公開日: 2016/03/03 (掲載号:No.159)
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monthly TAX views -No.38-「IBM、ヤフー、BEPSと租税回避」

筆者: 森信 茂樹

monthly TAX views

-No.38-

「IBM、ヤフー、BEPSと租税回避」

 

中央大学法科大学院教授
東京財団上席研究員
森信 茂樹

 

本年2月18日、最高裁判所はIBM事件について、国の上告を不受理にする決定を行った。

周知のようにこの事件は、日本IBMの親会社(日本法人、中間会社)が、米国IBMから資金提供を受け、米国IBMの持つ日本IBM株を購入し、それを子会社の日本IBMが買い取り、自社株買いを活用して生じた譲渡損失を自社の利益と相殺することにより税負担の軽減を図った取引である。

この取引が、同族会社の行為計算の否認規定(法人税法132条)に規定されている、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかが争われたが、一審(東京地裁平成26年5月9日判決)も二審(東京高裁平成27年3月25日判決)も納税者勝訴となり、最高裁も不受理ということで決着がついた。

この事件と並行して争われているのがヤフー事件である。

この事件は、組織再編を行うことによって子会社の損失を取り込んだ取引が、組織再編に係る行為計算の否認規定(法人税法132条の2)に該当するかどうかという事案である。一審(東京地裁平成26年3月18日判決)も二審(東京高裁平成26年11月5日判決)も、IBM事件とは逆に、国税当局が勝訴、2月29日最高裁は納税者側の上告を棄却した。

◆  ◆  ◆

ヤフー事件とIBM事件では事実関係が異なるので単純な比較はできないが、2つの事件を判断する法律の条文は、「法人税の負担を不当に減少させる」と、どちらも同じ文言である。

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「IBM、ヤフー、BEPSと租税回避」

 

中央大学法科大学院教授
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森信 茂樹

 

本年2月18日、最高裁判所はIBM事件について、国の上告を不受理にする決定を行った。

周知のようにこの事件は、日本IBMの親会社(日本法人、中間会社)が、米国IBMから資金提供を受け、米国IBMの持つ日本IBM株を購入し、それを子会社の日本IBMが買い取り、自社株買いを活用して生じた譲渡損失を自社の利益と相殺することにより税負担の軽減を図った取引である。

この取引が、同族会社の行為計算の否認規定(法人税法132条)に規定されている、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかが争われたが、一審(東京地裁平成26年5月9日判決)も二審(東京高裁平成27年3月25日判決)も納税者勝訴となり、最高裁も不受理ということで決着がついた。

この事件と並行して争われているのがヤフー事件である。

この事件は、組織再編を行うことによって子会社の損失を取り込んだ取引が、組織再編に係る行為計算の否認規定(法人税法132条の2)に該当するかどうかという事案である。一審(東京地裁平成26年3月18日判決)も二審(東京高裁平成26年11月5日判決)も、IBM事件とは逆に、国税当局が勝訴、2月29日最高裁は納税者側の上告を棄却した。

◆  ◆  ◆

ヤフー事件とIBM事件では事実関係が異なるので単純な比較はできないが、2つの事件を判断する法律の条文は、「法人税の負担を不当に減少させる」と、どちらも同じ文言である。

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連載目次

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筆者紹介

森信 茂樹

(もりのぶ・しげき)

東京財団政策研究所 研究主幹 「税・社会保障改革ユニット」ユニットリーダー
ジャパン・タックス・インスティチュート 所長
法学博士

1973年京都大学法学部卒業後大蔵省入省、主税局総務課長、大阪大学法学研究科教授、東京税関長、財務総合政策研究所長を最後に2006年退官。2004年プリンストン大学で教鞭をとる。コロンビアロースクール客員研究員。2020年3月まで中央大学法科大学院 特任教授。

【著書】
・『デジタル経済と税-AI時代の富をめぐる攻防』(日本経済新聞出版社)
・『税で日本はよみがえる―成長力を高める改革』(日本経済新聞出版社)
・『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版)
・『日本の税制 ─ 何が問題か』(岩波書店)
・『給付つき税額控除 ─ 日本型児童税額控除の提言』(中央経済社)

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