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《速報解説》 コロナ禍による令和2年7月~12月分の路線価等補正対応、大幅な地価下落が予想される地域を1月末に公表、対象地に係る贈与税申告の個別の期限延長を認める

《速報解説》 コロナ禍による令和2年7月~12月分の路線価等補正対応、 大幅な地価下落が予想される地域を1月末に公表、 対象地に係る贈与税申告の個別の期限延長を認める   Profession Journal編集部   新型コロナウイルス感染症の感染拡大による地価下落を考慮した路線価の補正判断については、既報のとおり、令和2年1月から6月までの相続等については補正を行わない旨、昨年10月に国税庁が明らかにしていたが、続いて同年7月から12月分に係る対応方針が明らかにされている。 上記によると、「令和2年7月から9月まで」の期間への対応方針については「本年1月下旬」に公表が予定されており、「令和2年10月から12月まで」の期間については「本年4月」に公表が予定されている。ただし、令和2年分の贈与税の申告・納付期限は令和3年3月15日となっているため、令和2年10月から12月の贈与分について、4月に対象地域に関する補正の方針が示されたとしても、すでに期限を過ぎてしまっている。 このため国税庁は、令和2年10月から12月までの期間については、先行して1月下旬に「路線価等が時価を上回る(大幅な地価下落の)可能性がある地域」を公表したうえで、対象地域に所在する土地等の贈与を受けた者は、個別の期限延長により、その贈与税の申告・納付期限について、上記本年4月の公表日から2ヶ月以内の申告・納付を認めるとした(令和2年1月から9月までの間に贈与を受けた場合の申告・納付期限は、令和3年3月15日で変更なし)。 なお、路線価等の補正の公表前に申告を行い、その後、路線価等の補正の公表を受けて改めて計算した結果、納付すべき税額が過大であったことが判明した場合は、更正の請求が認められる。また、上記大幅な地価下落があるとして1月下旬に公表された地域以外で、4月に、新たに路線価等が時価を上回る地域として公表された場合は、その地域に所在する土地等の贈与を受け申告された者についても更正の請求をすることができる。 (了)

#No. 401(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/01/08

プロフェッションジャーナル No.401が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年1月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.401を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/01/07

monthly TAX views -No.96-「2021年度税制改正、キャリードインタレストの取扱いに注目」

monthly TAX views -No.96- 「2021年度税制改正、キャリードインタレストの取扱いに注目」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   昨年暮れに決定された2021年度(令和3年度)税制改正大綱は、わが国が現在直面する3つの課題、「ポストコロナの経済再生」「経済のデジタル化」「グリーン社会の実現」について、租税特別措置でそれなりに対応したもので、一定の評価が与えられよう。 今回取り上げたいのは、国際金融都市に向けた税制上の措置として、役員給与(業績連動給与)損金算入要件の弾力化や、ファンドマネージャーが運用成果に応じファンドから受け取る利益(キャリードインタレスト)の分配について課税上の解釈を明確化することが盛り込まれたことである。これらは香港問題をにらんでの措置である。 *  *  * キャリードインタレストとは、ファンドマネージャーが、出資持分を有するファンド(株式譲渡等を事業内容とする組合)から、運用成果に応じてその出資割合を超えて受け取る組合利益の分配である。 その課税方式については、原則「役務提供の対価」として総合課税(累進税率、国税・地方税計で最高55%)の対象となるのだが、一定の場合には、「株式譲渡益等」として分離課税(国税・地方税計で一律20%)の対象となる。その基準を、金融庁が国税庁に文書で照会することにより明確化する。つまり税制改正ではなく、解釈の明確化と位置付けられている。 譲渡益となる具体的要件については、ファンドマネージャーがファンドの組合員であること(組合員として組合に金銭を出資)、キャリードインタレストは実現益で構成されること(評価益は含まれない)、組合利益の分配割合に「経済的合理性」があること(利益の配分が恣意的でないこと)、一般的な商慣行等に基づいていること(一般的な分配割合は、ファンドマネージャー20%:その他の投資家80%)が例示されている。 *  *  * 筆者は、この問題を考えるにあたって、3つの視点が重要と考える。 1点目は、所得を勤労所得と金融所得に二分したうえで、勤労所得には通常の累進税率を課し、金融所得には分離して一定率(勤労所得の最低税率)で課税するという二元的所得税への理解である。 二元的所得税は、1990年代にスウェーデンなどの北欧所得で考えられ導入された税制であり、公平性と効率性のバランスをとるという考え方に基づいている。効率性とは、資金移動の自由度の高い金融所得に累進税率を課すと、金融自由化の下で資本が国外に逃避してしまうため、これを防止したいという考え方である。わが国でも、利子・配当・株式譲渡益の大部分が分離課税となっており、事実上、二元的所得税を採用しているが、これも同様の考え方によるものである。 したがって、キャリードインタレストを分離課税とするには、金融所得として位置付けることになるので、前述した要件が必要ということになる。 2点目に、累進税率である勤労所得を、低率(国税・地方税計で20%)の分離課税の適用となる金融所得に「転換」する租税回避を防ぐ必要があるということだ。これが前述した「経済的合理性」のある分配かどうかという要件である。一般的な商慣行に基づく恣意的でない分配が必要ということだ。 最後に、格差拡大の叫ばれる今日、キャリードインタレストを含む金融所得の税率が、現在の20%のままでよいのかという問題がある。この問題について(与党)税制改正大綱では、「基本的考え方」の中で「所得再分配機能の回復の観点からの個人所得課税の検討を進める」と記されており、今後議論されることになると思われる。 このようにキャリードインタレストの課税問題は、単なる香港問題というより、わが国の税制の本質に迫る大きな問題を内包しているのである。 (了)

#No. 401(掲載号)
#森信 茂樹
2021/01/07

令和2年分 確定申告実務の留意点 【第1回】「令和2年分の申告から適用される改正事項」

令和2年分 確定申告実務の留意点 【第1回】 「令和2年分の申告から適用される改正事項」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   -はじめに- 令和2年分の確定申告の受付は、令和3年2月16日(火)から3月15日(月)まで行われる。還付申告は、令和3年2月15日(月)以前でも行うことができる。 なお、e-Taxを利用する場合は、令和3年1月4日(月)から3月15日(月)の間であれば、メンテナンス時間(3月15日を除く毎週月曜日午前0時~午前8時30分を予定)を除き、24時間(※)申告書を送信することが可能である。 (※) 1月4日(月)は8時30分から、3月15日(月)は24時まで。 今回から3回シリーズで、令和2年分の確定申告に係る実務上の留意点を解説する。 第1回は、令和2年分の申告から適用される改正事項のうち次の①から⑥を取り上げる。 なお、確定申告に係る下記の拙稿も併せてご参照いただきたい。   【1】 給与所得控除と公的年金等控除の見直し (1) 給与所得控除の見直し 令和2年分以後の所得税においては、給与所得控除額が一律10万円引き下げられ、上限額も給与等の収入金額850万円に適用される195万円に引き下げられた(所法28③)。 〈参考〉令和元年分以前と令和2年分以後の給与所得控除額    (2) 公的年金等控除の見直し 公的年金等控除についても、次のとおり見直しが行われている(所法35④)。 《公的年金等控除の見直し》 令和元年分以前と令和2年分以後の公的年金等控除額の比較については下記をご参照いただきたい。   【2】 配偶者、扶養親族等の所得要件の調整 給与所得控除と公的年金等控除の引下げに伴い、扶養親族等の合計所得金額要件の調整が行われている(所法2①三十二~三十四)。 下表の「備考」欄に記載しているとおり、給与の収入金額でみると改正前後で金額は変わっていない。 (※) ここでは省略しているが、公的年金等についても収入金額でみると改正前後で金額は変わらない。   【3】 基礎控除の見直し 給与所得控除額と公的年金等控除額が一律10万円引き下げられた一方、基礎控除の控除額は一律10万円引き上げられた。ただし、その年分の合計所得金額が2,400万円を超えると段階的に引き下げられ、合計所得金額が2,500万円を超えるとゼロとなる(所法86①)。 令和元年分以前と令和2年分以後の基礎控除の控除額を比較すると、次のとおりである。    【4】 所得金額調整控除の創設 (1) 所得金額調整控除とは 【1】の給与所得控除と公的年金等控除の見直しにより、次の①又は②に該当する人は、見直し前と比べて課税の対象となる所得金額が増加する。 (※) 2つの所得の合計額が10万円を超える場合。 ①に該当する場合には子育て等に対する配慮から、また②に該当する場合には給与所得控除及び公的年金等控除の見直しにより負担増が生じないようにするため、新たに所得金額調整控除が措置された。 所得金額調整控除には、①子ども等を有する場合の調整と②給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある場合の調整の2つがある(措法41の3の3①②)。 (2) 子ども等を有する場合の調整 給与等の収入金額が850万円を超える居住者のうち、次の(ア)から(ウ)のいずれかに該当するものは、給与所得の金額から下記[調整額]の金額が控除される(措法41の3の3①)。 (3) 給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある場合の調整 給与と公的年金等に係る雑所得の両方を受給している居住者のうち、給与所得と公的年金等に係る雑所得の合計額が10万円を超えるものについては、給与所得の金額(※)から下記[調整額]の金額が控除される(措法41の3の3②)。 (※) 上記(2)の適用がある場合には、(2)の[調整額]を控除した後の金額。 なお、調整額の計算例等については、次の拙稿をご参照いただきたい。    【5】 ひとり親控除の創設と寡婦(寡夫)控除の見直し (1) 見直しの概要 令和2年度税制改正により、婚姻歴に関係なくすべてのひとり親を対象とするひとり親控除が創設された。ひとり親控除の創設により、寡夫控除及び特別の寡婦に対する加算は廃止され、男性のひとり親と女性のひとり親は同じ扱いとなった(所法2①三十一、81)。 また、寡婦の範囲からひとり親が除かれるとともに、すべての寡婦に所得制限(合計所得金額500万円以下)が設けられた(所法2①三十)。 (2) ひとり親控除とは ひとり親控除とは、居住者がひとり親に該当する場合に、その年分の総所得金額等から35万円を控除する制度である(所法81)。 ひとり親とは、次の要件を満たす者をいう(所法2①三十一)。 (※1) 総所得金額等48万円以下の子(他の者の同一生計配偶者又は扶養親族とされている者を除く)。 (※2) 住民票に一定の記載がされている事実婚の夫や妻をいう(所規1の3)。 ◇ 納税者本人が世帯主である場合:同一世帯に属する者の住民票に、世帯主との続柄が未届の夫その他世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる記載がされた者。 ◇ 納税者本人が世帯主ではない場合:その者の住民票に、世帯主との続柄が未届の妻その他世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる記載がされているときの世帯主。 (3) 寡婦控除の見直し 見直し後の寡婦とは、次の要件を満たす者でひとり親に該当しないものをいう(所法2①三十)。 上記(ア)と(イ)のいずれにおいても、合計所得金額500万円以下と事実婚の状況にないことの2つが要件とされていることに注意しておきたい。   【6】 その他の改正項目 (1) 青色申告特別控除 正規の簿記の原則に従って取引を記録している者に係る青色申告特別控除の控除額が55万円(改正前65万円)に引き下げられた(措法25の2③)。 ただし、次の要件のいずれかを満たすものの控除額は65万円となる(措法25の2④、措規9の6②~⑤)。 《控除額65万円の要件》 (2) 特定支出控除の拡充 特定支出の範囲に、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費等で通常要する支出が加えられた(所法57の2②二、所令167の3②)。 また、単身赴任者の帰宅旅費について、1ヶ月に4往復を超えた旅費を対象外とする制限が撤廃され、帰宅に要する自動車等の使用に係る燃料費及び有料道路の料金が加えられた(所令167の3⑤)。 *  *  * 次回(第2回)は、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律における主な措置と、令和2年分から一部変更されている確定申告書の様式について解説を行う予定である。 (了)   

#No. 401(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/01/07

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第11回】「居住用家屋の跡地の一部の譲渡」-居住用家屋の敷地の一部の譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第11回】 「居住用家屋の跡地の一部の譲渡」 -居住用家屋の敷地の一部の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、30年前に取得した家屋とその敷地300㎡を居住の用に供していましたが、その家屋が老朽化したことなどから、昨年1月、その家屋を取り壊し、同年3月、その家屋と一体として利用してきた庭部分100㎡を売却しました。 その売却にあたっては多額の譲渡損失が発生し、銀行で住宅ローンを組んで、残地部分に新たな家屋を取得し、昨年12月から居住の用に供しています。 他の適用要件が具備されている場合に、Xは当該譲渡ついて、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 居住用家屋を取り壊し、その家屋の敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合において、その譲渡した土地等が次に掲げる要件の全てを満たすときは、居住用家屋の敷地の一部の譲渡であっても、「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができます(措通41の5-5(居住用土地等のみの譲渡)、措通41の5-9(居住用家屋の敷地の一部の譲渡))。 ただし、その家屋を引き渡して、その土地等を譲渡している場合には、特例の適用を受けることができません。 なお、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 401(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/01/07

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例25】「事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性と寄附金課税」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例25】 「事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性と寄附金課税」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、関東地方でいくつかの業態の飲食店チェーンを経営する株式会社Aにおいて、経営企画室長をしております。これまで当社グループは、創業の居酒屋チェーンを中心に、M&Aにより順調に事業を拡大してきましたが、中には伸び悩む業態もあり、特にファーストフード系の子会社であるB・Cの2社の業績が低迷しておりました。当該子会社の親会社であるA社は、これまで役員の派遣や低利融資などにより援助してきましたが、同業者との激しい競争に打ち勝てず、赤字体質からの脱却が困難な情勢が続いていました。 そこで、親会社であるA社は、子会社B社及びC社の2社の事業をグループ会社のD社に事業譲渡を行うとともに、当該子会社(いずれも事業譲渡後に清算)に対する金銭債権について債権放棄を行い、その金額をA社の法人税の申告上、損金に算入しました。法人税法には債権放棄や貸倒損失の損金性に関する特定の規定はないことから、当該金額が損金に算入されるのか会社内で議論はありましたが、A社を創業したオーナー社長による「債務免除しないとやっていけない会社への債権放棄なんて、わが社の損金じゃなかったら何なんだ!」という鶴の一声で、全額損金算入したというところです。なお、当該債権放棄は、子会社2社の特別清算手続において、A社と子会社2社との間の契約により行われたものです。 ところが、先日税務調査でA社を訪れた国税局の調査官は、A社が行った子会社2社に対する債権放棄は法人税基本通達の定める要件を満たしていないことから、損金算入可能な貸倒損失ではなく、むしろ法人税法第37条に規定される寄附金に該当するものと指摘してきました。社長はその主張に対して大層ご立腹で、最高裁まで争うと息巻いておりますが、私としましては勝ち目のない争いは避けるべきと考えております。社長をどのように説得すべきか、アドバイスをお願いします。 〇 取引関係図 【A】 法人税法には、確かに債権放棄や貸倒損失の損金性に関する規定はありませんが、債権が消滅したという事実が認定できれば、その金額は法人税法第22条第3項第2号にいう損金の額に算入すべき金額にほかならないといえます。しかし、債権が消滅したという事実の認定は容易ではなく、実務上、法人税基本通達の定める基準に該当するかどうかで判断するケースが大半であると考えられます。この場合、法律上の金銭債権が消滅した場合の貸倒れは、法人税基本通達9-6-1に照らして判断することとなりますが、本件のように、当該債権放棄が子会社2社の特別清算手続において、A社と子会社2社との間の契約により行われたものであるときには、個別和解によるものと解され、特別清算協定の認可の決定によるものではないことから、通達の定める要件には該当しないものと考えられます。 また、寄附金に該当するか否かについては、子会社の財務状況に関し単に赤字体質からの脱却が見通せないというだけでは不十分で、本件債権放棄が経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難いと考えられることから、法人税基本通達9-4-1にいう「相当な理由」があったとはいえず、寄附金に該当するものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 債権放棄の損金性 取引先等に対する(金銭)債権が回収できない場合には、一般に、当該債権が法的に消滅したものとして貸倒損失を計上することとなる。問題は、どのような場合に貸倒損失を計上するのかの判断基準であるが、法人税法にはそれに関する明文の規定は存在しない。しかし、法人税法第22条第3項で規定される損金は、原則としてすべての費用及び損失を含む広い観念と理解すべきものと解されていることから(※)、債権が消滅したという事実が認定できれば、その金額は法人税法第22条第3項第2号にいう損金の額に算入すべき金額にほかならないといえるだろう。 (※) 金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)342-343頁参照。 しかし、貸付債権といった金銭債権が消滅したり回収不能となったという事実の認定は、実際には容易ではなく、 実務上、法人税基本通達の定める基準に該当するかどうかで判断するケースが大半であると考えられる。法人税基本通達では、このような貸倒れの損金算入につき、以下の区分により判断するとしている。 ① 法律上の金銭債権の消滅(法基通9-6-1) 更生計画認可の決定(会社更生法)又は再生計画認可の決定(民事再生法)があった場合や、特別清算に係る協定認可の決定(会社法)があった場合、債権者集会の協議決定で合理的なもの、公正な第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で合理的なものは、それらに基づき切り捨てられた金額が貸倒損失として損金の額に算入される。 同様に、債務者の債務超過が相当期間継続し、弁済不能であるため、書面により明らかにされた債務免除額も貸倒損失として損金の額に算入される。 当該通達の趣旨は、後掲東京地裁平成29年1月19日判決・税資267号-13(順号12962)(TAINSコード:Z267-12962)によれば、 とされている。 なお、①に該当する場合については、「損金経理」要件が付されていない。したがって、法人がその確定した決算で上記金額に関して貸倒処理を行うか否かに関わらず、損金に算入されることとなる。 ② 回収不能の金銭債権の貸倒れ(法基通9-6-2) 債務者の資産状況や支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合に、その金額を貸倒れとして損金経理することができる。なお、貸倒れとして損金経理することができるのは、担保物があるときはその処分後、保証債務は履行後であることが要件とされている。 ②に該当する場合は、法人が債務者に対する金銭債権の全額が回収できないと認識したときに、原則として損金経理を行うことで貸倒処理を行うというものである。ただし、あくまで損金経理することが「できる」のであり、損金経理が条件ではないという点には留意すべきであろう。 ③ 売掛債権の特例(法基通9-6-3) 金銭債権のうち売掛債権等については、債務者との取引停止後1年以上経過等の要件に該当した場合、その金額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理したときは、それが認められる。   (2) 事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性が争われた裁判例 それでは本件のように、事業譲渡に伴って行った債権放棄については、貸倒損失として損金算入ができるのであろうか。そのような場合における貸倒損失該当性が争われた裁判例(東京高裁平成29年7月26日判決・税資267号-89(順号13038)、TAINSコード:Z267-13038、控訴棄却・確定)があるので、以下で検討したい。 ① 事案の概要 本件は、控訴人が、控訴人の子会社であるB株式会社に対して有していた貸付金等債権3億5,155万3,294円(ただし、正確な合計額は3億5,201万7,720円)につき、B社が仙台地方裁判所に対して申し立てた特別清算手続において、同裁判所の許可を得て、平成22年3月1日、前記債権を放棄する旨の契約を締結し、控訴人の別の子会社である株式会社Cに対して有していた短期貸付金債権6億4,277万7,926円について、B社が青森地方裁判所に対して申し立てた特別清算手続において、同裁判所の許可を得て、同年3月3日、前記債権を放棄する旨の契約を締結し、前記各債権の放棄をし、放棄されたB社に対する3億5,201万7,720円及びC社に対する6億4,277万7,926円の各債権の合計額9億9,479万5,646円を「その他の特別損」勘定として損金の額に算入し、平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度に係る法人税の確定申告をしたところ、青森税務署長(処分行政庁)から、本件債権放棄額は本件子会社2社に対する法人税法第37条の寄附金の額に該当するとして、法人税の更正処分を受けた。 そこで、控訴人は被控訴人に対し、本件処分のうち、控訴人主張の所得金額マイナス11億8,294万6,785円を超える部分及び控訴人主張の繰越欠損金額マイナス11億8,294万6,785円を下回る部分の取消しを求める事案である。 ② 本件の争点 ③ 裁判所の判断 争点1 (ア) 法基通9-6-1(4)(債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債務の弁済を受けることができないと認められる場合の債務免除額)について (イ) 法基通9-6-1(2)(特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額に係る貸倒れ)について 争点2 (ア) 法基通9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)について (イ) 法基通9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)について ④ 本裁判例からいえること 本裁判例の前提事実として、本件債務放棄は、原告・控訴人の臨時取締役会の決議において決定され、特別清算手続における「個別和解」によるものであり、裁判所の特別清算協定認可の決定を経たものではないと認められる点が重要である。このことから一審の東京地裁平成29年1月19日判決・税資267号-13(順号12962)(TAINSコード:Z267-12962)において裁判所は、本件債務放棄は、特別清算に係る協定の認可の決定を要件とする法人税基本通達9-6-1(2)の適用を受けるものではないと判断した。また、子会社2社の資産状況や支払能力等の債務者側の事情に照らし、直ちに本件債権放棄に係る債務の全額が回収不能であったとはいい難く、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債務の弁済を受けることができないと認められる場合を適用要件とする法人税基本通達9-6-1(4)の適用を受けるものでもないため、損金算入を認めることはできないとした。 また、寄附金に該当するか否かについては、本件債権放棄が経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難いとし、法人税基本通達9-4-1にいう「相当な理由」があったとはいえず、寄附金に該当しないものとは認められないと判断したところである。 上記判断は基本的に控訴審でも維持されている。   (3) 本件への当てはめ 確かに法人税法には、債権放棄や貸倒損失の損金性に関する規定はないが、(金銭)債権が消滅したという事実が認定できれば、その金額は法人税法第22条第3項第2号にいう損金の額に算入すべき金額にほかならないといえる。しかし、債権が消滅したという事実の認定は容易ではなく、 実務上、法人税基本通達の定める基準に該当するかどうかで判断するケースが大半であると考えられる。 この場合、法律上の金銭債権が消滅した場合の貸倒れは法人税基本通達9-6-1に照らして判断することとなるが、本件のように、当該債権放棄が子会社2社の特別清算手続において、当事者であるA社と子会社2社との間の契約により行われたものであるときには、個別和解によるものと解され、特別清算協定の認可の決定によるときのような、合意内容の合理性が客観的に担保される状況の下での合意がされたものとはいえないことから、通達の定める要件には該当しないものと考えられる。 また、寄附金に該当するか否かについては、子会社の財務状況に関し単に赤字体質からの脱却が見通せないというだけでは不十分で、本件債権放棄が経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難いと考えられることから、法人税基本通達9-4-1にいう「相当な理由」があったとはいえず、寄附金に該当するものと考えられる。 (了)

#No. 401(掲載号)
#安部 和彦
2021/01/07

〔Q&Aで解消〕診療所における税務の疑問 【第4回】「個人版及び法人版事業承継税制の適用可否と適用時の注意点」

〔Q&Aで解消〕 診療所における税務の疑問 【第4回】 「個人版及び法人版事業承継税制の適用の可否と適用時の注意点」   税理士法人赤津総合会計 税理士・医業経営コンサルタント 赤津 剛史   【Q1】 医師・歯科医師が個人事業で経営する診療所は、個人版事業承継税制の適用は可能でしょうか。 また適用できる場合には、その注意点を教えてください。 【A1】 個人事業の診療所については、個人版事業承継税制を適用することが可能です。ただし、同制度の適用を受けた診療所が医療法人を設立する際は、個人版事業承継税制による納税猶予期限が確定し、猶予税額及びこれに対応する利子税の納付が必要となります。 ● ● ● 解 説 ● ● ● ① 個人版事業承継税制とは 個人事業を行っていた事業者(先代事業者等)の後継者として一定の認定を受けた者が、贈与又は相続等により、一定の事業用資産を取得した場合に、一定の要件をもとに、その資産に対する贈与税・相続税の全額の納税が猶予される制度です。また、猶予された贈与税・相続税は先代事業者や後継者の死亡等の一定の事由により納税が免除されます。 この制度は診療を行う個人診療所(医科・歯科)も適用の対象となります。   ② 個人版事業承継税制を適用する際の注意点 租税特別措置法第70条の6の8第6項及び同法第70条の6の10第6項では、贈与税及び相続税の納税猶予の対象となっている財産を会社・・の設立のために現物出資した場合の取扱いが規定されています。これによると、会社の設立のための現物出資については、一定の要件を満たすことにより、引き続き納税猶予が継続することが定められています。 しかし、医療法人は会社法に定める「会社」には該当しないことから、この条項の適用外であると考えられます。また、これ以外に医療法人の設立にあたり現物を拠出した際の条項は規定されていないため、医療法人の設立による現物を拠出した時点で、猶予期限が確定し、猶予税額及びこれに対応する利子税の納付が必要となると考えられます。 個人版事業承継税制の適用にあたっては、将来の医療法人成りの可能性も含めて検討する必要があります。   【Q2】 医療法人の出資持分は、取引相場のない株式の納税猶予制度(法人版事業承継税制)の適用は受けられるのでしょうか。 【A2】 医療法人は、取引相場のない株式の納税猶予制度(法人版事業承継税制)の適用を受けることはできません。 しかし、医療法で定める認定医療法人制度を活用することにより、相続税又は贈与税の納税猶予の適用を受けることができます。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 平成19年3月31日以前に設立された医療法人(=持分の定めのある医療法人)の出資持分は、相続又は贈与時に、財産評価基本通達に従い時価によって評価されます。 株式会社については、相続又は贈与時にその納税が猶予される事業承継税制の適用が可能です。一方、医療法人は、この事業承継税制の適用の前提となる中小企業経営承継円滑化法において中小企業に該当しないことが明記されているため、適用を受けることができません。 医療法人については、医療法で定める認定医療法人制度を活用することにより、相続税又は贈与税の納税猶予の適用を受けることができます。認定医療法人制度の適用による相続税又は贈与税の納税猶予は、法人版事業承継税制と要件が全く異なるものとなっています。要件については次回に解説していきます。 (了)

#No. 401(掲載号)
#税理士法人赤津総合会計
2021/01/07

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第2回】「比較対象取引の選定における差異調整の判断」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第2回】 「比較対象取引の選定における差異調整の判断」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 比較対象取引の選定において差異調整はどのような場合に行うのでしょうか。 〔A〕 対価の額に影響を及ぼすことが明らかな差異については調整を行い、比較対象取引としての合理性を確保する必要がある。 ●●●〔解説〕●●● 1 差異調整の意義 移転価格の検証において、有効な比較対象取引が選定された場合にも、検証対象取引と比較対象取引の間に差異が存在する場合には、当該差異を起因とする比較可能性の低下を補うため、合理的な差異調整を行わなければならないが、ここで問題となるのが、いかなる差異を調整しなければならないか、反対にいえば、いかなる差異は調整しなくてよいかという点である。この点につき争われた裁判例として、今治造船株式会社事件(※1)がある。 (※1) 第一審は松山地裁平成16年4月14日判決(訟月51巻9号2395頁、TAINSコード:Z254-9626)、控訴審は高松高裁平成18年10月13日判決(訟月54巻4号875頁、TAINSコード:Z256-10528)。なお、同高裁判決は最高裁の上告不受理により確定している。 《今治造船株式会社事件》 (1) 事件の概要 造船業を営むX(原告・控訴人)は、パナマ子会社との間で船舶の建造請負契約に基づき船舶を建造し販売していた(本件国外関連取引)が、原処分庁は、Xが、パナマ又はリベリアに所在する非関連者との間で行っていた本件国外関連取引と同様の船舶建造請負取引を比較対象取引として選定し、「独立価格比準法」を適用し、一定の差異調整を行った上で本件国外関連取引の独立企業間価格を算定して更正処分を行ったところ、Xはこれを不服としてその取り消しを求めた事案(※2)である。 (※2) 本件の争点は複数あり、第一審では、①国外関連取引の対価が原告の主張する経済合理性を有する場合には移転価格税制は適用されないのか、②本件国外関連取引に対する独立価格比準法適用の適否、③本件比較対象取引との差異調整の範囲、及び④移転価格税制の下、独立企業間価格幅を許容し得るか否かの4つが争われたが、控訴審では①以外について争われた。本稿ではこのうち③について検討している。 なお、本件で原処分庁が選定した比較対象取引は、いわゆる外部比較対象取引ではなく、X自身が非関連者との間で行っている取引(内部比較対象取引)が選定された点に特徴がある。 (2) Xの主張と判決の要旨 Xは、原処分庁が行った差異調整に対し、それ以外の全ての差異についても調整されるべきと主張したが、控訴審である高松高裁は、「(差異)調整は、選択された非関連者取引(比較対象取引)について、比較対象取引としての合理性を確保するために行われるものであるから、調整の対象の差異が取引価格の差に表れていることが客観的に明らかであると認められる場合に限って行われるべきものと解すべきである」としてXの主張を退け、対価の額に影響を及ぼすことが客観的に明らかであるものに限られるという判断基準を示した(下線筆者)。 次に、控訴人による具体的な主張に対しては、①「空き船台」の解消によるコスト低減効果等(※3)について、原価の節約が値引きの一要因となり得るとしても、その場合、売手は必ず値引きをしなければならないというものではなく、値引きをするとしても節約された額と同額の値引きをしなければならないものでもないのであって、単に投下費用が少ないという一般的な事情のみでは、取引価格への影響が客観的に明らかであるとはいえず、また、具体的に節約された原価の金額、原価の節約分が具体的な取引対価に反映されたか否か、反映されたとしてどの程度影響があったのか等についてはそもそも定かでなく、結局のところ、投下費用の節約と取引対価の値引きとの客観的な対応関係は不明といわざるを得ないから、取引対価に影響を与えることが客観的に明らかであるとはいえず、投下費用に起因する差異の調整を行う必要があると認めることはできないとし、②取引数量に起因する差異について、国外関連者の一取引相手当たりの建造数が、非関連者の一取引相手当たりの建造数より多いとしても、それが取引価格に影響を与えることが客観的に明らかであるとまではいえないから、取引数量に起因する差異の調整を行う必要があるとは認められないと判示し、Xの主張を排斥した。 (※3) ここでのXの具体的な主張とは、「本件の検証対象取引は、空き船台で国外関連者船を建造することにより船台の完全操業を実現するという(X独自の)事業戦略に基づくものであるから、それによる差異を調整すべきである」というものであった。   2 規定等が定める差異調整の例示 以下では、移転価格税制上定められている差異調整の例について確認する。 (1) 措置法通達 同通達では、措置法66条の4の規定の適用上、独立企業間価格の算定について以下のように例示している。 ① 相殺取引(措置法通達66の4(4)-2) 取引に係る対価の額と独立企業間価格との差額に相当する金額を同一の相手方との他の取引の対価の額に含め、又は当該対価の額から控除することにより調整している場合には、それらの取引は、それぞれ独立企業間価格で行われたものとすることができる。 ② 為替差損益(措置法通達66の4(4)-3) 取引日の外国為替の売買相場と当該取引の決済日の外国為替の売買相場との差額により生じた為替差損益は、独立企業間価格には含まれない。 ③ 値引き・割戻し等(措置法通達66の4(4)-4) 国外関連取引と比較対象取引との間で異なる条件の値引き、割戻し等が行われている場合には、当該値引き、割戻し等に係る条件の差異を調整したところにより独立企業間価格との差額を算定する。 ④ 会計処理方法の差異(措置法通達66の4(4)-5) 国外関連取引と比較対象取引との間で用いられている会計処理方法(例えば、棚卸資産の評価方法、減価償却資産の償却方法)に差異があり、その差異が独立企業間価格の算定に影響を与える場合には、当該差異を調整したところにより独立企業間価格との差額を算定する。 (2) 移転価格事務運営指針 同指針4-4では、以下の4つにつき、国外関連取引と、比較対象取引又は措置法通達66の4(3)-1(5)に掲げる取引との差異について調整を行うことができるとしている。 (了)

#No. 401(掲載号)
#霞 晴久
2021/01/07

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第108回】「2020年における調査委員会設置状況」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第108回】 「2020年における調査委員会設置状況」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   本連載では、個別の会計不正に関する調査報告書について、その内容を検討することを主眼としてきたが、本稿では、「第三者委員会ドットコム」が公開している情報をもとに、各社の適時開示情報を参照しながら、2020年において設置が公表された調査委員会について、調査の対象となった不正・不祥事を分類するとともに、調査委員会の構成、調査報告書の内容などを概観し、その特徴を検討したい。 第三者委員会ドットコムが公開しているデータを集計したところ、2020年において、調査委員会の設置を公表した会社は52社であり、2018年(68社)、2019年(67社)から大きく減少している。52社のうち、複数の調査委員会設置を公表した会社は下記のとおりである。この結果、設置が公表された調査委員会の数は56となる。 上記の会社については、会社数としてはそれぞれ「1社」とカウントする一方、委員会の構成については委員会ごとに、不正・不祥事の分類はその区分ごとに集計しているため、一部、合計数が合わないことをお断りしておく。 調査委員会設置を公表した52社のうち14社については、本稿執筆時点において、まだ調査報告書(その概要を含む)を公表していない。このうち6社については、調査委員会の設置そのものが12月であり、まだ調査が終わっていないと考えられる。 2020年の調査委員会設置会社の特徴を1つ加えると、過年度において、調査委員会を設置したことを公表している会社が多いことが挙げられよう。参考までに、過去、調査報告書を本連載で取り上げた会社は次のとおりである。   【市場別分類】 市場別分類では、東証1部上場会社が32社と約62%を占めた(複数市場に上場している会社は東証1部又は2部に含めている)。上場会社数は2020年12月31日現在。   【会計監査人別分類】 会計監査人別の分類では、いわゆる大手4大監査法人の監査を受けていた上場会社が33社、中堅以下の監査法人の監査を受けていた社が19社となり、昨年に比べて中堅以下の監査法人のクライアントの比率が増加している。 なお、中堅以下の監査法人で複数のクライアントが調査委員会を設置したのは、東陽監査法人が4社、太陽有限責任監査法人と監査法人大手門会計事務所が各2社であった。   【調査委員会の構成による分類】 一部、委員名を非公表としている委員会を含めた調査委員会の構成ごとの分類では、日本弁護士連合会が2010年に公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠していると明言している調査委員会及び明言はしないまでもその趣旨に沿って外部の委員を選定していると認められる調査委員会は24社と、過半数を下回る水準であった。 また、2018年からの傾向であるが、調査委員会の構成や委員名について、非公表とする会社が増加している。これらの会社では、調査報告書についても一切公表しないか、概要を公表するにとどまっていることを附言しておきたい。   【調査委員会を設置することとなった不正・不祥事の分類】 調査対象となった不祥事別にこれを分類すると次表のとおりとなる。なお、分類上、経営者や従業員の不正であっても、決算修正等、公表している決算報告書に影響を及ぼす可能性のあるものについては、「会計不正」としている。   【会計不正の態様】 次いで、「会計不正」に分類された44件について、それぞれの不正の態様を見ておきたい。 「会計不正」と分類できる内容で調査委員会を設置したのは41社(上述のとおり、五洋インテックス株式会社は2件の調査委員会を設置しているため、下表では42社となる)であり、その一覧は、次のとおりである(赤字は本連載で取り上げた報告書)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2019年と比べ突出しているのが国内の連結子会社における不適切な会計処理(20件)であり、それ以外の不正類型は減少している。 (了)

#No. 401(掲載号)
#米澤 勝
2021/01/07

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第10回】「買い手は「売り手探し」から始めてはいけない」

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第10回】 「買い手は「売り手探し」から始めてはいけない」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒買い手が売り手探しの前にしておくことを理解する。 売り手企業 ⇒安心して手を組める買い手探しの参考にする。 支援機関(第三者) ⇒買い手が売り手探しをする事前準備や心構えに有益な助言や支援に活かす。 その他の対象者 ⇒主に買い手の立場からのM&A前の準備と、M&A当事者の見方のポイントをつかむ。   1 売り手探しを後回しにする 中小企業のM&Aにおける買い手の中には、“成長"、“規模の拡大"、“持続可能性"、“シナジー"といった言葉に誘われて自らも買い手として名乗りを上げ、いきなり売り手候補探しに入る、という方もたくさんいらっしゃいます。 M&Aのマッチングの段階でよく見られる光景ですから、こうした状況が必ずしも間違いというわけではありません。しかし、M&Aはモノやサービスの売り買いとは違い、売り手の事業そのものや企業文化をなるべく損なわない形で買い手が承継して維持や成長につなげていくもので、取引が終わっても関係が継続します。 そのため、おのずと長いスパンでの見通し、計画性、戦略性が求められます。多くのケースで多額の資産を要するM&Aの成立が前提となりますので、失敗による危険性も伴うはずです。コスト、収益性、設備、人材、企業風土など、思い通りにいくとは限らないことが案外多く、想定以上にM&A後の企業の負担は大きいものです。 入り口の段階で「相性が良さそうだから・・・。」という印象だけを頼りに、M&Aの世界にいきなり飛び込むのは、なるべく避けた方がよさそうです。 “急がば回れ”とは皆さんもよくご存じの言葉だと思います。M&Aで求めるものは失敗ではなく“成功”です。買い手は多くの場合、M&Aによる成功の源泉を相手である売り手に求めるため、売り手探しに力を注ぎますが、成功のカギはほとんどの場合、買い手自身の中にあるもので、そこをおろそかにせずにじっくりと時間をかけて検討することが、意外と成功の近道であることも多いようです。 M&Aは手段であって目的にはせずに、今回は、売り手探しを後回しにして、まず買い手自身がどのようにM&Aと向き合うのがよいか、買い手による買い手自身の見方について解説します。売り手にとっても、望む買い手探しのヒントになるのではないでしょうか。   2 買い手の成長の内にあるM&Aのポジション 中小企業のM&Aにおける買い手の思考パターンとして比較的多いのが、買い手がM&Aを通じて自社(グループ)を成長させようというパターン(下図参照)です。 この場合は、買い手 ⇒ M&A ⇒ 成長 のベクトルとなり、“買い手がM&Aの結果として成長する"という成功の絵を描くことになります。極端に言えば、“M&Aが予想どおり上手くいけば結果論として企業が成長する”という意味です。「ウチはそんなことはない、成長をM&Aにばかり頼っていない」という経営者の方もいますが、そのような場合も含めて大半がこのケースです。 しかし、実際は「1 売り手探しを後回しにする」で触れたように、M&Aは思うようにいくとは限りません。むしろ、そうならないことが多いと思った方がよいくらいです。このパターンは、“買い手の成長はM&Aの結果に振り回される”という危険性があります。 対して、買い手が思い描く成長や事業拡大の姿を叶えるためのいくつもの選択肢が検討されていく中で、達成手段として望ましい対応策の1つにM&Aをチョイスするというパターン(下図参照)があります。 今後、M&Aを検討する中小企業の買い手の皆さんは、願わくは後者のパターンでM&Aと向き合うのがよいでしょう。自社の成長と拡大の姿を描く中でM&Aを選択するまでに至る思考や発想のプロセスとしては、通常、次のような段階を踏むことになります。 (1) 経営理念、ビジョンなど まず、買い手企業が何のために存在し、何を目指す企業なのかを明確にします。これがないのにM&A相手が先に決まることはあってはならないことです。企業の存在意義や究極の目的を叶えるのに合致しており、方向性に沿った相手と組むことが優先されるべきであって、売り手の企業ありきでこの大方針が転換されることは許されません。 (2) 戦略・目標 「(1) 経営理念、ビジョンなど」を達成するための戦略、計画、目標を立てます。何年後に達成するといった時間軸で捉えるもの、拠点数や事業部門といった組織形態に関するもの、売上高や利益のような業績に関するもの、人員数や設備投資などの事業計画に関するものなど、立てられる内容は多岐にわたり、広範に及ぶものです。 この段階まで降りてくると、「2030年の当社はこのような姿になっているだろう」というイメージが形になってくるはずです。しかし、この段階でもまだM&Aは出てきません。 (3) 達成手段 「(2) 戦略・目標」で検討する内容は「(1) 経営理念、ビジョンなど」に比べると定量的(数値や数量で把握可能)になっているものが多い印象でした。さらにこの段階に入ると、「2030年の戦略・目標を達成するためには、2025年までにあれをする、来年までにこれをする」といった、達成するためのより具体的な手段を検討していきます。 ここまできてようやくM&Aが選択肢の1つとして浮上しますが、それでもM&Aを手段の第一候補にしてよいわけではありません。M&Aを選択しない方がよいと思われる企業の状況を以下に挙げましたので、参考にしてください。 M&Aのある一面に注目すると、M&Aは“対価で時間を買う取引"にたとえられることがあります。つまり、成長・目的達成のための時間を短縮できるメリットがあるということです。これは“買い手に余裕”がある状態で力を発揮します。 戦略や計画の進捗度や目的の達成度合い、自力成長の可能性、資金や時間の余裕といった様々な面から「ゆとりがある」と買い手自身がいえるかどうか、売り手や第三者からそう見えるかどうかが、M&Aが選択肢になるかの判断において重要となります。 買い手にとって売り手探しは重要です。しかし、それ以前に、買い手による買い手自身を知る姿勢が欠かせません。買い手にとってM&Aが有効かどうか、売り手企業は買い手企業の目指す先に必要な存在かどうか、これらは、いきなり売り手探しをしていては見えてこないことばかりです。 売り手探しを後回しにすることは、売り手を軽視することではなく、お互いの今後にとって最善の選択をするために買い手が売り手探しの前に払う努力なのです。 (了)

#No. 401(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/01/07
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