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値上げの「理屈」~管理会計で正解を探る~ 【第10回】「価格弾力性を理解する」~「マニア」にロック・オン!~

値上げの「理屈」 ~管理会計で正解を探る~ 【第10回】 「価格弾力性を理解する」 ~「マニア」にロック・オン!~   公認会計士 石王丸 香菜子   登場人物 《デジタル・ポット2.0/販売計画》 *  *  * カケイくんのような新製品好きのマニア、あなたの周りにもいませんか? 新製品の発売を待ち望み、即座にゲットする新しい物好きの人は、一定数いるものです。 新製品が世の中に普及していくプロセスを説明する考え方として、『イノベーター理論』が知られています。新製品をまず購入するのは、「イノベーター」と呼ばれるマニア層です。新しい物や最先端の物が大好きで、高価格でも新製品を購入する傾向があります。その後に新製品を購入するのは、「アーリー・アダプター」と呼ばれる層です。マニアではありませんが、流行や世の中の動向に敏感で、自らが良いと判断した新製品を抵抗なく取り込む層です。 新製品の市場投入に際し、こうした層をターゲットとして、あえて高価格設定することを「スキミング・プライシング(上澄み吸収価格設定)」と言います。マニア層や富裕層に狙いを定めてすくい取る(=skim)ということですね。iPhoneの価格戦略などが典型です。 *  *  * 《デジタル・ポット2.0/低価格シミュレーション》 *  *  * 【第2回】でも取り上げましたが、価格が1%下がったとき需要量が何%増えるかを「需要の価格弾力性」と呼びます。『デジタル・ポット2.0』は、販売価格を((@11,000円- @5,000円)÷ @11,000円 ≒)55%下げても、需要量は((6,000個 -4,000個)÷ 4,000個 =)50%しか増加しないので、需要の価格弾力性は(50% ÷ 55% ≒)0.9です。需要の価格弾力性が1より小さい場合、販売価格を下げても大幅に需要量が増えるわけではないので、売上高は減少します。また、販売価格を下げた分、1個当たりの限界利益も減るので、総利益は大きく減少してしまいます。 見方を変えると、需要の価格弾力性が小さい製品は、多少強気に高価格としても販売量が激減しないので、スキミング・プライシングが成功する見込みがあるといえます。 *  *  * 《セルフ・プランター/販売計画》 *  *  * 新製品の市場投入に際し、一気に市場へ普及するような低価格に設定することを「ペネトレーション・プライシング(市場浸透価格設定)」と言います。『イノベーター理論』の「イノベーター」や「アーリー・アダプター」だけでなく、それ以降に新製品を追随して採用する多数派層も含めた、広い層をターゲットにした戦略です。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 *  *  * 《セルフ・プランター/高価格シミュレーション》 *  *  * 『セルフ・プランター』は、販売価格を((@1,000円 - @800円)÷ @800円 =)25%上げただけで、需要量は((30,000個 -20,000個)÷ 30,000個 ≒)33%も減少してしまうので、需要の価格弾力性は(33% ÷ 25% ≒)1.3です。需要の価格弾力性が1より大きい場合、販売価格を上げると大幅に需要量が減るので、売上高は減少します。 裏返すと、需要の価格弾力性が大きい製品は、販売価格を下げることで一気に需要量が増えるので、ペネトレーション・プライシングが成功する可能性があります。 *  *  * *  *  * 累積生産量が増加するにしたがって、製品の単位当たりコストが減少していく現象は、「経験曲線効果」と呼ばれます。累積生産量が増えることで、能率が上がったり、作業方法が改善されたりすることが主な要因です。経験曲線効果が強く働くような製品は、大量生産することで単位当たりコストが下がるので、ペネトレーション・プライシングによって利益を得られる見込みがあるでしょう。 *  *  * (了)

#No. 403(掲載号)
#石王丸 香菜子
2021/01/21

税効果会計を学ぶ 【第21回】「遡及適用及び修正再表示に関する税効果会計の取扱い」

税効果会計を学ぶ 【第21回】 「遡及適用及び修正再表示に関する税効果会計の取扱い」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、遡及適用及び修正再表示により繰延税金資産又は繰延税金負債を変更する場合の取扱いについて解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 遡及適用に関する取扱い 1 遡及適用 会計方針は、正当な理由により変更を行う場合を除いて、毎期継続して適用する(「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。以下「過年度遡及会計基準」という)5項)。 正当な理由により会計方針を変更した場合、新たな会計方針は過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理する。これを「遡及適用」という(過年度遡及会計基準4項(9))。 新たな会計方針を遡及適用する場合には次の処理を行う(過年度遡及会計基準7項)。 2 遡及適用に関する繰延税金資産又は繰延税金負債 会計方針の変更により遡及適用した連結会計年度及び事業年度の連結財務諸表及び個別財務諸表(以下「遡及適用した年度の比較情報」という)において、資産又は負債の額が変更される場合がある。 この場合、当該変更に伴い一時差異が生じるときは、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額は、遡及適用した年度の比較情報に反映させることになる(税効果適用指針57項)。 3 子会社等の留保利益 子会社等が会計方針を変更し当該会社の留保利益が変更されることにより、遡及適用した年度の比較情報において子会社等に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の額が変更される場合がある。 この場合、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しているときは、当該一時差異の額の変更に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を遡及適用した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針58項)。 4 繰延税金資産の回収可能性 遡及適用に伴い、将来の利益の額が変更されることに対応して、繰延税金資産の回収可能性の判断における将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額が変更される場合がある。 この場合、過年度遡及会計基準17 項(会計上の見積りの変更に関する原則的な取扱い)に従って会計方針の変更を行った年度以降において、変更後の将来の一時差異等加減算前課税所得を前提として、繰延税金資産の回収可能性を判断することになる(税効果適用指針59項)。 また、遡及適用により過年度において回収可能性適用指針15項から32項に従って判断した企業の分類を見直す場合、当該見直しに伴う影響は、会計方針の変更を行った年度の財務諸表に反映させる(税効果適用指針59項)。 5 遡及適用と税効果会計の適用の基本的な考え方 以上に述べた遡及適用に関する税効果会計の基本的な考え方は次のとおりである(税効果適用指針の「[設例12-1]会計方針の変更に伴う遡及適用による繰延税金資産の取扱い」を参照)。 ここで、繰延税金資産の回収可能性の判断は、会計上の見積り(過年度遡及会計基準4項(3))に該当する事項と考えられ、次のように処理する。 また、企業の分類及び繰延税金資産の取扱いについては、次のように処理する。 ※下記の記載は、会計方針の変更に伴い、新たな会計方針を遡及適用した結果、表示期間のうち最も古い期間の期首(X2年3月期の期首)における棚卸資産に係る将来減算一時差異が遡及適用前よりも大きくなったことにより、X2年3月期の期首において、将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じているとはいえない状況となったことを前提としている。   Ⅲ 修正再表示に関する取扱い 1 修正再表示 過去の財務諸表に誤謬が発見された場合、当該誤謬の訂正は過去の財務諸表に反映する。これを「修正再表示」という(過年度遡及会計基準4項(11))。 過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、次の方法により修正再表示する(過年度遡及会計基準21項)。 2 修正再表示に関する繰延税金資産又は繰延税金負債 過去の誤謬により修正再表示した連結会計年度及び事業年度の連結財務諸表及び個別財務諸表(以下「修正再表示した年度の比較情報」という)において、資産又は負債の額が変更される場合がある。 この場合、当該変更に伴い一時差異が生じるときは、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を修正再表示した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針60項)。 3 子会社等の留保利益 子会社等において過去の誤謬により当該会社の留保利益が変更され修正再表示が行われた場合で、かつ、当該修正再表示した年度の比較情報において子会社等に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の額が変更される場合がある。 この場合、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しているときは、当該一時差異の額の変更に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を修正再表示した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針61項)。 4 繰延税金資産の回収可能性 修正再表示した年度の比較情報における将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額や過年度において回収可能性適用指針15項から32項に従って判断した企業の分類を見直す場合、当該見直しに伴う影響は、当該修正再表示した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針62項)。 5 修正再表示と税効果会計の適用の基本的な考え方 以上に述べた修正再表示に関する税効果会計の基本的な考え方は次のとおりである(税効果適用指針の「[設例12-2]修正再表示による繰延税金資産の取扱い」を参照)。 ※下記の記載は、次のことを前提としている。 (a) B社では、X3年3月期において、過去の期間(X2年3月期以前)の売上の過大計上が発見されたため、修正再表示を行った。 (b) X1年3月期及びX2年3月期の回収可能性適用指針におけるB社の分類は、(分類3)に該当する。 (c) 修正再表示により、表示期間のうち最も古い期間の期首(X2年3月期の期首)の回収可能性適用指針におけるB社の分類は、(分類5)に該当する。 ここで、修正再表示した年度の比較情報における将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額や企業の分類の判断を変更する場合、当該変更に伴う影響は、当該修正再表示した年度の比較情報(X2年3月期)に反映させることになる。 前述の前提により、X2年3月期の期首において、修正再表示によりB社の分類は(分類5)に変更されることから、B社がX2年3月期の期首において修正再表示前に計上していた繰延税金資産の回収可能性はないものとなる。この処理は、新たな会計方針の遡及適用の場合(「Ⅱ 遡及適用に関する取扱い」)とは異なるものである。   (了)

#No. 403(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/21

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第13回】「争いが生じやすい中古建物の評価」~鑑定評価で重視される市場性の観点~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第13回】 「争いが生じやすい中古建物の評価」 ~鑑定評価で重視される市場性の観点~   不動産鑑定士 黒沢 泰     1 建物が古くなっても固定資産税評価額が下がらない理由 これに関しては次の2つの要因が考えられますが、本稿と深く関連するのは要因2です。 ➤ 要因1 固定資産税の評価の仕組みに起因する場合 ➤ 要因2 建物の評価額の下限が再建築価格の20%とされていることに起因する場合 ➤ 要因1について 建物は3年に一度の評価替時に次の算式で評価額を見直すこととされていますが、建物が古くなり経年減点補正率が下がっても、再建築価格が上昇していくことがあります(人件費や資材高騰によります)。このような場合、建物は見かけ上は古くなっても、前年度の評価額のまま据え置かれることがあります。 (※1) 課税の対象となった建物と同一のものを評価替えの時点で新たに建築する場合に必要とされる建築費をいいます。 (※2) 建物は築年数の経過によって損耗していくため、経過年数の状況に応じて価値を減少させるために適用する割合をいいます。 ➤ 要因2について 経年減点補正率は一定年数を経過しても、再建築価格の20%を超えて下がらない仕組みとなっています(本稿では掲載を省略しますが、関心のある方は固定資産評価基準別表第9「木造家屋経年減点補正率基準表」、別表第13「非木造家屋経年減点補正率基準表」を参照ください)。そのため、いくら建物が古くなっても、それだけの理由では評価額は下がらないということになります(イメージ図を以下に掲げます)。 〈一定年数以上経過した建物の場合〉 それでは、この20%の根拠はどこに求めればよいでしょうか。これに関しては賛否を含めていくつかの見解が示されていますが、筆者の調査したところによれば、おおむね次の2つに集約されます。   2 鑑定評価の視点 鑑定実務においては、建物価格を求めるに当たり定額法等を用いて減価修正を行う場合でも、残価率をゼロとして評価する(=再調達原価(※3)全体を減価の対象として捉える)ことが一般的です。 (※3) 固定資産税の評価では(※1)の再建築価格に相当するものです。 その理由は、鑑定評価では市場性の側面を重視して価格にアプローチしており、経済的耐用年数満了時においては、通常、市場価値はないものと判断しているためです。 もちろん、建物が建築後一定期間を経過したという理由だけでは、それがそのままゼロ評価につながるわけではなく、価格時点において今後何年使用に耐え得るかという点を判断の上で鑑定評価が行われます。その際、対象不動産の用途や利用状況に即して劣化の程度や市場競争力の程度を判定し、これに応じた経済的残存耐用年数を査定することが建物の鑑定評価では重要となります。 例えば、建築当初に経済的耐用年数が30年と見積もられていたところ、耐用年数が満了してもその後3年間は利用価値(経済価値)が認められると判定されれば、現価率(※4)は、 と計算されます。 (※4) ここでは、再調達原価に対する現時点での価値割合を示すという意味で「現価率」という用語を使用しています(「原価率」とは異なります)。 鑑定評価の経験則から推した場合、建築後の年数が相当経過した建物に関して固定資産税評価で適用される残価率(20%)は現実を反映しないのではないかという声が多く聞かれます(さらに、建物の老朽度が著しい場合は、冒頭に述べたように「建物及び敷地の評価額 = 更地価格 - 家屋の撤去費」という考え方が適用されることがあります)。   3 税務の常識(財産評価基本通達、固定資産評価基準)と鑑定評価の常識との相違点 以上、中古建物の評価額に関し、財産評価基本通達や固定資産評価基準を適用して算定した結果と鑑定評価額との間に乖離が生ずる場合の要因を検討してきました。これらを通じ、鑑定評価においては、財産評価基本通達や固定資産評価基準に比べて、物的な側面以上に市場性という観点が一層重視されることが読み取れたと思います。一概に中古建物といっても、鑑定評価では、他の類似物件と比較してそれが市場でどれだけの競争力を有しているかを評価に反映させるという考え方が重視されているということです。財産評価基本通達や固定資産評価基準のような税務評価と鑑定評価の間に捉え方や価格の乖離が生じる要因はこの点にあるものと推察されます。 なお、今まで述べてきた内容と一部重複する点もありますが、鑑定評価の過程では個々の建物を精査してその損傷度を把握する(= 物理的な減価要因の把握)だけでなく、機能的な減価要因(= 耐震性が劣る等)及び経済的な減価要因(= 代替不動産と比較して競争力が劣る等)も把握の上、評価額に反映させることが必要となります。 これらの事情も踏まえ、建物の評価に関しても税務の常識と鑑定評価の常識との間には本質的な相違点があるものと理解しておけば、疑問点の払拭に少なからず役立つのではないでしょうか。 参考までに、中古建物の評価額に関し、固定資産評価基準や財産評価基本通達の取扱い(再建築価格の20%とすることが妥当である旨)が争点とされた事例としては、例えば以下のものがあげられます。 (了)

#No. 403(掲載号)
#黒沢 泰
2021/01/21

〈知識ゼロからでもわかる〉ブロックチェーン技術とその活用事例 【第2回】「ブロックチェーンの技術と特徴」

〈知識ゼロからでもわかる〉 ブロックチェーン技術とその活用事例 【第2回】 「ブロックチェーンの技術と特徴」   東京ハッシュ株式会社 代表取締役 段 璽   はじめに ブロックチェーンは、取引記録が全てブロックの中に入っており、それらがチェーンによって繋がって今までの全ての取引が記録されていることになる。ブロックチェーンをより理解するために、ブロックチェーンに活用されている技術や使用される専門用語を今回は概説する。   1 P2Pネットワーク ブロックチェーンはP2P(Peer to Peer)ネットワークを用いてデータを管理し、システムダウンしない分散システムを実現している。P2Pネットワークとは、従来のクライアントサーバ型のような中心となるサーバが存在せず、対等の立場のネットワーク参加者がデータを保持又は送受信し合うネットワークのことである。 これにより、ネットワーク参加者であるノード(【第1回】参照)で取引記録を共有し、誰もがブロックチェーンを閲覧することができ、お互いに監視する仕組みができているのである。また、P2Pネットワークでは、世界中に点在しているネットワークの参加者たちが、全く同じ内容のデータをそれぞれで管理していることになる。 【図2-1】P2Pネットワークのイメージ   2 ゼロダウンタイム 取引情報はブロックチェーン上に公開され、参加者全員の合意や検証のもとで正当性が証明されている。全てのノードが平等につながっており、全く同じ機能を有している。すなわち、従来型の中央集権型と違い取引はノードごとに分散管理されているため、例えば、一部のノードが故障しても、他のノードが正常であれば、「ブロックチェーン」全体が停止することがなく、全て処理が続行される。このように、ブロックチェーンはサービスが停止することはない「ゼロダウンタイム」といった特徴を有している。   3 デジタル署名と公開鍵暗号 ブロックチェーンの安全性を確保する技術として、デジタル署名(電子署名)という方法が使用されている。デジタル署名とは、デジタル文書の作成者を証明する電子的な署名であり、デジタル署名をすることで、下記の妥当性を証明することが可能となる。 デジタル署名を生成する際には「公開鍵」と「秘密鍵」と呼ばれるペアとなるキーが作成される。署名者は秘密鍵を使ってデータに署名し、デジタル署名として受信者に送る。受信者は事前に受け取っていた対となる公開鍵を使うことで、そのデータが署名者によって作成されたことを確認する。署名者が秘密鍵の取扱いに注意すれば、データの中身が第三者に漏洩することはない。ブロックチェーンは、このデジタル署名を利用することで、なりすましや改ざんを防止している。   4 ハッシュ値とナンス値 ハッシュ関数は、⼊⼒された異なる⻑さのデータを固定⻑の⽂字列に変換する関数である。ハッシュ関数によって導き出された値はハッシュ値と呼ばれ、データの特定に長けた暗号化技術である。ブロックチェーンにおいては、ハッシュ値の下記のような特性を生かし、ブロックとブロックのデータの連続性の検証など改ざん耐性が高く効率的なデータの管理を実現している。すなわち、データを特定するIDとしていわば指紋のような機能を有するため、データの改ざんや破損があれば瞬時に検出できるのである。 また、ナンス(number used once)値は、ブロックチェーン上で、採掘者(マイナー)が新しいブロックを追加する際に生成する数値である。採掘(マイニング)は取引の整合性を採掘者が行う承認作業のことであり、新たに追加されるブロックを過去のブロックとチェーン状に繋いでいく作業である。ハッシュ値の生成には、過去全ての取引データ(トランザクションデータ)がまとめられ、暗号化されたハッシュ値に、新たにブロックに含める取引データ、そしてナンス値を加えることが求められる。 【図2-2】ハッシュ値とナンス値のイメージ   5 コンセンサスアルゴリズム 不特定多数の参加者から成るブロックチェーンにおいては、取引時に不正を働く参加者や正常に動作しない参加者が含まれる可能性があるため、これらが含まれていたとしても正しく合意を形成できる仕組みが求められる。ブロックチェーンにおけるコンセンサスアルゴリズムとは、不特定多数の参加者の間で正しく合意形成を得るための仕組みである。なお、主なコンセンサスアルゴリズムは、下記のとおりである。 (1) PoW(Proof of Work) PoWは、仕事量(計算速度)により、正当性を担保するコンセンサスアルゴリズムである。膨大な計算が必要な採掘(マイニング)作業を参加者に課すことで、改ざん等を困難にしている。なお、PoWを採用している代表例がビットコイン(BTC)である。 (2) PoS(Proof of Stake) PoSは、一定以上の資産を保有しなければ採掘(マイニング)に参加できないコンセンサスアルゴリズムである。PoSはPoWに比べ、低コストかつ51%攻撃(※)を防ぐことができる仕組みがあると言われている。なお、代表例として、イーサリアム(ETH)はPoWを採用していたが、イーサリアム2.0ではPoSに移行している。 (※) 「51%攻撃」とは、悪意のある採掘者(マイナー)が全体の51%以上の計算能力を持つことにより、ブロックチェーンネットワークをある程度コントロールできるようになることである。 (3) PoC(Proof of Consensus) PoCは誰でも取引承認できるわけではなく、あらかじめ承認者をバリデーターと呼ばれる取引の承認作業を行う特別なノードのみに限定し、その承認者(バリデーター)たちの80%以上の合意が得られたときに取引が承認される仕組みである。PoCはPoWに比べ、承認スピードが速いと言われている。なお、PoCを採用している代表例がリップル(XRP)である。 (4) PoI(Proof of Importance) PoIとは、重要度(貢献度)が高い参加者の中からブロック生成者を決める仕組みであり、重要度は、通貨の保有量や取引回数、取引量などの複数の指標から判断される。なお、PoIを採用している代表例がネム(XEM)である。   6 スマートコントラクト 「ブロックチェーン」上で、人の手を介さずに契約を自動実行させる仕組みを「スマートコントラクト」と言う。契約成立のための特定条件と成果を明文化して事前に実行コードとして共有しておくと、全参加者(ノード)による監視の下、公平にプログラムが自動実行される仕組みであり、近年注目を集めている。 【図2-3】ブロックチェーン技術まとめ (了)

#No. 403(掲載号)
#段 璽
2021/01/21

《速報解説》ASBJが「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」を公表~投資信託財産が金融商品・不動産である投資信託の時価の算定について取扱いを示す~

《速報解説》 ASBJが「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」を公表 ~投資信託財産が金融商品・不動産である投資信託の時価の算定について取扱いを示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年1月18日、企業会計基準委員会は、「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第71号。企業会計基準適用指針第31号の改正案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、投資信託の時価の算定と貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価について取扱いを示すものである。 意見募集期間は2021年3月18日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱い 「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号)5項に定める時価の定義により、金融商品取引所等の市場に上場している投資信託で市場における取引価格が存在する場合、通常は当該価格が時価になると考えられる(公開草案49-2項)。 市場における取引価格が存在しない場合について、次のように規定している。 「コメントの募集」では、フローチャートが記載されており、公開草案の理解に資するものと思われる。 1 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合(公開草案24-2項) なお、公開草案24-2項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額で解約できることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(公開草案24-6項)。 2 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合(公開草案24-3項) 投資信託財産が金融商品である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、次のいずれかに該当するときは、基準価額を時価とみなすことができる。 次の規定に注意する。   Ⅲ 投資信託財産が不動産である投資信託の取扱い 市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託について、金融商品会計基準に従い、時価をもって貸借対照表価額とすることで会計処理を統一している(公開草案49-9項)。 市場における取引価格が存在しない場合について、次のように規定している。 「コメントの募集」では、フローチャートが記載されており、公開草案の理解に資するものと思われる。 1 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合(公開草案24-8項) なお、公開草案24-8項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額で解約できることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(公開草案24-10項)。 2 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合(公開草案24-9項) 投資信託財産が不動産である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、基準価額を時価とみなすことができる。 次の規定に注意する。   Ⅳ 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱い 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号)132項、308項)については、金融商品時価開示適用指針4項(1)に定める事項の注記を要しないこととし、その場合、他の金融商品における金融商品時価開示適用指針4項(1)の注記に併せて、所要の注記を行う(公開草案24-15項)。   Ⅴ 適用時期等 (了)

#No. 402(掲載号)
#阿部 光成
2021/01/21

《速報解説》 国税庁、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表~在宅勤務で生じた通信費等のうち非課税となる「業務のために使用した部分」の合理的な算定方法を示す~

《速報解説》 国税庁、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表 ~在宅勤務で生じた通信費等のうち非課税となる「業務のために使用した部分」の合理的な算定方法を示す~   Profession Journal編集部   長期化するコロナ禍により大企業を中心に在宅勤務(テレワーク)が浸透しており、在宅勤務を行う従業員に対し在宅勤務に必要な費用として在宅勤務手当を支給する企業も増えつつある。 国税庁はこのたび1月15日付けで「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表、企業が従業員に上記手当を支給した場合や費用負担を行う場合の給与課税の有無について、その取扱いを明らかにした。 FAQではまず、企業が従業員に対し在宅勤務に必要な費用を支給する場合、その費用の実費相当額を精算する方法によるものであれば、従業員に対する給与として課税する必要はないとした(一方、例えば企業が従業員に対し毎月5,000円を渡切りで支給するなど精算不要とするような場合については給与課税される)。 また、その精算方法については、①企業が従業員に仮払いした後、その費用に係る領収証等とともに従業員が精算する方法(超過分は企業へ返還)と、②従業員が立替払いした後、その費用に係る領収証等とともに実費を精算する方法が考えられるが、事務用品費はともかく通信費や電気料金については、業務のために使用した部分を明確に算定するのは難しい。 FAQでは「インターネット接続に係る通信料(基本使用料やデータ通信料など)」のうち「業務のために使用した部分」として、例えば以下の【算式】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えないとしている。 なお、「電話料金」のうち「通話料」については通話明細書等により「業務のための通話に係る料金」が確認できるとしているが、「基本使用料」や、「業務のための通話を頻繁に行う業務(営業担当等)に従事する従業員の通話料」については、上記【算式】により算出したものを「業務のための通話に係る料金」として支給する場合には給与課税されない。 次に、従業員が負担した「電気料金(基本料金・電気使用料)」のうち在宅勤務に要した部分を企業が支給する場合に、例えば次の【算式】のように床面積割合で算出したものを「業務のために使用した部分」として支給した場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えないとしている。 なお上述したそれぞれの算式によらず、より精緻な方法で業務のために使用した金額を算出し、その金額を企業が従業員に支給している場合についても、給与課税はされないとしている。 いずれにせよ企業としては、在宅勤務に係る費用について、定額で渡切り(精算不要)として給与課税されるか、上記の管理を行って業務使用部分を精算(非課税)するかの判断が求められよう。 (了)

#No. 402(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/01/18

《速報解説》 本日が申請期限の「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」、緊急事態宣言の再発令により書類準備が間に合わない等特段の事情がある場合は、2月15日まで期限を延長

《速報解説》 本日が申請期限の「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」、 緊急事態宣言の再発令により書類準備が間に合わない等特段の事情がある場合は、2月15日まで期限を延長   Profession Journal編集部   新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に対し政府から支給される「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」は、申請期限が本日1月15日(金)とされているが、経済産業省はこのたびの緊急事態宣言の再発令を受け、申請期限に間に合わない特段の事情がある場合については、2月15日(月)まで申請期限を延長することを明らかにした。 なお、持続化給付金については、本日(1/15)から1月31日までに、書類の提出期限延長の申込みを行う必要がある。 期限延長に伴う手続についてはそれぞれのポータルサイトで詳細が明らかにされているが、上記の通り持続化給付金については事前の申出が必要といったように手続が異なるため、十分注意されたい。 なお経済産業省は、緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出自粛などにより影響を受ける中小事業者に対する支援策をまとめたページを公表している。 (了)

#No. 402(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/01/15

プロフェッションジャーナル No.402が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年1月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.402を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/01/14

令和2年分 確定申告実務の留意点 【第2回】「新型コロナ税特法の措置と申告書様式の変更」

令和2年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「新型コロナ税特法の措置と申告書様式の変更」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   連載第2回は、令和2年4月30日に公布・施行された「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(令和2年法律第25号)(以下、「新型コロナ税特法」という)」による措置のうち、令和2年分の確定申告に関係する主なものを解説する。 また、令和2年分の確定申告書の様式は、令和元年分から一部変更されている。主な変更点について解説する。   【1】 新型コロナ税特法による措置 新型コロナ税特法による措置のうち、令和2年分の確定申告に関係する主なものは、次のとおりである。 (1) 給付金の非課税 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響を鑑み、市町村又は特別区から給付される給付金のうち次のものについては、所得税は課されない(新型コロナ税特法4①)。 (2) 指定行事の中止等により生じた権利を放棄した場合の寄附金控除等の特例 指定行事の中止等により生じた入場料金等の払戻請求権の全部又は一部の放棄を、令和2年2月1日から令和3年12月31日までにした場合には、その年において放棄をした部分の払戻請求権の価額の合計額(最高20万円)について、寄附金控除又は税額控除(公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除)の適用を受けることができる(新型コロナ税特法5、所法78、措法41の18の3)。 指定行事とは、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに行われた又は行われる予定であった文化芸術・スポーツに関する行事のうち、新型コロナウイルス感染症が発生したことによる国又は地方公共団体からの要請を受けて、中止、延期、規模の縮小を行った行事として文部科学大臣が指定するものをいう(新型コロナ税特令3①⑦)。 指定行事は、文化庁及びスポーツ庁のホームページに公表されている。 なお、この特例の適用を受ける場合には、確定申告書に指定行事の主催者から交付を受けた次の書類を添付する必要がある(新型コロナ税特令3②⑤、新型コロナ税特規3)。 (3) 住宅借入金等特別控除の適用要件の弾力化 ① 中古住宅:入居期限要件(取得日から6ヶ月以内)の緩和 中古住宅を取得し、居住の用に供する前に増改築等を行った場合、住宅借入金等特別控除の適用を受けるには、その住宅を取得日から6ヶ月以内に居住の用に供することが要件とされている。 新型コロナ税特法ではこの入居期限要件が緩和され、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、住宅を取得日から6ヶ月以内に居住の用に供することができなかった場合でも、次の要件を満たすときは住宅借入金等特別控除の適用を受けることができる(新型コロナ税特法6①②③、新型コロナ税特令4①②)。 (※) 取得日から5ヶ月を経過する日又は令和2年4月30日から2ヶ月を経過する日のいずれか遅い日 ② 控除期間13年間の特例措置:入居期限(令和2年12月31日)の延長 住宅借入金等特別控除の控除期間13年間の特例措置について、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、その住宅を当該制度の入居期限である令和2年12月31日までに居住の用に供することができなかった場合でも、次の要件を満たすときはその適用を受けることができる(新型コロナ税特法6④⑤、新型コロナ税特令4③)。 (※) 新築:令和2年9月30日 中古住宅の取得、増改築等:令和2年11月30日   【2】 様式の変更 令和2年分の確定申告書の様式は、一部変更されている。 以下、B様式の第一表と第二表の主な変更点について解説する。 (1) 第一表の主な変更点 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ① 収入金額等の「給与」欄 令和2年分の様式では、収入金額等の給与欄に「区分」欄が設けられた。「区分」欄には、所得金額調整控除の適用がある場合に、次のとおり記入する。 ② 雑所得の区分 令和2年分の様式では、雑所得の内訳として新たに「業務」欄が設けられた。 「業務」欄には、原稿料、講演料又はネットオークションなどを利用した個人取引若しくは食料品の配達などの副収入による所得について記入し、「その他」欄には生命保険の年金(個人年金保険)や互助年金等の所得について記入する。 ③ 「寡婦、ひとり親控除」欄 ひとり親控除の創設及び寡婦控除の見直しにより、「寡婦、寡夫控除」欄から「寡婦、ひとり親控除」欄へ変更された。 なお、令和2年分の様式において、「寡婦、ひとり親控除」欄に「区分」欄が新たに設けられている。この「区分」欄には、ひとり親控除の適用を受ける場合に「1」を記入する。 ④ 「公的年金等以外の合計所得金額」欄 令和2年分以後の公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて金額が異なることとなった。公的年金等の収入金額がある納税者は、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額を本欄に記入する。    (2) 第二表の主な変更点 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ① 「保険料控除等に関する事項」欄 令和2年分の様式では、「支払保険料等の計」と「うち年末調整等以外」の2つの欄が設けられた。「支払保険料等の計」欄には、控除の適用を受ける保険料等の金額を記入し、「うち年末調整等以外」欄には、「支払保険料等の計」欄に記入した金額のうち、年末調整で控除の適用を受けていない金額を記入する。 なお、給与所得者が、すでに年末調整で控除を受けた金額を記入する場合には、「保険料等の種類」欄(生命保険料控除及び地震保険料控除の場合には「支払保険料等の計」欄)に「源泉徴収分」と記入する。 ② 「本人に関する事項」欄 令和2年分の様式では、本人に関する事項(寡婦、ひとり親、勤労学生、障害者)をまとめて記入する「本人に関する事項」欄が設けられた。 ③ 「配偶者や親族に関する事項」欄 令和2年分の様式では、配偶者や親族に関する事項をまとめて「配偶者や親族に関する事項」欄に記入することとされた。令和元年分まで「住民税・事業税に関する事項」欄に記入していた同一生計配偶者や16歳未満の扶養親族に関する事項も、令和2年分では本欄に記入する。 「障害者」、「国外居住」、「住民税」、「その他」の各欄の記入方法は、次のとおりである。 (※) 別居の場合には、「住民税・事業税に関する事項」欄にある「上記の配偶者・親族・事業専従者のうち別居の者の氏名・住所」欄への記入が必要である。 *  *  * 次回(最終回)は、第1回及び第2回の内容を踏まえ、確定申告実務に関する留意点をQ&A方式で解説する予定である。 (了)   

#No. 402(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/01/14

金融・投資商品の税務Q&A 【Q59】「暗号資産(仮想通貨)の売買に係る収益の認識時期」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q59】 「暗号資産(仮想通貨)の売買に係る収益の認識時期」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○●   1 暗号資産(仮想通貨)の売却により生じた総収入金額の収入時期 暗号資産(資金決済に関する法律第2条第5項に規定するものをいいます)は、原則として、雑所得に区分することとされています。雑所得の総収入金額の収入すべき時期は、その収入の態様に応じて、他の所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期の取扱いに準じて判定した日とされていますが、これは、雑所得に該当するものの収入の態様には様々なものがあり得るため、他の9種類の所得の収入金額、総収入金額の計上時期に関する取扱いに準ずるという趣旨であると考えられています。 暗号資産の売買による収益は譲渡所得には該当しないものの、当該収益は、暗号資産を購入し、それを売却することによって得られる値上がり益であるため、譲渡所得の総収入金額の計上時期の取扱いに準ずるのが相当であると考えられます。ここで、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日が原則とされていますが、納税者の選択により、その資産の譲渡に関する契約の効力発生の日によることも認められています。 したがって、暗号資産の売却により生じた総収入金額の収入時期は、原則として、暗号資産の引渡しがあった日の属する年であり、納税者の選択によって、暗号資産の売却に係る約定日の属する年とすることも認められるものと考えられます。このことは、国税庁が公表している「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」の問7においても、明らかにされています。   2 暗号資産の売買により生じた雑所得の金額の計算 暗号資産の売買により生じた雑所得の金額は、総収入金額から必要経費を控除して算出します。必要経費には譲渡原価、売却に際して暗号資産交換業者に支払った手数料等が含まれますが、この譲渡原価は、その年1月1日において有する暗号資産の価額とその年中に取得した暗号資産の取得価額の総額の合計額から、その年12月31日において有する暗号資産の価額を控除して計算します。 そして、暗号資産の価額は、総平均法と移動平均法のいずれかの方法を選択して評価することができますが、法定評価方法は総平均法ですので、納税者が選定手続きを行わない場合には、総平均法を適用することになります。   3 本件へのあてはめ 暗号資産の売却により生じた総収入金額の収入時期は、原則として、暗号資産の引渡しがあった日の属する年であると考えられますので、約定日が12月31日、引渡日が翌年1月2日である取引に係る売却収入については、翌年の総収入金額に含めて確定申告することになります。ただし、納税者の選択によって、暗号資産の売却に係る約定日の属する年の総収入金額とすることも認められますので、当年の総収入金額として取り扱うことも可能です。 引渡日が翌年1月2日である取引に係る売却収入を翌年の総収入金額に含める場合の、当年における雑所得の金額の計算(総平均法)は下記のとおりです。   (了)

#No. 402(掲載号)
#西川 真由美
2021/01/14
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