2015年12月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.149を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第26回】 「平成28年度税制改正大綱を概観する」 一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久 1 はじめに 12月16日、消費税の軽減税率をめぐる混乱から、当初予定から大幅に遅れて与党「平成28年度税制改正大綱(以下、大綱)」が取りまとめられた。 平成28年度税制改正の目玉は、いうまでもなく消費税の軽減税率導入と法人実効税率引下げである。 そこで、本稿では、この2点を中心に、改正案の概要と大綱に示されたその考え方を整理しておきたい。 2 法人実効税率の引下げ 「成長志向の法人税改革」として、「法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し『稼ぐ力』のある企業等の税負担を軽減することにより、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促す。(大綱)」ために、当初の想定を超えた大幅な改正となった。 もともと、平成27年度改正において、法人実効税率を平成28年度では31.33%まで引き下げることを決めた上で、「28年度改正においても、課税ベースの拡大等により財源を確保して、28 年度における税率引下げ幅のさらなる上乗せを図る。さらに、その後の年度の税制改正においても、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指して、改革を継続する。」とされていた。 これを受けて、当初、平成28年度改正では、減価償却制度の見直し(建物附属設備、構築物の定額法化、等)、生産性向上設備投資促進税制の縮減を主な財源として国税の法人税率を23.5%まで引き下げ、法人実効税率30.88%とすることで調整が進められていた。 しかし、11月26日に官邸で開催された「未来投資に向けた官民対話」において、経済界から民間設備投資拡大(2018年度にリーマン・ショック前を上回る80 兆円程度)及び今年を上回る賃金引上げへ向けた環境整備として法人実効税率を来年度に20%台とすることを求めたことに対して、安倍総理から「28 年度の引下げ幅を確実に上乗せし、税率を早期に20%台に引き下げる道筋をつける」との答えがなされたことから、一気に弾みがつき、28年度での20%台を目指すこととなった。 ただし、課税ベース拡大の範囲で税率を引き下げる税収中立で行われることとされたため、財源策として、まず、法人事業税において所得割:外形標準課税の比率を27年度5:3から28年度に3:5とすることで、法人事業税率を4.8%から3.6%まで引き下げることとなった。 しかし、実効税率ではなお30%台にとどまるため、国税において繰越欠損金の段階的制限を強化することで、法人税率を23.4%として、平成28年度の実効税率を29.97%、さらに平成30年度には法人税率を23.2%として実効税率を29.74%まで引き下げることとなった。 なお、今回の改正は全体としては税収中立であっても、外形標準課税の拡大により赤字企業は当然のこと、収益の低い企業でも負担増になる場合が多い。そこで、中堅企業(付加価値額40億円未満)に対しては、3年間にわたる激変緩和措置が講じられることとなった。 図1 法人実効税率の引下げ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 図2 外形標準課税の拡大 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 図3 欠損金繰越控除上限の段階的縮減の組み換え ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 3 消費税の軽減税率導入 「日々の生活において幅広い消費者が消費・利活用しているものに係る消費税負担を軽減するとともに、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があることから(大綱)」、消費税率10%引上げ時に軽減税率が導入されることとなったが、ここに至るまでの間の迷走は、税制改正の決定方法を大きく覆すものであった。 軽減税率に関する与党協議は2年以上にわたり続けられていたが、自民党・公明党間の溝はまったく埋まっていなかった。今年9月には、財務省がマイナンバーを利用した還付制度を対案したが、公明党に一蹴され、さらに10月の自民党税調会長の交代を経て、10月13日には、総理から宮沢新会長に対して軽減税率導入を前提に公明党と協議するよう指示が下された。 しかし、対象品目について、生鮮食品に限るべきとする自民党と、加工食品を含めた外食・酒類を除いたすべての食品を求める公明党との隔たりが大きく、与党税制協議会では決着が着かず、両党幹事長での交渉となり、12月12日に至り、「軽減税率制度についての大枠(以下、大枠」」が谷垣自民党幹事長と井上公明党幹事長との間で合意された。 軽減税率の対象品目は、両党幹事長合意では「食品表示基準に規定する生鮮食品及び加工食品(酒類及び外食を除く)」とされていたが、さらに新聞(定期購読契約が締結された週2回以上発行するもの)が追加され、適用税率は8%とされた。 区分経理の方法は、11月末にはまとめられていたが、平成33年4月からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入を前提とし、それまでの間は簡素な方法として「区分記載請求書等保存方式」とされた上で、簡易課税制度を1年間に限り大企業にも適用するなどの措置が講じられた。 最大の問題である財源策は、「財政健全化目標を堅持し、安定的な恒久財源を確保することについて、自民党・公明党両党で責任を持って対応する。(大枠)」とされ、平成29年度税制改正の課題とされた。 4 その他の主要事項 (1) 設備投資促進策 経団連が強く求めていた償却資産に係る固定資産税の減免措置は、中小法人等に対象を限定し、中小企業者等の生産性向上に関する法律(仮称)の制定を前提とする3年間の時限措置として、新規取得する機械・装置について1/2とする措置が講じられる。 (2) 地方法人課税の偏在是正 平成29年度以降、法人住民税法人税割を現行12.9%から7.0%(標準税率)へ縮小する一方、地方法人税(国税)を現行4.4%から10.3%へ拡充し、地方交付税の原資とする。また平成29年度以降、地方法人特別税・地方法人特別譲与税は廃止され、法人事業税に復元される。 (3) 役員報酬 利益連動給与に関する算定指標にROEその他の利益に関する一定の指標が含まれることを明確にする、一定の株式報酬につき損金算入を認める。 (4) 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税制度)の創設 三大都市圏外の自治体が国から一定の事業について認定を受けた場合に、その事業に対し企業が行った寄附について、損金算入措置に加えて、法人税、法人事業税・法人住民税の税額控除を導入し、寄付金額の約6割の負担を軽減する。 (5) 国際課税 BEPSを踏まえた移転価格税制の文書化に係る国内税制の整備を行う。 (6) 森林吸収源対策 新税の創設は見送り、今後の検討とする。地球温暖化対策税の使途拡大は行わない。 (7) 車体課税 平成29年4月に自動車取得税を廃止する一方、取得に係る課税として自動車税環境性能割を創設。自動車税グリーン化特例の燃費基準の見直しを行う。 (了)
平成28年施行の金融所得一体課税と 3月決算法人の実務上の留意点 【第3回】 (最終回) 「住民税利子割の廃止及び 少人数私募債の利子の課税方式の見直し」 税理士 芦川 洋祐 I 住民税利子割の廃止 1 改正の内容 (1) 法人に対する住民税利子割の廃止 金融所得一体課税の施行に併せて、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき利子等に係る住民税利子割の納税義務者が、「利子等の支払いを受ける者」から「利子等の支払いを受ける個人」に改正され、法人が納税義務者から除外された。 また、上記改正によって法人が住民税利子割の納税義務者から除外されたことに伴い、法人が支払いを受ける利子等に係る以下の非課税措置が廃止された。 (2) 利子割の控除・充当・還付規定の廃止 上記(1)の改正に伴い、利子割額の法人税割額からの控除(旧地法53条26項、旧地令9の8)、利子割額の控除不足額の道府県民税均等割額への充当(旧地法53条39項)、利子割額の控除不足額の還付(旧地法53条40項、旧地令9の9の2~5)その他利子割に関連する規定が削除された。 2 事業年度の中途に改正時期を迎える場合 上記1の改正は、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき利子等から適用することとされている。そのため、事業年度の中途において改正時期(平成28年1月1日)を迎える場合には、改正時期前に支払いを受けるべき利子等については改正前の規定が適用されることとなり、利子割の控除・充当・還付が可能である。 Ⅱ 少人数私募債の利子の課税方式の見直し 1 少人数私募債と改正前の節税対策 少人数私募債とは、次の要件を満たす社債をいう。 少人数私募債には 等のメリットがある。 また、上記のほか、同族会社の経営者の場合には、役員報酬に係る税率(累進課税)と私募債の利子所得に係る税率(源泉分離課税:20.315%)の税率差を利用した節税対策が可能であった。 2 改正の内容 金融所得課税の一体化の改正に伴い、平成28年1月1日以後に支払いを受ける利子等のうち下表の利子所得に対する課税方式が分離課税から総合課税に変更された。 3 改正の影響 平成25年度税制改正の段階では、平成27年12月31日までに発行すれば平成28年1月1日以後に支払いを受ける利子等についても分離課税が適用できることとされていた。しかし、平成26年度税制改正において平成27年12月31日までに発行されたものであっても、同族会社が発行する公社債の利子等については総合課税の対象とされた。 これにより、同族会社が発行する少人数私募債の利子等のうち、平成28年1月1日以後に支払いを受けるものはすべて総合課税の対象とされ、少人数私募債の発行による総合課税と分離課税の税率差を利用した節税対策は封じられた。 (連載了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第2回】 「最近の注目裁判例・裁決例① (国税不服審判所平成26年11月18日裁決)」 ~相続財産の価額からの債務控除が認められないと判断した理由は?~ 中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也 今回は、理由付記をめぐる最近注目の裁決例を取り上げてみたい。 1 事案の概要 本件は、相続人である審査請求人Xらが、被相続人には合資会社A商会(以下「A商会」という)の無限責任社員として負っている会社法580条1項に規定する「債務を弁済する責任」があるとして、相続税の課税価格の計算上、この「債務を弁済する責任」を債務として控除して相続税の申告をしたところ、課税庁(原処分庁)が、被相続人は「債務を弁済する責任」を負っていたとは認められないから、債務として控除することはできないなどとして、相続税の更正処分等をしたのに対し、Xらが、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 国税不服審判所平成26年11月18日裁決(TAINS F0-3-398。以下「本裁決」という)は、更正等通知書に記載された無限責任社員としての債務弁済責任に係る債務控除(相続税法13条及び14条)に関する処分の理由は、行政手続法14条1項の規定の趣旨を満たす程度に提示されたものとはいえないとして、課税処分のすべてを取り消した。 2 更正等通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) 3 関係法令 本件理由付記を一読してみると、課税処分の内容及び理由は、相続人であるXらは相続税の申告に当たり、A商会の本件相続開始日における債務超過額1,401,816,220円を、A商会の無限責任社員である本件被相続人の債務弁済責任に基づく債務であるとして相続税の相続財産の価額から控除しているが、この債務控除が認められないというものであることがわかる。 そこで、債務控除に関する相続税法の規定を見てみると、相続により財産を取得した個人で、当該財産を取得した時において日本国内に住所を有するなどの一定の者については、相続税の課税価格は当該財産の価額の合計額となるが、その課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額によるものとされている(相続税法11の2第1項、13条1項など)。 また、この場合の控除すべき債務は、確実と認められるものに限るものとされている(相続税法14条1項)。 これらの規定から読み取ることができる債務控除の要件は次の3つである(ただし、上記②に関する記述は省略する)。 4 本裁決の判断 本裁決は、次のとおり、本件理由付記に不備があると判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 求められる理由付記の程度について、本裁決は、「行政手続法第14条第1項が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の埋由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されている(最高裁平成23年6月7日第三小法廷・民集65巻4号2081頁参照)。」と述べている。 要するに、(青色申告書に係る更正ではない)相続税の更正に係る理由付記においても、行政庁の恣意の抑制と不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨に照らして、理由付記の十分性を検討するという理解である。 (2) 理由付記の十分性 本裁決は、本件理由付記からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由として、例えば次の①~⑤など、様々な可能性が考えられるところ、実際の処分理由がこれらのどれに当たるのか、あるいはこれ以外の理由なのか、不明であるといわざるを得ないから、本件理由付記は、上記(1)の行政手続法14条1項の規定の趣旨(①原処分庁の判断の恣意の抑制及び②名宛人に対する不服申立ての便宜)を満たす程度に提示されたものとはいえないとして、更正処分のうち債務控除に係る部分は、同項の要件を満たさない違法な処分であるとして、取り消すべきであると判断した。 5 考察 本裁決は、平成23年12月の税制改正において義務化された青色申告書以外の更正に係る理由付記の処分取消事例という点で注目すべきではあるが、青色申告書に係る更正の理由付記を中心に検討する本連載との関係では、本裁決から得られる次の2つの有益な視点に注目しておきたい。いずれも、本事案にかかわらず、他の事案における理由付記の十分性を検討する際にも役立つ視点である。 (1) 本裁決の注目点① 本裁決は、本件理由付記が不備であると判断するに当たり、本件理由付記からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由として、例えば上記4(2)の【想定される課税処分の理由】①~⑤など、様々な可能性が考えられるところ、実際の処分理由がこれらのどれに当たるのか、あるいはこれ以外の理由なのか、不明であるといわざるを得ないことを指摘している。 更正処分の理由として、複数考えられるにもかかわらず、理由付記からは、実際の処分理由を特定することができない場合には、行政処分庁の恣意抑制と不服申立ての便宜という行政手続法14条1項の趣旨に照らして、理由付記に不備があるという評価につながり得るという視点は注目に値する。 このような視点は、法令の解釈・適用及び事実認定の双方の場面において応用することが可能であり、理由付記の不備を訴える際に重要なものであると考える。 (2) 本裁決の注目点② (1)でも述べたとおり、本裁決は、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由として、例えば上記4(2)の【想定される課税処分の理由】①~⑤など、様々な可能性が考えられることを指摘している。なるほど、本裁決に係る審査請求における課税庁の主張を見ると少なくとも【想定される課税処分の理由】の①及び⑤に係る主張を行っており(以下の下線部分参照)、まさに、これらの点が理由付記に付記されていなかったことを指摘できる(本裁決も⑤の指摘部分では、課税庁の主張を参照している)。 すなわち、本件理由付記からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由は明らかではないし、上記3の債務控除の要件【1】~【3】の法律要件を具体的にどのように満たさないと判断したのかという点も明らかではないと考えるが、この点について、課税庁は、審査請求の段階で次のとおり主張している。 上記主張においては、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が相続税法13条1項1号に規定する「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」には該当しない、あるいは相続税法14条1項に規定する「確実と認められるもの」に該当しないと課税庁が判断した具体的な理由が述べられているし、上記3の債務控除の要件【1】~【3】の法律要件を具体的にどのように満たさないと判断したのかについても述べられている。 もちろん、上記主張と同程度か、それ以上の理由が付記されていないからといって、直ちに理由付記に不備があるとされるものではないが、理由付記の程度と争訟段階における課税庁の主張・立証の程度との間に著しい差があると、なぜ課税庁は、争訟段階で課税庁が主張しているような内容や提出している証拠を理由付記において記載しなかったのかという疑念が生まれるし、理由付記に記載された理由との関係で理由の追加的主張や理由の変更が認められるのかという議論にも発展するであろう(実際、本件理由付記には相続税法14条1項の記載がないことを指摘し得る)。 以上からすれば、争訟段階における課税庁の主張・立証の内容から、更正処分の具体的な理由、判断過程又は根拠資料を推測し、その推測される処分理由等と、理由付記の記載内容とを比較することで、理由付記の不十分さが浮かび上がる場合があるという視点を学び取ることが可能であると考える。 * * * 次回は、収益事業に該当すると判断して行った課税処分を、理由付記に不備があるとして取り消した判決を取り上げる。 (了)
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第41回】 「その他の裁判例④」 公認会計士 佐藤 信祐 今回、解説する事件は、事業協同組合員の死亡脱退の払戻しが、被相続人において生じたのか、相続人において生じたのかが争われた事件である。 中小企業等協同組合法に関連する事件はそれほど多くはないが、租税法を理解する前に、中小企業等協同組合法を理解する必要があるという意味では、非常に参考になる事件である。 26 事業協同組合員の死亡脱退の払戻請求権(平成20年7月15日東京地裁判決・TAINSコード:Z888-1409) (1) 事件の概要 本事件は、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合である原告が、組合員の死亡脱退に係る脱退組合員持分払戻金のうち組合員の出資金を超える部分が所得税法25条の定めるみなし配当に当たるとして、配当所得に係る源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたが、上記払戻金は組合員の死亡後確定するものであって組合員に帰属するものではないから、組合員の所得に係る所得税の課税の対象とならないなどとして、それらの取消しを求めた事件である。 なお、本事件の争点は、以下の通りである。 このうち、【争点2】については、東京地裁判決にあるように、「組合員の持分、あるいはその払戻請求権は、いわば組合の純資産に対して組合員が当然に持つべき『分け前』であり、組合員の基本的な権利として位置づけられる性質を有するものであって、実質的にみても、これを雇用契約等から生じる退職手当金、賞与、給与等と同一に扱うべき理由はない」ことから、論ずるまでもないため、本稿は【争点1】についてのみ解説を行うこととする。 (2) 原告の主張 そもそも死亡により成立する権利が、死亡した者にいったん帰属することはあり得ない。 原告の定款においては、その11条により、組合員が死亡した場合は、相続人が、死亡した組合員の地位を承継することができ、相続人が組合員の地位を承継しない選択をして初めて脱退の効力が生じるのであるから、払戻請求権は相続人固有の権利であり、死亡した組合員の所得とはならない。 死亡脱退の場合も死亡した年の事業年度が終了するまでは持分払戻請求権は発生も確定もしていないのであり、所得税法36条1項の「権利確定主義」の考え方からも、死亡時に未だ確定していない持分払戻請求権が、死亡脱退した組合員に帰属することは考えられない。 (3) 被告の主張 死亡によって脱退した者の持分の払戻請求権は、組合員の脱退の事実があった日、すなわち死亡の日に確定し、その日に組合員の所得が実現することとなる。 所得税法36条1項のいわゆる権利確定主義は、当該所得が、1つの権利義務の主体のどの年の所得として認識されるかという年度帰属の問題であり、権利が誰に帰属するかという問題ではないところ、組合員が死亡により脱退すれば、組合員に当然に払戻請求権が発生し、帰属することになるから、この払戻請求権は、組合員の死亡の時点で、当該組合員のその年の所得として確定するというべきである。 (4) 裁判所の判断 これらの規定(筆者注:中小企業等協同組合法19条、20条)によれば、組合員が死亡した場合には、当該組合員は、当然に組合から脱退するとともに、その持分の払戻請求権を取得することを定めたものと解するのが自然である一方、中小企業等協同組合法の他の規定を見ても、持分払戻請求権が、組合員の死亡等による脱退の時点ではなく、それよりも後の時点で発生することをうかがわせる規定や、持分払戻請求権が、死亡した組合員ではなく、その相続人に発生することをうかがわせる規定は何ら存在しない。 中小企業等協同組合法の規定及び原告の定款によれば、原告においては、組合員の死亡により、原則として、脱退後の事業年度末日における払戻対象金額を出資口数に応じて算定した金額の持分の払戻請求権が当然に発生し、払込済出資額等以上の額の部分は、総会決議により減額されることがあることをいわば一部解除条件として、死亡した組合員がこれを取得するというべきである。 原告は、死亡により成立する権利が死亡した者にいったん帰属することはあり得ない旨を主張するが、持分払戻請求権は組合員の死亡によって発生する権利であって、およそ死亡によって組合員にいったん帰属することが法律上あり得ないということはできない上、実質的にみても、持分払戻請求権は組合員が有していた持分がいわば金銭に転化したものであって、同一性が認められるから、持分払戻請求権が死亡した組合員にいったん帰属すると解すべきことには合理性が認められるのであって、この点についての原告の主張は採用の限りでない。 原告の定款11条は、死亡した組合員の相続人で組合員たる資格を有する者の1人が相続開始後30日以内に加入の申出をしたときは、「相続開始の時に組合員になったものとみなす」旨の規定であり、その規定ぶりからも明らかなように、中小企業等協同組合法19条1項2号の規定により組合員の死亡によっていったん脱退の効果が生じることを前提とした上で、組合員である相続人が、被相続人たる組合員の死亡後に加入の申出をした場合に、遡ってその相続人が相続開始の時に組合員となったと「みなす」にすぎず、原告の主張するように、組合員たる相続人が加入の申出をしなかったときにはじめて、死亡した組合員の脱退の効力が生じたり、持分の払戻請求権が発生することを定めた規定であると解することは到底できない そもそも権利確定主義は、当該所得が1つの権利義務の主体のどの年の所得として認識されるべきであるかという、所得の年度帰属の問題であるところ、組合員の死亡脱退に伴う持分払戻請求権は、前記のとおり、組合員の死亡によって組合員の所得として発生するのであって、組合員が死亡した年の所得として認識されることになることは明らかであ(る。) (5) 評釈 このように、東京地裁は原告の請求を棄却し、被告が勝訴した。また、原告は東京高裁に控訴したが、平成20年11月27日に棄却された(TAINSコード:Z258-11087)。 本事件で問題となった中小企業等協同組合法では、以下のように定められている。 さらに、本事件の事実関係を見る限り、中小企業等協同組合法に従った定款が定められているものの、定款11条にて、死亡した組合員の相続人で組合員たる資格を有する者の1人が相続開始後30日以内に加入の申出をしたときは、「相続開始の時に組合員になったものとみなす」旨の規定であったという問題がある。 この点については、裁判所の判断にあるように、相続人が組合員になるのであれば、遡ってその相続人が相続開始の時に組合員となったとみなされることから、停止条件ではなく、解除条件が付された形で被相続人に払戻請求権が発生することになる。 また、定款14条では、組合員が脱退したときは払戻対象金額が減額される可能性がある旨が記載されているものの死亡のときにはそのような規定はないため、死亡により脱退した事業年度終了の日における組合財産を基礎として払戻対象金額が算定されることになる。 このように整理してみると、相続人にて払戻請求権が発生したとみることはできず、被相続人にて払戻請求権が発生したと考えることになろう。 なお、本事件で争われているのは、平成13年3月分、平成15年7月分及び平成15年12月分の各月分の源泉所得税である。それがゆえに、【争点2】にて、「相続税のみを課し、所得税は課されない」との主張がなされているが、この主張が認められないことは言うまでもない。 そうなると、源泉所得税の支払期日の問題のみとなってくるが、納税告知処分及び賦課決定処分が平成17年12月26日であり、払戻対象金額を確定させる通常総会が開かれたのは平成15年5月30日である。判決文の別紙2を見てみると、平成17年3月末時点で、払戻対象金額のうち、3分の1は未払いではあるものの、残りの3分の2は支払われている。 そのため、本事件の前提条件としては、そもそも納税者が源泉所得税の徴収を怠っていたということがスタートであり、税務コンプライアンスの観点からは納税者に落ち度があったということも言える。 いずれにしても、本事件は数少ない中小企業等協同組合法についての事件であり、実務上も参考にすべきものであると考えられる。 (了)
なぜ工事契約会計で不正が起こるのか? ~東芝事件から学ぶ原因と防止策~ 【第3回】 (最終回) 「不正を防止するための施策」 公認会計士・税理士 中谷 敏久 Ⅰ 不正の原因 工事進行基準による会計処理を適正に行うためには、3要素(工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度)のうち工事原価総額を信頼性をもって見積もる必要があり、それが故意又は過失によりなされない場合、会計不正が生じる。具体的には、売上の過大計上であり、工事損失引当金の過少計上又は未計上である。 ではなぜ、そのような会計不正が日本を代表する企業で起こったのか、また、発生を防止することができなかったのか。 報告書では直接的な原因と間接的な原因に分けて、以下のように分析されている。 Ⅱ 不正を防止するための施策 過去にも数々の企業において会計不正が発覚しているが、原因が究明されると必ず上記の原因のいずれかが指摘される。 したがって、これらの原因を一つ一つ除去あるいは解決していくことが、すなわち会計不正を防止するための施策になるといえる。 上記の原因のうち は経営者の倫理観の問題であるが、経営者が倫理観を喪失して会計不正に積極的に関与した場合、不正を防止することは非常に困難になる。 この場合には といったコーポレートガバナンスを正常に機能させる必要があるが、東芝のケースではそれもなされていなかった。 報告書によると、K案件(前回の不正事例一覧参照)について監査委員会委員長が「K案件については当日はあまり質問しないようにしよう。61億円の超過分については知らなかったことにする」と発言したとされているが、事実とすれば「監査機能」は全く機能していなかった。また、200億円超の損失が発生する工事契約(H案件)について取締役会に報告されていなかったとすると、「監督機能」も全く機能していなかったことになる。 これに対しては、不正を防止するために設置されているはずの取締役会、監査委員会を正常に機能する状態に戻すべく、人事を刷新する議案が平成27年9月の臨時株主総会に提出されたとのことであるが、今後不正を防止するための妥当な施策といえる。 は多かれ少なかれ程度の差はあっても、多くの企業に当てはまることであり、東芝に限ったことではない。たとえ③④があろうとも、大部分の上場会社は認められた会計基準の枠内で会計処理しているのが現状であり、③④が原因で会計不正が生じたとするならば、それは東芝固有の問題であろう。 については、少し違和感を感じる。なぜなら、工事進行基準の考え方自体それほど複雑なものでなく、東芝の経営者であれば一般的な会計知識を持っているはずであり、充分理解できる範疇であるし、また、以前オリンパスで発覚したような、本業とは全く関係のない金融取引によるものではなく、工事契約取引という東芝の日常的な業務の中で行われたものだからである。 むしろ、⑦で指摘されているような組織の内部統制が十分機能していなかったことが重要であり、不正を防止するためには、これらの組織を強化していく必要があると考えられる。 ⑫の内部通報制度も不正防止には非常に効果的である。もともと今回の会計不正が発覚したきっかけは証券取引等監視委員会への内部通報であるが、組織内部でこの制度が正常に運用されれば、たとえ会計不正がなされたとしても初期の段階で解消することが可能になり、会計不正額が巨額になることを防ぐことができるであろう。 なお、報告書ではあまり触れられていないが、不正を防止するための最後の歯止めが会計監査人の監査である。独立の第三者として財務諸表に対して監査意見を表明するのがその主な業務であるが、内部統制がうまく機能しない場合には、会計監査人が会計不正を防止する役割を果たさなければならない。 (連載了)
金融商品会計を学ぶ 【第17回】 「貸倒引当金の計上方法②」 公認会計士 阿部 光成 前回に引き続き、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)における貸倒見積高の算定について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 貸倒懸念債権 1 定義 貸倒懸念債権とは、経営破綻には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権である(金融商品会計基準27項(2)、金融商品実務指針112項)。 2 貸倒見積高 貸倒懸念債権に関する貸倒見積高は、財務内容評価法又はキャッシュ・フロー見積法により算定する(金融商品実務指針113項)。 3 財務内容評価法の留意点 財務内容評価法を採用する場合には、債務者の支払能力を総合的に判断する必要がある(金融商品実務指針114項)。 債務者の支払能力は、債務者の経営状態、債務超過の程度、延滞の期間、事業活動の状況、銀行等金融機関及び親会社の支援状況、再建計画の実現可能性、今後の収益及び資金繰りの見通し、その他債権回収に関係のある一切の定量的・定性的要因を考慮することにより判断される。 金融商品実務指針は、担保や保証に関する取扱いについても詳細に規定している(金融商品実務指針114項)。 4 キャッシュ・フロー見積法の留意点 将来キャッシュ・フローの見積りは、少なくとも各期末に更新し、貸倒見積高を洗い替える(金融商品実務指針115項)。 割引効果の時間の経過による実現分のうち貸倒見積高の減額分は、原則として、受取利息に含めて処理する。ただし、それを受取利息に含めないで貸倒引当金戻入額として営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益に計上することもできる。 Ⅱ 破産更生債権等 1 定義 破産更生債権等とは、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権である(金融商品会計基準27項(3)、金融商品実務指針116項)。 2 貸倒見積高 破産更生債権等に関する貸倒見積高は、財務内容評価法により算定する(金融商品実務指針117項)。 Ⅲ 貸倒引当金の会計処理 1 個別引当法と総括引当法 貸倒見積高の引当方法には、個別引当法と総括引当法がある(金融商品実務指針122項)。 貸倒引当金の繰入れ及び取崩しの処理は、引当の対象となった債権の区分ごとに行う。 2 直接減額による取崩し及び直接減額後の回収 債権の回収可能性がほとんどないと判断された場合には、貸倒損失額を債権から直接減額して、当該貸倒損失額と当該債権に係る前期貸倒引当金残高のいずれか少ない金額まで貸倒引当金を取り崩し、当期貸倒損失額と相殺する(金融商品実務指針123項)。 当該債権に係る前期末の貸倒引当金が当期貸倒損失額に不足する場合、当該不足額をそれぞれの債権の性格により原則として営業費用又は営業外費用に計上する。 また、貸倒見積高を債権から直接減額した後に、残存する帳簿価額を上回る回収があった場合には、原則として営業外収益として当該期間に認識する(金融商品実務指針124項)。 3 繰入額と取崩額の相殺表示 当事業年度末における貸倒引当金のうち直接償却により債権額と相殺した後の不要となった残額があるときは、これを取り崩さなければならない(金融商品実務指針125項)。 次の事項に留意する。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第104回】 会社税務に係る会計処理③ 「追徴税額、還付税額」 仰星監査法人 公認会計士 横塚 大介 〈事例による解説〉 〈会計処理〉(単位:千円) ◆中間納付 〈会計処理の解説〉 追徴税額について過去の誤謬に該当しないと判断される場合は、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」の次にその内容を示す名称を付した勘定科目をもって記載します。ただし、これらの金額の重要性が乏しい場合には、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示することができます(実務指針第63号2(1)④)。 一般的に追徴税額が課される場合は、会社側の会計処理の誤りに起因し、過去の誤謬に該当するケースが多いと思われます。その場合には遡及適用による修正再表示を行うかどうか判断します。 本事例では、修正再表示するほどの重要性はないと判断していることから、修正再表示していません。また、金額的重要性がないことから、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示しています。 また、会社と税務当局との見解が相違する場合は、会計処理は誤りではなく過去の誤謬に該当しないと会社が判断していますので、修正再表示をする必要はありません。ただし、見解の相違であることについて十分な検討が必要になります。 なお、当期に中間納付した金額が年税額を超える場合には、中間納付額のうち年税額を超える金額が還付税額となることが見込まれます。還付税額に重要性が乏しいと認められる場合を除き、「未収還付法人税等」等、その内容を示す適当な科目で計上します(実務指針第63号2(1)④ )。 (了) ※2016年1月は、引当金の会計処理について取り上げます。
義務だけで終わらせない「ストレスチェック」の活かし方 【第3回】 (最終回) 「ストレスのメカニズムから考えるメンタルヘルス対策」 特定社会保険労務士 大東 恵子 メカニズムに則った対策を 前回はストレスのメカニズムについて、説明させていただいた。12月からスタートするストレスチェックやメンタルヘルス対策について考えるとき、このストレスのメカニズムに則って進めることが重要である。すなわち、それぞれメカニズムのどこの部分に対する結果で、どの部分に対するアプローチを考えなければならないのかをしっかりと捉えることが大切である。 その上で、厚生労働省が「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で提唱している、 の“4つのケア”が、メカニズムのそれぞれの部分によって、それぞれの役割を果たすことで、適切なメンタルヘルス対策を進めることが可能となる。 “4つのケア”の効果 まずは、ストレスチェックによって、職場に蔓延するストレッサーにはどのようなものがあるのか、人間関係の状況はどうか、仕事の質や量は適切かなどを査定することになる。ここに何か問題があるならば、「ラインによるケア」として管理監督者による仕事量を調整し残業を無くすなどの対策が必要となる。 ものの捉え方については、「セルフケア」として、ストレスチェックの結果を本人にフィードバックをすることでストレスについて考える機会を与え、また「事業場内産業保健スタッフによるケア」として、セミナーなどストレス教育などを進めることもできる。 緩衝要因としては、「ラインによるケア」として、日頃から管理監督者がその従業員の様子を観察し、何か不調の様子があった際に、声をかけるなど、早期対応が行うことができる。また、部内の雰囲気を良好にし、仲間意識を生むことで、励まし合う環境が生まれ、作業効率もアップするという効果もある。さらに「事業場内産業保健スタッフによるケア」としては、相談窓口を設置するなどで、早期発見早期対応で、状況が悪化しないよう対策を打つということも可能である。 ストレス反応としては、上記の緩衝要因とも重なるところがあるが、何かあっても管理監督者や事業場内産業保健スタッフに相談できるフローの構築や、それこそストレスチェックによってストレス疾患予備軍をスケーリングし、しかるべき対応につなげることで、早期発見早期対応が可能となる。 実際に、ストレス疾患まで発展してしまった場合は、「事業場外資源によるケア」として、しかるべき機関につなげ、休職や再発予防など対策を構築する。 企業全体の課題をあぶり出すツールとして 法令で決まっているからといって、やみくもにストレスチェックや対策を行うのではなく、それぞれの結果がメカニズムのどこを表しており、対策がどこにアプローチをしているのかという観点を持つことが重要となる。 ストレスチェックは、企業全体の課題をあぶり出すツールとして大いに役立ち、有益な情報が詰まったものであり、これを活かすも活かさないもその企業次第である。この12月のスタートをきっかけに、職場環境・働く意義について企業全体で考える機会になれば、また本連載がその一助となれば幸いである。 (連載了)
中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第19回】 「まとめ(1)」 -個人事業主の年金- 特定社会保険労務士 佐竹 康男 ここまで、18回にわたり「中小企業事業主の年金構築のためのポイント」について説明してきたが、今回はそのまとめとして、「個人事業主の年金」について、加入から年金受給までの留意点を挙げる。 1 個人事業主に係る年金制度 個人事業主等、厚生年金保険に加入していない20歳以上60歳未満の者には、第1号被保険者として国民年金の加入義務が生じる。65歳から受給できる年金を「老齢基礎年金」といい、その年金額は、40年間保険料を納付した場合、満額で780,100円(平成27年度価額)である。 2 保険料の未納期間があった場合 (1) 個人事業主と国民年金の保険料 個人事業主は、20歳から60歳まで国民年金に加入して、保険料(平成27年度15,590円)を毎月納付しなければならない。保険料を支払った期間に応じて年金額が決まるため、もしこの40年間で保険料の未納期間があれば、満額の年金は受給できない。また、25年の受給資格期間(保険料を納付した期間及び保険料の免除を受けた期間等を合算した期間)を満たせず、年金が全く受給できなくなる場合もある。 (2) 未納期間があった場合の対応 下記の制度を活用することにより、満額の年金又は満額の年金に近づけることができ、また、受給資格期間を満たせるようになる。 3 配偶者(妻)の年金 個人事業主の配偶者(たとえば妻)が厚生年金保険に加入していなければ、その妻も個人事業主と同様に国民年金に加入し、第1号被保険者として保険料を納付しなければならない。個人事業主の妻は、サラリーマンの妻のように保険料の負担が生じない第3号被保険者には該当しない。 4 年金額の増額方法 上述の通りに、老齢基礎年金の額は最大(満額)で780,100円であり、その額を超えることはないが、増額の方法は3つある。 (了)