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税効果会計を学ぶ 【第20回】「退職給付に係る負債又は退職給付に係る資産に関する一時差異の取扱い、のれん又は負ののれんの取扱い」

税効果会計を学ぶ 【第20回】 「退職給付に係る負債又は退職給付に係る資産に関する一時差異の取扱い、のれん又は負ののれんの取扱い」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、次のものについて解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 退職給付に係る負債又は退職給付に係る資産に関する一時差異の取扱い 連結財務諸表における退職給付に係る負債に関する繰延税金資産又は退職給付に係る資産に関する繰延税金負債については、次のように会計処理する(税効果適用指針42項)。   Ⅲ 子会社株式等の取得に伴い認識したのれん又は負ののれんに係る繰延税金負債又は繰延税金資産の取扱い 1 会計処理 子会社株式等の取得に伴い、資本連結手続上、認識したのれん又は負ののれんについては、繰延税金負債又は繰延税金資産を計上しない(税効果適用指針43項)。 2 基本的な考え方 上記の会計処理(税効果適用指針43項)は、連結税効果実務指針に規定されていた次の考えを踏襲している(税効果適用指針145項)。 (了)

#No. 401(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/07

空き家をめぐる法律問題 【事例30】「借家人が行方不明の空き家の残置物件の処理」

空き家をめぐる法律問題 【事例30】 「借家人が行方不明の空き家の残置物件の処理」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私は、Ⅹ氏に所有物件を賃貸していましたが、ある時期からⅩ氏の行方が分からなくなり、連絡もつかなくなりました。その後、賃料の支払いも滞るようになり、半年以上が経過しました。窓ガラスから室内をのぞき見ると、ガラクタのような物件が散乱していました。いつまでも空き家の状態にしておくと賃料収入が得られないので、契約を解除して室内を掃除したいのですが、どのような方法があるでしょうか。 なお、賃貸借契約書には、「賃借人は、賃貸借契約終了時に、当該賃借物件に残置物がある場合、当該残置物の所有権を放棄して、賃貸人が当該残置物の処分を行うことを承諾する」旨の特約を付けています。   1 はじめに 賃貸中の物件の賃借人が賃料未払いのまま行方不明になった場合、賃貸人としては、当該賃貸借契約を解除して明渡しを求めていく必要がある。また、賃借物件に賃借人の残置物がある場合、賃貸人の判断で、残置物を処分することの可否について相談を受けることも少なからずある。 そこで、今回は、賃借人が行方不明となり空き家となった場合の対処方法を検討することとしたい。   2 債務不履行解除と残置物撤去 賃借人が賃料未払いのまま行方不明になった場合、賃貸人は債務不履行を理由に賃貸借契約を解除することになる。もっとも、賃貸借契約は、人的信頼関係を基礎にしているため、解除をすることができるのは信頼関係が破壊された場合に制限されることになる。実務的には、3ヶ月程度の賃料不払いが一つの基準となる。 賃借人が行方不明の場合、賃貸借契約解除の意思表示を賃借人に現に伝えることができないため、公示送達(民法第98条)による必要がある。もっとも、後述するように、賃貸人が独自の判断で残置物を撤去することには法的に問題があるため、当該賃借人を被告として建物明渡請求及び未払賃料支払請求訴訟を提起することになる。 この場合、民事訴訟法上の公示送達(民事訴訟法第113条)によって訴状に記載された賃貸借契約解除の意思表示が到達したものと扱われることになるため、別途民法上の意思表示の公示送達を経ず、訴訟において賃貸借契約の解除をすることが可能となる。   3 賃貸人が残置物を撤去する条項の有効性 上記2のような訴訟を行うと、時間と費用を要するため、賃貸借契約書中に、契約終了時の残置物について、賃貸人によって当該残置物の処分が行われることを賃借人が承諾する旨の特約が定められていることがある(特約の内容には種々のパターンがあるが、以下、このような特約を便宜上「自力救済条項」という)。 しかしながら、現行法制上、自力救済は原則として禁止されているため、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合のみ、その必要の限度を超えない範囲で、例外的に認められるものと解されている(最判昭和40年12月7日民集19巻9号2101頁参照)。 問題は、上記最高裁を前提として、自力救済条項の有効性が認められるかという点にある。この点に関して、裁判例においては、①上記最高裁に定める「特別の事情」が認められる場合に限って有効と認めるものや(東京地判平成18年5月30日判時1954号80頁等)、②賃借人の占有に対する侵害を伴わない態様における限度で有効と認めるものなど(東京高判平成3年1月29日判時1376号64頁等)があり、おおむね自力救済条項を限定解釈した上で、個別事情に照らして残置物の搬出や処分の違法性を判断する手法がとられているものと思われる。 ①の裁判例の基準は相当限定して自力救済条項の有効性を認めるものであり、②の裁判例の基準は、賃借人が自ら賃借物件の占有を喪失した後の残置物は、賃借人が自らの意思で残置したものであるから、所有権を放棄した場合に準じて扱うことができるとの価値判断があるものと考えられる。②の基準によった場合、例えば、賃借人が自ら建物から退去した後の残置物を、賃貸人が自力救済条項に基づいて搬出等することは可能と考えられる(前記東京高判参照)。 これに対して、賃借人が行方不明である場合、当該賃借人の意思は明らかではないため、行方不明であることのみをもって当該賃借人が賃借物件の占有を喪失したものと認めることは難しいように考えられる。そのため、賃貸人が賃貸借契約を解除できたとしても、自力救済条項に基づいて、残置物の搬出や処分を行うことは違法と評価されるリスクが高い。このようなリスクを回避するためには、賃貸人としては、賃借人に対する建物明渡等請求訴訟を提起した上で、判決に基づいて強制執行を行わざるを得ない。   4 強制執行と残置物の撤去 上記2の訴訟において賃貸人が請求認容判決を得た場合、賃借物件の明渡し及び未払賃料の回収に向けた強制執行の申立てを行うこととなる。もっとも、未払賃料の回収手段として、残置物(動産)の強制執行を申し立てても、残置物に価値がないため動産執行自体が奏功しないことも多い。 そこで、賃借物件の明渡しを求める強制執行に付随して、強制執行の目的物ではない動産について、3つの例外的手段が設けられている。実務的には即日売却が利用されることが多く、賃貸人が当該残置物を買い受ければ、自ら処分することができる。もっとも、強制執行の申立てから残置物の処分に至るまで、賃貸人が一定の経済的負担が強いられることは否めない。   5 本件の場合 本件においては、賃借人Ⅹが半年分以上の賃料を滞納して行方不明となっているため、賃貸人は、Ⅹとの賃貸借契約を解除することができると思われる。もっとも、Ⅹが行方不明であることを理由に、自力救済条項に基づいて残置物の撤去をすることは法的に問題があるため、建物明渡請求及び未払賃料支払請求訴訟を提起することになる。民事訴訟法上の公示送達が認められれば、請求認容判決を得ることができるが、室内の残置物はガラクタのようなものであるため、動産執行は奏功しない可能性が高く、明渡しの強制執行に付随して目的外の動産を即日売却により取得し、処分をすることになるものと考えられる。 (了)

#No. 401(掲載号)
#羽柴 研吾
2021/01/07

〈知識ゼロからでもわかる〉ブロックチェーン技術とその活用事例 【第1回】「ブロックチェーンの基礎知識」

〈知識ゼロからでもわかる〉 ブロックチェーン技術とその活用事例 【第1回】 「ブロックチェーンの基礎知識」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   はじめに ブロックチェーンは、全ての取引履歴を信頼性のある形で保存し続けるための技術であり、透明性が高く、データの改ざんが極めて難しく、かつ仕組みが停止する可能性が極めて低い等の利点があることが実証されている。 株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、世界のブロックチェーン市場規模は、2020年の30億米ドルから、2025年までに397億米ドルまで拡大し、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は67.3%と予測されている。予測からもわかるように、ブロックチェーン技術は、暗号資産(仮想通貨)であるビットコインが生まれてから実際に活用され、その利便性から暗号資産(仮想通貨)以外においても、徐々に我々の日常に浸透してきており、今後も必要な技術であることがうかがえる。 本連載では、「ブロックチェーン」技術の特徴などを簡潔に説明し、暗号資産(仮想通貨)以外のあらゆる業界への応用が始まっているブロックチェーンの活用事例を紹介しながら、概説を行うこととする。   1 概要 ブロックチェーンとは情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録につき暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、「ビットコイン」等の暗号資産(仮想通貨)に用いられている基盤技術である。一般社団法人日本ブロックチェーン協会は広義のブロックチェーンを「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノード(※1)に保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術」と定義している。 (※1) ノード(Node)とは、P2Pネットワークに参加するコンピュータ又は参加者のこと。 「分散型台帳」とも呼ばれるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラットであるという特徴を備えている。 【図1-1】ブロックチェーンによる分散管理のイメージ   2 ブロックチェーンの分類 ブロックチェーンの取引には「記録」と「承認」というプロセスが存在し、このプロセスの相違により、一般的に「パブリック型」「プライベート型」「コンソーシアム型」の3種類に分類できる。 (1) パブリック型 「パブリック型(パブリックチェーン)」は、中央集権的な管理機関を持たず、不特定多数の誰でも自由に参加でき、だれでも採掘(マイニング)(※2)に参加できるブロックチェーンである。「パブリック型」は管理者が不在で、分散型の管理ができるため強固なシステム構築ができる。 (※2) 採掘(マイニング)とはブロックチェーンの安全性を高めるために行う処理で、膨大な数学的計算を繰返し「ナンス(Nonce)」と呼ばれる数値を探すことを指す。 すなわち、「パブリック型」は取引記録の情報を世界中誰でも閲覧することができるため、取引の透明性が非常に高い。また、中央に管理者がいない「パブリック型」は、相手方が破綻するなどして、契約が履行されずに損失を被るカウンターパーティーリスクは生じないことになる。仮に、悪意ある採掘者(マイナー)がブロックチェーンの内容を改ざんしようとした時、全てのブロックを書きえなければならず、膨大な改ざん処理を行っている間に次のブロックが生成されるため、実質的には改ざんが不可能である。そのため、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は「パブリック型」が用いられている。 (2) プライベート型 「プライベート型(プライベートチェーン)」は、「パブリック型」と異なり、管理者が存在するのが特徴である。「プライベート型」は管理者が存在するものの、参加者も含めて単一の組織に限定され、合意形成がスムーズに行われるため、取引も迅速に行われるなどの特徴がある。 すなわち、「プライベート型」は、仕様変更やルールを簡単に変更できるため用途に応じカスタマイズ可能であり、ブロックチェーン上の情報を中央管理者が制限することが可能である。また、権限を与えられた少数の人が行うので、取引承認を早く行うことができることになる。 (3) コンソーシアム型 「コンソーシアム型」は単独で利用するのではなく複数の企業、もしくは組織、団体で活用するブロックチェーンである。すなわち、「プライベート型」に非中央集権の要素を取り入れた管理体制を持つことが特徴であり、プライベート型の持つ柔軟性と秘匿性、「パブリック型」の持つ非中央集権化が共存するブロックチェーンである。 【図1-2】ブロックチェーンの分類   3 市場規模予測 ブロックチェーンの概念は比較的新しく、将来的にも応用可能性が非常に広いと考えられる。そのため、多くの調査会社が市場規模予測レポートを発表しているものの、その技術的な達成可能性や実社会への応用可能性をどのようにみるか、どこからどこまでをブロックチェーンに関連した市場とみるかなどの視点により、想定している市場プレーヤーも異なり、市場規模の算出方法が大きく異なってしまっているようである。 例えば、株式会社グローバルインフォメーションは、市場調査レポート「ブロックチェーンの世界市場-2025年までの予測:アプリケーションプロバイダー、ミドルウェアプロバイダー、インフラプロバイダー」 (MarketsandMarkets) を2020年6月1日に公表している。当該レポートによると、ビジネスプロセスの簡素化と、ブロックチェーン技術とサプライチェーン管理のニーズの高まりが、ブロックチェーン市場全体を牽引することとし、ブロックチェーン市場規模は、2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大し、年平均成長率(CAGR)67.3%で成長を遂げると予測している。 また、IDC Japan 株式会社は、2019年3月28日に世界全体のブロックチェーンソリューション市場の支出額予測「IDC Worldwide Semiannual Block chain Spending Guide」を公表している。当該レポートではブロックチェーンへの支出は、2018年から2022年までの予測期間を通じて順調に増加し、5年間の年平均成長率(CAGR)は76.0%、2022年の支出額は124億ドルになると予測している。 さらに、アイルランドの市場調査企業Research and Marketsが2019年3月25日に公表した調査レポートによれば、銀行・金融を始め、医薬品や自動車、農業など、米国内の11業界におけるブロックチェーン支出は、米国におけるブロックチェーン技術の発展に関して、2025年までに年間16億5,100万ドル(約1,818億円)が投じられると予測し、2018年から2025年にかけてブロックチェーンに対する米国企業の支出が約13倍上昇するとの予測をしている。 どのレポートも米国及び中国、銀行を含む金融業を中心にブロックチェーン市場が牽引することにより今後成長することを予測しており、我が国においても今後同様にブロックチェーン市場は成長すると考えられる。ブロックチェーンは、インターネット以来の最大の発明だと言われることもあり、既存産業の仕組みや構造を根本から変革するポテンシャルを持ち、ブロックチェーンが主役となる世界が迫っている。 (了)

#No. 401(掲載号)
#松澤 公貴
2021/01/07

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第40話】「雑所得の業務収入」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第40話】 「雑所得の業務収入」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「令和2年分の確定申告書の様式なんですけど・・・」 そう言いながら、浅田調査官は、中尾統括官の机の前にやって来る。 「令和2年分確定申告書の『収入金額等』の「雑所得」の区分表示が、次のように「業務」という欄が追加された形式になっていますが・・・これって・・・何か・・・改正があったのですか?」 浅田調査官は、令和2年分確定申告書のA様式を中尾統括官に差し出し、雑所得の欄を指さして見せる。 中尾統括官は、差し出された様式を見る。 「これは・・・令和2年度税制改正で雑所得の改正が行われたから・・・だろう。」 中尾統括官は、机の引き出しから「令和2年度税制改正」のパンフレットを取り出し、ページをめくる。 「最近・・・上場企業でも、給与所得者である社員の兼業や副業が認められ、それによって、確定申告書の提出件数が増加する・・・」 中尾統括官は、パンフレットを見ながら、説明する。 「・・・このようなサラリーマンがより簡便に所得金額の計算を行って、確定申告ができるように、雑所得を生ずべき業務について、所得税法67条2項で、現金主義を採用することができるようにした・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の机の上に置かれている「税務六法」を手に取り、条文を探そうとページをめくる。 「おいおい、その税務六法は令和元年度版だから・・・2項は載っていないぞ。」 そう言うと、中尾統括官は、パンフレットに載っている所得税法67条2項を見せる。 「・・・この『収入した金額及び支出した費用の額とすることができる』というのが、現金主義を採用できるということを意味するのだが・・・」 中尾統括官がコメントする。 「もともと所得税法67条は・・・小規模事業者の収入及び費用の帰属時期について定めたもので・・・青色申告者を前提として、不動産所得と事業所得について現金主義を採用できると定めた規定だ。・・・今回は、新たに雑所得についても同様の規定を、第2項に設けたわけだ。条文名も『小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期』となっている。」 中尾統括官の説明に、浅田調査官は、黙って聞いている。 「・・・でも、この改正は令和4年1月1日から施行されるとなっていますから・・・令和2年分の確定申告には関係ないのでは・・・」 浅田調査官は頸を傾げる。 中尾統括官は、左右の肩を上下させながら、パンフレットをめくる。 「・・・ここに、所得税法施行令196条の2・・・というのがある・・・」 そう言うと、中尾統括官は、同施行令を読み上げる。 「・・・ということで、所得税法67条2項は令和4年1月1日から施行されるけれど、現金主義を採用できるかどうかの判断は、前々年分の業務に係る収入金額だから、令和2年分の確定申告書に『業務に係る収入金額』を書いておけば、令和4年分の確定申告をするときに、それを見れば、現金主義の適用について判定できる。」 中尾統括官は、机の上で、罫紙に図を描く。 「・・・何だか・・・消費税の免税業者の判定をするときの前々期の課税売上高(1,000万円以下)と同じような規定ですね・・・」 浅田調査官は、苦笑いをする。 「・・・それと、この雑所得の業務に係る収入金額の多寡については、収支内訳書の確定申告書への添付義務とも関係している・・・」 中尾統括官は、再びパンフレットをめくる。 「・・・今まで、雑所得については、業務に係る収入金額の多寡にかかわらず、確定申告書に収支内訳書を添付する必要はなかったのだけれど、令和2年度の改正で、前々年分のその業務に係る収入金額が1,000万円を超える場合には、雑所得を生ずべき業務に係る収支内訳書を確定申告書に添付しなければならなくなった・・・」 そして、中尾統括官は、根拠条文を説明する。 「すなわち、所得税法120条6項の規定の中に、次の文言が新たに挿入されている・・・」 「これらの改正は、令和4年分以後の所得税について適用されますが、令和2年分の確定申告の記載にも影響している・・・ということですね。」 浅田調査官は納得した様子で、大きく頷く。 (つづく)

#No. 401(掲載号)
#八ッ尾 順一
2021/01/07

《速報解説》東証、第二次制度改正事項として市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について公表~2022年4月に現在の市場区分を3つの新市場区分に見直すことを予定~

《速報解説》 東証、第二次制度改正事項として 市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について公表 ~2022年4月に現在の市場区分を3つの新市場区分に見直すことを予定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年12月25日、東京証券取引所は、「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」を公表した。 東京証券取引所は、2022年4月に、現在の市場区分をスタンダード市場・プライム市場・グロース市場の3つの市場区分に見直すことを予定している。 今般の「第二次制度改正事項」は、新市場区分の上場制度の全体像、上場会社の市場選択の手続及び新市場区分の上場維持基準を充たさない場合の経過措置について、所要の制度整備を行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 新市場区分 2022年4月4日(以下「移行日」という)付で、次の3つの市場区分に見直す。 上場会社は、2021年9月1日から12月30日までの期間に、移行日に所属する市場区分として、スタンダード市場、プライム市場又はグロース市場のいずれかの市場区分を選択し、その旨を東京証券取引所に申請する。 また、新市場区分における上場維持基準を新設し、上場維持基準に抵触し、改善期間内に改善が行われなかった場合を、上場廃止基準として定める。 なお、移行日の前日における上場会社のうち、所定の区分に該当する会社には、当分の間、緩和した上場維持基準を適用する経過措置を設ける。   Ⅲ スタンダード市場 公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの上場制度を設ける。 スタンダード市場の形式基準は次のとおりである。   Ⅳ プライム市場 多くの機関投資家の投資対象となりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの上場制度を設ける。 プライム市場の形式基準は次のとおりである。   Ⅴ グロース市場 高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの上場制度を設ける。 グロース市場の形式基準は次のとおりである。 (了)

#No. 400(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/06

《速報解説》 経産省、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドの実施事例集(案)を公表~2020年株主総会をもとに論点ごとの実施事例・考え方を示す~

《速報解説》 経産省、ハイブリッド型バーチャル株主総会の 実施ガイドの実施事例集(案)を公表 ~2020年株主総会をもとに論点ごとの実施事例・考え方を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年12月23日、経済産業省は、「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集(案)」を公表し、意見募集を行っている。 経済産業省は、2020年2月26日に、「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を公表している。 今般、ハイブリッド型バーチャル株主総会のさらなる実務への浸透を図るため、2020年の株主総会における実施状況等を踏まえつつ、実施ガイドの別冊として、実施事例集(案)を策定したものである。 意見募集期間は2021年1月22日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 実施事例集(案)は、表紙を含めて36ページのものである。 以下では主な内容について解説する。 1 ハイブリッド型バーチャル株主総会 バーチャル株主総会は、取締役や株主等がインターネット等を活用して遠隔地から株主総会に参加・出席することを許容する形態である(5ページ)。 「バーチャルオンリー型」と「ハイブリッド型」の2つの形態があるが、「バーチャルオンリー型」については、現行の会社法下においては解釈上難しいとの見解が示されている。 2020年6月に開催された株主総会では、上場会社のうち、ハイブリッド「出席型」は9社、ハイブリッド「参加型」は113社の実施であった(7ページ)。 2 実施事例集(論点別) 参加型・出席型共通の論点として次の事項を取り上げ、各論点に関する考え方や2020年株主総会における実施事例を簡潔に記載している。 また、出席型の論点として次の事項を取り上げ、各論点に関する考え方や2020年株主総会における実施事例を簡潔に記載している。 (了)

#No. 400(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/06

《速報解説》 インボイス導入に伴う法人税等の課税所得金額計算への影響から「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)等の改正案がパブコメに付される~税抜経理方式を採用している場合の免税事業者等からの課税仕入れについて取扱いを明確化~

《速報解説》 インボイス導入に伴う法人税等の課税所得金額計算への影響から 「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)等の改正案がパブコメに付される ~税抜経理方式を採用している場合の免税事業者等からの課税仕入れについて取扱いを明確化~   税理士 石川 幸恵   国税庁は令和2年12月15日付けで「「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)に対する意見公募手続の実施について」を公表した。   1 改正案公表の背景 (1) 改正案の概要 今回、改正案が示されている平成元年3月1日付直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)(以下「本通達」)は、法人税の課税所得金額の計算における消費税及び地方消費税の取扱いを明らかにする趣旨で定められたものである。 令和5年10月1日の「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)」導入後、本通達における税抜経理方式の取扱いが起因となって法人税の課税所得金額の計算に相違が生じないようにするため、本通達の改正が必要となった。国税庁は、改正案について令和3年1月13日までパブリックコメントを募集している。 なお、所得税に関する法令解釈通達(平成元年3月29日付直所3-8、直資3-6「消費税税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて」)についても同様の改正案が示されている。 (2) 法人税の課税所得金額の計算に相違が生じる場合とは 法人税の課税所得金額の計算に相違が生じるのは、税抜経理方式を適用している事業者が、「適格請求書等保存方式」の導入後、免税事業者や消費者等から行った課税仕入れについて、仕入税額控除額がないにもかかわらず、導入前と同様に、支払対価の額に10/110(軽減税率が適用される取引においては8/108)を乗じて計算した額を仮払消費税等として経理した場合である。 現行の本通達に従えば、この控除されない仮払消費税等は損金の額に算入されるため(本通達6)、法人税の課税所得金額の計算に相違が生じる。 具体例を挙げると、法人税法施行令第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》の適用において、金額基準となる取得価額が異なってしまう。 改正案では、この仕入税額控除の対象ではない仮払消費税等について、その取引の対価の額に含めて判定することを明らかにしている(本通達改正案9、14の2)。   2 主な改正項目 公表された改正案における主な項目は以下の通り。 (1) 現行の本通達には「仮受消費税等の額」及び「仮払消費税等の額」の定義が示されていないが、以下のように、新たに定義が置かれる(本通達改正案1(12)、(13))。 (2) 適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る消費税等について、仮払消費税等を区分して経理した場合は、その経理をした消費税等の額に相当する金額を取引の対価の額に含めて、法人税の課税所得金額を計算する(本通達改正案14の2)。 (3) 現行の本通達では、税抜経理方式による経理処理を期末に一括して処理することも認められていた。改正では、課税仕入れに係る消費税額を帳簿積上げ計算(インボイスQ&A問79)による場合は、期末一括税抜経理方式は不可とした(本通達改正案4)。 改正後は積上げ計算又は帳簿積上げ計算が課税仕入れに係る消費税額の計算の原則(※)となるので、原則として期末一括税抜経理方式が不可となることに注意されたい。 (※) 特例は割戻し計算である。 (4) 適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては、令和5年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の一定割合の控除が認められている(インボイスQ&A問75)。 この期間においては、仮払消費税等の額はこの仕入税額相当額の一定割合とし、上記(2)の規定は適用しない(本通達改正案「経過的取扱い(2)」)。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 400(掲載号)
#石川 幸恵
2021/01/06

《速報解説》 税務関係書類の押印義務原則廃止の取扱い開始に伴い、国税庁から「複数の相続人等がいる場合の相続税の申告書の作成方法」が公表される

《速報解説》 税務関係書類の押印義務原則廃止の取扱い開始に伴い、 国税庁から「複数の相続人等がいる場合の相続税の申告書の作成方法」が公表される   Profession Journal編集部   令和3年度税制改正大綱において税務関係書類の押印義務の原則廃止が明記され、「施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めないこととする」とされたことから、既報のとおり国税庁は昨年12月21日付けで、上記見直しの対象となる税務関係書類については、税制改正前であっても、押印がなくとも改めて求めないとする取扱いを公表していた。 この対象には相続税の申告書も含まれるが、国税庁は1月4日付で下記の情報を公表、複数の相続人又は受遺者(以下、相続人等という)がいる場合の相続税の申告書の作成方法について明らかにした。また、日本税理士会連合会のホームページ上でもこの取扱い変更について注意喚起を行っている。 相続税の申告書は、通常、すべての相続人等が1つの申告書によって共同で申告し、その際に各相続人等の相続税額の計算に加え氏名・マイナンバーの記載及び押印を行う。ただし、様々な事情により共同で申告書を作成・提出できないケースもあることから、相続人等が別々に申告書を提出しても差し支えないとされている。 このように別々に申告を行う場合にも、第1表にはすべての相続人等に係る合計額を記載しなければならないため、申告書第1表(続)等には共同して申告を行わない他の相続人等の相続税額等についても記載を行った上で、実務上、申告書の提出意思の有無を、その相続人等の押印の有無で明らかにしていた。 今回の押印義務廃止に伴い、国税庁が明らかにした取扱いは以下の通り。 まず、複数の相続人等がおり、押印せずに申告を行う場合、申告書の提出意思の有無を明らかにするため、申告書第1表及び第1表(続)には、共同して申告書を提出する相続人等のみの記載を行い、それぞれ申告を行う相続人等のマイナンバーを記載する(ただし、すべての相続人等に係る合計額の記載は必要)。 例えば、相続人(配偶者・長男・長女)のうち配偶者及び長女が共同して申告書を提出し、長男は配偶者らとは別に単独で申告書を提出するケースで、押印をせずに申告を行う場合、それぞれの申告書(第1表)にはすべての相続人(配偶者・長男・長女)に係る合計額を記載した上で、配偶者及び長女の申告書には長男の記載を行わず、長男の申告書には配偶者及び長女の記載を行わないことになる。 次に、上記例のように別々に申告を行い押印をしないケースで、申告書にすべての相続人等の氏名や金額を記載する場合には、申告書第1表及び第1表(続)のうち共同して申告書を提出しない他の相続人等の氏名及び金額欄を斜線で抹消する等して、その相続人等が共同申告しない相続人等であることを明示する必要がある(※)。またその際、共同して申告書を提出しない相続人等の分については、マイナンバーを記載しない。 (※) 申告書第15表(相続財産の種類別価額表)及び同表(続)については、斜線による抹消等は省略可。 このように税制改正前の取扱い開始となったため、現行の申告書様式での対応を要することから、申告実務における注意事項が追加された印象も受けるが、不要のトラブルや調査を回避する意味でも、まずは従前の取扱い通り、申告書への押印は行っておいた方が無難と言えよう。また、使用している税務申告ソフトがこの取扱い変更にどこまで対応しているかも確認しておきたい。 なお、電子申告(e‐Tax)による相続税の申告について、複数の相続人等の申告を税理士等がまとめて代理送信する場合には、申告書第1表又は第1表(続)に利用者識別番号の入力がある相続人等のデータを有効なものとして受けつけることになるため、上記のように、共同して申告書を提出するか否かの明示を別途行う必要はないとしている。 (了)

#No. 400(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/01/06

《速報解説》 短期退職手当等に係る退職所得課税の適正化~令和3年度税制改正大綱~

 《速報解説》 短期退職手当等に係る退職所得課税の適正化 ~令和3年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 新名 貴則   自由民主党と公明党は、令和2年12月10日、令和3年度税制改正大綱を公表した。また、これを受けて令和2年12月21日に、政府は令和3年度税制改正大綱を閣議決定した。以下では、大綱に盛り込まれた退職所得課税の適正化について解説する。   (1) 退職所得課税の概要(現行制度) 課税対象となる退職所得金額の算定式は次の通りである。 上記の退職所得控除額は、退職者の勤続年数に応じて、次の算定式に従って計算される。勤続年数が20年以内か20年超かで算定式が異なるため、注意が必要である。 【退職所得控除額の算定式】 ただし、平成24年度税制改正により、役員等としての勤続年数が5年以下の役員に対する退職手当等(「特定役員退職手当等」)については、その退職所得金額を算定する際に「2分の1」を乗じないこととされている。   (2) 令和3年度税制改正後 退職所得金額の算定において「2分の1」を乗じることについて、勤続年数5年以下の「従業員」に対する退職手当等(「短期退職手当等」)についても、制限が加えられることとなった。 具体的には、短期退職手当等から退職所得控除額を控除した金額のうち、300万円を超える部分については「2分の1」を乗じないこととされた。 この改正は、令和4年分以後の所得税について適用される。 ➤勤続年数5年以下の従業員に対する退職所得金額 ➤勤続年数5年超の従業員に対する退職所得金額   (3) 計算例 勤続5年で退職した従業員が、退職金1,000万円を受け取った場合、改正の前後で所得税額(復興特別所得税を含む)は次の通りになる。 ◆令和3年度税制改正後 ◆現行制度(令和3年度税制改正前) (了)

#No. 400(掲載号)
#新名 貴則
2021/01/06

《速報解説》 ASBJ、「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」を公表~電気・ガス事業における検針日基準の取扱いに対応~

《速報解説》 ASBJ、「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」を公表 ~電気・ガス事業における検針日基準の取扱いに対応~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年12月25日、企業会計基準委員会は、「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第70号。企業会計基準適用指針第30号の改正案)を公表し、意見募集を行っている。 電気事業及びガス事業では、毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益計上が行われる実務が見られる(いわゆる検針日基準)。 公開草案は当該検針日基準の取扱いに対応するものである。 意見募集期間は2021年2月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 原則的な処理 検針日基準による収益認識を認めた場合、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない(収益認識適用指針164項)とは認められないと判断し、収益認識会計基準の定めどおり、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積もることが必要である(公開草案176-3項)。 2 重要性等に関する代替的な取扱い 決算日時点での販売量実績が入手できないため、見積りと実績を事後的に照合する形で見積りの合理性を検証することができないなど、見積りの適切性を評価することが困難であるとの意見がある(公開草案176-3項)。 このため、次のように、「重要性等に関する代替的な取扱い」(電気事業及びガス事業における毎月の検針による使用量に基づく収益認識)を設ける(公開草案103-2項、176-4項)。   Ⅲ 適用時期等 2020年改正の収益認識会計基準の適用時期等と同様に、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 (了)

#No. 400(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/05
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