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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例14】「分掌変更により支払う役員退職給与の損金性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例14】 「分掌変更により支払う役員退職給与の損金性」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は関東地方のとある県の県庁所在地で、自動車用のプラスチック製品の製造販売を行っている株式会社Xに、高校卒業後35年間勤務しており、現在経理部長を務めております。わが社は前会長Aが約50年前に創業した会社で、株式会社化した40年前からAが代表取締役を務めていました。 Aも高齢となり事業を後継者に任せるため、平成30年5月末の取締役会で、その娘婿であるBに代表取締役の地位を譲り、相談役に退きました。それに伴い、報酬の額は代表取締役の時の3分の1にまで減額されております。同時に、それまでのわが社に対する多大な貢献に報いるため、規定に基づきAに対し役員退職慰労金1億5,000万円を支給する旨を取締役会で決議し、翌月末に同額をAに対して支給したところです。株式会社Xは、平成31年3月期の法人税に関し、当該役員退職慰労金を全額損金の額に算入し、確定申告書を所轄税務署に提出しております。 ところが、今般受けたわが社に対する税務調査で、Aは代表取締役退任後も引き続き相談役としてX社の経営に関与し、対内的にも対外的にもX社の経営上の重要な地位を占めているものと判断されることから、実質的にX社を退職したと同様の事情にあったとは認められないとして、Aに対する役員退職慰労金の損金算入は認められない旨を調査官から伝えられました。 わが社は今回のAの相談役就任による役員退職慰労金の支給について、代表権の返上や報酬の激減といった事実を踏まえ、法人税基本通達9-2-32を根拠に、具体的には、「その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」に該当するため、損金算入可能な退職給与として取り扱うべきと考えていることから、調査官の指摘は到底納得いくものではありません。経営陣とも相談の上訴訟も辞さない覚悟ですが、我々の主張が認められる余地はあるのでしょうか、教えてください。   【A】 法人税法上、損金に算入される役員退職慰労金は、退職した役員に支給される臨時的な給与で、業績連動給与に該当しないものをいい、さらに不相当に高額な部分の金額及び事実を隠蔽又は仮装して支給した金額以外を指すとされています。 しかし、その具体的な基準は専ら解釈に委ねられており、その実務指針の1つとして法人税基本通達9-2-32があるわけですが、その際問題となるのが、現実には法人から退職していないが、「実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」とはどのような場合を指すのかという点です。 その解釈において重要な判断基準は、退職慰労金の支給対象者が分掌変更等により「経営上の主要な地位を占めていないこと」であり、AがX社の相談役の地位にとどまり経営に関与し続けている実態がある場合には、Aに対する役員退職慰労金の損金算入は認められないものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 役員退職給与の意義 会社法においては、役員報酬のみならず役員賞与や役員退職慰労金も職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益と解されている。そのため、退職慰労金(弔慰金を含む)も在職中の職務執行の対価として定款・株主総会決議により額を定めなければならない(※1)、とされている。 (※1) 江頭憲治郎『株式会社法(第7版)』(有斐閣・2017年)463頁。 租税法においては、退職給与(退職手当)につき、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう、とされている(所基通30-1)。 (2) 法人税法上の役員退職給与の意義 法人税法上、退職した役員に支給する退職給与(役員退職給与)の額(業績連動給与に該当するものは除く、法法34①)のうち、不相当に高額な部分の金額は損金に算入されない(法法34②)。ここでいう「不相当に高額な部分の金額」とは、退職し支給される役員が法人の業務に従事した期間、その退職の事情、同種事業・類似規模の法人の役員退職給与の支給の状況等を総合的に勘案して判断することとなっている(法令70②)。 上記判断項目のうち、「同種事業・類似規模の法人の役員退職給与の支給状況」と自法人の支給状況とを比較する主たる方法として、功績倍率法と1年当たり平均額法の2つがある(※2)。 (※2) 金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)401頁。 ① 功績倍率法 自法人と同種事業で、事業規模及び退職した役員の地位等が類似するものを選定した上で、その功績倍率に当該役員の最終月額報酬及び勤続年数を乗じて算出する方法であり、この中には更に、平均功績倍率法と最高功績倍率法とがある。 算式で示すと以下のとおりである。 ② 1年当たり平均額法 自法人と同種事業で、事業規模及び退職した役員の地位等が類似するものを選定した上で、当該他の法人における退職した役員の勤続年数1年当たりの平均退職給与の額に、当該役員の勤続年数を乗じて算出する方法である。 これを算式で示すと以下のとおりとなる。 (3) 分掌変更により支払う役員退職給与の損金性 それでは、本件のような、高齢の代表取締役が事業を後継者に任せるため、取締役会で後継者にその地位を譲り、相談役に退くときに退職慰労金を支払う場合のように、いわゆる「分掌変更」により支払う役員退職給与(慰労金)は、支払った法人において損金に算入されるのであろうか。 近年、分掌変更による役員退職給与の損金性が争われる事案が少なくないが(※3)、それは専ら法人税基本通達9-2-32の規定内容について、中でも現実には法人から退職していないが、「その役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」とはどのような場合を指すのか、という点についての判断が問われているものである。 (※3) 2015年までの裁判例や裁決事例のリストについては、拙著『新版 税務調査事例から見る役員給与の実務』(清文社・2016年)248-249頁参照。 そのような事案の1つで、最近判断が下されたものがあるので、以下でその内容を確認していきたい(東京高裁平成29年7月12日判決・税資267号順号13033、TAINSコード:Z267-13033)。 ① 事案の概要 本件は、平成2年4月に設立されたプラスチック製部品の製造販売等を目的とし、東京都大田区に本店を置く株式会社である原告Aが、平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度の法人税について、確定申告書及び修正申告書を提出した後、原告の前代表取締役Bに対して支払った退職慰労金5,609万6,610円は損金の額に算入されるべきであったとして更正の請求(通法23①一)をしたのに対し、大森税務署長が、前代表取締役Bは退任後も原告A社の取締役として退任前と同様の業務を行っているため、本件退職慰労金を損金の額に算入することはできないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、本件通知処分の取消しを求める事案である。 一審の東京地裁平成29年1月12日判決・税資267号順号12952(TAINSコード:Z267-12952)では、原告の前代表取締役Bの月額報酬が、退任前の205万円から75万円に減額されているものの、退任後も引き続き原告の経営判断に関与していたこと、退任後もなおBが原告の経営上主要な地位を占めていた等により、裁判所は、報酬の減額の事実は、Bの役員としての地位又は職務の内容が激変して実質的には退職したと同様の事情にあるとまでは認められないと判断し、原告の請求を棄却した。 それに対し、A社はこれを不服として控訴した。 ② 事案の争点 A社が前代表取締役Bに対して支払った退職慰労金は、法人税法第34条第1項括弧書き所定の「退職給与」に該当するか否か。 ③ 裁判所の判断 なお、納税者側は最高裁に上告しているが、上告棄却・不受理となって確定している(最高裁平成29年12月5日決定・税資267号順号13093、TAINSコード:Z267-13093)。 ④ 本裁判例からいえること 本裁判例の争点である「A社が前代表取締役Bに対して支払った退職慰労金は、法人税法第34条第1項括弧書き所定の「退職給与」に該当するか否か」に関し、裁判所はまず「退職給与」の意義について、「役員が会社その他の法人を退職したことによって支給され、かつ、役員としての在任期間中における継続的な職務執行に対する対価の一部の後払いとしての性質を有する給与であると解すべき」と判示している。 その上で、法人税基本通達9-2-32の規定内容のうち、現実には法人から退職していないが、「その役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」について、一審(原審)においてなされた以下の事実認定及び認定事実の評価が相当であると判断している。 以上1)2)の事実認定から、営業部長の職にあったCがBに代わり原告の代表取締役に就任するに当たっては、原告の経営に支障が生じないよう、Bが、引き続き当分の間は原告A社の経営に関与してCに対する指導や助言を行うことによって、専ら営業部門で勤務してきたCの経営責任者としての経営全般に関する知識や経験の不足を補うことが予定されていたものと「評価」される。 以上3)4)の事実認定に照らすと、Cは、代表取締役に就任した後、原告A社の経営に関する法令上の代表権を有してはいたものの、Cが原告A社の営業以外の業務や組織管理等の経営全般に関する経営責任者としての知識や経験等を十分に習得して自ら単独で経営判断を行うことができるようになるまでは、Bが、原告A社の経営についてCに対する指導と助言を行い、引き続き相談役として原告の経営判断に関与していたものと「評価」される。 以上5)6)から、Bは、営業会議及び合同会議には出席しなくなったものの、原告の幹部が集まる代表者会議に引き続き出席し、営業会議及び合同会議についても議事録の回付により経営の内容の報告を受けて確認し、助言や指導を行うなど、経営上の重要な情報に接するとともに個別案件の経営判断にも影響を及ぼし得る地位にあった上、10万円を超える支出の決裁にも関与していたものと「評価」される。 以上のような事実認定及び認定事実の評価に照らせば、裁判所の「乙は、原告の代表取締役を退任した後も、その直後の本件金員の支給及び退職金勘定への計上の前後を通じて、引き続き相談役として原告の経営判断に関与し、対内的にも対外的にも原告の経営上主要な地位を占めていたものと認められるから、甲が代表取締役に就任したことにより乙の業務の負担が軽減されたといえるとしても、本件金員の支給及び退職金勘定への計上の当時、役員としての地位又は職務の内容が激変して実質的には退職したと同様の事情にあったとは認められないというべきである。(下線部筆者)」という判断は妥当といわざるを得ないだろう。 (4) 役員退職慰労金の支給とコーポレートガバナンス 本件に関連し、代表取締役等が退任後も後継者が育つまでの間、そのスムーズな引継ぎ等の観点から、取締役等として引き続き経営に関与する場合には、限定的に役員退職給与の損金算入を認めてもよいのではという意見もある(※4)。このような意見の背景には、退職金の算定に上記(2)①の功績倍率法を適用する場合、最終月額報酬が下がると退職金も下がるため、報酬が下がる前の金額を用いて算定をしたいという事情もあるようであるが、筆者はコーポレートガバナンスの観点からこれにはあまり賛成できない。 (※4) 近藤雅人「分掌変更による役員退職給与の損金性」『最新租税基本判例70』(日本税務センター・2019年)137頁。 よく言われることであるが、経営者のなかでも社長(トップ)の最大の仕事は、後継者の育成・選任である。これは、企業・法人は継続する事業体(継続企業の原則)であるという前提に立てば、もっともな考え方であるといえよう。前経営者の後見がなければやっていけない者は、そもそもトップの器ではなく、前経営者が表面的な退任後もダラダラと実質的に経営に関与することは、いわゆる「二重権力(ないし院政)」につながり、コーポレートガバナンスの観点からも回避すべき事態であるといえる。 したがって、それを助長しかねない役員退職慰労金の損金算入の取扱いは、租税法の不当な会社法への介入となり、少なくとも会社法の原則を曲げてまで斟酌すべき事情であるとは思えず、必要な租税政策とも言えないことから、肯定されないものと考えられる。 (5) 本件への当てはめ 法人税法上、損金に算入される役員退職(慰労)金は、退職した役員に支給される臨時的な給与で、業績連動給与に該当しないものをいい、さらに不相当に高額な部分の金額及び事実を隠蔽又は仮装して支給した金額以外を指すとされている。しかし、その具体的な基準は専ら解釈に委ねられており、その実務指針の1つとして法人税基本通達9-2-32があるのであるが、その際問題となるのが、現実には法人から退職していないが、「実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」とはどのような場合を指すのかという点である。 その解釈において重要な判断基準は、退職慰労金の支給対象者が分掌変更等により「経営上の主要な地位を占めていないこと」であり、裁判例に照らすと、AがX社の相談役の地位にとどまり実質的に経営に関与し続けているという実態がある場合には、仮に報酬が代表権を有するときの3分の1に減額されていたとしても、Aに対する役員退職慰労金の損金算入は認められないものと考えられる。 (了)

#No. 355(掲載号)
#安部 和彦
2020/02/06

租税争訟レポート 【第47回】「内縁の妻に対して支給した給与の否認と納税告知処分(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決)」

租税争訟レポート 【第47回】 「内縁の妻に対して支給した給与の否認と納税告知処分 (第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【判決の概要】 〈第一審〉   【事案の概要】 建設用機械及び車両の企画・設計・製造・販売等を目的として設立された法人である原告は、処分行政庁である茂原税務署による税務調査の対象となった平成19年10月1日に開始する事業年度から、平成26年9月30日に終了する事業年度までの各事業年度における法人税の確定申告において、自己の従業員であるとする「A」に給与を支給したとして、その支給額を損金の額に算入して申告を行った。 税務調査の結果、茂原税務署は、その支給額につき、「A」に対する給与であるかのように事実を仮装して経理することにより原告代表者に対して支給された役員給与の額と認め、①法人税法34条3項に基づき、法人税の所得の金額の計算上、その支給額を損金の額に算入することはできないとして、平成27年6月29日付けで、各事業年度に係る法人税の更正処分をするとともに、②原告代表者に対する役員給与に該当するとした金額につき、所得税法183条1項に基づき、平成20年上期から平成26年下期までの各期間について納付すべき源泉所得税が発生しているとして、その納税告知処分をし、さらに、③国税通則法の規定に基づき、各期間に係る不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。 本件は、原告が、被告を相手に、本件各更正処分、各納税告知処分及び各賦課決定処分の取消しを求める事案である。   【判決の概要】 1 「A」に対する支給に関する経理処理等 原告は、各事業年度に属する各月において「A」に対して支払ったとする月額45万円につき「給与手当」として経理処理し、各事業年度における法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入した。 原告は、各期間を通じ、各支給額に係る源泉所得税等として月額1万2,760円、社会保険料として月額5万3,737円を、それぞれ「A」に係る預り金として経理処理した。 原告は、各事業年度・各期間において、「A」に対しては、毎月40万円を同人名義の銀行口座に振り込む方法により支払われていた。なお、上記の振込金額は、支給額(45万円)から、預り金の額を差し引いた後の金額に、若干の加算をした金額(原告の主張では、「A」が所有するリース車に係るリース料相当額を上乗せしている)に相当する。 2 争点に対する主張 本項では、争点(1)とした、「A」に対する支給額が、原告による「A」に対する給与の支給ではなく、原告代表者に対する役員給与に該当するか否かについて、原告・被告双方の主張の概要をまとめておきたい。「原告代表者に対する役員給与」であることが認定されれば、争点(2)の事実を仮装したかどうかも、自ずと判断ができると考えられるからである。 (1) 被告の主張 被告が行った事実認定は次のとおりである。 これらの事実認定によって、被告は次のように主張した。 (2) 原告の主張 これに対して、原告は、原告代表者が「A」の居宅を仕事場として使用するようになったことを、次のように説明した。 そのうえで、「A」の業務内容については、次のとおりであると説明した。 また、被告が主張する「出退勤管理」を行っていないことや「給与支払報告書」の未提出については、いずれも、「A」が原告の従業員であることを否定する事情ではないと反論した。 3 裁判所の判断 本件では、東京地方裁判所は「第3 当裁判所の判断」冒頭で、以下のように述べ、原告の請求を「棄却すべきである」ことを明らかにした。 (1) 認定事実 裁判所による認定事実は、概ね、被告の主張と同様であるが、原告代表者と「A」との出会い、原告代表者が配偶者と別居状態の中、平成3年7月頃から「A」と同居を始めたことなどが示されている。 (2) 法人税法34条(役員給与の損金不算入)の規定 裁判所は、まず、役員が個人として負担すべき費用を法人が負担することによってその役員に付与される経済的利益についても法人税法34条4項が定める「その他の経済的な利益」に該当するものと解するのが相当であるとの判断を示した。 そのうえで、原告が「A」に対する給与として支給した額は、「A」が原告の従業員として労務を提供したことに対する対価と認めることはできず、その実質は、原告代表者と共同生活を営む内縁の妻である「A」が、自宅で仕事を行う原告代表者のために多大な労苦を伴う活動を継続してきたことに対し、その内助の功に報いる生活保障の趣旨で支給されたものと認めるのが相当であると判示した。 そして結論としては、原告代表者が個人として負担すべき費用を原告が負担したものにほかならないことから、原告代表者が得た経済的な利益は、法人税法34条4項が定める「その他の経済的な利益」に当たり、同条1項から3項までの適用上、原告がその役員である原告代表者に対して支給する給与に含まれるものというべきであると結論づけた。 そのうえで、原告は、各支給額を、原告代表者に対する役員給与として経理処理すべきであったところ、これを「A」に対する給与の支給であると仮装して経理処理をしており、法人税法34条3項により、各支給額は損金の額に算入することができないものであり、処分行政庁による各更正処分は適法であると判断した。もっとも、原告には繰越欠損金が存在しているため、法人税に関して追徴課税はない。 (3) 納税告知処分について 裁判所は、次いで、処分行政庁が行った納税告知処分に関して、各支給額は原告代表者に対する役員給与と認められるから、原告は、各期間において、各支給額を原告代表者の役員給与に加算して、その加算分に係る所得税等を源泉徴収して納付すべきところ、これを納付していなかったものであるから、各納税告知処分がこれを納付すべきものとしたことは適法であると判示した。 (4) 事実を仮装して経理することにより支給されたものであるか否か(争点2) さらに、裁判所は、原告による「A」に対する支給が、事実を仮装して経理することにより支給されたものであるか否かについて、次のように判断して、処分行政庁による賦課決定処分が、原告の各期間に係る源泉所得税等の額について、不納付加算税及び重加算税を賦課するとしたことは適法であるとした。 すなわち、「A」に対する各支給額は原告代表者に対する役員給与に当たるところ、原告は、これを「A」に対する給与手当として経理処理し、出勤簿を作成して、厚生年金保険及び健康保険の被保険者の資格を取得させ、各支給額に係る源泉徴収税等及び社会保険料を「A」に係る預り金として経理処理するなど、「A」が原告の従業員であるかのように装って各支給をし、各事業年度における法人税の所得金額の計算上、各支給額を損金の額に算入したものであることから、原告による各支給は、原告代表者に対して支給した役員給与を、「A」に対して支給した給与手当であると事実を仮装して経理をすることにより支給したものと認めるのが相当であると結論づけたものである。   【解説】 税務調査でよく問題になる事案に、「特殊関係人」「特殊関係使用人」に対する支出がある。前者はいわゆる「愛人」「内縁関係にある者」を意味し、後者は前者に加えて配偶者や子供、親族など代表者と特別の関係にある者を使用人として雇用し、給与を支給している場合に使用される用語である。こうした者に対して支出した金員が、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することが妥当かどうか。本事案はまさにその点が争点となった。 1 税務調査を行うこととなった理由 判決文別紙によれば、原告の繰越欠損金額は、平成20年9月期の更正処分が行われた段階で、約7,000万円である。原告の決算内容が不明であることから、原告がいつ頃から赤字決算を続けているのかは明らかではないが、茂原税務署が、これだけの欠損金額がある法人の税務調査を行うこととした理由もまた明らかではない。 特殊関係人や特殊関係使用人に対する支出に係る税務調査の端緒としては、会社の従業員や元従業員が、就業の事実のない者に対する支出を不審に思い、あるいは、自分の給与と比較して高額であることに不満を持って、税務署に密告するケースもあると仄聞するが、本件も、そうしたケースであったのかもしれない。 2 「内縁」関係の認定 裁判所は、判決文の中で、3ヶ所「内縁の妻」という表現を用いている。 その一方、判決文を読む限り、被告である国は、その主張の中で、原告代表者と「A」の関係について、「内縁」という文言を避けているようである。その理由については推測するしかないのであるが、被告が「内縁関係にあるから原告の給与ではない」という主張を行った場合には、おそらくは税務調査の過程で、「内縁関係」を否定していると考えられる原告及び原告代表者が、法廷でも「内縁関係にはないこと」の主張を繰り返し、本来の争点である、「給与として損金の額に算入することが妥当かどうか」「代表者に対する経済的利益の供与として、役員給与に該当するか否か」といった論点がかすんでしまうことを恐れての訴訟戦略であったのではないかと思料する。 つまり、内縁関係にあろうか否かにかかわらず、「A」が行ってきたとされる業務は、原告の従業員として労務を提供したことに対する対価と認めることはできず、あくまで原告代表者個人の生活上の便宜を図った行為に過ぎないという主張を貫くために、あえて「内縁」という文言を避けていると考えられる。   (了)

#No. 355(掲載号)
#米澤 勝
2020/02/06

会計士が聞く! 決算早期化「現場の回答」 【第1回】「“ムダな作業”について聞きたい!」

会計士が聞く! 決算早期化「現場の回答」 【第1回】 「“ムダな作業”について聞きたい!」   石王丸公認会計士事務所   -はじめに- 決算早期化に秘訣はあるのか? この連載では、それを探っていきます。とある会計士が、実際に決算早期化を成功させた「ベテラン経理のコバヤシさん」のもとを訪れて、「現場の回答」を聞き出していきます。 はたして、・・・決算早期化対策のヒントは見つかったのでしょうか。 *  *  * 《登場人物紹介》 〈ベテラン経理のコバヤシさん〉 世界シェアトップの某メーカーで30年以上にわたり経理部に勤務。その間に会社は東証一部上場を達成。年々、開示制度の充実強化が図られる中で、5年間で13日の連結決算早期化を実現。 〈会計士〉 決算早期化の秘訣を知りたい公認会計士。といっても、そういうコンサルをしているわけではなく、単なる興味本位。 *  *  * (注) なお、本連載「会計士が聞く! 決算早期化「現場の回答」」の著作権は、石王丸周夫公認会計士及びベテラン経理のコバヤシさんに属するものとします。 (了)

#No. 355(掲載号)
#石王丸公認会計士事務所
2020/02/06

企業結合会計を学ぶ 【第35回】「被結合企業の株主に係る会計処理②」-受取対価が結合企業の株式のみである場合(子会社を被結合企業とした企業結合)-

企業結合会計を学ぶ 【第35回】 「被結合企業の株主に係る会計処理②」 -受取対価が結合企業の株式のみである場合(子会社を被結合企業とした企業結合)-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、被結合企業の株主に係る会計処理のうち、受取対価が「結合企業の株式のみ」(子会社を被結合企業とした企業結合)である場合の会計処理を解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 受取対価が結合企業の株式のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理(子会社を被結合企業とした企業結合) 子会社を被結合企業とする企業結合では、被結合企業の株主に係る会計処理は、次のように行う(結合分離適用指針272項~276項)。 (了)

#No. 355(掲載号)
#阿部 光成
2020/02/06

空き家をめぐる法律問題 【事例21】「空き家を民泊施設として利用する場合の法的責任」

空き家をめぐる法律問題 【事例21】 「空き家を民泊施設として利用する場合の法的責任」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私(A)は、住宅宿泊事業法に基づいて、数年前に相続した実家の建物(空き家)を民泊施設として利用しています。民泊施設の管理は、住宅宿泊管理業者に任せておりますが、次のような場合に、誰がどのような責任を負いますか。   1 はじめに 民泊は、空き家の有効活用の方法として期待されているところであるが、利用者の利用方法をめぐって、近隣住民との間でトラブルに発展することもある。これを未然に防ぐ方法として、民泊開始前の近隣住民への説明会や、住宅宿泊管理業者による利用者への利用方法の周知徹底等の方法があるが、事前の対応にも限界がある。 そこで今回は、空き家を民泊施設として利用する場合の利用方法をめぐる法的責任について検討することとしたい。 なお、民泊施設として空き家の管理を委託する場合の留意点については、前回を参照されたい。   2 火災が生じた場合((1)の場合) 民泊施設において火災を発生させた者は、火災によって損傷した建物や周辺の物件の所有者に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負う(民法第709条)。もっとも、失火の場合の不法行為責任は、失火責任法によって重過失のある場合に限定されている。 そこで問題となるのは、失火責任法に規定する「重過失」とはどのような場合か、という点である。 この点について、同法に規定する「重過失」とは、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたようなほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」をいうものとされており、過去の裁判例においては、①寝タバコによる引火の事例や、②天ぷら油を入れた鍋をガスコンロで加熱したまま長時間その場を離れた間に引火した事例のような場合に認められている。 このような場合においては、民泊施設の利用者は、周辺の物件の所有者などの被害者に対しては不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになる。これに対して、失火責任法は、民法第709条の特則にすぎないため、民泊施設の利用者は、過失による失火である場合であっても、住宅宿泊事業者(民泊施設の所有者)に対しては、宿泊契約の債務不履行に基づく損害賠償責任を免れない。 もっとも、民泊施設の利用者として想定されている外国人旅行者が、上記のような火災を発生させたような場合には、被害者に対する示談交渉や当該外国人旅行者に対する賠償請求の局面において、現実的な困難が伴うこともあるように思われる。このような場合に備えて、住宅宿泊事業者としては民泊用保険に加入するなどして自衛しておく必要がある。   3 騒音問題が生じた場合((2)の場合) 騒音問題が生じた場合、近隣の住民から騒音を発生させている者に対して、人格権に基づく差止請求や不法行為に基づく損害賠償請求が行われる可能性がある。もっとも、住宅から生活音が発生することは不可避であるため、ある騒音が第三者との関係で違法性を帯びるのは、受忍限度を超えた場合に限られる。 また、受忍限度を超えているかは、①侵害行為の態様、侵害の程度、②被侵害利益の性質と内容、③当該施設等の所在地の地域環境、④侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、⑤その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の諸般の事情を総合的に考察して判断されることになる(最判平成6年3月24日判時1501-96等参照)。 具体的には、当該住宅の所在する地方公共団体が制定している騒音関係の条例の数値等(50デシベル等の数値)を参考にして、当該騒音の発生している時間帯や実際の騒音の大きさ等を考慮しながら判断することになる。 もっとも、騒音問題は、通常、特定の者が継続的に騒音を発生させているような場合に顕在化することが多いところ、民泊の場合、民泊施設の利用者は短期間で頻繁に入れ替わるため、騒音の原因者を特定することに困難が伴うことは否定できない(外国人旅行者である場合はなおさらである)。 そのため、近隣住民から住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者(以下「住宅宿泊事業者等」という)に対して、上記のような請求が行われる可能性がある。住宅宿泊事業者等は、住宅宿泊事業法上、宿泊者に対する騒音や周辺環境への悪影響の防止に関する必要な事項の説明や周辺地域の住民からの苦情等に対応することを求められていることから、利用者が近隣の居住者に迷惑をかけるような態様で利用する場合に、迷惑行為の禁止等を命令し、宿泊契約を解除するなど状況を管理できる地位にある。 この点を重視すると、近隣住民との関係で、住宅宿泊事業者等が法的責任を負う可能性を完全に否定できないように思われる(区分所有物件の賃借人の騒音問題に関して、賃貸人である区分所有者の法的責任を認めた裁判例として、東京地判平成17年12月14日判タ1249-179参照)。   4 残置物がある場合((3)の場合) 民泊施設の利用者が施設の内外に残置した物件がある場合、住宅宿泊事業者としては、どのように対応するべきだろうか。 一見明らかにごみとして廃棄されたものとみられるものは、住宅宿泊事業者の判断で廃棄処理をしても、特に問題になる可能性は低いものと思われる。これに対して、廃棄されたものと評価できない、ある程度経済的な価値のある物品の場合の取扱いについては、基本的には住宅宿泊事業者と利用者との宿泊サービス提供契約の内容によることになる。 もっとも、家主不在型で民泊施設を提供する場合、住宅宿泊事業者は、荷物等の寄託を受けることはないであろうし、契約上も、寄託を受けない旨の契約内容となっていることが通例であろうから、利用者に連絡等をして処分の可否について確認を取り、特に連絡がない場合は、遺失物の手続に沿って処理すれば足りる。 (了)

#No. 355(掲載号)
#羽柴 研吾
2020/02/06

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第29話】「高齢社会と年金課税」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第29話】 「高齢社会と年金課税」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   昼休みに、中尾統括官は爪楊枝をくわえながら、新聞を読んでいる。 「年金制度の改正か・・・」 中尾統括官は、唇で爪楊枝を上下させながらつぶやく。 「・・・政府は、年金の受給開始年齢を75歳まで延長する気なのか・・・」 中尾統括官は渋い顔をしながら、新聞の記事を読む。 「・・・う~ん・・・これは、我々に75歳まで働き続けろということか・・・」 中尾統括官が椅子に座って唸っていると、浅田調査官が突然現れる。 「・・・新聞を見つめながら、一体、何を唸っているのですか?」 浅田調査官は、新聞を覗きながら、訊ねる。 「私の・・・老後の年金についてだよ。」 そう言いながら、中尾統括官は、新聞の記事を見せる。 「君は・・・75歳まで働きたいか?」 中尾統括官の言葉に、浅田調査官は驚く。 「えっ、75歳ですか! ということは、私・・・これから45年間、働くのですか・・・」 浅田調査官は、悲しい表情でじっと中尾統括官を見る。。 「しかし、人生100年と言われる時代だから、君のような若い人は、生きるために、さらに85歳まで働かなければならないかもしれないよ。」 中尾統括官は、含み笑いをしながら言う。 「・・・そう言う中尾統括官も、年金などを当てにせず、働き続けるべきですよ。」 浅田調査官も言葉を返す。 「・・・そうだな・・・イギリスの心理学者と経済学者が書いた『LIFE SHFT(ライフシフト)』というベストセラー書籍があるが、その中で、2007年に日本で生まれた子供の半分は、107歳まで生きることが予想される・・・と書かれていた。そして・・・60歳や65歳で社会からリタイアすることは許されないと・・・」 中尾統括官は、何年か前に読んだその本を思い出す。 「そうですか・・・僕もまだまだ・・・働き続けなければならないのですね。」 浅田調査官は、恨めしそうに、新聞を見る。 「ところで、この新聞にも書いてあるが、年金の受給開始年齢を75歳まで延長すると同時に、働く60歳代前半の年金減額を縮小するとなっている。」 中尾統括官は、再び新聞記事を浅田調査官に見せる。 「これは、働く高齢者を増やすために、年金減額を見直すことになるのだけれど・・・60歳から64歳のみ見直して・・・65歳以上は据え置きになっている。」 「結局、この表を見ると、高齢者に対して、年齢で区分けせず、一律に47万円基準を採用したということですね。」 浅田調査官が確認する。 「そう・・・例えば、年金が月10万円の場合、今は、月給が18万円を超えると、年金の減額が始まり、38万円を超えると年金がゼロになる・・・そして、減額基準が47万円に上がると、月額37万円まで年金を全額もらえるということになる。」 中尾統括官は、新聞を見ながら説明する。 「そうすると、中尾統括官も定年後、再雇用によって税務署で働き続けたら、満額の年金と給与がもらえて良いですね。」 浅田調査官は、羨ましそうに言う。 「そうだな、それに、給与には給与所得控除額があり、年金には公的年金等控除額があるから・・・高齢者は、ダブルの所得控除を受けることができる・・・」 中尾統括官は、嬉しそうに言う。 「・・・でも、年金課税については、いろいろ問題がありますよね・・・」 浅田調査官は、年金課税の問題点につて、中尾統括官の机の上にある罫紙を一枚取り上げ、ボールペンで書く。 ◆年金課税の入口(保険料拠出時)➡社会保険料控除額 ◆年金課税の出口(年金受領時)➡公的年金等控除額 「・・・すなわち、年金課税については、入口の段階で社会保険料を全額所得控除する一方で、出口の年金受領時に、公的年金等控除によって、実質的に年金の大部分が非課税となっている・・・この入口と出口の二重控除については、海外の国々と比較して、批判されている・・・」 浅田調査官は、中尾統括官を見る。 「確かに、我が国では、掛金のうち事業主の負担分は損金に算入され、被用者・自営業者の負担部分は、社会保険料控除として全額が所得から控除されている・・・そして、出口の給付金について、遺族年金・障害年金は非課税とされ、老齢年金は雑所得であるが、公的年金等控除が適用される・・・その意味では、公的年金については、優遇されているのかもしれない。」 中尾統括官は頷く。 「・・・年金所得者の申告手続の簡素化を図ることを目的として、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、当該年金以外の他の所得の金額が20万円以下であれば、確定申告をする必要がないことになっていますが、これも優遇と言えるかもしれません・・・もっとも、住民税の申告は必要ですが・・・」 そう言いながら、浅田調査官は、税務六法を開いて所得税法121条3項の条文を見る。 (つづく)

#No. 355(掲載号)
#八ッ尾 順一
2020/02/06

《速報解説》スマートフォンゲーム等に生じる特有の収益認識に関して業界団体よりガイドライン(案)が公表される~5つのステップに沿った論点の検討及び実際の会計処理への適用例を紹介~

《速報解説》 スマートフォンゲーム等に生じる特有の収益認識に関して 業界団体よりガイドライン(案)が公表される ~5つのステップに沿った論点の検討及び実際の会計処理への適用例を紹介~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年1月27日、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムは、「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン(案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、企業会計基準委員会の「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)に対応するために、スマートフォンゲームに特有な膨大なゲーム内アイテム等に関連する収益認識に関して、主要なパターンに応じたガイドラインを作成するものである。ただし、ガイドラインは会計処理をする際の参考であり、会員企業や外部の関係者などに対して拘束力を持つものではない。 意見募集期間は2020年2月21日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 スマートフォンゲームに特有な性質などについて述べ、契約の識別などの収益認識会計基準の5つのステップに沿って論点を検討している。 1 ステップ1(契約の識別) 現在のスマートフォンゲームは、基本無料でプレイできるものが多く 、購入=ゲームプレイ(利用)ではないことや、ゲームは無料でできても、ユーザーは、ゲーム内で使用できるキャラクターやアイテムを得るためにゲーム内通貨を購入することなどから、契約の範囲については利用規約等に基づいて決定する。 2 ステップ2(履行義務の識別) ユーザーと金銭のやりとりがあるのはゲーム内通貨が売買された時点であるが、ゲーム内通貨を販売することが履行義務なのか、ゲーム内通貨を実際にゲームでプレイするキャラクターやアイテムと交換した時点なのかなど、利用規約等に基づいて慎重に判断する。 3 ステップ3及び4(取引価格の算定及び履行義務への取引価格の配分) ステップ2(履行義務の識別)とステップ5(履行義務の充足)と整合するように判断する。 4 ステップ5(履行義務の充足) もし、履行義務がゲームのキャラクターやアイテムを提供することであれば、一時点で充足されるものとなり、一方、アイテム等を ユーザーに提供してさらにユーザーがプレイできるゲーム環境を維持することだと捉えるのであれば、ゲームプレイの期間に応じて一定の期間にわたって収益を認識するものという整理が考えられる。 5 実際の会計処理への当てはめ 履行義務の充足について、ゲーム内通貨を使用した時点、ゲーム内通貨を購入した時点、ゲーム自体の存続期間で判断する方法、アイテムベースで判断する方法などのケースを説明している。 (了)

#No. 354(掲載号)
#阿部 光成
2020/02/05

《速報解説》 令和2年度税制改正法案が財務省HPにて公表される~連結納税制度の関連規定は削除へ~

《速報解説》 令和2年度税制改正法案が財務省HPにて公表される ~連結納税制度の関連規定は削除へ~   Profession Journal編集部   1月31日付で第201回国会(常会)の衆議院に受理され審議が開始された令和2年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」)だが、このたび財務省ホームページ上でその内容が明らかとなった(新旧対照表は未公表)。 令和2年度税制改正では、未婚のひとり親に対する寡婦(寡夫)控除の適用や、従前の租税回避策を防止する各施策が織り込まれているが、最も大きな改正の1つが、連結納税制度の見直しとグループ通算制度の創設だろう。 今回明らかとなった法案では、連結納税義務者に関する規定並びに連結所得の金額及び連結法人税額の計算に関する規定(法人税法第1編第2章の2、第2編第1章の2)など連納関係の各規定を削除し、グループ通算制度の規定として新たに、第2編第1章第1節第11款(完全支配関係がある法人の間の損益通算及び欠損金の通算)法人税法第64条の5から第64条の14などが新設されている。ただしこれらの改正は令和4年4月1日以後開始事業年度からとされており、所要の経過措置が講じられる(附則第14条他)。 なお本法案は、別段の定めがあるものを除き、令和2年4月1日から施行される予定。 (了)

#No. 354(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2020/02/04

《速報解説》 昨年12月の監査基準・実施基準改訂を受け「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正(公開草案)が公表される

《速報解説》 昨年12月の監査基準・実施基準改訂を受け 「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正(公開草案)が公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年1月31日、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2019年12月6日の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会)を受けたものである。 意見募集期間は2020年3月2日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。 内部統制監査報告書の文例なども改正されている。 2 監査上の主要な検討事項関係 「監査上の主要な検討事項」に関して、財務報告に係る内部統制における開示すべき重要な不備自体は、監査基準委員会報告書 701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」における監査上の主要な検討事項として取り扱う必要は必ずしもないと記載されている(222-2項)。 ただし、当該識別された開示すべき重要な不備が財務諸表監査に及ぼす影響を考慮して、当該不備に関連する事項が監査上の主要な検討事項に該当すると判断した場合は、財務諸表監査の監査報告書に記載することがある(その場合、財務諸表監査の監査報告書の監査上の主要な検討事項において内部統制監査報告書の強調事項や不適正意見の根拠に参照を付すことがある)。 3 内部統制監査報告書における監査意見関係 限定付適正意見及び不適正意見の表明並びに意見不表明に関して、その内容や財務諸表監査に及ぼす影響などの記載について規定されている(274-2項、276-2項、277-2項、278-2項)。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 354(掲載号)
#阿部 光成
2020/02/04

《速報解説》 KAMに対応した監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」等の改正(公開草案)が公表される

《速報解説》 KAMに対応した監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」等の改正(公開草案)が公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年1月31日、日本公認会計士協会は、次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、2018年7月5日の監査基準の改訂及び2019年9月3日の中間監査基準の改訂(企業会計審議会)を受けたものである。 意見募集期間は2020年3月2日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査基準委員会報告書800及び805 主な改正内容は次のとおりである。 特別目的の財務諸表に対する監査報告書の文例及び個別の財務表及び財務諸表項目等に対する監査報告書の文例も改正されている。 2 監査基準委員会報告書580 中間監査の経営者確認書の記載例に関して、経営者の責任に、継続企業の前提に基づき中間財務諸表等(中間財務諸表及び中間連結財務諸表)を作成することが適切であるかどうかを評価し、継続企業に関する必要な開示を行う責任を含む旨を追加する。 経営者確認書の記載例も改正されている。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 354(掲載号)
#阿部 光成
2020/02/04
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