《速報解説》 有償ストック・オプションに関する会計処理の取扱いを明確化した 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」等が確定 ~公開草案からの重要な変更なし~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年1月12日、企業会計基準委員会は、「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号。以下「実務対応報告」という)及び改正「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(企業会計基準適用指針第17号の改正)を公表した。 これは、いわゆる有償ストック・オプションに関する会計処理の取扱いを明確化するものである。 これにより、平成29年5月10日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 公開草案に対しては、相当多数の反対意見が寄せられていたが、基本的に公開草案どおりの内容で確定することとなった。 公開草案に対する主なコメントの概要とそれらに対する対応が公表されており、反対意見に対しては、平成26年12月に基準諮問会議から提言を受けて検討を開始し、平成29年5月の公開草案の公表に至るまで、企業会計基準委員会で9回、実務対応専門委員会で8回、時間をかけ十分な審議を行ってきたことなどをあげ、公開草案に記載したとおりであることが述べられている(論点の項目(2)など)。 また、会社法の報酬との関係に言及したコメントに対しては、資本市場における会計基準は、一般的には、投資家の意思決定に資するより有用な情報を提供することを目的として開発しており、目的が異なる会社法における取扱いとの相違について言及することは適切ではないと考えられると述べられている(論点の項目(69))。実務対応報告の脚注3では、本実務対応報告は、当該取引に関する法律的な解釈を示すことを目的とするものではなく、当該取引が、法的に有効であることを前提としていると記載されている。 そのほか、「ストック・オプション等に関する会計基準」(企業会計基準第8号。以下「ストック・オプション会計基準」という)の公表に際してのコメント対応に記載された内容との不整合を問うコメントに対しては、公開草案に寄せられたコメントに対する対応は、特定の取引に関する会計処理を明らかにするものではないとのことである(論点の項目(20))。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 実務対応報告の対象となる権利確定条件付き有償新株予約権を、ストック・オプション会計基準2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとする(4項)。 1 範囲 実務対応報告は、おおむね次の内容で発行される権利確定条件付き有償新株予約権を対象としている(2項)。 2 会計処理 主な会計処理は次のとおりである(5~8項)。 (1) 権利確定日以前の会計処理 (2) 権利確定日後の会計処理 (3) 権利確定日 権利確定日は、次のとおりとする(7項)。 3 開示 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する注記は、ストック・オプション会計基準16項及びストック・オプション適用指針24項から35項に従って行う(9項)。 Ⅲ 適用時期等 実務対応報告の適用にあたっては、実務対応報告の公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引に係る会計処理を遡及的に適用することが、企業間の比較可能性の向上に資すると考えられるため、遡及適用を原則としたとのことである(10項(1)、36項)。 Ⅳ 「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」 「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」では、適用範囲(2項)について、「本適用指針は、これに関連する新株予約権及び自己新株予約権の会計処理についても取り扱っている。ただし、新株予約権については、現金のみを対価として受け取り、付与されるものに限る。」と改正し、現行の「現金を対価として受け取り」の記載から「現金のみを対価として受け取り」と記載している。 (了)
《速報解説》 給与所得者の特定支出控除、自動車による帰宅旅費の追加等の拡充へ ~平成30年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成30年度税制改正大綱では、既報のような給与所得控除の見直しに併せ、給与所得者の特定支出控除についての見直しが示されている。 以下、給与所得者の特定支出控除の制度の概要と、今回の見直しの内容について解説を行う。 【1】 給与所得者の特定支出控除 (1) 制度の概要 給与所得者が、特定支出((2)参照)をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が、給与所得控除額の2分の1相当額を超えるときには、その年分の給与所得の金額は次の算式で求めた金額とすることができる(所法57の2①)。 給与所得の金額 = 給与等の収入金額 -{給与所得控除額 +(その年中の特定支出の額の合計額 - 給与所得控除額 × 1/2)} (2) 特定支出とは 「特定支出」とは、給与所得者の次に掲げる支出のうち、給与の支払者により証明された一定のものをいう(所法57の2②、所令167の3)。 〈特定支出〉 (※1) 平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士等の資格取得費も対象となる。 (※2) 平成25年分以後、特定支出の範囲に含まれる。 【2】 見直しの概要 給与所得者の特定出控除について、次の見直しを行うことが示された。 (了)
2018年1月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.251を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.60- 「改めて、消費税軽減税率は廃止を」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 新年早々、外食産業の依頼で「消費税軽減税率の課題」と題する講演を行うので、そのための準備をしつつ考えたことを述べてみたい。 2019年10月1日に消費税率が10%に引き上げられる際、軽減税率が導入される。軽減税率の対象は、「酒類・外食を除く飲食料品と新聞購読料(週2回以上発行)」である。 軽減税率導入に伴う問題、とりわけ執行上のさまざまな課題については、安倍総理の2度にわたる消費増税の延期もあり、議論が生煮えのままである。また、「新聞」が軽減税率の当事者であることから、軽減税率導入にマイナスとなるような記事はまず掲載されないという特殊な事情も、そのことに輪をかけている。 そこでこの際、改めて軽減税率の課題・問題点を整理してみたい。 * * * 第1に、軽減税率は、政策意義の不明な税制であるということだ。飲食費は高所得者ほど額が大きいので、軽減税率は低所得者より高所得者を優遇する制度である。昨年行われたオランダの総選挙では、「高所得者に有利な軽減税率を引き上げて、その財源で所得税減税を行う」ことを主張した政党が勝利した。 第2に、消費者・事業者・税務当局に多大な執行のコストをかけるということだ。それが引いては国民負担につながる。とりわけ、イートインコーナーのあるコンビニなどでの外食と飲食料品の区分は困難で、敏感なわが国の消費者は戸惑ってしまう。外食か飲食料品かの区分は、英国では温度(ホットフード)で、カナダでは個数(ドーナツ)で区分しており、混乱を避けるためには何らかの外形的な基準が必要になる。 ちなみに、わが国の消費税法では、外食(標準税率)の定義は「その場で飲食させるサービスの提供を行う事業を営む者が、テーブル、椅子その他のその場で飲食させるための設備(飲食設備)を設置した場所で行う『食事の提供』その他これに類するもの」となっている。 第3に、財源の問題が未解決のまま残されている。軽減税率導入に必要な財源は1兆円である。4,000億円は総合合算制度の取りやめで確保されるようだが、残りについては「安定的な恒久財源を確保するため、平成30年度末までに歳入及び歳出上の措置を講じる」ことが法律で義務付けられており、年末までに決める必要がある。 最後に、軽減税率の適用拡大を巡って、利権型政治が繰り返される可能性が高いことも付け加えておきたい。 * * * 軽減税率導入に対する代替案は、低所得者への給付を、所得に応じて行うことである。低所得者を3つから4つに区分し、その食料支出分を計算し給付する、「簡素な給付付き税額控除」(実質は給付)で対応は可能である。 この案に対して公明党などは、「正確な所得把握ができていないことが問題」というが、教育の無償化、児童手当、介護保険料など、わが国ではすでに数多くの所得基準の給付や負担が存在している。マイナンバーも導入されており、「正確な所得の把握」ができないことが給付付き税額控除導入反対の理由にはならない。 いずれにしても、軽減税率は、「過ちては改むるに憚ること勿れ」(論語)ということだ。 (了)
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第60回】 「日本税理士会連合会の建議から租税法条文を読み解く(その3)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅳ 平成30年度税制改正に関する建議書 1 建議書における重要建議項目 続いて、平成30年度税制改正に関する建議書を確認しておこう。 日税連の平成30年度税制改正建議書には、相続税・贈与税項目として、「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度は、税制改正において大幅に改善されたものの、事業承継を必要とする経営者の利用拡大には未だ不十分である。適用要件のより一層の緩和を図り、納税者が利用しやすい制度にすべきである。」との要望が掲げられていた。 具体的には、「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、適用要件をより一層緩和し、納税者が利用しやすい制度にすること。」として、次のような提案が示されていた。 2 平成30年度税制改正与党大綱 与党大綱においては、次のとおり、事業承継税制の拡充が謳われている。 この納税猶予の特例制度について、簡潔に確認しておこう。 (1) 概要 特例後継者(仮称)が、特例認定承継会社(仮称)の代表権を有していた者から、贈与等によりその会社の非上場株式を取得した場合には、かかる非上場株式に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡の日等まで納税を猶予する。 なお、ここで、「特例後継者」とは、特例認定承継会社の特例承継計画(仮称)に記載された当該会社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせて当該特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有する者に限る。)であって、かかる同族関係者のうち、当該会社の議決権を最も多く有する者(後継者が2名以上の場合には、議決権数上位2名又は3名の者)をいう。 また、「特例認定承継会社」とは、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出した会社であって、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律12条《経済産業大臣の認定》1項の認定を受けたものをいい、「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、当該特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう。 (注) 差し込みの図表は、経済産業省ホームページからの引用である(以下Ⅳにおいて同じ)。 なお、特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する当該会社の非上場株式についても、特例承継期間(仮称)(5年)内に当該贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象とするとされている。 (2) 雇用確保要件の緩和 現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定しない。 ただし、この場合には、その満たせない理由を記載した一定の書類を都道府県に提出しなければならない。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければならないこととされている。 (3) 特例承継期間経過後の株式譲渡等 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をするときや、合併により消滅するとき、解散をするとき等には、一定の限度額の範囲内で納税猶予税額が免除される。 なお、ここで、「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字である場合や、売上高がその前年に比して減少している場合が該当するとされている。 その他、直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上である場合や、特例認定承継会社の事業が属する業種に係る上場会社の株価が、その前年1年間の平均より下落している場合、特例後継者が特例認定承継会社における経営を継続しない特段の理由がある場合もそれに該当することとされている。 (4) その他 特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日において20歳以上である者に限る。)であり、かつ、その贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができる。 なお、その他の要件等は、現行の事業承継税制と同様とするものとされている。 Ⅴ 税理士会の建議と請願 事業承継税制の拡充は、平成30年度税制改正の大きな目玉といえよう。 上記のような極めてインパクトのある事業承継税制の拡充改正案に至るまでには、日税連の建議のみならず、ロビー活動も欠かせないものであったと思われる(この点については、神津信一=酒井克彦「税制改正等における税理士の役割―その成果と今後の課題―」税務事例50巻1号1頁)。 本稿で確認してきたとおり、平成29年度税制改正においては災害対応税制の基本法化が実現し、平成30年度税制改正では事業承継税制がより使い勝手の良い制度へと改正される運びとなった。東日本大震災や熊本地震、大型台風の被害などが相次ぐ中での災害対応税制の基本法化も、我が国経済の土台を支える中小企業が後継者難にあえぐ実情に配慮された事業承継税制の拡充も、いずれも時宜を得た税制上の措置であると思われる。 次の一覧表は、日税連の建議が税制改正の実現につながった事項である。 これら「実現項目」欄に掲げられている条項に関する解釈問題に疑義がある場合には、日税連の建議にアクセスし、いかなる要望の下で制定ないし改正された条文であるのかという点を確認することが必要となろう。立法趣旨を探るに当たっては、その契機となった建議の内容を知ることから始める必要がある。 〈過去の税制改正と主な実現項目〉 (注) 日本税理士会連合会ホームページより Ⅵ 結びに代えて 租税法が財産権に対する侵害規範であることからすれば、租税法は、原則たる財産権保障の例外的取扱いという位置付けになる。そうであるとすれば、自ずと租税法条文の解釈を行うに当たっては、厳格な解釈が要請されることになるのであり、原則として文理解釈が優先的に採用されることになろう。 もっとも、租税法が法である限り、その趣旨や目的から逸脱した解釈が許容されるわけではなく、解釈における二次的なテストとして、目的論的解釈も要請されよう。 しかしながら、目的論的解釈を採用しようにも、法条の趣旨、目的が判然としないことには先に進めない。ここで、条項の趣旨目的を確認するには、かかる条項がいかなる過程で制定・改正されたものであるのかといった立法背景の理解が必須となる。 かような問題関心から、対象とされている法条の制定過程について関心を寄せることが重要であり、税理士会の建議が経由されている場合には、建議内容についても確認をしておくことが必要となるのである。 (了)
平成29年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「ビットコイン等の仮想通貨に関する確定申告」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 【1】 はじめに ビットコインをはじめとする仮想通貨の利用者数は、ここ1年ほどの間、急激に増加している。仮想通貨の相場は変動幅が大きく、支払い手段としての利用よりも投資対象として注目されているようである。 平成29年4月1日に改正資金決済法が施行され、ビットコイン等の仮想通貨は円やドルといった法定通貨に準ずる支払い手段として認められることになった(資金決済法1、2⑤)。 資金決済法の改正により仮想通貨の取扱いルールが整備され、一般の個人が仮想通貨を取引する機会も増えている。仮想通貨の取引が活発に行われている現状を踏まえ、平成29年12月1日には国税庁よりビットコインの課税関係に関する情報(※)(以下、「情報」という)が公開された。 (※) 個人課税課情報第4号「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」 【第2回】は、本情報に基づき、仮想通貨を取引した場合の確定申告について解説を行う。 【2】 所得区分は「雑所得」 本情報が公開される数ヶ月前に、国税庁ホームページのタックスアンサーにおいて、ビットコインを使用することにより生じた損益は、原則として雑所得に区分されることが明らかにされている(タックスアンサーNo.1524「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」)。 ビットコイン以外にも仮想通貨は存在する(※)が、資金決済法の仮想通貨の定義に該当するものであれば、税務上は同じ取扱いとなる。 (※) 金融庁のホームページには、仮想通貨交換業者に認定された業者の一覧と、各社が扱っている仮想通貨が公開されている。この一覧に記載されている仮想通貨は、資金決済法の定義に該当する仮想通貨である。 ⇒金融庁「仮想通貨交換業者登録一覧」 〈仮想通貨に関する所得区分〉 【3】 所得計算方法 (1) 仮想通貨を使用した場合の課税関係 個人が仮想通貨を使用することにより利益が生じた場合には、その利益は所得税の課税対象となる(所法27、35)。ここでいう「使用」とは、具体的には次の取引をいう。 ①から③の取引について課税関係をまとめると、以下のとおりである(「情報」1、2、3)。なお、複数回にわたって購入した仮想通貨を使用する場合には、移動平均法により取得価額を算定する。ただし、継続適用を要件として総平均法によって算定することもできる(「情報」4)。 〈仮想通貨を使用した場合の課税関係〉 (※) BTC:ビットコイン、各金額は手数料込 (2) 仮想通貨が分裂した場合 平成29年8月にビットコインが分裂し、新たな仮想通貨としてビットコインキャッシュが誕生した。このように保有している仮想通貨が分裂すると、新たな仮想通貨を自動的に取得することになる。 分裂により取得した新たな仮想通貨は、分裂時点では取引相場が存在しないため、その時点では価値がないものと考えられる。したがって、取得時点においては課税されない。 分裂により取得した仮想通貨を使用(売却等)したときには、取得価額をゼロとして所得金額を算定し、課税されることになる(「情報」5)。 (3) 仮想通貨の証拠金取引をした場合 仮想通貨の証拠金取引による所得の課税関係は、同じ証拠金取引である外国為替証拠金取引(以下、FXという)や先物取引の課税関係とは異なる。 FXや先物取引による所得は、租税特別措置法の「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」に基づき申告分離課税の対象となるが、仮想通貨の証拠金取引による所得は、この特例の適用対象ではない(措法41の14)。仮想通貨の証拠金取引による所得は、総合課税(雑所得又は事業所得)により課税されることになる。 上記特例の対象となる所得であれば、適用される所得税率は15%であるが、仮想通貨の証拠金取引による所得は、給与所得等の他の所得と合算された上、5%から45%の超過累進税率が適用される(所法89①)。 (4) 仮想通貨のマイニング(採掘)をした場合 マイニング(採掘)により仮想通貨を取得した場合には、マイニング時に以下の算式で所得金額を算定する(「情報」9)。 所得金額 = 収入金額(取得時点の時価)- 必要経費(マイニングに要した費用) なお、マイニングにより取得した仮想通貨を使用(売却等)した場合には、マイニング時に上記所得金額が課税されることから、マイニングにより仮想通貨を取得した時の時価が取得価額となる。 【4】 申告するときの注意点 (1) 申告不要となるケース 給与を1ヶ所から受けている給与所得者で、その給与が年末調整済みであり、仮想通貨による所得を含む給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるときには、原則として確定申告をする必要はない(所法121)。 ただし、このケースに該当しても、例えば医療費控除や寄附金控除等の適用を受けるために確定申告を行う場合には、20万円以下の所得も申告に含めなければならない。 (2) 損失の通算 【2】及び【3】(3)で解説したとおり、仮想通貨に関する所得は総合課税の雑所得又は事業所得に区分される。多くの納税者にとっては、雑所得になると考えられる。 雑所得の金額の計算上生じた損失は、公的年金等や原稿料といった他の雑所得と通算することはできるが、雑所得以外の所得と通算することはできない(所法35②、69①)。また、損失を翌年以降に繰り越すこともできない。 (了)
相続空き家の特例 [一問一答] 【第27回】 「同一年中に自己の居住用財産と相続空き家の譲渡があった場合」 -相続空き家の特例と他の特例との重複適用関係- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、父親が相続開始の日まで単独で居住の用に供していた家屋(昭和56年5月31日以前に建築)及びその敷地(以下「A家屋等」という)を、昨年5月に父親の相続により取得し、その家屋の耐震リフォームを行い、相続後は空き家の状態のままで、同年9月にA家屋等を4,200万円で売却しました。 また、Xは、昨年3月に自己の居住の用に供していた家屋及びその敷地(以下「B家屋等」という)を3,800万円で売却しました。 この場合、「相続空き家の特例(措法35③)」と「3,000万円特別控除(措法35①)」の適用関係はどのようになるのでしょうか。 A 「相続空き家の特例(措法35③)」と「3,000万円特別控除(措法35①)」との重複適用は可能ですが、同一年中であることから、特別控除の限度額は3,000万円となります。 ●○●○解説○●○● 租税特別措置法第35条第1項に規定する「全部の資産」とは、同項に規定する「居住用財産」及び同条第3項に規定する「被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等」をいいます。 したがって、本事例の場合におけるA家屋等の譲渡とB家屋等の譲渡はともに租税特別措置法第35条第1項に規定する「居住用財産を譲渡した場合」に該当することから、XはA家屋等及びB家屋等の譲渡所得の金額から3,000万円の特別控除をすることができます。 ただし、それらの譲渡が同一年中である場合は、「全部の資産」の譲渡に係る譲渡所得の金額から3,000万円を限度として控除することとなります(措通35-7(同一年中に自己の居住用財産と被相続人の居住用財産の譲渡があった場合の3,000万円控除の適用))。 なお、「相続空き家の特例(措法35③)」と居住用財産の譲渡所得に係る特例については、次に掲げるものとの重複適用が可能とされています。 ① 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35①) ② 特定の居住用財産の買換え等の場合の課税の特例(措法36の2) ③ 特定の居住用財産を交換した場合の課税の特例(措法36の5) ④ 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5) ⑤ 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5の2) (了)
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第20回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第2章》 平成13年度税制改正) (9) 個別項目(概要) 今回から、『平成13年版改正税法のすべて』163頁(大蔵財務協会、平成13年)以降に記載されている個別項目について解説を行う予定である。ただし、退職給付引当金のようなすでに廃止されているものも記載されているため、この点については解説を行わない。さらに、租税特別措置法の内容については、その後の改正・廃止などが著しいことから、解説を行わないため、ご了承されたい。 また、本連載では、個別項目のうち、重要性が高いと思われるものに限定して解説を行う。 具体的には、①みなし事業年度、②受取配当等の益金不算入、③減価償却資産、④国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入、⑤貸倒引当金、⑥青色欠損金、⑦特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入、⑧租税回避行為の防止について解説を行う予定である。 なお、繰延資産、一括償却資産及び控除対象外消費税額については減価償却資産を、工事負担金その他の圧縮記帳については国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入をそれぞれ参考にすることができるため、本稿では解説を行わない。 大雑把な理解としては、「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」にあるように、 としている点が参考になる。なぜなら、単純に資産及び負債を引き継ぐのではなく、その計算要素も引き継ぐことができるように、それぞれの条文が作られているからである。 (10) みなし事業年度 まず、『平成13年版改正税法のすべて』では、個別項目の最初として、みなし事業年度について記載されている。平成13年当時では、合併又は分割型分割を行った場合には、その前日まででみなし事業年度を区切ることとされていた(法法14二・三)。 しかし、平成22年度税制改正により、分割型分割におけるみなし事業年度が廃止されたため、本稿校了段階では、合併を行った場合のみなし事業年度のみが設けられている。そのため、平成22年度税制改正により、分割型分割と分社型分割の処理が統一されたものが多いことから(ex.減価償却の期中損金経理など)、平成13年当時の分割型分割についての条文は、現在の条文と異なる点が多い。さらに、分割承継法人に引き継ぐべき資本金等の額、利益積立金額の計算も、みなし事業年度を区切らないことによる影響が生じている。 この点については、本連載のどこかで解説を行う予定である。 (11) 受取配当等の益金不算入 『平成13年版改正税法のすべて』163-169頁では、受取配当等の益金不算入について記載されている。具体的には、①短期所有株式等の判定、②負債利子控除制度における簡便計算、③関係法人株式等(特定株式等)の判定等について記載されている。 これは、「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」の別紙にて、以下のように記載されていたことを受けた改正である。 本稿校了段階の法人税法では、その後の税制改正があったため、関係法人株式等ではなく、①完全子法人株式等、②関連法人株式等、③その他の株式等、④非支配目的株式等に分けて規定されている。しかし、適格組織再編成における被合併法人等の保有していた期間を含めてこれらの判定を行うという点については、現行税制を理解するうえでも参考になる。 例えば、関連法人株式等の判定では、内国法人が、適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により、他の内国法人の発行済株式等の3分の1超の株式等の移転を受けた場合には、被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人が当該株式等を有していた期間は、当該内国法人が当該株式等を有していた期間とみなすこととされている(法令22の3③)。 さらに、完全子法人株式等の判定では、内国法人が、適格合併により被合併法人から他の内国法人の株式等を引き継いだ場合には、当該被合併法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があった期間は、当該内国法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があったものとみなすこととされている(法令22の2③)。 このような完全子法人株式等の判定方法は、平成22年度税制改正前の連結法人株式等に係る取扱いを引き継いだものとされている(※)。 (※) 『平成22年版改正税法のすべて』232頁(大蔵財務協会、平成22年)。 もともと、連結納税の開始・加入の時価評価課税では、適格合併、適格株式交換等又は適格株式移転により、被合併法人、株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人の100%子会社であった法人が連結子法人になった場合における特例が定められている(法法61の11①五、同条の12①三)。そのことを考えると、関連法人株式等と異なり、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により移転した株式が含まれていないことに違和感はない。 しかし、この制度趣旨を理解するためには、連結納税制度全体の研究が必要になるため、本稿の目的を超えるものとなる。そのため、ここでは、完全子法人株式等の特例と関連法人株式等の特例が異なるという点だけに留めたい。 * * * 次回では、減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法について解説を行う予定である。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第39回】 「寄附金(貸倒損失・債権放棄)」 ~書面による債権放棄の通告が寄附金に該当すると判断した理由は?~ 千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也 今回は、青色申告法人X社に対して行われた「書面による債権放棄の通告が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた名古屋地裁平成8年3月22日判決(税資215号960頁。以下「本判決」という)を素材とする。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 4 検討 (1) 関係法令等の確認 前回も解説を行ったが、本件更正処分の関係法令等を簡単に確認しておく(詳細は、本連載【第11回】参照)。 貸倒損失について、法人税基本通達9-6-1(4)は、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額」は、貸倒損失として損金の額に算入する旨定めている。 損金算入が制限される寄附金について、法人が支出した寄附金とは、金銭その他の資産や経済的な利益の贈与又は無償の供与であり、いわば事業関連性の有無を問わず、対価を伴わない支出であると解されている(法法37⑦)。 また、直接的・個別的な対価を伴わない支出で、かつ、形式上、寄附金の額から除かれる広告宣伝費等の費用に該当しないものであっても、その支出を行うことにより、①対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けている場合又は②営利法人としてこれを受けることなくその支出相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的等がある場合には、寄附金の額に含まれないと解されている。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が、その有するS工業(株)に対する貸付金7,600万円が回収不能であるとして××年12月27日付で債権放棄を書面によってS工業(株)に通告し、同年12月31日付で貸倒損失として損金に計上しているという、X社の帳簿書類の記載又はその前提たる事実を、処分の前提事実としている。その上で、本件理由付記記載の1~5の事由から、この債権放棄が法人税法37条の寄附金に当たるものであるとの法的評価を加えている。したがって、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える(ただし、X社が保存するS工業(株)の資産状況や支払能力に関する書類の記載事項を否認するような場合には、帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する余地がでてくる)。 すると、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、処分の前提事実として、X社が、その有するS工業(株)に対する貸付金7,600万円が回収不能であるとして××年12月27日付で債権放棄を書面によってS工業(株)に通告し、同年12月31日付で貸倒損失として損金に計上していることを記載している。その上で、回収不能であることを客観的に確認することはできないと判断するに至った具体的事実として、本件理由付記記載の1~5の事由を示した上で、S工業(株)に対する債権放棄が寄附金に該当すると記載している。 すると、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものである。したがって、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 ところで、本判決に係る訴訟において、X社は理由付記に根拠法の明示がないと主張した。本判決は、次のとおり述べて、この主張を採用しなかった。 また、X社は、理由付記として、どのような一般に公正妥当と認められる会計基準に従った結果、本件債権放棄による損失の額を損金の額に算入することを否定したのかを明示していないから、理由不備であるとも主張した。これに対して、本判決は次のとおり判示して、この主張を排斥している。 なお、貸倒損失の損金算入を否認するような処分に係る理由付記に関連して、①法令のみならず関連する通達(本件では法人税基本通達9-6-1等)までも理由付記に記載しなければならないのか、②理由付記の趣旨目的と守秘義務(国家公務員法100条、国税通則法126条)との間でどのような調整を図るべきか、という議論がある(本連載【第38回】参照)。 * * * 次回は、「債権放棄に基づく関係会社支援損が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第32回】 「後発的事由による更正の請求の制度がない場合の不当利得返還請求事件」 ~最判昭和49年3月8日(民集28巻2号186頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)