金融・投資商品の税務Q&A 【Q51】 「複数回にわたって購入した仮想通貨(暗号資産)を譲渡した場合の譲渡価額の計算」 PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美 ●○ 検 討 ○● 1 期末において保有する仮想通貨の評価 仮想通貨を譲渡したことによる収益は、雑所得(仮想通貨取引自体が事業と認められる場合には事業所得)に区分することとされていますが、その所得の金額は、譲渡対価から必要経費を控除して算出します。 この必要経費には、譲渡原価、売却に際して仮想通貨交換業者に支払った手数料等が含まれますが、この譲渡原価は、その年の1月1日において有する仮想通貨の価額とその年中に取得した仮想通貨の取得価額の総額の合計額から、その年12月31日において有する仮想通貨の価額を控除して計算することとなります。 そして、仮想通貨の価額は、総平均法と移動平均法のいずれかを選択して評価することができます。 2 総平均法と移動平均法 総平均法とは、仮想通貨の種類ごとに、その年1月1日において保有していた仮想通貨の取得価額の総額とその年中に取得をした仮想通貨の取得価額の総額との合計額を、これらの仮想通貨の総数量で除して計算した価額をもって、その年12月31日において有する仮想通貨の1単位あたりの取得価額とする方法をいいます。 また、移動平均法とは、仮想通貨の種類ごとに、当初の1単位当たりの取得価額が、種類を同じくする仮想通貨の取得をした都度、当初の仮想通貨とその取得をした仮想通貨との数量及び取得価額を基礎として算出した平均単価によって改定されたものとみなして(以後種類を同じくする仮想通貨の取得をする都度同様の方法により改定)、その年12月31日から最も近い日において改定されたものとみなされた価額をもって、その年12月31日において有する仮想通貨の1単位当たりの取得価額とする方法をいいます。 なお、下記の国税庁ホームページでは、総平均法、移動平均法それぞれの計算書が公表されています。 3 評価方法の選定及び変更の手続 仮想通貨の評価の方法は、その種類ごとに選定しなければならないこととされています。 その選定した評価方法については、初めて仮想通貨の取得をした日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出することとされています。 また、選定した評価方法を変更する場合には、新たな評価方法を採用しようとする年の3月15日までに、変更しようとする理由等を記載した申請書(「所得税の仮想通貨の評価方法の変更承認申請書」)を提出し、税務署長の承認を得る必要があります。 なお、法定評価方法は総平均法ですので、上記の選定手続きを行わない場合には、総平均法を選定したものとして取り扱われます。 4 本件へのあてはめ 雑所得の金額の計算上、必要経費とする譲渡原価の計算にあたっては、その年の12月31日において保有する仮想通貨の価額を、仮想通貨の種類ごとに、総平均法又は移動平均法により計算する必要があります。 移動平均法を選択する場合には、その年分の所得税の確定申告期限(平成31年4月1日時点で保有していた仮想通貨については令和2年3月16日)までに、納税地の所轄税務署長に届け出る必要があり、届け出ない場合は、総平均法で計算することとなります。 (了)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第13回】 「幼い子への資産移転後の注意点」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕 相談内容 私Xは40歳の会社経営者です。30歳の時にA社を創業し、今年、その会社を上場させることができました。 創業当初は赤字が続いていましたので、その間に私が設立したB資産管理会社へA社株式の30%を譲渡し、B社株式を当時5歳だった私の子Yに贈与しました(下図参照)。 私としては、上場時に発生した株式の含み益の一部を、子であるYにうまく移転できたと思っているのですが、今後、何か注意する点はありますか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 事業承継対策と国外転出時課税制度 (1) 国外転出時課税制度とは 国外転出時課税制度(出国時課税制度ともいいます)とは、国外転出する居住者がその時点(出国時点)で時価1億円以上の有価証券等を有する場合に、その有価証券等を譲渡したものとみなして、所得税を課税する制度をいいます(所法60の2①⑤)。 国外転出時課税制度が創設される以前は、多額の含み益を有する有価証券を保有したまま出国し、キャピタルゲイン課税のない国において売却することにより、日本での課税を逃れることができました。平成27年度税制改正でこの制度ができたことにより、上記のような租税回避行為はできなくなりました。 (2) 海外留学や海外勤務の増加で適用リスクが高まる 事業承継対策において国外転出時課税制度は、特にオーナーの子どもたちが出国する際に問題となる場合があります。 というのも、近年、海外留学や海外勤務を行う人が増えてきており、企業オーナーの子どもたちであれば、当然そのような機会も多くなります。その際に、今回のケースのように、多額の含み益を有する資産管理会社の株式を持っていることもありますので、国外転出時課税制度が適用される可能性が高くなります。 (2) 国外転出は海外留学も含まれる 国外転出時課税制度における『国外転出』とは、「国内に居所及び住所を有しないこととなること」(所法60の2①)と定義されており、所得税法上「居住者」から「非居住者」になる人が対象になります。 したがって、国外で継続して1年以上の予定で仕事をする場合(留学も含みます)は非居住者となりますので、国外転出時課税の対象となります(所令15①、所基通3-2)。 (3) 課税対象となる資産 国外転出時課税の対象資産としては、主に以下のものが挙げられます。 [2] 帰国を前提とする場合は納税猶予の手続きを 実際には、国税転出時の未実現損益に対する所得税を納税する人はまれであり、帰国を前提として、納税猶予を選択することが一般的です。 国外転出時課税制度における納税猶予とは、国外転出者がその国外転出する前日までに、納税管理人の届出を行い、かつ、当該年分の確定申告期限までに、当該納税猶予分の所得税に相当する担保を税務署に供した場合に、5年間の納税が猶予されるという制度です(所法137の2①)。 また、海外での滞在が長期に及ぶ場合は、国外転出する日から5年を経過する日までに、延長の届出を納税地の税務署長宛てに提出することにより、納税猶予期間をさらに5年延長できます(所法137の2②)。 納税猶予期間中は、各年の12月31日に有している納税猶予の対象となった資産等を記載した届出書を、翌年の3月15日までに所轄税務署に提出する必要があります(所法137の2⑥)。 また、納税猶予の期間満了までに帰国した場合は、帰国後4ヶ月以内に更正の請求をすることにより、国外転出時課税の適用がなかったものとして、課税を取り消すことができます(所法137の2⑥⑦、所法153の2①)。 【例:令和2年4月1日に海外留学するために出国する場合】 [3] 結論 お子さんが小さい時に行う株式の含み益の移転については、10年、20年にわたって国外転出時課税制度が付きまとうということに注意が必要です。顧問税理士としては、毎年オーナー家族の出国の予定を確認することにより、納税猶予等の手続き漏れを防ぐことができます。 グローバル化した昨今、将来子どもたちが海外へ留学したり、海外で仕事や家庭を持つというケースは十分あり得ることと認識したうえで、事業承継対策を実行すべきでしょう。 実際の手続きに際しては、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第55回】 「集合債権譲渡担保と国税徴収法24条事件」 ~最判平成19年2月15日(民集61巻1号243頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第20回】 千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也 ウ 公正処理基準準拠要件 (ア) 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の意義や具体的範囲 法人税法22条の2第2項は、近接日基準の採用に当たり、資産の販売等に係る収益の額につき「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って」当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の当該資産の販売等に係る目的物の引渡日又は役務提供日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理することを要求している。 法人税法22条の2第2項は、収益計上日として認められる近接日について、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従ったものであるという、いわば公正処理基準準拠要件を定めているのであるが、ここでいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」については条文上、明記されていないため、その意義や具体的範囲が問題となる。 同一の文言は法人税法22条4項においても使用されている。同項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは、抽象的には、一般社会通念に照らして公正妥当であると評価され得る会計処理の基準であるとか、客観的な規範性を持つ公正妥当な会計処理の基準であるといわれる。 公正妥当な会計処理の基準の具体的な中身であるが、学説は、その中心をなすのは、次のようなものであるが、それにとどまらず、確立した会計慣行を広く含むと解している(本連載第5回参照)。 特に定義規定等を設けずに直前の法人税法22条4項のものと同一の文言を使用しているのであるから、22条の2第2項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは、22条4項のものと同義に解することが自然である。 もっとも、法人税法22条4項の場合と異なり、22条の2第2項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の具体的範囲は、実際には、収益の計上時期に関する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に限定されるであろう。 なお、後述するように、立案担当者は、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」は、継続性の原則を含むため、例えば、同じ種類の取引について、期中の取引を引渡しの日に収益計上している法人が期末の取引のみを引渡しの日に近接する日に収益計上することは認められない、と解説している(財務省『平成30年度 税制改正の解説』274頁以下)。 (イ) 公正処理基準準拠要件の意義 注意しなければならないのは、近接する日に収益経理すればどのようなものでも法人税法22条の2第2項の適用により、法人税法上、その収益経理が認められるというわけではなく、かかる収益経理が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って」いることを要する。 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によるフィルターによって、①法人税法上、「近接日基準による収益経理が認められるのか否か」を判断する構図として捉えることもできよう。あるいは、②「近接日として認められるのか否か」を判断する構図として捉える向きもあるかもしれない。 ①のように、法人税法22条の2第2項の要件のうち、下線部分が「当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の前項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合」全体に掛かっていることを重視するならば、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によるフィルターによって、①法人税法上、「近接日基準による収益経理が認められるのか否か」を判断する構図が浮かび上がる。 ②のように、法人税法22条の2第2項の要件のうち、下線部分が「近接する日」に掛かっていることを強調することが許されるならば、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によるフィルターによって、②「近接日として認められるのか否か」を判断する構図として捉えることもできよう。 視点を変えて、仮に、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当するか否かというフィルターの内部に、既に時間的近接性が含まれているとするならば、この「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って」という部分と「近接する日」という部分の双方において、時間的近接性のフィルターが重複的に仕込まれていることになるのではないかという指摘もできる。 言い換えれば、仮に、引渡日又は役務提供日とは異なる日に収益を計上する場合に、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準においても、引渡日又は役務提供日に時間的に近接することを要求するものであるとすれば、法人税法22条の2第2項は、引渡日又は役務提供日とは異なる日の属する事業年度に収益計上することを認めるための条件として、引渡日又は役務提供日との時間的近接性を重視し、あえて条文に明記したものという評価が与えられることになる。 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第94回】 「2019年における調査委員会設置状況」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 本連載では、個別の会計不正に関する調査報告書について、その内容を検討することを主眼としてきたが、本稿では、2017年及び2018年に引き続き、第三者委員会ドットコムが公開している情報をもとに、各社の適時開示情報を参照しながら、2019年において設置が公表された調査委員会について、調査の対象となった不正・不祥事を分類するとともに、調査委員会の構成、調査報告書の内容などを概観し、その特徴を検討したい。 第三者委員会ドットコムが公開しているデータを集計したところ、2019年において、調査委員会の設置を公表した会社は67社であり、2018年の68社とほぼ同数であった。67社のうち、複数の調査委員会設置を公表した会社は下記のとおりである。この結果、設置が公表された調査委員会の数は72となる。 上記の会社については、会社数としてはそれぞれ「1社」とカウントする一方、委員会の構成については委員会ごとに、不正・不祥事の分類はその区分ごとに集計しているため、一部、合計数が合わないことをお断りしておく。 調査委員会設置を公表した67社のうち21社については、本稿執筆時点において、まだ調査報告書(その概要を含む)を公表していない。このうち6社については、調査委員会の設置そのものが12月であり、まだ調査が終わっていないと考えられる。 【市場別分類】 市場別分類では、東証1部上場会社が52社と約78%を占めた(複数市場に上場している会社は東証1部に含めている)。その他に分類した1社は非上場である(上場会社数は2019年12月31日現在)。 【会計監査人別分類】 会計監査人別の分類では、いわゆる大手4大監査法人の監査を受けていた上場会社が52社、中堅以下の監査法人の監査を受けていた社が15社となり、過去に比べて中堅以下の監査法人のクライアントの比率が減少している。 なお、中堅以下の監査法人で複数のクライアントが調査委員会を設置したのは、太陽監査法人だけであり、そのクライアント数は4社であった。 【調査委員会の構成による分類】 一部、委員名を非公表としている委員会を含めた調査委員会の構成ごとの分類では、日本弁護士連合会が2010年に公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠していると明言している調査委員会及び明言はしないまでもその趣旨に沿って外部の委員を選定していると認められる調査委員会は32社と、過半数を下回る水準であった。 また、2018年からの傾向であるが、調査委員会の構成や委員名について、非公表とする会社が増加している。これらの会社では、調査報告書についても一切公表しないか、概要を公表するにとどまっていることを付言しておきたい。 【調査委員会を設置することとなった不正・不祥事の分類】 調査対象となった不祥事別にこれを分類すると次表のとおりとなる。なお、分類上、経営者や従業員の不正であっても、決算修正等、公表している決算報告書に影響を及ぼす可能性のあるものについては、「会計不正」としている。 【会計不正の態様】 次いで、「会計不正」に分類された51件について、それぞれの不正の態様を見ておきたい。 「会計不正」と分類できる内容で調査委員会を設置した51社のうち、経営者・従業員による不正行為以外のものは、34社であり、その一覧は、次のとおりである(赤字は本連載で取り上げた報告書)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2018年と比べ突出しているのが海外の連結子会社における不適切な会計処理(12件)であり、国別内訳では、中国が5件と最も多くなっている。 (了)
〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第1回】 「退職税理士による顧客の引抜きの防止」 -その1:その税理士が「在職中」の場合- 虎ノ門第一法律事務所 弁護士 山口 智寛 〔質 問〕 当事務所の所属税理士(税理士法人の社員ではない)が退職することになりました。 ところが、この税理士が退職を見越して、当事務所の顧客を勧誘して引抜きにかかっているらしいのです。このような場合、契約上の有効な対応策はないでしょうか。 〔回 答〕 就業規則等に秘密保持義務あるいは競業避止義務の規定があれば、それらを根拠として、その税理士に引抜きの中止を求めることができます。 また、秘密保持義務あるいは競業避止義務の規定がないとしても、就業規則の服務規律には誠実労働義務、職務専念義務が規定されているので、これらを根拠に引抜きの中止を求めることもできます。 なお、就業規則がない場合についても、雇用契約上当然に誠実労働義務、職務専念義務を従業員は雇用主に対して負うとされているので、上記と同様に対処することができます。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 在職中の引抜き行為を止めさせる法的根拠 (1) 秘密保持義務、競業避止義務 税理士事務所の立場とすれば、退職する所属税理士による顧客の引抜きは直ちに止めてもらいたいところである。それでは、どういった法的根拠をもってこの引抜き行為を止めさせることができるだろうか(なお、元所属税理士が税理士法人の社員である場合は、税理士法の規定に基づいた考慮が必要であるため、別稿で改めて取り上げる(第3回で解説予定))。 まず、就業規則に「業務上の秘密を自ら又は第三者のために利用してはならない」という秘密保持義務、あるいは、「就業中に顧客勧誘行為を行ってはならない」という競業避止義務の規定があれば、秘密保持義務違反(顧客の引抜きは顧客情報を利用している点で秘密保持義務違反といえる)ないし競業避止義務違反であるとして、退職予定の所属税理士に対して引抜き行為の中止を求めることができる。採用時に秘密保持や競業避止の誓約書や同意書を取得している場合も、同様にこれらの文書の規定に従って引抜き行為の中止を求めることができる。 厳密にいえば、顧客の引抜きが税理士事務所の顧客情報を利用しているといえるかどうかは判断が難しいところであるが、税理士事務所の立場からすれば、差し当たり、就業規則や誓約書・同意書といった個別文書における秘密保持義務を所属税理士による引抜き行為を止めさせせるための法的根拠として考えておくこと自体は差し支えない。 (2) 誠実労働義務、職務専念義務 秘密保持義務や競業避止義務の根拠となる規定が存在しない場合であっても、就業規則には通常、服務規律のところに「誠実に職務を遂行する」という誠実労働義務・職務専念義務が規定されているから、この誠実労働義務・職務専念義務を根拠に、退職予定の所属税理士に対して引抜き行為の中止を求めることができる。 では、小規模の税理士事務所で就業規則すらない場合はどうか(労働基準法89条は「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して就業規則の作成及び届出義務を課している)。この場合でも、従業員は雇用主に対して雇用契約上当然に誠実労働義務・職務専念義務を負うと解釈されているから、この雇用契約上の義務を根拠として上記と同様に対処できる。 したがって、結局のところ、特段の明示的な規定がなくても、雇用契約関係に基づいて当然にその税理士に対して引抜き行為の中止を求めることができる。 2 具体的な対応方法 このように、在職中の所属税理士に対しては、就業規則や雇用契約それ自体が、引抜き行為を止めさせる法的根拠となり得る。もっとも、法的根拠があるからといって、そのとおりに引抜き行為を止めさせることができるとは限らず、税理士事務所の側としては「できる限りの対応を行う」というスタンスで臨むしかない。 (1) 証拠がない場合 そもそも、その所属税理士が本当に税理士事務所の顧客に対してアプローチしているかどうか、また、例えば独立や退職を告知するという限度を超えて具体的な契約切替えの打診等にまで及んでいるかどうかは、簡単に裏付けを取れるものではない。 もし、具体的な勧誘行為の証拠や裏付けが取れていないのであれば、その所属税理士が「引抜きを行っている」ということを前提とした対応を取ることはできない。このような場合、税理士事務所側としてできることといえば、退職時に秘密保持義務や顧客の引抜きをしないという限度での競業避止義務の誓約書や同意書を提出してもらう形で、間接的に引抜きを牽制することくらいだろう。 証拠がないのにもかかわらず、勧誘行為があったと決め付けて対応を取るようなことがあると、事後的に所属税理士の側から「引抜きをしたと言いがかりを付けられて事務所を辞めさせられた」などとクレームを受けたり、更に場合によっては損害賠償請求を受けるなどの紛争に発展したりする可能性もあるので、性急な対応は自制すべきである。 (2) 証拠がある場合 退職予定の所属税理士が発したメール等の証拠や、勧誘を受けた顧客の側からの情報提供等の裏付けがある場合には、積極的な対応が可能である。 具体的には、まず、本人に対して直接警告を与えて、自発的に引抜きを止めるよう促すべきである。「声をかけただけだ」などと反論されるかもしれないが、現時点で実際に引抜きが実現していなくとも、引き抜こうとしている時点(引抜準備行為を行っている時点)で従業員としての義務に反するので、所属税理士側からのそのような反論は成り立つものではない。 警告を与える場合には、在職中で日常的なコミュニケーションを取ることが可能であれば、あえて文書を出すまでの必要はなく、口頭で警告を与えた上で、その警告日時、方法、場所等を記録として控えておけば十分である。 一方、その所属税理士が退職日を待つばかりであり既に事務所での実働はないという場合には、口頭での警告は困難であるから、メールや自宅宛の文書で警告するしかない。文書を発送する場合は、普通郵便だと発送した事実を証拠として残しておくことができないので、内容証明郵便又は特定記録郵便を利用したほうが良い。 口頭の場合であれ文書の場合であれ、警告を与える際には、「引抜きを止めない場合には損害賠償を請求する可能性がある」ということを告げれば、所属税理士の側により大きな心理的な圧力を加えることが可能である(もっとも、後述するとおり実際に損害賠償を請求するかどうかは別の問題である)。 (3) 警告を無視された場合 警告を行ったにもかかわらず引抜き行為を止めない場合には、どうすればよいか。 このような場合は、就業規則における懲戒解雇の規定に基づいて、退職の予定日を待たずにその所属税理士を懲戒解雇することもやむを得ないだろう。また、実際に引抜きがなされて、その顧客からの売上がなくなってしまった場合には、引抜きを行った所属税理士に対して、売上減少分について損害賠償を請求することも可能である。 文書で損害賠償を請求したにもかかわらず、その所属税理士側がこれに応じない場合には、訴訟を提起することも選択肢に入ってくる。 ただし、実際に訴訟を提起した場合、具体的な引抜き行為や顧客の側の契約変更との間の因果関係を立証することは、相当の困難を伴う。 大阪地方裁判所平成30年11月13日判決は、個人事業主である税理士が、元従業員である税理士に対して在職中及び退職後に顧問先を勧誘して引き抜いたとして損害賠償を求めた事案において、「被告らが原告の顧問先に対し、原告との顧問契約を解約して被告らと新たに顧問契約を締結するよう積極的に働き掛けた」行為を認めるだけの証拠は存在しないと判断している。また、売上減少分の損害といっても、何年分の売上をもって損害といえるのかは判然とせず、裁判実務上の基準といえるようなものも存在しない。 このようなことを前提とすると、「訴訟すれば勝てる」と安易に思い込むべきではなく、むしろ「訴訟提起もあり得る」ということを交渉材料にして訴訟外での解決を図ることを第一に考えるべきである。 (了)
事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第16回】 「事務用品通販会社の社長再任拒否事件 -上場子会社での少数株主保護」 弁護士 原 正雄 2019年8月2日、A社の株主総会で、創業社長と独立社外取締役3名の再任が否決された。45%株主Y社と11%株主P社が反対したためである。ただ、他の株主は、過半数が再任に賛成していた。そこで、大株主の意向と、少数株主の意向が対立した場合のガバナンス上の問題点について、以下検討する。 1 対立に至る経緯 A社は、事務用品を中心とする通信販売の会社で、2004年に東証一部に上場している。Y社はサイト運営、ブロードバンド事業、ネットオークションを営む会社である。 2012年、A社はY社と業務提携し、通販サイト(以下「Lサイト」と呼称する)を立ち上げた。同時に第三者割当増資を実行し、Y社に既存株式の73.8%に及ぶ新株を割り当てた。その結果、Y社が43%を保有する1位株主となり、従前1位であったP社が2位株主となった。A社の創業社長とY社の当時の社長が意気投合したことがきっかけであった。 ところが、2018年6月、Y社の社長が交代し、それまで円満であったA社とY社との関係に変化が生じた。 2019年1月、Y社は、A社に対してLサイトの譲渡を求めた。同サイトは増収を続けていたものの、赤字から抜け出せずにいたことが理由とのことである。A社はこの要請を断った。 同年6月、Y社は、A社の創業社長の退陣を求めた。A社の業績不振が理由とのことであった。 2 取締役会における対立 当時既に、A社では、指名報酬委員会が創業社長の再任を答申していた。2019年7月3日、A社の取締役会は、株主総会に創業社長の再任議案を提出する旨を決議した。 ただ、同取締役会決議では、Y社から出向していた取締役と、Y社から派遣されていた取締役が、ともに棄権した。また、P社から派遣されていた取締役1名は反対した。 その結果、創業社長の再任をめぐって、取締役会における対立が明らかとなった。 3 株主権の行使と、社長の選定 2019年7月18日、Y社は、A社の社長人事について、創業社長の退任を前提としたうえで「現・取締役兼COOのB氏または取締役兼COOのC氏のいずれかが社長に就任するものと考えています」と記したリリースを公表した。 同日夜、Y社は、適時開示で後任人事の部分を削除した。翌19日午前、プレスリリースの該当部分を削除した。理由は「東証からの指摘」とのことであった。 A社は株式会社である。株主は、株主総会を通じて取締役を選任できる。ただ、社長を選定するのは取締役会であって、株主ではない。ましてA社は上場企業であって多くの少数株主が存在する。Y社が上記部分を削除したのは適正であった。 4 利益相反の問題 Y社による創業社長の再任拒否は、A社の企業価値向上が目的あれば適正である。また、Lサイト事業からの撤退の要求も、A社の企業価値向上が目的であれば正しい。 問題は、Y社がA社に対してLサイトの譲渡を求めたことである。A社の創業社長は、2019年7月18日の記者会見で「A社の成長事業が乗っ取られる」と述べた(朝日新聞2019年7月20日)。Y社の狙いは明らかではないが「成長余力あるLサイトをY社に取り込むことで、株価に影響を与えようとする思惑もありそうだ」との報道もある(日経産業新聞2019年7月19日)。 仮にY社としてLサイトが欲しかったことが理由だとすれば、A社の企業価値向上が目的とはいえなくなる。むしろA社の企業価値は低下するかもしれない。この場合、A社とY社の利益が相反する。 この点についてY社は、2019年7月19日、Lサイトについて「譲渡をする考えがあるか、意向を聞いたに過ぎない。今後も譲渡を申し入れる方針はない」とするコメントを発表した(読売新聞2019年7月19日)。これは、上記「思惑」を否定し、利益相反はないとしたものである。 5 独立社外取締役 本件でもう1つ注目されるのが、独立社外取締役の存在である。独立社外取締役は、会社と支配株主との間の利益相反を監督することが期待されている。また、支配株主から独立した立場で、少数株主の意見を取締役会に反映させることが期待されている(コーポレートガバナンス・コード原則4-7)。 A社では、独立社外取締役を3名選任していた。独立社外取締役3名は、顧問弁護士など計3名と共に指名報酬員会を組成していた。指名報酬委員会は、上述のとおり創業社長について再任すべきと判断していた。 2019年7月23日、指名報酬委員会の委員長である社外取締役T氏は、Y社とP社が創業社長の再任に反対したことについて「上場会社のガバナンスを無視している」と述べた(日本経済新聞2019年7月24日)。 翌24日、Y社は、創業社長に加え、独立社外取締役3名についても再任を反対する旨を発表した。創業社長に業績低迷の責任があり、独立社外取締役にはその任命責任がある、との理由であった(日本経済新聞2019年8月1日)。 6 株主総会 2019年8月2日、A社の株主総会が開催された。合計56%の議決権を有するY社とP社が反対したため、創業社長と独立社外取締役3名の再任は否決された。 再任についての賛成比率は、以下の表の「賛成(%)」の列に記載のとおりであった。 創業社長と独立社外取締役3名は、圧倒的多数の意思によって再任を否決された。 ただし、Y社とP社を除外すると、状況が少し異なる。上記の表の「賛成(%、Y社とP社を除外)」の列の記載から分かるとおり、少数株主の過半数が、創業社長と独立社外取締役3名の再任を支持していた。特に独立社外取締役3名は、全員90%以上の支持を得ていた。 もっとも、創業社長への賛成は76.7%で、絶対的支持を得ていたわけではない。また、Y社とP社が派遣した社外取締役2名も、賛成がともに68.5%と高くはない。少数株主の支持が割れていたことが分かる。 総会後、A社では創業社長が取締役を退任し、それまでの取締役COOが新たに社長に就任した。独立取締役3名も退任し、A社は独立社外取締役がいない会社となった。独立社外取締役がいない会社は、東証一部ではわずか0.3%である(2019年7月当時)。 7 少数株主の保護 株式会社は、資本多数決の原則に基づく制度である。過半数株主の意向が優先されるのは当然である。 問題は、A社が上場企業ということである。上場企業には、コーポレートガバナンス・コードによって、少数株主保護が求められている(基本原則1、原則4-7、有価証券上場規程436条の3)。そのため、一般投資家は、支配株主や親会社等が存在する企業であっても、少数株主も保護されるとの期待をもって、当該企業に投資をする。 したがって、上場企業で資本多数決の原則を当然のように貫いてよいかは、賛否が分かれる。 8 親子上場 上述のとおり、Y社はA社の45%株主である。ただ、Y社にも大株主が存在する。さらにその上にも親会社が存在する。図で示すと以下のとおりである。 仮にY社がA社を自由にしてよいとすれば、SG社やS社もY社を自由にしてよいことになる。 しかし、実際は、株主総会が終了した後、Y社を孫会社とするSG社は「今回のような手段を講じる事について反対の意見を持っておりますが、この度の件はY社の案件であり、Y社執行部が意思決定したものです。本件はY社の独立性を尊重して、Y社執行部の判断に任せております」とするコメントを発表した(日本経済新聞2019年8月3日)。大株主ではあるものの、Y社の独立性を尊重するとのコメントである。このコメントにより、Y社としてもA社の独立性を尊重すべきことが確認された。 9 東証の対応 2019年11月29日、東京証券取引所は、上場制度に関する規則を改定すると発表した。以下のとおりである。 来年度の定時株主総会の翌日からの適用を目指すとのことである。また、有識者研究会を立ち上げ、上場子会社の少数株主保護の枠組みなどの検討を始めると発表した。 10 その後の経緯 2019年12月17日、A社は、同年6~11月期の連結決算でLサイトの赤字幅が縮小していることを発表し、2023年5月期までに同サイトを黒字化する方針を示した。また、A社は、Y社との資本提携を継続すると表明した。 翌18日、A社の株価は、前日比12%高の3,375円まで上昇した。これは1年2ヶ月ぶりの高値であった。少数株主の関心は、経営陣と大株主のどちらが正しいかではなく、企業価値の向上にあることが分かる。上場子会社であったとしても、親会社と経営陣はともに企業価値の向上に取り組むべきである。 (了)
〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第22回】 「情報漏えいさせた者に対する責任追及の実施」 弁護士 影島 広泰 -Question- 故意に情報を漏えいさせた者に対し、会社としてはどのような責任追及をすべきでしょうか。 -Answer- 刑事責任の追及のために警察に告訴する、懲戒処分等の社内処分をする、差止め及び損害賠償といった民事責任の追及などが考えられます。 従業員・退職者・取引先等が社内の情報を故意に持ち出したことが分かった場合には、自社の被害の回復と将来に向けた漏えいの抑止力を確保するため、漏えいさせた者に対し、責任追及を実施することになる。今回は、会社が取り得る手段を解説する。 1 刑事責任の追及 営業秘密について、不正な利益を得る目的で、あるいは会社に損害を与える目的で、窃取や横領等をすることは、営業秘密侵害罪としての刑罰がある(※)。個人に対する法定刑は、懲役10年以下もしくは罰金2,000万円以下又はその両方である。また法人に対しては、罰金5億円以下という罰則(両罰規定)がある(海外で利用する目的の場合には、罰金3,000万円以下(法人は10億円以下)になる)。 (※) その他にも、不正アクセス禁止法違反、電子計算機使用詐欺罪、背任罪、横領罪等にも問われる可能性がある。 実例を見ても、大手通信教育事業者から3,500万件の個人データを漏えいさせたシステム開発の再々委託先の元従業員には懲役2年6月(執行猶予なし)及び罰金300万円の判決が、重電メーカーからフラッシュメモリの研究データを競合他社に漏えいした業務提携先の技術者には懲役5年(執行猶予なし)及び罰金300万円の判決がそれぞれ言い渡されており、重い刑罰が科されている。 したがって、会社としては、警察に相談し、漏えいさせた者を告訴するなどして、刑事責任を追及することが考えられ、これは再発防止に向けて強い抑止力を持つことになる。実務的には、営業秘密の侵害が強く疑われるものの証拠収集が難しいような状況では、早い段階で警察と相談し、捜査を進めてもらうことも有益である。この場合、警察との折衝や証拠収集を適切に行うため、早い時期から弁護士に依頼することが重要である。 なお、警察による捜査、後述する社内処分及び民事責任の追及は、整合性をもって進める必要があるから(例えば、懲戒解雇すれば、それ以後、対象者から会社が情報を収集することは難しくなる)、処分のタイミングや民事訴訟の提起・進行については、弁護士・警察と綿密な打ち合わせをすることが肝要である。 2 社内処分 従業員が情報漏えいした場合には、社内処分(懲戒解雇等)を行うことが考えられる。そのためには、当然のことながら、懲戒処分とされる事由と処分の程度が就業規則に明示されてあり、この就業規則が周知されている必要がある(労基法89条3号、9号)。 ここで気を付けたいのは、従業員との間で締結した秘密保持契約について、就業規則と異なる内容が定められていた場合、就業規則よりも労働者にとって不利な内容を定めた場合には、その部分は無効となることである(労働契約法7条但書、12条)。したがって、就業規則には、秘密保持契約の内容を記載しておく必要がある(※)。 (※) 記載例については、経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」参考資料2を参照されたい。 なお、故意ではなく、過失でうっかり情報漏えいしてしまった従業員に対し、あまり厳しい処分をしてしまうと、将来、情報漏えいが適時適切に報告されなくなるなどの萎縮効果が発生する可能性があるから注意したい。 3 民事責任の追及 営業秘密の侵害が疑われるケースでは、民事保全手続(仮処分の申立て)を利用して、営業秘密の開示・使用の仮の差止め等を求めることが考えられる。仮処分は手続のスピードが速く、結論がすぐに出るとともに、その結論が、後続の民事訴訟の帰趨にも影響を与えるから、最初から専門性の高い弁護士に依頼し、迅速かつ適切に仮処分を申し立てることが重要である。 差止請求とは、侵害の停止又は予防、及び侵害の行為を組成した物の廃棄等を請求することである。具体的には、営業秘密が記録された物件媒体、営業秘密を用いて製造された製品、営業秘密を使用するための製造設備などを廃棄したり、電子データの消去等を裁判所が命じることができる。 また、仮処分の申立てと並行して又はその後に、損害賠償等の交渉や民事訴訟の提起等を行うことになる。 実例を見ると、前述した重電メーカーからフラッシュメモリの研究データが漏えいした事件では、入手した競合他社と漏えいした個人に対し、1,090億円の損害賠償請求訴訟を提起し、約330億円を支払うとの和解が成立したとされている。また、製鉄会社から退職した研究職の従業員が製造技術を競合他社に漏えいした事件でも、競合他社と元研究職を相手に約1,000億円の損害賠償請求と製造差止等の訴訟を提起し、300億円を支払うとの和解が成立したとされている。 なお、営業秘密を不正に入手して利用している競合他社に対して損害賠償請求をする際、自社からの営業秘密の漏えいによりいくらの損害を被ったのかを主張・立証することは難しい。そのため、不正競争防止法には、侵害の行為により相手方が受けた利益の額を損害の額と推定するなどの推定規定がある。自社がいくら損をしたのかではなく、相手方がいくら儲かったのかを立証すれば、それが損害額であると推定されるのである。 このように、不正競争防止法上の営業秘密には、差止請求や損害賠償などの強力な救済措置が用意されている。これが、自社にとって漏えいしては困る情報・ノウハウは、営業秘密に当たるように管理しておくことが重要であるといわれている理由である。 (了)
《速報解説》 日本監査役協会が会計基準の開発や会社法改正に対応した 「会計監査人非設置会社の監査役の会計監査マニュアル」の改定版を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年1月10日(マニュアルの日付は令和元年11月14日)、日本監査役協会は、「会計監査人非設置会社の監査役の会計監査マニュアル」(改定版)を公表した。 これは、平成25年1月に公表した「会計監査人非設置会社の監査役の会計監査マニュアル」について、その後の会計基準の開発や会社法の改正などを受けて改定するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 表紙を含めて118ページあるので、以下では主な内容について解説する。 1 監査役の会計監査の基礎 主に次の事項が記載されている。 マニュアルは、会計監査人非設置会社・監査役会非設置会社の監査役や、経理・財務経験が少ない監査役にとっても理解しやすく、役立つことを目指して作成しているとのことなので、基本的な内容を取り上げているものと考えられる。 2 会計監査の実務-チェックリスト等 ワードによるチェックリストが作成されているので、実務に資するものと考えられる。 監査役に就任時の留意事項、期初の監査、期中の監査、期末の監査、随時の留意事項についてチェックリストが示されている。 (了)
《速報解説》 金融庁、内部統制基準等の改訂を受け、 財務計算書類等の適正性確保のための体制に関する内部統制府令(案)等を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和2年1月10日、金融庁は、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、令和元年12月に、企業会計審議会から公表された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を受けたものである。 意見募集期間は令和2年2月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりである(内部統制府令6条関係)。 関連する内部統制府令ガイドライン21-1及び「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条(臨時報告書の記載内容等)も一部改正する。 内部統制監査報告書には、次に掲げる事項を簡潔明瞭に記載する(下記は主な内容について記載している)。 Ⅲ 適用時期等 公布の日から施行する予定である。 経過措置に注意が必要である。 (了)