酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第103回】 「節税義務が争点とされた事例(その6)」 中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅰ 事案の概要 1 概観 本件は、土地の譲渡に伴う所得税について、税理士であるY(被告)の的確な助言があれば事業用資産の買換え特例を適用することにより土地譲渡に伴う所得税を一切負担しなくても済んだはずであるとして、X(原告)がYに対し、債務不履行による損害賠償としてXが納付した譲渡所得税、過少申告加算税及び延滞税の税額の合計相当額2,308万円余等の支払を求める事案である。 2 具体的事実 (1) 本件土地等の売買経緯 Xは、昭和61年6月3日、東京都M区においてかねてより訴外母甲や兄らと共有してきた土地(以下「本件土地」という。)を、同土地上に所在する建物(以下「本件建物」という。)と併せて、第三者に譲渡(以下「本件譲渡」という。)した。Xは、本件建物の一階部分について生計を一にする母甲とともに居住の用に供する一方、母甲は、本件建物の二階部分をアパートとして第三者に賃貸していた。その後、Xと母甲は、同年7月10日、本件土地及び本件建物に替わる居住用資産として、A県所在の宅地及び同地上建物(以下「本件A居宅」という。)を買い受けて、これを居住の用に供した。また、Xは、昭和62年7月、B県に所在するマンション(以下「本件Bマンション」という。)を買い受けた。 なお、Xは、昭和43年頃以降は専ら本件建物に母甲とともに居住していたが、住民登録上はその所有する東京都O区所在のマンションに居住していることになっていて、昭和61年4月に同マンションを売り渡し、これに伴う同年分の譲渡所得税の課税については、同マンションを居住用資産として租税特別措置法(当時)所定の居住用資産の譲渡所得の特別控除を受けており、本件土地及び本件建物の売買契約が締結された後の同年7月9日、本件建物の所在地へ転入したものとして転入の届出をしていたことが認められている。 (2) 確定申告等の経緯 Xは、昭和63年3月8日、所轄税務署長に対して、Xの依頼に基づいて税理士であるYが作成した確定申告書に基づいて昭和62年分の所得税の確定申告をしたが、そこではXについては本件土地全体を居住用資産とする前提に立ち、本件A居宅についてのみ租税特別措置法36条の2(昭和62年法律第96号による改正前のもの。本件における適用関係については以下*参照。)所定の居住用資産の買換え特例を適用して税額を算出し、これに基づいて分離課税の長期譲渡所得に係る譲渡所得税を納付した。 ところが、後日、Yの作成した上記確定申告書にはYの過誤による違算があり、譲渡所得税額が800万円過少であることが判明したため、Xは、平成2年6月19日に修正申告を行い、同日に、本税のほか過少申告加算税及び延滞税を納付した。 Xは、これらの過程において、Yに対して、税務相談を求め、確定申告書の作成を依頼するなどし、これに対する報酬を支払っていた。 *当時の租税特別措置法36条の2及び37条所定の譲渡所得課税の特例の適用にかかる課税実務の取扱いについて、裁判所は、これらの法条や、国税庁長官通達「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」(昭和46年8月26日付け)及び弁論の全趣旨によれば、本件におけるように、譲渡した特定資産がその所有者以外の者(筆者注:本件では母甲)の事業の用に供されていた場合であっても、その事業を営む者が特定資産の所有者と生計を一にする親族であって、かつ、その事業が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業であるときには、租税特別措置法37条所定の譲渡所得課税の特例の適用については、その特定資産は所有者にとっても事業の用に供していたものとして取り扱い、また、建物及びその敷地の用に供されている土地が事業の用に供されているとともに居住の用にも供されている場合においては、同法36条の2及び37条所定の譲渡所得課税の特例の適用については、右建物又は土地は、原則としてそれぞれの用に供されている部分の面積の比によって事業の用及び居住の用に供されているものとして、その割合に応じてそれぞれ右各法条による事業用資産の買換え特例及び居住用資産の買換え特例の適用を受けることができる対象資産として取り扱うのが課税実務の一般的な取扱いであったことを認めることができ、したがって、Xは、本件土地の譲渡に伴う譲渡所得税の課税については、買換資産としてそれぞれの所定の要件を充足する事業用資産及び居住用資産を取得することによって、事業用資産の買換え特例の適用とともに居住用資産の買換え特例の適用をも受けることができたとしている。 3 争点 4 判決の要旨 東京地裁平成4年7月31日判決(判時1463号88頁)は、「Xの昭和62年分の譲渡所得税の課税に関する限りにおいては、YがXに教示した助言等の内容が事業用資産及び居住用資産の買換えの特例を定めた租税特別措置法の前記各法条の法意やその下での課税実務の一般的な取扱いに適合するものではなかったことは確かである。」とするものの、次のように続けている。 また、東京地裁は、Xにとって、Yの提供する情報が唯一のものであったわけではなく、Yからの助言等に全面的に依拠していたともいえないとして、次のように説示している。 そして、結論として、Xの請求には理由がないと判示した。 Ⅱ コメント 本件判決は、YがXに教示した助言等の内容が「租税特別措置法の前記各法条の法意やその下での課税実務の一般的な取扱いに適合するものではなかったことは確か」であるとしつつも、Xの住民登録上の届出の状況等の諸事情に照らすと、本件土地の譲渡に伴う譲渡所得税の課税について、Xが事業用資産の買換え特例及び居住用資産の買換え特例の適用を受けることができるかについて「Yが懸念を持ったのはむしろ当然」のことであって、「必ずしもYのした助言等の内容が不適切なものであるということはできない。」として請求を棄却している。 このような判決が示すところを前提に考えると、税理士に節税措置義務が肯定されるとしても、特例の適用を受け得るかにつき不確実な状況である場合においてまで措定される義務ではないということができそうである。 では、不確実な状況とはどのようなものであろうか。少なくとも法律や通達において、明らかに選択適用が認められているような場合は、不確実性があるとは認められないと思われるが、税制上認められるかどうかが判然としないような場合は、どうであろうか。 一定程度の調査義務が税理士に課されていることを前提に考えると(※1)、税理士が行うべきある程度の調査によって不確実性を払拭することができるのであれば、その不確実性を払拭することをも含めて節税措置義務が措定されると考えることも、あながち税理士の責任レベルを高めているということにはならないであろう。 (※1) 酒井克彦「税理士の調査義務-大阪高裁平成8年11月29日判決を素材として-」税務弘報52巻12号97頁(2004)参照。ドイツにおいては、税理士は新規又は変更された法規範を調査しなければならないとする連邦通常裁判所決定、ツェレ上級地方裁判所決定がある(vgl. BGH. v. 30. 6. 1971, Ⅳ ZB 41/71, NJW 1971, 1704; v. 7. 3. 1978, Ⅵ ZB 18/77, NJW 1978, 1486; vgl. Auch OLG Celle, VersR 2001, 1437, 1438)。 かかる調査義務が具体的に問題となる場合として、文書回答手続の利用の有無を挙げることもできよう。税理士は、国税庁の実施する文書回答手続を納税者の代理人として利用することができるのであるから、税理士が文書回答手続を行うことができるのに、それを行わずにいたことで節税措置をする機会を逃したというようなケースにおいては、税理士の責任が追及されることもあり得ると解される(※2)。 (※2) なお、国税庁の文書回答手続は従来、節税に関する照会ができないこととされていたが、令和3年の改正により、節税照会を受けることが可能となった(国税庁長官通達(令和3年6月21日付け課審1-15ほか9課共同)「『事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について』の一部改正について(事務運営指針)」)。この点については、酒井克彦「ソフトローによる予測の担保-文書回答手続の改正を契機に-」税務事例54巻1巻1号1頁(2022)参照。 もっとも、文書回答手続制度があるからといって、税理士の責任の範囲をむやみに広く捉えるものでは決してない。例えば、同制度を利用すべきであったのか否かといった税理士の責任を論ずるに当たっては、顧客である納税者と税理士が締結している契約の具体的な解釈如何によって判断がなされるべきであろう。また、少なくとも、現行の文書回答手続は、節税目的のみの照会を受け付けていないのであるから、節税策を考案した場合において、これを文書回答手続によって確認すれば不確実性が払拭できたはずであるなどとして、税理士の責任を問うべきことにはなりそうにないことを付言しておきたい。 (了)
令和3年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「令和2年分の改正事項等の再確認」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 令和2年分の確定申告においては、多くの改正事項が適用され、令和2年分から確定申告書の様式が一部変更されている。これらの改正事項や様式の変更は、令和3年分の確定申告においても重要である。 そこで、連載第2回は、令和2年分の改正事項等(住宅借入金等特別控除以外)の再確認を行うこととする。 【1】 令和2年分の所得税から適用されている改正事項 令和2年分の所得税から適用されている主な改正事項は、次のとおりである。 各改正事項について、確定申告で注意すべきポイントをまとめる。なお、各改正事項の詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【2】 様式の変更 令和2年分より確定申告書の様式が一部変更された。 (1) 第一表 ① 収入金額等の「給与」欄 収入金額等の給与欄に「区分」欄が設けられた。「区分」欄には、所得金額調整控除の適用がある場合に、次のとおり記入する。 ② 雑所得の区分 雑所得は、「公的年金等」、「業務」、「その他」の3つに区分された。各区分には、次の所得を記入する。 なお、「その他」に設けられている「区分」欄には、次のとおり記載する。 ③ 「寡婦、ひとり親控除」欄 ひとり親控除の創設及び寡婦控除の見直しにより、「寡婦、寡夫控除」欄から「寡婦、ひとり親控除」欄へ変更された。 なお、「区分」欄には、ひとり親控除の適用を受ける場合に「1」を記入する。 ④ 「公的年金等以外の合計所得金額」欄 公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて金額が異なる。公的年金等の収入金額がある納税者は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額を本欄に記入する。 (2) 第二表 令和2年分以降、以下の各欄について様式が変更されている。詳細は、【1】に示している【参考記事】をご参照いただきたい。 * * * 次回(第3回)は、確定申告実務に関する留意点をQ&A方式で解説する予定である。 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q71】 「海外に所在する中古建物に係る不動産所得の計算」 PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美 ●○ 検 討 ○● 1 国外に所在する建物に係る不動産所得の金額の計算(本件新築マンション) 建物の賃貸に係る不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とされています。この必要経費には減価償却費が含まれ、原則として、法定耐用年数に応じて定額法で償却費の計算をすることとされています。本件新築マンションに係る不動産所得の金額は、下記のとおりです。 2 国外中古建物の不動産所得の金額の計算(本件中古居住用建物) 中古建物であっても、不動産所得の金額の計算は上記1と同様ですが、減価償却費の計算については、法定耐用年数ではなく、使用可能期間として見積もられる年数か、その見積りが困難である場合には、以下の簡便的な方法(簡便法)により算定した年数(1年未満の端数があるときはその端数を切り捨て、2年に満たない場合には2年とすることとされています)を用いることが認められています。 (1) 法定耐用年数の全部を経過した資産 法定耐用年数 × 20% (2) 法定耐用年数の一部を経過した資産 (法定耐用年数-経過年数)+ 経過年数 × 20% この簡便法を適用して計算した、本件中古居住用建物に係る不動産所得の金額は、下記のとおりです。 3 国外不動産所得の損失に係る損益通算制限 不動産所得の金額の計算上、国外不動産所得の損失の金額があるときは、当該国外不動産所得の損失の金額に相当する金額は、生じなかったものとみなすこととされています。国外不動産所得の損失の金額とは、国外中古建物の貸付けによる損失の金額のうち、当該国外中古建物の償却費の額に相当する部分の金額とされ、また、国外中古建物とは、不動産所得を生ずべき業務の用に供した国外にある中古の建物で、見積使用可能期間又は簡便法により算定した年数を用いて償却計算するものをいいます(ただし、見積使用可能期間を用いている場合で、当該期間が適当であることの確認ができるものを除きます)。 つまり、国外に所在する賃貸用の中古建物を取得し、減価償却費の計算に簡便法等を用いる場合にこの措置の対象となり、不動産所得に係る損失額のうち国外中古建物に係る償却費の額に相当する部分の金額は他の所得との損益通算が認められません。 本件中古居住用建物に係る不動産所得は損失が生じていますので、その損失の額は損益通算制限の対象となります。損益通算ができない国外不動産所得の損失の金額の具体的な計算は、下記のとおりです。 すなわち、本件では不動産所得の金額は0、他の所得と損益通算できる金額はなし、となります。 なお、確定申告をする際には、下記の付表を添付することとされています。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第71回】 「クラヴィス事件」 ~最判令和2年7月2日(民集74巻4号1030頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第37回】 「株式交付による持株会社への株式承継②(税務編)」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳 相談内容 私は、【第36回】で株式交付についてアドバイスをいただいたL社の代表取締役Fです。 当社の株主構成は、私が過半数の株式を保有し、残りを創業時からの役員・従業員5名が保有しています。 顧問税理士から提案を受けている株式移転による持株会社化については、他の株主の理解が得られそうにないため、株式交付により私が保有するL社株式51%だけを持株会社に移すことを検討したいと思います。 この場合、税務上の取扱いはどのようになるのでしょうか。 〈L社の株主構成〉 〈想定されるスキーム〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出所) 「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について」(経済産業省)の17頁の図を筆者加工。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 税務上の取扱い (1) 令和3年度税制改正 令和3年度税制改正では、株式交付制度を活用して株式交付子会社の株式を譲渡し、株式交付親会社の株式の交付を受けた場合には、株式交付に応じた株主の譲渡損益を繰り延べる措置が設けられました。 具体的には、個人若しくは法人が、所有株式を株式交付により譲渡し、株式交付親会社の株式の交付を受けた場合(交付を受けた株式交付親会社の株式の価額が、当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合(株式交付割合)が100分の80に満たない場合を除く)には、個人については、その譲渡がなかったものとみなされ、法人については、譲渡損益の計上が繰り延べられることになります。 株式交付の対価として株式交付親会社の株式以外の金銭等の交付を受けた部分については、繰延べの対象となりません(措法37の13の3、66の2の2、措令25の12の3、法法61の2①)。 (2) 株式交付に応じた株主の譲渡損益の繰延べ 株式交換や株式移転など他の組織再編行為には、税制適格組織再編の要件として、金銭等不交付要件が定められており、対価として金銭を少しでも交付すれば税制非適格再編として譲渡損益の繰延べが認められませんが、株式交付については、株式交付親会社の株式以外の金銭等が対価の20%以内であれば、自社株式に加えて金銭を交付する、いわゆる混合対価の場合でも譲渡損益が繰り延べられます(株式交付の対価として株式交付親会社の株式以外の金銭等の交付を受けた部分については繰延べの対象となりません)。 また、株式交付には、株式交換や株式移転に求められる株式継続保有要件もありません。 本事例では、株式交付によりF氏が保有する51%のL社株式をY社に譲渡し、対価として株式交付親会社となるY社の株式だけが交付される見込みですので、F氏に課税関係が生じることなくL社株式をY社に移転することが可能です。 (3) 株式交付親会社の税務 ① 取得価額及び資本金等の額 株式交付親会社が株式交付により株式交付子会社の株式を取得した場合における取得価額は、株式交付に応じた株主の数に応じて、以下の金額となります(措令39の10の3④一、二)。 〈株式交付親会社の取得価額〉 また、株式交付親会社における資本金等の額の増加額は、株式交付により取得した株式交付子会社の株式の取得価額から株主に交付した金銭等の額を減算した金額となります(措令39の10の3④三)。 ② 株価算定時における現物出資等受入れ資産の取扱い 株式交付制度の創設に合わせて財産評価基本通達の一部改正が行われ、純資産価額(財基通185)の算定上、評価差額に対する法人税額等に相当する金額の計算における現物出資等受入れ資産の対象に「株式交付により著しく低い価額で受け入れた株式」が追加されました。 評価対象会社の資産の中に、現物出資若しくは合併により著しく低い価額で受け入れた資産又は株式交換、株式移転若しくは株式交付により著しく低い価額で受け入れた株式(現物出資等受入れ資産)がある場合には、現物出資等の時において当該現物出資等受入れ資産を財産評価基本通達に定めるところにより評価した価額から当該現物出資等受入れ資産の帳簿価額を控除した金額(現物出資等受入れ差額)を帳簿価額に加算することになります(財基通186-2)。 [2] 結論 本事例においては、F氏の保有するL社株式をF氏自身が新設する持株会社Y社に譲渡し、対価としてY社株式だけを取得するスキームが想定されているため、F氏に課税関係が生じることなくL社株式をY社に承継することが可能です。 L社における会社法上の手続きは譲渡制限株式の譲渡承認手続きだけとなりますので、株式移転や株式交換を選択する場合に比べて会社法上の手続きや課税の繰延べ要件などのハードルが比較的低いスキームといえるでしょう(会社法の取扱いについては【第36回】(①会社法・スキーム編)にて解説しています)。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)
〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第10回】 「インボイスの交付を受けることが困難な取引の取扱い」 ~中古車の買取り~ 税理士 石川 幸恵 【Q】 インボイス制度導入後も、中古自動車販売業者が消費者などから中古車を買い取るときは仕入税額控除ができると聞きました。仕入税額控除を受けるための要件と気を付けるべきことを教えてください。 〔ポイント〕 (1) 適格請求書等の保存は不要ですが、帳簿の記載事項が追加されます。 (2) 仕入税額控除ができるのは棚卸資産の取得のみです。 (3) 適格請求書発行事業者からの買取りであっても、家事用資産を棚卸資産以外の事業用資産として買い取るのは仕入税額控除不可です。 * * * 【A】 (1) 適格請求書等の保存は不要で、帳簿の記載事項が追加 ① インボイスの交付を受けなくても仕入税額控除可 古物営業を営む者が、消費者など適格請求書発行事業者でない者から古物(棚卸資産に限る)を購入する場合については、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます(新消法30⑦、新消令49①、インボイスQ&A問107)。 したがって、中古自動車販売業者が消費者から中古車を買い取るときは、インボイスの交付を受けることはできませんが、仕入税額控除ができます。 ② 帳簿の記載事項 上記①の仕入税額控除を受けるための帳簿の記載事項は次のとおりです(新消法30⑦⑧、新消令49①、インボイス通達4-7)。 表の①~④が古物台帳に記載されている場合には、古物台帳と総勘定元帳を合わせて保存することで帳簿の保存要件を満たすことができます。 (2) 仕入税額控除できるのは棚卸資産のみ 古物営業を営む者が、消費者など適格請求書発行事業者でない者から古物を購入する場合に、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められるのは棚卸資産に限られています(新消令49①)。買い取った中古車を代車や社用車として使用する場合は、仕入税額控除はできません。 (3) 仕入明細書を作成して適格請求書発行事業者から家事用の中古車を事業用に購入する場合(「令和4年度税制改正の大綱」による見直し) ① 売り手の確認を受けた仕入明細書はインボイスに該当 インボイス制度では、買い手が作成した仕入明細書等で、売り手の確認を受けたものについては、インボイスとして取り扱うことができ、買い手で仕入税額控除が可能です(インボイスQ&A問85)。 ② 適格請求書発行事業者から家事用の中古車を購入する場合 中古自動車販売業者が消費者から社用車として使うために購入した中古車は、上記(2)のとおり、仕入税額控除はできないのですが、現行の規定では、売り手が適格請求書発行事業者の登録を受けた個人事業者であれば、買い手が上記①のように仕入明細書を作成し、売り手の確認を受けることで、家事用の自動車の買取りであっても仕入税額控除が可能になります。 ただし、令和3年12月24日に閣議決定された「令和4年度税制改正の大綱」によると、仕入明細書の保存での仕入税額控除は、売り手において課税資産の譲渡等に該当するもののみに見直される(※)とされていますので、今後の動向には注意が必要です。 (※) この仕入明細書の保存での仕入税額控除に関する見直しは、中古自動車販売業者に限られず、全ての課税事業者に及びます。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第19回】 「2以上の居住用宅地等がある場合の特定居住用宅地等の特例」 税理士 柴田 健次 [Q] 被相続人である甲は、下記の通りAマンション、B宅地及び家屋、Cマンション、Dマンションを所有していましたが、このうち、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例を受けることができるのはどの宅地でしょうか。 甲の相続人は、生計を一にしている配偶者である乙、生計を一にしている長男である丙(大学生)、生計を一にしている二男である丁(大学生)の3人です。土地及び家屋については、全て乙が相続で取得しています。 甲、乙、丙及び丁の宅地の利用状況は、下記の通りです。 [A] B宅地とC及びDマンションの敷地については、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができますが、Aマンションの敷地については、特例の適用を受けることができません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等の意義 被相続⼈⼜は当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた当該被相続⼈の親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等(当該宅地等が2以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る)で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4③二)。 上記の政令で定める宅地等とは、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれに定める宅地等とされています(措令40の2⑪)。 2 一の宅地等の判定(生活の本拠の判定) 被相続⼈等の居住の⽤に供されていた宅地等が2以上ある場合には、当該被相続⼈等が主としてその居住の⽤に供していた⼀の宅地等に限られます。「主としてその居住の用に供していた一の宅地等に限る」の制限は、平成22年度の税制改正によって、改正されたものです。改正前においても相続人の居住の継続という制度趣旨から主として居住の用に供されていた一の宅地等に限るものと解されていましたが、法令で明文化されていなかったため、平成22年度の改正で明確化されました。 具体的な判断基準は、法令や通達に明文化されていませんが、国税庁質疑応答事例において、「被相続人等の居住の用に供されていたかどうかは、基本的には、被相続人等が、その宅地等の上に存する建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより判定すべきものと考えられ、その具体的な判定に当たっては、その者の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して判定する」とされています。 この国税庁質疑応答事例は、所得税法における居住用家屋の範囲を定めた租税特別措置法関係通達31の3―2(居住用家屋の範囲)と同意義であり、その通達の方が詳細に記載されていますので、以下で確認しておきましょう。 3 本問への当てはめ 本問の場合には、甲、乙、丙及び丁の生活の本拠がどこであるのかが問題となりますが、それぞれ下記の通りとなります。 したがって、被相続人等の居住の⽤に供されていた宅地等は、上記1③ロに記載のとおり、被相続⼈が主としてその居住の⽤に供していた⼀の宅地等(B宅地)及び生計を一にしていた親族が主としてその居住の用に供していた⼀の宅地等(B宅地、C及びDマンション敷地)が特例の対象地となります。B宅地は生計を一にする配偶者の居住の用に供している宅地等にも該当することになりますので、被相続人及び生計を一にする配偶者の居住の用に供されている宅地等に該当します。 なお、生計を一にする親族が2⼈以上ある場合には、当該親族ごとにそれぞれ主としてその居住の⽤に供していた⼀の宅地等を判定する点にも注意をしておきましょう。 本問の場合には、配偶者が土地及び家屋を取得しており、配偶者は居住要件等がありませんので、B宅地、C及びDマンションの敷地の全てについて、限度面積の範囲内で特例を受けることができます。 ★実務上のポイント★ 生活の本拠の判断は、実務上、迷うことも少なくないですが、被相続人等の日常生活の状況、その建物の入居目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無等を確認することが重要となります。 (了)
〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第9回】 「国税不服審判所の本部と支部の組織」 公認会計士・税理士 大橋 誠一 1 執行機関からの独立 国税不服審判所は、国税庁の特別の機関として、執行機関である国税局や税務署から分離・独立した機関として設けられている。 しかし、令和2年4月1日現在の定員471人のうち、裁判官・検察官といった法曹出身者、弁護士・税理士・公認会計士といった民間出身者などからなる税務行政部外からの任用者は計65人であり、職員の多くは、執行機関である国税局や税務署などからの任用(出向)者(いわゆる国税プロパー職員)で占められている。 そうはいっても、上記の税務行政部外からの出身者は、国税不服審判所の本部・支部の枢要なポスト又は裁決判断に重要な役割を占めるポストに配置されており、人数としては少数であっても、それ以上の影響力を発揮しているといって差し支えない。 2 本部の組織 (1) 本部と支部の関係 国税不服審判所は、全国を管轄する1つの組織である。 しかし、審査請求人の便宜及び審査請求事件の能率的な処理を行うために、その事務の一部を取り扱う「支部」が全国に12ヶ所設置され、その支部に対応する中央の組織を「本部」と呼んでいる。 本部は国税庁のある東京に置かれ、支部は各国税局の所在地に置かれている。支部の管轄区域は国税局と同一であり、その名称は、例えば東京支部ならば「東京国税不服審判所」という。また、沖縄支部の場合は沖縄国税事務所の所在地に置かれ、管轄区域は沖縄国税事務所と同一で、その名称は「国税不服審判所沖縄事務所」という。 国税不服審判所長が審査手続上有している権限は、原則として支部の首席国税審判官(東京支部の場合には「東京国税不服審判所長」)に委任されており、ほとんどの審査請求に係る事件については支部で調査、審理がされている。 (2) 本部の組織 本部には、所長、次長の下に、審判部、管理室の機構がある。 所長は、財務大臣の承認を経て国税庁長官が任命するが、歴代にわたり裁判官出身者が法務省から出向することにより着任しており、税務行政部内ではなく司法出身者をトップに据えていることで執行機関からの独立に配慮しようとしている。 また、審判部は、税目別の審判官(副審判官)や審査官が配置され、支部からの個別事件の相談対応、支部から発出された裁決の事後的レビューなどを行っている。 特に、審判部にはリーガル担当の審判官として検察官出身者が配置されており、この者が司令塔となって(裁判官出身者である)所長の意向を汲んで各支部の主要な事件を管理していることからしても、執行機関からの独立が担保されているといえるだろう。 3 支部の組織 (1) 規模はさまざま 規模は120人を超える東京支部から7人の沖縄支部までさまざまであり、陣容によって組織体系は異なるが、機構は概ね首席審判官、次席審判官(東京・大阪・名古屋)、審判部、管理課によって構成されている。 (2) 首席審判官 歴代にわたり、東京支部は検察官出身者、大阪支部は裁判官出身者が法務省から出向することにより着任し、それ以外の支部は国税プロパー職員(国税庁のキャリア又はノンキャリの採用者)が着任している。 (3) 審判部 審判部は合議体の所属する部門と法規審査担当者が所属する部門に分かれ、東京支部・大阪支部などの比較的大規模な支部は法規審査部門で1つの部が構成されるが、比較的小規模の支部は審判部の中に両者の機能が併存している。 4 個別事件の審理体制 (1) 担当審判官等の指定 支部所長は審査請求に理由があるかどうかについての調査及び審理を行わせるため、担当審判官1人と参加審判官2人を指定する。 担当審判官は審判官から選任されなければならないが、参加審判官については、副審判官からも選任される。 このほかに、担当審判官を補佐する分担者として審査官が1名指名される。 (2) 審判部の各部門の構成員 東京支部の審判部の各部門は、概ね以下の5名の構成であることが多い。 例えば、この部門に2つの事件が配付されたとした場合、A事件については、担当審判官は主任審判官、事件主任として副審判官、参加審判官は民間出身審判官の計3人で合議体を構成し、審査官2人のうち1人が分担者として補佐することになる。 また、別のB事件については、担当審判官は民間出身審判官、参加審判官は主任審判官と副審判官の計3人で合議体を構成し、審査官2人のうちのもう1人が分担者となる。 5 審理の実際 (1) 民間出身審判官は少数意見か 合議体の3人の過半数の議決によって、審査請求が棄却(納税者負け)か取消し(納税者勝ち)かが決まることになるが、主任審判官が国税プロパー職員であることはいうまでもないとして、副審判官も全てが国税プロパー職員であり、結果として合議体の構成は、「国税プロパー職員2」対「民間出身者1」となることが多い(1部門が6人で「1対2」になることもある)。 そうすると、税理士・弁護士・税法学者から見ると、「何だ、民間出身者がいるといっても結局は少数意見として議決に反映されないではないか」という印象を持たれるのではないかと推察されるが、現実にはそうともいえない。 (2) 「棄却主張の国税プロパー職員」VS「取消し主張の民間出身者」ではない 筆者の勤務経験として、国税プロパー職員の中には、身内(後輩)のした税務調査に批判的な者は案外多かった。 しかし、大概は、 という考え方ではなく、 というものである。 一方、民間出身者が、上記の国税プロパー職員の意見に対して、 とコメントするといった、対外的な両者の立場が逆転しているような議論が交わされることもある。 結局のところ、「国税プロパー職員が棄却(納税者負け)の立場で、民間出身者が取消し(納税者勝ち)の立場で討議をしている」といった対外的な審判所に対するイメージはそのまま当てはまらないのが審理の実際である。 (了)
“国際興業事件”を巡る5つの疑問点 ~プロラタ計算違法判決を生んだ根本原因~ 【第3回】 公認会計士・税理士 霞 晴久 《疑問点4》 そもそも外国法人の資本金等の額及び利益積立金の額は算定可能か (1) 株主に対する「資本金等の額」の通知義務を負わない外国法人 内国法人が外国法人から剰余金の配当等を受ける場合の外国法人には、①外国上場会社の場合、②内国法人の外国子会社等の場合の2つが一般的であろう。法人税法24条1項のみなし配当を計算する場合、金銭その他の資産を交付する外国法人の設立以来の全ての払込資本の増減を反映させるものとして、同法人の「資本金等の額」(法令8各号参照)の把握が不可欠であるが、「資本金等の額」は我が国法人税法上特有の資本概念(※24)であり、そもそも外国法人が我が国の法人税法に従って「資本金等の額」を計算する義務はなく、又当然に、外国法人には法人税法施行令23条4項が規定するような法人株主に対する「資本金等の額」の通知義務は課せられていない。 (※24) 渡辺徹也『スタンダード法人税法』弘文堂(2018年)172頁は、「資本金等の額は、法人税法上の資本概念であり、その内容は、所得課税の根幹をなす原資(あるいは元本)を示すものである。会社法から借用したものとは別に、法人税法独自の資本概念が必要となる理由は、法人から株主への金銭等の払出し等があった場合に、当該払出しの『出所』を確定しておかねばならないからである。すなわち、『原資』に相当する部分と、法人が設立後に獲得した『利益』に当たる部分のうち、どちらから払出しが行われたかを区別するために、法人税法上の資本概念が必要となるのである。」と述べている。 したがって、①外国上場会社からみなし配当を受領した場合に、同社の「資本金等の額」からみなし配当の金額を計算することは事実上不可能であると断言できる(ただし、過去の他の裁判例における取扱いについては次回の《疑問点5》参照)。法人税法24条1項には、みなし配当に該当するものとして、「合併(適格合併を除く。)」(同1号)、「分割型分割(適格分割型分割を除く。)」(同2号)、「株式分配(適格株式分配を除く。)」(同3号)、「資本の払戻し(剰余金の配当(資本の剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配」(同4号)、「自己の株式又は出資の取得」(同5号)、「出資の消却」(同6号)及び「組織変更」(同7号)の組織再編行為が列挙されている。内国法人が投資する外国上場会社がこのような組織再編行為等を行うことは十分考えられる(※25)ため、当該内国法人がそのような行為を行った外国上場会社から金銭その他の資産の交付を受けた場合、実務上どのように処理するか大きな問題となろう。 (※25) 国税庁HP文書回答事例には、適格合併の事例ではあるが、「英国子会社がオランダ法人と行う合併の取扱いについて」が掲載されている。 他方、②の内国法人の外国子会社等の場合は、当該外国子会社等の決算を我が国の法人税法上の規定に引き直すことで、我が国の法人税法が要求するものに対応できる可能性がある。本件では、Xに剰余金の配当を行ったKPC社はXの100%子会社(米国デラウエア州法人)であり、現地には、米国会計基準に準拠した財務報告書類と、連邦所得税法に準拠した税務申告の各データしか存在しなかったと思われる。筆者は、本件について、日本の親会社であるXが、KPC社から必要な情報を入手し、同社の設立以来の会計帳簿を我が国法人税法に全て引き直して得られた数値を基に、益金不算入となる外国子会社からの配当及び株式譲渡損を計算し、連結確定申告書(※26)を作成・申告したのではないかと考えている。 (※26) Xは、連結納税制度適用会社ではあるが、KPC社はXの100%子会社であっても内国法人ではないため、当然のことながら、Xの連結納税の範囲には含まれない。 しかしながら、日本の親会社の100%子会社であっても、他から買収した子会社の場合や社歴が相当古い子会社等、現実問題として、我が国法人税法にいう「資本金等の額」や「利益積立金の額」を計算するためのデータが入手不能なケースも想定されるので、我が国税法基準に引き直すのは容易ではないと思われる。この間の事情について、日本公認会計士協会租税調査会研究報告第17号『国外における組織再編等に係る国内税法の適用関係について(中間報告)』(平成21年2月17日。以下「中間報告」という)12頁は、 と述べている。 (2) 純粋で混じり気のない資本金等の額と利益積立金の額の分配 ところで、払い出すその他の資本剰余金が、純粋に資本部分のみで構成されているとしたらどうだろうか。理屈としては敢えてプロラタ計算するまでもない、ということになろう。上記(1)のとおり、筆者は、Xが、KPC社の会計帳簿を全て我が国法人税法基準に引き直したと考えているので、現地のデラウエア州法に準拠した配当決議が実際どのようなものだったかによるものの(※27)、【第1回】の〔表1〕のとおり、その他の資本剰余金として払い出された100,000,000米ドルは、全て前期期末の資本金等の額211,057,771米ドルを原資としていると見ることも不可能ではない。もしそうであれば、本件において、資本剰余金減少部分はその全体が資本の払戻しとして株式又は出資に対応する部分、利益剰余金減少部分は全て剰余金若しくは利益の配当として受取配当金の益金不算入の対象となるというXの主張以外の結論はありえないことになる。 (※27) とはいえ、前期期末の資本金等の額とその他の資本剰余金の減少額の大小関係から、配当決議をしたKPC社は、同減少額が全て資本部分から構成されていることを意図していたと見るのが自然であろう。 そもそも、法人税法が、資本部分と利益部分が混在しているものに対してプロラタ計算で両者を切り分ける制度設計をしているところ、純粋に資本部分しか存在しない場合にまで厳格にプロラタ計算を適用することは、その結果算定された計算結果が不合理なものとならざるを得ないのである。現実の配当決議に反し、残余の資本金等の額まで全て払い出されたとする処分行政庁の更正処分が不当なのは、この点からも指摘できる。あくまで、私法上の法律関係に基づいて課税関係を判断するという税法の原則に立ち返るべきである。 本件最判に従い、今後行われるであろう法人税法施行令の改正(※28)では、《疑問点2》で指摘した中間持株会社を利用した資金還流スキームへの対応に加え、資本部分と利益部分が混在していない・・・・・・・その他の資本剰余金の払出しへの対応もその俎上に載せるべきではないかと考える。 (※28) 拙稿「《速報解説》 最判令和3.3.11を受けた資本の払戻しに係るみなし配当の額の計算方法等の見直し~令和4年度税制改正大綱~」参照。 (続く)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第121回】 「2021年における調査委員会設置状況」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 本連載では、個別の会計不正に関する調査報告書について、その内容を検討することを主眼としているが、本稿では、「第三者委員会ドットコム」が公開している情報をもとに、各社の適時開示情報を参照しながら、2021年において設置が公表された調査委員会について、調査の対象となった不正・不祥事を分類するとともに、調査委員会の構成、調査報告書の内容などを概観し、その特徴を検討したい。 第三者委員会ドットコムが公開しているデータを集計したところ、2021年において、調査委員会の設置を公表した会社は61社であり、2020年の52社を上回っているものの、2018年(68社)、2019年(67社)よりも少なくなっている。61社のうち、複数の調査委員会設置を公表した会社は下表のとおり7社であり、この結果、設置が公表された調査委員会の数は69となる(設置を公表した後に、設置をしなかった1社を含む)。 上記の会社については、会社数としてはそれぞれ「1社」とカウントする一方、委員会の構成については委員会ごとに、不正・不祥事の分類はその区分ごとに集計しているため、一部、合計数が合わないことをお断りしておく。 調査委員会設置を公表した61社のうち13社については、本稿執筆時点(令和4年1月7日)において、まだ調査報告書(その概要を含む)を公表していない。このうち5社については、調査委員会の設置そのものが11月又は12月であり、まだ調査が終わっていないと考えられる。 【市場別分類】 市場別分類では、東証1部上場会社が42社と約69%を占めた(複数市場に上場している会社は東証1部又は2部に含めている)。上場会社数は2021年12月31日現在。 主たる市場以外では、日本証券取引所が、「国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供すること」(※1)などを目的に運営しているTOKYO PRO Marketに上場する株式会社ひかりホールディングスと札幌証券取引所に上場する株式会社北弘電社が、それぞれ調査委員会の設置と調査報告書を公表している。 (※1) 日本取引所グループ「TOKYO PRO Marketの概要」参照。 【会計監査人別分類】 会計監査人別の分類では、いわゆる大手4大監査法人の監査を受けていた上場会社が40社、中堅以下の監査法人の監査を受けていた会社が21社となり、昨年に比べて中堅以下の監査法人のクライアントの比率が若干減少している。 大手4大監査法人のなかでは、EY新日本有限責任監査法人のクライアントで調査委員会の設置を公表した会社が15社と最も多く、有限責任監査法人トーマツのクライアントが14社、有限責任あずさ監査法人のクライアントが10社であった一方、PwCあらた有限責任監査法人のクライアントは1社(株式会社東芝)となっている。 なお、中堅以下の監査法人で複数のクライアントが調査委員会を設置したのは、太陽有限責任監査法人が6社で最も多く、監査法人アリアが3社、PwC京都監査法人が2社となっている。 【調査委員会の構成による分類】 一部、委員名を非公表としている委員会を含めた調査委員会の構成ごとの分類では、日本弁護士連合会が2010年に公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠していると明言している調査委員会及び明言はしないまでもその趣旨に沿って外部の委員を選定していると認められる調査委員会は30社と、過半数を下回る水準であった。 また、2018年からの傾向であるが、調査委員会の構成や委員名について、非公表とする会社があり、2021年は5社が「非公表」、1社が「未設置」となっている。「未公表」の5社のうち4社は、調査報告書についても公表しないか、概要を公表するにとどまっている。「未設置」となったパス株式会社は、取締役会が定時株主総会議案すべての上程を中止したことについて、独立した外部専門家からなる調査委員会を設置することを公表したものの、定時株主総会において、株主代表の議長により修正動議が提出されて決議されたことにより、取締役全員が異動となったことから、調査委員会の設置を中止するという、異例の展開となっている(※2)。 (※2) パス株式会社「代表取締役の異動および定款の変更に関するお知らせ」 【調査委員会を設置することとなった不正・不祥事の分類】 調査対象となった不祥事別にこれを分類すると次表のとおりとなる。なお、分類上、経営者や従業員の不正であっても、決算修正等、公表している決算報告書に影響を及ぼす可能性のあるものについては、「会計不正」としている。 【会計不正の態様】 次いで、「会計不正」に分類された39件について、それぞれの不正の態様を見ておきたい。 「会計不正」と分類できる内容で設置された調査委員会は39となる(上述のとおり)が、OKK株式会社は2つ、アジア開発キャピタル株式会社が3つの調査委員会を設置しているため、下に掲げる一覧では36社となる(赤字は本連載で取り上げた報告書)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)