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税理士業務に必要な『農地』の知識 【第12回】「生産緑地法の改正」

税理士業務に必要な 『農地』の知識 【第12回】 (最終回) 「生産緑地法の改正」   税理士 島田 晃一   平成29年(2017年)6月15日に改正生産緑地法が施行された。 今回の改正では「特定生産緑地制度」の創設が大きなトピックとなっている。この改正により、生産緑地を所有している農家は、原則として2022年までに特定生産緑地指定を受けるかどうか選択しなければならない。 この選択の結果、固定資産税・都市計画税や納税猶予などの課税関係が大きく異なってくるため、今回の改正内容は正しく理解しておきたいところである。   1 生産緑地の概要 まず、【第5回】において述べた改正前の生産緑地の概要についておさらいしてみよう。 生産緑地とは、市街化区域内にある一団の農地について、都市計画法に基づき市町村の指定を受けたものをいう。その運用については生産緑地法に則っている。生産緑地指定を受けた場合、宅地造成や農業生産に必要な建築物(農産物の生産又は集荷用の施設)以外の建築はできず、当該土地を農地として適正に管理していくことが求められる。 三大都市圏の特定市の市街化区域内においては、平成3年(1991年)の生産緑地法改正に基づき、該当する農地所有者が生産緑地かそれ以外の農地にするかを選択し、平成4年(1992年)に指定が行われた。 生産緑地指定を受けた農地については、指定から30年を経過する日までは、農業従事者が死亡したり心身に著しい故障を負い農業継続が不可能であると認められたときに限り、市に買取り申出を行うことができる。一方、指定から30年を経過した日以後はいつでも市に買取り申出ができる。 市は買取り申出を受けても通常買取り等は行わない。この場合、買取り申出から3ヶ月以内に「行為制限の解除」といい、宅地造成の禁止といった制限が解除される。 生産緑地指定を受けた農地の固定資産税・都市計画税については、農地評価・農地課税が行われるため周辺の土地に比較して著しく低くなる。また、三大都市圏の特定市の市街化区域内においては、原則として相続税・贈与税の納税猶予は受けることができないが、生産緑地指定を受けている農地に関しては納税猶予を受けることができる。   2 今回の生産緑地法の改正内容 今回の生産緑地法の改正は、次に掲げる3つのトピックがある。 (1)の改正は、市が条例により定めた場合に限り、生産緑地の対象となる「一団の農地面積」について、その下限を300㎡を限度として引き下げられるというものである。 また、前述したように従来は生産緑地内に農業生産に必要な建築物以外は建てられなかったが、(2)の改正によって農産物の加工場、農産物の直売所、生産緑地地区内で生産された農産物を主な食材としたレストラン等の建築を行うことが可能になった。 (3)の特定生産緑地制度とは、従来の生産緑地に加える形で設けられたものである。特定生産緑地に指定されると、その後10年間は農業従事者の死亡等により農業継続が不可能と認められない限り営農を継続しなければならない。 つまり、現在ある生産緑地の多くについて、その指定後30年が経過する2022年に実質的に行為制限が解除されるのを受け、解除により宅地化された農地が大量に供給される事態(いわゆる2022年問題)をある程度抑えるために、買取り申出時期を10年間先送りする制度ができたわけである。 さらに、特定生産緑地指定後10年を経過した後は、再度特定生産緑地指定を受けることで特定生産緑地を継続することができる。一方、特定生産緑地の指定を受けなかった農地は、都市計画法上においては生産緑地であるがいつでも買取り申出(≒行為制限解除)を行うことができる形になる。ここでは特定生産緑地の指定を受けなかった農地を便宜上「一般生産緑地」と呼ぶことにする。 具体的には、当初の生産緑地指定から30年を経過する日を申出基準日とし、市が農地所有者の申請に基づき申出基準日までに特定生産緑地指定を行う。言い換えれば、1992年に生産緑地指定を受けた農地については、2022年までに特定生産緑地指定の申請を行う必要があるということである。以後、特定生産緑地指定を受けた日を申出基準日とし、そこから10年を経過する日が新たな申出基準日になる。 【特定生産緑地のイメージ】 ここで注意してほしいのは、期限までに特定生産緑地指定の申請を行わなかった場合、二度と特定生産緑地指定を受けることができないということである。 例えば、2022年までに特定生産緑地指定を受けず一般生産緑地になった場合、10年後に改めて特定生産緑地指定を受けることはできない。また、2022年において特定生産緑地指定を受けたとしても、10年後の2032年に再指定を受けなければ、これ以後は特定生産緑地指定を受けることはできない。   3 生産緑地法改正と関連税制 今回の生産緑地法の改正により、農地に係る税務に関して影響が出てくる。まず、固定資産税・都市計画税については、現在は生産緑地指定を受けていれば農地評価・農地課税になるが、2023年度以降は特定生産緑地指定を受けた農地のみが農地評価・農地課税の対象になり、一般生産緑地は農地評価・農地課税の対象から外れることになることが予想される。 これによる負担増がどのくらいになるか本稿執筆段階では不明であるが、いずれにしても一般生産緑地については相当な負担増は避けられないであろう。 相続税の納税猶予については、改正項目(1)の下限面積の引下げに基づき生産緑地指定を受けた農地は、納税猶予の対象になる。一方、改正項目(2)で設置が認められた生産緑地地区内に建築された直売所等の敷地は、農地ではないので納税猶予の対象にはならないと思われる。 (3)の特定生産緑地に関しては、2022年以降特定生産緑地指定を受けていない農地は納税猶予の対象から外される可能性が高い。ただし、既に納税猶予を受けている農地については、2022年において特定生産緑地指定を受けなかったとしても、すぐに納税猶予が打ち切られるのではなく、農地所有者が死亡するまで納税猶予は継続されるようである。 *  *  * 以上、生産緑地法の改正と関連税務について述べてきた。税務上の取扱いについては不明な点があり、今後の税制改正を待ちたいところである。 いずれにしても、2022年までには、特定生産緑地指定を受けるかどうかの選択を迫られることになるため、クライアントが生産緑地を所有している場合、税務上の取扱いがはっきりした時点においてクライアントに説明及び意思確認を行う必要がある。 特に次世代において納税猶予を受けるときは、特定生産緑地指定が必須になると見込まれるため特に注意が必要になろう。 -連載終了にあたって- 今回で12回にわたって連載させていただいた「税理士業務に必要な『農地』の知識」はひとまず終了する。 農業政策とその税務に関しては、「集約化」と「都市農地の保全」というキーワードに沿った展開が予想される。今回解説した特定生産緑地制度の創設はその一環であろう。 もちろん一連の解説で、農地とその税務について全てが解説できたわけではなく、個々の事例によっては、より深く掘り下げなければならない場面も当然でてくるであろう。 特に市街化区域にある農地を持つクライアントがいる場合や、相続財産に農地が含まれている相続税の申告依頼がある場合は、細心の注意を要する。 そのようなときには、本連載の内容を農地についての理解を深めるための入口として活用していただければ幸いである。 (連載了)

#No. 239(掲載号)
#島田 晃一
2017/10/12

税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第2回】「委任契約に基づく義務と付随的義務」

税理士のための 〈リスクを回避する〉 顧問契約・委託契約Q&A 【第2回】 「委任契約に基づく義務と付随的義務」   弁護士・税理士 米倉 裕樹 弁護士・ 関西大学法科大学院教授 元氏 成保 弁護士・税理士 橋森 正樹   Q X社は、税理士Yとの間で、税務代理、税務書類の作成、税務相談及びこれらの業務に付随する財務関係書類の作成、会計帳簿の記帳代行を行うことを内容とする税務顧問契約を締結していた。 ところで、X社の100%親会社であるZ社は、X社が行うべき業務のうち総務等のいわゆる本部機能に属する部分を行っており、X社は、その対価として、期末にZ社に対する特別管理費を計上した上で短期貸付金と相殺していたが、この特別管理費については、特に合理的な算定根拠を定めていなかった。 そして、税務調査の際に、X社はこの特別管理費の金額に関する裏付資料を提出できなかったことから、これが寄附金であるとの指摘を受け、最終的にX社はやむを得ずこの点に関する修正申告に応じることとなった。 X社はYに対し、このような特別管理費の計上が税務上不適切であることを知りながら、その計上に異議を述べず、また、他の処理を提案するなどの助言を行わなかったとして、その損害賠償を請求した。 実際には、YはX社に対して、「特別管理費を期末に一括計上するのであれば、事前にロイヤリティー契約を締結することが望ましく、また、実費相当額であることを明らかにしなければ費用として認められない可能性がある」との説明をしていたのであるが、それに対し、X社代表者はYに対して、「計上している特別管理費は実費相当額であるが、その多くは色々な費用の中に紛れ込んでおり、資料としてまとめるには時間がかかる」などと伝えており、それを信じたYは、特別管理費の内容をあえて客観的資料によって確認まではしていなかった。 このようなケースで、仮に、X社がYを税理士過誤で訴えた場合、Yはその責任を問われるのか。 A 税理士と依頼者との法律関係は、民法上の委任関係に該当し、受任者である税理士は委任者である依頼者に対し、民法上の受任者としての義務を負うことになる。 民法においては、委任契約における受任者の義務として、善管注意義務(民法644条)、報告義務(同645条)、受取物引渡義務(同646条)、金銭消費の責任(同647条)などが定められている。そして、税理士のような専門家については、善管注意義務の内容として、依頼者から依頼された内容の実現にあたり、依頼者から特別の指示や要求があったか否かに関わらず、関係法令や実務に通じた標準的な専門家として尽くすべき配慮をしなければならず、また、善管注意義務の一環として、依頼者に対して、有効かつ必要な情報を提供し、また依頼者が適切な判断をなし得るように助言をする義務を負うと解される。 上記の事例は、山形地裁鶴岡支部平成19年4月27日判決を題材としたものである。この事例において、判旨は、一般論として と述べた上で、 と認定し、 と結論づけて、税理士の責任を肯定した。 また、税理士は依頼者に対し、事前にロイヤリティー契約を締結するか、あるいは実費相当額であることを明らかにしなければ特別管理費として認められないと説明・助言を行っていたものであるが、この点については、 とした上で、 と断じている。 *  *  *  * 近年、税理士に限らず、専門家責任が追及されるケースが増加している。これは、法的な観点からは、委任契約に基づく付随的義務について、より高度なものが求められるようになっているものとも評価できる。 日常の業務を処理するにあたっては、専門家として、依頼者の説明のみに依拠するのではなく、必ずしも税務に精通しているわけではない依頼者とは異なる視点に立って事案を検証し、場合によっては必ずしも依頼者の意向にそぐわないことがあっても、より高度な説明、助言を行うことが求められるようになっているのである。 なお、上記裁判例においては、税理士が一定程度の説明、助言をしていたにも関わらず原告代表者がこれに従わなかったことなどが考慮され、実際に税理士に支払が義務付けられた損害額は、納税額の約2分の1とされた。 (了)

#No. 239(掲載号)
#米倉 裕樹、元氏 成保、橋森 正樹
2017/10/12

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第23回】「家族信託の活用事例〈不動産編④〉(兄弟で共有している不動産について、意思決定権限を1人に集中させ、賃料の分配の整理をする事例)」

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第23回】 「家族信託の活用事例〈不動産編④〉 (兄弟で共有している不動産について、意思決定権限を1人に集中させ、賃料の分配の整理をする事例)」   弁護士 荒木 俊和   今回は、「兄弟で共有している不動産について、今後の処分に関する意思決定権限を1人に集中させ、賃料の分配の整理をする」ことを目的とした事例を解説する。 - 相談事例 - 私の父はマンション1棟を所有していましたが、昨年死亡し、私と妹と弟で3分の1ずつの共有財産として相続しました。実際には私が単独でこのマンションを管理しており、賃料は私が預かっている状態です。 今のところ表立った争いにはなっていませんが、妹の夫がマンションの権利について強い関心を持っているようであり、今後、過剰な権利主張がなされないか心配しています。 私としては、兄弟間で賃料を平等に分けることはやぶさかではありませんが、将来、マンションの大規模修繕をしたり、マンションの売却をする場合に、妹の夫が妹を通じて反対してこないか危惧しています。 このような状態において、できれば私1人でマンションの意思決定ができるようにしたいのですが、どのような方法があるのでしょうか。   1 家族信託活用のポイント (1) 不動産共有の問題 不動産が共有状態になると、民法第251条及び第252条に従って保存、管理及び処分(変更)しなければならないことになる。 すなわち、以下のように整理される。 不動産に当てはめていえば、「保存」とは現状を維持する行為であり、日常的な保守等がこれに当たる。また、「管理」とは共有物の現状を維持し、これを利用し、さらに改良してその価値を高めることを意味し、賃貸借契約の締結や解除等がこれに当たり、小規模な修繕もこれに含まれると考えられる。 そして「処分」とは共有物に根本的な変更を加えることをいい、売却等がこれに当たり、大規模な修繕もこれに含まれる可能性がある。 以上のように、本件で本人がマンションを管理しようとすると、妹や弟の同意を要する場面が生じうることになり、同意が得られなければうまく管理が進められない状態となる。 このような問題に対応するため、不動産の所有権を単有とするべき必要性が生じる。 (2) 賃料、売却代金の帰属 家族信託を活用する場合、これまで述べてきたように、形式的な所有権が受託者に帰属する一方で、実質的な財産権は受益者に帰属することになる。 このため、家族信託を活用した場合には、所有権を受託者に集約することで受託者において管理処分が可能となり、一方で受益権は元の共有者に残存することとすれば、受益者が利益を享受することができる。 ここでの具体的な利益としては、マンションの賃料収入とマンション売却時の売買代金が挙げられる。 (3) 売買、贈与との比較 共有を解消するための方法としては、他に「売買」や「贈与」が挙げられる。事案によっては共有者が他の共有者に売買や贈与を行うことにより共有状態を解消することが有効なケースもある。 しかし、売買の場合には買主たる共有者が資金を用意できるかという問題、売主たる共有者に譲渡所得が発生するという問題及び不動産流通税が発生するという問題がある。また、贈与の場合でも受贈者に贈与税が発生するという問題及び不動産流通税が発生するという問題が挙げられる。   2 本件におけるスキーム (1) スキームの概要 以上のことから、本件では大要、以下のようなスキームが考えられる。 (2) 受託者の権限 本連載の【第18回】で述べたとおり、受託者は、信託財産を管理又は処分する一切の権限を保有する。このため、特に信託契約上、受託者の権限を制限する定めのない場合には、当然に、受託者がマンションを処分する権限までを有する。 (3) 受益権の構成 上記のスキームを実現するためには、受益権を2本にして妹と弟に保有させる方法と、受益権を1本として妹と弟の準共有にさせる方法がある。本件では整理のしやすさの観点から、受益権を2本とし、それぞれに保有させる方が有効と考えられる。 (4) 信託の終了 信託の終了原因としては、「マンションの全部が信託財産に属さなくなった場合」や「本人、妹及び弟のうち2名が死亡した場合」等と設定することが考えられる。 信託が終了した場合の帰属権利者については、マンションが残存している場合に共有とならないようにする配慮が必要であろう。 なお、本人が保有している持分については信託財産に属していないことから、本人が死亡したことを原因として信託が終了する可能性がある場合、単有状態を維持するために、本人が家族信託とは別に遺言を作成しておいた方がよい場合がある。 (5) 受益者連続型の検討 各人の子らにマンションの収益を配分したい場合には、信託を終了させず、受益者連続型として、本人、妹又は弟の死亡時にそれぞれの子らに受益権が移転する定めをしておくことも考えられる。 ただし、この場合には「管理の負担を背負う受託者を誰にするのか」という問題をクリアする必要がある。 (了)

#No. 239(掲載号)
#荒木 俊和
2017/10/12

《編集部レポート》 第44回日税連公開研究討論会が新潟で開催

《編集部レポート》 第44回日税連公開研究討論会が新潟で開催 Profession Journal 編集部   日本税理士会連合会(神津信一会長)は、第44回日税連公開研究討論会を新潟で開催した。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。討論会は、15税理士会を次の7グループに地区割りし、 順次開催するものとされている。 今回の担当は、3グループ=関東信越税理士会、東京地方税理士会、千葉税理士会の3税理士会が担当し、それぞれ次のテーマで発表を行った。 当日の発表の模様は、日税連の会員専用「研修ホームページ」で視聴できる。 発表に引き続き開催された懇親会では、佐渡の伝統芸能、鬼太鼓(おんでこ)が披露され興を添えた。また、会場に新潟の銘酒が並ぶなか、参加者には税理士会員章(バッジ)のデザインが施された特製のおちょこが配られる“サプライズ”も用意された。 (了)

#No. 239(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/10/12

《速報解説》 証券取引等監視委員会、「開示検査事例集」を公表~課徴金納付命令勧告以外の不正会計事例も紹介~

 《速報解説》 証券取引等監視委員会、「開示検査事例集」を公表 ~課徴金納付命令勧告以外の不正会計事例も紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   証券取引等監視委員会事務局は、去る10月3日、「開示検査事例集」を公表した。 これまでは、「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」という名称で公表されてきたものを、「課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、さまざまな事例を積極的にご紹介することとした」ために名称を変更したと説明されている。 公表された「開示検査事例集(以下「事例集」と略称する)」の目次は次の通り。 本稿では、事例集のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われるⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。   Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて 事例集冒頭、最近の情報開示に不備が認められた事案の特色として、以下の3点が挙げられている。 そのうえで、証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略称する)は、開示規制違反の早期発見・早期是正及び開示規制違反の再発防止・未然防止を確実に推し進めるため、開示検査について次のような取組みを実施している。 また、平成28年度の開示検査の実績としては、以下のとおりである。   Ⅱ 最新の検査事例 次に、事例集は「最新の検査事例」として、具体的事例を9件、個別事例を3件、公表している。【事例1】から【事例3】までは、開示検査後、上場廃止となっている。 なお、事例集では、会社名等は公表されていないが、上場廃止になった3件について会社名を記しておくと、【事例1】株式会社メディビックグループ、【事例2】モジュレ株式会社、【事例3】株式会社MAGねっとホールディングスである。   Ⅲ 最新の事例の特色・傾向 平成28年度の開示規制違反のほとんどは、不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載であり、架空売上の計上、売上の前倒し計上など、上記【事例1】から【事例9】に記載のとおり、売上をめぐる不適正な会計処理が目立ったということである。 そして、開示規制違反の背景・原因としては、多くの場合、 が背景としてあり、次のような開示規制違反の原因を把握したということである。 事例集の最初に《証券取引等監視委員会からのメッセージ》として、監査役・監査委員、会計監査人に対する監視委の期待が述べられている。引用して、本稿を締め括りたい。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 238(掲載号)
#米澤 勝
2017/10/11

《速報解説》 「不正調査と人工知能(AI)」をテーマに第8回 ACFE JAPANカンファレンス開催~AIの台頭と士業への影響についても議論を交わす~

 《速報解説》 「不正調査と人工知能(AI)」をテーマに 第8回 ACFE JAPANカンファレンス開催 ~AIの台頭と士業への影響についても議論を交わす~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)は、10月6日(金)、御茶ノ水のソラシティ カンファレンスセンターにおいて約300名の参加者のもと、第8回ACFE JAPANカンファレンスを開催した。 カンファレンスの開催概要、プログラムはこちら。 午後1時過ぎ、ACFE JAPAN理事長である濱田眞樹人氏の開会挨拶に続き、メディアアーティスト 筑波大学学長補佐・図書館情報メディア系助教 デジタルネイチャー研究室主宰 落合陽一氏による基調講演「脱近代へ」からカンファレンスがスタートした。 壇上の落合氏は、持参したPCを操作しながら、早口気味に、自身の作品の解説を始める。ACFE会員の多くは企業の内部監査部門に属する会社員、公認会計士、弁護士などで、ほとんどが文系人間だと思われる。一方、「数学が大好き、得意」と公言する落合氏の講演は、広範な物理学・数学の知識を基にした新しい技術の成果やアートが中心で、筆者を含め、どの程度理解できているのか、心許ない。 イントロダクションに続いて、本日のテーマである「脱近代へ」と話がつながっていく。 統計判断が難しい事象について、少ないデータセットから判断できる人、勘所の良さやデータに対する繊細さをもつことが大事であると説き、そのためにはケーススタディが重要であると言葉を連ねる。荘子の「胡蝶の夢」から華厳経の「事事無碍」の世界を語り、松尾芭蕉の英訳された俳句を紹介して、「この何がいいのか、日本人以外にはわからない」と会場の笑いを誘う。頭の中に溢れる知識に口から出る言葉が追いつかないような講演だった。 講演の終盤、「世界は実年より1.8倍速く進んでいる」という事例として、少し前まで修士論文のテーマになっていた実験を、今の中学3年生が3日あればできるという話を挿入し、「下手に自分で考えるよりは誰かがやってくれるのを待っていた方が早い時代」においては、学び方を身につけておかないと間に合わなくなってしまうと話し、依存度の高いことは決して悪いことではなく、失敗を防ぐことにつながっているのだと「生存戦略」へ話をまとめた。 ◆  ◆  ◆ 続いては、青山学院大学大学院教授の八田進二先生との対談。八田先生が、落合氏の話を「半分以上は理解できない人がいたのではないか」と言いながら進めた対談で、何よりも印象的だったのが、八田先生の問いかけの最中に、落合氏が「いま思いつきました」と言って、八田先生の話を遮って話し始めたことだった。筆者は長く、八田先生による対談やパネルディスカッションを聞いてきたが、他人の話を遮ることはあっても遮られることはなかった八田先生が、たじたじとなりながら、話が進む。 (落合陽一氏(右)、八田進二氏(左)) 無理に落合氏の話を「不正とAIの関係」に話を誘導した八田先生の問いに応えて、落合氏は、「会計システムにAIを入れてもダメ」だが、「個人の特性をAIで分析して魔が差す要素をマッピングする」ことが可能で、「リスクの発生は機械学習で減少できる」と言う。 ◆  ◆  ◆ 休憩をはさんで、もう一つの講演、弁護士の井上朗氏による「AIを活用した不正調査の現状と今後の課題」。 落合氏とは打って変わって落ち着いた口調で、井上弁護士がこれまで手がけてきた国際カルテル事件におけるアメリカ司法省との戦いの中で、どのようにAIを活用してきたかが語られる。1億を超える電子メールやドキュメント類をすべて読むことなど不可能で、これをAIによって重要なドキュメントに絞り込み、それを読み込んで仮説の修正や裏付けを行い、インタビューによって事実を明らかにしていくというプロセスが説明された。 (井上 朗 氏) 実はカンファレンス当日の午前中、プレカンファレンスが行われ、その中で、PwCアドバイザリー合同会社ディレクターの池田雄一氏による「AIを活用した不正調査」という講演が行われていた。講演の中で、池田氏から「ドキュメントの仕分け」「レビュー」に使われているAI技術の詳しい解説があり、筆者も含め、池田氏の講演を聞いていた参加者は、井上弁護士の説明が大変わかりやすく感じたはずだ。 井上弁護士は、今後のAIを使った不正調査について、「兆候を入力すると不正の全体像(仮説)や調査の道筋が示されること」を挙げる一方、人力に頼らざるを得ない「証拠収集の複雑化・困難さ」を課題として講演を締め括った。 ◆  ◆  ◆ カンファレンスの最後は、パネルディスカッション。八田先生をモデレーターに、4人のパネリストが壇上に並ぶ。 井上弁護士は、「AIが採用、業績評価、昇進といった人事面で幅を利かせることになり、殺伐とした会社組織になるだろう」と予言し、「兵隊のように単純作業をするだけの弁護士は不要になる」と、AIの未来を語る。公認会計士の丸山琢永氏も、「AIにより、不正の兆候を発見するための全件精査が可能となる」とその効用を認めたうえで、「ロボットや機械学習のアルゴリズムを作る人は残るが、それ以外の会計士は不要になる」と、井上弁護士の考え方に同調した。一方、弁護士の山口利昭氏は、両名の主張に異を唱え、「本音と建前の使い分けや信頼関係の構築はAIにはできない」と反論。 ディスカッションの最後には、八田先生から「不正抑止のために大事なこと」を問われ、井上弁護士は「経営資源を投入すること」、丸山会計士は「すべてのデータをデジタル化すること」、守本氏は「経営者の自覚」、山口弁護士は「不正抑止にAIは不可欠であり、AIによる調査の適法性について監査役・監査役会がチェックすること」をそれぞれ挙げて、ディスカッションを終えた。 (パネルディスカッションの様子) 最後にACFE JAPAN事務局長の脇山太介氏による閉会挨拶をもって、カンファレンスは終了した。 *  *  * ACFE JAPAN事務局から、第8回カンファレンスで「AI」を取り上げるということを筆者が聞かされたのは6月頃であっただろうか。正直なところ、「?」と「大丈夫かな」という懸念が同時に浮かんだものだったが、結果的には、落合陽一氏というゲストスピーカーを迎えることができたことで大いに盛り上がり、パネルディスカッションでも、AIが変革を迫る会計士業界や弁護士業界の未来について、大きく意見が分かれていることがかえって関心を惹き、良いテーマ選定であったと参加者の多くが認めるところとなった。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 238(掲載号)
#米澤 勝
2017/10/11

《速報解説》 「財務諸表監査における法令の検討」(公開草案)等が公表される~倫理規則等改正案との整合性を図り「違法行為への対応」を織り込む~

《速報解説》 「財務諸表監査における法令の検討」(公開草案)等が公表される ~倫理規則等改正案との整合性を図り「違法行為への対応」を織り込む~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年10月6日、日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書250「財務諸表監査における法令の検討」の改正について(公開草案)及び当該改正に関連する品質管理基準委員会報告書等の改正について(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、国際会計士倫理基準審議会(International Ethics Standards Board for Accountants:IESBA)において、会計士が違法行為を発見した場合の対応に係る規定が策定され、当該規定と整合性を図るため、国際監査・保証基準審議会(IAASB)においても国際監査基準(ISA)250「財務諸表監査における法令及び規則の検討」が改訂されたことを受けたものである。 違法行為を発見した場合の対応に関する日本公認会計士協会の倫理規則の改正等については、別稿を参照されたい。 意見募集期間は平成29年11月6日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査基準委員会報告書250「財務諸表監査における法令の検討」の主な改正内容 1 範囲及び定義 監査人は、企業の違法行為について、法令や職業倫理に関する規定による追加の責任を有することがあること、「違法行為への対応に関する指針」(公開草案)の主な要求事項について規定している(9項)。 「違法行為」には、委託先業者等の企業の指示の下で働く者によって行われる違法行為も含まれることを明示している(11項)。 2 違法行為の例示 「違法行為への対応に関する指針」(公開草案)に基づいて、次の法令の例を追加している(A6項)。 違法行為には、企業の事業活動に関連する個人の違法行為が含まれる(A9項)。 例えば、重要な管理職が、個人の立場で、企業の仕入先から賄賂を受領し、見返りに企業への業務提供や契約締結のために当該仕入先を選定することを確約する場合がある(A9項)。 3 適切な規制当局への違法行為の報告 適切な規制当局への違法行為の報告について、要求事項に追加(28項)するとともに、適用指針において、適切な規制当局への報告が求められている又はそれが適切な場合について、以下に分けて説明している(A27項からA32項)。 4 その他 例えば、次の改正が提案されている。   Ⅲ 適用時期等 平成31年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。 なお、日本公認会計士協会の倫理規則の改正等における違法行為への対応は、平成31年4月1日から適用することが提案されている。 (了)

#No. 238(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/11

《速報解説》 会計士協会、国際会計士連盟の動向受け「違法行為への対応に関する指針」(公開草案)等を公表~組織内会計士に対する規定は別途検討を予定~

《速報解説》 会計士協会、国際会計士連盟の動向受け 「違法行為への対応に関する指針」(公開草案)等を公表 ~組織内会計士に対する規定は別途検討を予定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年10月6日、日本公認会計士協会は次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、2015年4月及び2016年7月に国際会計士連盟(International Federation of Accountants:IFAC)における国際会計士倫理基準審議会(International Ethics Standards Board for Accountants:IESBA)の倫理規程(Code of Ethics for Professional Accountants)が、非保証業務に関する独立性及び違法行為への対応に関して改正されたことを受けたものである。 IESBAの倫理規程は、監査法人に所属する公認会計士だけでなく、企業等所属の公認会計士(いわゆる組織内会計士)を含めてすべての職業会計士に適用されるが、上記の公開草案は、会計事務所等所属の会員に対する規定だけを対象としており、企業等所属の会員(いわゆる組織内会計士)に対する規定については、別途検討を行う予定とのことであるので、今後の動向にも注意が必要である。 「公開草案の概要」の説明において、フローチャートが示されているので、理解に資するものと思われる。 意見募集期間は平成29年11月6日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 「倫理規則」の主な改正案 現行の「倫理規則」の「倫理規則の趣旨及び精神」では、「社会の期待に応え得るよう」との表現を用いているが、これを「社会の期待に応え、公共の利益に資することができるよう」とする改正が提案されている。 ここでは、「公共の利益」の用語がポイントと解される。 2 「違法行為への対応に関する指針」の新設 3 「独立性に関する指針」の主な改正案 4 「職業倫理に関する解釈指針」の主な改正案 次のものが新設されている。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 238(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/10

《速報解説》 金融庁、「仮想通貨」に関する情報を集約したページを掲載~改正資金決済法による「仮想通貨交換業者登録一覧」も~

《速報解説》 金融庁、「仮想通貨」に関する情報を集約したページを掲載 ~改正資金決済法による「仮想通貨交換業者登録一覧」も~   Profession Journal 編集部   平成29年9月29日、金融庁は仮想通貨の個人利用者、仮想通貨関連事業者に向けて、仮想通貨の取引所として11社の登録を公表するとともに、仮想通貨の情報を集約したページを掲載した。 改正資金決済法の施行により仮想通貨に関する新しい制度が平成29年4月1日から開始され、国内で仮想通貨と法定通貨との交換サービスを行う場合、仮想通貨交換業の登録が必要となっている。 9月29日の時点でビットフライヤー、ビットバンク等を含む全11社が仮想通貨交換登録業者として公表された。 金融庁は、他にも登録に向けて19社を継続審査中(10月4日現在)としており、今後も登録業者は増える見込みだ。 また、今回、金融庁で掲載された情報は上記の制度を受けたものとした上で、「個人利用者」と「仮想通貨に関連する事業者」に対象が分けられ、それぞれ次のような情報を掲載している。 事業者に対しては登録手続きの情報を提供する一方で、個人利用者に対しては仮想通貨の利用の際に起きるトラブルや相談の増加を受け、利用者への注意喚起や相談窓口の案内の情報が主要となっている。 注意喚起においては、仮想通貨取引の際には上記制度にて登録された事業者であることを「仮想通貨交換業者登録一覧」での確認を促すとともに、実際にあった今までの相談事例等を紹介しているので、実務家も確認のうえ、顧問先が仮想通貨取引を行う場合には十分注意されたい。 なお、仮想通貨に係る税の面に関しては、先般、国税庁のタックスアンサーにおいて、仮想通貨であるビットコインを使用することにより利益が生じた場合は、原則、雑所得として課税を行うとされ、課税関係が明らかにされている。 (了)

#No. 238(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/10/05

《速報解説》 会計士協会、「監査及びレビュー等の契約書の作成について」を公表~監査及び四半期レビュー業務、レビュー業務並びに合意された手続業務に関する契約書作成例を整理・統合~

《速報解説》 会計士協会、「監査及びレビュー等の契約書の作成について」を公表 ~監査及び四半期レビュー業務、レビュー業務並びに合意された手続業務に関する 契約書作成例を整理・統合~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年9月29日付で(ホームページ掲載日は10月3日)、日本公認会計士協会は、「監査及びレビュー等の契約書の作成について」(法規委員会研究報告第16号。以下「研究報告」という)を公表した。 これは、監査及び四半期レビュー業務、レビュー業務並びに合意された手続業務に関する契約書の作成例を整理・統合し、1つの研究報告として公表するものである。 これにより、「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」(法規委員会研究報告第10号)及び「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」(法規委員会研究報告第14号)は廃止される。 整理・統合に際して、これらの研究報告の比較表が公表されているので、改正点を確認する際の参考となる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 研究報告は目次を含めて163ページある。 多くの部分は従来の研究報告の内容を引き継いでいる。 1 対象 研究報告は次の業務を対象としている。 業務ごとに契約書の作成例が示されているので、実務にとって有用なものと考えられる。 2 十分な監査時間・期間の確保 受嘱者は、①見積時間数及び②実施時期等について委嘱者と協議する際には、高品質な監査を実施するために十分な監査時間・期間を確保することが重要である旨を説明し、委嘱者の理解を得ることに留意すると記載されている(14~15ページ)。 また、報酬は見積時間数を基礎として算出する旨、見積時間数に比べて執務時間数が超過した場合の報酬の取扱い、執務時間数が見積時間数を超過することとなった場合の会社への通知を、契約書作成例において例示している(15ページ)。 (了)

#No. 238(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/05
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