から指定を受けたプラットフォーム事業者を第二種プラットフォーム事業者という。第二種プラットフォーム事業者が提供するデジタルプラットフォームを介して行う次の資産の譲渡で、その第二種プラットフォーム事業者を介してその対価を収受するものについては、その第二種プラットフォーム事業者がその資産の譲渡を行ったものとみなして、消費税の申告・納税を行うこととされた。 ②は内国法人にも関係するため、確認しておきたい(問29)。 (4) 事業者免税点制度に関する経過措置 令和10年4月1日を含む課税期間については、当該課税期間においては、特定少額資産の譲渡が課税対象となるが、その基準期間においては課税の対象ではない。納税義務判定にあたっては、特定少額資産の譲渡を含めて(ただし、プラットフォーム課税の対象となる取引は含めないで)計算するよう経過措置が設けられているので、注意されたい(問59~60)。この経過措置は、国外事業者に限らず内国法人にも適用される。 (了)

#No. 681(掲載号)
#石川 幸恵
2026/08/13

〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第3回】「海外進出の入口」-進出形態の選択と、初期段階で見落としがちな税務リスク、コスト-

〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第3回】 「海外進出の入口」 -進出形態の選択と、初期段階で見落としがちな税務リスク、コスト- 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 吉本 壮介 Q 顧問先から「海外進出を考えている」との話がありました。 会社の事業部門は販売戦略や現地パートナー選定などに目下集中しているようですが、顧問税理士として最初におさえるべきポイントは何でしょうか。 A 海外進出における税務は、日本と現地国という二つの税務当局を見据えて設計する必要があります。その一つに進出形態の選択があります。 海外進出は、一般的に、駐在員事務所、支店、現地法人(子会社)の形態が考えられます。どの形態を選択するかによって、現地で法人税等の申告が必要になるのか、どの範囲で本社が責任を負うのか、親子間取引の論点は何か、さらには撤退時にどの程度の手続きやコストが発生するのかが変わってきます。 顧問税理士としては、進出形態、進出先の税率、現地での活動内容、維持管理コスト、撤退時の負担、現地当局の動向まで含めて、事業計画の前提を確認する視点をもつことが重要です。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■   1 進出形態の「三択」と税務の分かれ道 海外進出の形態は、(1)駐在員事務所、(2)支店、(3)現地法人(子会社)の3つが一般的です。重要なのは、これは単なる法的形式の違いではなく、「どこで税金が課されるのか」「どのような管理体制が必要になるのか」を左右する経営上の選択であるという点です。 (1) 駐在員事務所 ― 軽い形態だが「PE(Permanent Establishment)認定」が論点に ― 駐在員事務所は、市場調査、情報収集、広告宣伝などの活動を目的として設置されることが一般的です。通常、現地では売上を計上せず、契約締結や販売活動も行わないことが前提とされ、比較的簡易な形態として利用されます。 活動内容が市場調査などにとどまる限り、現地で法人税の課税対象とはならず、駐在員事務所で生じた経費は日本法人の経費として処理されることが一般的です。 一方、実務上は「営業していないつもり」がリスクになりえます。 現地駐在員が顧客と価格交渉を行っていたり、契約締結に向けた重要な役割を果たしていたりする場合、現地当局から営業拠点、すなわち「PE(恒久的施設:所法2八の四、法法2十二の十九、OECDモデル租税条約5)」と認定される可能性があります。 PEとは簡単に言えば、企業が海外で事業を行うための現地拠点です。 国際税務では「PEなければ課税なし」という考え方が根底にありますが、PE認定されてしまうと、現地で法人課税などが生じうることになります。 PEの有無は課税に大きな影響を及ぼす分水嶺であり、この論点は次回以降あらためて解説します。 実務上のチェックポイント 駐在員事務所については、現地で行う活動の範囲、契約交渉への関与度合い、承認フローなどをあらかじめ明確にし、実態を説明できる資料を整備するのが望ましいでしょう。 (2) 支店 ― 設立は比較的簡易だが、所得帰属や費用配賦に注意 ― 支店は、日本法人の一部として現地で事業を行う形態です。独立した法人ではなく、日本本社と同一の法人格のまま海外で事業を行うため、現地法人と比較すると設立手続きが比較的容易であると言われています。 一方で、支店は現地で事業を行うことを前提としていることが多く、通常はPEに該当し、現地で法人税等の申告が必要となります。また、支店が負った債務については、最終的に日本本社で責任を負うことになります。 税務上は、現地支店に帰属する所得は日本国でも課税対象となり、現地と日本で二重課税が生じるため、外国税額控除などの二重課税排除措置を検討すべきでしょう(支店が赤字であれば日本本社の所得から控除されます)。 支店課税で問題になりやすいのは、所得の帰属や経費の認定です。 このうち経費認定については、例えば、日本本社が人事、経理、IT、管理部門等の共通機能を提供している場合、本社費用の一定額を支店へ配賦することがあります。 この場合、現地当局からは、 などといった点をシビアに確認されることがあります。 実務上のチェックポイント 支店を設置する場合には、本社費用の配賦基準、支店の損益管理、現地申告体制を事前に整理しておくことが重要です。日本側で合理的と考えられる処理であっても、現地当局が納得しなければ、損金性を否認されるリスクがあります。 (3) 現地法人(子会社) ― 本格展開の典型だが、親子間取引の管理が重要に ― 現地法人(子会社)は、独立した法人格をもち、営業活動、人材採用、許認可取得などの企業活動を幅広く行うことができるため、本格的な海外展開を行う企業に広く利用されています。 また、原則として責任は現地法人に限定されるため、親会社とのリスク分離(遮断)という観点でもメリットがあります。もっとも、現地法人を設立したからといって、日本親法人から税務上切り離されるわけではなく、設立後は日本親会社と現地法人との取引が新たな税務論点の芽になります。 例えば、商品販売、役務提供、ロイヤルティ、貸付、出向者負担金などが発生する場合には、移転価格税制、寄附金課税、源泉税、租税条約の適用などを検討する必要が出てきます。 立上げ期には、 といった対応が行われることがあります。 しかし、税務上は、親子間取引であっても、「第三者間であればどうなるか」という視点で検証されますので、子会社に対する収益計上もれ、あるいは寄附金として認定されるリスクがあります。また、現地子会社の赤字や低利益率が継続すれば、現地当局から移転価格課税などを受けるリスクもあります。 実務上のチェックポイント 現地法人を設立する場合には、設立時点から親子間取引の内容、契約書、価格設定根拠、役務提供の実績記録、利益率の検証などを行い証憑を整備することが重要です。   2 進出コストの予算化 海外進出の事業計画では、売上予測や設備投資額に目が向きがちですが、設立以後の維持コスト等を事前に想定し見積もることが望ましいです。 (1) 専門家費用 海外では会計、税務、法務などはタイムチャージとなるケースも多く、相談、契約書レビュー、当局対応、決算申告、監査、登記更新、給与税務などの費用が積み上がります。その他、銀行口座開設などに付随するコスト、現地居住役員の報酬が必要になる場合もあります。 (2) 駐在員コスト 駐在員を派遣する場合には給与以外にも、住宅費、社会保険、医療保険、子女教育費、一時帰国費用などに加え、会社が現地所得税を負担する場合には、いわゆるグロスアップ計算により負担額が想定以上に大きくなることがあります。 (3) 撤退コスト 撤退は、海外進出では入口段階で考慮すべきコストです。 現地法人の清算や支店の閉鎖には一定の時間と手続きが必要であり、そのための専門家コストに加えて通常の維持費もかかります。 国によっては、税務当局の厳格な調査や確認が行われ、想定以上に膨大な時間やコストがかかるケースがあります。 実務上のチェックポイント 海外進出では、設立時よりも、維持費や撤退時のコストが長期的に重い負担になりやすく、事前に概算コストを想定しておくべきでしょう。   3 まとめ 以上のように、海外進出にはコストの事前予測と税務視点の事業計画への織り込みが重要です。また、進出形態如何により、税務論点やコスト負担が大きく変わります。 顧問税理士としては、海外進出の入口である設計段階から状況を把握し、現地税務当局の執行姿勢や課税実務も踏まえて対応策を練ることが望ましいものと言えるでしょう。 海外進出(入口)チェックリスト ☑ 駐在員事務所、支店、現地法人における税務上の論点を理解したか ☑ 現地で予定している活動内容(営業、契約、在庫管理など)を明確に整理したか ☑ 契約交渉、署名権限、承認フローなどを確認したか ☑ 本社費用の配賦基準や証憑を確認したか ☑ 親子間取引の概要、契約書、価格設定根拠、利益率の根拠などを確認したか ☑ 法人税以外の負担(給与課税、社会保険、VAT・GST等)を確認したか ☑ 専門家費用を設立時だけでなく維持費として見積もっているか ☑ 駐在員関連コスト(住宅費、教育費、税負担等)を事業計画に織り込んでいるか ☑ 撤退時の手続きやコストについてリスクとして把握し織り込んでいるか ☑ 税務、経理部門が事業計画の初期段階から関与し、意思決定に参画できているか ☑ 日本当局だけでなく、現地当局の課税の動向や論点にも配意しているか 次回も引き続き、海外進出に関連するテーマを取り上げる予定です。 (了)

#No. 681(掲載号)
#吉本 壮介
2026/08/13

令和8年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第7回】

令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第7回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   Ⅱ 戦略技術領域型の研究開発税制の創設 1 改正の概要 国家として戦略技術分野の試験研究を促進する観点から、新たに「重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)」を創設し、産業技術力強化法の改正法の施行日から、令和11年3月31日までの間に産業技術力強化法の認定を受けた計画に基づく対象分野への試験研究費について、以下の措置を講じる(措法42の5)。 対象分野 AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙 税額控除率 ① 認定計画に従って行う対象分野に係る試験研究費の額(重点産業技術試験研究費の額):40% ② ①のうち、産業技術力強化法の認定研究開発機関との共同・委託試験研究費の額(特別重点産業技術試験研究費の額):50% なお、戦略技術領域型の対象とした試験研究費については、既存制度との重複は不可。 控除上限率 既存制度とは別枠で①②合計で、法人税額の10%。 繰越税額控除限度超過額は、3年間の繰越控除が可能となる。 なお、[重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)]について定める租税特別措置法第42条の5は、執筆日現在、未施行(産業技術力強化法の一部を改正する法律の施行の日に施行予定)となっている。また、それに関連する租税特別措置法施行令、租税特別措置法施行規則、地方税法は公布されていない。 (出典) 経済産業省「経済産業関係 令和8年度税制改正について(令和7年12月)」   2 グループ通算制度における取扱い 重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)について、グループ通算制度における取扱いは以下のとおりとなる。 1 通算グループ全体の税額控除可能額の計算方法 2 各通算法人の税額控除可能分配額の計算方法 各通算法人は、次の算式により計算した税額控除可能分配額を税額控除限度額(税額控除額)とする。 3 通算法人の繰越税額控除額の計算方法 4 別表添付要件 重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)については、一般試験研究費に係る税額控除制度(一般型)と同様となる(措法42の5③二・⑥、42の4⑨)。 また、重点産業技術試験研究費に係る繰越税額控除制度(戦略技術領域型)については、中小企業者の試験研究費に係る繰越税額控除制度(中小企業技術基盤強化税制の繰越控除制度)と同様となる(措法42の5③二・⑦、42の4⑩)。 5 重点産業技術試験研究費に係る税額控除の遮断措置(戦略技術領域型の遮断措置) 重点産業技術試験研究費に係る税額控除額について、一般試験研究費に係る税額控除の遮断措置と同様の取扱いとなる(措法42の5③二、42の4⑧四・五・六・七・⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱)。 また、重点産業技術試験研究費に係る繰越税額控除額について、中小企業者の試験研究費に係る繰越税額控除の遮断措置と同様の取扱いとなる(措法42の5③二、42の4⑧十四・十五・十六・⑫⑬⑰⑱)。   (続く)

#No. 681(掲載号)
#足立 好幸
2026/08/13
#